説明

移動体情報装置および移動体情報プログラム

【課題】異なる道路を移動している移動体同士の衝突の誤判定を防止するとともに、衝突判定の処理負荷を低減する移動体情報装置および移動体情報プログラムを提供する。
【解決手段】自車200の走行方向前方の所定距離以内に交差点216が存在し自車200が交差点216を通過する場合、道路210を識別するインフラリンクIDおよび自車200の第1移動情報を送信するとともに、他車202、204から道路212、214のインフラリンクIDおよび第2移動情報を受信する。地図データと道路210、212、214のインフラリンクIDと第1移動情報と第2移動情報とから、道路210と道路212とは交差点を形成していないと判断し、自車200と他車202との衝突判定は行わない。道路210と道路214とは交差点216を形成しているので、自車200と他車204との衝突判定を実施する。衝突する場合には、適切な回避処理を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる道路を移動する移動体同士の衝突を判定するための移動体情報装置および移動体情報プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両同士の車車間通信により現在位置を含む互いの走行データを送受信し、異なる道路を走行している車両同士の衝突を判定することが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、自車が参照する地図データ上において他車が走行している道路を他車から送信された現在位置に基づいて識別することは困難である。特に、他車が走行している道路の近くに複数の道路が存在する場合、他車が走行している道路を他車の現在位置から識別することは困難である。
【0004】
そこで、特許文献1では、自車および他車の現在位置、操舵角、車速等の現在の走行データに基づいて所定時間経過後の車両の予測位置を算出し、算出した予測位置により車両同士の衝突を判定している。
【特許文献1】特開2000−207691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように走行データに基づいて算出した予測位置により車両同士の衝突を判定する場合、実際には交差点を形成していない道路を移動している車両同士であっても、車両同士の予測位置が近づくと車両同士が衝突すると判定することがある。
【0006】
実際には交差点を形成していないが車両同士の予測位置が近づく道路としては、立体交差の道路、トンネルとトンネルの上で交差している道路、高速道路のジャンクションまたはインターチェンジ等において一旦接近してから離れる道路等が考えられる。
【0007】
このように、実際には交差点を形成していない道路を移動している車両同士が衝突すると誤判定すると、誤判定した結果に基づいて誤った衝突の回避処理が車両に指示されるおそれがある。
【0008】
また、地図データ上において他車が走行している道路を識別できないので、実際には自車が移動している道路と交差点を形成していない道路を他車が移動している場合にも、走行データに基づいて自車および他車の予測位置を算出する。その結果、衝突判定の処理負荷が増加するという問題がある。
【0009】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、異なる道路を移動している移動体同士の衝突の誤判定を防止するとともに、衝突判定の処理負荷を低減する移動体情報装置および移動体情報プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明、ならびに請求項1に記載の移動体情報装置の各手段としてコンピュータを機能させるときの請求項10に記載の発明によると、移動体の移動方向前方の所定距離以内に交差点が存在する場合、地図データ上において移動体が移動している道路を識別する道路識別情報と、移動体の移動状態を示す移動情報とを送信する。
【0011】
尚、移動体が送信する送信データは、直接的に他の移動体に受信されてもよいし、中継局または中継ポイント等を経由して間接的に受信されてもよい。また、本発明において移動体とは、自動四輪車、自動二輪車、自転車、車いす、歩行者等、道路上を移動している移動体を表している。
【0012】
ここで、道路識別情報および移動情報を送信する送信移動体の移動方向前方の所定距離以内に交差点が存在しても、送信データを受信する受信移動体が移動している道路が送信移動体の移動している道路と交差点の近くで立体交差している場合がある。
【0013】
そこで、請求項1および請求項10に記載の発明によると、送信移動体が送信する送信データを受信する受信移動体において、送信移動体が移動している道路を他の道路から識別するために送信移動体が送信した道路識別情報から、受信移動体が参照する地図データ上において送信移動体が移動している道路を正確に識別できる。これにより、受信移動体の移動している道路が送信移動体の移動している道路と交差点を形成しているか否かを正確に判定することができる。
【0014】
その結果、例えば受信移動体の移動している道路が送信移動体の移動している道路と立体交差し交差点を形成していない場合、受信移動体において送信移動体と衝突すると誤判定することを防止できる。
【0015】
また、受信移動体の移動している道路が送信移動体の移動している道路と交差点を形成していない場合には、送信移動体と受信移動体との衝突判定をする必要がないので、受信移動体において衝突判定の処理負荷を低減できる。
【0016】
請求項2から9に記載の発明、ならびに請求項2から9に記載の移動体情報装置の各手段としてコンピュータを機能させるときの請求項10に記載の発明によると、地図データと、地図データ上において第1移動体が移動している第1道路を識別する第1道路識別情報と、第1道路を移動している第1移動体の移動状態を示す第1移動情報と、地図データ上において第2移動体が移動している第2道路を識別する第2道路識別情報と、第2道路を移動している第2移動体の移動状態を示す第2移動情報と、第1移動体の移動方向前方の所定距離以内に交差点が存在するかの判定結果とから、第1移動体と第2移動体とが衝突するかを判定する。
【0017】
このように、移動体が地図データ上においてどの道路を移動しているかを識別する道路識別情報を移動体同士の衝突判定に用いるので、第1移動体が移動している第1道路と第2移動体とが移動している第2道路とが交差点を形成しているのか、第1道路と第2道路とが交差点を形成していないのかを正確に判定することができる。
【0018】
これにより、実際には交差点を形成していない道路を走行している移動体同士が衝突すると誤判定することを防止できる。
また、第1移動体の移動している第1道路と第2移動体の移動している第2道路とが交差点を形成していない場合には、第1移動体と第2移動体との衝突判定をする必要がないので、第1移動体において衝突判定の処理負荷を低減できる。
【0019】
請求項3に記載の発明によると、第1道路識別情報および第1移動情報を送信する送信手段をさらに備える。
これにより、第1移動体が送信する第1道路識別情報および第1移動情報を受信する第2移動体において、第1移動体が移動している第1道路を地図データ上において正確に識別できる。その結果、第1移動体が送信する第1道路識別情報および第1移動情報を受信する第2移動体において、実際には交差点を形成していない道路を走行している移動体同士が衝突すると誤判定することを防止できる。
【0020】
また、第1移動体の移動している第1道路と第2移動体の移動している第2道路とが交差点を形成していない場合には、第1移動体と第2移動体との衝突判定をする必要がないので、第2移動体において衝突判定の処理負荷を低減できる。
【0021】
請求項4に記載の発明によると、第1移動体が移動方向前方の交差点に達するまでに停止する場合、送信手段は第1道路識別情報および第1移動情報を送信せず、衝突判定手段は衝突判定を行わない。
【0022】
第1移動体が移動方向前方の交差点に達するまでに停止する場合には、交差点において第1移動体が第2移動体と衝突する可能性はないと判断できる。したがって、第1移動体が交差点を通過せず交差点に達するまでに停止する場合、第1移動体から第1道路識別情報および第1移動情報を送信する処理、ならびに第1移動体と第2移動体との衝突判定処理を略できる。
【0023】
請求項5に記載の発明のように、少なくとも第1移動体の位置、移動方向および移動速度を第1移動情報とし、少なくとも第2移動体の位置、移動方向および移動速度を第2移動情報としてもよい。
【0024】
請求項6に記載の発明によると、地図データにおいて道路を構成するリンクごとに付与されるリンクID(以下、「道路リンクID」という。)を第1道路識別情報および第2道路識別情報としている。
【0025】
第1移動体および第2移動体の参照する地図データにおいて道路リンクIDが同じ規格で付与されていれば、道路リンクIDから第1移動体および第2移動体が移動している道路を識別できる。また、第1移動体と第2移動体とが参照する地図データにおいて道路リンクIDの規格が異なる場合であっても、例えば道路リンクIDを変換することができれば、道路リンクIDから第1移動体および第2移動体が移動している道路を識別できる。
【0026】
請求項7に記載の発明によると、第1道路および第2道路に設置されたVICS(Vehicle Information and Communication System;登録商標)等の道路設備から提供されるインフラリンクIDを第1道路識別情報および第2道路識別情報としている。
【0027】
インフラリンクIDの規格は標準化されているので、第1移動体と第2移動体とが異なる地図データを参照していても、地図データ上において第1移動体および第2移動体が実際に移動している道路をインフラリンクIDから識別できる。
【0028】
また、インフラリンクIDは、第1移動体および第2移動体が実際に移動している道路の道路設備から提供されるので、第1移動体および第2移動体が移動している道路に近接して他の道路が存在している場合にも、第1移動体および第2移動体が移動している道路を正確に識別できる。
【0029】
請求項8に記載の発明によると、第1移動体と第2移動体とが衝突する場合、第1移動体と第2移動体との衝突を回避する回避手段をさらに備える。これにより、第1移動体と第2移動体との衝突を回避することができる。
【0030】
請求項9に記載の発明によると、第1移動情報および第2移動情報は、第1移動体および第2移動体の位置をマップマッチングするときのマッチング率を含んでおり、回避手段はマッチング率に応じた回避処理を実施する。
【0031】
例えば、マップマッチングのマッチング率が高いときには移動体の位置情報の信頼性が高く、マップマッチングのマッチング率が低いときには移動体の位置情報の信頼性が低いと考えられる。したがって、マッチング率の高低に応じて適切な回避処理を実施することが望ましい。例えば、マッチング率が高いときには、車両の場合、ブレーキ等の制動装置を駆動して交差点への進入速度を低下し、マッチング率が低いときには音または表示により衝突を警告し、さらにマッチング率が低いときには、衝突判定を行わないといったマッチング率に応じた適切な回避処理を実施する。
【0032】
送信移動体が移動している道路を他の道路から識別するために送信移動体が送信した道路識別情報から、受信移動体が参照する地図データ上において送信移動体が移動している道路を正確に識別できる。これにより、受信移動体の移動している道路が送信移動体の移動している道路と交差点を形成しているか否かを正確に判定することができる。
【0033】
その結果、例えば受信移動体の移動している道路が送信移動体の移動している道路と立体交差し交差点を形成していない場合、受信移動体において送信移動体と衝突すると誤判定することを防止できる。
【0034】
また、受信移動体の移動している道路が送信移動体の移動している道路と交差点を形成していない場合には、送信移動体と受信移動体との衝突判定をする必要がないので、受信移動体において衝突判定の処理負荷を低減できる。
【0035】
尚、請求項1から9に記載の発明に備わる複数の手段の各機能は、構成自体で機能が特定されるハードウェア資源、プログラムにより機能が特定されるハードウェア資源、またはそれらの組み合わせにより実現される。また、これら複数の手段の各機能は、各々が物理的に互いに独立したハードウェア資源で実現されるものに限定されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
本発明の一実施形態によるカーナビゲーション装置の概略構成を示すブロック図を図1に示す。自車200(図2参照)内に搭載される移動体情報装置としてのカーナビゲーション装置10は、位置検出部12、地図データ格納部14、メモリ部16、表示部18、スイッチ情報入力部20、音声出力部22、データ通信部24、および走行制御部26などを、マイコンを主体としているカーナビゲーションECU(以下、単に「ECU」という。)30に接続して構成されている。
【0037】
位置検出部12は、周知のように、GPS衛星からの電波に基づいて車両の位置情報を得るために用いられるGPSセンサや、ジャイロセンサ、車速センサなどから構成され、車両の現在位置、走行方向、高度などを高精度に検出する部分である。
【0038】
地図データ格納部14は、地図データやそれに付随する目的地検索用のデータ(目的地データや所謂タウンページデータなど)、ならびに合成音声データなどの各種データを記録した地図データの記録媒体からデータを読み込むためのドライブ装置を有している。地図データの記録媒体としては、CD、DVD、HD(ハードディスク)などの大容量記録媒体が用いられる。
【0039】
地図データは、道路データ群、建造物データ群、地形データ群などを含むとともに、表示部18の画面上に地図を再生するためのデータ、さらには、主要な地名や建造物名などを文字表示するための文字データを含んで構成されている。
【0040】
地図データにおいて道路は、ノードとノードを結ぶリンクとして定義されている。ノードデータは、ノードの識別番号であるノードIDと、ノードの座標、ノードに接続される全リンクの道路リンクID、ノード種別(交差点、合流地点等の種別)などのノードの特性情報からなるデータである。リンクデータは、リンクの識別番号である道路リンクID、リンク長、始点および終点に接続する各ノードのノードID、高速道路、有料道路、一般道路等の道路種別、道路形状、道路幅員、道路名、車線数、リンク走行時間、法定制限速度、道路の勾配等の各データから構成されている。
【0041】
メモリ部16は、例えばROM、RAM、およびフラッシュメモリ等のEEPROMを含んで構成されている。ROMにはカーナビゲーションに係るプログラムが格納されることもある。移動体である車両同士の衝突を判定する移動体情報プログラムは、カーナビゲーションプログラムに含まれている。
【0042】
ワーキングエリアとして機能するRAMには地図データ格納部14から取得した地図データなどが一時的に格納され、EEPROMには電源遮断時にも保持が必要なデータ(車両情報など)が格納されるようになっている。
【0043】
表示部18は、例えばフルカラー液晶ディスプレイから成り、通常時には、車両の現在地周辺の地図が選択設定された縮尺で画面に表示されるとともに、その表示に重ね合せて車両の現在位置および走行方向を示す現在地マークが選択的に表示されるようになっている。また、表示部18には、搭乗者が目的地などの各種の入力を行なうための入力用画面や、各種のメッセージなども表示されるようになっている。
【0044】
スイッチ情報入力部20は、詳しく図示はしないが、表示部18の画面近傍に設けられたメカスイッチや、表示部18の画面上に設けられたタッチパネルを含んでおり、搭乗者は、それらスイッチ情報入力部20を用いて、経路案内動作のための目的地の設定や、表示部18に表示される道路地図の縮尺の選択などの各種のコマンドを入力できるようになっている。尚、必要に応じて、このスイッチ情報入力部20と同等の機能を有するリモコンが設けられることもある。
【0045】
音声出力部22は、地図データ格納部14から得られる合成音声データに基づいて、経路案内時における音声ガイドや、操作説明の音声ガイド等の各種音声または案内等を出力する前に運転者に注意を促す単音等を出力するようになっている。また、音声出力部22は、自車200と他車202、204とが衝突すると判定されたときに、音声または警告音で衝突を知らせることもある。
【0046】
データ通信部24は、外部装置との間での双方向通信機能を備えたものであり、例えばパケット通信機、携帯電話機、自動車電話機などから構成されている。データ通信部24は、車両同士、車両と情報センター、あるいは車両と道路上に設置された中継ポイントとの間で通信を行う。
【0047】
走行制御部26は、自車200の走行状態に応じて自車200の走行状態を制御する。例えば、走行制御部26は、ブレーキ等の制動装置を駆動して自車200の走行速度を減速する。
【0048】
ECU30は、地図データ取得部32、マップマッチング部34、経路計算部36、経路案内部38、描画部40、画面制御管理部42、通信制御部44、衝突判定部46の各処理部の機能を実現するソフトウエア構成になっている。また、メモリ部16またはHD等に格納されている移動体情報プログラムは、特許請求の範囲に記載された道路識別情報取得手段、移動情報取得手段、第1道路識別情報取得手段、第1移動情報取得手段、第2道路識別情報取得手段、第2移動情報取得手段、交差点判定手段、衝突判定手段、送信手段、受信手段、通過判定手段、回避手段としてECU30を機能させる。
【0049】
地図データ取得部32は、上記各処理部での処理動作に必要となる地図データを地図データ格納部14から取得して各処理部に提供する。
マップマッチング部34は、位置検出部12により検出された車両の現在位置情報、ならびに地図データ格納部14から取得した地図データの道路形状データなどに基づいて、車両の現在位置がどの道路上に存在するかを識別する。マップマッチング部34は、VICS等の道路設備から道路識別情報としてのインフラリンクIDを取得することにより、自車200が地図データ上のどの道路上に存在するかを正確に識別できる。
【0050】
経路計算部36は、マップマッチング部34で算出された現在位置あるいは搭乗者がスイッチ情報入力部20を通じて指定した出発地から、搭乗者によりスイッチ情報入力部20を通じて指定された目的地までの適切な経路を、指定された条件(例えば有料道路優先、一般道優先、距離優先など)にしたがって計算(探索)するものであり、その手法としては、周知のダイクストラ法などが用いられる。
【0051】
経路案内部38は、経路計算部36により計算された目的地までの経路情報、ならびに地図データ格納部14を通じて取得した地図データ内に含まれる道路形状情報または交差点および踏切などの位置情報などから、表示部18の画面表示や音声出力部22による音声ガイドによる案内動作(例えば交差点での右左折の案内、踏切がある旨の注意案内など)に必要な経路案内データを作成するようになっている。
【0052】
描画部40は、画面制御管理部42の指示に従って、現在位置などを示すための各種縮尺の道路地図や、高速道路の略図、交差点付近の拡大図などをビデオRAMに描画(記録)し、表示部18の画面に表示する。それら地図は、地図データ取得部32によって取得された地図データに基づいて描画されるものであり、地図データ中の文字データに基づいて主要な地名や建造物名なども文字表示するようになっている。また、経路案内時には、現在位置および目的地を地図中に表示するとともに、走行すべき経路を他と異なる色で表示し、さらに各種ランドマークなども表示するようになっている。
【0053】
ここで、カーナビゲーション装置10を車両に搭載した状態では、その車両についての全高、車両重量、車幅、積載物を含む高さ、積載物の重量や搭乗者の重量などの車両情報を入力してカーナビゲーション装置10側に記憶させるという初期設定操作が必要となるものである。このような初期設定操作を行うために、画面制御管理部42は、表示部18に車両情報入力画面を表示する。この入力画面を通じて入力された車両情報はメモリ部16内のEEPROMに記憶されるようになっている。
【0054】
通信制御部44は、データ通信部24を通じて自車200と他車202、204、自車200とセンター、あるいは自車200とVICS等の道路設備との通信制御を行うためのものである。
【0055】
衝突判定部46は、地図データと、自車200と他車202、204との走行状態と、自車200と他車202、204とが走行している道路の道路リンクIDまたはインフラリンクID等の道路識別情報とから、自車200と他車202、204とが衝突するかを判定するものである。
【0056】
以上のような構成により、ECU30による処理動作を中心として、表示部18の画面に車両の現在位置を道路地図に重ね合せて表示するロケーション機能、搭乗者が設定した目的地までの最適な経路を求めて案内する経路探索及び経路案内の機能が実現されるようになっている。さらに、自車200と他車202、204との衝突判定が実現されるようになっている。
【0057】
(衝突判定)
次に、移動体同士の衝突判定について、自動四輪車を例にして説明する。
図2に示すように、自車200が道路210を走行し、自車200の走行方向前方の所定距離以内に道路212、214が道路210と交差している場合を考えてみる。道路212は道路210と立体交差しており、道路214は道路210と接続し交差点216を形成している。
【0058】
他車202は道路212が道路210と立体交差している方向に走行しており、他車204は交差点216に向けて走行している。
図2に示す自車200の位置から交差点216までの前述した所定距離は、自車200の速度および加速度に基づいてマップ等から設定された距離である。図3に、自車(車両A)200と他車(車両B)202、204との車車間通信の手順について簡単に説明する。図3および後述する図4において「S」はステップを表している。
【0059】
図3に示すように、S300において自車200は、自車200の現在位置情報を送信する。現在位置情報としては、VICSから提供された自車200が走行している道路210を識別するインフラリンクID、マップマッチングにより検出した自車200の位置、自車200の走行方向、走行速度、加速度、交差点216までの距離等である。自車200の位置、走行方向、走行速度、加速度、交差点216までの距離は、特許請求の範囲に記載した第1移動情報に該当する。
【0060】
S302において自車200は、S314において他車202、204が送信した他車202、204の現在位置情報を受信する。現在位置情報としては、VICSから提供された他車202、204が走行している道路212、214を識別するインフラリンクID、マップマッチングにより検出した他車202、204の位置、他車202、204の走行方向、走行速度、加速度等である。他車204の場合は、現在位置情報として交差点216までの距離を送信してもよい。他車202、204の位置、走行方向、走行速度、加速度は、特許請求の範囲に記載した第2移動情報に該当する。
【0061】
S304において自車200は、地図データと、自車200が移動している道路210のインフラリンクIDと、自車200の第1移動情報と、他車202、204が移動している道路212、214のインフラリンクIDと、他車202、204の第2移動情報とから、自車200と他車202、204との衝突を判定する。
【0062】
一方、S310において他車202、204は、S300において自車200が送信した現在位置情報を受信する。
S312において他車202、204は、地図データと、自車200が移動している道路210のインフラリンクIDと、自車200の第1移動情報と、他車202、204が移動している道路212、214のインフラリンクIDと、他車202、204の第2移動情報とから、自車200と他車202、204との衝突を判定する。
【0063】
S314において他車202、204は、他車202、204の現在位置情報を送信する。
次に、衝突判定について図4のフローチャートに基づいて詳細に説明する。図4の衝突判定ルーチンは、自車200の位置を検出するタイミングで実施される。
【0064】
図4のS320においてECU30は、自車200の現在位置および走行方向を位置検出部12等から取得し、自車200の走行方向前方の所定距離以内に交差点が存在するかを判定する。ECU30は、交差点が存在しなければ衝突判定を行わず本ルーチンを終了する。
【0065】
自車200の走行方向前方の所定距離以内に交差点が存在するかは、地図データにおいて、自車200の走行方向前方の所定距離以内に交差点を示すノード種別を有するノードが存在するか否かで判定する。
【0066】
自車200の走行方向前方の所定距離以内に交差点が存在する場合、S322においてECU30は、自車200が走行している道路210のインフラリンクIDをVICSから取得するとともに、自車200の現在位置、走行方向に加え、交差点216までの距離、自車200の速度、加速度、自車200が現在位置をマップマッチングするときのマッチング率等からなる第1移動情報を位置検出部12およびマップマッチング部34から取得する。
【0067】
S324においてECU30は、現在の自車200の速度、加速度および交差点216までの距離から、自車200が交差点216に達するまでに停止せずに通過するかを判定する。交差点216に達するまでに自車200が停止する場合、ECU30は自車200が他の車両と衝突しないと判断し本ルーチンを終了する。
【0068】
自車200が交差点216を通過する場合、S326においてECU30は、道路210のインフラリンクID、ならびに自車200の現在位置、走行方向、交差点216までの距離、自車200の速度、加速度、自車200が現在位置をマップマッチングするときのマッチング率等の第1移動情報を現在位置情報としてデータ通信部24から送信する。
【0069】
次に、S328においてECU30は、他車202、204から、道路212、214のインフラリンクID、ならびに他車202、204の現在位置、走行方向、交差点216までの距離(他車202の場合は交差点216までの距離は送信されない)、他車202、204の速度、加速度、他車202、204が現在位置をマップマッチングするときのマッチング率等からなる第2移動情報を現在位置情報としてデータ通信部24から受信する。
【0070】
S330においてECU30は、地図データと、道路210、212、214のインフラリンクIDから、道路210と道路212、214とが実際に接続し交差点を形成しているかを判定する。自車200の走行方向前方に交差点は存在するが、道路210と道路212、214の両方とが交差点を形成していない場合、自車200と他車202、204とは衝突しないと判断しECU30は本ルーチンを終了する。
【0071】
図2では、他車202が走行している道路212は自車200が走行している道路210と立体交差しているが交差点は形成していない。したがって、ECU30は自車200と他車202とが衝突しないと判断し、S332において自車200と他車202との衝突判定を行わない。
【0072】
本実施形態では、道路210と交差点を形成しない道路212を走行している他車202もインフラリンクIDおよび第2移動情報を送信するものとして説明している。これに対し、他車202の側でも自車200と同じ移動体情報プログラムで機能する移動体装置を搭載し、走行方向前方の所定距離以内に交差点が存在しない場合に、インフラリンクIDおよび第2移動情報を送信せず衝突判定を実施しない衝突判定処理を行ってもよい。この場合、自車200は他車204からだけインフラリンクIDおよび第2移動情報を受信する。
【0073】
一方、他車204が走行している道路214は自車200が走行している道路210と交差点216を形成している。そこでS332においてECU30は、交差点216を形成している道路210、214をそれぞれ走行している自車200と他車204とが交差点216に同時に進入するか、つまり自車200と他車204とが交差点216で衝突する可能性があるかを判定する。この判定は、速度、加速度、交差点216までの距離に基づき現在位置から自車200および他車204が交差点216に進入する時間を算出し、自車200および他車204がほぼ同時刻に交差点216に進入するかを判定することにより行う。自車200と他車204とが交差点216で衝突する可能性がない場合、ECU30は本ルーチンを終了する。
【0074】
自車200と他車204とが交差点216で衝突する可能性がある場合、S334においてECU30は、自車200および他車204のマッチング率を判定する。
自車200および他車204のマッチング率が所定値よりも高い場合、自車200と他車204とが交差点216で衝突する信頼性が高いと判断し、ECU30は、走行制御部26を駆動してブレーキをかける。これにより、自車200の走行速度を減速し、交差点216において他車204との衝突を回避する。
【0075】
自車200または他車204のマッチング率が所定値以下の場合、自車200と他車204とが交差点216で衝突する信頼性が低いと判断し、ECU30は、表示部18に衝突を警告するメッセージを表示させるか、あるいは音声出力部22から衝突を警告する音を出力させ、本ルーチンを終了する。
【0076】
自車200または他車204のマッチング率が所定値よりも非常に低い場合、ECU30はブレーキまたは警告等の回避処理を実施せず本ルーチンを終了してもよい。
以上説明したように、他車202、204が走行している道路212、214を識別する道路識別情報を自車200が受信することにより、自車200において、他車202、204が走行している道路212、214を地図データ上で正確に識別できる。
【0077】
これにより、自車200が走行している道路210と他車202、204が走行している道路212、214とが、自車200の走行方向前方の所定距離以内で交差点を形成しているか否かを正確に判定できる。
【0078】
その結果、例えば自車200と他車202とのように、交差点を形成していない道路を走行している車両同士が衝突すると誤判定することを防止できる。また、自車200が走行している道路210と交差点を形成していない道路212を走行している他車202と自車200との衝突判定を実施しないことにより、衝突判定の処理負荷を低減できる。
【0079】
ところで、道路同士は一旦接近するが交差点を形成しない例として図2では道路210と道路212とが形成する立体交差を挙げた。これ以外にも、例えば高速道路のジャンクションまたはインターチェンジの道路が一旦接近するが交差点を形成しない例として考えられる。このような道路においても、交差点を形成していない道路を走行している車両同士が衝突すると誤判定することを防止できる。また、交差点を形成していない道路を走行している車両同士の衝突判定を実施しないことにより、衝突判定の処理負荷を低減できる。
【0080】
また、本実施形態では、道路識別情報から他車204が走行している道路を正確に識別できるので、道路214を走行している他車204が交差点216に進入する時刻を、他車204と交差点216までの距離、他車204の速度および加速度等から容易に算出できる。これにより、衝突判定の処理負荷が低減する。
【0081】
一方、他車202、204においても、自車200が走行している道路210を識別する道路識別情報を受信することにより、自車200が走行している道路210を地図データ上で正確に識別できる。
【0082】
[他の実施形態]
上記実施形態では、カーナビゲーション装置10が移動体情報装置を兼ねた構成について説明した。これに対し、移動体の衝突を判定する専用の移動体情報装置をカーナビゲーション装置とは別に構成してもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、自車200の道路識別情報および移動情報を送信し、他車202、204の道路識別情報および移動情報を受信して車両同士の衝突を判定した。これに対し、自車200の道路識別情報および移動情報を送信せず、他車202、204の道路識別情報および移動情報だけを受信して車両同士の衝突を判定してもよい。また、自車200の道路識別情報および移動情報を送信はするが、他車202、204の道路識別情報および移動情報は受信せず、自車200では衝突判定をしない構成でもよい。この場合、他車202、204が衝突判定を実施し、適切な回避処理を行う。
【0084】
上記実施形態では、道路を識別するための道路識別情報としてVICS等の道路設備から提供される情報を使用した。これに対し、移動体が地図データに基づいてマップマッチングした現在位置から地図データ上において道路リンクIDを取得し、取得した道路リンクIDを道路識別情報として使用してもよい。道路リンクIDを道路識別情報として使用する場合、異なる移動体の地図データにおいて道路リンクIDが同じ規格で設定されている必要がある。
【0085】
また、上記実施形態では、第1移動体である自車200の位置、走行方向、走行速度、加速度、交差点216までの距離、マップマッチングにおけるマッチング率を第1移動情報とし、第2移動体である他車202、204の位置、走行方向、走行速度、加速度、交差点216までの距離(他車204の場合)、マップマッチングにおけるマッチング率を第2移動情報とした。これに対し、本発明では、少なくとも各移動体の位置、移動方向および移動速度が第1移動情報、第2移動情報として採用されればよい。
【0086】
また、車両同士の衝突判定に限らず、自転車、車いす、または歩行者等の移動体と他の移動体との衝突判定を実施するために本発明の移動体情報装置を使用してもよい。
このように本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本実施形態のカーナビゲーション装置を示すブロック図。
【図2】道路の交差状態を示す説明図。
【図3】車車間通信の手順を示す概略フローチャート。
【図4】衝突判定を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0088】
10:カーナビゲーション装置(移動体情報装置)、30:ECU(道路識別情報取得手段、移動情報取得手段、第1道路識別情報取得手段、第1移動情報取得手段、第2道路識別情報取得手段、第2移動情報取得手段、交差点判定手段、衝突判定手段、送信手段、受信手段、通過判定手段、回避手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体同士の衝突を判定するための移動体情報装置において、
地図データ上において移動体が移動している道路を識別する道路識別情報を取得する道路識別情報取得手段と、
前記移動体の移動状態を示す移動情報を取得する移動情報取得手段と、
前記地図データに基づき前記移動体の移動方向前方の所定距離以内に交差点が存在するかを判定する交差点判定手段と、
前記移動体の移動方向前方の所定距離以内に前記交差点が存在する場合、前記道路識別情報および前記移動情報を送信する送信手段と、
を備えることを特徴とする移動体情報装置。
【請求項2】
移動体同士の衝突を判定するための移動体情報装置において、
地図データ上において第1移動体が移動している第1道路を識別する第1道路識別情報を取得する第1道路識別情報取得手段と、
前記第1移動体の移動状態を示す第1移動情報を取得する第1移動情報取得手段と、
前記地図データ上において第2移動体が移動している第2道路を識別する第2道路識別情報、ならびに前記第2移動体の移動状態を示す第2移動情報を受信する受信手段と、
前記地図データに基づき前記第1移動体の移動方向前方の所定距離以内に交差点が存在するかを判定する交差点判定手段と、
前記地図データと前記第1道路識別情報と前記第1移動情報と前記第2道路識別情報と前記第2移動情報と前記交差点判定手段の判定結果とから前記第1移動体と前記第2移動体とが衝突するかを判定する衝突判定手段と、
を備えることを特徴とする移動体情報装置。
【請求項3】
前記第1道路識別情報および前記第1移動情報を送信する送信手段をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の移動体情報装置。
【請求項4】
前記第1移動体の移動方向前方の所定距離以内に前記交差点が存在する場合、前記第1移動体が前記交差点を通過するかを判定する通過判定手段をさらに備え、
前記第1移動体が前記交差点に達するまでに停止すると前記通過判定手段が判定すると、前記送信手段は前記第1道路識別情報および前記第1移動情報を送信せず、前記衝突判定手段は衝突判定を行わないことを特徴とする請求項3に記載の移動体情報装置。
【請求項5】
前記第1移動情報は少なくとも前記第1移動体の位置、移動方向および移動速度であり、前記第2移動情報は少なくとも前記第2移動体の位置、移動方向および移動速度であることを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の移動体情報装置。
【請求項6】
前記第1道路識別情報および前記第2道路識別情報は前記地図データにおいて道路を構成するリンクごとに付与される道路リンクIDであることを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の移動体情報装置。
【請求項7】
前記第1道路識別情報および前記第2道路識別情報は前記第1道路および前記第2道路に設置された道路設備から提供されるインフラリンクIDであることを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の移動体情報装置。
【請求項8】
前記第1移動体と前記第2移動体とが衝突すると前記衝突判定手段が判定する場合、前記第1移動体と前記第2移動体との衝突を回避する回避手段をさらに備えることを特徴とする請求項2から7のいずれか一項に記載の移動体情報装置。
【請求項9】
前記第1移動情報および前記第2移動情報は、前記第1移動体および前記第2移動体の位置をマップマッチングするときのマッチング率を含み、
前記回避手段は、前記マッチング率に応じた回避処理を実施することを特徴とする請求項8に記載の移動体情報装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の各手段としてコンピュータを機能させることを特徴とする移動体情報プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−9219(P2009−9219A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−167718(P2007−167718)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】