説明

移動体用絶縁式給電装置

【課題】 移動体が移動中に移動体に給電することが可能な、小型軽量な非接触給電装置を提供する。特に、バッテリーを動力とする自走式台車のバッテリー充電を電気的に絶縁状態を保ったまま行う非接触給電装置を提供する。
【解決手段】 電磁誘導を利用して地上の一次側コイル1からこれに対向する二次側コイル2を介して移動体20のバッテリー41を充電する給電装置であって、一次側コイル1はE字形断面をもつ3突極形磁性体の磁極に三相巻線を施したもので三相の磁極を移動体の移動軌跡に対して垂直の方向に配置したものを各相毎に移動軌跡に沿って適切な間隔を空け等しいピッチで複数個配置する。
さらに、移動体20に搭載される二次側コイル2も一次側と同様の3突極型磁性体の磁極に三相巻線を施したもので磁極の移動体移動方向の長さが一次側コイル1の磁極の移動方向ピッチに等しくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーを動力とする自走式台車設備のバッテリーに充電する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッテリーを動力とする自走式台車(AGV)設備は、一般に、直流12V、24V、36V、48V、ないし96Vの低圧架線に対してコレクタシューを接触させて取電する直接給電方式によりバッテリーを充電してきた。しかし、直接給電方式では、供給電圧が低いため大電流を流すことになり、架線部分やコレクタ部分の損耗が激しく、保守が煩雑であった。また、絶縁していない架線を介して給電するため、露出した充電部分からの漏電が避けられず、安全の確保が難しかった。
【0003】
これに対して、電磁誘導を利用した給電装置を使うと給電装置と受電装置の間を絶縁状態にして非接触で給電することができる。
特許文献1には、無人工場等において、フロアやレールなどの固定体に沿って走行する走行台車に給電する方法が開示されている。移動体にコイルを巻いた鉄心を設け、移動体が停止する位置にコイルを巻いた鉄心を配置し、固定体のコイルに通電することにより移動体に電力を供給するものである。
開示方法では、移動体は給電装置と非接触で充電することができるが、移動体を給電場所に停止させて給電する必要がある。
【0004】
特許文献2には、移動体の移動中に非接触で給電する技術が開示されている。開示技術によれば、移動体の経路に沿って給電区間と無給電区間を交互に設定し、給電区間に給電制御手段を備えた一次側コイルを敷設し、移動体に二次側コイルを備えて、移動体が給電区間を走行している間だけ一次側コイルに電流を流して、電磁誘導により非接触で移動体に電力を供給することができる。
開示技術では、給電区間に移動体が存在する間は一次側コイルに通電するため、移動体が給電区間に対して小さいときには、漏れ磁束により大きな損失が発生する。また、周囲の導体に渦電流を発生させて過熱するなどの悪影響を及ぼす可能性がある。
【0005】
特許文献3には、リニアモーター駆動の搬送装置が開示されている。ここで、移動体にリニアモーターの2次導体を設け、走行経路側にリニアモーター本体を配設してなる搬送装置において、リニアモータ本体に対面する誘導コイルを移動体に取り付け、被搬送物の積み降ろし位置に停止したときあるいは走行中に誘導コイルに誘起される三相交流電圧を整流してバッテリーを充電して、駆動用動力以外の移動体内電力需要に応えるようにしたものが開示されている。
リニアモーター駆動の搬送装置では、駆動用リニアモーターの一次側コイルが走行方向に並べられた櫛歯状コアにY結線された三相誘導コイルが一部重なって1相ずつシフトするように形成されている。開示発明は、この一次側コイルをそのまま転用して制御回路用のバッテリー充電を行う。一次側コイルは移動体を駆動する容量を持っているので、制御用電源としては一次側コイルの一部を利用するだけで十分である。
【0006】
特許文献4には、定軌道上を走行する無人搬送車に非接触で動力用電力を給電する装置が開示されている。開示発明の非接触給電装置は、軌道に沿って多数配置されスイッチで断接できる一次側コイルと移動体に設けた二次側コイルを備え、二次側コイルと対向する一次側コイルを交流電源に接続して二次側コイルに電流を誘起させる。
移動体側に設けられた下向きコ字形の二次鉄心の対向面は、軌道側の隣り合わせた2個の一次鉄心を覆う大きさとなっている。
開示装置によれば、機械的に非接触で効率的な給電が可能となる。
しかし、移動体が軌道に沿って移動する間に一次鉄心と二次鉄心が対向して重なる面積が変動するので、移動中に励磁電流の大きさが変化する。
【特許文献1】特開平3−289302号公報
【特許文献2】特開平7−067206号公報
【特許文献3】特開平3−007002号公報
【特許文献4】実開平6−066201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、移動体が移動中に移動体に給電することが可能な、小型軽量な非接触給電装置を提供することである。特に、バッテリーを動力とする自走式台車のバッテリー充電を電気的に絶縁状態を保ったまま行う非接触給電装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の非接触給電装置は、電磁誘導を利用して地上の一次側コイルからこの一次側コイルに対向する二次側コイルを介して移動体のバッテリーを充電する給電装置であって、一次側コイルはE字形断面をもつ3突極形磁性体の磁極に三相巻線を施したもので3個の磁極を移動体の移動軌跡に対して垂直の方向に配置したものを各相毎に移動軌跡に沿って等しいピッチで複数個配置する。
さらに、移動体に搭載される二次側コイルも一次側コイルと同様の3突極形磁性体の磁極に三相巻線を施したもので磁極の移動体移動方向の長さが一次側コイルの磁極の移動方向ピッチに等しくなっている。
【0009】
また、一次側コイルはスイッチを介して三相交流電源に接続され、一次側コイルの磁極と二次側コイルの磁極の重なり状態を検出する重なりセンサを備えて、重なりセンサが両磁極の重なりを検出するとスイッチを投入して一次側コイルに通電させ、両磁極が離れていることを検出するとスイッチを開放して一次側コイルの電源との接続を遮断するようになっている。
【0010】
本発明によれば、移動体の移動軌跡に沿って一次側コイルが並んでいるので、移動体の二次側コイルが一次側コイルの列に沿って移動する間に、電磁誘導により非接触で二次側コイル内に電流を誘起して非接触でエネルギーを伝達することができる。
なお、本発明の非接触給電装置は、三相交流式の磁気回路を使用するため、出力電力KVAを鉄芯体積mで割った出力容量比が増大する。
【0011】
また、二次側コイルの磁極の長さが一次側コイルのピッチに等しいため、二次側コイルが移動中であっても二次側コイルと鎖交する磁束は変わらず、移動中でも二次側コイルへの給電は途切れることなく、また二次側コイルの出力変動を抑制することができる。
さらに、一次側コイルは二次側コイルが磁極に対向する位置に存在するときのみ通電するので、対向コイルが不在で空間に放散する漏れ磁束の発生を抑制して効率よい運転が可能である。
【0012】
本発明において、一次側コイルと二次側コイルは移動方向に平行な側面に磁気シールドを施すことが好ましい。また、これらコイルは、表面に樹脂カバーを施して密封することが好ましい。
移動体の移動方向が水平方向である場合は、一次側コイルと二次側コイルの上下面に磁気シールドを施すことにより、周囲への漏れ磁束を遮断して安全を確保することができる。
また、コイル表面に樹脂カバーを施して密封したものは、たとえば水際でバッテリー充電する場合など、水が掛かっても悪影響を受ける心配がない。
【0013】
スイッチは、電磁開閉器と抵抗器を並列に接続することで構成することが好ましい。
GTOなどの半導体スイッチを利用しようとしても遮断すべき電流に見合う周波数の遮断信号を必要とする型式のものでは、遮断すべき一次側コイルの入力電源の周波数が400Hz程度と高い場合には追従することができない。このため、機械的な電磁開閉器を採用して、電源電流の周波数によらず電路を開閉するようにした。
【0014】
しかし、このスイッチは一次側コイルに供給される大電流を断続するので、特に電流を遮断するときに電極間にスパークが飛んだりして電磁開閉器の寿命が短くなる問題がある。
そこで、電磁開閉器に並列に抵抗器を接続して、電磁開閉器の解放時にはサージ電流を並列した抵抗器に流すことにより接点間のスパークを防止して、電子開閉器の寿命を延ばすことができる。
【0015】
さらに、三相交流電源は、外部の三相交流供給線に接続される整流回路、整流回路の直流出力を平滑化する平滑回路、平滑回路の出力を交流にする逆変換回路を備えたインバータであることが好ましい。
一次側コイルに流す交流は高周波である方が磁気飽和を生じ難く、コア鉄芯の断面積を小さくすることが可能となるため、装置の小型化・軽量化に適している。したがって、インバータを用いて50Hzや60Hzの交流をたとえば400Hzなど可能な限り高周波化して利用して効率化することが望ましい。
【0016】
また、インバータの整流回路の直流出力電力の測定値を取り込んで、取り込んだ直流出力電力測定値が所定の値より小さいときにバッテリー充電の終了と判定する制御装置を備えることが好ましい。
インバータ出力が一次側コイルを介して移動体のバッテリーを充電している場合は、インバータには充電電流に見合う電流が流れている。一方、バッテリー充電が終了して充電電流がなくなったときには、インバータには最小限の電流しか流れない状態になる。
【0017】
そこで、本願発明者らは鋭意研究の結果、充電電流の変化が最も見やすい形で観察される部位は整流回路の直流出力で、バッテリー充電が終了したときには平滑回路の作用で平滑化された直流部の電圧と直流電流から計算される直流出力電力が無負荷のときと同じ値になるので容易に判定できることを見出した。
本発明の給電装置では、インバータの整流器回路出力電圧と電流から計算される直流出力電力に基づいてバッテリー充電の完了を検知すると、一次側コイルへの電源供給を電磁開閉器で遮断することにより、バッテリーの過充電により生じる劣化や損耗を防ぐことができる。
【0018】
なお、本発明の一次側コイルを所定数配設してユニット化したものを、必要に応じて適当数、移動体の移動軌道に沿って並べることにより、不足する容量を補充したり複数の移動体を同時に充電したりすることができる。
このようなユニット化により、設計、製造、施工工程を簡単化して、費用効果の高い製品とすることができる。
【0019】
本発明によれば、移動体が移動中に移動体に給電することが可能な効率の良い非接触給電装置を提供することができる。
さらに、バッテリーを動力とする自走式台車のバッテリー充電を電気的に絶縁状態を保ったまま行う非接触給電装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を用いて、本発明の非接触給電装置の最良の形態を詳細に説明する。
図1は本実施例の非接触給電装置の主要部の概念を説明する斜視図、図2は平面図、図3は側面断面図、図4は本実施例における充電走行中の二次側コイル鎖交磁束を説明する図面、図5は給電装置を複数備えた給電ユニットを複数配設して構成したシステムを表すブロック図、図6は給電ユニットの回路構成を示すブロック図である。
【0021】
本実施例の非接触給電装置の基本的構成を図1から図3に示した。
本実施例の非接触給電装置は、充電ステーションで走行しながらバッテリー駆動式自走台車のバッテリーを充電する装置であって、電磁誘導を利用して給電側の一次側コイル1からこれに対向する自走台車側の二次側コイル2にエネルギー伝達してバッテリーを充電するものである。
本実施例の非接触給電装置は、背面をヨーク12,22で接続した3個の磁極11,21にそれぞれ三相交流の1相の巻線13,23を巻回して三相巻線を施したコイルを使用する。これにより、単相巻線と比較して出力容量比(出力電力KVAを鉄芯体積mで割った値)が高く効率の良い装置となる。
【0022】
給電側の一次側コイル1は地上に固定され、3個の磁極U,V,Wを自走台車の移動軌跡に対して垂直の方向に配置したものを移動軌跡に沿って等しいピッチPで複数個、たとえば6個配置したものを給電ユニット10としたものである。
自走台車に搭載される二次側コイル2は、給電側の一次側コイル1の各相に対応する位置に配置した3個の磁極u,v,wを備えたもので、磁極21の自走台車移動方向の長さD2が一次側コイルの磁極11の移動方向ピッチPに等しくなっている。
【0023】
自走台車の移動中に、一次側コイル1の磁極U,V,Wと二次側コイル2の同じ相の磁極u,v,wがそれぞれ対応している必要があるため、各相毎にそれぞれ同じ高さになるように構成される。
給電装置の前には自走台車用の案内レールや案内ガードを設けて、自走台車走行中に、一次側磁極U,V,Wと二次側磁極u,v,wの間に数mmから十数mmの空隙Gを保つようにして、安定にエネルギー伝達を行えるようにする。
【0024】
二次側コイル2には、電流・電圧を一定範囲内に保つ安定化回路を組み込んだバッテリー充電用の整流回路などを含む搭載ユニット26を内蔵する。
一次側コイル1と二次側コイル2は、上面と下面に磁気シールド14,24を配置して、周囲への漏れ磁束を遮断する。
また、磁極11,21の前面を含み周囲全体を樹脂15,25で覆って防水と防音をする。
【0025】
二次側コイル2の磁極21の長さD2が一次側コイル1の磁極11の移動方向ピッチPに等しいので、図4に示す通り、二次側コイル2の鎖交磁束は給電ユニット10を通過する間安定した量を維持する。
すなわち、二次側コイル2が給電ユニット10に進入し、最初の一次側コイル(1)の磁極11に鎖交し始める時点(X=0)では、二次側鎖交磁束は0%であり、二次側コイルの磁極21が最初の一次側コイル(1)の磁極11を完全にカバーする位置(X=D1)まで進むと100%になる。ここで、Xは二次側コイル2の中心位置の座標を表す。また、一次側コイル1の磁極11の移動方向長さをD1とする。
【0026】
その後、二次側コイル2が移動を続けて、磁極21の後端が最初の一次側コイル(1)の磁極11の後端より前方に進むようになるまでの間は、二次側鎖交磁束量は100%と変わらない。
磁極21の後端が最初の一次側コイル(1)の磁極11の後端から離れようとするときには、磁極21の先端が2番目の一次側コイル(2)の磁極11後端に達して、その後は二次側コイル2が移動するにつれて最初の一次側コイル(1)との鎖交磁束量が減少する分だけ2番目の一次側コイル(2)との鎖交磁束量が増加するため、二次側コイル2の磁極21に鎖交する磁束量は変わらない。
【0027】
このようにして、二次側コイル2の磁極21後端が最後の一次側コイル(n)の磁極後端から前方にずれ始めるまでは、鎖交磁束量は100%を維持する。
自走台車がさらに移動して、二次側コイル2の磁極21が最後の一次側コイル(n)の磁極11との重なりが減少し始めると、距離D1にわたって二次側コイル2の鎖交磁束も減少して、磁極21が一次側コイル1の磁極11から外れる位置(X=L+D2)で0%となって、二次側出力は停止する。
【0028】
ここで、Lは給電ユニット10の磁極端間距離である地上極長を表す。n個の磁極11から成る給電ユニット10の地上極長Lは、磁極同士の間隙dを使って、L=D1×n+d×(n−1)と表せる。
また、D2=D1+dであるから、二次側コイル2の磁極21の鎖交磁束が100%となる給電ユニット10の有効極長L2は、
L2=L+D2−2×D1=D1×(n−1)+d×n
となる。
【0029】
本実施例の非接触給電装置は、バッテリーの充電に必要な給電時間に合わせて、一次側磁極の構成を任意に設定することが可能であり、設計自由度の高い給電システムとなる。
たとえば、一次側コイルの磁極数nを6個、磁極長さD1を220mm、磁極ピッチPを340mmとすると、有効極長L2は1820mmとなり、給電中の自走台車の移動速度を0.5m/sと仮定すると、給電可能な時間は3.6秒となる。この時間で充電が完了しない場合は、給電ユニット10を自走台車の軌道に沿って必要数設置して充電時間を確保するようにすればよい。また、給電ユニット10を構成する一次側コイルの数を増減したり、自走台車の移動速度を調整したりすることにより充電時間を調整することもできる。
【0030】
図5はシステム全体の構成例を表すブロック図である。
走行エリアを走行していたバッテリー自走台車20は、適宜のタイミングで充電ステーション30に戻って、搭載しているバッテリー41を充電する。充電ステーション30には、たとえば4基の給電ユニット10が並んでいて、その前にガイドレールが設けられている。
バッテリー自走台車20は、ガイドレールに案内されて給電ユニット10の前を所定速度で移動する間、給電ユニット10の一次側コイルの磁極と自走台車20の二次側コイル2の磁極の間隙を、たとえば7mm±3mmなど、適当な値に保持して、確実にエネルギー伝達するようになっている。
【0031】
給電ユニット10にはそれぞれ一次電源装置31を介して最大400V/400Hzの電源が供給される。一次電源装置31は、インバータ32とスイッチ回路33と電流抑制抵抗器34を備えて、三相400V(50Hz/60Hz)の電源をインバータ32で最大400V/400Hzに変換して、スイッチ回路33を経由して一次側給電ユニット10の磁極に供給する。
本実施例では、バッテリー走行台車20は、48V(12V×4直列)のバッテリー41により走行する。
【0032】
図6は、給電ユニット10ごとの回路構成を示すブロック図である。1基の給電ユニット10には例えば6個など適宜のn個の一次側コイル1が1列に配設されている。
一次電源装置31は、インバータ32と無効電力抑制回路35と給電制御装置39で構成され、給電ユニット10に対して1式設備される。
【0033】
インバータ32は、整流回路36と平滑回路37と逆変換回路38から構成され、400V50Hz/60Hzの三相交流電源を入力して整流回路36で整流し、並列に接続された平滑回路37で直流化して、逆変換回路38で400Hzの三相交流電流に変換し、無効電力抑制回路35に供給する。
コイル間のエネルギー交換は周波数が高いほど効率が高く小型化ができるが、市販の汎用インバータで比較的容易に使えることを前提とすると、本実施例の条件を満たそうとすると現状では400Hz程度が適当である。したがって技術の高度化に伴いさらに高周波に変換するようにしてもよいことはいうまでもない。
【0034】
無効電力抑制回路35は、地上ユニットを構成する個々の一次側コイルに流れる電流を抑制するために挿入した抵抗器の有効・無効を電磁開閉器の操作により切り替える回路である。
無効電力抑制回路35は、n個の一次側コイル1ごとに設けられるスイッチ回路33とスイッチ回路33と並列に接続された電流抑制抵抗器34で構成され、1基のインバータ32から出力される最大三相400V/400Hzの電源を必要な一次側コイル1に分配する。
【0035】
一次側コイル1には磁極検出センサ40が設けられて、自走台車20の二次側コイル2の磁極が一次側コイル1の磁極と交絡していることを検知する。
各一次側コイル1の磁極がそれぞれ二次側コイル2の磁極と交絡するかしないかを検出した結果を示す検出信号は、給電制御装置39に伝達される。
給電制御装置39は、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)やボードコンピュータなどを使って構成し、インバータ32と無効電力抑制回路35の操作を行う。なお、給電制御装置39は100Vの単相交流により駆動される。
【0036】
給電制御装置39は、磁極検出センサ40の出力信号に基づいて、一次側コイル1の磁極と二次側コイル2の磁極が交絡状態にあるときに、交絡している一次側コイルに電源供給するスイッチ回路33をオンにして電流を供給し、二次側コイル2に電力を供給する。
また、両磁極が交絡していないときには、スイッチ回路33をオフにして、充電しない一次側コイルに無駄な電力を供給しないようにすると共に、スイッチ回路33の端子間に並列接続された電流抑制抵抗器34に電流を通してスイッチ回路33の端子間電圧を抑制しサージが発生しないようにして、スイッチ回路の寿命を確保する。
【0037】
給電制御装置39は、インバータ32の直流回路の電圧と電流を監視して出力電力を計算し、二次側でバッテリー充電している電力が一定値以下になると充電完了として、二次側磁極が給電範囲内にいても、インバータ32の出力を停止する。
さらに具体的には、インバータ32の整流回路36の出力が平滑回路37で直流化した位置における直流電圧信号と、その部分を流れる直流電流信号を入力し、両者から計算される直流電力が所定の値を超えたときに自走台車20のバッテリー41の充電が完了したと判定して、インバータ32の作動を停止させる。
【0038】
発明者らの研究の結果、インバータ32の有効電流の変化は整流回路36の出力を平滑化したところにおける電力値に顕著に表れることが分かった。これは、バッテリー41の充電が完了すると、一次側コイル1と二次側コイル2の磁極間でエネルギー伝達が行われなくなり、一次側コイル1にはほぼ無効電流しか流れなくるので、インバータ32の有効電流が減少するためと考えられる。
【0039】
そこで、本実施例においては、この知見を利用して、自走台車20から直接情報信号を取得する代わりに、インバータ32から取得した電圧信号によりバッテリー41の充電終了を推定して、インバータ32の作動を停止させてバッテリーの過充電を防止すると共にインバータの無駄な作動を排除するようにした。
本実施例におけるバッテリー充電終了判定方法により、運動する自走台車20と情報交換することなく、地上に固定された一次電源装置31内部の信号交換だけで自走台車20上のバッテリー41の状態を推定してインバータ32の合理的な運転を行うことができる。
【0040】
自走台車20に搭載される搭載ユニット26は、三相磁極42を有する二次側コイル2と、整流回路43とチョッパ回路44と直流リアクトル45で構成される整流装置と、電流電圧制限回路46と、バッテリー41で構成される。三相磁極42に巻回された二次側コイル2に誘起された電流は整流回路43で直流化され、チョッパ回路44で適切な充電電流が得られる電圧に調整し、直流リアクトル45で直流化し平滑化して、バッテリー41に供給される。
【0041】
電流電圧制限回路46は、供給電圧と供給電流が所定の設定値になるようにチョッパ回路44を制御して、充電の初期には定電流充電を行い充電末期には定電圧充電を行うことにより、バッテリー41の保護を行う。
電流電圧制限回路46は、またバッテリー41の充電完了状態を判断して、二次側系統を強制遮断する機能を備えてもよい。
【0042】
本発明の非接触給電装置は、工場内で使われる自走台車や遊園地などの乗り物などの充電に使用することができる。また、防水機能を備える本実施例の非接触給電装置は、たとえば水上を巡回走行するバッテリー駆動のボートなどのバッテリー充電に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の1実施例に係る非接触給電装置の主要部の概念を説明する斜視図である。
【図2】本実施例に係る非接触給電装置の主要部を示す平面図である。
【図3】本実施例に係る非接触給電装置の主要部を示す側面断面図である。
【図4】本実施例における充電走行中の二次側コイル鎖交磁束を説明する図面である。
【図5】本実施例における給電装置を複数備えた給電ユニットを複数配設して構成したシステムを表すブロック図である。
【図6】本実施例における給電ユニットの回路構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0044】
1 一次側コイル
2 二次側コイル
10 給電ユニット
20 バッテリー自走台車
11,21 磁極
12,22 ヨーク
13,23 巻線
14,24 磁気シールド
15,25 樹脂
26 搭載ユニット
30 充電ステーション
31 一次電源装置
32 インバータ
33 スイッチ回路
34 電流抑制抵抗器
35 無効電力抑制回路
36 整流回路
37 平滑回路
38 逆変換回路
39 給電制御装置
41 バッテリー
42 三相磁極
43 整流回路
44 チョッパ回路
45 直流リアクトル
46 電流電圧制限回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁誘導を利用して地上の一次側コイルから該一次側コイルに対向する二次側コイルを介して移動体のバッテリーを充電する給電装置であって、前記一次側コイルはE字形断面をもつ3突極形磁性体の磁極に三相巻線を施したもので該3突極の磁極を前記移動体の移動軌跡に垂直に配置したものを各相毎に前記移動軌跡に沿って等しいピッチでかつ適切な間隔で複数個配置し、前記移動体に搭載される前記二次側コイルは一次側コイルと同様の3突極形磁性体の磁極に三相巻線を施し該磁極の移動体移動方向の長さは前記一次側コイルの磁極の移動方向ピッチに等しく、前記一次側コイルはスイッチを介して三相交流電源に接続され、該一次側コイルの磁極と前記二次側コイルの磁極の重なり状態を検出する重なりセンサを備えて、該重なりセンサが両磁極の重なりを検出すると前記スイッチを投入して前記一次側コイルに通電させ、両磁極が離れていることを検出すると前記スイッチを開放して前記一次側コイルの電源との接続を遮断する非接触給電装置。
【請求項2】
前記一次側コイルおよび二次側コイルは移動方向に平行な側面に磁気シールドを施すことを特徴とする請求項1記載の非接触給電装置。
【請求項3】
前記一次側コイルおよび二次側コイルは全表面に樹脂カバーを施して密封することを特徴とする請求項1または2記載の非接触給電装置。
【請求項4】
前記スイッチは、電磁開閉器と抵抗器を並列に接続したものであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の非接触給電装置。
【請求項5】
前記三相交流電源は、外部の三相交流供給線に接続される整流回路、該整流回路の直流出力を平滑化する平滑回路、該平滑回路の出力を交流にする逆変換回路を備えたインバータであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の非接触給電装置。
【請求項6】
前記整流回路の直流出力を取り込んで該直流出力が所定の値より大きいときに前記バッテリー充電の終了と判定する制御装置を備えることを特徴とする請求項5記載の非接触給電装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−284695(P2009−284695A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135420(P2008−135420)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(308007505)カワサキプラントシステムズ株式会社 (51)
【出願人】(399020522)川重テクノサービス株式会社 (6)
【Fターム(参考)】