説明

移動体へのマーク形成方法およびマーク付き移動体

【課題】画像形成装置の搬送ベルト等の移動体において、この移動体の移動状態を正確に把握することができ、亀裂の発生や破損する恐れがなく、高電界にさらされる場合においても漏れ電流を生じることがなく、また、該移動体の移動速度ムラを低減することができるマークの形成方法について工夫すること。
【解決手段】移動体31上にマーク33を形成する方法であって、
第1の波長の光30に対して吸収性を有する第一の材料が分散され、少なくとも第2の波長の光を散乱する第二の材料層32を移動体31上に形成し、
上記第二の材料層32に対して上記第1の波長の光30a,30bを照射し、これを上記第一の材料が吸収することにより、該第二の材料層32の散乱特性を変化せしめ、
上記第2の波長の光に対して散乱特性が異なるマーク33を形成することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザ光による高精度のマーク(パタン)を形成する方法、および高精度のマーク付き移動体に関し、詳しくは、複写機、プリンタ、FAXなどの画像形成装置における感光体ベルト、転写ベルト、用紙搬送ベルト、感光体ドラム、転写ドラム等の画像形成用の回転体に関するものである。
そして、この発明は、位置センサーやパタン形成へ応用することが可能である。
【背景技術】
【0002】
感光体ベルト、中間転写ベルト等の画像形成用の回転体を備えた画像形成装置において、該回転体の回転移動部や該回転移動部で搬送される転写材上の画像の位置合わせを高精度で行うために、該回転体の回転移動部の移動量や移動位置を正確に制御することが要求される。ところが、上記回転体の回転角速度が何らかの原因で変動すると、該回転体の回転移動部の移動量や移動位置も変動することになるので、その回転移動部や該回転移動部により搬送される転写材上の画像の位置誤差を高精度に抑制することは困難であった。
【0003】
従来、上記回転体の回転移動部の移動速度変動による画像の位置誤差を高精度に抑制するために、転写ベルト、用紙搬送ベルト等の無端ベルト状回転体の駆動ローラの回転軸や、感光体ドラム等の円筒部材の回転軸にロータリーエンコーダを直結し、このエンコーダで検出された回転体の回転角速度に基づいて、該回転体の駆動手段である駆動モータの回転角速度を制御する画像形成装置が知られている(特開平6−175427号公報参照)。この画像形成装置は、上記回転体の回転角速度を制御することにより、該回転体の回転移動部の移動量(移動位置)を間接的に制御するものである。
【0004】
また、特開平6−263281号公報や特開平9−114348号公報などは、ベルト表面にマークを形成し、そのマークをセンサで検出して得られたパルス間隔からベルト表面速度を算出して、これをベルト表面速度の制御にフィードバックする手法が開示されている。この方法によれば、ベルト表面の挙動を直接観測できるため、移動量を直接制御することができる
上記の従来技術においては、ベルト上に形成されるマークの作成方法については具体的な開示が無く、これを実際に実施する際に生じる課題が明確にされていない。マークの具体例としては、ベルトに穴を開けて透過型のセンサで検出することが考えられるが、ベルトに穴を開けてしまうと、その部分の引っ張り強度が極端に低減して他の部分と比較して伸縮が多く発生するため、正確にベルト搬送状態を把握することができないばかりでなく、その部分に応力が集中することにより亀裂が発生して、ベルト自体が破損するなどの危険性がある。
また、穴によるマークや金属反射膜による反射マークを用いた場合、高電界にさらされる感光体や中間転写ベルトにおいては漏れ電流が生じるため、転写プロセスに悪影響を与え、更には機器の故障の原因とも成り得る。
【0005】
ここで、カラー画像形成装置を一例に採って、本発明の課題について説明する。
先ず、本発明を実施する場合に適するカラー画像形成装置について、図1−1に基づいて説明する。このカラー画像形成装置は、記録媒体としての転写用の用紙2を搬送する搬送ベルト3に沿って、該搬送ベルト3の移動方向(搬送方向)の上流側から順に、複数個の電子プロセス部1K,1M,1Y,1Cが配列されている、いわゆるタンデムタイプといわれるものである。これらの電子プロセス部1K,1M,1Y,1Cは画像形成部として機能する。電子プロセス部1Kは黒、電子プロセス部1Mはマゼンタ、電子プロセス部1Yはイエロー、電子プロセス部1Cはシアンの各画像を形成するものであり、各電子プロセス部は形成する画像の色が異なるだけで、内部構成は各電子プロセス部とも共通である。そこで、以下の説明では、黒の画像用の電子プロセス部1Kについて具体的に説明して、他の電子プロセス部1M,1Y,1Cについては具体的な構成要素の説明を省略し、黒の画像用の電子プロセス部1Kに係る符号Kに代えて、M,Y,Cなどの符号を付したものを図示するに止める。
【0006】
上記搬送ベルト3は、その一方が駆動回転される駆動ローラであり、他方が従動回転される従動ローラである搬送ローラ4,5によって、回動可能に支持されたエンドレスベルトから成り、これら搬送ローラ4,5の回転によって矢印の向きに回転されるようになっている。該搬送ベルト3の下方には、用紙2が収納された給紙トレイ6が備えられており、この給紙トレイ6に収納された用紙2のうち、最上位置にある用紙2は画像形成時に送り出されて、静電吸着により搬送ベルト3に吸着される。こうして搬送ベルト3に吸着された用紙2は、最初の電子プロセス部1Kに搬送され、ここで黒の画像が転写される。
【0007】
上記黒の画像用の電子プロセス部1Kは、像担持体としての感光体ドラム7Kと、この感光体ドラム7Kの周囲に配置されている帯電器8K、露光器9K、現像機10K、及び感光体クリーナ11Kなどから構成されている。該露光器9Kとしては、レーザースキャナーが用いられ、レーザ光源からのレーザ光をポリゴンミラーで反射させ、fθレンズや偏向ミラー等を用いた光学系を介して露光光12Kとして出射するように構成されている。
【0008】
画像形成に際して、上記感光体ドラム7Kの周面は、暗中にて帯電器8Kにより一様に帯電された後、上記露光器9Yからの黒画像に対応した露光光12K(本例ではレーザ光)により露光され、静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像機10Kにおいて黒色のトナーにより可視像化され、該感光体ドラム7K上に黒のトナー像が形成される。
このトナー像は、該感光体ドラム7Kと搬送ベルト3上の用紙2とが接する位置、いわゆる転写位置において、転写器13Kの働きにより用紙2上に転写され、該用紙2上に単色(黒)の画像が形成される。転写を終えた感光体ドラム7Kは、該感光体ドラム7Kの周面に残留した不要なトナーが感光体クリーナ11Kにより除去され、次の画像形成に備える。
【0009】
このようにして、上記電子プロセス部1Kにおいて単色(黒)を転写された用紙2は、搬送ベルト3によって次の電子プロセス部1Mに搬送される。この電子プロセス部1Mでは、上記電子プロセス部1Kにおける場合と同様のプロセスにより、感光体ドラム7M上に形成されたマゼンタのトナー像が用紙2上の黒のトナー像に重ね転写される。
上記用紙2はさらに次の電子プロセス部1Yに搬送され、同様にして感光体ドラム7Y上に形成されたイエローのトナー像が、該用紙2上に既に形成されている黒とマゼンタのトナー像に重ね転写される。同様にしてさらに、次の電子プロセス部1Cでは、該用紙2上にシアンのトナー像が重ね転写されて、フルカラーのカラー画像が得られる。
このようにして、フルカラーの重ね画像が形成された用紙2は、電子プロセス部1Cを通過した後、搬送ベルト3から剥離されて定着器14にて定着された後、排紙される。
【0010】
以上説明したカラー画像形成装置は、感光体から直接紙にトナー像を転写する、いわゆる直接転写方式のものであるが、直接紙に転写するのではなく、感光体から一旦中間転写体にフルカラー画像を形成した後に、紙に転写する中間転写方式のものも存在する。この中間転写方式では、カラー画像を形成する媒体が常に同じであって、紙のように厚さや吸湿具合の変化が無いものであるから、安定した画像が得られる。
【0011】
以上のように構成されたカラー画像形成装置では、感光体ドラムの軸間距離の誤差、感光体ドラムの平行度誤差、偏向ミラーの設置誤差、感光体ドラムヘの露光光の書き込みタイミング誤差、感光体ドラムの線速度の変動等により、本来、重ならなければならない位置において画像が重ならず、色間で位置ずれが生ずるという問題が発生する。この位置ずれの成分としては、主に、各色の走査線の傾きの不揃いによるスキュー(斜めずれ)、主走査方向と直交する副走査方向(搬送ベルト3による用紙2の搬送方向)において各画像位置がずれる副走査レジストずれ、副走査ピッチむら、主走査方向での書き出し位置又は書き終わりの位置がずれる主走査レジストずれ、及び色同士で走査線の長さが異なる倍率ずれなどがある。
【0012】
上記従来技術に記載されているように、図1−1に示されているような画像形成装置において、これに使われるベルト搬送装置の速度変動による位置決め誤差は、ベルトの厚み変動、搬送ローラの偏心、又は駆動モータの速度ムラにより、図1−2(a)に示すように複数の周波数成分を持った波形となる。ベルト搬送装置の速度変動中に形成された画像を重ね合わせた出力画像は、図1−2(b)に示されているように各色の位置が合わず、出力画像も同様に位置の合わない画像が出力され、色ずれや色変わりなどの画質劣化の原因となっている。
【0013】
上記従来技術のようにベルト上にマークを形成し、そのマークを光学式のセンサにより読み取り、その読み取り信号の時間間隔から移動速度を算出して駆動モータの制御を行うことにより、上記のような搬送ベルトの速度ムラ・位置決め誤差を低減することができ、図1−2(c)に示すように変動の低周波成分だけでも制御できれば、各色の色ずれを低減することができる。
【0014】
ベルト上に形成するマークとしては、どの様な形状の物でも、単一でも複数でも構わないが、ベルト(移動体)の移動速度を検出しようとする場合には、図1−3(a)に示すように、モータ20で駆動される駆動ローラ22と従動ローラ23,24により駆動回転されるベルト25上に、等間隔ピッチでスリット形状のパタンのマーク26を形成しておけば、該ベルト25の速度に応じて出力周波数が変化する信号を光センサー27等により検出することができる。また、図1−3(b)には、上記ベルト25に形成されているマーク26について詳細に示されており、該マーク26の表面は保護層28によって覆われている。なお、21はモータ20と駆動ローラ22との間に設けられた伝動装置である。
しかしながら、既に従来技術の説明において述べたように、ベルト上にマークを形成する好適な方法は明らかにされておらず、また、これを実際に実施する際に生じる課題が明確にされていない。
【0015】
上述の課題に対して、本件出願人の出願に係る特願2002−263994号(特開2004-99248号公報)、及び特願2003−52972号として、無端ベルト搬送装置においてマークの表面保護層を設けることによって、以下のような利点を有する発明が出願されている。
(1) マークが、ローラやクリーニングブレードなどと接触することにより損傷されることを防ぐ。
(2) マークを形成したことによる強度低下を補償する。
(3) 金属反射膜によるマークを用いる場合でも、転写バイアスなどの高電圧の漏れ電流が発生することを防止する。
(4) マーク保護層を形成する際に、マーク間ピッチに誤差が生じることを防ぐ。
【0016】
また、同じく本件出願人の出願に係る特願2002−370916号(特開2004-202498号公報)として、次のような発明が出願されている。
これは、中間転写ベルトの表面速度を直接検出して等速にフィードバック制御を行うためのスケールに関するもので、中間転写ベルト表面に貼り付けたPET保護層付きのアルミ蒸着テープを、短パルスレーザにより低熱損傷で形成する反射スリットパタンであって、保護層の上からレーザ加工することができ、ベルトへのダメージがなく、反射型センサが利用できる材料構成、レーザ波長、及び加工方法に関する発明である。
【0017】
これら金属材料層の反射率制御をレーザ加工により行う場合の問題点として、次のようなことが挙げられる。
(1) レーザ加工時の熱により、金属膜の下の粘着剤がダメージを受ける。
(2) レーザ加工時に金属の熱伝導による加工部の拡がりが生じ、高精度化が困難である。
(3) 保護層があった場合でも、その端部や傷等から電流のリークの可能性がある。
【0018】
【特許文献1】特開平6−263281号公報
【特許文献2】特開平9−114348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の課題は、画像形成装置の搬送ベルト等の移動体において、この移動体の移動状態を正確に把握することができ、亀裂の発生や破損する恐れがなく、高電界にさらされる場合においても漏れ電流を生じることがなく、また、該移動体の移動速度ムラを低減することができるマークの形成方法について工夫することであり、さらに、このようなマークが形成された移動体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題に対する解決手段は、光吸収性の分散材料(第一の材料)を分散した基板材料(第二の材料)により、移動体上に検出用の光(第2の波長の光)を散乱する基板材料層(第二の材料層)を形成し、この基板材料層に加工用の光(第1の波長の光)を照射して、内部の分散材料に光を吸収させることにより該基板材料層を変質させ、検出用の光に対する散乱特性が異なるマークを形成することが基本である。
【0021】
ここで、上記回転体の位置制御を行うためのマークの作成原理について、図2を参照しながら説明する。
加工用レーザ光30a,30bが変質可能な基板材料層32に照射されると、この基板材料層32内に分散されている光吸収性の分散材料により選択的にエネルギーが吸収される。この吸収されたエネルギーは、上記基板材料層32の基板材料に伝達され、分散材料と基板材料の変質が起きる(図2(b)の黒い部分33が変質部である)。照射レーザパルス数やエネルギー強度を調整することにより、図2(c)に示されているように、レーザ照射部34のみを選択的に変質させ得ることを見出した(写真中の黒い部分がレーザ照射部34である)。
【0022】
上記図2(c)に示されている例では、酸化チタン微粒子(分散材料)を分散させたPET基板材料に対して、Nd:YAGレーザの第三高調波(加工用レーザ光)を照射している。このとき、酸化チタン微粒子に吸収されたエネルギーは、熱的又は電子放出の効果により周囲のポリマーを変質すると考えられる。この場合、レーザ照射形状を調整することにより、変質する部分を任意の形状とすることができる。また、これは固体材料内部での変化であるため、透明体を上面に配置したような場合でも、同様の変化を起こすことが可能である。
さらに、この変化はアクリル系接着剤に分散させた酸化チタン微粒子においても可能であり、多様な構成によりマークを形成し得ることが分かった。
このように、照射レーザ光が基板材料に分散されている光吸収性の分散材料により吸収され、それによって該分散材料周辺の基板材料の変質を誘起し、高精度にマークパタンが形成されることが明らかとなった。
【0023】
〔解決手段1〕(請求項1に対応)
上記課題を解決するために講じた解決手段1は、移動体上にマークを形成する方法であって、
第1の波長の光に対して吸収性を有する第一の材料が分散され、少なくとも第2の波長の光を散乱する第二の材料層を移動体上に形成し、
上記第二の材料層に対して上記第1の波長の光を照射し、これを上記第一の材料が吸収することにより、該第二の材料層の散乱特性を変化せしめ、
上記第2の波長の光に対して散乱特性が異なるマークを形成することである。
【0024】
〔作 用〕
第1の波長の光(加工用レーザ光)の吸収性の高い第一の材料(光吸収性の分散材料)を第二の材料(基板材料)に分散し、それを移動体の表面に配置して第二の材料層(基板材料層)を形成する。このとき、移動体の表面に形成された第二の材料層は、少なくとも第2の波長の光(検出用の光)に対して、上記第一の材料(分散材料)の分散によって比較的高い散乱を示すような材料から成る。この第二の材料層は、スプレー塗布や浸漬等で容易に形成することが可能である。この第二の材料層に対して、所望の形状に整形され、かつエネルギーが調整された第1の波長の光を照射すると、その照射位置に存在する分散された第一の材料により第1の波長の光が吸収され、このエネルギーにより周囲の第二の材料層は変質を起こす。これにより、第1の波長の光の照射部では、初期の散乱強度とは異なる散乱特性を示すようになり、第2の波長の光を用いる光学式センサーによって検出することが可能となる。このとき、第一の材料の分散具合を調整することにより、その散乱の変化量を調整することが可能となる。
また、このとき第1の波長の光の照射位置や形状を変化させることにより、大面積に任意のパタンを形成することが可能となる。
このとき第二の材料(基板材料)として、高分子やセラミックス等の熱拡散率の小さい材料を用いることにより、例えば金属へのレーザ光照射時のような熱による照射領域の拡がりを抑制して、高精度にマークを加工することが可能となる。
【0025】
〔実施態様1〕(請求項2に対応)
実施態様1は、上記解決手段1のマーク形成方法において、第二の材料層表面に、第1及び第2の波長の光に対して透過性の高い第三の材料層を形成し、該第三の材料層表面から第1の波長の光を照射し、該第三の材料層を透過した該第1の波長の光により、上記第二の材料層の散乱特性を変化せしめることである。
【0026】
〔作 用〕
この実施態様1は、上記解決手段1のマーク形成方法において、第二の材料層(基板材料層)の上面に、第1及び第2の波長の光(加工用及び検出用の光)に対して透明な第三の材料層(透明膜)を配置しており、マークの形成はこの第三の材料層を透過する第1の波長の光(加工用レーザ光)によって行い、上記解決手段1と同等の作用により第三の材料層下側の第二の材料層を変質させる。これにより、第2の波長の光(検出用の光)に対して散乱量が変化し、移動体の移動を検出することが可能となる。
このとき、第三の材料層の材料を選択することにより、マーク形成部の傷の防止、トナーやごみ等の付着の防止、第二の材料層の経時変化の抑制等、さまざまな機能を付加することが可能となる。
【0027】
〔実施態様2〕(請求項3に対応)
実施態様2は、上記解決手段1又は実施態様1のマーク形成方法において、第二の材料層と移動体との間に、少なくとも第2の波長の光の反射率が高い第四の材料層を形成し、第1の波長の光により上記第二の材料層の散乱特性を変化せしめ、上記第2の波長の光に対する散乱特性が異なるマークを形成することである。
〔作 用〕
この実施態様2は、上記解決手段1又は実施態様1において、第二の材料層(基板材料層)の下面に読み出し用センサー(検出用光学式センサー)に対する第四の材料層(反射膜)を配置する。このとき、第二の材料層の膜厚は薄いほうが効果的であり、この第四の材料層により第二の材料層での散乱強度を大きくすることができる。
このように構成された第二の材料層に対して、上記解決手段1又は実施態様1と同様に、第1の波長の光(加工用レーザ光)を照射して第二の材料層の変質を生じさせる。この変質が生じた第二の材料層を光学式センサーにより検出するとき、第四の材料層を配置したことにより、その散乱強度の変化を増大させることができる。例えば、低出力の光によるマークの検出が可能であり、また信号のS/N比が向上して、安定した信号の検出が可能となる。
【0028】
〔実施態様3〕(請求項4に対応)
実施態様3は、上記解決手段1、実施態様1又は実施態様2のマーク形成方法において、第二の材料層が、第一の材料を分散した透明樹脂により構成されることである。
〔作 用〕
この実施態様3は、第一の材料(光吸収性の分散材料)を透明樹脂(透明高分子材料)に分散して第二の材料層(基板材料層)を形成したものであり、透明樹脂は多くのものが安価に入手可能であり、該第一の材料の分散が容易である。透明樹脂としてフッ素樹脂膜のような低付着材料を選ぶことにより、上記第二の材料層の汚染防止等の効果を生じさせることができる。また、ポリイミド等の耐熱材料を利用することも可能である。
さらに、透明樹脂(透明高分子材料)は、塗布や浸漬等により容易に薄膜を形成することでき、比較的低温で膜形成が可能である。また、透明樹脂は熱伝導が低いため、第1の波長の光(加工用レーザ光)の照射による熱拡散を抑制することができ、第1の波長の光の照射領域からの形状変化を防止することができ、高精度なマークの形成が可能である。
そして、透明樹脂は、熱的、電子衝突、ラジカル反応等で容易に変質し得るため、第1の波長の光が低エネルギーであっても、散乱特性の変化を生じるようにすることが可能となる。
【0029】
〔実施態様4〕(請求項5に対応)
実施態様4は、上記解決手段1、実施態様1又は実施態様2のマーク形成方法において、第二の材料層が、第一の材料を分散した接着剤で構成されることである。
〔作 用〕
この実施態様4は、第一の材料(光吸収性の分散材料)を分散した接着剤(粘着性の低い粘着材を含む)により第二の材料層(基板材料層)を構成するものであり、接着剤としては、アクリル樹脂やシリコン樹脂等が利用可能である。散乱材料を含んだ接着剤は、酸化チタンを接着剤に分散させるなどにより容易に入手することができる。
第二の材料(基板材料)として接着剤を用いることにより、移動体への第二の材料層(基板材料層)の形成が容易となる。例えば、白色の感圧型の接着剤などを直接塗布する等によって、移動体に対して第二の材料層を形成することが可能である。このような柔らかく変形し易い接着剤は、通常加工が困難であると考えられるが、図6に示すように、接着剤に分散した第一の材料(光吸収性の分散材料)へ第1の波長の光(加工用レーザ光)を照射することにより、散乱強度を変化させ得ることを見出した。
これによって、マーク形成プロセスの低減、マーク作製コストの低減が可能となる。
【0030】
〔実施態様5〕(請求項6に対応)
実施態様5は、上記解決手段1、又は実施態様1〜実施態様4のいずれかのマーク形成方法において、第1の波長の光が400nm以下の波長を有しており、第一の材料が酸化チタンであることである。
〔作 用〕
この実施態様5は、第一の材料(光吸収性の分散材料)に酸化チタンの微粒子を用いると共に、第1の波長の光(加工用レーザ光)が400nm以下の波長を有している。高精度のマークを形成するためには、ミクロン以下の酸化チタン微粒子を利用することが望ましい。この酸化チタンは、紫外線域において吸収性のある材料として知られており、白色散乱材料として広く使われている材料であり、非常に安価に入手することができる。
この酸化チタンから成る分散材料に400nm以下の紫外線を照射することにより、電子が放出され周囲の材料の化学結合を乖離、変質させる。このために、熱的効果のみでは困難な散乱強度の変化を容易に行うことができる。
また、初期に白色散乱材料として入手可能であり、幅広い波長域の光で散乱を示すため、幅広い波長域の光学式センサーにより検出することが可能となる。
【0031】
〔実施態様6〕(請求項7に対応)
実施態様6は、上記解決手段1、又は実施態様1〜実施態様4のいずれかのマーク形成方法において、第一の材料が金属微粒子であり、第二の材料層が第1の波長の光に対して透明な材料からなることである。
〔作 用〕
この実施態様6は、第一の材料(光吸収性の分散材料)に金属の微粒子を用いると共に、第二の材料層(基板材料層)が第1の波長の光(加工用レーザ光)に対して透明な材料からなっている。高精度のマークを形成するためには、ミクロン以下の金属微粒子を分散したものが望ましい。金属微粒子には、近赤外線から紫外線域まで幅広く吸収を示す材料が多く、Au(金)、Ag(銀)、Ti(チタン)、Al(アルミ)などの多くの材料を利用することができる。
また、金属微粒子を利用することにより、第1の波長の光として幅広い波長のレーザ光を用いて散乱強度を変化をさせるが可能である。そして、散乱特性も高くなるため、光学式センサーによる信号検出も容易となる。
【0032】
〔実施態様7〕(請求項8に対応)
実施態様7は、上記解決手段1、又は実施態様1〜実施態様6のいずれかのマーク形成方法において、第1の波長の光のパルス幅が200ns以下であることである。
〔作 用〕
この実施態様7は、第1の波長の光(加工用レーザ光)としてパルス幅が200ns(ナノ秒)以下の短パルスレーザを用いることにより、低熱損傷で効率的に第二の材料層(基板材料層)の変質を起こすものである。
パルス幅が200ns以下の短パルスレーザとしては、エキシマレーザ、Qスイッチ(Q-Switch)Nd:YAGレーザやその高調波レーザ、パルス幅が数100fs(フェムト秒)であるチタンサファイア(Ti:sapphire)レーザ等を利用することができる。
パルス幅が短いレーザ光であれば、除去(加工)時の熱損傷が低減できるため、加工部のエッジ形状を高精度できれいに加工することができる。また、入射レーザピークフルエンスが高いから、多光子吸収を起こす際に有利となり、これにより同じ波長では吸収性の低い材料においても、多光子吸収による材料変質を起こすことが可能となる。
さらに、フェムト秒領域のレーザでは、熱伝導が高い金属材料であってもその変質領域をサブミクロンオーダとすることができるので、加工部周辺部でのゆがみ等をさらに抑制することが可能となる。
【0033】
〔解決手段2〕(請求項9に対応)
上記課題を解決するために講じた解決手段2は、移動体がマーク付き移動体であって、請求項1〜請求項8のいずれかに記載のマーク形成方法により形成されたマークを少なくとも一部に有していることである。
〔作 用〕
この解決手段2は、上記解決手段1、又は実施態様1〜実施態様7のいずれかのマーク形成方法によって形成されるマークを移動体に配置しているので、従来では困難であった移動体表面の位置や移動速度の検出を容易に行うことができ、該移動体の高精度の駆動や位置検出が可能である。
このとき、第二の材料(マークを形成する基板材料)として、例えば薄いポリマー基材を用いることにより、移動体の移動に追随した表面と一致した位置や移動速度を検出することが可能となる。
【0034】
〔実施態様8〕(請求項10に対応)
実施態様8は、上記解決手段2のマーク付き移動体を無端ベルトとして、上記解決手段1、又は実施態様1〜実施態様7のいずれかのマーク形成方法により作成されたマークを少なくとも一部に有していることである。
〔作 用〕
この実施態様8は、上記解決手段1、又は実施態様1〜実施態様7のいずれかのマーク形成方法によって形成されるマークを無端ベルトの少なくとも一部に配置しているので、従来では困難であった無端ベルト表面の位置や移動速度の検出を容易に行うことができ、該無端ベルトの高精度の駆動や位置検出が可能である。
このとき、第二の材料(マークを形成する基板材料)として、例えば薄いポリマー基材を用いることにより、無端ベルトの回転に追随した表面と一致した位置や移動速度を検出することが可能となる。
【0035】
〔実施態様9〕(請求項11に対応)
実施態様9は、上記解決手段2のマーク付き移動体を画像形成装置の紙搬送ベルトとして、上記解決手段1、又は実施態様1〜実施態様7のいずれかのマーク形成方法により作成されたマークを少なくとも一部に有していることである。
〔作 用〕
この実施態様9は、上記解決手段1、又は実施態様1〜実施態様7のいずれかのマーク形成方法によって形成されるマークを紙搬送ベルトの少なくとも一部に配置しているので、従来では困難であった紙搬送ベルト表面の位置や移動速度の検出を容易に行うことができる。
このとき、第二の材料(マークを形成する基板材料)として、例えば薄いポリマー基材を用いることにより、紙搬送ベルトの回転に追随した表面と一致する位置や移動速度を検出することが可能となる。
このマークが形成された紙搬送ベルトでは、該マークから検出される信号を用いて位置制御を行うことにより、画像形成装置の紙送りむらの低減や高精度の位置調整をすることが可能である。
【0036】
〔実施態様10〕(請求項12に対応)
実施態様10は、上記解決手段2のマーク付き移動体を画像形成装置の中間転写ベルトとして、上記解決手段1、又は実施態様1〜実施態様7のいずれかのマーク形成方法により作成されたマークを少なくとも一部に有していることである。
〔作 用〕
この実施態様10は、上記解決手段1、又は実施態様1〜実施態様7のいずれかのマーク形成方法によって形成されるマークを中間転写ベルトの少なくとも一部に配置しているので、従来では困難であった中間転写ベルト表面の位置や移動速度の検出を容易に行うことができる。
このとき、第二の材料(マークを形成する基板材料)として、例えば薄いポリマー基材を用いることにより、中間転写ベルトの回転に追随した表面と一致した位置や移動速度を検出することが可能となる。また、導電性のない材料を選択することにより、中間転写ベルトで問題となる電流のリークがなくなり、転写時の他の機能に問題を与えない構成とすることが可能である。
このマークが形成された中間転写ベルトは、該マークから検出される信号を用いて位置制御を行うことにより、画像形成装置の中間転写ベルトの送りむらや、外乱による変化を補正する等の高精度の位置制御が可能である。
【発明の効果】
【0037】
本発明の効果を主な請求項毎に整理すると、次ぎのとおりである。
(1) 請求項1に係る発明
光吸収性を有する第一の材料(光吸収性の分散材料)が分散された第二の材料層(基板材料層)を移動体上に形成し、この第二の材料層に光を照射して該第二の材料層の散乱特性(散乱強度)を変化させマークを形成するので、上記移動体(ベルト等)の引っ張り強度を低減することなく伸縮が少なく、正確に該移動体の搬送状態を把握することが可能であり、該移動体上に精密な位置や速度検出が可能となるマークを形成することができる。
【0038】
(2) 請求項2に係る発明
第二の材料層(基板材料層)上に第三の材料層(透明膜)を配置することにより、マーク形成部の傷の防止、トナーやごみ等の付着の防止、第二の材料層の経時変化の抑制等、さまざまな機能を付加することが可能である。
(3) 請求項3に係る発明
第二の材料層(基板材料層)の下面に第四の材料層(反射膜)を配置するので、第二の材料層での散乱強度の変化を増大させることができる。これにより、低出力の光によるマークの検出が可能となり、また、信号のS/N比が向上して安定した信号の検出が可能である。
【0039】
(4) 請求項4に係る発明
第二の材料層(基板材料層)を第一の材料(分散材料)を分散した透明樹脂(透明高分子材料)により形成しているので、透明樹脂は多くのものが安価に入手可能であり、該第一の材料の分散も容易である。透明樹脂としてフッ素樹脂膜を用いることにより、第二の材料層の汚染を防止することができる。また、ポリイミド等の耐熱材料を利用することも可能である。
さらに、透明樹脂(透明高分子材料)は、塗布や浸漬等により容易に薄膜を形成することでき、比較的低温で膜形成が可能である。また、熱伝導が低いため、第1の波長の光(加工用レーザ光)の照射による熱拡散を抑制し、第1の波長の光の照射領域からの形状変化を防止することができるので、高精度のマークを形成することが可能である。
そして、透明樹脂は、熱的、電子衝突、ラジカル反応等で容易に変質し得るため、第1の波長の光が低エネルギーであっても、散乱特性の変化を生じさせることが可能である。
【0040】
(5) 請求項5に係る発明
第二の材料層(基板材料層)を接着剤(粘着性の低い粘着材を含む)により形成しているので、例えば、白色の感圧型の接着剤などを移動体に対して直接塗布すること等によって、第二の材料層を容易に形成することが可能であり、マーク形成プロセスの低減、マーク作製コストの低減が可能である。
(6) 請求項6に係る発明
酸化チタンからなる第一の材料(分散材料)は、波長が400nm以下の紫外線を照射することにより、電子を放出し周囲の材料の化学結合を乖離、変質させる。このために、第二の材料層(基板材料層)において、熱的効果のみでは困難な散乱強度の変化を容易に行うことができる。
また、酸化チタンは初期に白色散乱材料として入手可能であり、幅広い波長域の光で散乱を示すため、幅広い波長域の光を用いる光学式センサーによる検出が可能となる。
【0041】
(7) 請求項7に係る発明
第一の材料(分散材料)として金属微粒子を用いており、この金属微粒子は近赤外線から紫外線域まで幅広く吸収を示す材料が多いので、多くの金属材料を利用することができる。また、第1の波長の光として幅広い波長のレーザ光を用いて散乱強度を変化をさせることが可能であり、散乱特性も高くなるため、光学式センサーによる信号検出も容易である。
【0042】
(8) 請求項8に係る発明
第1の波長の光(加工用レーザ光)としてパルス幅が200ns以下の短パルスレーザを用いることにより、除去(加工)時の熱損傷を低減することができるため、加工部のエッジ形状を高精度できれいに加工することが可能である。また、入射レーザピークフルエンスが高いので、多光子吸収を起こす際に有利となり、これにより同じ波長では吸収性の低い材料においても、多光子吸収による材料変質を起こすことが可能となる。
さらに、パルス幅がフェムト秒領域のレーザ光では、熱伝導が高い金属材料であっても、その変質領域をサブミクロンオーダとすることができるので、加工部周辺でのゆがみ等をさらに抑制することが可能である。
【0043】
(9) 請求項9に係る発明
請求項1〜請求項8のいずれかのマーク形成方法によって形成されるマークを、移動体の少なくとも一部に配置しているので、従来では困難であった移動体表面の位置や移動速度の検出を容易に行うことができ、該移動体の高精度の駆動や位置検出が可能である。
(10) 請求項10に係る発明
請求項1〜請求項8のいずれかのマーク形成方法によって形成されるマークを、無端ベルトの少なくとも一部に配置しているので、従来では困難であった無端ベルト表面の位置や移動速度の検出を容易に行うことができ、該無端ベルトの高精度の駆動や位置検出が可能である。
【0044】
(11) 請求項11に係る発明
請求項1〜請求項8のいずれかのマーク形成方法によって形成されるマークを、画像形成装置の紙搬送ベルトの少なくとも一部に配置しているので、従来では困難であった紙搬送ベルト表面の位置や移動速度の検出を容易に行うことができる。
このマークが形成された紙搬送ベルトでは、マークから検出される信号を用いて位置制御を行うことにより、画像形成装置の紙送りむらの低減や高精度の位置調整をすることが可能である。
【0045】
(12) 請求項12に係る発明
請求項1〜請求項8のいずれかのマーク形成方法によって形成されるマークを、画像形成装置の中間転写ベルトの少なくとも一部に配置しているので、従来では困難であった中間転写ベルト表面の位置や移動速度の検出を容易に行うことができる。
このマークが形成された中間転写ベルトは、マークから検出される信号を用いて位置制御を行うことにより、画像形成装置の中間転写ベルトの送りむらや、外乱による変化を補正する等の高精度の位置制御が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
画像形成装置等の搬送ベルトにおいて、正確にベルト搬送状態を把握することができ、亀裂の発生や破損する恐れがなく、高電界にさらされる場合でも漏れ電流を生じることがないように、また、搬送ベルトの速度ムラを低減し得るようにマークを形成するという目的を、光吸収性の材料を分散した基板材料層をレーザ光の照射により変質させて、ベルト上にマークを形成することによって実現した。
【実施例1】
【0047】
本発明の実施例1(請求項1に対応)について、図2及び図3を参照しながら説明する。図2はマークの作成原理を説明する模式図であり、図3はレーザ加工装置の模式図である。
加工用レーザ光30a,30bの吸収性が高い分散材料、例えば酸化チタン微粒子を基板材料であるPET樹脂に分散し、これを例えばポリイミド(PI)やポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの樹脂、あるいはステンレス(SUS)などの金属材料から成る移動体31の表面に形成する。このとき移動体31の表面に形成された基板材料層32は、少なくとも検出用の光の波長に対して、上記分散材料の分散によって比較的高い散乱を示すような材料から成る。この基板材料層32は、スプレー塗布や浸漬等により容易に形成することが可能である。
【0048】
上記移動体31上の基板材料層32にマーク33を形成するには、該基板材料層32に対して、所望の形状に整形し、かつエネルギーを調整した加工用レーザ光30a,30bを照射する(図2(a)参照)。これにより、レーザ光30a,30bは、その照射位置に存在する酸化チタン微粒子により吸収され、このエネルギーにより周囲の基板材料層32が変質を起こす。このため、加工用レーザ光30a,30bの照射部では、初期の散乱強度とは異なる散乱特性を示すマーク33が形成され(図2(b)参照)、検出用の光を用いる光学式センサーによって該マーク33を検出することが可能となる。このとき酸化チタン微粒子の分散具合を調整することにより、その散乱の変化量を調整することが可能となる。また、このとき加工用レーザ光30a,30bの照射位置や形状を変化させることにより、大面積に任意のパタン形成をすることが可能となる。
そして、基板材料として高分子やセラミックス等の熱拡散率の小さい材料を用いることにより、例えば金属へのレーザ光照射時のような熱による照射領域の拡がりを抑制して、マークを高精度に加工することが可能となる。
【0049】
次に、図3に基づいて、基板材料層32に対して加工用レーザ光30を照射するレーザ加工装置について説明する。
このレーザ加工装置は、レーザ光源40、ミラー41a〜41c、拡大光学素子42、整形光学素子43、シリンドリカルレンズ44、及び集光光学素子45等によって構成されている。例えば、Nd:YAGレーザの第三高調波を用いたレーザ光源40から出力されたレーザ光40aは、上記それぞれの光学素子41a〜45によってライン状に整形され、被加工物である回転体46(移動体上の基板材料層)の表面に対して、加工用レーザ光30として照射される。この加工用レーザ光30の照射タイミングと回転体46の位置を制御しながら、該回転体46の表面の位置を連続的に移動させることにより、この回転体46の表面に連続したマークを形成することができる。
このとき基板材料層32の内部では、上記マークの作成原理(図2(a),(b))において説明したように、光学的特性が変化したマーク33を得ることができる。このマーク33のパタンを移動体上に形成しておけば、該移動体の移動に伴って光学式センサーにより信号強度の変化を読み取ることができ、これにより移動体の精密な位置や移動速度を検出することが可能となる。
【実施例2】
【0050】
本発明の実施例2(請求項2に対応)について、図4を参照しながら説明する。図4はマーク形成方法を説明する模式図である。
この実施例2は、上記実施例1と同様に、PET樹脂に酸化チタンなどの微粒子を分散して形成した基板材料層32の上に、加工用及び検出用の光の波長に対して透明なPET樹脂等の材料から成る透明膜(透明フィルム)35を配置して、マークの形成や読み取りはこの透明膜35を透過するレーザ光、例えば紫外線レーザからの光により行い、上記実施例1と同等の作用によって、基板材料層32内部の基板材料や分散材料を変質させる。これにより検出用の波長の光での散乱量が変化して、移動体31の移動を検出することが可能となる。
【0051】
このとき、透明膜35の材料を選択することにより、さまざまな機能を付加することが可能となる。例えば、透明な薄膜を配置することにより、基板材料層32単体では問題となるマーク作成部の傷を防止することができる。また、フッ素系樹脂など濡れ性の低い材料から成る透明膜35を配置することにより、トナーやごみ等の付着を防止する効果が生じる。さらに、透明材料から成る透明膜35を配置することにより、分散材料が直接空気と接触することを防止することができ、これにより基板材料層32の経時変化を抑制することが可能となる。
【0052】
上記基板材料層32へのマーク33の形成は、上記実施例1において説明したレーザ加工装置(図3を参照)を用いて同様に行うことができる。例えば、紫外線レーザからのレーザ光30a,30bは、PET等の透明フィルム35の下面に配置された酸化チタンなどの微粒子を分散した基板材料層32に照射される。このとき、酸化チタンでの光吸収による熱や電子放出によって、周囲のPET材料が変質し黒化する(図4(b)の33を参照)。初期には酸化チタンによる散乱のため白色であった部分が、レーザ光30a,30bの照射により黒く変色するため、光学式センサーを用いることにより、容易にレーザ照射部と未照射部を検出することができる。このようなパタンを移動体31の表面に配置して光学式センサーで検出することにより、移動体31の移動に伴う位置や移動速度を検出することが可能となる。
【実施例3】
【0053】
本発明の実施例3(請求項3に対応)について、図5を参照しながら説明する。図5はマーク形成方法を説明する模式図である。
この実施例3は、上記実施例1又は実施例2において、基板材料層32の下面に読み出し用センサーに対する反射膜37を配置する。このとき、基板材料層32の膜厚は薄い方が効果的である。この反射膜37により基板材料層32での散乱強度を大きくする。
このように構成された基板材料層32に対して、上記実施例1又は実施例2と同様に、レーザ光30a,30bを照射して基板材料層32の変質を起こす。この変質した基板材料層32を光学式センサーにより検出するとき、反射膜37を配置したことにより、その散乱強度の変化を増大させることができる。例えば、低出力の光によるマークの検出が可能であり、また、これにより信号のS/N比が向上し、安定した信号検出が可能である。
【0054】
上記実施例3について更に具体的に説明すると、粘着材36付き金属反射フィルム(反射膜)37上に散乱粒子を分散した薄いポリマーを塗布して基板材料層32を形成し、それを移動体31の表面に接着する。次に、この基板材料層32に対してレーザ光30a,30bを照射することにより、上記実施例1又は実施例2と同様の作用によって、上記基板材料層32の変質を起こさせてマーク33を形成する。このように反射膜37を基板材料層32の下面に配置することにより、レーザ照射部と未照射部での信号強度が大きく変化し、それにより光学センサーによるマーク検出が容易かつ高精度となる。
【実施例4】
【0055】
本発明の実施例4(請求項5に対応)について、図6を参照しながら説明する。図6は接着剤により基板材料層を形成してマークを作成した結果を示す図である。
この実施例4は、上記実施例1〜実施例3において、酸化チタンなどの光吸収材料を透明接着剤(粘着性の低い粘着材を含む)に分散して基板材料層を形成することを特徴とするものである。接着剤としては、アクリル樹脂やシリコン樹脂等が利用可能である。散乱材料を含んだ接着剤は、酸化チタンを接着剤に分散させることなどにより容易に入手することができる。
このように基板材料として接着剤を用いることにより、移動体への基板材料層の形成が容易となる。例えば、白色の感圧型の接着剤などを直接塗布する等によって、移動体に対して基板材料層を形成することが可能である。このような柔らかく変形し易い接着剤は通常加工が困難であると考えられるが、図6に示すように、接着剤に分散した光吸収材料へレーザ光を照射することにより、レーザ光照射部34において基板材料層が変質して、散乱強度の変化を起こさせ得ることを見出した。
これによって、マーク形成プロセスの低減、マーク作製コストの低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1−1】は、本発明を実施するのに好適である従来のカラー画像形成装置の模式図である。
【図1−2】は、従来の画像形成装置に使用されるベルト搬送装置のベルト位置変動について説明する図であり、(a)はベルト1回転中の速度変動による位置変動(位置決め誤差)を示し、(b)は速度変動による色ごとの位置変動を示し、(c)は速度変動の低周波成分を除去して速度ムラ・位置決め誤差を低減した場合の色ごとの位置変動を示している。
【図1−3】は、従来のベルト移動速度を検出する例の説明図であり、(a)は全体の構成を示し、(b)はマーク形成部の拡大図である。
【図2】は、マークの作成(加工)原理について説明する模式図であり、(a)は移動体の基板材料層にレーザ光を照射している状態を示し、(b)は移動体の基板材料層が変質した状態を示し、(c)はマークを作成(加工)した結果を示している。
【図3】は、マークを作成(加工)するためのレーザ加工装置の模式図である。
【図4】は、本発明の実施例2のマーク形成方法を説明する模式図であり、(a)は移動体の基板材料層にレーザ光を照射している状態を示しており、(b)は基板材料層が変質した状態を示している。
【図5】は、本発明の実施例3のマーク形成方法を説明する模式図であり、(a)は移動体の基板材料層にレーザ光を照射している状態を示しており、(b)は基板材料層が変質した状態を示している。
【図6】は、本発明の実施例4のマーク形成結果を示す図であり、接着剤に散乱材料を分散して基板材料層を形成し、マークを作成したものである。
【符号の説明】
【0057】
1K,1M,1Y,1C‥‥電子プロセス部 2‥‥用紙
3‥‥搬送ベルト 4,5‥‥搬送ローラ4,5
6‥‥給紙トレイ 7K,7M,7Y,7C‥‥感光体ドラム
8K,8M,8Y,8C‥‥帯電器 9K,9M,9Y,9C‥‥露光器
10K,10M,10Y,10C‥‥現像機
11K,11M,11Y,11C‥‥感光体クリーナ
12K,12M,12Y,12C‥‥露光光
13K,13M,13Y,13C‥‥転写器 14‥‥定着器
20‥‥モータ 21‥‥伝動装置
22‥‥駆動ローラ 23,24‥‥従動ローラ
25‥‥ベルト 26‥‥マーク
27‥‥光センサー 28‥‥保護層
30a,30b‥‥加工用レーザ光 31‥‥移動体
32‥‥基板材料層 33‥‥マーク
34‥‥レーザ照射部 35‥‥透明膜(透明フィルム)
36‥‥粘着材 37‥‥反射膜(金属反射フィルム)
40‥‥レーザ光源 40a‥‥レーザ光
41a〜41c‥‥ミラー 42‥‥拡大光学素子
43‥‥整形光学素子 44‥‥シリンドリカルレンズ
45‥‥集光レンズ 46‥‥回転体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波長の光に対して吸収性を有する第一の材料が分散され、少なくとも第2の波長の光を散乱する第二の材料層を移動体上に形成し、
上記第二の材料層に対して上記第1の波長の光を照射し、これを上記第一の材料が吸収することにより、該第二の材料層の散乱特性を変化せしめ、
上記第2の波長の光に対して散乱特性が異なるマークを形成すること、
を特徴とする移動体へのマーク形成方法。
【請求項2】
上記第二の材料層表面に、第1及び第2の波長の光に対して透過性の高い第三の材料層を形成し、
上記第三の材料層表面から第1の波長の光を照射し、該第三の材料層を透過した該第1の波長の光により、上記第二の材料層の散乱特性を変化せしめること、
を特徴とする請求項1に記載の移動体へのマーク形成方法。
【請求項3】
上記第二の材料層と移動体との間に、少なくとも第2の波長の光の反射率が高い第四の材料層を形成し、
上記第1の波長の光により上記第二の材料層の散乱特性を変化せしめ、
上記第2の波長の光に対する散乱特性が異なるマークを形成すること、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の移動体へのマーク形成方法。
【請求項4】
上記第二の材料層が、上記第一の材料を分散した透明樹脂により構成されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の移動体へのマーク形成方法。
【請求項5】
上記第二の材料層が、上記第一の材料を分散した接着剤で構成されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の移動体へのマーク形成方法。
【請求項6】
上記第1の波長の光が400nm以下の波長を有しており、上記第一の材料が酸化チタンであることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の移動体へのマーク形成方法。
【請求項7】
上記第一の材料が金属微粒子であり、上記第二の材料層が第1の波長の光に対して透明な材料からなることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の移動体へのマーク形成方法。
【請求項8】
上記第1の波長の光のパルス幅が200ns以下であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の移動体へのマーク形成方法。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれかに記載のマーク形成方法により形成されたマークを少なくとも一部に有することを特徴とするマーク付き移動体。
【請求項10】
請求項1〜請求項8のいずれかに記載のマーク形成方法により形成されたマークを少なくとも一部に有することを特徴とする無端ベルト。
【請求項11】
請求項1〜請求項8のいずれかに記載のマーク形成方法により形成されたマークを少なくとも一部に有することを特徴とする画像形成装置の紙搬送ベルト。
【請求項12】
請求項1〜請求項8のいずれかに記載のマーク形成方法により形成されたマークを少なくとも一部に有することを特徴とする画像形成装置の中間転写ベルト。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−139029(P2006−139029A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−328025(P2004−328025)
【出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】