説明

移動体通信システムおよびその通信方法

【課題】 現在位置が未知であり比較的狭域な通信リンクを形成する複数の移動体のうちの所定移動体と、この通信リンク外の1移動体とを通信させることが可能な移動体通信システムの提供。
【解決手段】 第1移動体のうちの所定移動体12および第2移動体21が自己の現在位置情報を通信リンクAを経由して中継移動体22へ送信し、かつ中継移動体22から現在位置情報を通信リンクBを経由して管制センタ23へ送信し、次いで管制センタ23から所定移動体12の現在位置情報および管制情報を通信リンクBを経由して第2移動体21へ送信し、かつ管制センタ23から第2移動体21の現在位置情報および管制情報を所定移動体12へ通信リンクBを経由して送信し、これにより所定移動体12および第2移動21体間の通信を確立させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信システムおよびその通信方法に関し、特に複数の移動体が相互に通信する比較的狭域な通信リンクに他の移動体を加入させる移動体通信システムおよびその通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
指向性アンテナを用いて移動体間で通信を行う通信システムは知られている。この場合、通信を行うに際し予め相手方移動体の現在位置情報を取得しておく必要がある。
【0003】
一方、通信を行うに際し相手方移動体の現在位置情報を取得する関連技術の一例が特許文献1に開示されている。この通信システムは複数の移動体と、これら複数の移動体と共に移動して無線ネットワークを構成する大型移動体と、複数の移動体および大型移動体が移動する空域を監視してその監視結果をPP通信ネットワークにより大型移動体に送信する管制レーダ装置とを備えた情報通信システムである。
【0004】
大型移動体は、複数の移動体および管制レーダ装置により取得されたレーダ情報および自己が取得したレーダ情報を相関処理して空域内を移動する移動体の位置情報を算出し、複数の移動体は、大型移動体により算出された空域内を移動する移動体の位置情報を無線ネットワークを介して取得し、その取得した移動体の位置情報を自己の表示手段にシンボル表示する。
【0005】
また、他の関連技術の一例が特許文献2に開示されている。この通信システムでは、展開された1郡の空中移動体(AV)が、指向性フェーズドアレイアンテナ(PAA)を使用して、空中を含む移動する顧客間に広帯域の中継通信サービスを提供する。AVは空中で無線リンクを介して相互接続されて、網すなわち星座を形成して、移動する顧客間のトラフィックを経路づける。
【0006】
AV星座はゲートウエイ要素を含み、これは、AV星座の総カバレッジエリア外での通信接続性のために、大容量、ポイントツーポイントの星座または地上基地局リンクを維持する。星座は、星座AVの交替や定例のネットワーク管理機能を有する運用管理センタによって管理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−241429号公報
【特許文献2】特開平10−150401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、現在位置が未知であり比較的狭域な通信リンクを形成する複数の移動体のうちの所定移動体と、この通信リンク外の1移動体とを通信させようとしても、その1移動体には所定移動体の現在位置が不明であるため、所定移動体の方向に指向性アンテナを指向させることができず、よってその1移動体に所定移動体と通信させることができない、換言すればその1移動体をその通信リンクに加入させることができないという課題がある。
【0009】
一方、特許文献1に記載の発明には、複数の移動体と共に移動して無線ネットワークを構成し、その複数の移動体の位置情報をその複数の移動体に送信する大型移動体が記載されている。したがって、特許文献1に記載の発明は、無線ネットワークを構成する大型移動体から通信相手の移動体の位置情報を通信元の移動体に送信する構成を有する点で本発明と共通する。
【0010】
しかし、特許文献1記載の発明は、レーダを用いて移動体の位置情報を取得するものであり、レーダを用いないで移動体の位置情報を取得する本発明とその構成が全く相違する。よって、この発明によって本発明の課題を解決することはできない。
【0011】
また、特許文献2に記載の発明は、移動する顧客(移動体に対応する)の位置情報を空中移動体が生成し、この位置情報を元に空中移動体が移動する顧客と通信する構成を有する点で本発明と共通する。
【0012】
しかし、特許文献2記載の発明には現在位置が未知である移動体の通信リンクに他の移動体を加入させるという目的は全く存在しないため、その目的が本発明と全く相違し、したがってその目的達成のための構成も本発明と全く相違する。よって、この発明によって本発明の課題を解決することはできない。
【0013】
そこで、本発明の目的は、現在位置が未知であり比較的狭域な通信リンクを形成する複数の移動体のうちの所定移動体と、この通信リンク外の1移動体とを通信させることが可能な移動体通信システムおよびその通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、本発明による移動体通信システムは、第1通信リンクを形成し指向性アンテナを用いて相互に通信を行う複数の第1移動体と、前記複数の第1移動体と前記第1通信リンクを経由しかつ無指向性アンテナを用いて通信を行う中継移動体と、少なくとも前記中継移動体と前記第1通信リンクを経由しかつ指向性アンテナを用いて通信を行う第2移動体と、前記第1通信リンクよりも広域な第2通信リンクを形成し、その第2通信リンクを経由して前記複数の第1移動体、中継移動体および第2移動体と無指向性アンテナを用いて通信を行う管制センタとを含み、前記第1移動体のうちの所定移動体および前記第2移動体が自己の現在位置情報を前記第1通信リンクを経由して前記中継移動体へ送信し、かつ前記中継移動体から前記現在位置情報を前記第2通信リンクを経由して前記管制センタへ送信し、次いで前記管制センタから前記所定移動体の現在位置情報および管制情報を前記第2通信リンクを経由して前記第2移動体へ直接送信し、かつ前記管制センタから前記第2移動体の現在位置情報および管制情報を前記所定移動体へ前記第2通信リンクを経由して送信し、これにより前記所定移動体および第2移動体間の通信を確立させる通信確立手段を含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明による通信方法は、第1通信リンクを形成し指向性アンテナを用いて相互に通信を行う複数の第1移動体と、前記複数の第1移動体と前記第1通信リンクを経由しかつ無指向性アンテナを用いて通信を行う中継移動体と、少なくとも前記中継移動体と前記第1通信リンクを経由しかつ指向性アンテナを用いて通信を行う第2移動体と、前記第1通信リンクよりも広域な第2通信リンクを形成し、その第2通信リンクを経由して前記複数の第1移動体、中継移動体および第2移動体と無指向性アンテナを用いて通信を行う管制センタとを含む移動体通信システムにおける通信方法であって、前記第1移動体のうちの所定移動体および前記第2移動体が自己の現在位置情報を前記第1通信リンクを経由して前記中継移動体へ送信し、かつ前記中継移動体から前記現在位置情報を前記第2通信リンクを経由して前記管制センタへ送信し、次いで前記管制センタから前記所定移動体の現在位置情報および管制情報を前記第2通信リンクを経由して前記第2移動体へ直接送信し、かつ前記管制センタから前記第2移動体の現在位置情報および管制情報を前記所定移動体へ前記第2通信リンクを経由して送信し、これにより前記所定移動体および第2移動体間の通信を確立させる通信確立ステップを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、現在位置が未知であり比較的狭域な通信リンクを形成する複数の移動体のうちの所定移動体と、この通信リンク外の1移動体とを通信させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る移動体通信システムの一例の構成図である。
【図2】本発明に係る移動体通信システムの一例の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は本発明に係る移動体通信システムの一例の構成図である。同図を参照すると、本発明に係る移動体通信システムの一例は、第1通信リンクAを形成し指向性アンテナを用いて相互に通信を行う複数の第1移動体11〜14と,複数の第1移動体11〜14と第1通信リンクAを経由しかつ無指向性アンテナを用いて通信を行う中継移動体22と、少なくとも中継移動体22と第1通信リンクAを経由しかつ指向性アンテナを用いて通信を行う第2移動体21と、第1通信リンクAよりも広域な第2通信リンクBを形成し、その第2通信リンクBを経由して複数の第1移動体11〜14、中継移動体22および第2移動体21と無指向性アンテナを用いて通信を行う管制センタ23とを含んで構成される。
【0019】
通信リンクAを構成する移動体11〜14は相互に指向性アンテナを用いて送受信するが、通信リンクA外の移動体に対しては通常データの送信は行わない。したがって、指向性アンテナを用いて通信する通信リンクA外の移動体(本実施形態では、第2移動体21)は移動体11〜14の位置を把握できず、よって移動体11〜14と通信できないという環境にある。
【0020】
なお、本実施形態では移動体11〜14、12および21ならびに中継移動体22が、一例として、車両である場合について説明するが、これに限定されるものではなく、移動体であれば他の例にも本発明の適用が可能である。
【0021】
すなわち、本発明に係る移動体通信システムは、複数の第1移動体11〜14間の通信に通信リンクAが用いられ、また複数の第1移動体11〜14から中継移動体22に対する通信と、第2移動体21から中継移動体22に対する通信とにも通信リンクAが用いられる。一方、管制センタ23から複数の第1移動体11〜14、中継移動体22および第2移動体21に対する通信には通信リンクBが用いられる。
【0022】
そして、通信リンクAは狭域なネットワーク(たとえば、LAN:Local Area Network)を構成し、通信リンクBは広域なネットワーク(たとえば、WAN:Wide Area Network)を構成している。
【0023】
また、移動体21から通信リンクAを経由して中継移動体22へ移動体21の自己位置情報、ステータス情報および了解応答等が送信され、さらに中継移動体22から通信リンクBを経由して管制センタ23へその自己位置情報およびステータス情報が送信される。また、管制センタ23から移動体12および21へ通信リンクBを経由して周辺移動体位置情報および管制情報が放送される。
【0024】
管制センタ23は移動体21を通信リンクAに加入させるために、移動体21と通信リンクAを構成する移動体11〜14のうちの所定移動体12との通信を確立させる。
【0025】
次に、本実施形態の動作の一例について説明する。図2は本発明に係る移動体通信システムの一例の動作を示すフローチャートである。
【0026】
まず、移動体12および21が自己の現在位置情報を中継移動体22を経由して管制センタ23へ送信する(ステップS1)。すなわち、移動体12および21は通信リンクAを経由して自己の現在位置情報を中継移動体22へ送信する。
【0027】
また、この情報を受信した中継移動体22は移動体12および21の現在位置情報、ステータス情報および了解応答等の情報を、通信リンクBを経由して管制センタ23へ送信する。管制センタ23は移動体12および21等からの現在位置情報、ステータス情報および了解応答等の情報等を一括管理する。
【0028】
次に、管制センタ23から移動体12の現在位置情報および管制情報を通信リンクBを経由して移動体21へ送信する(ステップS2)。この管制情報は移動体21に移動体12との通信開始を指示する旨の情報である。
【0029】
次に、管制センタ23から移動体21の現在位置情報および管制情報を通信リンクBを経由して移動体12へ送信する(ステップS3)。この管制情報は移動体21が通信リンクAへ加入を希望する旨の情報である。
【0030】
このように、移動体12および21は通信リンクBを経由した管制センタ23との通信では受信のみを行う。
【0031】
次に、管制センタ23は移動体12および21間の通信を確立させる(ステップS4)。すなわち、管制センタ23から移動体21への通信開始指示情報と、管制センタ23から移動体12への移動体21の通信リンクAへの加入希望情報に基づき移動体12および21間の通信が確立し、もって移動体21を移動体21が属する通信リンクAへ加入させることが可能となる。
【0032】
以上説明したように、本発明の一実施形態によれば、管制センタ23から移動体21に対し、移動体12の現在位置情報を送信することにより、移動体21に通信リンクAの一員である移動体12の存在を認識させることができ、また管制センタ23から通信開始指示を移動体21に送信することにより、移動体21に移動体12との通信を開始させることが可能となる。これにより、移動体21を移動体12が属する通信リンクAへ加入させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明を車両のみならず飛翔体等で構成される通信システムに適用することが可能である。
【符号の説明】
【0034】
11〜14 移動体
21 移動体
22 中継移動体
23 管制センタ
A、B 通信リンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1通信リンクを形成し指向性アンテナを用いて相互に通信を行う複数の第1移動体と、
前記複数の第1移動体と前記第1通信リンクを経由しかつ無指向性アンテナを用いて通信を行う中継移動体と、
少なくとも前記中継移動体と前記第1通信リンクを経由しかつ指向性アンテナを用いて通信を行う第2移動体と、
前記第1通信リンクよりも広域な第2通信リンクを形成し、その第2通信リンクを経由して前記複数の第1移動体、中継移動体および第2移動体と無指向性アンテナを用いて通信を行う管制センタとを含み、
前記第1移動体のうちの所定移動体および前記第2移動体が自己の現在位置情報を前記第1通信リンクを経由して前記中継移動体へ送信し、かつ前記中継移動体から前記現在位置情報を前記第2通信リンクを経由して前記管制センタへ送信し、次いで前記管制センタから前記所定移動体の現在位置情報および管制情報を前記第2通信リンクを経由して前記第2移動体へ直接送信し、かつ前記管制センタから前記第2移動体の現在位置情報および管制情報を前記所定移動体へ前記第2通信リンクを経由して送信し、これにより前記所定移動体および第2移動体間の通信を確立させる通信確立手段を含むことを特徴とする移動体通信システム。
【請求項2】
前記管制センタは前記所定移動体および第2移動体に対し前記現在位置情報および指揮管制情報を放送し、前記所定移動体および第2移動体は前記放送を受信する受信装置を有することを特徴とする請求項1記載の移動体通信システム。
【請求項3】
前記管制センタは前記第2移動体に対し前記所定移動体の現在位置情報とともに前記所定移動体との通信開始指示情報を前記第2通信リンクを経由して送信することを特徴とする請求項1または2記載の移動体通信システム。
【請求項4】
前記管制センタは前記所定移動体に対し前記第2移動体の現在位置情報とともに前記第2移動体の加入希望情報を前記第2通信リンクを経由して送信することを特徴とする請求項1または2記載の移動体通信システム。
【請求項5】
前記所定移動体および第2移動体は前記情報を受信したことに対する了解応答を前記第1通信リンクを経由して前記中継移動体へ送信し、さらに前記中継移動体は前記了解応答を前記第2通信リンクを経由して前記管制センタへ送信することを特徴とする請求項3または4記載の移動体通信システム。
【請求項6】
第1通信リンクを形成し指向性アンテナを用いて相互に通信を行う複数の第1移動体と、前記複数の第1移動体と前記第1通信リンクを経由しかつ無指向性アンテナを用いて通信を行う中継移動体と、少なくとも前記中継移動体と前記第1通信リンクを経由しかつ指向性アンテナを用いて通信を行う第2移動体と、前記第1通信リンクよりも広域な第2通信リンクを形成し、その第2通信リンクを経由して前記複数の第1移動体、中継移動体および第2移動体と無指向性アンテナを用いて通信を行う管制センタとを含む移動体通信システムにおける通信方法であって、
前記第1移動体のうちの所定移動体および前記第2移動体が自己の現在位置情報を前記第1通信リンクを経由して前記中継移動体へ送信し、かつ前記中継移動体から前記現在位置情報を前記第2通信リンクを経由して前記管制センタへ送信し、次いで前記管制センタから前記所定移動体の現在位置情報および管制情報を前記第2通信リンクを経由して前記第2移動体へ直接送信し、かつ前記管制センタから前記第2移動体の現在位置情報および管制情報を前記所定移動体へ前記第2通信リンクを経由して送信し、これにより前記所定移動体および第2移動体間の通信を確立させる通信確立ステップを含むことを特徴とする通信方法。
【請求項7】
前記管制センタは前記所定移動体および第2移動体に対し前記現在位置情報および指揮管制情報を放送し、前記所定移動体および第2移動体は前記放送を受信する受信装置を有することを特徴とする請求項6記載の通信方法。
【請求項8】
前記管制センタは前記第2移動体に対し前記所定移動体の現在位置情報とともに前記所定移動体との通信開始指示情報を前記第2通信リンクを経由して送信することを特徴とする請求項6または7記載の通信方法。
【請求項9】
前記管制センタは前記所定移動体に対し前記第2移動体の現在位置情報とともに前記第2移動体の加入希望情報を前記第2通信リンクを経由して送信することを特徴とする請求項6または7記載の通信方法。
【請求項10】
前記所定移動体および第2移動体は前記情報を受信したことに対する了解応答を前記第1通信リンクを経由して前記中継移動体へ送信し、さらに前記中継移動体は前記了解応答を前記第2通信リンクを経由して前記管制センタへ送信することを特徴とする請求項8または9記載の通信方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−222707(P2012−222707A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88718(P2011−88718)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】