説明

移動体通信端末試験システム及びその校正方法

【課題】移動体通信用の周波数帯域おいて、仕様の追加・変更に柔軟に対応可能な帯域阻止フィルタフィルタを備えた移動体通信端末試験システムの校正方法を提供する。
【解決手段】所望の信号を減衰させるための可変帯域阻止フィルタ(101)と信号を減衰させることなく通過させるスルーパス(102)のいずれかを選択可能に構成された帯域阻止フィルタユニット(10)を備え、前記スルーパスが選択された状態で移動体通信端末に接続するためのコネクタ(15)と試験器との間の経路損失を第1校正値として予め記憶し、試験開始時の初期に、前記コネクタと試験器との間の経路損失を、前記スルーパスが選択された状態で第2の校正値として、前記可変帯域阻止フィルタが選択された状態で第3の校正値としてそれぞれ記憶し、試験実行時に前記第1の校正値、前記第2の校正値、及び、前記第3の校正値を基に試験器の信号の出力レベルを校正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信端末と通信接続可能な疑似基地局機能を有し、移動体通信端末の耐妨害波性能を試験する、もしくは、移動体通信端末からの送信波に含まれるスプリアスを試験する移動体通信端末試験システムに関する。また、この移動体通信端末試験システムの校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のユーザが同時に通話できる「多元接続( Multiple Access )」方式のうち、周波数利用効率に優れる「符号分割多元接続:CDMA( Code Division Multiple Access )」方式が複数の方法で実用化できるようになった。これら複数の方式のうちで特に、国際電気通信連合(ITU)が定める世界標準規格IMT−2000の一方式である“W−CDMA( Wideband- Code Division Multiple Access )”と称する「広帯域・符号分割多元接続」方式があり、この接続方式を利用した移動体通信端末が実用化されている。さらに、LTE( Long Term Evolution )と呼ばれる次世代の移動体通信規格も策定されつつある。
【0003】
上述のW−CDMA方式やLTE方式に関する通信方式やデータフォーマットが3GPP( 3rd. Generation Partnership Project )により検討され、国際標準規格として規格化されており、移動体通信端末や基地局装置はこの規格に準拠する必要がある。
【0004】
この3GPPの規格に準拠しているかを確認するための試験内容や測定項目がコンフォーマンステストとして定義され、コンフォーマンステストを実施するためのテストシステムが提供されており、このコンフォーマンステストの中には、移動体通信端末の耐妨害波性能(受信特性)を検証する妨害波試験と、移動体通信端末からの送信波に含まれるスプリアス(送信特性の一つ)を検証する送信試験とが含まれている。
【0005】
妨害波試験では、疑似基地局を含むテストシステムから移動体通信端末に対し妨害波を合成した疑似基地局信号を送信し、移動体通信端末が疑似基地局信号に対し正しく応答信号を返すかを確認・検証することで規格への準拠性を確認する。疑似基地局信号に信号発生器で生成した妨害波を合成し移動体通信端末に送信して試験する。この際、キャリアの成分による妨害波の影響を受けることを避けるために、信号発生器で生成した妨害波の信号からキャリアの周波数帯域に該当する成分を除外し、妨害波と疑似基地局信号とを合成する。
【0006】
また、送信試験では、移動体通信端末から送信される信号に含まれるスプリアスを測定することで、規格への準拠性を確認する。スプリアスを測定する際には、本来の応答信号に該当する信号成分は測定の対象外となるので、その本来の応答信号が試験に影響するのを防止するため、送信された信号から本来の応答信号の周波数帯域に該当する成分を除外したうえでスプリアスを測定する。
【0007】
このように、妨害波試験及び送信試験では、特定の周波数帯域の成分を除外する帯域阻止フィルタと呼ばれる機能が必要とされており、これらの試験では、移動体通信に使用される周波数帯域(例えば、500MHzから3GHz)において、3GPPの規格で定義されている様々な周波数帯域幅の信号それぞれに対して検証を行う必要がある。なお、以降では移動体通信に使用される周波数帯域を通信用の周波数帯域と呼ぶ。
【0008】
特許文献1には、帯域阻止フィルタを用いた無線基地局試験装置及びその試験方法について記載されている。特許文献1に記載の試験装置の帯域阻止フィルタと同様に、従来の移動体通信端末試験システムではこの帯域阻止フィルタとして複数の固定フィルタを切替えて使用していた。このような移動体通信端末試験システムの概念図を図9に示す。図9は、各試験を行うための構成を含む各経路を模式的に示した図であって、そのうち、帯域阻止ユニットを使用した測定項目(妨害波試験及び送信試験)に適した経路切替の例を示す図である。すなわち、この移動体通信端末試験システム内には、試験信号又は校正用信号を発生する信号発生器13と、試験信号における所望の周波数帯域の信号を減衰する帯域阻止フィルタユニット10Cと、インタフェースユニット11と、信号発生器13が送信した試験信号又は移動体通信端末3からの信号を受信する信号受信器14と、切替スイッチ16により信号受信器14側(端子16a)もしくは信号発生器13側(端子16b)に接続し信号を入出力するコネクタ15と、前記した各機能ブロックの動作を制御する制御部12とが設けられている。
【0009】
コネクタ15には被測定端末である移動体通信端末3が接続される。妨害波試験の場合には、コネクタ15を信号受信器14側(端子16a)に接続し、コネクタ15に移動体通信端末3を接続したうえで、信号発生器13が送信した試験信号を移動体通信端末3で受信し、移動体通信端末3の耐妨害波特性を試験する。また、送信試験の場合には、コネクタ15を信号発生器13側(端子16b)に接続し、コネクタ15に移動体通信端末3を接続したうえで、移動体通信端末3から信号を送信し信号受信器14で受信することで該信号に含まれるスプリアスを測定する。
【0010】
インタフェースユニット11は、帯域阻止フィルタユニット10Cの前後の回路網を示すユニット11Aとユニット11Bとにより構成され、内蔵された切替スイッチを切替制御することにより複数の経路(経路A〜経路M)からいずれかの経路を選択可能に構成されている。経路Aから経路Mの各経路には、経路ごとに異なる構成で回路部材が組み込まれ回路網が構成されており、実施する試験に応じて必要な経路が選択され切替えて使用される。経路の切替は制御部12により制御される。
【0011】
なお、ユニット11A及びユニット11Bにおける経路R(R=A〜M)は、本発明の説明のために経路の組み合わせを模式的に示したものであり、単に経路R(R=A〜M)と説明した場合、ユニット11A及びユニット11Bの双方で対応する添え字の経路が選択されたものとして説明する。このとき、ユニット11Aとユニット11Bとで同様の添え字を付された経路は同じ構成を有していることを示すものでなく、また、ユニット11Aとユニット11Bのそれぞれが必ずしもM通りの経路を有している必要はない。
【0012】
帯域阻止フィルタユニット10Cは、複数の帯域阻止型の固定フィルタ(BRF−1〜BRF−N)が並列に配置され、内蔵された切替スイッチを切替制御することにより、いずれかのフィルタを選択可能に構成されている。帯域阻止フィルタユニット10Cで減衰する信号の中心周波数及び帯域幅は、実施する試験により決定され、使用するフィルタ(設定周波数帯域)の切替は制御部12により制御される。内蔵される帯域阻止型の固定フィルタの数は、実施する試験で必要となる通信周波数帯の数に依存し、実施する試験の規格に準拠して設定される。このような移動体通信端末試験システムの一例は特許文献2で開示されている。
【0013】
近年では、W−CDMAの上位規格となるHSPA( High Speed Packet Access )などの技術仕様が盛り込まれ、LTEの規格が策定されるなど、仕様の範囲が追加・変更され、それに伴い利用可能な周波数帯域も追加・変更されてきており、テストシステムにおいても検証可能な周波数帯域の範囲を拡大する必要がある。すなわち、通信規格や通信事業者の周波数帯域割当によって、通信に使用する周波数とその帯域幅は様々である。このため、テストシステムにおける帯域阻止フィルタは、その様々な周波数及び帯域幅に対応したものとする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006−128913号公報
【特許文献2】特開2003−18104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前記試験(妨害波試験及び送信試験)においては、被測定端末である移動体通信端末3が接続されるコネクタ15にて、所望の出力レベルの信号が入出力される必要がある。しかし、経路損失の違いや、温度環境の変化、又は、経年劣化等の影響により信号が減衰される。これらの影響は経路によって異なり、項目ごとに経路を切替えて試験を行うため、経路ごとに信号のレベルを校正する必要がある。なお、以降では被測定端末である移動体通信端末3を試験する機器、つまり、妨害波試験における信号発生器13、もしくは、送信試験における信号受信器14を試験器と呼ぶ場合がある。
【0016】
従来の方式では、図9に示す通り、帯域阻止フィルタユニット10Cとして、試験を実施する周波数帯の設定(以降、この設定を「周波数設定」と呼ぶ場合がある)分(f1〜fN)の帯域阻止型の固定フィルタを切替えて使用している。そのため、全ての経路に対し、経路ごとに各フィルタに対して経路間の損失量を算出したうえで、信号発生器13が送信する信号の出力レベルを校正する校正値をそれぞれ算出する必要がある。図10は算出した校正値を記憶する校正テーブルの一例である。
【0017】
図10の(a).は、試験の実施前(出荷前又は試験システムをユーザ先に設置した後の調整時、あるいは試験システム構成を変更した後の調整時)にあらかじめ作成する校正テーブルであり、各校正値は、全ての経路(経路A〜経路M)に対し、経路ごとに試験を実施する全ての周波数設定(f1〜fN)に対して算出する。このテーブルは、信号発生器13とコネクタ15との間の経路損失を校正する校正値α1’fx(R=A〜M;fx=f1〜fN;α1’f1〜α1’fN)を記憶する周波数校正テーブルTbl1’であり、経路ごとの経路損失及び周波数設定ごとの周波数特性による信号レベルの変化を校正する。図10の(b).は試験実施直前に作成する校正テーブルであり、該当する試験を実施する経路(経路A〜経路Mのいずれか)に対し、試験を実施する周波数設定(f1〜fNのいずれか)に対して、信号発生器13と信号受信器14との間の経路損失を校正する校正値β’fxを記憶する周波数校正テーブルTbl2’であり、主に温度環境の変化や経年劣化による信号レベルの変化を校正する。
【0018】
妨害波試験では、コネクタ15から所望の出力レベルの信号を出力するために、校正値α1’fx及び校正値β’fxを基に信号発生器13が送信する信号の出力レベルを校正する。また、送信試験においては、コネクタ15から送信された信号の出力レベルを、信号受信器14にて測定を行うために、校正値α1’fx及び校正値β’fxを基に信号受信器14が受信した信号の出力レベルを補正する。
【0019】
帯域阻止フィルタユニット10Cに係る試験器の信号レベルの校正として、試験を実施する前、及び、試験を実施する直前に、前述した校正値(α1’fx及びβ’fx)を算出する必要があり、図10に示した通り、該校正値の算出には以下の処理コストが必要となる。ここで、処理コストとは、校正値の算出にかかる時間に対応する指数である。
【0020】
(試験実施前(出荷前)の校正値取得に係る処理コスト)
=(校正値α1’fxの算出回数)
=N×M
【0021】
更に、規格が追加・変更される等により測定対象となる周波数設定が追加された場合、校正値の算出に伴うメンテナンスへの影響が顕著に表れる。従来の方式では、新たに追加された周波数設定分の帯域阻止型の固定フィルタを追加し、該追加した固定フィルタに対する、校正値を取得しなおす必要がある。図11は、周波数設定の追加により新たに校正値の算出が必要な部分を説明するための図であり、周波数fa1〜fanが追加されたものとして図示されている。
【0022】
図11に示した通り、周波数fa1〜fanまでの周波数設定が追加された場合、追加された周波数設定に対する校正値を新たに算出する必要があり、該校正値の算出には以下の処理コストが必要となる。
【0023】
(周波数設定の追加に伴う試験実施前(調整時)の校正値取得に係る処理コスト)
=(校正値α1’fxの算出回数)
=n×M
【0024】
近年では試験対象となる周波数設定が増大しており、規約の追加等により更にこの周波数設定は増加しており、これに伴う、システムのメンテナンスに係る作業時間の増大が問題となっている。
【0025】
本発明は上記の問題を解決するものであり、移動体通信用の周波数帯域において、減衰させたい信号の周波数及びその周波数帯域に柔軟に対応し、周波数設定の増加に伴う校正値を算出する処理コスト(校正値取得時間)をより少なく抑えることにより、システム構築時の作業工数及び作業時間の増大を抑え、仕様の追加・変更、つまり、利用可能な周波数帯域の範囲の変更にも柔軟に対応可能とした帯域阻止フィルタユニットを使用した移動体通信端末試験システム、及び、その移動体通信端末試験システムの校正方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、信号発生器(13)と、信号受信器(14)と、移動体通信端末に接続するためのコネクタ(15)と、所望の周波数帯の信号を減衰させるための帯域阻止フィルタユニット(10)と、前記移動体通信端末の所定の試験を行うために、前記信号発生器、前記信号受信器、前記コネクタ、前記帯域阻止フィルタユニットの間の各経路を切替えて前記所定の試験を行う構成とするための切替インタフェースユニット(11)とを備え、前記信号発生器又は前記信号受信器を試験器として前記移動体通信端末の前記所定の試験を行う移動体通信端末試験システムにおいて、 前記帯域阻止フィルタユニットは、YTFで構成されて該YTFの同調周波数を所定の周波数に設定することにより前記所望の周波数帯の信号を減衰させる可変帯域阻止フィルタ(101)と前記所望の周波数帯の信号を減衰させることなく通過させるスルーパス(102)とを有し、該可変帯域阻止フィルタと該スルーパスとのいずれかを選択可能に構成されており、さらに、予め、前記帯域阻止フィルタユニットにスルーパスを選択させた状態で、前記切替インタフェースユニットにより前記経路を切替えたときの前記試験器と前記コネクタ間の各経路の経路損失を第1の校正値(α1、・・・、α1)として記憶する校正データメモリ(123)と、前記所定の試験の開始時の初期に、前記帯域阻止フィルタユニットに前記スルーパスを選択させ、前記切替インタフェースユニットにより前記経路を前記所定の試験を行う構成としたときの前記試験器と前記コネクタとの間の経路損失を測定して第2の校正値(α2)として記憶するとともに、前記経路はそのままの状態で、前記帯域阻止フィルタユニットに前記同調周波数を前記所定の試験に対応した周波数に設定した前記可変帯域阻止フィルタを選択させたときの前記試験器と前記コネクタとの間の経路損失を測定して第3の校正値(βfx)として記憶する校正データ取得制御部(122)と、前記所定の試験が前記移動体通信端末の受信特性の試験である場合は、前記試験器として用いる前記信号発生器の出力レベルを、前記所定の試験が前記移動体通信端末の送信特性の試験である場合は、前記試験器として用いる前記信号受信器の受信レベルを、前記第1の校正値、前記第2の校正値及び前記第3の校正値により校正して、前記所定の試験を行う試験制御部(124)とを備えたことを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の移動体通信端末試験システムであって、前記試験制御部は、前記信号発生器から前記経路及び前記帯域阻止フィルタユニットを経由して前記コネクタを介して前記移動体通信端末に信号を入力させて、前記移動体通信端末の前記受信特性を試験する場合は、前記第1の校正値、前記受信特性の試験の開始時の初期における前記第1の校正値の変動分(=前記第2の校正値―前記第1の校正値)、及び前記受信特性の試験の開始時の初期における前記可変帯域阻止フィルタの損失分(=前記第3の校正値―前記第2の校正値)、を基に、前記信号発生器が出力する信号のレベルを校正することによって、前記移動体通信端末に所望のレベルの信号を供給して試験することを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の移動体通信端末試験システムであって、前記試験制御部は、前記コネクタを介して前記移動体通信端末からの信号を前記経路及び前記帯域阻止フィルタユニットを経由して前記コネクタを介して前記信号受信器で受信して前記移動体通信端末の前記送信特性を試験する場合は、前記第1の校正値、前記送信特性の試験の開始時の初期における前記第1の校正値の変動分(=前記第2の校正値―前記第1の校正値)、及び前記送信特性の試験の開始時の初期における前記可変帯域阻止フィルタの損失分(=前記第3の校正値―前記第2の校正値)、を基に、前記信号受信器が受信する信号のレベルを校正することによって、前記移動体通信端末からの信号のレベルを測定して試験することを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、信号発生器(13)と、信号受信器(14)と、移動体通信端末に接続するためのコネクタ(15)と、所望の周波数帯の信号を減衰させるための帯域阻止フィルタユニット(10)と、前記移動体通信端末の所定の試験を行うために、前記信号発生器、前記コネクタ、前記信号受信器、前記帯域阻止フィルタユニットとの間の各経路を切替えて前記所定の試験を行う構成とするための切替インタフェースユニット(11)とを備え、前記信号発生器又は前記信号受信器を試験器として前記移動体通信端末の前記所定の試験を行う移動体通信端末試験システムの校正方法であって、前記帯域阻止フィルタユニットは、YTFで構成されて該YTFの同調周波数を所定の周波数に設定することにより前記所望の周波数帯の信号を減衰させる可変帯域阻止フィルタ(101)と前記所望の周波数帯の信号を減衰させることなく通過させるスルーパス(102)とを有し、該可変帯域阻止フィルタと該スルーパスとのいずれかを選択可能に構成されており、さらに、予め、前記帯域阻止フィルタユニットに前記スルーパスを選択させた状態で、前記切替インタフェースユニットにより前記経路を切替えたときの前記試験器と前記コネクタ間の各経路の経路損失を第1校正値(α1、・・・、α1)として記憶しておく準備ステップと、前記所定の試験が前記移動第通信端末の受信特性の試験である場合に、該受信特性の試験の開始時の初期に、前記帯域阻止フィルタユニットに前記スルーパスを選択させ、前記切替インタフェースユニットにより前記経路を前記受信特性の試験を行う構成とし且つ前記信号受信器を前記コネクタへの経路に前記移動体通信端末に並列に接続させる構成としたときの前記試験器と前記コネクタとの間の経路損失を測定して第2の校正値(α2)として記憶する試験前経路校正値取得ステップと、前記試験前経路校正値取得ステップの後に、前記経路はそのままの状態で、前記帯域阻止フィルタユニットに前記同調周波数を前記所定の試験に対応した周波数に設定した前記可変帯域阻止フィルタを選択させたときの前記試験器と前記コネクタとの間の経路損失を測定して第3の校正値(βfx)として記憶する試験前フィルタ校正値取得ステップと、前記試験前フィルタ校正値取得ステップの後に、前記第1の校正値、前記受信特性の試験の開始時の初期における前記第1の校正値の変動分(=前記第2の校正値―前記第1の校正値)、及び前記受信特性の試験の開始時の初期における可変帯域阻止フィルタの損失分(=前記第3の校正値―前記第2の校正値)、を基に、前記信号発生器が出力する信号のレベルを校正することによって、前記移動体通信端末に所望のレベルの信号を供給して前記受信特性の試験を行うための校正ステップとを備えたことを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、信号発生器(13)と、信号受信器(14)と、移動体通信端末に接続するためのコネクタ(15)と、所望の周波数帯の信号を減衰させるための帯域阻止フィルタユニット(10)と、前記移動体通信端末の所定の試験を行うために、前記信号発生器、前記コネクタ、前記信号受信器、前記帯域阻止フィルタユニットとの間の各経路を切替えて前記所定の試験を行う構成とするための切替インタフェースユニット(11)とを備え、前記信号発生器又は前記信号受信器を試験器として前記移動体通信端末の前記所定の試験を行う移動体通信端末試験システムの校正方法であって、前記帯域阻止フィルタユニットは、YTFで構成されて該YTFの同調周波数を所定の周波数に設定することにより前記所望の周波数帯の信号を減衰させる可変帯域阻止フィルタ(101)と前記所望の周波数帯の信号を減衰させることなく通過させるスルーパス(102)とを有し、該可変帯域阻止フィルタと該スルーパスとのいずれかを選択可能に構成されており、さらに、予め、前記帯域阻止フィルタユニットに前記スルーパスを選択させた状態で、前記切替インタフェースユニットにより前記経路を切替えたときの前記試験器と前記コネクタ間の各経路の経路損失を第1校正値(α1、・・・、α1)として記憶しておく準備ステップと、前記所定の試験が前記移動体通信端末の送信特性の試験である場合に、該送信特性の試験の開始時の初期に、前記帯域阻止フィルタユニットに前記スルーパスを選択させ、前記切替インタフェースユニットにより前記経路を前記送信特性の試験を行う構成とし且つ前記試験器と前記コネクタとの間の経路損失を測定して第2の校正値(α2)として記憶する試験前経路校正値取得ステップと、前記試験前経路校正値取得ステップの後に、前記経路はそのままの状態で、前記帯域阻止フィルタユニットに前記同調周波数を前記所定の試験に対応した周波数に設定した前記可変帯域阻止フィルタを選択させたときの前記試験器と前記コネクタとの間の経路損失を測定して第3の校正値(βfx)として記憶する試験前フィルタ校正値取得ステップと、前記試験前フィルタ校正値取得ステップの後に、前記第1の校正値、前記送信特性の試験の開始時の初期における前記第1の校正値の変動分(=前記第2の校正値―前記第1の校正値)、及び前記送信特性の試験の開始時の初期における可変帯域阻止フィルタの損失分(=前記第3の校正値―前記第2の校正値)、を基に、前記信号受信器が受信する信号のレベルを校正することによって、前記移動体通信端末からの信号レベルを測定して前記送信特性の試験を行うための校正をする校正ステップとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、帯域阻止フィルタユニット10における可変帯域阻止フィルタ101の同調周波数を調整することで、減衰する信号の帯域幅や損失量を変更することが可能となるため、試験すべき周波数帯域幅が追加・変更された場合においても、新たにフィルタユニットを追加することなく対応することが可能となる。
【0028】
また、帯域阻止フィルタユニット10にスルーパス102を設けたことで、可変帯域阻止フィルタ101を除く経路の経路損失の校正値と、帯域阻止フィルタユニット10の周波数特性に関する校正値を個別に算出することが可能となり、試験の直前に実施する校正時にのみ帯域阻止フィルタユニット10の周波数特性に関する校正を行うことが可能となるため、試験の実施前に取得する校正値において、特に周波数設定の量に係る処理コスト(校正値取得時間)が大幅に削減され、フィルタの調整(較正)などメンテナンスの工数を削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態に係る移動体通信端末試験システムにおける信号レベルの校正の方法を説明するための概念図である。
【図2】試験前にあらかじめ実施する経路損失の測定と校正値の算出及び記憶に関する手順を示したフローチャートである。(a).は本願発明の場合のフローチャートであり、(b).は従来の方式の場合のフローチャートである。
【図3】試験実施直前に実施する経路損失の測定と校正値の算出及び記憶に関する手順を示したフローチャートである。(a).は本願発明の場合のフローチャートであり、(b).は従来の方式の場合のフローチャートである。
【図4】本願発明に係る移動体通信端末試験システムにおける信号レベルを校正するための校正値と、該校正値を格納する校正テーブルの一例である。
【図5】本願発明に係る移動体通信端末試験システムにおける信号レベルの校正に関し、試験対象となる周波数設定が追加された場合の影響を説明するための図である。
【図6】実施例1に係る移動体通信端末試験システムのシステムブロック図である。
【図7】実施例2に係る移動体通信端末試験システムのシステムブロック図である。
【図8】帯域阻止フィルタユニットの一例である。
【図9】従来の方式に係る移動体通信端末試験システムにおける信号レベルの校正の方法を説明するための概念図である。
【図10】従来の方式に係る移動体通信端末試験システムにおける信号レベルを校正するための校正値と、該校正値を格納する校正テーブルの一例である。
【図11】従来の方式に係る移動体通信端末試験システムにおける信号レベルの校正に関し、試験対象となる周波数設定が追加された場合の影響を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明を実施するための形態を説明するにあたり、妨害波試験を実施するための形態を第1の実施形態に、送信試験を実施するための形態を第2の実施形態に説明する。
【0031】
(第1の実施形態:妨害波試験を実施するための形態)
第1の実施形態に係る移動体通信端末試験システムと該移動体通信端末試験システムにおける帯域阻止フィルタユニットの補正方法について図1を参照しながら説明する。なお、図1において図9と同様の符号を付した要部(機能ブロック)は、同一機能を有する。
【0032】
第1の実施形態に係る移動体通信端末試験システムは、試験の対象としての移動体通信端末、例えば携帯電話器の試験のため、世界標準規格 3GPP の仕様、特にTS 34.121規格の6章(受信試験)に準拠した認証試験を実現するコンフォーマンステストシステムであって、移動体通信端末の耐妨害波性能を検証する。
【0033】
妨害波試験では信号発生器により妨害波を発生し、前記妨害波を被試験端末である移動体通信端末で受信させることにより、移動体通信端末の受信時の耐妨害波特性を確認する。そのため、移動体通信端末を接続する接続コネクタ(図1におけるコネクタ15)で受信される信号が所望の出力レベルを得られるように校正を行う必要がある。
【0034】
信号発生器13は、移動体通信の規格に定義された範囲の周波数帯域において、指定された周波数の搬送波を所定の符号変調方式により変調し、試験信号として出力する。本実施形態に係る移動体通信端末試験システムでは、信号発生器13は、妨害波に該当する試験信号を送信し、前記試験信号は、後述するインタフェースユニット11及び帯域阻止フィルタユニット10を経てコネクタ15に出力される。
【0035】
インタフェースユニット11は、ユニット11A及びユニット11Bにより構成されており、ユニット11A及びユニット11Bは、それぞれ複数の経路(経路A〜経路M)を内蔵された切替スイッチを切替制御することにより選択可能に構成されている。経路Aから経路Mの各経路には、経路ごとに異なる構成で回路部材が組み込まれ回路網が構成されており、実施する試験に応じて必要な経路を選択され切替えて使用される。経路の切替は制御部12により制御される。
【0036】
信号発生器13が送信した試験信号は、インタフェースユニット11のユニット11Aの一端に入力され、制御部12により選択し切替えられた経路Aから経路Mのいずれかの経路を経て、ユニット11Aの他端に出力される。ユニット11Aから出力された試験信号は後述する帯域阻止フィルタユニット10に入力される。
【0037】
インタフェースユニット11のユニット11Bの一端には、帯域阻止フィルタユニット10からの出力信号が入力され、ユニット11Aと同様に、制御部12により選択し切替えられた経路Aから経路Mのいずれかの経路を経て、ユニット11Bの他端に出力される。
【0038】
帯域阻止フィルタユニット10は、帯域阻止型の可変帯域阻止フィルタ101と信号を減衰させることなく通過させるスルーパス102とが互いに並列に配置され、通過させる信号の経路を、可変帯域阻止フィルタ101とスルーパス102とのいずれかに選択的に切替可能に備えている。経路の切替は後述する制御部12により制御される。
【0039】
可変帯域阻止フィルタ101は、可変帯域阻止フィルタ101への電流を直線的に変化させたときに共振する周波数(以降、この周波数を「同調周波数」と呼ぶ)fiが直線的に変化する特性を有し、少なくとも通信用の周波数帯域(例えば、500MHzから3GHz)において、同フィルタに入力される信号から同調周波数fiを含む所定の周波数帯域幅ΔBWの成分を減衰する特性(つまり、帯域阻止特性)を持つフィルタを用いる。
【0040】
可変帯域阻止フィルタ101として使用される可変フィルタの一例としてYTF( YIG Tuned Filter )があげられる。YTFは、周知のように、YIG( Yttrium Iron Garnet )単結晶の直流磁場を直線的に変化させた時に、共振する周波数が直線的に変化する特性を利用した同調周波数が可変可能なバンドリジェクションフィルタである。可変帯域阻止フィルタ101にYTFを用いる場合は、各可変フィルタの磁場を制御する電流を制御することで各可変フィルタのYIG単結晶の直流磁場を変化させ、同フィルタの同調周波数を変更する。
【0041】
尚、図8は可変帯域阻止フィルタ101として使用される可変フィルタの一例を示す帯域阻止フィルタユニットの機能ブロック図である。図8に示すように、直列に接続された帯域阻止型の第1の可変フィルタ502(YTF)及び帯域阻止型の第2の可変フィルタ503(YTF)と、前記第1の可変フィルタと前記第2の可変フィルタのそれぞれの動作を独立して制御する駆動部501とから構成される帯域阻止フィルタユニット50を用いてもよい。
【0042】
信号受信器14は、受信した信号の出力レベルを測定する。本実施形態においては、校正の際、信号発生器13から送信された試験信号が、インタフェースユニット11、及び、帯域阻止フィルタユニット10を経て、最終的にインタフェースユニット11のユニット11Bから出力され信号受信器14で受信される。
【0043】
コネクタ15は、試験対象である移動体通信端末3を接続する端子であるとともに、経路損失を測定するために外部から信号を入出力するための端子である。コネクタ15は、切替スイッチ16により接続される機器(又は経路)が切替えられる。本実施形態では信号受信器14に並列な位置、つまり、切替スイッチ16の端子16a側に接続され、信号受信器14に入力される信号の一部が分配器(図示しない)により分配され出力される。切替スイッチ16の切替は後述する機能モード制御部121により制御される。
【0044】
コネクタ15には、出荷前の校正にあたって後述する校正用信号受信器4が接続される。このとき、後述する校正データ取得制御部122が、信号発生器13で送信した試験信号の出力レベル、校正用信号受信器4が受信した信号の出力レベル、及び、信号受信器14で受信した信号の出力レベルから校正値を計算し後述する校正データメモリ123に記憶する。試験実行時には、コネクタ15に被試験端末である移動体通信端末3を接続し、移動体通信端末3が所望の出力レベルの試験信号を受信できるように、後述する補正部1241が、前記校正値をもとに信号発生器13が送信する試験信号の出力レベルを校正する。
【0045】
校正用信号受信器4は、試験を実施する前(出荷前又は試験システムをユーザ先に設置した後の調整時、あるいは試験システム構成を変更した後の調整時)にコネクタ15に接続し、コネクタ15における試験信号の出力レベルを測定する。校正用信号受信器4で測定した試験信号の出力レベルと、信号受信器14で測定した試験信号の出力レベル、及び、信号発生器13における信号の出力レベルから経路損失を求め、校正値として算出しあらかじめ記憶しておくことで、コネクタ15における信号の出力レベルを直接測定できない場合においても、信号受信器14で受信した信号の出力レベルとあらかじめ算出した校正値から、コネクタ15における信号の出力レベルを導出することが可能となる。
【0046】
制御部12は、信号発生器13、インタフェースユニット11、帯域阻止フィルタユニット10、信号受信器14、校正用信号受信器4の各動作、及び、動作するための設定の変更を制御する。また、制御部12は、実行する処理に応じてモードを切替制御する機能モード制御部121と、校正を行うために必要な校正値の算出を行う校正データ取得制御部122と、算出した校正値を記憶し管理する校正データメモリ123と、校正値を基に信号の出力レベルを校正する補正部1241、及び、試験の実行を制御する測定処理部1242を備えた試験制御部124を含む。
【0047】
本願発明に係る移動体通信端末試験システムの処理は、校正値を取得するモードと試験を実行するモードに分類され、校正値を取得するモードは更に、取得する校正値に応じて異なる以下のモード(以降はこのモード種別を「校正モード」と呼ぶ)で構成される。
(モード0)準備校正モード
(モード1)第1の校正モード
(モード2)第2の校正モード
【0048】
準備校正モード(モード0)は、出荷前にあらかじめ経路損失を算出し第1の校正値α1(R=A〜M;α1〜α1)として校正データメモリ123に記憶させるモードである。
【0049】
第1の校正モード(モード1)及び第2の校正モード(モード2)は試験を実施する直前に動作させ、主に温度環境の変化や経年劣化による経路損失の変化を校正するために用いる第2の校正値α2(R=A〜M;α1〜α1)及び第3の校正値βfx(R=A〜M;fx=f1〜fN’;βf1〜βfN’)を算出し校正データメモリ123に記憶させるモードである。
【0050】
校正値を取得するモードと試験を実行するモードとの切替、及び、各モードで動作する構成要素の起動は、機能モード制御部121により制御される。
【0051】
機能モード制御部121は、ユーザインタフェース17からの操作者の指示に従い、実行する試験(妨害波試験又は送信試験)のモード(以降、このモード種別を「測定モード」と呼ぶ)に応じて、切替スイッチ16を、妨害波試験の場合は16a側に、送信試験の場合には16b側に切替える。
【0052】
また、実行する処理(「校正値を取得するモード」又は「試験を実行するモード」)に応じて、動作させる構成要素を校正データ取得制御部122と試験制御部124とのいずれかから選択的に切替える。さらに、ユーザインタフェース17から操作者が指定した試験の条件設定、つまり、測定を実施する周波数設定(f1〜fN’)を、校正データ取得制御部122又は試験制御部124に通知する。条件設定は、各構成要素(校正データ取得制御部122又は試験制御部124)に通知する際に、逐次ユーザインタフェース17から取得しても良いし、あらかじめ取得したうえで記憶領域(図示しない)に記憶させておき、各構成要素が該記憶領域から読込む構成としても良い。
【0053】
機能モード制御部121は、校正値を取得するモードでの動作の指示を受けると、校正データ取得制御部122に校正値の取得を指示し、試験を実行するモードでの動作の指示を受けると、試験制御部124に試験の実行と試験器の校正を指示する。
【0054】
校正データ取得制御部122は、帯域阻止フィルタユニット10及びインタフェースユニット11の経路を切替えながら、各試験器及びコネクタ15における信号の出力レベルを測定し、各経路の経路損失を算出したうえで、校正値として校正データメモリ123に記憶させる。
【0055】
なお、本発明に係る移動体通信端末試験システムにおける経路損失の算出の説明では、該経路損失の算出にあたり各経路の周波数特性の影響が無いものとして、信号発生器13及び後述する校正用信号発生器5が送信する信号の周波数を固定し、その周波数での経路損失から校正値を求めるものとして説明する。ただし、経路損失の算出にあたり周波数特性の影響を考慮する必要がある場合は、信号発生器13及び後述する校正用信号発生器5が送信する信号の周波数を変更しながら、測定対象の周波数ごとに各経路損失を算出し校正値を求めるものとする。
【0056】
本実施形態に係る移動体通信端末試験システムにおいて、校正データ取得制御部122は、信号発生器13が送信した信号の出力レベルと、信号受信器14が受信した信号の出力レベルと、校正用信号受信器4が受信した信号の出力レベルとから校正値を算出し記憶領域である校正データメモリ123に記憶させる。
【0057】
以下に、準備校正モード、第1の校正モード及び第2の校正モードにおける校正値の取得方法と試験を実行するモードにおける試験器の校正方法について具体的に説明する。なお、以下の校正値の取得方法で説明する各処理は校正データ取得制御部122が実施するものとする。
【0058】
(準備校正モード)
まず、出荷前にあらかじめ校正値を算出し記憶しておく準備校正モードについて説明する。準備校正モードでは、コネクタ15に校正用信号受信器4を接続し、出荷前にあらかじめ各経路に対して、経路損失を算出し第1の校正値として校正データメモリ123に記憶させる。具体的には、信号発生器13とコネクタ15との間の経路損失を算出し第1の校正値α1(R=A〜M;α1〜α1)として校正データメモリ123に記憶する。算出した第1の校正値α1(R=A〜M;α1〜α1)は経路損失校正テーブルTbl1を作成し校正データメモリ123に記憶する。本手順について図2の(a).を参照しながら説明する。図2の(a).は、出荷前にあらかじめ実施する経路損失の測定と校正値の算出及び記憶に関する手順を示したフローチャートである。なお、図2の(b).には、比較のために従来技術のフローチャートを記載してある。
【0059】
(ステップS101)
経路損失の測定と校正値の算出及び記憶はインタフェースユニット11の全ての経路(経路A〜経路M)に対して実施する。ここでは経路Aから経路Mまで経路を逐次切替えながら、経路損失の測定と入出力校正値の算出を行うものとして説明する。まず、インタフェースユニット11の経路を経路Aに接続する。
【0060】
(ステップS102)
経路損失の測定と校正値の算出時には、帯域阻止フィルタユニット10の経路はスルーパス102に切替える。
【0061】
(ステップS103)
経路の切替が完了したら経路損失の測定と校正値の算出を行う。信号発生器13から校正用の信号をインタフェースユニット11に対して送信する。校正用の信号は、インタフェースユニット11のユニット11A、帯域阻止フィルタユニット10のスルーパス102、インタフェースユニット11のユニット11Bを経て、インタフェースユニット11から出力され、分配器(図示しない)により分配され信号受信器14及びコネクタ15に接続した校正用信号受信器4で受信される。
【0062】
このときの信号発生器13が送信した校正用の信号の出力レベルDcwと、校正用信号受信器4で受信した信号の出力レベルDioとから、信号発生器13とコネクタ15との間の経路損失ΔDio(=Dcw−Dio)を算出し、第1の校正値α1として経路損失校正テーブルTbl1に記憶する。経路損失校正テーブルTbl1は校正データメモリ123に記憶する。図4の(a).に各経路(経路A〜経路M)に対し第1の校正値α1(R=A〜M;α1〜α1)を算出し経路損失校正テーブルTbl1に記憶した例を示す。
【0063】
(ステップS107)
図4の(a).に示す通り、第1の校正値α1(R=A〜M;α1〜α1)は経路ごとに算出し記憶する。全ての経路について第1の校正値α1の算出が完了していない場合(ステップS105、No)は、次の経路に切替えて、切替えた経路に対して第1の校正値α1の算出を行う。
【0064】
(ステップS105)
全ての経路について第1の校正値α1(R=A〜M;α1〜α1)を算出したら(ステップS105、Yes)、本処理を終了する。
【0065】
また、信号発生器13とコネクタ15との間の経路損失と、信号発生器13と信号受信器14との間の経路損失との差をあらかじめ求め校正値Lとして校正データメモリ123に記憶させておく。
【0066】
校正値Lは、信号発生器13と信号受信器14との経路間の損失を求め、信号発生器13とコネクタ15との経路間の損失(第1の校正値α1)との差を計算し求めると良い。また、コネクタ15から信号受信器14までの経路損失を直接求めて校正値Lとしても良い。コネクタ15から信号受信器14までの経路損失は、コネクタ15に校正用の信号発生器を接続し、該校正用の信号発生器から試験信号を送信し信号受信器14で受信して、該校正用の信号発生器から送信した信号の出力レベルと信号受信器14で受信した信号の出力レベルとから算出可能である。
【0067】
なお、準備校正モードにおける各校正値(第1の校正値α1及び校正値L)は、校正データ取得制御部122に算出させず、信号発生器13、信号受信器14、及び、校正用信号受信器4における信号の出力レベルから算出しておき、校正データメモリ123にあらかじめ記憶させておく構成としても良い。
【0068】
次に、試験を実施する直前に校正値を算出する第1の校正モード及び第2の校正モードについて説明する。第1の校正モードは、上記準備校正モードと同様に、帯域阻止フィルタユニット10の経路をスルーパス102に切替えた場合の第2の校正値を取得するモードであり、第2の校正モードは、帯域阻止フィルタユニット10の経路を可変帯域阻止フィルタ101に切替えた場合の、所望の周波数設定における第3の校正値を取得するモードである。試験を実施する際には、被測定端末である移動体通信端末3をコネクタ15に接続する。移動体通信端末3を接続したら(接続する前でも良い)、試験を実施する直前にまず経路損失を測定し校正値(この第2の校正値及び第3の校正値をまとめて「実行時校正値」と呼ぶことがある)を算出する。
【0069】
実行時校正値は試験の直前に信号レベルの補正に用いられ、信号発生器13の温度環境の変化や経年劣化等により発生する誤差を校正し、信号発生器13が送信する試験信号の出力レベルを補正するために用いられる。
【0070】
本手順について図3の(a).を参照しながら説明する。図3の(a).は、試験実施直前に実施する実行時校正値の取得に関する手順を示したフローチャートである。なお、図3の(b).には、比較のために従来技術のフローチャートを記載してある。
【0071】
(ステップS301)
経路損失の測定と実行時校正値の算出は、インタフェースユニット11の該当する試験を実施する経路(経路A〜経路Mのいずれか)に対して、帯域阻止フィルタユニット10の経路をスルーパス102に切替えて第2の校正値α2を取得する第1の校正モードと、可変帯域阻止フィルタ101に切替えたうえでユーザインタフェース17から条件設定として指定された周波数帯域(f1〜fNのいずれか)に対して第3の校正値βfxを取得する第2の校正モードとを切替えて実施する。まず、インタフェースユニット11の経路を経路R(該当する試験を実施する経路)に接続する。
【0072】
(第1の校正モード)
(ステップS302)
経路を切替えたら、帯域阻止フィルタユニット10の経路をスルーパス102に切替えて、設定した経路間の経路損失を算出し、第2の校正値α2として校正データメモリ123に記憶する。以下に第2の校正値α2の算出方法を具体的に説明する。
【0073】
(ステップS303)
信号発生器13から校正用の信号をインタフェースユニット11に対して送信する。校正用の信号は、インタフェースユニット11のユニット11A、帯域阻止フィルタユニット10のスルーパス102、インタフェースユニット11のユニット11Bを経て、インタフェースユニット11から出力され、分配器(図示しない)により分配され信号受信器14で受信される。
【0074】
このときの信号発生器13が送信した校正用の信号の出力レベルAcwと、信号受信器14で受信した信号の出力レベルA0と、準備校正モードで取得した校正値Lとから、信号発生器13とコネクタ15との間の経路損失ΔA0(=Acw−A0+校正値L)を算出し、第2の校正値α2として測定時経路損失校正テーブルTbl2に記憶する。測定時経路損失校正テーブルTbl2は校正データメモリ123に記憶する。図4の(b).に第2の校正値α2を算出し測定時経路損失校正テーブルTbl2に記憶した例を示す。
【0075】
(第2の校正モード)
(ステップS304)
次に、帯域阻止フィルタユニット10の経路を可変帯域阻止フィルタ101に切替えて、設定した経路及び可変帯域阻止フィルタ101の経路損失を算出する。可変帯域阻止フィルタ101に対し、ユーザインタフェース17から条件設定として指定された試験を実施する周波数帯域(fx)対して、経路損失を算出し第3の校正値βfxとして校正データメモリ123に記憶する。以下に第3の校正値βfxの算出方法を具体的に説明する。まず、可変帯域阻止フィルタ101の周波数設定をfxに設定する。
【0076】
(ステップS305)
第1の校正モードと同様に、信号発生器13から校正用の信号をインタフェースユニット11に対して送信し、信号受信器14で受信したうえで、このときの信号発生器13が送信した校正用の信号の出力レベルAcwと、信号受信器14で受信した信号の出力レベルAfxと、校正値Lとから、信号発生器13と信号受信器14との間の経路損失ΔAfx(=Acw−Afx+校正値L)を算出し、第3の校正値βfxとして測定時周波数校正テーブルTbl3に記憶する。測定時周波数校正テーブルTbl3は校正データメモリ123に記憶する。これにより、この処理は終了となる。図4の(c).に第3の校正値βfxを算出し測定時周波数校正テーブルTbl3に記憶した例を示す。
【0077】
なお、校正値Lは、信号発生器13とコネクタ15との経路間の損失や、信号発生器13と信号受信器14との経路間の損失に比べ小さく、温度環境の変化や経年劣化等による影響を受けにくい。そのため、試験の実施ごとにこれを校正する必要はない。
【0078】
また、同じ経路(例えば経路R)で複数の周波数設定について試験を実行する場合は、第3の校正値βfxを周波数設定分算出すればよく、試験ごとに第2の校正値α2を算出する必要はない。この場合、測定時周波数校正テーブルTbl3を複数の校正値を記憶できるように拡張すると良い。
【0079】
(校正方法)
次に、試験を実行する際、つまり、試験を実行するモードにおいて算出した校正値をもとに帯域阻止フィルタユニット10に係る試験器の信号レベルの校正を行う方法について説明する。ユーザインタフェース17から操作者により試験の実行が指示されると、機能モード制御部121は、試験制御部124に試験器の校正と試験の実行とを指示する。
【0080】
試験制御部124は、前記指示を受け、補正部1241に試験器の校正をさせたうえで、測定処理部1242に試験の実行を指示し、測定処理部1242は機能モード制御部121を介して、ユーザインタフェース17より操作者が指定した試験の条件設定に従い、測定モードで指定された試験を実行する。
【0081】
補正部1241は、試験制御部124の指示を受けて、校正データメモリ123に記憶された校正値(α1、α2、βfx、及び、校正値L)を基に試験器の校正を行う。
【0082】
本実施形態に係る移動体通信端末測定システム(妨害波試験)においては、補正部1241は、コネクタ15において所望の出力レベルの信号を得られるように信号発生器13が送信する信号の出力レベルを校正する。
【0083】
校正方法について、インタフェースユニット11の経路を経路Aに接続し、可変帯域阻止フィルタ101の周波数設定f1に設定した場合を例に、以下に具体的に説明する。なお、以下の校正方法で説明する各処理は補正部1241が実施するものとする。
【0084】
信号発生器13が送信する信号の出力レベルの校正には、信号発生器13とコネクタ15との間の経路間損失を示す第1の校正値α1を用いる。しかし、第1の校正値α1の算出には、可変帯域阻止フィルタ101の周波数特性や、温度環境の変化や経年劣化等により発生する誤差の影響が考慮されていないため、第2の校正値α2、及び、第3の校正値βf1を用いて校正する。
【0085】
まず、温度環境の変化や経年劣化等により、信号発生器13とコネクタ15との経路間に発生する損失量の誤差を校正する校正値γ1が、試験実施前に算出した第1の校正値α1と、試験直前に算出した第2の校正値α2とから以下のように求められる。
【0086】
(校正値γ1)=(第2の校正値α2)−(第1の校正値α1
【0087】
さらに、可変帯域阻止フィルタ101における損失量を校正する校正値γ2Af1を、経路Aで構成される回路網と周波数設定がf1の場合の可変帯域阻止フィルタ101とを含む経路損失、つまり、第3の校正値βf1と、経路Aで構成される回路網のみ(帯域阻止フィルタユニット10はスルーパス102に接続された場合)の経路損失、つまり、第2の校正値α2とから以下の通り求める。
【0088】
(校正値γ2Af1)=(第3の校正値βf1)−(第2の校正値α2
【0089】
以上から、信号発生器13が送信する(校正値により校正された)信号の出力レベルをPio、コネクタ15における信号が出力すべき所望の出力レベルをP0、信号受信器14が受信した信号の出力レベルをP1とすると、試験実施時に信号発生器13が送信する信号の出力レベルPioを以下の通り校正することで、信号発生器13とコネクタ15との経路間の損失を校正し、コネクタ15において所望の出力レベルの信号を得ることが可能となる。
【0090】
(出力レベルPio)
=(出力レベルP0)+(校正値γ1)+(校正値γ2Af1
=(出力レベルP1)+(校正値L)+(校正値γ1)+(校正値γ2Af1
=(出力レベルP1)+(校正値L)
+{(第2の校正値α2)−(第1の校正値α1)}
+{(第3の校正値βf1)−(第2の校正値α2)}
【0091】
(実施例1)
第1の実施形態に係る移動体通信検証装置と該移動体通信検証装置における帯域阻止フィルタの補正方法の実施例について、図6を参照しながら説明する。図6は、本実施形態に係る移動体通信端末試験システムを用いた妨害波試験だけを取り上げたシステムブロック図である。
【0092】
信号発生器13aは、連続波信号、つまり、測定対象となる周波数帯域(例えば、1MHz〜12.75GHz)において1MHzステップで設定される無変調信号を、疑似基地局信号波に対する妨害波として出力する。信号発生器13aは、図1における信号発生器13に該当する。
【0093】
帯域阻止フィルタ10aは、信号発生器13aが出力した連続波信号の各周波数成分のうち、信号送信部201が出力する疑似基地局信号の周波数帯域以外の周波数成分のみを通過させ、疑似基地局信号の周波数帯域に該当する成分のみを抑圧する。言い換えれば、疑似基地局信号の周波数帯域を大きく減衰し、減衰帯域以外の帯域に対して、通過損失の少ない平坦な周波数特性が望ましい。帯域阻止フィルタ10aは、図1における帯域阻止フィルタユニット10に該当する。
【0094】
疑似基地局20は、疑似基地局信号を移動体通信端末3に送信する信号送信部201と、移動体通信端末3からの応答信号を受信し復調する信号受信部202とから構成される。
【0095】
信号送信部201は、規格に定義された範囲の周波数帯域において、指定された周波数の搬送波を所定の符号変調方式により変調し、疑似基地局信号として出力する。
【0096】
信号受信部202は、被試験端末である移動体通信端末3からの応答信号を受信し、指定された周波数の搬送波を所定の符号復調方式(信号送信部201で使用した符号変調方式に対応した符号復調方式)により復調する。この信号受信部202で復調された信号を測定することにより、移動体通信端末3が、信号送信部201が送信した疑似基地局信号を正しく受信できていることを確認することが可能となる。
【0097】
方向性結合器21は、信号発生器13aの出力周波数を通過させる広帯域の結合器であり、信号送信部201からの疑似基地局信号波に信号発生器13aからの妨害波を合成して、後述する分配器22に出力する。
【0098】
サーキュレータ26は、方向性結合器21からの信号を移動体通信端末3に向けて送出するとともに、移動体通信端末3からの信号を信号受信部202に向けて送出する。
【0099】
分配器22は、受信した信号を後述するコネクタ15と信号受信器14aとに分配し出力する。また、コネクタ15から受信した信号は、分配せずにサーキュレータ26側にそのまま出力する。
【0100】
コネクタ15は、本実施例に係る移動体通信端末試験システムへ信号を入出力するコネクタであり、図1におけるコネクタ15に該当する。妨害波試験においては、試験実施前(出荷前等)の校正値取得時には、後述する校正用信号受信器4を接続したうえで信号の出力レベルを測定する。試験実施時には被測定端末である移動体通信端末3を接続したうえで、移動体通信端末3の耐妨害波特性の測定を行う。
【0101】
移動体通信端末3は、被試験端末であり、後述する疑似基地局20からの基地局信号を受信し、応答信号を疑似基地局20に送信する。移動体通信端末3は、図1における移動体通信端末3に該当する。
【0102】
校正用信号受信器4は、試験を実行する前(出荷前等)にコネクタ15に接続し、信号発生器13aから送信されたコネクタ15における信号の出力レベルを測定する。測定で得た信号の出力レベルから経路損失を測定し帯域阻止フィルタ10aの校正に用いる校正値を算出する。校正用信号受信器4は、図1における校正用信号受信器4に該当する。
【0103】
信号受信器14aは、受信した信号の出力レベルを測定する信号測定器であり、図1における信号受信器14に該当する。
【0104】
受信信号測定部23は、信号受信部202で復調された信号が入力され、妨害波の影響の度合いを推定するビット誤り率(BER:Bit Error Rate)を測定しその結果を出力する。このビット誤り率を測定する受信信号測定部23は、当業者によく知られており、本発明に直接関係のある構成ではないため、詳細な構成の説明は省略する。
【0105】
疑似基地局20、方向性結合器21、サーキュレータ26、分配器22、及び、受信信号測定部23と、各機能ブロックを結ぶ配線により構成される回路網が、図1におけるインタフェースユニット11の経路の一つに該当する。
【0106】
(第2の実施形態:送信試験を実施するための形態)
第2の実施形態に係る移動体通信端末試験システムと該移動体通信端末試験システムにおける帯域阻止フィルタユニットの補正方法について図1を参照しながら説明する。図1は本実施形態に係る移動体通信端末試験システムにおける帯域阻止フィルタユニットの補正方法を説明するための概念図である。なお、図1において図9と同様の符号を付した要部(機能ブロック)は、同一機能を有する。
【0107】
第2の実施形態に係る移動体通信端末試験システムは、試験の対象としての移動体通信端末、例えば携帯電話器の試験のため、世界標準規格 3GPP の仕様、特にTS 34.121規格の5章(送信試験)に準拠した認証試験を実現するコンフォーマンステストシステムであって、移動体通信端末からの応答信号に含まれるスプリアスに関して規格への準拠性を検証する。
【0108】
本実施形態に係る移動体通信端末試験システムの構成について、第1の実施形態と同様の構成については説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0109】
本実施形態に係る移動体通信端末試験システムでは、コネクタ15に被測定対象となる移動体通信端末3を接続し、移動体通信端末3から送信した信号を信号受信器14で受信し、信号に含まれるスプリアスを測定する。そのため、コネクタ15を信号発生器13に並列な位置、つまり、切替スイッチ16の端子16b側に接続され、コネクタ15に入力された信号は方向性結合器(図示しない)を経てインタフェースユニット11に入力される。
【0110】
また、コネクタ15には、出荷前には後述する校正用信号発生器5が接続される。このとき、校正データ取得制御部122は、校正用信号発生器5に対して信号受信器14にむけて校正用の信号の送信を指示し、校正用信号発生器5で送信した信号の出力レベルと、信号受信器14で測定した試験信号の出力レベル、及び、信号発生器13における信号の出力レベルから経路損失を算出し、校正値として校正データメモリ123に記憶する。
【0111】
本実施形態に係る移動体通信端末試験システムにおいては、制御部12は、信号発生器13、インタフェースユニット11、帯域阻止フィルタユニット10、信号受信器14、校正用信号発生器5の各動作、及び、動作するための設定の変更を制御する。
【0112】
本実施形態に係る移動体通信端末試験システムにおいては16b側に切替える。
【0113】
本実施形態に係る移動体通信端末試験システムにおいて、校正データ取得制御部122は、信号発生器13が送信した信号の出力レベルと、信号受信器14が受信した信号の出力レベルと、校正用信号発生器5が送信した信号の出力レベルとから校正値を算出し校正データメモリ123に記憶させる。以下に、準備校正モード、第1の校正モード、及び、第2の校正モードにおける校正値の取得方法と試験を実行するモードにおける試験器の校正方法について図2(a).及び図3(a).を参照して具体的に説明する。
【0114】
なお、出荷前、及び、試験の実施直前に経路を切替えて校正値を取得する手順については、第1の実施形態に係る移動体通信端末試験システムと同様のため説明は省略し、手順の異なる経路損失の測定と校正値の算出に係る部分(ステップS103、S303、及び、S305)についてのみ説明する。また、以下の校正値の取得方法で説明する各処理は校正データ取得制御部122が実施するものとする。
【0115】
(準備校正モード)
(ステップS103)
試験の実施前(出荷前等)には、第1の実施形態と同様に、各経路(経路A〜経路M)に対する経路損失を測定し第1の校正値α1(R=A〜M;α1〜α1)を算出する。まず、校正用信号発生器5から校正用の信号をインタフェースユニット11に対して送信する。校正用の信号は、インタフェースユニット11のユニット11B、帯域阻止フィルタユニット10のスルーパス102、インタフェースユニット11のユニット11Aを経て、インタフェースユニット11から出力され、分配器(図示しない)により分配され信号受信器14で受信される。
【0116】
このときの校正用信号発生器5が送信した校正用の信号の出力レベルD’ioと、信号受信器14で受信した信号の出力レベルD’saとから、校正用信号発生器5と信号受信器14との間の経路損失ΔD’sa(=D’sa−D’io)を算出し、第1の校正値α1として経路損失校正テーブルTbl1に記憶する。図4の(a).に各経路(経路A〜経路M)に対し第1の校正値α1(R=A〜M;α1〜α1)を算出し経路損失校正テーブルTbl1に記憶した例を示す。前述したとおり、第1の校正値α1は全ての経路(経路A〜経路M)に対して取得する。
【0117】
また、コネクタ15と信号受信器14との間の経路損失と、信号発生器13と信号受信器14との間の経路損失との差をあらかじめ求め校正値Lとして校正データメモリ123に記憶しておく。
【0118】
校正値Lは、信号発生器13と信号受信器14との経路間の損失を求め、コネクタ15と信号受信器14との経路間の損失(第1の校正値α1)との差を計算し求めると良い。また、コネクタ15から信号受信器14までの経路損失を直接求めて校正値Lとしても良い。コネクタ15から信号受信器14までの経路損失は、コネクタ15に校正用の信号発生器を接続し、該校正用の信号発生器から試験信号を送信し信号受信器14で受信して、該校正用の信号発生器から送信した信号の出力レベルと信号受信器14で受信した信号の出力レベルとから算出可能である。
【0119】
(第2の校正モード)
(ステップS303)
試験実施直前には、第1の実施形態と同様に、被測定端末である移動体通信端末3を接続したうえで(接続する前でも良い)、該当する試験を実施する経路(経路A〜経路Mのいずれか)に対する経路損失を測定し第2の校正値α2及び第3の校正値βfxを算出する。
【0120】
まず、帯域阻止フィルタユニット10の経路をスルーパス102に切替えて、設定した経路間の経路損失を測定し、第2の校正値α2を算出する。信号発生器13から校正用の信号をインタフェースユニット11に対して送信する。校正用の信号は、インタフェースユニット11のユニット11A、帯域阻止フィルタユニット10のスルーパス102、インタフェースユニット11のユニット11Bを経て、インタフェースユニット11から出力され信号受信器14で受信される。
【0121】
このときの信号発生器13が送信した校正用の信号の出力レベルA’cwと、信号受信器14で受信した信号の出力レベルA’0と、準備校正モードで取得した校正値Lとから、信号発生器13と信号受信器14との間の経路損失ΔA’0(=A’cw−A’0+校正値L)を算出し、第2の校正値α2として測定時経路損失校正テーブルTbl2に記憶する。測定時経路損失校正テーブルTbl2は校正データメモリ123に記憶する。図4の(b).に各第2の校正値α2を算出し測定時経路損失校正テーブルTbl2に記憶した例を示す。
【0122】
(ステップS305)
次に、帯域阻止フィルタユニット10の経路を可変帯域阻止フィルタ101に切替えて、設定した経路及び可変帯域阻止フィルタ101の経路損失を算出する。可変帯域阻止フィルタ101に対し、ユーザインタフェース17から条件設定として指定された試験を実施する周波数帯域(fx)に対して、経路損失を算出し第3の校正値βfxとして校正データメモリ123に記憶する。
【0123】
第1の校正モードと同様に、信号発生器13から校正用の信号をインタフェースユニット11に対して送信し、信号受信器14で受信したうえで、このときの信号発生器13が送信した校正用の信号の出力レベルA’cwと、信号受信器14で受信した信号の出力レベルA’fxと、校正値Lとから、信号発生器13と信号受信器14との間の経路損失ΔA’fx(=A’cw−A’fx+校正値L)を算出し、第3の校正値βfxとして測定時周波数校正テーブルTbl3に記憶する。測定時周波数校正テーブルTbl3は校正データメモリ123に記憶する。これによりこの処理は終了となる。図4の(c).に第3の校正値βfxを算出し測定時周波数校正テーブルTbl3に記憶した例を示す。
【0124】
なお、校正値Lは、信号発生器13とコネクタ15との経路間の損失や、信号発生器13と信号受信器14との経路間の損失に比べ小さく、温度環境の変化や経年劣化等による影響を受けにくい。そのため、試験の実施ごとにこれを校正する必要はない。
【0125】
また、同じ経路(例えば経路R)で複数の周波数設定について試験を実行する場合は、第3の校正値βfxを周波数設定分算出すればよく、試験ごとに第2の校正値α2を算出する必要はない。この場合、測定時周波数校正テーブルTbl3を複数の校正値を記憶できるように拡張すると良い。
【0126】
(校正方法)
次に、試験を実行する際、つまり、試験を実行するモードにおいて算出した校正値をもとに帯域阻止フィルタユニット10に係る試験器の信号レベルの校正を行う方法について説明する。本実施形態に係る移動体通信端末測定システム(送信試験)においては、補正部1241は、コネクタ15から所望の出力レベルの信号が送信されていることを確認するために、信号受信器14が受信した信号の出力レベルを補正する。
【0127】
校正方法について、インタフェースユニット11の経路を経路Aに接続し、可変帯域阻止フィルタ101の周波数設定f1に設定した場合を例に、以下に具体的に説明する。なお、以下の校正方法で説明する各処理は補正部1241が実施するものとする。
【0128】
信号受信器14が受信した信号の出力レベルの補正には、コネクタ15と信号受信器14との間の経路間損失を示す第1の校正値α1を用いる。しかし、第1の校正値α1の算出には、可変帯域阻止フィルタ101の周波数特性や、温度環境の変化や経年劣化等により発生する誤差の影響が考慮されていないため、第2の校正値α2、及び、第3の校正値βf1を用いて校正する。
【0129】
まず、温度環境の変化や経年劣化等により、信号発生器13と信号受信器14との経路間に発生する損失量の誤差を校正する校正値γ1が、試験実施前に算出した第1の校正値α1及び校正値Lと、試験直前に算出した第2の校正値α2とから以下のように求められる。
【0130】
(校正値γ1)=(第2の校正値α2)−(第1の校正値α1
【0131】
さらに、可変帯域阻止フィルタ101における損失量を校正する校正値γ2Af1を、経路Aで構成される回路網と周波数設定がf1の場合の可変帯域阻止フィルタ101とを含む経路損失、つまり、第3の校正値βf1と、経路Aで構成される回路網のみ(帯域阻止フィルタユニット10はスルーパス102に接続された場合)の経路損失、つまり、第2の校正値α2とから以下の通り求める。
【0132】
(校正値γ2Af1)=(第3の校正値βf1)−(第2の校正値α2
【0133】
以上から、信号受信器14で受信された(校正値により補正された)信号の出力レベルをPio、コネクタ15における信号が出力すべき所望の出力レベルをP0、信号発生器13が送信した信号の出力レベルをP1とすると、試験実施時に信号受信器14で受信された信号の出力レベルPioを以下の通り補正することで、信号発生器13とコネクタ15との経路間の損失を校正し、コネクタ15から所望の出力レベルの信号が出力されていることを確認することが可能となる。
【0134】
(出力レベルP0)=(出力レベルP1)−(校正値L)
=(出力レベルPio)+(校正値γ1)+(校正値γ2Af1
(出力レベルPio)
=(出力レベルP0)−(校正値γ1)−(校正値γ2Af1
=(出力レベルP1)−(校正値L)−(校正値γ1)−(校正値γ2Af1
=(出力レベルP1)−(校正値L)
−{(第2の校正値α2)−(第1の校正値α1)}
−{(第3の校正値βf1)−(第2の校正値α2)}
【0135】
(実施例2)
第2の実施形態に係る移動体通信検証装置と該移動体通信検証装置における帯域阻止フィルタの補正方法の実施例について、図7を参照しながら説明する。図7は、本実施形態に係る移動体通信端末試験システムを用いた送信試験だけを取り上げたシステムブロック図である。
【0136】
本試験では疑似基地局20から発信した疑似基地局信号を受け、被試験端末である移動体通信端末3が返送する応答信号を測定することで、応答信号に含まれるスプリアスの影響を検証する。本実施形態に係る信号送信部201及び信号受信部202を含む疑似基地局20と移動体通信端末3の構成及び動作は、実施例1に係る移動体通信端末試験システムと同様であるため、説明は省略する。
【0137】
コネクタ15は、本実施例に係る移動体通信端末試験システムへ信号を入出力するコネクタであり、図1におけるコネクタ15に該当する。送信試験においては、試験実施前(出荷前等)の校正値取得時には、後述する校正用信号発生器5を接続したうえで信号の出力レベルを測定する。試験実施時には被測定端末である移動体通信端末3を接続したうえで、移動体通信端末3から信号を送信し、後述する受信信号測定部14bで受信して該信号に含まれるスプリアスの測定を行う。
【0138】
校正用信号発生器5は、試験を実行する前(出荷前等)にコネクタ15に接続し、試験信号を受信信号測定部14bに送信する。このとき校正用信号発生器5が送信した信号の出力レベルと、受信信号測定部14bで受信した信号の出力レベルとから、校正用信号発生器5と受信信号測定部14bとの間の経路損失を測定し帯域阻止フィルタ10aの校正に用いる校正値を算出する。校正用信号発生器5は、図1における校正用信号発生器5に該当する。
【0139】
信号発生器13bは、後述する受信信号測定部14bに試験信号を送信する。このとき信号発生器13bが送信した信号の出力レベルと、受信信号測定部14bで受信した信号の出力レベルとから、信号発生器13bと受信信号測定部14bとの間の経路損失を測定し帯域阻止フィルタ10aの校正に用いる校正値を算出する。信号発生器13bは、図1における信号発生器13に該当する。
【0140】
方向性結合器24は、信号発生器13bの出力信号、及び、コネクタ15から入力された信号、つまり、校正用信号発生器5及び移動体通信端末3の出力信号の出力周波数を通過させる広帯域の結合器であり、信号発生器13bの出力信号、及び、コネクタ15から入力された信号をサーキュレータ26側にのみ出力する。また、サーキュレータ26側から入力された信号は、コネクタ15にのみ出力する。
【0141】
スプリッタ25は、移動体通信端末3からの応答信号波、もしくは、信号発生器13bもしくは校正用信号発生器5から送信された試験信号波を分波し、信号受信部202と後述する受信信号測定部14bの双方に入力する。
【0142】
帯域阻止フィルタ10bは、受信信号測定部14bに入力する応答信号波の各周波数成分のうち、応答信号波のキャリアに該当する周波数帯域以外の周波数成分のみを通過させ、応答信号のキャリアに該当する周波数帯域の成分を抑圧する。言い換えれば、応答信号のキャリアに該当する周波数帯域を大きく減衰し、減衰帯域以外の帯域に対して、通過損失の少ない平坦な周波数特性が望ましい。帯域阻止フィルタ10bは、図1における帯域阻止フィルタユニット10に該当する。
【0143】
受信信号測定部14bは、帯域阻止フィルタ10bの校正時、つまり、試験前(出荷前等)に入出力校正値を算出する場合、及び、試験直前に実行時校正値を算出する場合には、受信した信号の出力レベルを測定する。受信信号測定部14bは、図1における信号受信器14に該当する。
【0144】
また、受信信号測定部14bは、被試験端末である移動体通信端末3からの応答信号に含まれる各周波数成分の信号レベルを測定し、これらの値が規定値以下であることを確認する。
【0145】
受信信号測定部14bに入力される移動体通信端末3からの応答信号は、帯域阻止フィルタ10bにより応答信号のキャリアに該当する周波数帯域成分が減衰されているため、応答信号に含まれる高調波等のスプリアスのみを測定することが可能となる。
【0146】
以上から、本願発明に係る移動体通信端末試験システムにおいて、帯域阻止フィルタユニット10に係る校正として、試験を実施する前、及び、試験を実施する直前に実施する校正値(α1、α2、及び、βfx)の算出に係る処理コストは、以下に示す計算式で算出される。
【0147】
(試験実施前(出荷前)の校正値取得に係る処理コスト)
=(第1の校正値α1の算出回数)
=1×M
【0148】
ここで、図5は本願発明に係る移動体通信端末試験システムにおける信号レベルの校正に関し、試験対象となる周波数設定が追加された場合の校正テーブルを示している。図5に示した校正テーブルが、図4に示した校正テーブルと同一であることからもわかる通り、本実施形態に係る移動体通信端末試験システムにおいては、従来の方式における校正値(α1’fx)の算出に係る処理コストに比べ試験の実施前に取得する校正値(第1の校正値α1)の周波数設定の量に係る処理コストが大幅に削減される。
【0149】
(周波数設定の追加)
また、処理コストの削減の効果は、測定対象となる周波数設定が追加された場合(例えば、規格が追加・変更される等により)にも顕著に表れる。以下に、測定対象となる周波数設定が追加された場合の処理について、周波数設定として周波数fa1〜fanが追加されたものとして説明する。
【0150】
従来のシステムでは、帯域阻止フィルタユニット10Cに追加する周波数設定(周波数fa1〜fan)に対応した帯域阻止型の固定フィルタを接続し、追加した周波数設定に対して、試験実施前(出荷前又は試験システムをユーザ先に設置した後の調整時、あるいは試験システム構成を変更した後の調整時)に算出する校正値(α1’fx)を算出する必要がある。
【0151】
それに対し、本願発明に係る移動体通信端末試験システムにおいては、可変帯域阻止フィルタ101を用いているため、追加する周波数設定(周波数fa1〜fan)の設定追加を行うのみでよく、新たにフィルタを接続する必要はない。
【0152】
また、第1の校正値α1及び第2の校正値α2は周波数設定に依存するパラメータを持たないため新たに校正値を算出する必要はなく、試験実施直前に可変帯域阻止フィルタ101に接続し、試験を実施する周波数設定に対して、第3の校正値βfxを算出するのみでよく、周波数設定の追加に伴う校正値算出の処理コストは発生しない。
【0153】
このことから、本願発明に係る移動体通信端末試験システムにおいては、周波数設定の追加に伴う校正値算出の処理コストが、従来の方式に比べて大幅に削減される。
【0154】
なお、図3(a).と図3(b).との比較から明らかなように、本発明の移動体通信端末試験システムは、従来の試験システムと比較して、試験実施直前の校正における校正値取得回数が1回増えている。しかしながら、この1回の校正値取得にかかる時間は、妨害波試験や送信試験にかかる時間に比べて極めて短いものである。従って、本発明の移動体通信端末試験システムを使用したユーザに対して、試験時間増大の影響を及ぼすことは無い。
【0155】
また、実施例1及び実施例2は各試験(妨害波試験及び送信試験)のシステム構成を具体的に説明したものであり、実施例1及び実施例2のシステム構成を統合することで、図1の概念図で示した構成となる。
【符号の説明】
【0156】
3 移動体通信端末 4 校正用信号受信器 5 校正用信号発生器
10、10C 帯域阻止フィルタユニット 10a、10b 帯域阻止フィルタ
11 インタフェースユニット 12 制御部
13、13a、13b 信号発生器
14、14a 信号受信器 14b 受信信号測定部 15 コネクタ
20 疑似基地局 21 方向性結合器 22 分配器 23 受信信号測定部
24 方向性結合器 25 スプリッタ 26 サーキュレータ
50 フィルタユニット
101 可変帯域阻止フィルタ 102 スルーパス
121 機能モード制御部 122 校正データ取得制御部
123 校正データメモリ 124 試験制御部
201 信号送信部 202 信号受信部
501 駆動部 502 第1の可変フィルタ 503 第2の可変フィルタ
1241 補正部 1242 測定処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号発生器(13)と、信号受信器(14)と、移動体通信端末に接続するためのコネクタ(15)と、所望の周波数帯の信号を減衰させるための帯域阻止フィルタユニット(10)と、前記移動体通信端末の所定の試験を行うために、前記信号発生器、前記信号受信器、前記コネクタ、前記帯域阻止フィルタユニットの間の各経路を切替えて前記所定の試験を行う構成とするための切替インタフェースユニット(11)とを備え、前記信号発生器又は前記信号受信器を試験器として前記移動体通信端末の前記所定の試験を行う移動体通信端末試験システムにおいて、
前記帯域阻止フィルタユニットは、YTFで構成されて該YTFの同調周波数を所定の周波数に設定することにより前記所望の周波数帯の信号を減衰させる可変帯域阻止フィルタ(101)と前記所望の周波数帯の信号を減衰させることなく通過させるスルーパス(102)とを有し、該可変帯域阻止フィルタと該スルーパスとのいずれかを選択可能に構成されており、さらに、
予め、前記帯域阻止フィルタユニットにスルーパスを選択させた状態で、前記切替インタフェースユニットにより前記経路を切替えたときの前記試験器と前記コネクタ間の各経路の経路損失を第1の校正値(α1、・・・、α1)として記憶する校正データメモリ(123)と、
前記所定の試験の開始時の初期に、前記帯域阻止フィルタユニットに前記スルーパスを選択させ、前記切替インタフェースユニットにより前記経路を前記所定の試験を行う構成としたときの前記試験器と前記コネクタとの間の経路損失を測定して第2の校正値(α2)として記憶するとともに、前記経路はそのままの状態で、前記帯域阻止フィルタユニットに前記同調周波数を前記所定の試験に対応した周波数に設定した前記可変帯域阻止フィルタを選択させたときの前記試験器と前記コネクタとの間の経路損失を測定して第3の校正値(βfx)として記憶する校正データ取得制御部(122)と、
前記所定の試験が前記移動体通信端末の受信特性の試験である場合は、前記試験器として用いる前記信号発生器の出力レベルを、前記所定の試験が前記移動体通信端末の送信特性の試験である場合は、前記試験器として用いる前記信号受信器の受信レベルを、前記第1の校正値、前記第2の校正値及び前記第3の校正値により校正して、前記所定の試験を行う試験制御部(124)とを備えたことを特徴とする移動体通信端末試験システム。
【請求項2】
前記試験制御部は、前記信号発生器から前記経路及び前記帯域阻止フィルタユニットを経由して前記コネクタを介して前記移動体通信端末に信号を入力させて、前記移動体通信端末の前記受信特性を試験する場合は、前記第1の校正値、前記受信特性の試験の開始時の初期における前記第1の校正値の変動分(=前記第2の校正値―前記第1の校正値)、及び前記受信特性の試験の開始時の初期における前記可変帯域阻止フィルタの損失分(=前記第3の校正値―前記第2の校正値)、を基に、前記信号発生器が出力する信号のレベルを校正することによって、前記移動体通信端末に所望のレベルの信号を供給して試験することを特徴とする請求項1に記載の移動体通信端末試験システム。
【請求項3】
前記試験制御部は、前記コネクタを介して前記移動体通信端末からの信号を前記経路及び前記帯域阻止フィルタユニットを経由して前記コネクタを介して前記信号受信器で受信して前記移動体通信端末の前記送信特性を試験する場合は、前記第1の校正値、前記送信特性の試験の開始時の初期における前記第1の校正値の変動分(=前記第2の校正値―前記第1の校正値)、及び前記送信特性の試験の開始時の初期における前記可変帯域阻止フィルタの損失分(=前記第3の校正値―前記第2の校正値)、を基に、前記信号受信器が受信する信号のレベルを校正することによって、前記移動体通信端末からの信号のレベルを測定して試験することを特徴とする請求項1に記載の移動体通信端末試験システム。
【請求項4】
信号発生器(13)と、信号受信器(14)と、移動体通信端末に接続するためのコネクタ(15)と、所望の周波数帯の信号を減衰させるための帯域阻止フィルタユニット(10)と、前記移動体通信端末の所定の試験を行うために、前記信号発生器、前記コネクタ、前記信号受信器、前記帯域阻止フィルタユニットとの間の各経路を切替えて前記所定の試験を行う構成とするための切替インタフェースユニット(11)とを備え、前記信号発生器又は前記信号受信器を試験器として前記移動体通信端末の前記所定の試験を行う移動体通信端末試験システムの校正方法であって、
前記帯域阻止フィルタユニットは、YTFで構成されて該YTFの同調周波数を所定の周波数に設定することにより前記所望の周波数帯の信号を減衰させる可変帯域阻止フィルタ(101)と前記所望の周波数帯の信号を減衰させることなく通過させるスルーパス(102)とを有し、該可変帯域阻止フィルタと該スルーパスとのいずれかを選択可能に構成されており、さらに、
予め、前記帯域阻止フィルタユニットに前記スルーパスを選択させた状態で、前記切替インタフェースユニットにより前記経路を切替えたときの前記試験器と前記コネクタ間の各経路の経路損失を第1校正値(α1、・・・、α1)として記憶しておく準備ステップと、
前記所定の試験が前記移動第通信端末の受信特性の試験である場合に、該受信特性の試験の開始時の初期に、前記帯域阻止フィルタユニットに前記スルーパスを選択させ、前記切替インタフェースユニットにより前記経路を前記受信特性の試験を行う構成とし且つ前記信号受信器を前記コネクタへの経路に前記移動体通信端末に並列に接続させる構成としたときの前記試験器と前記コネクタとの間の経路損失を測定して第2の校正値(α2)として記憶する試験前経路校正値取得ステップと、
前記試験前経路校正値取得ステップの後に、前記経路はそのままの状態で、前記帯域阻止フィルタユニットに前記同調周波数を前記所定の試験に対応した周波数に設定した前記可変帯域阻止フィルタを選択させたときの前記試験器と前記コネクタとの間の経路損失を測定して第3の校正値(βfx)として記憶する試験前フィルタ校正値取得ステップと、
前記試験前フィルタ校正値取得ステップの後に、前記第1の校正値、前記受信特性の試験の開始時の初期における前記第1の校正値の変動分(=前記第2の校正値―前記第1の校正値)、及び前記受信特性の試験の開始時の初期における可変帯域阻止フィルタの損失分(=前記第3の校正値―前記第2の校正値)、を基に、前記信号発生器が出力する信号のレベルを校正することによって、前記移動体通信端末に所望のレベルの信号を供給して前記受信特性の試験を行うための校正ステップとを備えたことを特徴とする校正方法。
【請求項5】
信号発生器(13)と、信号受信器(14)と、移動体通信端末に接続するためのコネクタ(15)と、所望の周波数帯の信号を減衰させるための帯域阻止フィルタユニット(10)と、前記移動体通信端末の所定の試験を行うために、前記信号発生器、前記コネクタ、前記信号受信器、前記帯域阻止フィルタユニットとの間の各経路を切替えて前記所定の試験を行う構成とするための切替インタフェースユニット(11)とを備え、前記信号発生器又は前記信号受信器を試験器として前記移動体通信端末の前記所定の試験を行う移動体通信端末試験システムの校正方法であって、
前記帯域阻止フィルタユニットは、YTFで構成されて該YTFの同調周波数を所定の周波数に設定することにより前記所望の周波数帯の信号を減衰させる可変帯域阻止フィルタ(101)と前記所望の周波数帯の信号を減衰させることなく通過させるスルーパス(102)とを有し、該可変帯域阻止フィルタと該スルーパスとのいずれかを選択可能に構成されており、さらに、
予め、前記帯域阻止フィルタユニットに前記スルーパスを選択させた状態で、前記切替インタフェースユニットにより前記経路を切替えたときの前記試験器と前記コネクタ間の各経路の経路損失を第1校正値(α1、・・・、α1)として記憶しておく準備ステップと、
前記所定の試験が前記移動体通信端末の送信特性の試験である場合に、該送信特性の試験の開始時の初期に、前記帯域阻止フィルタユニットに前記スルーパスを選択させ、前記切替インタフェースユニットにより前記経路を前記送信特性の試験を行う構成とし且つ前記試験器と前記コネクタとの間の経路損失を測定して第2の校正値(α2)として記憶する試験前経路校正値取得ステップと、
前記試験前経路校正値取得ステップの後に、前記経路はそのままの状態で、前記帯域阻止フィルタユニットに前記同調周波数を前記所定の試験に対応した周波数に設定した前記可変帯域阻止フィルタを選択させたときの前記試験器と前記コネクタとの間の経路損失を測定して第3の校正値(βfx)として記憶する試験前フィルタ校正値取得ステップと、
前記試験前フィルタ校正値取得ステップの後に、前記第1の校正値、前記送信特性の試験の開始時の初期における前記第1の校正値の変動分(=前記第2の校正値―前記第1の校正値)、及び前記送信特性の試験の開始時の初期における可変帯域阻止フィルタの損失分(=前記第3の校正値―前記第2の校正値)、を基に、前記信号受信器が受信する信号のレベルを校正することによって、前記移動体通信端末からの信号レベルを測定して前記送信特性の試験を行うための校正をする校正ステップとを備えたことを特徴とする校正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図4】
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【図5】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−61749(P2011−61749A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212523(P2009−212523)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】