説明

移動体端末アンテナ装置

【課題】アンテナ素子の相関を可能な限り低減して、アンテナ素子の最適化を実施可能な低相関の内蔵型マルチアンテナからなる移動体端末アンテナ装置を提供する。
【解決手段】複数の逆L型のアンテナ素子10,11を有し、これらアンテナ素子10,11の折り曲げ部分の終端を、同一線A上でかつ互いに逆向きに配置する。逆向きに配置することで、アンテナ素子の間隔を変化させた場合の相関係数を低減することができる。これによってアンテナ素子の干渉を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体端末(携帯電話及び、ノートPCなど)に適用される低相関内蔵型マルチアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話のアンテナは、高速通信を可能とするために、ダイバーシティ方式やMIMO方式など多種多様な形態がある。
これらアンテナの性能を表す指標として相関係数(ここでは、x−y面を指す)があり、低相関(相関係数:0.5以下)である必要がある。更には、アンテナの種類として、小型化された内蔵型のアンテナが数多く知られており、内蔵型アンテナとして、L型素子が採用されている。
【0003】
そして、このような内蔵型アンテナに関して、以下の特許文献1〜4に示される技術が知られている。
特許文献1に示される携帯通信端末では、筐体の第1部分と第2部分とを連結部によって開閉自在に連結し、第1部分と第2部分とを閉じて折り畳んだ不使用姿勢と、第1部分と第2部分とを開いた使用姿勢とをとり得るように構成してなり、第1部分に第1アンテナを収納し、第2部分に第1アンテナと偏波面が異なる第2アンテナを収納し、第1部分と第2部分とを開く使用姿勢をとる際、第1アンテナと第2アンテナとが離間することによって、アンテナ同士の干渉を抑制して、アンテナそのものが持つ特性を十分に発揮させるものである。
【0004】
特許文献2に示される携帯無線機用アンテナでは、線状L型のアンテナ素子と板状L型のアンテナ素子とを有し、これらアンテナ素子によって、各々の周波数帯域が広帯域で、かつ2つ以上の周波数帯域で共振する多周波アンテナを実現できるものである。
【0005】
特許文献3に示される無線装置では、第1アンテナ(アンテナA)と第2アンテナ(アンテナB)の間に可変結合器を配置し、第1アンテナと第2アンテナ間の可変結合器の結合量が、受信時には増加し、送信時には減少するよう結合制御装置によって制御する。送信時に第1アンテナと第2アンテナの間の結合量を減少させることで、第1アンテナ及び第2アンテナが互いの送信信号を吸収することを防ぎ、送信時の消費電力の増加を抑える。受信時に第1アンテナと第2アンテナの間の結合量を増加させることで、各無線高周波部で処理する受信信号の信号レベル差を小さくして自動利得制御装置の制御を容易にする。
【0006】
特許文献4に示されるアンテナでは、L字状に形成された第1アンテナ・エレメント及び第2アンテナ・エレメントを含み、これら第1アンテナ・エレメント及び第2アンテナ・エレメントは、第1周波数帯域及び第2周波数帯域における信号を送信及び受信するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−230614号公報
【特許文献2】特開2004−40596号公報
【特許文献3】特開2007−124581号公報
【特許文献4】特表2009−533957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記特許文献1〜4に示される技術では、マルチアンテナを形成する場合、アンテナ素子の配置が特性に大きく影響する。このため、これらアンテナ素子の相関を可能な限り低減して、アンテナ素子の最適化を実施する必要があるが、先の引用文献1〜4では、アンテナ素子の干渉により未だ相関係数が高く、この点について新たな技術の提供が望まれていた。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、アンテナ素子の相関を可能な限り低減して、アンテナ素子の最適化を実施可能な低相関の内蔵型マルチアンテナからなる移動体端末アンテナ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。すなわち、本発明では、複数の逆L型のアンテナ素子を有し、該アンテナ素子の折り曲げ部分の終端が、同一線上でかつ逆向きに配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の逆L型のアンテナ素子を有し、該アンテナ素子の折り曲げ部分の終端を、同一線上でかつ互いに逆向きに配置することで、アンテナ素子の折り曲げ部分の終端が同一方向に配置されたアンテナ装置と比較して、アンテナ素子間隔を変化させた場合の相関係数を低減することができる。これによってアンテナ素子の干渉を抑え、アンテナ性能の最適化を実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るアンテナ装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るアンテナ装置と、比較例として示したアンテナ装置との相関係数の測定結果を示すグラフである。
【図3】比較例として示したアンテナ装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態について、図1〜図3を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る、3.5G用マルチアンテナに適用される移動体端末アンテナ装置であって、この図において符号1で示されるものは基板である。この基板1上の接地点(給電点)2,3にはそれぞれアンテナ素子10,11が配置されている。
【0014】
前記基板1内には、アンテナ素子10,11を経由した送受信信号を処理する無線回路(図示略)が設けられている。この無線回路は、前記接地点2,3を経由してアンテナ素子10,11に電力を供給する給電線、アンテナ素子10,11を介してデータの通信を行うデータ送受信回路などを備えている。
また、前記基板1は、アンテナ素子10及びアンテナ素子11の接地板としても機能する。
【0015】
前記アンテナ素子10,11は、内蔵型での使用を想定して、逆L型で構成されている。これらアンテナ素子10,11は、折り曲げ部分が直角の逆L字型とされ、上部に位置する折り曲げ部分の終端(符号a,bで示す)が、符号Aで示す同一線上で、かつ逆向きに配置されている。
【0016】
次に、図2を参照して、逆L字型のアンテナ素子10,11の動作について説明する。
図2は、横軸をアンテナ素子10,11の素子間隔、縦軸を相関係数としたグラフであって、測定結果(ア)は本発明に係る逆L字型のアンテナ素子10,11を備えるアンテナ装置であり、また、測定結果(イ)は、図3に示すように、比較例として示したアンテナ素子20,21の終端(符号a,b´で示す)が同一線A上でかつ同じ向きに配置されているアンテナ装置である。
【0017】
ここで、上述した測定では、設計周波数f0を3.7GHzとして、アンテナ素子10,11からなる2素子の素子間隔をx−y面上で変化させた場合の相関係数を計測している。
そして、このような素子間隔の変化により、相関係数は周期的に変化するが、ここで両者の測定結果(ア)及び(イ)を比較した場合、アンテナ素子10,11の折り曲げ部分の終端(符号a,bで示す)が互いに逆向きの本発明に係るアンテナ装置(測定結果(ア))の方が、アンテナ素子20,21の折り曲げ部分の終端(符号a,b´で示す)が同一の比較例に係るアンテナ装置(測定結果(イ))よりも相関係数が低減されていることが分かる。
また、測定した2素子の素子間隔において、ほとんどの範囲において、本発明に係るアンテナ装置(測定結果(ア))の方が、比較例に係るアンテナ装置(測定結果(イ))よりも広範囲に低相関となることが明らかになった。
【0018】
以上詳細に説明したように本実施形態に係るアンテナ装置では、複数の逆L型のアンテナ素子10,11を有し、該アンテナ素子10,11の折り曲げ部分の終端を、同一線A上でかつ互いに逆向きに配置することで、アンテナ素子10,11の折り曲げ部分の終端(符号a,b´で示す)が同一方向に配置された比較例のアンテナ装置と比較して、アンテナ素子10,11間隔を変化させた場合の相関係数を低減することができる。これによってアンテナ素子10,11同士の干渉を抑え、アンテナ性能の最適化を実施することが可能となる。
【0019】
なお、上述した実施形態では、2つのアンテナ素子10,11を用いた場合の例について説明したが、アンテナ素子の数は2つに限定されない。例えば、3つ以上のアンテナ素子を使用する場合には、これらアンテナ素子の折り曲げ部分の終端(符号a,bで示す)を同一線A上に位置させるとともに、これら折り曲げ部分の終端が、一つずつ互い違いになるように逆向きに配置すると良い。
【0020】
以上のように本発明のアンテナ装置について実施形態を示して説明したが、本願発明はこの実施形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変更して実施することが可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、移動体端末(携帯電話及び、ノートPCなど)に適用される低相関内蔵型マルチアンテナ装置に関する。
【符号の説明】
【0022】
1 基板
2 接地点(給電点)
3 接地点(給電点)
10 アンテナ素子
11 アンテナ素子
a アンテナ素子の折り曲げ部分の終端
b アンテナ素子の折り曲げ部分の終端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の逆L型のアンテナ素子を有し、該アンテナ素子の折り曲げ部分の終端が、同一線上でかつ逆向きに配置されていることを特徴とする移動体端末アンテナ装置。
【請求項2】
前記各アンテナ素子の基端部がそれぞれの給電点に接続されることを特徴とする請求項1に記載の移動体端末アンテナ装置。
【請求項3】
前記アンテナ素子は、折り曲げ部分が直角の逆L字型とされることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の移動体端末アンテナ装置。
【請求項4】
前記アンテナ素子が3つ以上であり、当該アンテナ素子の折り曲げ部分の終端を同一線上に位置させるとともに、これら折り曲げ部分の終端が、一つずつ互い違いになるように逆向きに配置された請求項1から請求項3の何れか一項に記載の移動体端末アンテナ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−85034(P2012−85034A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228348(P2010−228348)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】