説明

移動体

【課題】簡易な操作で、安全に運転することが可能な移動体を提供する。
【解決手段】本発明に係る移動体は、同軸に配置された車輪を駆動して倒立制御を行う同軸二輪車と、前記同軸二輪車の進行方向の前方又は後方に設けられた補助機構であって、前記同軸二輪車から路面に向かって伸縮可能な補助脚と、前記補助脚に回転自在に取り付けられ路面に接地する補助輪と、前記補助脚を伸縮させるアクチュエータとを有する補助機構と、前記同軸二輪車の姿勢を変化させるため前記補助脚の長さを決定し、前記補助脚が決定された長さになるように前記アクチュエータを動作させる操作部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動体に関し、特に、同一軸心線上に配置された2個の車輪を駆動して倒立制御を行う同軸二輪車を備える移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、同一軸心線上に配置された2個の車輪を駆動して倒立制御を行う同軸二輪車が知られている。同軸二輪車は前後に傾けられる構造になっており、加減速は搭乗者の重心移動によって行われる。
【0003】
同軸二輪車が倒立制御を行っている状態は、不本意に車体が前後に移動する不安定な状態である。乗車時には、搭乗者は倒立制御を行っている同軸二輪車に対し、一時的に片足でバランスを取りながら乗車する必要がある。この時、車体が前後に揺られるため、乗車には一定の技能が要求される。
【0004】
また、走行時は、車体の前後への傾きを検知して加減速を行うが、加減速の具合は搭乗者の技能に依存する。同軸二輪車の運転に慣れていない搭乗者は加減速を適切に調節することができず、急加速・急制動の際にバランスを崩すおそれがある。任意の位置で停止させる場合、搭乗者が重心を調整しながら、同軸二輪車を動作させる必要がある。
【0005】
降車時には、同軸二輪車を降車モードにして搭乗者が車体の後方に降車する。降車モードでは、同軸二輪車の倒立制御が解除される。このため、その場での停止ができず、搭乗者は車体を傾けて降りることとなる。従って、降車前に後方の安全確認が必須となる。このように、倒立二輪車を運転するにあたり、搭乗者に一定の技能が要求される。
【0006】
そこで、特許文献1〜4には、補助輪を備える同軸二輪車が開示されている。特許文献1では、車体の傾斜角度を制限する補助輪が設けられている。この補助輪は、加速度が所定閾値を超え、急加速、急減速となる場合に接地する。これにより、搭乗者にとって快適な加減速を実現している。
【0007】
また、特許文献2では、車体と駆動部との相対的位置を制御することにより、車両の制動力を発生させる補助制動部が設けられている。車両停止時には、補助輪を接地させることにより、安定的に車両を停止させることができる。
【0008】
特許文献3では、車両の速度、重力方向に対する傾斜角、車体の路面に対する傾斜角を測定し、補助輪の伸縮量、伸縮速度等が制御される。車両停止時には、補助輪を略同時に路面に接触させ、車体を安定な倒立状態に保ちながら車両を停止させることができる。
【0009】
特許文献4では、急加速、急減速となる場合に、路面に接地する補助輪が設けられています。搭乗者の重心移動範囲を車輪の中心と補助輪の中心との間に広げることにより、安定な走行性を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−247138号公報
【特許文献2】特開2008−131821号公報
【特許文献3】特開2007−237750号公報
【特許文献4】特開2007−186184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1、4では、補助輪は加速度の異常が発生した非常時に使用されるものである。補助輪は、加速の場合には進行方向とは逆方向の路面に接地され、減速の場合には進行方向の路面に接地される。このように、特許文献1、4の補助輪は、加速度とは逆方向の搭乗者の重心移動ができる許容範囲を規定しているに過ぎない。また、特許文献2、3に記載の補助輪は、車両の停止させる際に使用されるものである。
【0012】
このように、特許文献1〜4に記載の同軸二輪車では、補助輪の使用される場合が限定されている。しかし、同軸二輪車の運転に慣れていない搭乗者は、車両を停止させる場合や加速度の異常が発生した場合以外にも、運転のアシストが必要である場合がある。例えば、走行時においては、加減速の具合を調節できるものが望まれている。
【0013】
本発明は上記のような事情を背景としてなされたものであり、簡易な操作で、安全に運転することが可能な移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様に係る移動体は、同軸に配置された車輪を駆動して倒立制御を行う同軸二輪車と、前記同軸二輪車の進行方向の前方又は後方に設けられた補助機構であって、前記同軸二輪車から路面に向かって伸縮可能な補助脚と、前記補助脚に回転自在に取り付けられ路面に接地する補助輪と、前記補助脚を伸縮させるアクチュエータとを有する補助機構と、前記同軸二輪車の姿勢を変化させるため前記補助脚の長さを決定し、前記補助脚が決定された長さになるように前記アクチュエータを動作させる操作部とを備えるものである。
【0015】
本発明の第2の態様に係る移動体は、上記の移動体において、前記補助機構は、前記補助輪の接地荷重を測定する測定部をさらに備えるものである。
【0016】
本発明の第3の態様に係る移動体は、上記の移動体において、前記測定部で測定された前記補助輪の接地荷重が変動した場合、前記同軸二輪車の車体を水平にするように、前記補助脚の長さが決定されることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の第4の態様に係る移動体は、上記の移動体において、前記補助機構は、前記同軸二輪車の進行方向の前方及び後方に設けられていることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の第5の態様に係る移動体は、上記の移動体において、前記操作部は、前記同軸二輪車の加減速を調整するスロットルレバーと、前記同軸二輪車を停止させるブレーキレバーとを有するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡易な操作で、安全に運転することが可能な移動体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態に係る移動体の構成を示す図である。
【図2】実施の形態に係る移動体の構成を模式的に示す図である。
【図3】実施の形態に係る移動体の乗車時の動作手順を説明するためのフロー図である。
【図4】実施の形態に係る移動体の降車時の動作手順を説明するためのフロー図である。
【図5】実施の形態に係る移動体の加速・減速時の動作手順を説明するためのフロー図である。
【図6】実施の形態に係る移動体の加速時の状態を示す図である。
【図7】実施の形態に係る移動体の減速時の状態を示す図である。
【図8】実施の形態に係る移動体の制動時の動作手順を説明するためのフロー図である。
【図9】実施の形態に係る移動体の登坂・降坂時の動作手順を説明するためのフロー図である。
【図10】実施の形態に係る移動体の登坂時の状態を示す図である。
【図11】実施の形態に係る移動体の降坂時の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。但し、本発明が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0022】
図1に示すように、本発明に係る移動体1は、同軸二輪車10、補助機構20を備えている。図1に示す例では、補助機構20は、同軸二輪車10の進行方向の前方に設けられている。同軸二輪車100は、車体11、車輪12、ステップ13、ハンドル14、制御部15、スロットルレバー16、ブレーキレバー17を有する。
【0023】
なお、本明細書において、ピッチ軸は一対の車輪12の車軸に相当する軸であり、ロール軸は車体11の中心を通り、車両の走行方向と平行をなす軸であり、また、ヨー軸は車体11の中心を通り、車両が走行する路面と垂直をなす軸である。
【0024】
本実施の形態に係る同軸二輪車10は、搭乗者の重心移動により前進、後退、左右旋回等の動作を操作することができる。搭乗者が重心を同軸二輪車10の前側に移動させ、同軸二輪車10を前傾させると前進動作を実行する。また、搭乗者が重心を同軸二輪車10の後ろ側に移動させ、同軸二輪車10を後傾させると後進動作を実行する。
【0025】
車体11は、同軸二輪車10の骨格を成すフレーム体である。車体11は、例えば、上下に分割された車体上部材、車体下部材、及び、左右に分割された側面部材を含む平行リンク機構等で構成することができる。車体11は、2個の車輪12を回転自在に支持している。2個の車輪12は、同一軸心線上に、平行に配置されている。車輪12には、それぞれ独立にモータ等の図示しない駆動手段が設けられている。駆動手段間は、車体によって連結されている。
【0026】
車体11の上には、走行する際に搭乗者が立位状態で搭乗するステップ13が設けられている。ステップ13は、車体11の車幅方向で制御部15を挟んで左右に分割されている。ステップ13の間には、ハンドル14が立設されている。ハンドル14は、車体11に対してロール軸方向に傾斜可能にされると共に、ハンドル14とステップ13との間は、互いに垂直となるようにリンク機構(図示せず)で連結されている。
【0027】
制御部15は、車輪12の駆動を制御して同軸二輪車10の倒立制御を行う。なお、ここでは図示していないが、制御部15には、倒立制御を行うために倒れ角速度又は倒れ角を測定するセンサー(ジャイロセンサーなど)や、車輪の回転角度又は回転角速度を測定できるセンサー(エンコーダ、レゾルバなど)を備えている。
【0028】
同軸二輪車10の進行方向の前方側には、補助機構20が設けられている。補助機構20は、補助脚21、補助輪22、アクチュエータ23、荷重センサ24を有する。補助機構20は、冶具25を介して、車体11に接続されている。なお、補助機構20は、同軸二輪車10の進行方向の後方側に設けることも可能である。
【0029】
また、図2に示すように、同軸二輪車10の前方側、後方側の両方に補助機構20を設けることが好ましい。これにより、同軸二輪車10の運転をより安全に行うことが可能となる。以下の説明では、同軸二輪車10の前方側、後方側の両方に補助機構20を設けた例について説明する。前方側を補助機構20aとし、後方側を補助機構20bとする。
【0030】
アクチュエータ23は、操作部であるスロットルレバー16又はブレーキレバー17からの操作に応じて、同軸二輪車10から路面の方向に補助脚21を伸縮させる。アクチュエータ23としては、例えば、モータ、空圧や油圧を利用したもの等を用いることができる。補助脚21の下端には、補助輪22が回転自在に取り付けられている。補助輪220としては、自在キャスタを適用することができる。
【0031】
操作部であるスロットルレバー16、ブレーキレバー17は、同軸二輪車10のハンドル14に設けられている。スロットルレバー16、ブレーキレバー17は、例えば自転車や自動二輪車などと同様に、同軸二輪車10の搭乗者が手で握って操作する。
【0032】
ワイヤ18aは、スロットルレバー16とアクチュエータ23とを連結する。ワイヤ18bは、ブレーキレバー17とアクチュエータ23とを連結する。スロットルレバー16、ブレーキレバー17からの操作は、ワイヤ18a、18bを介してアクチュエータ23に伝送される。なお、ここではスロットルレバー16とブレーキレバー17の両方を設けた例について説明したが、いずれか一方であっても構わない。
【0033】
搭乗者がスロットルレバー16を開けることにより同軸二輪車10が加速され、閉じることにより減速される。スロットルレバー16の開け具合に応じて、目標速度が設定され、該目標速度に応じた補助機構20a、20bの補助脚21の長さが決定される。これに応じて、アクチュエータ23を動作させ、補助機構20a、20bのそれぞれの補助脚21が伸縮する。
【0034】
また、搭乗者がブレーキレバー17を握ることにより、同軸二輪車10の速度が0となるように減速される。そして、速度が0となるように補助機構20a、20bの補助脚21の長さが決定される。これに応じて、アクチュエータ23を動作させ、補助機構20a、20bのそれぞれの補助脚21が伸縮する。
【0035】
このように、本発明の構成によれば、搭乗者が操作部を操作するという簡易な操作で、同軸二輪車10姿勢を積極的に変化させることができる。これにより、搭乗者の運転技能によらず、安定した状態で移動体1を加減速、停止させることができる。
【0036】
また、補助機構20a、20bには、それぞれ荷重センサ24が設けられている。荷重センサ24は、補助輪22の接地荷重を測定するセンサである。荷重センサ24は、荷重センサ24は、補助輪22が接地しているか否かを検知する機能を有する。また、補助輪22の接地荷重を監視することによって、路面の状態を監視する機能を有する。
【0037】
例えば、平坦な路面を走行しているときは、荷重センサ24の値はほとんど変化しない。坂道にさしかかると、進行方向側に設けられた荷重センサ24の値が平坦な路面を走行しているときと比較して大きくなる。この荷重センサ24の測定値の変化に応じて、補助機構20a、20bのそれぞれの補助脚21の長さを変化させることができる。
【0038】
なお、荷重センサ24は、前方側の補助機構20a又は後方側の補助機構20bのいずれか一方に設けてもよい。一方に設ける場合には、同軸二輪車10の進行方向の前方側に設けることが好ましい。これにより、同軸二輪車10が進行する先の路面の状態を判断することができ、より安全に同軸二輪車10を運転することが可能となる。
【0039】
ここで、図3を参照して、移動体1への乗車時の動作手順について説明する。図3は、移動体1への乗車時の動作手順を説明するためのフロー図である。図3に示すように、移動体1のメインの電源をONとする(S1)。このとき、同軸二輪車10が前後に動かないように、車輪12を駆動するモータがロックされた状態である(S2)。
【0040】
その後、搭乗者は、ブレーキレバー17を握る(S3)。これにより、アクチュエータ23が作動し、前後に設けられた補助機構20a、20bのそれぞれの補助脚21が伸縮する(S4)。そして、車体11が水平であるか否かが判断される(S5)。車体11が水平でない場合には(S5NO)、車体11が水平になるまでアクチュエータ23が作動し補助脚21が伸縮される。
【0041】
車体11が水平になると(S5YES)、荷重センサ24の測定値が閾値以上であるか否かが判断される(S6)。ここでは、荷重センサ24により、前後の補助機構20a、20bの補助輪22がそれぞれ接地しているか否かが判断される。荷重センサの測定値が閾値よりも小さい場合には(S6NO)、再度アクチュエータ23が作動し(S4)、その後、車体11が水平になっているか否か判断される。これらの手順が荷重センサ24の測定値が閾値以上になるまで繰り返される。
【0042】
荷重センサ24の測定値が閾値以上となると(S6YES)、アクチュエータ23の位置が保持される(S7)。これにより、同軸二輪車10は、補助機構20で支持された安定した状態となる。その後、例えば、ランプの点滅表示等により、乗車準備完了が報知される(S8)。そして、この状態で、搭乗者が同軸二輪車10に搭乗する(S9)。そのため、搭乗者は安定した状態で乗車することができる。
【0043】
その後、搭乗者は、ブレーキレバー17の握りを緩める。これにより、ブレーキ検知センサがオフとなる(S10)。これにより、同軸二輪車10は、前後方向への姿勢の変化によって前進又は後進可能な倒立制御状態となる。
【0044】
次に、図4を参照して、移動体1への降車時の動作手順について説明する。図4は、移動体1からの降車時の動作手順を説明するためのフロー図である。図4に示すように、まず、搭乗者は、降車ボタンをONにする(S21)。すると、アクチュエータ23が作動し、補助脚21を伸縮させる(S22)。
【0045】
そして、S23〜S25において、搭乗者のバランス状態が推定される。具体的には、まず、同軸二輪車10の速度がゼロになっているか否か判断される(S23)。同軸二輪車10の速度がゼロになっている場合(S22YES)、車体11が水平か否か判断される(S23)。そして、車体が水平である場合(S23YES)、荷重センサ24の測定値が閾値以上であるか判断される(S25)。S23〜S25における条件を満たしていない場合には(NO)、これらの手順(S22〜S25)が繰り返し実行される。
【0046】
荷重センサ24の測定値が閾値以上となると、アクチュエータ23が補助脚21の位置を保持する(S26)。これにより、同軸二輪車10は補助機構20に支持された、安定した状態となる。その後、アラーム等により、降車準備完了が報知される(S27)。その後、搭乗者が安全に同軸二輪車10から降車することができる(S28)。
【0047】
次に、図5〜7を参照して、移動体1の加速・減速時の動作手順について説明する。図5は、移動体1の加速・減速時の動作手順を説明するためのフロー図である。図6は移動体1の加速時の状態を示す図であり、図7は減速時の状態を示す図である。図5において、S32〜S36までの手順が加速時の手順であり、S38〜S42までの手順が減速時の手順である。
【0048】
まず、搭乗者は、同軸二輪車10の前方に体重を移動する(S31)。これにより、車体11を前傾させ、同軸二輪車10が前進する。加速時には、まず、搭乗者は、スロットルレバー16を開け(S31)、スロットルの値を確認する(S32)。
【0049】
そして、荷重センサ24の測定値が確認される(S34)。その後、スロットルの値に応じた目標速度まで加速するために、荷重センサ24の測定値を参照して、補助脚21の長さが決定される。例えば、搭乗者の体重が前方にかかりすぎている場合、急加速にならないように、補助脚21の長さが決定される。また、搭乗者の前方への体重移動が不十分で目標速度まで達しない場合には、さらに前傾姿勢となるように、前方側の補助脚21を縮め、後方側の補助脚21を伸ばすように、それぞれの長さが決定される。
【0050】
そして、アクチュエータ23が作動して、補助脚21を決定された長さに伸縮させる(S35)。そして、同軸二輪車10の速度が確認される(S36)。目標の任意の速度になると、アクチュエータ23が補助脚21の長さを保持する(S37)。目標の任意の速度ではない場合は、再度補助脚21の伸縮が行われる(S35)。
【0051】
これにより、図6に示すように、同軸二輪車10を積極的に前傾させることができる。このため、運転に不慣れな搭乗者であっても、急加速とならずに、所定の速度まで安全になめらかに加速することが可能となる。
【0052】
減速時には、まず、搭乗者は、スロットルレバー16を閉じ(S38)、スロットルの値を確認する(S39)。そして、荷重センサ24の測定値が確認される(S40)。その後、スロットルの値に応じた目標速度まで加速するために、荷重センサ24の測定値を参照して、補助脚21の長さが決定される。
【0053】
例えば、搭乗者の体重が後方にかかりすぎている場合、急減速にならないように、補助脚21の長さが決定される。また、搭乗者の後方への体重移動が不十分で目標速度まで達しない場合には、さらに後傾姿勢となるように、前方側の補助脚21を伸ばし、後方側の補助脚21を縮めるように、それぞれの長さが決定される。
【0054】
そして、アクチュエータ23が作動して、補助脚21を決定された長さに伸縮させる(S41)。そして、同軸二輪車10の速度が確認される(S42)。目標の任意の速度になると、アクチュエータ23が補助脚21の長さを保持する(S43)。目標の任意の速度ではない場合は、再度補助脚21の伸縮が行われる(S41)。
【0055】
これにより、図7に示すように、同軸二輪車10を積極的に後傾させることができる。このため、運転に不慣れな搭乗者であっても、急減速とならずに、所定の速度まで安全になめらかに減速することが可能となる。
【0056】
このように、加減速時においては、補助機構20は同軸二輪車10の前傾・後傾の姿勢を規制するバッファとして作用する。また、荷重センサ24は、搭乗者の意思、運転技能に応じて、バッファとしての作用の効き具合を調整する役割を果たす。スロットルレバー16は、この効き具合を加減するインターフェースとしての役割を果たしている。
【0057】
次に、図8を参照して、移動体1の制動時の動作手順について説明する。図8は、移動体1の制動時の動作手順を説明するためのフロー図である。図8に示すように、まず、搭乗者は、ブレーキレバー17を握る(S51)。これにより、アクチュエータ23が作動し、前後に設けられた補助機構20a、20bのそれぞれの補助脚21が伸縮する(S52)。ブレーキレバー17を操作した場合は、前方の補助機構20aに設けられた補助脚21を伸ばし、制的に車体11を減速姿勢にする。
【0058】
そして、S53〜S55において、搭乗者のバランス状態が推定される。具体的には、まず、荷重センサ24の測定値が閾値以上であるかが判断される(S53)。荷重センサ24の測定値は閾値以上であり(S53YES)、両方の補助輪22が接地したことが確認されると、同軸二輪車10の速度がゼロになっているかどうかが確認される。
【0059】
同軸二輪車10の速度がゼロである場合(S54YES)、車体11が水平になっているかどうかが確認される(S55)。S53〜S35における条件を満たしていない場合には(NO)、これらの手順(S52〜S55)が繰り返し実行される。
【0060】
車体11の測定値が閾値以上となると、アクチュエータ23が補助脚21の位置を保持する(S56)。これにより、同軸二輪車10は補助機構20に支持された、安定した停止状態が保持される(S57)。
【0061】
次に、図9〜11を参照して、移動体1の登坂・降坂時の動作手順について説明する。図9は、移動体1の登坂・降坂時の動作手順を説明するためのフロー図である。図10は移動体1の登坂時の状態を示す図であり、図11は降坂時の状態を示す図である。
【0062】
坂にさしかかると、荷重センサ24の測定値が変動する。例えば、上り坂にさしかかると、進行方向の前方側の荷重センサ24の値が平坦な路面を走行している時よりも大きくなる。また、下り坂にさしかかると、進行方向の前方側の荷重センサ24の値が平坦な路面を走行している時よりも小さくなる。
【0063】
このような荷重センサ24の測定値の変動を感知すると(S61)、アクチュエータ23が作動し、補助脚21が伸縮される(S62)。そして、前方側の補助機構20a、後方側の補助機構20bのそれぞれに設けられた荷重センサ24の測定値が閾値以上であるか否かが判断され、補助輪22が接地しているか否かが判断される(S63)。荷重センサ24の値が閾値以上である場合(S63YES)、車体11が水平であるかが判断される(S64)。S63、S64の条件が満たされない場合には、S62〜S64の手順が繰り返される。
【0064】
図10に示すように、上り坂の場合には、同軸二輪車10の前方側の補助機構20aの補助脚21が縮み、後方側の補助機構20bの補助脚21が伸びる。一方、図11に示すように、下り坂の場合には、同軸二輪車10の前方側の補助機構20aの補助脚21が伸び、後方側の補助機構20bの補助脚21が縮む。これにより、車体11が水平状態に保持される。
【0065】
車体11が水平となると(S64YES)、アクチュエータ23は、補助脚21の位置を保持する(S65)。そして、補助機構20a、20bにより、車体11が水平に保持された状態で、坂を安定に走行することができる(S66)。
【0066】
以上説明したように、本発明によれば、補助輪22を乗じ接地させることにより、同軸二輪車10を常に安定状態に保つことができる。また、走行中においては、補助機構20が、積極的に前後への車体11の姿勢を変化させるアシストを行う。このため、安定・安全な加減速を実現することができる。
【0067】
また、荷重センサ24の測定値から、搭乗者の姿勢を判断しながら補助脚21を伸縮させることができるため、急な加減速を防止することができる。また、荷重センサ24により、路面の状態の判断を行うことができるため、状況に応じて補助脚21の長さを変化させ、坂道等においても安定して運転を行うことが可能とる。
【0068】
以上、本発明に係る移動体の実施形態を説明したが、上記の構成に限らず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、変更することが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 移動体
10 同軸二輪車
11 車体
12 車輪
13 ステップ
14 ハンドル
15 制御部
16 スロットルレバー
17 ブレーキレバー
18a、18b ワイヤ
20、20a、20b 補助機構
21 補助脚
22 補助輪
23 アクチュエータ
24 荷重センサ
25 冶具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸に配置された車輪を駆動して倒立制御を行う同軸二輪車と、
前記同軸二輪車の進行方向の前方又は後方に設けられた補助機構であって、前記同軸二輪車から路面に向かって伸縮可能な補助脚と、前記補助脚に回転自在に取り付けられ路面に接地する補助輪と、前記補助脚を伸縮させるアクチュエータとを有する補助機構と、
前記同軸二輪車の姿勢を変化させるため前記補助脚の長さを決定し、前記補助脚が決定された長さになるように前記アクチュエータを動作させる操作部と、
を備える移動体。
【請求項2】
前記補助機構は、前記補助輪の接地荷重を測定する測定部をさらに備える請求項1に記載の移動体。
【請求項3】
前記測定部で測定された前記補助輪の接地荷重が変動した場合、前記同軸二輪車の車体を水平にするように、前記補助脚の長さが決定されることを特徴とする請求項2に記載の移動体。
【請求項4】
前記補助機構は、前記同軸二輪車の進行方向の前方及び後方に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の移動体。
【請求項5】
前記操作部は、
前記同軸二輪車の加減速を調整するスロットルレバーと、
前記同軸二輪車を停止させるブレーキレバーと、
を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の移動体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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