説明

移動体通信システム、迂回経路構築方法およびセンタ監視装置

【課題】無線基地局のバックホール回線に障害が発生し通信不能となったときに、通信サービスが途切れないようにする。
【解決手段】無線基地局20Aのバックホール回線50に障害が発生した場合、無線基地局20Aおよびその近隣の無線基地局20Bの送信電力が通常時より大きい所定値に増加される。したがって、カバーエリア40A,40Bが拡大し、無線基地局20Aと無線基地局20Bとの間で、通信が行える状態になる。そして、無線基地局20Aと無線基地局20Bとの間でリレー通信を行って、無線基地局20Aが移動端末30Aとの間で送受信する情報を、無線基地局20Bを経由して伝達する迂回経路が構築される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信に用いられる無線基地局のバックホール回線に障害が発生しても、通信サービスが途切れないようにする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信システムは、通信サービスを提供するエリアに無線基地局を置局して、その無線基地局のカバーエリアに存在する移動端末に対して情報を送受信する。また、無線基地局は、バックホール回線によって基幹ネットワークに接続され、基幹ネットワークを介して、他の無線基地局との間で情報伝送を行うとともに、基幹ネットワークに接続されている種々のサーバやユーザ端末等との間で情報を送受信する。
【0003】
都市部の移動体通信システムでは、ユーザ接続呼数や呼接続後の通信トラヒックに対応するため、複数の無線基地局が密集して置局され、複数のカバーエリアがオーバーラップするように構築されている。したがって、ある無線基地局Aにおいてバックホール回線が通信不能となった場合、その無線基地局Aのカバーエリア内の移動端末の呼は、オーバーラップしている別のカバーエリアを形成している他の無線基地局Bに切り替えられて、継続して伝送される。言い換えると、無線基地局を冗長構成として備えることによって、バックホール回線の障害に対して、通信サービスが途切れないようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−206764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、田畑や山林等の広がる地域では、幹線道路沿いに無線基地局が点在して置局され、カバーエリア同士のオーバーラップも少ないこともあり、無線基地局の冗長構成が採られていない場合がある。また、そのような地域において、恒久的に無線基地局を冗長構成にすると、コストが高くなるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明では、無線基地局のバックホール回線に障害が発生し通信不能となったときに、通信サービスが途切れないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明者等は鋭意研究を行い、冗長構成を構築するのではなく、バックホール回線が復旧するまでの短い期間だけ、通信サービスが途切れないようにする応急措置を取れるようにした方が、費用対効果が大きくなるということに着目し、本発明を完成させた。すなわち、本発明に係る移動体通信システムは、バックホール回線に障害が発生した無線基地局(以降、障害無線基地局と称す。)を検出し、障害無線基地局および障害無線基地局の近隣の無線基地局の送信電力を増加して、障害無線基地局と近隣の無線基地局との間で情報の送受信(リレー通信)を行い、近隣の無線基地局を介して(迂回経路を経由して)、通信サービスが途切れないように情報の送受信を継続する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、無線基地局のバックホール回線に障害が発生し通信不能となったときに、通信サービスが途切れないようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態における通常時の移動体通信システムの構成例を示す図である。
【図2】通常時の時分割多重通信方式におけるチャネル使用例を示す図である。
【図3】バックホール回線に障害が発生し、迂回経路が構築された場合の一例を示す図である。
【図4】迂回経路が構築された場合におけるチャネル使用例を示す図である。
【図5】センタ監視装置の構成例を示す図である。
【図6】無線基地局の構成例を示す図である。
【図7】本実施形態における移動体通信システムの処理シーケンス例を示す図である。
【図8】本実施形態における移動体通信システムの処理シーケンス例のつづきを示す図である。
【図9】センタ監視装置の処理フロー例を示す図である。
【図10】センタ監視装置の処理フロー例のつづきを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態(以降、「本実施形態」と称す。)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、本実施形態における通常時の移動体通信システム1の構成例を示している。
図1に示すように、移動体通信システム1は、無線基地局20(20A,20B,20C,20D)、無線基地局20と基幹ネットワーク60とを接続するバックホール回線50、基幹ネットワーク60に接続しているセンタ監視装置10で構成される。なお、図1には、無線基地局20が4台記載されているが、4台に限られない。
【0012】
また、図1には、移動端末30(30A,30B,30D)が記載されている。移動端末30は、例えば、移動体に携帯される携帯端末や携帯電話等であって、無線によって無線基地局20との間で情報を送受信することができる。なお、図1では、移動端末30は3台しか記載していないが、3台に限られることはなく、1つのカバーエリア40の中に複数台存在して、1つの無線基地局20との間で情報を送受信するものとする。
【0013】
無線基地局20は、通常時の送信電力によって決まるカバーエリア40(40A,40B,40C,40D)の範囲に存在する移動端末30と情報を無線によって送受信する機能を有する。そして、例えば、カバーエリア40A内の移動端末30Aが、移動端末30Dを宛先とする情報を送信した場合、無線基地局20A、バックホール回線50、基幹ネットワーク60内の不図示の交換・中継機能を備えるサーバ(交換装置、中継装置)、および無線基地局20Dを経由して、カバーエリア40D内の移動端末30Dに情報が伝達される。なお、無線基地局20の機能の詳細については後記する。
【0014】
センタ監視装置10は、監視者によって操作され、移動体通信システム1における障害や復旧状態を監視する機能を有する。なお、センタ監視装置10の機能の詳細については後記する。
【0015】
図2は、無線基地局20と移動端末30との間で行われる、通常時の時分割多重通信方式におけるチャネル使用例を示している。なお、図2では、時分割多重通信方式の説明を簡略化するために、2チャネルの場合を示している。
例えば、図2上段の図では、無線基地局20Bと移動端末30Bとの間で、チャネル1を用いて通信している場合を表している。TX1は送信チャネル、RX1は受信チャネルを表す。また、チャネル2ではTX2,RX2の両方が記載されている。これは、チャネル2が使用されていないことを表している。
【0016】
また、図2中段の図は、無線基地局20Aと移動端末30Aとの間で、チャネル1が使用されている場合を表している。図2下段の図は、無線基地局20Dと移動端末30Dとの間で、チャネル2が使用されている場合を表している。それぞれの無線基地局20と移動端末30との間の通信は、通常時には、他の無線基地局20との間で干渉が発生しないようになっている。
【0017】
次に、図3は、無線基地局20Aのバックホール回線に障害が発生し、迂回経路が構築された場合を表している。
無線基地局20Aおよび無線基地局20Aの近隣の無線基地局20Bの送信電力が所定値に増加され、カバーエリア40A,40Bが、図1の場合より拡大している。そのため、無線基地局20Aと無線基地局20Bとの間で、通信が行える状態になる。そして、無線基地局20Aと無線基地局20Bとの間でリレー通信を行って、無線基地局20Aが送受信する情報を、無線基地局20Bを経由して伝達する迂回経路が構築される。なお、以降の説明では、無線基地局20Bのように、情報をリレーする無線基地局20をドナー局と称する。
【0018】
図4には、迂回経路が構築された場合におけるチャネル使用例を示している。図4上段の図および中段の図に示すように、無線基地局20Bと無線基地局20Aとは、チャネル2を用いて、リレー通信を行う。このとき、図4下段の図に示すように、無線基地局20Dと移動端末30Dとが、チャネル2を使用しているので、無線基地局20Dからの送信波が干渉波となって、無線基地局20Aに受信されるとともに、無線基地局20Aからの送信波が干渉波となって、無線基地局20Dに受信されることになる。そのため、送信波が干渉波となるような位置に有る無線基地局20Dにおいて、チャネル2を使用不可とするように、センタ監視装置10から指示を出す。なお、このチャネル使用不可の詳細については、後記する。
【0019】
図4では、時分割多重通信方式のチャネル数を2の場合で説明したため、一見すると、チャネル2を使用している移動端末30Dと無線基地局20Dとの通信が切断されてしまうように見えるが、空きチャネルのチャネル1に変更することによって、移動端末30Dと無線基地局20Dとの間の通信を継続することが可能である。なお、実運用されている時分割多重通信方式では、チャネル数は2より大きく、空きチャネルに余裕があるため、チャネルを切替えて通信を継続することが容易に可能である。
【0020】
次に、センタ監視装置10の構成例について、図5を用いて説明する(適宜、図1参照)。
センタ監視装置10は、図示しないCPU(Central Processing Unit)およびメインメモリによって種々の処理を実行する処理部11、アプリケーションプログラム等を記憶する記憶部12、入出力部13および通信部14を備えている。
【0021】
処理部11は、記憶部12に記憶されているアプリケーションプログラムをメインメモリに展開して、障害検出部111、候補無線基地局選択部112および候補無線基地局制御部113を機能として具現化している。
【0022】
障害検出部111は、バックホール回線50の障害を検出するために、無線基地局20に対して、所定の周期で到達確認情報を送信している。所定の周期とは、定期、不定期な周期でも良い。そして、障害検出部111は、無線基地局20から、到達確認情報に対する応答情報を受信しなかった場合に、バックホール回線50に障害が有ると判定し、障害を検出する。また、障害検出部111は、到達確認情報に対する応答情報を受信した場合には、バックホール回線50に障害がないと判定する。ただし、障害検出部111は、障害がないと判定する直前まで障害を検出していた場合には、バックホール回線50が復旧したと判定し、復旧を検出する。
【0023】
候補無線基地局選択部112は、ドナー局(情報をリレーする無線基地局20)を決定するために、バックホール回線50が障害となった無線基地局20(すなわち、障害無線基地局)の位置を記憶部12から読み出すとともに、障害無線基地局から所定の距離の範囲内に存在する無線基地局20を、リレー通信のための候補の無線基地局20(以降、候補無線基地局と称する。)として選択する。具体的には、候補無線基地局選択部112は、記憶部12に記憶されている無線基地局位置情報121を参照して、無線基地局20の位置(緯度,経度)を読み出し、障害無線基地局と所定の距離の範囲内の無線基地局20を候補無線基地局として選択する。
【0024】
候補無線基地局制御部113は、候補無線基地局20に対して、送信電力を通常値より大きい所定値に増加したり通常値に戻したりする指示、障害無線基地局に接続を試行する指示、リレー通信用のチャネルの使用不可の指示等を送信して制御する。なお、制御の詳細については後記する。
【0025】
記憶部12は、無線基地局位置情報121や不図示のアプリケーションプログラム等を記憶している。
無線基地局位置情報121は、無線基地局20を識別する基地局IDごとに位置情報として緯度、経度を記憶している。なお、無線基地局位置情報121は、緯度、経度だけでなく、高度も記憶していると、より正確に距離を算出できるので好ましい。
【0026】
入出力部13は、キーボードやマウス等の入力装置を接続する入力インタフェースおよびディスプレイ等の表示装置を接続する出力インタフェースの機能を備え、監視者が操作する入力装置から情報入力を受け付け、処理結果や入力を促すメッセージ等の情報を表示装置に出力する。
【0027】
通信部14は、基幹ネットワーク60を介して情報を送受信するための通信インタフェースの機能を有する。
【0028】
次に、無線基地局20の構成例について、図6を用いて説明する(適宜、図1参照)。
図6に示すように、無線基地局20は、図示しないCPU(Central Processing Unit)およびメインメモリによって種々の処理を実行する処理部21、アプリケーションプログラム等を記憶する記憶部22、入出力部23および通信部24を備えている。
【0029】
処理部21は、記憶部22に記憶されているアプリケーションプログラムをメインメモリに展開して、障害検出部211、送信電力制御部212、チャネル制御部213および通信処理部214を機能として具現化している。
【0030】
障害検出部211は、センタ監視装置10から所定の周期で受信するはずの到達確認情報を受信していないことを検出した場合、バックホール回線50に障害が有ると判定し、障害を検出する。また、障害検出部211は、到達確認情報を受信した場合には、バックホール回線50に障害がないと判定し、応答情報をセンタ監視装置10に返信する。ただし、障害検出部211は、障害がないと判定する直前まで障害を検出していた場合には、バックホール回線50が復旧したと判定し、復旧を検出する。
【0031】
送信電力制御部212は、センタ監視装置10からの指示に基づいて、送信電力を通常値より大きい所定値に増加したり、通常値に戻したりする。
【0032】
チャネル制御部213は、センタ監視装置10からの指示に基づいて、リレー用通信に用いられているチャネルを使用不可にしたり、使用不可を解除したりする。
【0033】
通信処理部214は、カバーエリア40内の移動端末30との間で情報の送受信を行うとともに、移動端末30から受信した情報をバックホール回線50を経由して基幹ネットワーク60に伝送したり、基幹ネットワーク60から伝送されてくる情報を移動端末30に送信したりする。また、障害無線基地局との間でリレー通信が可能か否かを判定するための接続の試行を実行する。
【0034】
記憶部22は、送信電力の通常値221、送信電力の所定値222および使用不可チャネル223を記憶している。
送信電力の通常値221は、バックホール回線50に障害がない場合に用いられる送信電力の値である。
送信電力の所定値222は、バックホール回線50に障害が有る場合に用いられる送信電力の値である。この所定値は、通常値より大きく設定される。なお、送信電力の所定値222は、他の無線基地局20との間の距離に応じて、距離が大きくなるにしたがって、大きな値となるような関係式またはテーブルで表されていても構わない。
使用不可チャネル223は、リレー通信用に使用され、使用不可となっているチャネルである。
【0035】
入出力部23は、キーボードやマウス等の入力装置を接続する入力インタフェースおよびディスプレイ等の表示装置を接続する出力インタフェースの機能を備え、監視者が操作する入力装置から情報入力を受け付け、処理結果や入力を促すメッセージ等の情報を表示装置に出力する。
【0036】
通信部24は、基幹ネットワーク60を介して情報を送受信するための通信インタフェースの機能を有する。
【0037】
次に、移動体通信システム1における処理シーケンス例について、図7を用いて説明する(適宜、図1,5,6参照)。図7では、無線基地局20Aのバックホール回線に障害が発生して、無線基地局20Aが障害無線基地局となる場合を例として、説明する。また、候補無線基地局として無線基地局20B,20Dが選択され、無線基地局20Bがドナー局となるものとして説明する。
【0038】
ステップS1では、センタ監視装置10の障害検出部111は、所定の周期で到達確認情報を無線基地局20Aに送信する。実際には、到達確認情報は、すべての無線基地局20に送信される。
ステップS2では、無線基地局20Aの障害検出部211は、到達確認情報を受信して、その到達確認情報に対応する応答情報を、センタ監視装置10に送信する。実際には、応答情報は、到達確認情報を受信した無線基地局20すべてから送信される。
【0039】
ステップS3では、センタ監視装置10の障害検出部111は、所定の周期で到達確認情報を無線基地局20Aに送信する。しかし、バックホール回線50の障害により、到達確認情報は、無線基地局20Aに到着しない。
そのため、ステップS4では、無線基地局20Aの障害検出部211は、到達確認情報を受信できないので、その到達確認情報に対応する応答情報を、センタ監視装置10に送信しない。
【0040】
ステップS5では、センタ監視装置10の障害検出部111は、無線基地局20Aから応答情報を受信できないため、無線基地局20Aのバックホール回線50に障害が発生したと判定し、障害を検出する。
ステップS6では、無線基地局20Aの障害検出部211は、センタ監視装置10から到達確認情報を受信できないため、無線基地局20Aのバックホール回線50に障害が発生したと判定し、障害を検出する。以降のシーケンスでは、バックホール回線50に障害の有る無線基地局20Aを、障害無線基地局(第1の無線基地局)として説明する。
【0041】
ステップS7では、センタ監視装置10の候補無線基地局選択部112は、候補無線基地局20を選択する。具体的には、候補無線基地局選択部112は、無線基地局位置情報121を参照して、障害無線基地局の緯度経度を読み出すとともに、障害無線基地局の近隣の無線基地局20の緯度経度を読み出す。そして、候補無線基地局選択部112は、監視者によって設定された所定の距離の範囲内の無線基地局20を、候補無線基地局20として選択する。
【0042】
ステップS8では、障害無線基地局の送信電力制御部212は、障害を検出した後、記憶部22の送信電力の所定値222を参照して、送信電力を所定値に増加する。
【0043】
ステップS9では、センタ監視装置10の候補無線基地局制御部113は、候補無線基地局20(20B,20D)に対して、送信電力を所定値に増加する指示を送信する。
ステップS10では、候補無線基地局20(20B,20D)の送信電力制御部212は、記憶部22の送信電力の所定値222を参照して、送信電力を所定値に増加する。
【0044】
ステップS11aでは、センタ監視装置10の候補無線基地局制御部113は、候補無線基地局20Dに対して、障害無線基地局に接続の試行を指示する。なお、接続の試行の順番は、障害無線基地局と候補無線基地局20との間の距離の近い順に指示されることが好ましい。
ステップS12aでは、候補無線基地局20Dの通信処理部214は、接続の試行を実行する。
ステップS13aでは、候補無線基地局20Dの通信処理部214は、障害無線基地局との間で情報の送受信が行えない場合に、接続失敗通知をセンタ監視装置10に送信する。通信が行えない原因としては、候補無線基地局20Dと障害無線基地局との間に何らかの障害物が存在しているケース等が考えられる。
【0045】
センタ監視装置10は、ステップS13aで接続失敗通知を受信しているので、次に、ステップS11bでは、センタ監視装置10の候補無線基地局制御部113は、候補無線基地局20Bに対して、障害無線基地局に接続の試行を指示する。
ステップS12bでは、候補無線基地局20Bの通信処理部214は、接続の試行を実行する。
ステップS13bでは、候補無線基地局20Bの通信処理部214は、障害無線基地局との間で情報の送受信が行えた場合に、接続成功通知をセンタ監視装置10に送信する。
【0046】
ステップS14では、センタ監視装置10の候補無線基地局制御部113は、接続成功通知を最初に送信してきた候補無線基地局20Bをドナー局(第2の無線基地局)に決定する。以降のシーケンスでは、候補無線基地局20Bを、ドナー局として説明する。
【0047】
ステップS15では、センタ監視装置10の候補無線基地局制御部113は、ドナー局以外の候補無線基地局20(20D)に対して、送信電力を通常値に設定する指示を送信する。
ステップS16では、候補無線基地局20Dの送信電力制御部212は、記憶部22の送信電力の通常値221を参照して、送信電力を通常値に戻す。
【0048】
ステップS17では、センタ監視装置10の候補無線基地局制御部113は、ドナー局以外の候補無線基地局20(20D)に対して、リレー通信用チャネルの使用不可を指示する。なお、候補無線基地局20Dのチャネル制御部213は、リレー通信用チャネルの使用不可の指示を受信して、記憶部22の使用不可チャネル223に、指示された使用不可のチャネルを記憶する。
【0049】
ステップS18では、障害無線基地局およびドナー局は、双方の間でリレー通信を実行する。
【0050】
次に、図8では、障害無線基地局のバックホール回線50が復旧して、通常時の移動体通信システム1に戻すシーケンス例について、説明する。
【0051】
ステップS21では、センタ監視装置10の障害検出部111は、所定の周期で到達確認情報を障害無線基地局(無線基地局20A)に送信する。実際には、到達確認情報は、すべての無線基地局20に送信される。
ステップS22では、障害無線基地局(無線基地局20A)の障害検出部211は、バックホール回線50が復旧しているので、到達確認情報を受信して、その到達確認情報に対応する応答情報を、センタ監視装置10に送信する。実際には、応答情報は、到達確認情報を受信した無線基地局20すべてから送信される。
【0052】
ステップS23では、センタ監視装置10の障害検出部111は、障害無線基地局から応答情報を受信したので、障害無線基地局のバックホール回線50に障害がないと判定し、復旧を検出する。
ステップS24では、障害無線基地局の障害検出部211は、センタ監視装置10から到達確認情報を受信したため、自身のバックホール回線50に障害がないと判定し、復旧を検出する。
【0053】
ステップS25では、センタ監視装置10の候補無線基地局制御部113は、ドナー局に対して、リレー通信の終了を指示する。
【0054】
ステップS26では、センタ監視装置10の候補無線基地局制御部113は、ドナー局に対して、送信電力を通常値に設定する指示を送信する。
ステップS27では、ドナー局の送信電力制御部212は、記憶部22の送信電力の通常値221を参照して、送信電力を通常値に戻す。
【0055】
ステップS28では、センタ監視装置10の候補無線基地局制御部113は、ドナー局以外の候補無線基地局20(20D)に対して、使用不可チャネルの設定解除を指示する。なお、候補無線基地局20(20D)のチャネル制御部213は、リレー通信用チャネルの設定解除の指示を受信して、記憶部22の使用不可チャネル223に記憶されている使用不可のチャネルを削除する。以降のシーケンスでは、ドナー局は無線基地局20B、候補無線基地局20(20D)は無線基地局20Dとして説明する。
ステップS29では、障害無線基地局の送信電力制御部212は、送信電力を通常値に設定する。以降のシーケンスでは、障害無線基地局は無線基地局20Aとして説明する。
【0056】
ステップS30では、無線基地局20A,20B,20Dは、通常時の通信処理を実行する。
【0057】
次に、センタ監視装置10の処理フロー例について、図9,10を用いて説明する(適宜、図1,5参照)。
【0058】
ステップS901では、障害検出部111は、バックホール回線50の障害を検出したか否かを判定する。具体的には、障害検出部111は、所定の周期で到達確認情報を無線基地局20に送信する。しかし、障害検出部111は、無線基地局20から応答情報を受信できない場合には、その無線基地局20のバックホール回線50に障害が発生したと判定し、障害を検出する。
障害を検出したと判定した場合(ステップS901でYes)、処理はステップS902へ進み、障害を検出しないと判定した場合(ステップS901でNo)、処理は図10のステップS1001へ進む。
【0059】
ステップS902では、障害検出部111は、障害無線基地局を検出する。
ステップS903では、候補無線基地局選択部112は、候補無線基地局を選択する。具体的には、候補無線基地局選択部112は、無線基地局位置情報121を参照して、障害無線基地局の緯度経度を読み出すとともに、障害無線基地局の近隣の無線基地局20の緯度経度を読み出す。そして、候補無線基地局選択部112は、監視者によって設定された所定の距離の範囲内の無線基地局20を、候補無線基地局20として選択する。
【0060】
ステップS904では、候補無線基地局選択部112は、候補無線基地局20が有るか否かを判定する。
候補無線基地局20が有ると判定した場合(ステップS904でYes)、処理はステップS905へ進み、候補無線基地局20がないと判定した場合(ステップS904でNo)、処理はステップS906へ進む。
【0061】
ステップS905では、候補無線基地局制御部113は、候補無線基地局20に対して、送信電力を所定値に増加する指示を送信する。
ステップS906では、候補無線基地局制御部113は、候補無線基地局20の該当無しの通知を、入出力部23を介して、不図示の表示装置に出力する。そして、処理を終了する。
【0062】
ステップS907では、候補無線基地局制御部113は、順次、候補無線基地局20に対して、障害無線基地局に接続の試行を指示する。なお、接続の試行の順番は、障害無線基地局と候補無線基地局20との間の距離の近い順に指示されることが好ましい。また、候補無線基地局制御部113は、接続試行を行った候補無線基地局20から、接続成功通知または接続失敗通知を受信する。
【0063】
ステップS908では、候補無線基地局制御部113は、接続成功通知を受信したか否かを判定する。
接続成功通知を受信したと判定した場合(ステップS908でYes)、処理はステップS909へ進み、接続成功通知を受信しないと判定した場合、すなわち接続失敗通知を受信した場合(ステップS908でNo)、処理はステップS912へ進む。
【0064】
ステップS909では、候補無線基地局制御部113は、接続成功通知を最初に送信してきた候補無線基地局20をドナー局として決定する。
【0065】
ステップS910では、候補無線基地局制御部113は、ドナー局以外の候補無線基地局20に対して、送信電力を通常値に設定する指示を送信する。
ステップS911では、候補無線基地局制御部113は、ドナー局以外の候補無線基地局20に対して、リレー通信用チャネルの使用不可を指示する。そして、処理はステップS901へ戻る。
【0066】
ステップS912では、候補無線基地局制御部113は、接続試行を未処理の候補無線基地局が有るか否かを判定する。
接続試行を未処理の候補無線基地局が有ると判定した場合(ステップS912でYes)、処理はステップS907へ進み、接続試行を未処理の候補無線基地局がないと判定した場合(ステップS912でNo)、処理はステップS913へ進む。
【0067】
ステップS913では、候補無線基地局制御部113は、接続成功した候補無線基地局20がないと判定することによって、該当無しの通知を、入出力部23を介して、不図示の表示装置に出力する。そして、処理を終了する。
【0068】
図10に移って、ステップS1001では、障害検出部111は、障害無線基地局のバックホール回線50の復旧を検出したか否かを判定する。具体的には、障害検出部111は、到達確認情報を障害無線基地局に送信し、障害無線基地局から応答情報を受信したとき障害無線基地局のバックホール回線50に障害がないと判定し、復旧を検出する。
【0069】
復旧を検出したと判定した場合(ステップS1001でYes)、処理はステップS1002へ進み、復旧を検出していないと判定した場合(ステップS1001でNo)、処理は図9のステップS901へ戻る。
【0070】
ステップS1002では、候補無線基地局制御部113は、ドナー局に対して、リレー通信の終了を指示する。
ステップS1003では、候補無線基地局制御部113は、ドナー局に対して、送信電力を通常値に設定する指示を送信する。
【0071】
ステップS1004では、候補無線基地局制御部113は、ドナー局以外の候補無線基地局20に対して、使用不可チャネルの設定解除を指示する。
【0072】
以上、本実施形態における移動体通信システム1は、(1)センタ監視装置10が、バックホール回線50に障害が発生した無線基地局20(障害無線基地局)を検出し、(2)障害無線基地局が、近隣の無線基地局20と通信するため、送信電力を通常値より大きい所定値に増加し、(3)センタ監視装置10が、障害無線基地局と通信するための候補となる候補無線基地局を選択し、候補無線基地局に対して、送信電力を通常値より大きい所定値に増加させる指示を出し、(4)候補無線基地局が、障害無線基地局に接続を試行し、(5)接続に成功した候補無線基地局(ドナー局)が、障害無線基地局との間で情報の送受信(リレー通信)を行い、(6)センタ監視装置10が、ドナー局以外の候補無線基地局に対して、送信電力を通常値に戻す指示、およびリレー通信で用いているチャネルの使用不可(使用禁止)の指示を出し、(7)バックホール回線50が復旧した際に、センタ装置10が、リレー通信の終了の指示、送信電力を通常値に戻す指示、使用不可チャネルの設定を解除する指示を出す。移動体通信システム1は、このような構成および方法を備えているため、無線基地局20のバックホール回線50に障害が発生し通信不能となったときに、通信サービスが途切れないようにすることが可能となる。
【0073】
なお、図9のステップS906の後では、処理を終了するものとして説明したが、監視者によって候補無線基地局20を選択するために設定された距離をより大きな距離に変更して、ステップS903(候補無線基地局の選択)へ戻るようにしても構わない。
【符号の説明】
【0074】
1 移動体通信システム
10 センタ監視装置
11 処理部
12 記憶部
13 入出力部
14 通信部
20,20A,20B,20C,20D 無線基地局
21 処理部
22 記憶部
23 入出力部
24 通信部
30,30A,30B,30D 移動端末
40,40A,40B,40C,40D カバーエリア
50 バックホール回線
60 基幹ネットワーク
111 障害検出部
112 候補無線基地局選択部
113 候補無線基地局制御部
121 無線基地局位置情報
211 障害検出部
212 送信電力制御部
213 チャネル制御部
221 送信電力の通常値
222 送信電力の所定値
223 使用不可チャネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に携帯される移動端末と情報を送受信する複数の無線基地局と、前記無線基地局のバックホール回線を介して接続され前記無線基地局を制御するセンタ監視装置とで構成される移動体通信システムであって、
前記無線基地局は、
前記センタ監視装置から到達確認情報を所定の周期で受信し、前記到達確認情報に対する応答情報を前記センタ監視装置に送信し、前記到達確認情報を受信しなかった場合に、前記バックホール回線に障害が発生したと判定する障害検出部と、
前記バックホール回線に障害が発生したと判定した場合、送信電力を通常値より大きい所定値に増加する送信電力制御部と
を備え、
前記センタ監視装置は、
前記無線基地局に対して到達確認情報を所定の周期で送信し、当該無線基地局から前記到達確認情報に対応する応答情報を受信しなかった場合に、前記バックホール回線に障害が発生したと判定して、その障害が発生した前記無線基地局を第1の無線基地局とする障害検出部と、
前記第1の無線基地局の近隣の無線基地局に対して、送信電力を通常値より大きい所定値に増加する指示を送信して、前記近隣の無線基地局の送信電力を増加する候補基地局制御部と、
前記近隣の無線基地局を所定の基準に基づいて選択して、送信電力を通常値より大きい所定値に増加した前記第1の無線基地局と通信可能となった前記近隣の無線基地局の中の1つを第2の無線基地局とする候補無線基地局選択部と、
を備え、
前記第2の無線基地局が、前記第1の無線基地局が前記移動端末と送受信する情報をリレー通信する
ことを特徴とする移動体通信システム。
【請求項2】
前記候補基地局制御部は、前記第2の無線基地局以外の前記近隣の無線基地局に対して、送信電力を通常値に戻す指示を送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の移動体通信システム。
【請求項3】
前記候補無線基地局選択部は、
前記近隣の無線基地局を選択する際に、前記第1の無線基地局からの距離に基づいて前記近隣の無線基地局を選択する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の移動体通信システム。
【請求項4】
前記候補基地局制御部は、
前記第1の無線基地局と前記第2の無線基地局との間で、時分割多重方式のチャネルを用いてリレー通信を行う場合、
前記第2の無線基地局以外の前記近隣の無線基地局に対して、前記リレー通信に用いるチャネルを使用不可にする指示を送信する
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の移動体通信システム。
【請求項5】
移動体に携帯される移動端末と情報を送受信する複数の無線基地局と、前記無線基地局のバックホール回線を介して接続され前記無線基地局を制御するセンタ監視装置とで構成される移動体通信システムの迂回経路構築方法であって、
前記無線基地局は、
前記センタ監視装置から到達確認情報を所定の周期で受信し、前記到達確認情報に対する応答情報を前記センタ監視装置に送信し、前記到達確認情報を受信しなかった場合に、前記バックホール回線に障害が発生したと判定する障害検出ステップと、
前記バックホール回線に障害が発生したと判定した場合、送信電力を通常値より大きい所定値に増加する送信電力制御ステップと
を実行し、
前記センタ監視装置は、
前記無線基地局に対して到達確認情報を所定の周期で送信し、当該無線基地局から前記到達確認情報に対応する応答情報を受信しなかった場合に、前記バックホール回線に障害が発生したと判定して、その障害が発生した前記無線基地局を第1の無線基地局とする障害検出ステップと、
前記第1の無線基地局の近隣の無線基地局に対して、送信電力を通常値より大きい所定値に増加する指示を送信して、前記近隣の無線基地局の送信電力を増加する候補基地局制御ステップと、
前記近隣の無線基地局を所定の基準に基づいて選択して、送信電力を通常値より大きい所定値に増加した前記第1の無線基地局と通信可能となった前記近隣の無線基地局の中の1つを第2の無線基地局とする候補無線基地局選択ステップと、
前記第2の無線基地局以外の前記近隣の無線基地局に対して、送信電力を通常値に戻す指示を送信するステップと
を実行し、
前記第2の無線基地局は、前記第1の無線基地局が前記移動端末と送受信する情報をリレー通信する
ことを特徴とする迂回経路構築方法。
【請求項6】
前記候補基地局制御ステップでは、
前記第2の無線基地局以外の前記近隣の無線基地局に対して、送信電力を通常値に戻す指示を送信する
ことを特徴とする請求項5に記載の迂回経路構築方法。
【請求項7】
前記候補無線基地局選択ステップでは、
前記近隣の無線基地局を選択する際に、前記第1の無線基地局からの距離に基づいて前記近隣の無線基地局を選択する
ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の迂回経路構築方法。
【請求項8】
前記候補基地局制御ステップでは、
前記第1の無線基地局と前記第2の無線基地局との間で、時分割多重方式のチャネルを用いてリレー通信を行う場合、
前記第2の無線基地局以外の前記近隣の無線基地局に対して、前記リレー通信に用いるチャネルを使用不可にする指示を送信する
ことを特徴とする請求項5ないし請求項7のいずれか一項に記載の迂回経路構築方法。
【請求項9】
移動体に携帯される移動端末と情報を送受信する複数の無線基地局とバックホール回線を介して接続され、前記無線基地局を制御するセンタ監視装置であって、
前記無線基地局に対して到達確認情報を所定の周期で送信し、当該無線基地局から前記到達確認情報に対応する応答情報を受信しなかった場合に、前記バックホール回線に障害が発生したと判定して、その障害が発生した前記無線基地局を第1の無線基地局とする障害検出部と、
前記第1の無線基地局の近隣の無線基地局に対して、送信電力を通常値より大きい所定値に増加する指示を送信して、前記近隣の無線基地局の送信電力を増加させる候補基地局制御部と、
前記近隣の無線基地局を所定の基準に基づいて選択して、送信電力を通常値より大きい所定値に増加した前記第1の無線基地局と通信可能となった前記近隣の無線基地局の中の1つを第2の無線基地局とする候補無線基地局選択部と、
を備え、
前記第2の無線基地局は、前記第1の無線基地局が前記移動端末と送受信する情報をリレー通信する
ことを特徴とするセンタ監視装置。
【請求項10】
前記候補基地局制御部が、前記第2の無線基地局以外の前記近隣の無線基地局に対して、送信電力を通常値に戻す指示を送信する
ことを特徴とする請求項9に記載のセンタ監視装置。
【請求項11】
前記候補無線基地局選択部は、
前記近隣の無線基地局を選択する際に、前記第1の無線基地局からの距離に基づいて前記近隣の無線基地局を選択する
ことを特徴とする請求項9または請求項10に記載のセンタ監視装置。
【請求項12】
前記候補基地局制御部は、
前記第1の無線基地局と前記第2の無線基地局との間で、時分割多重方式のチャネルを用いてリレー通信を行う場合、
前記第2の無線基地局以外の前記近隣の無線基地局に対して、前記リレー通信に用いるチャネルを使用不可にする指示を送信する
ことを特徴とする請求項9ないし請求項11のいずれか一項に記載のセンタ監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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