説明

移動体通信システムを構成する基地局及び移動局

【課題】ICIを抑圧することができ、かつ、ハンドオーバー処理を簡略化できるマルチキャリア変調方式を用いた移動体通信システムを構成する基地局及び移動局を提供する。
【解決手段】同一の周波数チャネルf1を用いて、移動する移動局2と複数の基地局1a〜1dとの間で、同じデータを順に同期させながら通信する移動体通信システムにおいて、複数の基地局1a〜1dに割り当てるサブキャリアを以下の条件を満足させて設定する。1.全ての基地局で同一の周波数チャネルf1を用いる。2.隣接する基地局間ではサブキャリアが重複しない。3.1つのサブキャリアセット内では隣り合うサブキャリアを使用しない。4.周波数チャネルf1内の全てのサブキャリア(互いに直交関係を維持できる最密の間隔のサブキャリア)を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信システムを構成する基地局及び移動局に関し、より特定的には、マルチキャリア変調方式を用いた移動体通信システムにおけるキャリア間干渉の抑圧処理及びハンドオーバー処理に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信業界では、マルチメディア等のユーザニーズの多様化に伴い、扱うデータ容量が増加する傾向にある。そのため、移動体通信の分野においても、大容量伝送可能な通信方式が必要不可欠となる。特に、高速移動時でも大容量伝送が実現できる通信方式は、モバイル情報端末機器等のさらなる普及につながる可能性がある。
【0003】
大容量伝送を実現する1つの手段として、マルチキャリア変調方式が知られている。例えば、無線LANの規格であるIEEEスタンダードの802.11aでは、直交周波数分割多重(OFDM: Orthogonal Frequency Division Multiplexing)を用いたマルチキャリア変調方式を採用し、無線伝送速度が最大54Mbpsの伝送容量を実現している。このマルチキャリア変調方式は、使用周波数帯域を複数のサブキャリアに分割し、高レートのシリアルデータストリームを、低レートのパラレルデータストリームに変換した後で変調する。また、狭帯域のサブキャリアを多数用いて信号伝送するため、伝送路の周波数特性の影響を受け難くく高速伝送を実現し易いという特徴がある(非特許文献1を参照)。
【0004】
しかし、マルチキャリア変調方式は、各サブキャリアが互いに重なりあって配置されていることから、マルチパスフェージングに起因する伝送路上での周波数変動に弱い、という問題点がある。この問題の原因は、各サブキャリアの瞬時搬送波周波数がランダムに変動するため、各サブキャリア間の直交関係が崩れ、あるサブキャリアが他のサブキャリアへ漏れ込んで互いに干渉し合うことにある。この干渉は、一般にキャリア間干渉(ICI: Intercarrier Interference)と呼ばれている。高速移動によるドップラー偏移が大きいと、ICIの影響が伝送速度の劣化に繋がるため、高速移動を伴う移動体通信システムにマルチキャリア変調方式の適用を考えた場合、ICIの影響を低減する必要がある。
【0005】
また、移動体通信システムでは、複数の基地局がそれぞれ通信エリアを形成しており、移動局がその複数の通信エリアを通過しながら通信を行う場合には、移動局が通信する基地局を順次切り替える、いわゆるハンドオーバー処理を行うのが一般的である。複数の基地局から送信される送信信号の中心周波数が異なるとき、ハンドオーバー処理において移動局は受信すべき信号の周波数チャネルを切り替える必要があるため、クロック再同期や周波数再同期等の複雑な処理が必要となる。このため、高速引き込み可能な発振器を備えるか又は複数の発振器を備えるか等の対策が必要になるが、低コスト化の妨げとなる(特許文献3を参照)。また、同期処理を行っている間は通信断が起こるため、通信エリアを短時間で頻繁に切り替えるほど高速移動している場合には、通信可能時間に対する同期処理の時間が多くなり、通信エリア内での通信可能時間が十分とれなくなる(特許文献2を参照)。このように、移動体通信システムにマルチキャリア変調方式の適用を考えた場合、さらにハンドオーバー処理を簡略化する必要がある。
【0006】
上述したICIの影響を低減させる従来技術として、OFDM変調方式を利用した路車間通信システムにおいて、ICIの発生を抑圧する技術が知られている(特許文献1を参照)。図15は、特許文献1に記載されたOFDM変調方式を用いた従来の移動体通信システムの概略図である。図16は、図15の従来の移動体通信システムで用いられるサブキャリアの配置方法を説明する図である。この従来の移動体通信システムは、同一の周波数チャネルf1(帯域幅W1)を用いて、複数の基地局1a〜1dと移動する移動局2との間で同じデータを順に同期させながら通信する構成である。
【0007】
この従来の移動体通信システムでは、通信エリア内を移動する移動局2の速度を検出して、この検出結果に応じて、複数の基地局1a〜1dで使用するサブキャリアセット(複数のサブキャリアからなるキャリア群)を次のように同時に切り替える。図16を参照して、移動局2の移動速度が低速の場合には、周波数チャネルf1の全サブキャリアからなる低速用サブキャリアセットに、中速の場合には、少なく間引きされた中速用サブキャリアセットに、高速の場合には、多く間引きされた高速用サブキャリアセットに、動的に切り替える。このように、移動局2の速度に応じて通信に使用するサブキャリアの周波数間隔を広げることで、ドップラー偏移に起因する各サブキャリアの相互干渉を発生し難くして、高速移動時のICI影響を抑圧している。
【0008】
また、上述したハンドオーバ処理を簡略化させる従来技術として、マルチキャリア変調方式を用いた移動体通信システムにおいて、ハンドオーバー時にクロック再同期処理をせずに同期保持したままチャネルを切り替える技術が知られている(特許文献2を参照)。図17は、特許文献2に記載されたOFDM変調方式を用いた従来の移動体通信システムの概略図である。図18は、図17の従来の移動体通信システムで用いられるサブキャリアの配置方法を説明する図である。この従来の移動体通信システムも、同一の周波数チャネルf1(帯域幅W1)を用いて、複数の基地局1a〜1dと移動する移動局2との間で同じデータを順に同期させながら通信する構成である。
【0009】
この従来の移動体通信システムでは、図17に示すように、複数の基地局1a〜1dで使用するサブキャリアセットを、周波数チャネルf1を2分割した低周波数側のサブキャリアセットと高周波数側のサブキャリアセットとで交互に設定する。このように、隣り合う通信エリアで扱うキャリア周波数が異なるため、通信エリアがオーバーラップする領域(以下、オーバーラップ通信エリアという)では、周波数チャネルf1の全てのサブキャリアを受信することになる。よって、オーバーラップ通信エリアで受信する信号を1つのチャネルとみなして復調処理を行うことで、クロック同期を保持したままでのハンドオーバ処理を実現している。
【特許文献1】特許第3127918号明細書
【特許文献2】特開2000−134667号公報
【特許文献3】特許第3045167号明細書
【非特許文献1】リチャード・バン・ニー・アンド・ラムジープラサド、「オーエフディーエム・フォー・ワイヤレス・マルチメディア・コミュニケーションズ」、アーテック・ハウス・ユニバーサル・パーソナル・コミュニケーションズ・ライヴラリ、2000(Richard van Nee and Ramjee Prasad, "OFDM for Wireless Multimedia Communications", Artech House universal personal communications library, 2000)
【非特許文献2】奥村善久、進士昌明、「移動通信の基礎」、電子通信学会、1986
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記特許文献1に記載の技術は、ICIは抑圧できるが、オーバーラップ通信エリアおいてマルチパス現象が生じてしまう。これは、オーバーラップ通信エリアを形成する隣り合う基地局が同じ周波数チャネルを用いて通信しているために生じる。このとき、隣り合う基地局からの信号が等電力及び反転位相で足し合わされた場合、受信信号が完全に打ち消されてしまう可能性がある。
また、上記特許文献2に記載の技術では、ハンドオーバーに対する処理量は小さくできるが、サブキャリア間の周波数間隔はサブキャリアを間引かない通常の場合と等しいため、高速移動時のドップラー偏移によるICIの発生を避けることができない。
【0011】
なお、上記特許文献1と特許文献2とを組み合わせた技術も考えられるが、図19に示すように、復調処理を行う周波数帯域内で使用するサブキャリア数は、上記特許文献1や特許文献2と比較すると1/2になっている。そのため、上記特許文献1や特許文献2と同じ容量のデータを送信しようとすると2倍の周波数帯域が必要となり、周波数利用効率が半減してしまう。
【0012】
それ故に、本発明の目的は、ICIを抑圧することができ、かつ、ハンドオーバー処理を簡略化できるマルチキャリア変調方式を用いた移動体通信システムを構成する基地局及び移動局を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、マルチキャリア変調方式を用いた局間通信を行う移動体通信システムを構成する基地局、移動局、及びそれら局で行われる方法に向けられている。
上記目的を達成するために、本発明の基地局は、通信に使用する複数のサブキャリアが指定されたサブキャリアセットの情報を記憶するサブキャリアセット記憶部と、サブキャリアセットで指定された複数のサブキャリアだけに、送信データを配置した変調用データを生成するサブキャリア配置部と、マルチキャリア変調方式に基づいて、サブキャリア配置部で生成された変調用データをベースバンド送信信号に変調する変調部とを備える。
また、本発明の移動局は、マルチキャリア変調方式に基づいて、受信したベースバンド受信信号を復調データに復調する復調部と、予め定められた複数のサブキャリアセットのいずれを使用してデータが送信されたのかを、復調データに基づいて判断し、当該判断されたサブキャリアセットで指定された複数のサブキャリアだけを復調データから選択した受信データを生成する復調データ選択合成部とを備える。
【0014】
そして、基地局及び移動局で用いられるサブキャリアセットで指定される複数のサブキャリアは、隣接する少なくとも1つの他の基地局と、同一の周波数チャネルに含まれ、かつ異なるサブキャリアが使用され、さらに1つのサブキャリアセット内では、隣り合うサブキャリアを使用しないように設定されている。なお、周波数チャネルには、各サブキャリアが互いに直交関係を維持できる最密の間隔で複数のサブキャリアが配置されている。
【0015】
典型的には、シリアル形式の送信データをパラレル形式の送信データに変換し、サブキャリア配置部へ出力するS/P変換部と、変調部で変調されたベースバンド送信信号をシリアル形式に変換するP/S変換部と、シリアル形式のベースバンド送信信号をアナログ信号に変換し、所定の周波数帯域にアップコンバートした後にアンテナから送信するRF送信部とをさらに備える。また、シリアル形式の送信データに誤り訂正符号化処理を行い、符号化送信信号を出力する符号化部と、符号化送信信号の時間的な順序を並び替えて、S/P変換部へ出力するインタリーブ部とをさらに備えてもよい。
【0016】
また、サブキャリアセットで指定される複数のサブキャリアが、さらに複数のサブキャリアセットに細分化されており、当該複数のサブキャリアセットを用いて、通信エリア内にいる複数の移動局との間で同時通信が可能であってもよい。この場合、通信に使用するサブキャリアセットを通知するための制御信号を、所定の制御チャネルのキャリアか、複数のサブキャリア内の特定のサブキャリアを用いて、通信エリア内にいる複数の移動局へ送信することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
上記本発明によれば、各サブキャリア間の周波数間隔が広くなり、高速移動時のドップラー偏移によるICIの発生を抑圧できる。また、移動局は、ハンドオーバー時に受信信号の周波数チャネルを切り替える必要がないので、使用するサブキャリアセットを変更するだけで簡単にハンドオーバ処理ができる。また、周波数チャネル内の全サブキャリアを使用するので、周波数利用効率の低下を招くことがない。また、隣接する基地局間ではサブキャリアが重複しないため、オーバーラップ通信エリアにおいて受信信号が打ち消されることはない。さらに、オーバーラップ通信エリアにおいて、誤り訂正能力を超える誤りが生じた場合でも、誤り訂正能力の範囲内の誤りに抑えることができるため、全てのデータを復号することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る移動体通信システムの概略図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係る移動体通信システムで用いられるサブキャリアの配置方法を説明する図である。図1において、第1の実施形態に係る移動体通信システムは、同一の周波数チャネルf1(帯域幅W1)を用いて通信する複数の基地局1a〜1dが車道沿いに配置され、走行している車等の移動局2と複数の基地局1a〜1dとの間で同じデータを順に同期させながら通信する構成である。
【0019】
上記構成において、本発明の移動体通信システムの特徴は、複数の基地局1a〜1dに通信用として割り当てるサブキャリアを、以下の条件を満足させて設定することにある。
1.全ての基地局で同一の周波数チャネルf1を用いる。
2.隣接する基地局間ではサブキャリアが重複しない。
3.1つのサブキャリアセット内では隣り合うサブキャリアを使用しない。
4.周波数チャネルf1内の全てのサブキャリア(互いに直交関係を維持できる最密の間隔のサブキャリア)を使用する。
この条件を満たしたサブキャリアの割り当て例が、図2である。図2は、二組のサブキャリアセットfa及びfbの例であるが、サブキャリアセットの数は、三組以上であっても構わない。
【0020】
図1及び図2の例では、基地局1a及び基地局1cには、サブキャリアsa1〜sa4からなるサブキャリアセットfaが設定され、基地局1b及び基地局1dには、サブキャリアsb1〜sb4からなるサブキャリアセットfbが設定されている。図1において、移動局2は、これら複数の基地局1a〜1dによって形成される通信エリア内を矢印の方向に移動しており、基地局1a及び基地局1cと通信する場合にはサブキャリアセットfaを使用し、基地局1b及び基地局1dと通信する場合にはサブキャリアセットfbを使用して通信を行う。すなわち、移動局2は、通信エリアAfa又はAfbでは、特定のサブキャリアが間引かれたサブキャリアセットfa又はfbのいずれかの信号を受信し、通信エリアAfabでは、周波数チャネルf1内の全てのサブキャリアの信号を受信して、復調処理を行うことになる。
【0021】
次に、第1の実施形態における基地局1a〜1dの構成及び動作を説明する。
図3は、第1の実施形態における基地局1a〜1dの構成例を示すブロック図である。図3において、基地局1a〜1dは、それぞれ、S/P変換部101と、送信データ構成部104と、変調部105と、P/S変換部106と、RF送信部107と、アンテナ108とを備える。送信データ構成部104は、サブキャリアセット記憶部102と、サブキャリア配置部103とを備える。
【0022】
S/P変換部101は、入力された送信データを、マルチキャリア変調方式で用いる伝送速度に応じたビット幅Mのシンボルデータに変換する。そして、S/P変換部101は、変換したシンボルデータを、各サブキャリアセットで使用するサブキャリア数Nに等しい幅(図2の場合は、N=4)を有するパラレル形式に変換し、ビット幅がM×Nで表されるパラレル送信データを生成する。
【0023】
サブキャリアセット記憶部102には、基地局で使用するサブキャリアセットに含まれるサブキャリアの情報が、予め記憶されている。図2の例では、基地局1a及び基地局1cでは、サブキャリアセットfaに含まれるサブキャリアsa1〜sa4の情報が、基地局1b及び基地局1dでは、サブキャリアセットfbに含まれるサブキャリアsb1〜sb4の情報が記憶されている。
【0024】
サブキャリア配置部103は、S/P変換部101で生成されたビット幅M×Nのパラレル送信データを、ビット幅がM×N×2の変調用データに変換する。この時、サブキャリア配置部103は、サブキャリアセット記憶部102に記憶されているサブキャリアのみにビット幅Mのシンボルデータを配置し、記憶されていないサブキャリアはヌルキャリアとみなしてビット幅Mのゼロのデータを挿入する。図3では、サブキャリア配置部103の出力信号であるビット幅がM×N×2の変調用データのうち、使用するサブキャリアの出力信号を実線矢印、ヌルキャリアの出力信号を破線矢印でそれぞれ示している。これにより、基地局が使用するサブキャリアだけからなる変調用データを生成することができる。
【0025】
変調部105は、送信データ構成部104から出力された変調用データをマルチキャリア変調方式に基づいて変調し、ベースバンド送信信号を生成する。この処理は、例えばOFDM変調方式を用いた場合、離散逆フーリエ変換(IDFT: Inverse Discrete Fourier Transform)や離散逆フーリエ変換を高速化した高速逆フーリエ変換(IFFT: Inverse Fast Fourier Transform)を用いて実現できる。P/S変換部106は、変調部105で生成されたパラレル形式のベースバンド送信信号を、時系列で表現されたシリアル形式のベースバンド送信信号に変換する。RF送信部107は、変換されたシリアル形式のベースバンド送信信号をアナログ信号に変換し、周波数チャネルf1内の所定の周波数帯域にアップコンバートした後、無線伝送信号としてアンテナ108から出力する。
【0026】
次に、第1の実施形態における移動局2の構成及び動作を説明する。
図4は、第1の実施形態における移動局2の構成例を示すブロック図である。図4において、移動局2は、アンテナ201と、RF受信部202と、S/P変換部203と、復調部204と、復調データ選択合成部209と、P/S変換部210とを備える。復調データ選択合成部209は、サブキャリア(SC)セット毎パワー算出部205と、パワー比較部206と、サブキャリア選択部208とを備える。なお、図4では、M×N×2個のパラレル復調データをまとめて太線で表現している。
【0027】
RF受信部202は、アンテナ201で受信した受信信号を中間周波数信号にダウンコンバートした後、シリアル形式のベースバンド受信信号に変換する。S/P変換部203は、このシリアル形式のベースバンド受信信号をパラレル形式のベースバンド受信信号に変換する。復調部204は、変換されたパラレル形式のベースバンド受信信号をマルチキャリア復調方式に基づいて復調し、ビット幅がM×N×2のパラレル復調データを生成する。この処理は、例えばOFDM変調方式を用いた場合、離散フーリエ変換(DFT: Discrete Fourier Transform)や、離散フーリエ変換を高速化した高速フーリエ変換(FFT: Fast Fourier Transform)を用いて実現できる。
【0028】
復調データ選択合成部209は、復調部204で生成されたパラレル復調データから、所望のサブキャリアセットを構成するサブキャリアのパラレル復調データのみをパラレル受信データとして抽出する。これは、移動局2は、複数の基地局1a〜1dによって形成された二組のサブキャリアセットfa及びfbを用いる通信エリアを移動しながら、適当と判断したサブキャリアセット側の受信信号を用いて復号データを得る必要があるためである。この判断は、サブキャリアセット毎パワー算出部205及びパワー比較部206によって、次のように行われる。
【0029】
サブキャリアセット毎パワー算出部205は、復調部204からパラレル復調データを入力すると、各サブキャリアセットを構成するN本のサブキャリアが占有する周波数帯域のパワーの総和をそれぞれ算出する。図4では、サブキャリアセットfa及びfbのパワーの総和を、それぞれP(fa)及びP(fb)と示している。パワー比較部206は、サブキャリアセット毎パワー算出部205で算出されたパワー総和P(fa)及びP(fb)のうちの大きい方を選択し、その選択されたサブキャリアセットに含まれるサブキャリアの情報を出力する。なお、算出した各サブキャリアセットのパワー総和がそれぞれ等しい場合は、レジスタ等の記憶部(図示せず)に記憶されているこれまでの履歴に基づいて適当なサブキャリアセットを選択してもよいし、前回選択されたサブキャリアセットを選択してもよい。
【0030】
サブキャリア選択部208は、復調部204から出力されるビット幅がM×N×2のパラレル復調データのうち、パワー比較部206から出力される情報に応じたサブキャリアだけのパラレル復調データを、M×N個のパラレル受信データとして出力する。P/S変換部210は、サブキャリア選択部208から出力されたM×N個のパラレル形式の受信データを、シリアル形式の受信データに変換して出力する。
【0031】
次に、本発明の移動体通信システムにおけるハンドオーバーの実現手法を説明する。
基地局1a〜1dで使用するサブキャリアセットは、全て同一の周波数チャネルf1の信号であり、かつ移動局2は、常に周波数チャネルf1の信号を受信している。よって、本発明の移動体通信システムでは、ハンドオーバーが必要になった場合であっても周波数チャネルの切り替え処理は必要ない。すなわち、移動局2は、周波数再同期等の複雑な処理をすることなく、二組のサブキャリアセットのどちらを用いた通信エリアを移動しているのかを判断し、適当と判断したサブキャリアセットの受信信号を用いて復号データを得るので、ハンドオーバーを容易に実現することができる。また、二組のサブキャリアセットのうち、より品質の良いほうを選択できるため、通信の品質を向上させることができるという効果も有する。
【0032】
以上のように、本発明の第1の実施形態に係る移動体通信システムによれば、複数の基地局に割り当てるサブキャリアを、全ての同じ周波数チャネルで、隣接する基地局間ではサブキャリアが重複せず、1つのサブキャリアセット内では隣り合うサブキャリアを使用せず、周波数チャネル内の全サブキャリアを使用する、との条件に基づいて設定する。これにより、各サブキャリア間の周波数間隔が広くなり、高速移動時のドップラー偏移によるICIの発生を抑圧できる。また、移動局は、ハンドオーバー時に受信信号の周波数チャネルを切り替える必要がないので、使用するサブキャリアセットを変更するだけで簡単にハンドオーバ処理ができる。また、周波数チャネル内の全サブキャリアを使用するので、周波数利用効率の低下を招くことがない。また、隣接する基地局間ではサブキャリアが重複しないため、オーバーラップ通信エリアにおいて受信信号が打ち消されることはない。
【0033】
なお、上記第1の実施形態の復調データ選択合成部209には、サブキャリアセットを1つ選択して復調する選択合成手法を例示したが、非特許文献2に記載されている等利得合成手法や最大比合成手法を用いてもよい。また、基地局で送信される信号にCRCが付加されている場合には、全サブキャリアセットを復調して、CRCエラーの小さい方を選択してもよいし、フレーム同期の取れた方を選択してもよい。なお、最大比合成手法を用いた場合、二組のサブキャリアセットのCNRの大きさに応じて復調結果を重み付け加算するため、合成受信波のCNRを最大にすることができる。これにより、オーバーラップ通信エリアでの誤りをより効果的に低減にできる可能性がある。
【0034】
また、上記第1の実施形態では、移動体通信システムが構成する通信エリアが一次元的に配置される場合を示したが、図5のように二次元的に配置されてもよい。例えば、図5に示したシステムの場合、図6に示すサブキャリアセットを使用すればよい。
さらに、上記第1の実施形態では、どのサブキャリアセットにおいても1つのサブキャリアにビット幅Mのシンボルデータを配置すると説明したが、サブキャリアセットによってビット幅を可変してもよい。例えば、サブキャリアセットfaは、4つのサブキャリアで構成して各サブキャリアにビット幅Mのシンボルデータを配置し、サブキャリアセットfbは、2つのサブキャリアで構成して各サブキャリアにビット幅2Mのシンボルデータを配置することもできる。
【0035】
(第2の実施形態)
図7は、本発明の第2の実施形態に係る移動体通信システムの概略図である。図8は、本発明の第2の実施形態に係る移動体通信システムで用いられるサブキャリアの配置方法を説明する図である。この第2の実施形態に係る移動体通信システムは、構成としては上記第1の実施形態と同様であるが、複数の移動局2a〜2cが1つの通信エリア内を同時に通過する場合に対応させた特徴的な処理を行うことが異なる。
【0036】
基地局1a〜1dには、上記第1の実施形態で説明した1.〜4.の条件を満足したサブキャリアセットfa及びfbが割り当てられている。そして、第2の実施形態では、このサブキャリアセットfa及びfbをさらに細分化し、図8に示すように複数のサブキャリアセットfa1〜fa3及びfb1〜fb3をそれぞれ設定する。加えて、この基地局1a〜1dは、周波数チャネルf1と制御チャネルCCHとを用いて、複数の移動局2a〜2cと通信を行う。
移動局2a〜2cは、それぞれ、通信エリアAfaではサブキャリアセットfa1〜fa3を同時に受信して、通信エリアAfbではサブキャリアセットfb1〜fb3を同時に受信して、通信エリアAfabでは、サブキャリアセットfa1〜fa3及びfb1〜fb3を同時に受信して復調処理を行うことになる。
【0037】
次に、制御チャネルCCHについて説明する。
制御チャネルCCHは、通信エリアAfa及びAfbにおいて各移動局2a〜2cがそれぞれ使用するサブキャリアセットを、対応する移動局2a〜2cに通知するために用いられる。図8は、周波数チャネルf1及び制御チャネルCCHの周波数軸上での配置例を示している。図8の例では、制御チャネルCCHは周波数チャネルf1と異なる周波数で多重されている。なお、周波数チャネルf1を構成する1つ以上のサブキャリアを制御チャネルCCHに割り当ててもよい。また、制御チャネルCCHで送信する制御信号を周波数チャネルf1と多重して送信できればよいため、例えばFDMA、TDMA、CDMA、及びOFDM−CDMAを用いてもよい。
【0038】
基地局1a〜1dは、各移動局2a〜2cが使用するサブキャリアセットを示す制御信号を、制御チャネルCCHのキャリアを用いて送信する。例えば、通信エリアAfaにおいてサブキャリアセットfaで通信する移動局2aが存在する場合、基地局1aは、移動局2aがサブキャリアセットfa1を使用中であり、かつ次に進行する通信エリアAfbにおいて移動局2aがサブキャリアセットfb1を使用することを、制御チャネルCCHを通じて通信エリアAfa内の複数の移動局2a〜2cに通知する。
各移動局2a〜2cは、基地局1a〜1dから制御チャネルCCHのキャリアで送信される制御信号に基づいて、通信エリアAfa及びAfb内で使用するサブキャリアセットをそれぞれ判断する。例えば、上記場合に対応させて説明すると、移動局2aは、制御チャネルCCHのキャリアから制御信号を抽出及び判断し、基地局1aと通信する場合にはサブキャリアセットfa1を用い、基地局1bと通信する場合にはサブキャリアセットfb1を用いる制御を行う。
【0039】
次に、第2の実施形態における基地局1a〜1dの構成及び動作を説明する。
図9は、第2の実施形態における基地局1a〜1dの構成例を示すブロック図である。図9において、基地局1a〜1dは、それぞれ、S/P変換部101と、サブキャリアセット制御部121と、サブキャリアセット記憶部122と、サブキャリア配置部103と、変調部105と、P/S変換部106と、RF送信部107と、アンテナ108とを備える。第2の実施形態における基地局1a〜1dは、第1の実施形態における基地局1a〜1dと比べて、サブキャリアセット制御部121及びサブキャリアセット記憶部122の構成が異なる。
【0040】
サブキャリアセット制御部121は、現在車が通過中の通信エリアを形成する基地局で使用するサブキャリアセットと、次に車が通過する通信エリアを形成する基地局で使用するサブキャリアセットとを、移動局2a〜2cに通知するための制御信号を生成する。同時に、サブキャリアセット制御部121は、自身の基地局が移動局2a〜cと通信するために使用するサブキャリアセットを、サブキャリアセット記憶部122に記憶する。これにより、送信データ構成部104は、移動局2a〜2cへ送信する送信データを、移動局2a〜2cが使用するサブキャリアセットに含まれるサブキャリアのみに配置することができる。
【0041】
次に、第2の実施形態における移動局2a〜2cの構成及び動作を説明する。
図10は、第2の実施形態における移動局2a〜2cの構成例を示すブロック図である。図10において、移動局2a〜2cは、それぞれ、アンテナ201と、RF受信部202と、S/P変換部203と、復調部204と、サブキャリアセット毎パワー算出部225と、パワー比較部206と、サブキャリア選択部208と、P/S変換部210と、制御信号抽出部221と、サブキャリアセット判定部222とを備える。第2の実施形態における移動局2a〜2cは、第1の実施形態における移動局2と比べて、サブキャリアセット毎パワー算出部225、制御信号抽出部221及びサブキャリアセット判定部222の構成が異なる。
【0042】
制御信号抽出部221は、アンテナ201で受信した受信信号から制御チャネルCCHのキャリアで送信された制御信号を抽出する。サブキャリアセット判定部222は、制御信号抽出部221で抽出された制御信号から、自身の移動局が現在移動中の通信エリアで使用するサブキャリアセットと、移動局が次に進行する通信エリアで使用するサブキャリアセットとを判定する。サブキャリアセット毎パワー算出部225は、復調部204からのパラレル復調データが入力されると、サブキャリアセット判定部222で判定された2つのサブキャリアセットに含まれるサブキャリアが占有する周波数帯域のパワー総和をそれぞれ算出する。図10では、サブキャリアセットfa1のパワー総和をP(fa1)と、サブキャリアセットfb1のパワー総和をP(fb1)と示している。
【0043】
以上のように、本発明の第2の実施形態に係る移動体通信システムによれば、各基地局に割り当てられたサブキャリアをさらに細分化して設定する。これにより、上記第1の実施形態による効果に加えて、同じ通信エリア内に複数の移動局が存在した場合であっても、各サブキャリア間の周波数間隔を広くでき、高速移動時のドップラー偏移によるICIの発生を抑圧できる。
【0044】
なお、第2の実施形態における各サブキャリアの他の配置方法として、例えば図11に示す方法を用いてもよい。この方法は、サブキャリアがある周波数に偏らないように配置させる方法である。この配置方法を周波数チャネルf1をサブキャリアセットfa及びfbに分割させる場合に適用させると、次のようになる。
サブキャリアセットfaについて、まず、周波数チャネルf1内におけるの最も周波数が小さいサブキャリアを「番号(1)」と、2番目に周波数が大きいサブキャリアを「番号(2)」と決定する。次は、番号(1)と番号(2)の周波数を二等分するサブキャリアを「番号(3)」と決定する。次は、番号(1)と番号(3)の周波数を二等分するサブキャリアを「番号(4)」と決定する。次は、番号(2)と番号(3)の周波数を二等分するサブキャリアを「番号(5)」と決定する。このように、周波数間隔が広い2つのサブキャリア間を二等分する位置に順番にサブキャリアを配置していく配置方法である。なお、サブキャリアセットfbは、サブキャリアセットfaで配置したサブキャリアを1つだけ高い周波数側にシフトすればよい。
【0045】
また、上記第2の実施形態では、移動局が次に進行する通信エリアの情報を、基地局から移動局へ通知する場合を説明したが、移動局から基地局へ通知することも可能である。例えば、移動局で検知可能なGPSによる位置情報や、移動局に搭載されたカーナビゲーションシステムの進行方向を示す情報等を用いることによって、移動局が進行する次の通信エリアを判断することができる。
【0046】
(第3の実施形態)
上述した第1及び第2の実施形態に係る移動体通信システムは、移動局が高速で移動する場合を想定しているため、実用的にはハンドオーバー時に発生する符号誤りを考慮する必要がある。そこで、第3の実施形態では、インタリーブ処理及び誤り訂正符号化処理を用いて符号誤りの影響を低減させる移動体通信システムを説明する。なお、第3の実施形態に係る移動体通信システム構成は、上記第1の実施形態の構成と同様であるので、その説明は省略する。
【0047】
図12は、本発明の第3の実施形態に係る移動体通信システムを構成する基地局1a〜1dの構成例を示すブロック図である。図12において、基地局1a〜1dは、それぞれ、符号化部309と、インタリーブ部310と、S/P変換部101と、送信データ構成部104と、変調部105と、P/S変換部106と、RF送信部107と、アンテナ108とを備える。図12に示すように、第3の実施形態における基地局1a〜1dは、第1の実施形態における基地局1a〜1dと比べて、符号化部309及びインタリーブ部310の構成が異なる。
【0048】
符号化部309は、入力されるシリアル形式の送信データに誤り訂正符号化処理を行って、符号化送信データを生成する。この符号化部309で用いる誤り訂正符号の種類は問わないが、例えば畳み込み符号を用いることができる。インタリーブ部310は、符号化部309で生成された符号化送信データの時間的な順序を並べ替えるインタリーブ処理を施して、インタリーブ送信データを生成する。S/P変換部101は、このインタリーブ送信データについてシリアル/パラレル変換処理を行う。
【0049】
図13は、本発明の第3の実施形態に係る移動体通信システムを構成する移動局2の構成例を示すブロック図である。図13において、移動局2は、アンテナ201と、RF受信部202と、S/P変換部203と、復調部204と、復調データ選択合成部209と、P/S変換部210と、デインタリーブ部311と、復号化部312とを備える。図13に示すように、第3の実施形態における移動局2は、第1の実施形態における移動局2と比べて、デインタリーブ部311及び復号化部312の構成が異なる。
【0050】
デインタリーブ部311は、P/S変換部210で変換されたシリアル形式の受信データの時間的な順序を、上述した基地局側のインタリーブ部310と逆順に並べ替え、送信時の順序に戻す。このデインタリーブ部311の並べ替え処理によって、ある時刻にバースト的に生じた誤りを時間的に拡散させて誤りを平均化し、誤り訂正を効果的に行うことができる。そして、復号化部312は、デインタリーブ部311によって時間的な順序を元に戻されたシリアル形式の受信データに誤り訂正復号化処理を行った後、復号データとして出力する。
【0051】
図14A及び図14Bは、移動局2がオーバーラップ通信エリア付近を通過する際の通過時間(横軸)とビット誤り率(縦軸)との関係を示す概念図である。図14Aは低速移動時の場合を、図14Bは高速移動時の場合を示している。また、各図の横軸の下部には、オーバーラップ通信エリア付近における移動局2の通過時間と通信エリアとの位置関係を図示している。
【0052】
まず、オーバーラップ通信エリアを通過する際のインタリーブ部310の動作について具体的に説明する。本発明の移動体通信システムでは、オーバーラップ通信エリアにおいて、移動局2が受信する受信信号は、サブキャリアセットfaと及びfbが足し合わされた信号、つまり周波数チャネルf1の全てサブキャリアを配置した信号となる。このオーバーラップ通信エリアで移動局2が受信する受信信号は、各サブキャリア間の周波数間隔が狭い状態となるため、オーバーラップ通信エリア以外の場所において移動局2が受信する受信信号に比べてICIが発生し易く、その結果移動局2でビット誤りが生じる可能性が高くなる。
【0053】
図14Aは、低速で移動する移動局2が、長い時間をかけてオーバーラップ通信エリアを通過し、またビット誤り率が、符号化部309で処理された誤り訂正符号の誤り訂正能力を超えていない様子を示している。移動局2が低速で移動する場合は、復号化部312による誤り訂正機能によって、移動局2は発生した誤りを完全に除去し、エラーフリーな通信を実現できる。
一方、図14Bは、高速で移動する移動局2が短時間でオーバーラップ通信エリアを通過し、またその時間内に発生するビット誤り率が、符号化部309で処理された誤り訂正符号の誤り訂正能力を超えている様子を示している。このように、移動局2がオーバーラップ通信エリアを高速に移動する場合には、オーバーラップ通信エリアで発生する誤りは、図14Aの場合とは異なり、符号化部309で処理された誤り訂正することができる誤り訂正能力を超える可能性が高くなるものの、その発生時間はごく短時間である。
【0054】
この点に着目し、インタリーブ部310では、予め瞬間的な誤りを訂正可能な範囲に抑えることができる時間的なインタリーブを送信データに施す。そして、デインタリーブ部311は、ある時刻の瞬間的な誤りを複数シンボルに渡って拡散し、誤りを平均化する。これにより、オーバーラップ通信エリアにおいて発生する誤りを復号化部312の誤り訂正能力の範囲内に抑えられるので、符号化部309において処理された誤り訂正符号を用いて、移動局2は誤りを完全に除去することができる(図14Cを参照)。このため、高速移動時のドップラー偏移によるICIの影響を除去することが可能となる。
【0055】
なお、インタリーブ処理を行う時間単位(インタリーブ長)の具体的な設定方法としては、例えば図14A〜図14Cの場合、オーバーラップ通信エリアの通過時間をTp[s]、その通過時間での誤り率をE、誤り訂正可能範囲の限界をEmaxとすると、時間インタリーブ長Ti[s]は、Ti>Tp・E/Emaxと設定しておけばよい。これにより、符号化部309で処理された誤り訂正符号が訂正可能な範囲内に、誤りを抑えることが可能となる。そのため、移動局2がオーバーラップ通信エリアを高速移動しながら通過する場合でも、安定な通信を実現することができる。
【0056】
以上のように、本発明の第3の実施形態に係る移動体通信システムによれば、インタリーブ処理と誤り訂正符号処理とを用いる。これにより、上記第1の実施形態による効果に加えて、オーバーラップ通信エリアにおいて、誤り訂正能力を超える誤りが生じた場合でも、誤り訂正能力の範囲内の誤りに抑えることができるため、全てのデータを復号することができる。よって、低速移動時及び高速移動時いずれの場合であっても高信頼な通信を実現することができる。なお、このインタリーブ処理及び誤り訂正符号処理を用いる構成は、上記第2の実施形態にも適用可能である。
【0057】
上記第1〜第3の実施形態では、マルチキャリア変調方式(OFDM変調方式やWavelet変調方式等)を用いて路車間で通信を行う移動体通信システムを一例に挙げて、本発明の移動体通信システムを説明した。しかし、本発明の特徴的な割り当て方をしたサブキャリアセットは、路車間通信に限られて使用されるものではなく、例えば通信エリア内で未使用のサブキャリアセットを車車間通信にも用いること等が可能である。
【0058】
なお、本発明の第1〜第3の実施形態に係る移動体通信システムを構成する基地局の全て又は一部の機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSI(集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、又はウルトラLSI等と称される)として実現される。これらは、個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全部を含むように1チップ化されてもよい。
また、集積回路化の手法は、LSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。また、LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。また、これらの機能ブロックの演算は、例えばDSPやCPU等を用いて演算することもできる。また、これらの処理ステップは、プログラムとして記録媒体に記録して実行することで処理することもできる。
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別の技術により、LSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適応等が可能性としてあり得る。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の移動体通信システムは、携帯電話やモバイル通信機器等の移動体を用いた無線伝送システム等に利用可能であり、特に高速移動時でもICIを抑圧し、ハンドオーバー処理を簡略化させたい場合等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る移動体通信システムの概略図
【図2】第1の実施形態に係る移動体通信システムで用いるサブキャリア配置を説明する図
【図3】第1の実施形態の基地局1a〜1dの構成例を示すブロック図
【図4】第1の実施形態の移動局2の構成例を示すブロック図
【図5】本発明の第1の実施形態に係る他の移動体通信システムの概略図
【図6】図5の移動体通信システムで用いるサブキャリア配置を説明する図
【図7】本発明の第2の実施形態に係る移動体通信システムの概略図
【図8】第2の実施形態に係る移動体通信システムで用いるサブキャリア配置を説明する図
【図9】第2の実施形態の基地局1a〜1dの構成例を示すブロック図
【図10】第2の実施形態の移動局2a〜2cの構成例を示すブロック図
【図11】第2の実施形態に係る移動体通信システムで用いる他のサブキャリア配置を説明する図
【図12】第3の実施形態の基地局1a〜1dの構成例を示すブロック図
【図13】第3の実施形態の移動局2の構成例を示すブロック図
【図14A】移動局がオーバーラップ通信エリアを通過する際の通過時間とビット誤り率との関係を示す概念図(低速時)
【図14B】移動局がオーバーラップ通信エリアを通過する際の通過時間とビット誤り率との関係を示す概念図(高速時)
【図14C】移動局がオーバーラップ通信エリアを通過する際の通過時間とビット誤り率との関係を示す概念図(高速時における第3の実施形態による効果)
【図15】従来の移動体通信システムの概略図
【図16】図15の移動体通信システムで用いるサブキャリア配置を説明する図
【図17】従来の他の移動体通信システムの概略図
【図18】図17の移動体通信システムで用いるサブキャリア配置を説明する図
【図19】従来技術から考案できるサブキャリア配置例を説明する図
【符号の説明】
【0061】
1a〜1d 基地局
2、2a〜2d 移動局
101、203 S/P変換部
102、122 サブキャリアセット記憶部
103 サブキャリア配置部
104 送信データ構成部
105 変調部
106、210 P/S変換部
107 RF送信部
108、201 アンテナ
121 サブキャリアセット制御部
202 RF受信部
204 復調部
205、225 サブキャリアセット毎パワー算出部
206 パワー比較部
208 サブキャリア選択部
209 復調データ選択合成部
221 制御信号抽出部
222 サブキャリアセット判定部
309 符号化部
310 インタリーブ部
311 デインタリーブ部
312 復号化部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチキャリア変調方式を用いた局間通信を行う移動体通信システムを構成する基地局であって、
通信に使用する複数のサブキャリアが指定されたサブキャリアセットの情報を記憶するサブキャリアセット記憶部と、
前記サブキャリアセットで指定された前記複数のサブキャリアだけに、送信データを配置した変調用データを生成するサブキャリア配置部と、
マルチキャリア変調方式に基づいて、前記サブキャリア配置部で生成された前記変調用データをベースバンド送信信号に変調する変調部とを備え、
前記サブキャリアセットで指定される複数のサブキャリアは、隣接する少なくとも1つの他の基地局と、同一の周波数チャネルに含まれ、かつ異なるサブキャリアが使用され、さらに1つのサブキャリアセット内では、隣り合うサブキャリアを使用しないように設定されていることを特徴とする、基地局。
【請求項2】
シリアル形式の送信データをパラレル形式の送信データに変換し、前記サブキャリア配置部へ出力するS/P変換部と、
前記変調部で変調された前記ベースバンド送信信号をシリアル形式に変換するP/S変換部と、
前記シリアル形式のベースバンド送信信号をアナログ信号に変換し、所定の周波数帯域にアップコンバートした後にアンテナから送信するRF送信部とをさらに備える、請求項1に記載の基地局。
【請求項3】
前記シリアル形式の送信データに誤り訂正符号化処理を行い、符号化送信信号を出力する符号化部と、
前記符号化送信信号の時間的な順序を並び替えて、前記S/P変換部へ出力するインタリーブ部とをさらに備える、請求項2に記載の基地局。
【請求項4】
前記サブキャリアセットで指定される複数のサブキャリアが、さらに複数のサブキャリアセットに細分化されており、当該複数のサブキャリアセットを用いて、通信エリア内にいる複数の移動局との間で同時通信が可能であることを特徴とする、請求項1に記載の基地局。
【請求項5】
通信に使用するサブキャリアセットを通知するための制御信号を、所定の制御チャネルのキャリアを用いて通信エリア内にいる前記複数の移動局へ送信することを特徴とする、請求項4に記載の基地局。
【請求項6】
通信に使用するサブキャリアセットを通知するための制御信号を、前記複数のサブキャリア内の特定のサブキャリアを用いて通信エリア内にいる前記複数の移動局へ送信することを特徴とする、請求項4に記載の基地局。
【請求項7】
前記周波数チャネルには、各サブキャリアが互いに直交関係を維持できる最密の間隔で複数のサブキャリアが配置されているとを特徴とする、請求項1に記載の基地局。
【請求項8】
マルチキャリア変調方式を用いた局間通信を行う移動体通信システムを構成する移動局であって、
マルチキャリア変調方式に基づいて、受信したベースバンド受信信号を復調データに復調する復調部と、
予め定められた複数のサブキャリアセットのいずれを使用してデータが送信されたのかを、前記復調データに基づいて判断し、当該判断されたサブキャリアセットで指定された複数のサブキャリアだけを前記復調データから選択した受信データを生成する復調データ選択合成部とを備え、
前記複数のサブキャリアセットのそれぞれで指定される複数のサブキャリアは、同一の周波数チャネルに含まれ、かつ異なるサブキャリアが使用され、さらに1つのサブキャリアセット内では、隣り合うサブキャリアを使用しないように設定されていることを特徴とする、移動局。
【請求項9】
基地局と移動局との間でマルチキャリア変調方式を用いた通信を行う方法であって、
前記基地局において、
通信に使用する複数のサブキャリアが指定されたサブキャリアセットの情報を、所定の記憶部に予め記憶するステップと、
前記サブキャリアセットで指定された前記複数のサブキャリアだけに、送信データを配置した変調用データを生成するステップと、
マルチキャリア変調方式に基づいて、前記生成された変調用データをベースバンド送信信号に変調するステップとを備え、
前記移動局において、
マルチキャリア変調方式に基づいて、受信したベースバンド受信信号を復調データに復調するステップと、
前記複数のサブキャリアセットのいずれを使用してデータが送信されたのかを、前記復調データに基づいて判断するステップと、
前記判断されたサブキャリアセットで指定された複数のサブキャリアだけを前記復調データから選択した受信データを生成するステップとを備え、
前記サブキャリアセットで指定される複数のサブキャリアは、隣接する少なくとも1つの他の基地局と、同一の周波数チャネルに含まれ、かつ異なるサブキャリアが使用され、さらに1つのサブキャリアセット内では、隣り合うサブキャリアを使用しないように設定されていることを特徴とする、方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14A】
image rotate

【図14B】
image rotate

【図14C】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2006−333452(P2006−333452A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−119841(P2006−119841)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】