説明

移動体衝突防止装置及び該装置を搭載した移動体

【課題】移動体の衝突を防止する移動体衝突防止装置に関する。
【解決手段】移動体に配置され、他の移動体との間で信号を送受信する移動体衝突防止装置10であって、測定波を送信する送信部120と、前記送信部に接続され、該送信部を駆動する駆動信号を生成し該送信部を駆動する送信駆動部110と、前記他の移動体から送信された測定波を受信する受信部130と、前記受信部が受信した測定波の強度により、前記移動体と前記他の移動体の間の相対位置を計算する計算部140と、前記計算部によって計算された結果に基づいて前記移動体が前記他の移動体と衝突するか否かを判断する衝突判断部150とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動体の衝突を防止するための移動体衝突防止装置及び該装置を搭載した移動体に関し、特に、車両などの移動体に設置され、移動体同士の相対位置を精確に計算し、移動体の衝突を回避する移動体衝突防止装置及び該装置を搭載した移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
GPS(Global Positioning System)又はレーダを利用した飛行機や船舶に搭載される衝突防止装置が開発されている(特許文献1及び2参照)。また、GPS技術を利用した、交通機関などの車両に適用するカーナビが開示されている(特許文献3参照)。更に、GPSで無人走行型車両が所定の領域に入ることを防止する技術が開発されている(特許文献4参照)。
【0003】
このように、近年開発が進んでいる、GPS受信機、速度検出部、方向検出部を有する移動体衝突防止装置は、該受信機又は検出部によって受信又は検出されたGPS位置情報、速度情報、方向情報を他の移動体に送信し、該情報を受信した移動体が、衝突が発生するか否かを判断する技術が提案された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−120499号公報
【特許文献2】特開2000−304856号公報
【特許文献3】特許3260645号公報
【特許文献4】特開2001−337724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来技術においては、GPS自身の位置決め精度及びGPS受信設備の精度の影響で、移動体と他の移動体の間の距離の計算には、通常、数メートルから十数メートルの誤差があり、衝突が起こりうる近距離の範囲で、他の移動体の位置を誤計算する可能性が高いという問題があった。
【0006】
本発明は、上記従来技術における問題点に鑑みて、近距離の範囲で移動体同士の相対位置を精確に検出し、特に移動体同士の間の距離を精確に計算することにより、移動体同士の衝突をより確実に防止できる移動体衝突防止装置及び該装置を搭載した移動体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の移動体衝突防止装置は、移動体に配置され、他の移動体との間で信号を送受信する移動体衝突防止装置であって、測定波を送信する送信部と、前記送信部に接続され、該送信部を駆動する駆動信号を生成し該送信部を駆動する送信駆動部と、前記他の移動体から送信された測定波を受信する受信部と、前記受信部が受信した測定波の強度により、前記移動体と前記他の移動体の間の相対位置を計算する計算部と、前記計算部によって計算された結果に基づいて前記移動体が前記他の移動体と衝突するか否かを判断する衝突判断部とを備える。
【0008】
本発明の移動体衝突防止装置によれば、他の移動体から送信された測定波の強度に基づいて移動体と他の移動体の間の相対位置を計算するので、近距離範囲内での移動体同士の距離を精確に計算できる。そして、該計算結果に基づいて、衝突判断部が移動体と他の移動体との衝突について判断するので、衝突を避ける対策を採ることができる。
【0009】
前記送信駆動部は所定の送信強度で測定波を送信するように前記送信部を駆動するのが好ましく、前記送信駆動部は、可変の送信強度で測定波を送信するように前記送信部を駆動するとともに、前記送信部が送信した測定波に前記送信強度情報を含ませるように、前記駆動信号に前記送信強度の情報を付加するのが更に好ましい。これにより、移動体同士の距離を精確に計算できる。
【0010】
また、前記移動体が移動する速度に基づいて前記送信部が送信する測定波の強度を設定することができる。移動速度に応じて測定波の強度を変化させることにより、高速で走行するときに、検知可能な距離が長くなり、低速に走行するときに、消費電力を抑えることができる。
前記計算部は、前記受信部が受信した測定波の強度により、前記移動体と前記他の移動体の間の距離を計算することができる。これにより、移動体衝突防止装置の構成はシンプルであり、近距離範囲内で、高精度で距離を計算できる。
【0011】
前記送信部が送信する測定波は前記移動体の情報を含み、該移動体の情報は、前記受信部が受信する測定波の強度に関する受信強度情報、前記送信部が送信する測定波の強度に関する送信強度情報、前記移動体が移動する速度に関する移動速度情報、前記移動体が移動する方向に関する移動方向情報、前記移動体の操作に関する操作情報、前記移動体のID情報及び種類情報の中から選ばれた少なくとも1つを含むのが更に好ましい。
この構成によって、動体の情報、つまり送受信する測定波の強度、移動体の移動方向及び速度、移動体の操作、ID情報及び種類情報を送信し、他の移動体に認識させることができる。
【0012】
さらに好適には、前記移動体の移動状態を制御する移動体制御部を備え、該移動体制御部は、前記他の移動体からの測定波にブレーキ又はアクセル操作に関する情報が含まれる場合、前記移動体と前記他の移動体の距離を所定以上に保つように、前記移動体にブレーキ操作又はアクセル操作をする制御を行い、前記衝突判断部が前記移動体と前記他の移動体が衝突すると判断した場合、前記移動体にブレーキ操作、アクセル操作、及びハンドル操作の中から選ばれた少なくとも1つの操作をする制御を行う。これにより、使用者の操作によらずに移動体同士の衝突を防ぐことができる。
【0013】
また、前記移動体の使用者に通知する通知部を備え、前記他の移動体から送信された測定波にブレーキ又はアクセル操作に関する情報が含まれる場合、使用者がブレーキ又はアクセル操作をするように、前記通知部は警告メッセージを生成することができる。これにより、使用者が警告メッセージを見て移動体を適切に操作するように促されて、衝突を回避する運転操作をすることができる。
【0014】
さらに、前記移動体が移動する速度に関する移動速度情報を検出する速度センサと、前記移動体が移動する方向に関する移動方向情報を検出する方向センサと、前記移動体の操作に関する操作情報を検出する操作検出部との中から選ばれた少なくとも1つを備えることができる。これにより、移動体同士が衝突するか否かを確実に判断することができる。
さらに、前記移動体と前記他の移動体との相対位置を表示する表示部を備えるのが好適である。これにより、該表示を見た使用者が他の移動体の存在及びその位置を把握できる。
【0015】
本発明は、上記の移動体衝突防止装置を搭載した移動体を提供する。該移動体により、有効に衝突を防止することができ、移動体の安全性を向上できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の移動体衝突防止装置及び該装置を搭載した移動体によれば、近距離の範囲で他の移動体から送信された測定波の強度に基づいて移動体同士の相対位置が精確に計算され、その計算結果に基づいて移動体が他の移動体と衝突するか否か判断されるので、衝突を避ける対策を採ることができる。このことにより、移動体同士の衝突をより確実に防止することができ、移動体の安全性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る移動体衝突防止装置を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る移動体衝突防止装置の送信部と受信部の構成を示す図である。
【図3】第1実施形態に係る送信部が送信する測定波を示す図である。
【図4】距離と測定波の強度との関係を示す図である。
【図5】第1実施形態に係る衝突防止装置の動作を示す説明図である。
【図6】第1実施形態に係る表示部の表示画面を示す図である。
【図7】第1実施形態に係る衝突防止装置の他の動作を示す説明図である。
【図8】第2実施形態に係る衝突防止装置の動作を示すための図である。
【図9】第2実施形態に係る衝突防止装置の動作を示す説明図である。
【図10】第2実施形態に係る表示部の表示画面を示す図である。
【図11】第3実施形態に係る衝突防止装置の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、添付図面を参照して本発明の移動体衝突防止装置の第1実施形態を詳細に説明する。以下の説明において、車両を移動体の具体的な例とし、車両の種類情報を車両の型式に関する型式情報として説明する。
【0019】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る移動体衝突防止装置のブロック図である。図1に示すように、車両に搭載される移動体衝突防止装置10(以下、単に「衝突防止装置10」という。)は、制御部100、送信駆動部110、送信部120と、受信部130と、計算部140とを有する。
【0020】
送信部120は、4つの送信機121〜124を備え、測定波を送信する。受信部130は、他の車両の送信部が送信した測定波を受信する。送信駆動部110は、駆動信号を生成し、該駆動信号を送信部120の各送信機121〜124に供給し、一定の送信強度で車両外へ測定波を送信するように、送信機121〜124を駆動する。本実施形態において、送信機121〜124はミリ波送信機であって、ミリ波の測定波を送信する。それに応じて、受信機131〜134はミリ波受信機である。測定波としては、環境からの影響が少なく、且つ指向性を有する波であれば、ミリ波に限られない。
【0021】
計算部140は、受信部130が受信した他の車両からの測定波の強度に基づき、他の車両と本車両の間の相対位置を計算する。これにより、近距離範囲内で距離を検出する精度が効果的に向上する。これについては、後に詳細に説明する。
衝突防止装置10は、更に、車両が移動する速度情報である移動速度情報を検出する速度センサ200と、車両が移動する方向情報である移動方向情報を検出する方向センサ210と、車両のID情報や型式情報などを保存するROM220と、車両の操作情報を検出する操作検出部230を有する。該操作情報には、アクセルペダルが操作されること、ブレーキペダルが操作されること、アクセルペダル及びブレーキペダルの操作される強さなどの情報が含まれる。
【0022】
制御部100は、速度センサ200から本車両の移動速度情報を取得し、送信駆動部110に転送する。送信駆動部110は、該移動速度情報について所定の処理を行い、駆動信号に付加し、送信部120の各送信機121〜124から送信する測定波に本車両の移動速度情報を含ませる。
同様に、制御部100は、方向センサ210から本車両の移動方向情報を取得し、送信駆動部110に転送する。送信駆動部110は、該移動方向情報について所定の処理を行い、駆動信号に付加し、送信部120の各送信機121〜124から送信する測定波に本車両の移動方向情報を含ませる。
【0023】
同様に、制御部100は、ROM220から車両のID情報や型式情報などを取得し、送信駆動部110に転送する。送信駆動部110は、これらの情報について所定の処理を行い、駆動信号に付加し、送信部120の各送信機121〜124から送信する測定波に車両のID情報や型式情報などを含ませる。
同様に、制御部100は、操作検知部230から、上記操作情報を取得し、送信駆動部110に転送する。これらの情報について所定の処理を行い、駆動信号に付加し、送信部120の各送信機121〜124から送信する測定波に本車両の操作情報を含ませる。
【0024】
衝突防止装置10は、画像により車両の位置を表示する表示部310、衝突が起きる危険があるなどのメッセージを車両の使用者に通知するための音声部320及び振動部330を更に有する。
本実施形態では表示部310にカーナビを用いる。これにより、車両20の使用者はカーナビで経路を確認するとともに、車両20の周りにある他の車両の位置を確認することができる。
また、衝突防止装置10は、計算部140によって計算された車両20と他の車両の間の相対位置に基づいて車両同士が衝突するか否かを判断する衝突判断部150と車両の移動を制御する車両制御部400を備える。衝突判断部150と車両制御部400の動作は、後に詳しく説明する。
【0025】
図2は衝突防止装置10の送信部120と受信部130の構成を示す。図2に示すように、送信部120(図1参照)は、送信機121が車両20の左前方に、送信機122が車両20の前方中央に、送信機123が車両20の右前方に、送信機124が車両20の後部に配置されるように構成されている。受信部130(図1参照)は、受信機131が車両20の左前方に、受信機132が車両20の前方中央、受信機133が車両20の右前方に、受信機134が車両20の後部に配置される。受信機131〜134と送信機121〜124とは、それぞれ、車両20の本体周囲に配置され、車両20の上部から見ると、送信機121〜124と受信機131〜134の位置は重なっている。なお、車両20の送信部120から送信される測定波は所定の範囲を覆う限り、送信機121〜124及び受信機131〜134は任意の位置に設けてもよい。
【0026】
車両20の前方に配置された受信機131〜133は、車両20前方における所定の範囲から入射される測定波を受信する。これにより、車両20前方における検出範囲を確保できる。また、車両20後方には受信機134を設けることにより、車両20後方の他の車両との距離を検出し、後部から他の車両によって追突されるのを回避することができる。
【0027】
図3は、送信部120(図1参照)が送信した測定波の状態を示す。図3に示すように、各送信機121〜124が生成した測定波は、扇形状に各送信機121〜124から出射され、伝播距離の増加に伴って測定波の強度が下がる(図4参照)。また、送信機121〜124を車両の周囲に配置することにより、測定波を車両20の各方向へ出射することができる。本実施形態では、車両20の前方に3つの送信機121〜123が配置され、後部には1つ送信機124が配置されているが、送信機の数をそれより増やしてもよく、この場合、より広い範囲に測定波を送信することができる。
【0028】
以下、本実施形態において、測定波により本車両と他の車両の間の相対位置を計算する方法を詳しく説明する。
図4は、距離と測定波の強度との関係を示す。図4において、横軸は距離S(m)を示し、縦軸は測定波の強度I(dB)を示す。図4に示すように、距離S=0mの位置において、送信駆動部120は送信強度I(dB)で送信機121〜124を駆動し測定波を送信する。測定波が伝播する距離S(m)の増加に従い、測定波の強度I(dB)が下がる。受信部130が他の車両からの測定波を受信すると、制御部100は受信部130が受信した測定波の強度情報を計算部140に入力し、計算部140は測定波とともに送信された測定波の送信強度I(dB)と受信した測定波の強度I(dB)により、本車両と他の車両の間の距離を計算する。
【0029】
本実施形態において、本車両に複数の受信機131〜134を設けることにより、該複数の受信機が他の車両からの測定波を受信し、計算部140において、各受信機131〜134が受信した他の車両からの測定波の強度の差により、他の車両の方位を計算して、他の車両の相対位置を計算する。
受信機131〜134にそれぞれアンテナを設け、計算部140が位相と振幅の差によって他の車両の方位を計算し、他の車両の相対位置を計算してもよい。
【0030】
図5は、本実施形態に係る衝突防止装置10の動作を示す。図5に示すように、衝突防止装置10を搭載した車両20Aと車両20Bは道路上を走行している。車両20Aは車両20Bの後方を走行しているので、車両20Aの受信機131〜133は車両20Bの送信機124が送信した測定波を受信する。車両20Aの受信機132が受信した車両20Bからの測定波の強度は、左右側の受信機131、133が受信した車両20Bからの測定波の強度より大きいので、車両20Bは真正面にあることが分かる。また、車両20Aの計算部140は車両20Bの測定波の強度と図4に示す強度−距離関係から車両20Bとの距離を計算し、車両20Bの相対位置を計算する。
【0031】
図6は、本実施形態に係る表示部310の表示画面を示す。表示部310は、計算部140によって計算された車両20Bの相対位置に応じて、表示画面に車両20Bの画像を表示する。車両20Aの使用者は、表示画面から道路上における車両20Aと他の車両20Bの走行状況を確認することができる。
【0032】
車両20Aにおいて、車両20Bからの測定波の強度により車両20Bの相対位置を計算するので、車両20Aと車両20Bの距離の精度が大幅に向上される。また、表示部310に、車両20Bと車両20Aをとともに表示することにより、車両20Aの使用者が道路上の他の車両20Bの状況を把握でき、緊急事態の場合、迅速に対応し、衝突事故を回避することができる。
【0033】
更に、本実施形態において、操作検知部230(図1参照)により使用者が行ったブレーキペダル及びアクセルペダルに対する操作(本明細書及び特許請求の範囲において、「ブレーキ及びアクセル操作」ということがある。)などが検知され、操作情報が生成される。送信駆動部110が駆動信号に該操作情報を付加することで、送信部120から送信される測定波に該操作情報が付加される。
【0034】
図5に戻って、車両20Bの前方に障害物があり、使用者がブレーキ操作をした場合、車両20Bの操作検知部230(図1参照)は、使用者のブレーキ操作を検知し、該ブレーキ操作を示す操作情報を生成する。送信駆動部110が駆動信号に該操作情報を付加することで、車両20Bの送信部120から送信される測定波に該操作情報が付加される。
【0035】
車両20Aは、車両20Bの送信機124からの測定波を受信部130で受信し、該測定波に含まれる操作情報を抽出する。このとき、車両20Aの制御部100は、車両20Bのブレーキ操作を示す操作情報により、図6に示すように、表示部310の表示画面に車両20Bを赤色に表示し、車両20Aの使用者に車両20Bのブレーキ操作を知らせる。
【0036】
更に、車両20Bからブレーキ操作を示す操作情報を検出したとき、車両20Aの制御部100は、音声部320(図1参照)に警告音を生成させ、又は振動部330(図1参照)に振動を生成させることで、車両20Aの使用者に前方の車両20Bのブレーキ操作を知らせ、車両20Aの使用者にブレーキ操作を促すので、前方の車両20Bとの衝突を回避することができる。
更に、車両の操作情報として、操作検知部230は、使用者がブレーキペダル又はアクセルペダルを踏み込む、つまり操作する強さの情報を検知してもよい。そうすると、送信部120から送信される測定波に更にブレーキ又はアクセルを操作する強さの情報が付加される。
【0037】
図5に示す状況で、車両20Bのテールランプの他、衝突防止装置10の表示部310、音声部320又は振動部330により、車両20Bのブレーキ操作を車両20Aの使用者に通知することができるが、車両20Bがブレーキペダルを踏み込む強さを認識することができない。したがって、車両20Bが急ブレーキをかけたとき、車両20Aが車両20Bに追突するおそれがある。
【0038】
しかし、本実施形態によれば、車両20Bからの測定波を受信し、ブレーキペダルを操作する強さが所定値以上に達すると、車両20Bが急ブレーキをかけたことを検出できるため、車両20Aの制御部100が、表示部310における車両20Bの画像を赤色且つ点滅するように表示させることで、車両20Aの使用者に車両20Bの急ブレーキを注意喚起することができる。このとき、音声部320が警告音を鳴らし、また振動部330が強く振動し、車両20Aの使用者を注意喚起する。
【0039】
また、操作する強さの情報として、本実施形態において説明したブレーキペダルを操作する強さの情報の他、加速度センサが直接車両のアクセル、ブレーキ、ハンドルなどの操作に関する情報とそれらの操作の強さに関する情報を操作情報として取得し、測定波に付加してもよい。
本実施形態において、衝突防止装置10の制御部100は車両制御部400により車両20のブレーキ又はアクセルを操作することにより、他の車両との間に所定の安全距離を保つことができる。
【0040】
図5に示すように、車両20Aにおいて、計算部140は、車両20Aが車両20Bに接近しているとき、衝突防止装置10は表示部310、音声部320又は振動部330で、車両20Aの使用者を知らせた後、所定の時間内に、車両20Aの使用者がブレーキ操作をしなかった場合、車両20Bに追突しないように、車両制御部400は、車両20Aに対してブレーキ制御をする。
【0041】
制御部100は、車両制御部400により、車両20Aが車両20Bと所定の安全距離を保つようにすることができる。車両20Bが加速し、車両20Aの計算部140が車両20Aと車両20Bの間隔が所定距離以上に離れていると計算した場合、車両20Aの制御部100は車両制御部400により、車両20Aを車両20Bと所定の安全距離を保つように、車両20Aを加速し、衝突事故を回避する。このことは、渋滞の緩和にも寄与する。
【0042】
図7は、本実施形態に係る衝突防止装置の他の動作を示す。図7に示すように、車両20Bについて、受信機134が車両20Aの送信機122から送信された測定波を受信し、車両20Aの相対位置を計算し、また、車両20Aの操作情報を取得する。車両20Aが後方から所定の安全距離以内に近づくと、車両20Bの制御部100は車両制御部400により、後方の車両20Aと所定の距離を保つように、車両20Bを加速することによって、追突を回避することができる。
【0043】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について詳細に説明する。以下の説明において、第1実施形態と重複する内容について、詳細な説明を省略する。
図8は、第2実施形態に係る衝突防止装置の動作を示すための図である。図8において、車両20Aは交差点で、左折しようとしている。このとき、対向方向から走ってくる車両20Cが停車し、車両20Aの左折を待つ。車両20Aが左折するとき車両20Cの右側から車両20Dが高速で走ってくると、車両20Aの使用者は車両20Dを発見できないので、車両20Dと衝突するおそれがある。
【0044】
図9は、同じく第2実施形態の衝突防止装置の動作を示す。図9に示すように、車両20Aの前方が車両20Cの右側の前縁部の位置に達すると、車両20Aは車両20Dの送信機122からの測定波を受信する。第1実施形態と同様に、車両20Aの受信機131〜133が車両20Dからの測定波を受信し、計算部140が車両20Dの相対位置を計算し、車両20Dの画像を表示部310の画面に表示する。このことによって、車両20Aの使用者は、実際には車両20Aを目で見ることができなくても、表示部310の画像から車両20Dの存在を確認することによって、衝突事故を回避することができる。
【0045】
制御部100は、更にROM220(図1参照)から車両のID情報や型式情報などを読み出し、送信駆動部110は該車両のID情報や型式情報などを駆動信号に付加し測定波に含ませる。車両20Aの受信部130の受信機131〜134は車両20Dからの測定波を受信した後、制御部100は車両20Dの画像とともに表示部310の表示画面に、受信した測定波に含まれている車両20DのID情報及び型式情報により、それぞれ車両20DのID情報及び車両20Dの型式に応じた画像を表示する。
【0046】
このとき、表示部310に図10のような表示画面が表示される。図10の表示画面において、車両20A、他の車両20C〜20Eの相対位置の他に、測定波に含まれる型式情報に基づいて、各車両20C〜20Eについて、その型式の大きさや形状に応じて、例えば、乗用車、貨車、オートバイク等を表示画面に表示する。これは、車両20Aの使用者が正確に判断することに有利である。したがって、車両20Aの使用者は表示部310の表示画面を通して、前もって車両20Cの後方から来た車両20Dの存在を確認でき、衝突事故を回避することができる。
【0047】
更に、本実施形態において、速度センサ200(図1参照)として、車両20に配置される速度センサを使用してもよい。方向センサ210(図1参照)はフラックスゲート・センサ、ホール・センサ又はMR(magneto-resistive)センサを使用してもよい。制御部100は、駆動信号に速度センサ200と方向センサ210による速度情報である移動速度情報と方向情報である移動方向情報を付加し、送信駆動部110を制御することで、測定波に該移動速度情報と該移動方向情報を含ませる。
【0048】
図9に示すように、車両20Aの制御部100は、受信部130が受信した車両20C、20D、20Eの移動速度情報と移動方向情報を衝突判断部150(図1参照)に入力すると、該衝突判断部150は、該移動速度情報と該移動方向情報、車両20Aの移動速度情報と移動方向情報、及び計算部140で計算された車両20C、20D、20Eの相対位置に基づいて、衝突するか否かを判断する。
【0049】
もし、車両20C、20Eが停車して車両20Aを通過させる場合、車両20Cの測定波には、車両20Cの速度は「0」、方向は南向きであるなどの情報が付加され、車両20Eの測定波には、車両20Eの速度は「0」、方向は西向きであるなどの情報が付加される。車両20Aにおいて、制御部100の制御で、受信部130が検出した車両20C、20Eの測定波の強度などの情報が計算部140に入力され、計算部140で計算された車両20C、20Eの相対位置情報が衝突判断部150に入力される。このとき、制御部100の制御で、更に受信部130が受信した車両20C、20Eの移動速度情報と移動方向情報を衝突判断部150に入力する。衝突判断部150は、車両20C、20Eの移動速度情報、移動方向情報、相対位置、及び車両20Aの移動速度情報と移動方向情報から、車両20C、20Eと衝突するか否かを判断する。そして、結果的に車両20C、20Eは停車中であるから、衝突しないと判断する。
【0050】
図9に示すように、車両20Dが車両20Cの右後方から車両20Cを追い越そうとするとき、車両20Aの受信部130は車両20Dからの測定波を受信し、計算部140は車両20Dの相対位置を計算する。車両20Aの衝突判断部150は、車両20Dの測定波に含まれる車両20Dの移動速度情報と移動方向情報、車両20Dの相対位置及び車両20Aの移動速度情報と移動方向情報に基づき、走行中の車両20Dと衝突するか否かを判断する。衝突判断部150が車両20Dと衝突する可能性があると判断すると、車両20Aの制御部100は、表示部310の表示画面に車両20Dの画像を目立つように且つ点滅するように表示し、更に、音声部320に警告音を鳴らし、振動部330に振動を生じさせる。これにより、車両20Aの使用者に車両20Dと衝突しないように車両20Aを操作するように促す。
さらに、車両20Dとの衝突を回避するために、制御部100が車両制御部400に車両20Aのブレーキ、アクセル又はハンドリングなどの操作を行わせるようにしてもよい。
【0051】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。以下の説明において、上記各実施形態と重複する内容について、詳細な説明を省略する。また、本実施形態において、制御部100は、送信駆動部110が駆動信号に他の車両の位置情報、移動速度情報及び移動方向情報を付加するように制御する。
【0052】
図11は、本実施形態に係る衝突防止装置の動作を示す。図11に示すように、車両20Fは車両20Aの前方を走行しており、交差点を通過しようとしている。このとき、車両20Fの受信機132,133は車両20Gの送信機121が送信した測定波を受信することにより、車両20Gの相対位置が計算される。車両20Aは、障害物に遮蔽されて受信機131〜133で車両20Gからの測定波を受信できない。車両20Aが車両20Fに続いて交差点を通過するとき、もし車両20Gが交差点に到達したら、車両20Aと車両20Gが衝突するおそれがある。
【0053】
本実施形態において、車両20Fは、受信部130で車両20Gからの測定波を受信し、計算部140で車両20Gの車両20Fに対する相対位置を計算した後、制御部100の制御により、駆動部110は車両20Gの相対位置情報を駆動信号に付加する。
車両20Aの受信機131〜133は、車両20Fの測定波を受信し、計算部140は車両20Fからの測定波に基づいて車両20Fの相対位置を計算する。また、車両20Fからの測定波に車両20Gの車両20Fに対する相対位置が含まれているため、制御部100は、更に車両20Gの車両20Fに対する相対位置を計算部140に入力する。計算部140は、車両20Fの相対位置と、車両20Gの車両20Fに対する相対位置とのベクトル和を求めることにより、車両20Gの車両20Aに対する相対位置を計算するができる。
【0054】
このように、車両20Aが車両20Gの測定波を検知できなくても、事前に車両20Gの相対位置を計算し、表示部310に車両20Gの画像を表示画面に表示することができる。
また、車両20Fは、受信した車両20Gの移動速度情報、移動方向情報も送信してもよい。これにより、車両20Aの受信部130(受信機131〜133)は、これらの情報を受信した後、衝突判断部150が車両20Aが車両20Gと衝突するか否かを判断する。車両20Fは、車両20Gの車両のID情報、型式情報、操作情報等を送信してもよい。これにより、車両20Aは、車両20Gから直接その測定波を受信できなくても、車両20Fから間接的に車両20Gの前記情報を取得できるので、表示部310に車両20Gの車両のID情報、型式情報、操作情報などにより車両20Gを表示することができる。
【0055】
上記実施形態において、表示部310としてカーナビを使用するので、車両20の使用者は道路と他の車両の状況を直接把握することができる。しかしながら、本発明は表示部310は任意の表示装置であってもよく、カーナビに限定されない。
また、上記実施形態において、送信部120は4つの送信機121〜124で構成されているが、これに限らない。送信部120の送信した測定波が所定領域を覆えれば、送信機の数と配置位置は任意に定めてもよい。同様に、受信部130は4つの受信機131〜134で構成されているが、これに限らない。車両の相対位置を計算する精度を向上するために、より多くの受信機を使用してもよい。
本発明によれば、受信した測定波の強度により、近距離範囲内に車両同士の距離を精確に計算でき、衝突防止装置の信頼性が向上される。
【0056】
上記実施形態において、送信部120が所定の固定強度の測定波を送信する例を説明したが、送信部120は所定の可変強度の測定波を送信するとともに、測定波に送信強度情報を付加してもよい。即ち、車両が測定波を受信した後、送信強度と受信した強度により車両間の相対位置を計算する。更に、制御部100は速度センサ200が検出した移動速度情報により、送信部120が送信する測定波の強度を調整してもよい。例えば、高速道路を走行する場合、制御部100は、より高い強度の測定波を送信するように、送信部120を制御する。これにより、検出可能な移動体間の距離が長くなる。一方、一般の道路を走行する場合、制御部100は、より弱い送信強度で測定波を送信するように、送信部120を制御すると、消費電力を抑えることができる。
【0057】
本発明の衝突防止装置は、移動体と他の移動体との相対位置、及び他の移動体からの測定波に含まれる情報を表示する表示部を備えることができる。このことにより、使用者が他の移動体の存在及びその位置を把握できるとともに、他の移動体の形状、大きさ、速度などを認識することができる。また、移動体と他の移動体との相対位置を表示するとともに、他の移動体からの測定波に含まれる操作情報に基づいて、異なる色又は文字で他の移動体に対する操作を表示することができる。このことにより、使用者は他の移動体の操作情報を認識することができる。
【0058】
また、本発明の衝突防止装置は、他の車両又は移動体からの測定波に含まれる情報を直接受信できるため、検知可能な車両の数が制限されず、衝突防止装置の信頼性と検出の正確性が向上し、効果的に衝突事故を回避することができる。上記実施形態において、移動体として車両を使用する例を説明したが、移動体は任意の移動可能な装置又は産業に用いられる運搬装置等であってもよい。
【0059】
以上、本発明を具体的な実施形態に沿って詳細に説明したが、本発明の範囲は、上述した実施形態及び添付図面に限定されず、また、形式や細部についての種々の置換、変形、変更などは、特許請求の範囲の記載により規定される本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
10 移動体衝突防止装置
20,20A,20B,20C,20D,20E,20F,20G 車両
100 制御部
110 送信駆動部
120 送信部
121,122,123,124 送信機
130 受信部
131,132,133,134 受信機
140 計算部
150 衝突判断部
200 速度センサ
210 方向センサ
220 ROM
230 操作検出部
310 表示部
320 音声部
330 振動部
400 車両制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に配置され、他の移動体との間で信号を送受信する移動体衝突防止装置であって、
測定波を送信する送信部と、
前記送信部に接続され、該送信部を駆動する駆動信号を生成し該送信部を駆動する送信駆動部と、
前記他の移動体から送信された測定波を受信する受信部と、
前記受信部が受信した測定波の強度により、前記移動体と前記他の移動体の間の相対位置を計算する計算部と、
前記計算部によって計算された結果に基づいて前記移動体が前記他の移動体と衝突するか否かを判断する衝突判断部と
を備える移動体衝突防止装置。
【請求項2】
前記送信駆動部は所定の送信強度で測定波を送信するように前記送信部を駆動することを特徴とする請求項1記載の移動体衝突防止装置。
【請求項3】
前記送信強度が固定又は可変の送信強度であることを特徴とする請求項2記載の移動体衝突防止装置。
【請求項4】
前記送信駆動部は、前記移動体が移動する速度に基づいて前記送信部が送信する測定波の強度を設定することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の移動体衝突防止装置。
【請求項5】
前記計算部は、前記受信部が受信した測定波の強度により、前記移動体と前記他の移動体の間の距離を計算することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の移動体衝突防止装置。
【請求項6】
前記送信部が送信する測定波は前記移動体の情報を含むことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項記載の移動体衝突防止装置。
【請求項7】
前記移動体の情報は、前記受信部が受信する測定波の強度に関する受信強度情報、前記送信部が送信する測定波の強度に関する送信強度情報、前記移動体が移動する速度に関する移動速度情報、前記移動体が移動する方向に関する移動方向情報、前記移動体の操作に関する操作情報、前記移動体のID情報及び種類情報の中から選ばれた少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項6に記載の移動体衝突防止装置。
【請求項8】
前記移動体の移動状態を制御する移動体制御部を備え、
前記他の移動体からの測定波にブレーキ又はアクセル操作に関する情報が含まれる場合、前記移動体と前記他の移動体の距離を所定以上に保つように、前記移動体制御部が前記移動体にブレーキ操作又はアクセル操作をする制御を行うことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項記載の移動体衝突防止装置。
【請求項9】
前記移動体の移動状態を制御する移動体制御部を備え、
前記衝突判断部が前記移動体と前記他の移動体が衝突すると判断した場合、前記移動体制御部が前記移動体にブレーキ操作、アクセル操作、及びハンドル操作の中から選ばれた少なくとも1つの操作をする制御を行うことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項記載の移動体衝突防止装置。
【請求項10】
前記移動体の使用者に通知する通知部を備え、
前記他の移動体から送信された測定波にブレーキ又はアクセル操作に関する情報が含まれる場合、前記通知部がそれぞれブレーキ又はアクセル操作に関する警告メッセージを生成することを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項記載の移動体衝突防止装置。
【請求項11】
前記移動体が移動する速度に関する移動速度情報を検出する速度センサと、前記移動体が移動する方向に関する移動方向情報を検出する方向センサと、前記移動体の操作に関する操作情報を検出する操作検出部との中から選ばれた少なくとも1つを備えることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項記載の移動体衝突防止装置。
【請求項12】
前記移動体と前記他の移動体の間の相対位置を表示する表示部を備えることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の移動体衝突防止装置。
【請求項13】
前記送信部が送信する測定波はミリ波であることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載の移動体衝突防止装置。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれか1項記載の移動体衝突防止装置を搭載した移動体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−123000(P2012−123000A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−267160(P2011−267160)
【出願日】平成23年12月6日(2011.12.6)
【出願人】(000102647)エニー株式会社 (4)
【Fターム(参考)】