説明

移動式クレーン車の制御装置、制御方法及びプログラム

【課題】移動式クレーン車が移動可能な姿勢(状態)であるか否かに基づいて、アウトリガの縮小操作の可否を判定できる移動式クレーン車の制御装置、制御方法及びプログラムを提供すること。
【解決手段】複数の車軸6a〜6f及びアウトリガ4F,4Rを備えた移動式クレーン車1の制御装置であって、移動式クレーン車1の総重量と総合重心位置とが所定の条件を満たしていると判定された場合にアウトリガ4F,4Rの縮小操作を許可すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式クレーン車の制御装置、制御方法及びプログラムに関し、特に、移動式クレーン車におけるアウトリガの縮小可否の判定制御についての制御装置、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動式クレーン車を作業姿勢のまま構内移動させる場合には、予め決められた所定の姿勢にしてからアウトリガを縮小させて移動させることが一般的に行われている。しかしながら、作業時における移動式クレーン車の姿勢が所定の姿勢と異なる場合には、一旦所定の姿勢に変更してから移動させるか、作業時の姿勢で構内移動が可能か否かをメーカーに問い合わせる等が必要であり、作業者にとって煩雑であった。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、ブームの位置を検出するブーム状態検出手段によって検出されたブーム作動位置が、ブーム状態比較手段によって予め定められた車体安定維持範囲内にあると判定された場合にのみアウトリガの収容作動を許容する高所作業車の安全装置が記載されている。このような高所作業車の安全装置によれば、確かにアウトリガの収容が許容される状態では車体が安定支持されるため、車体を安定走行させることができるとも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−252098号公報(請求項1、段落0015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、ブームの先端に作業台が設けられた、いわゆる高所作業車に関するものであるため、車体に対する架装物の種類が変化することが一切考慮されていない。一方、移動式クレーン車では、重量の大きなカウンタウェイトが積載されたり、主ジブ(伸縮ブーム)の先端に補助ジブが設けられたりするため、単にブームの位置が車体安定維持範囲内にあるか否かの判定のみに依存してアウトリガの収容を許容してしまうと、車体の車軸に対して過剰に負荷が加わり車軸が損傷してしまう虞があった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、移動式クレーン車が移動可能な姿勢(状態)であるか否かに基づいて、アウトリガの縮小操作の可否を判定できる移動式クレーン車の制御装置、制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明による移動式クレーン車の制御装置は、複数の車軸及びアウトリガを備えた移動式クレーン車の制御装置であって、前記移動式クレーン車の総重量と総合重心位置とが所定の条件を満たしていると判定された場合に前記アウトリガの縮小操作を許可することを特徴とする。
【0008】
また、前記所定の条件は、各車軸に負荷される荷重が各車軸において許容される荷重の範囲内となる前記移動式クレーン車の総重量と総合重心位置とであることを特徴とする。
【0009】
また、前記所定の条件は、各車軸のうちで前輪の車軸に負荷される荷重が全車軸に負荷される荷重に対して所定の割合以上となる前記移動式クレーン車の総重量と総合重心位置とであることを特徴とする。
【0010】
前記複数の車軸にはそれぞれサスペンションシリンダが設けられ、該サスペンションシリンダにおける油圧回路は互いに接続可能となっており、前記移動式クレーン車は、前記油圧回路が接続される車軸を選択する選択手段を備え、前記制御装置は、該選択手段の選択結果に基づいて、前記各車軸において許容される荷重を設定することを特徴とする。
【0011】
また、前記移動式クレーン車は、カウンタウェイト及びジブを備え、前記制御装置は、前記カウンタウェイト及び前記ジブの状態に基づいて前記移動式クレーン車の総重量と総合重心位置とを算出することを特徴とする。
【0012】
また、前記移動式クレーン車は、カウンタウェイト及びジブを備え、前記制御装置は、前記カウンタウェイト及び前記ジブの状態が予め記憶された条件を満たしている場合に、前記移動式クレーン車の総重量と総合重心位置とが前記所定の条件を満たしていると判定することを特徴とする。
【0013】
また、前記移動式クレーン車は、アウトリガのジャッキ反力を検出するジャッキ反力検出手段を備え、前記制御装置は、該ジャッキ反力検出手段の出力値に基づいて前記移動式クレーン車の総重量と総合重心位置とを算出することを特徴とする。
【0014】
また、前記移動式クレーン車の総重量と総合重心位置とが前記所定の条件を満たしていない場合に、前記制御装置は、前記カウンタウェイト及び前記ジブの状態が前記所定の条件を満たす状態となるように誘導するガイド手段を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明による移動式クレーン車の制御方法及びプログラムは、複数の車軸を備えた移動式クレーン車の制御に関し、前記移動式クレーン車の総重量と総合重心位置とが所定の条件を満たしていると判定された場合にアウトリガの縮小操作を許可することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
アウトリガの縮小操作が許可された場合には、車軸を損傷することなく移動式クレーン車を移動させることができる。また、車軸を損傷することなく移動式クレーン車を移動させることが可能か否かのシミュレーションを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一の実施の形態による移動式クレーン車の側面図である。
【図2】本発明の一の実施の形態による移動式クレーン車の制御系統の概略ブロック図である。
【図3】本発明の一の実施の形態による制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。便宜上、同一の作用効果を奏する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。なお、本発明は、移動式クレーン車における制御装置に広く適用可能であるが、ここでは本発明をオールテレーンクレーンに適用した場合の一例について説明する。
【0019】
図1に移動式クレーン車1の側面図を示す。移動式クレーン車1は、車軸に設けられたサスペンションシリンダにおける油圧回路が接続された前方側に配置された車輪と後方側に配置された車輪とを有する車台5の先端に、走行操作が行われるキャビン7を備えている。図示例では、6対の車輪3a,3b,3c,3d,3e及び3f(総称するときは「車輪3」とする)が前方側から車軸6a,6b,6c,6d,6e及び6f(総称するときは「車軸6」とする)をそれぞれ備えるものであり、移動姿勢における移動式クレーン車1の総重量はこれら6本の車軸6によって支持されるものである。なお、車軸6のうちサスペンションシリンダにおける油圧回路が接続された前方側の車軸及び後方側の車軸は、サスペンションモードを切り替えることによって変更可能となっている。本実施例では、2種類のサスペンションモードを備える。第1のモード(4×2モード)では、前方側の4つの車軸6a,6b,6c及び6dにおけるサスペンションシリンダの油圧回路と後方側の2つの車軸6e及び6fにおけるサスペンションシリンダの油圧回路がそれぞれ接続され圧力が一定になり、第2のモード(2×4モード)では、前方側の2つの車軸6a及び6bにおけるサスペンションシリンダの油圧回路と後方側の4つの車軸6c,6d,6e及び6fにおけるサスペンションシリンダの油圧回路がそれぞれ接続され圧力が一定になる。なお、サスペンションモードは、キャビン7に設けられたモード切替手段(図示省略)によって切り替えられるものである。
【0020】
車台5上には、油圧モータによって旋回可能な旋回台9が設けられており、この旋回台9に主ジブである伸縮可能なブーム11が起伏支点9aに起伏自在に連結している。このブーム11を起伏させるのが起伏シリンダ13であるが、この起伏シリンダ13は、一端が旋回台9の端部に回動可能に連結され、他端がブーム11の腹面に回動可能に連結されている。したがって、ブーム11は、起伏シリンダ13を伸縮させることで、接地面に対する傾斜角度を変化させるように起伏することとなる。ブーム11の先端には、同じく伸縮可能な補助ジブ15が連結されており、起伏シリンダ17によって起伏自在となっている(ブーム11及び補助ジブ15によってジブが構成されている)。これにより、補助ジブ15は、ブーム11とは独立して伸縮及び起伏動作が可能となっている。また、車台5の前方側及び後方側には、作業時に車幅方向に張出して車台5をジャッキアップするアウトリガ4F及びアウトリガ4Rが設けられている。
【0021】
なお、少なくともブーム11の起伏角度(接地面に対するブーム11の角度)、ブーム11の伸縮位置、補助ジブ15のオフセット角度(ブーム11の延長線に対する補助ジブ15の角度)及び補助ジブ15の伸縮位置は、それぞれに設けられたポテンショメータ等によって構成される検出手段(ブーム角度検出手段35、ブーム長さ検出手段34、ジブオフセット角度検出手段37及びジブ長さ検出手段36)によって検出されており、各部の状態が常に把握できるように構成されている。また、旋回台9には、旋回台9が前方又は後方を向いた状態でロックすることが可能な旋回ロックピン(図示省略)が設けられており、この旋回ロックピンの挿嵌の有無が旋回ロックピン検出手段31によって検出可能であるとともに、ブーム11が格納状態にあるか否かを検出するブーム格納検出手段32が設けられている。また、車台5に載置されるカウンタウェイトWは、カウンタウェイト重量検出手段33によってその重量の情報が検出されるようになっている。
【0022】
このように構成された移動式クレーン車1における制御部40の構成について図2を参照しながら説明する。制御部40は、ブーム等の動作の制御、過負荷防止装置等の安全装置の制御、各種状態報知の制御等を行うもので、少なくとも旋回ロックピン検出手段31、ブーム格納検出手段32、カウンタウェイト重量検出手段33、ブーム角度検出手段35、ブーム長さ検出手段34、ジブオフセット角度検出手段37、ジブ長さ検出手段36、サスペンションモード検出手段38及びフック重量入力手段39からの各種検出信号等が入力されるものである。なお、サスペンションモード検出手段38は、例えばキャビン7に設けられたモード切替手段の信号からサスペンションモードが第1のモードと第2のモードとのいずれであるかを検出するものであり、フック重量入力手段は、使用されるフックの重量が作業者によって入力されるものである。
【0023】
制御部40は、車軸6に負荷される総重量を演算する総重量導出部42及び車軸6に負荷される総重量の重心位置(総合重心位置)を演算する重心位置導出部41を備え、さらに、これら総重量導出部42及び重心位置導出部41の演算結果から各車軸6a〜6fに負荷される重量である各軸重を演算する軸重導出部43を備える。そして、さらに制御部40は、移動式クレーン車1の作業姿勢が移動可能か否かの判定を行う移動可否判定部44を備えるものである。なお、実施例における制御部40は、各種検出信号と予め記憶されている(又は作業者によって入力される)車台、旋回台、ブーム、補助ジブ等の重量の情報とに基づいて上述の演算を行うものである。また、制御部40による演算結果は、制御部40に接続されている表示手段50によって作業者に出力することができるものである。また、サスペンションモード判定部45は、サスペンションモード検出手段38からの検出結果を受け、サスペンションモードが第1のモードであるか第2のモードであるかを判定するものである。
【0024】
次に、図3を参照しながら移動式クレーン車1が作業状態のまま構内移動することの可否の判定を行う制御について説明する。この制御は、作業者が移動式クレーン車1を構内移動させたい作業姿勢にした状態で、例えば所定のスイッチを選択することにより制御部40によって実行される。この際、構内移動中にクレーンが誤作動することを防止するために、スイッチが選択されるとクレーン操作(旋回、起伏、伸縮等)が全て無効になるよう制御される(ステップS10)。
【0025】
次に、サスペンションモード判定部45によって、サスペンションモードが第1のモードであるか第2のモードであるかが判定され、この判定結果に基づき、各車軸6a〜6fにおける許容軸重が設定(選択)される(ステップS11)。サスペンションモードが第1のモードである場合には、前方側の4つの車軸6a,6b,6c及び6dにおけるサスペンションシリンダの油圧回路が接続され圧力が一定となるとともに後方側の車軸6e及び6fでもサスペンションシリンダの油圧回路が接続され圧力が一定となるため、車軸6が受ける軸重は、前方側の4つの車軸6a,6b,6c及び6dと後方側の車軸6e及び6fとでそれぞれ均等になる。また、第2のモードである場合には、前方側の2つの車軸6a及び6bと後方側の車軸6c,6d,6e及び6fとで、それぞれ均等に軸重を受けることになる。このため、各車軸6a〜6fにおける許容軸重は、サスペンションシリンダの油圧回路が接続された車軸同士で一定になるように、選択されるサスペンションモードに基づいて設定されるものである。
【0026】
例えば、最前の車軸6aにおいて負荷可能な限界の軸重(限界軸重)が他の車軸6b,6c,6d,6e及び6fの限界軸重に比し小さい場合には、第1のモードでは、前方側の4つの車軸6a,6b,6c及び6dが受ける軸重が均等となるため、車軸6aの限界軸重と同じ大きさになるように車軸6a,6b,6c及び6dの許容軸重が設定されるのに対し、第2のモードでは、車軸6a及び6bの許容軸重のみが車軸6aの限界軸重と同じ大きさに設定されるものである。これにより、この例では、第1のモードより第2のモードの方が、車軸6c及び6dにおける許容軸重が大となり、結果として各車軸6における許容軸重の総和が大きくなる。
【0027】
次に、旋回ロックピン検出手段31からの信号によって、旋回ロックピンの挿入の有無が判定され、旋回台9が前方又は後方を向いた状態でロックされているか否かの判定が行われる(ステップS12)。そして、旋回ロックピンが挿入されていないと判定された場合には、構内移動が不可であると判定され、「構内移動不可」が表示される(ステップS20)。
【0028】
ステップS12で旋回ロックピンが挿入されていると判定された場合には、各検出手段から入力されたカウンタウェイト重量、ブーム長さ、ブーム起伏角度、補助ジブ長さ、補助ジブオフセット角度及びフック重量並びに車台、旋回台、ブーム、補助ジブ等の重量の情報から車軸6に負荷される総重量及び総合重心位置が算出される(ステップS13)。なお、この際、ブーム格納検出手段32からの信号によって、ブーム11が格納状態であることが検出された場合には、ブーム長さ及びブーム起伏角度が所定の値となるため、ブーム長さ及びブーム起伏角度の検出を省略するように構成しても構わない。
【0029】
次いで、ステップS13で算出された総合重心位置と各車軸6の位置関係とに基づいて、総重量を各車軸6a〜6fに対して割り振ることにより、各車軸6a〜6fに対する荷重(軸重)が算出される(ステップS14)。そして、このように算出された各車軸6a〜6fに対する荷重をもとに、さらに移動可否を決定する条件の判定がなされる。
【0030】
まず、各軸重の総和(総重量)が各車軸6a〜6fにおける許容軸重の総和より小であるか否かが判定される(ステップS15)。なお、各車軸6a〜6fにおける許容軸重は、ステップS11で設定された許容軸重である。総重量が各車軸6a〜6fにおける許容軸重の総和より大である場合には、アウトリガ4F,4Rが縮小され車輪3によって総重量を支持しようとしたときに、車軸6が破損する虞が高くなるため、構内移動が不可であると判定され「構内移動不可」が表示される(ステップS20)。
【0031】
ステップS15において、総重量が各車軸6a〜6fにおける許容軸重の総和より小である場合には、さらに別の条件の判定が行われる。この場合、各車軸6a〜6fに対する荷重が、車軸6a〜6fごとにステップS11で設定された許容重量より小であるか否かが判定される(ステップS16)。いずれかの車軸6a〜6fに対する荷重が、その車軸に設定されている許容重量より大である場合には、アウトリガ4F,4Rが縮小され車輪3によって総重量を支持しようとしたときに、該当する車軸が破損する虞が高くなるため、構内移動が不可であると判定され「構内移動不可」が表示される(ステップS20)。
【0032】
ステップS16において、全ての車軸6a〜6fにおいて軸重が許容軸重より小であると判定された場合には、さらに別の条件の判定が行われる。この場合、前方側の車軸(サスペンションモードが第1のモードにおいては車軸6a〜6dであり、第2のモードにおいては車軸6a及び6bである)に対する荷重が各軸重の総和(総重量)の20%を越えているか否かが判定される(ステップS17)。前方側の車軸に対する荷重が総重量の20%を越えていない場合には、アウトリガ4F,4Rが縮小されて移動状態となったときに、前輪側が浮いてしまったり、ステアリングがうまく機能しなくなったりする虞があるため、構内移動が不可であると判定され「構内移動不可」が表示される(ステップS20)。
【0033】
一方、前方側の車軸に対する荷重が各軸重の総和(総重量)の20%を越えている場合には、構内移動が可能であると判定され、「構内移動可能」の表示がなされるとともに(ステップS18)、アウトリガ4F,4Rのロックが解除され、所定の操作によってアウトリガ4F,4Rの縮小が可能となる(ステップS19)。
【0034】
なお、構内移動が不可であると判定され「構内移動不可」が表示された場合には、構内移動が可能な姿勢に誘導するガイド機能が働くようにすることができる(ステップS21)。ガイド機能は、「構内移動不可」の原因となった理由の表示や、満たされない条件が解消されるための具体的な方法の提示によるものである。例えば、旋回ロックピンが挿入されておらず「構内移動不可」と判定された場合には、「旋回ロックピンを挿入して下さい」等のメッセージが表示される。また、各軸重の総和(総重量)が各車軸における許容軸重の総和より大であるとして「構内移動不可」と判定された場合には、「総重量がオーバーしています」等のメッセージが表示される。なお、この場合において、サスペンションモードを変更することで許容軸重の総和が大きくなり、これによって総重量が許容軸重の総和より小になると判定されるときには、「サスペンションモードを変更して下さい」等のメッセージが表示されるようにしても構わない。また、いずれかの車軸に対する荷重が、その車軸に設定されている許容重量より大であるとして「構内移動不可」と判定された場合には、「軸重のバランスが悪いため姿勢の変更が必要です」等のメッセージが表示される。また、前軸に対する荷重が総重量の20%を越えていないとして「構内移動不可」と判定された場合には、「前軸の荷重が20%未満です」等のメッセージが表示される。
【0035】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、各検出手段から入力されたカウンタウェイト重量、ブーム長さ、ブーム起伏角度、ジブ長さ及びジブ角度に基づいて車軸に負荷される総重量及び総合重心位置が算出される例を示したが、これに限定されない。例えば、各アウトリガのジャッキ反力の検出値によって総重量と総合重心位置を算出するように構成することができる。この場合、アウトリガのジャッキ反力検出手段として、例えば、ジャッキシリンダの圧力を検出する圧力検出器等が使用されるものであり、各アウトリガに設けられた合計4個のジャッキ反力検出手段からの検出値によって総合重心位置及び総重量が算出されるものである。このように算出された総合重心位置及び総重量に基づいて、ステップS15以降の条件判定を行うことにより移動の可否が判定されるものである。
【0036】
また、総重量及び総合重心位置の算出、条件判定(ステップS14〜S17)に代えて、ブーム等の状態が所定条件を満たすことでステップS14〜S17の条件を充足するもと擬制させる構成としても構わない。例えば、制御部は、移動式クレーン車1が移動可能な状態として許容されるカウンタウェイト重量、ブーム長さ、ブーム起伏角度、ジブ長さ及びジブオフセット角度の値を許容データとしてデータベースに予め記憶しており、旋回ロックピンの挿入有無の判定(ステップS12)をした後に、カウンタウェイト重量、ブーム長さ、ブーム起伏角度、ジブ長さ及びジブオフセット角度が許容データの範囲内の値であるか否かの判定を行うものである。そして、各検出値が許容範囲内である場合には、ステップS14〜S17を充足するものと擬制できるため、これらの判定等をすることなくアウトリガの縮小が許可されるものである。
【0037】
また、構内移動することの可否の判定を行う制御を過負荷防止装置によって行う例を示したが、これに限定されない。例えば、過負荷防止装置に設けられた端子によって外部のコンピュータに接続し、この外部のコンピュータによって移動の可否の演算を行わせることができる。この場合、実際の移動式クレーンからの検出値が外部のコンピュータに入力されるように構成して使用するほかに、想定される各検出値を作業者が入力することによって実際の作業姿勢をとることなく移動可否のシミュレーションをすることが可能となるように使用することができる。
【0038】
また、実施例では、各条件の判定において条件を満たさないと判定されると、以降の条件判定を行わない構成となっているため、構内移動が可能な姿勢に誘導するガイド機能として条件判定が行われた項目のみのガイドしか行わないようになっているが、これに限定されない。例えば、移動の可否を決定する全ての条件(実施例では、ステップS12,S15〜S17)を判定して、全ての満たされない条件についてメッセージを表示する構成とすることができる。
【0039】
また、ジブとして、ブーム(主ジブ)の先端に補助ジブが装着されている例を示したが、これに限定されない。移動式クレーン車では、補助ジブが着脱自在であるため、補助ジブを用いずにブームのみによって作業を行うことが可能である。よって、補助ジブが装着されているか否かを検出して、補助ジブが装着されていない場合には、補助ジブに関するパラメータを0として各種演算を行わせるように構成することができる。
【0040】
また、カウンタウェイトの重量及びジブ(ブーム、補助ジブ)の状態が、検出手段によって検出され制御部に入力される例を示したが、これに限定されない。カウンタウェイトの重量及びジブの状態は制御における演算で参照することができれば構わないため、例えば作業者によって入力されるものであってもよい。
【0041】
また、前輪の車軸に対する荷重が各軸重の総和(総重量)の「20%」を越えているか否かが判定される例を示したが、これに限定されない。「20%」は例示であり、前輪側が浮く、ステアリングがうまく機能しない等の荷重の偏りによる不具合が生じないものであれば、20%より小さい値や20%より大きい値を判定の基準にしても構わない。
【0042】
また、移動の可否の判定において、旋回ロックピン検出手段、ブーム格納検出手段、カウンタウェイト重量検出手段、ブーム長さ検出手段、ブーム角度検出手段、ジブ長さ検出手段及びジブオフセット角度検出手段による信号に基づいて処理を行う例を示したが、これに限定されない。例えば、上記以外に加えて、車台が許容される範囲内の水平状態を保っているかを検出したり、風速が所定の速度以下であるかを検出したり、車輪(タイヤ)の空気圧が規定圧であるかを検出したりするように構成することができる。
【0043】
また、サスペンションモードとして第1のモードと第2のモードとの2種類が設けられている例を示したが、これに限定されず、例えば、サスペンションモードが1種類のみや、3種類以上であっても構わない。また、複数の車軸の油圧回路が接続されて連動して動作する例を示したが、これに限定されず、例えば、全ての車軸が独立していても構わない。なお、車輪が6対である例を示しているが、これに限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0044】
1 移動式クレーン車
3a〜3f 車輪
4F,4R アウトリガ
6a〜6f 車軸
11 ブーム(主ジブ)
15 補助ジブ
40 制御部
W カウンタウェイト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車軸及びアウトリガを備えた移動式クレーン車の制御装置であって、
前記移動式クレーン車の総重量と総合重心位置とが所定の条件を満たしていると判定された場合に前記アウトリガの縮小操作を許可することを特徴とする移動式クレーン車の制御装置。
【請求項2】
前記所定の条件は、各車軸に負荷される荷重が各車軸において許容される荷重の範囲内となる前記移動式クレーン車の総重量と総合重心位置とであることを特徴とする請求項1記載の移動式クレーン車の制御装置。
【請求項3】
前記所定の条件は、各車軸のうちで前輪の車軸に負荷される荷重が全車軸に負荷される荷重に対して所定の割合以上となる前記移動式クレーン車の総重量と総合重心位置とであることを特徴とする請求項1又は2に記載の移動式クレーン車の制御装置。
【請求項4】
前記複数の車軸にはそれぞれサスペンションシリンダが設けられ、該サスペンションシリンダにおける油圧回路は互いに接続可能となっており、
前記移動式クレーン車は、前記油圧回路が接続される車軸を選択する選択手段を備え、
前記制御装置は、該選択手段の選択結果に基づいて、前記各車軸において許容される荷重を設定することを特徴とする請求項2記載の移動式クレーン車の制御装置。
【請求項5】
前記移動式クレーン車は、カウンタウェイト及びジブを備え、
前記制御装置は、前記カウンタウェイト及び前記ジブの状態に基づいて前記移動式クレーン車の総重量と総合重心位置とを算出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の移動式クレーン車の制御装置。
【請求項6】
前記移動式クレーン車は、カウンタウェイト及びジブを備え、
前記制御装置は、前記カウンタウェイト及び前記ジブの状態が予め記憶された条件を満たしている場合に、前記移動式クレーン車の総重量と総合重心位置とが前記所定の条件を満たしていると判定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の移動式クレーン車の制御装置。
【請求項7】
前記移動式クレーン車は、アウトリガのジャッキ反力を検出するジャッキ反力検出手段を備え、
前記制御装置は、該ジャッキ反力検出手段の出力値に基づいて前記移動式クレーン車の総重量と総合重心位置とを算出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の移動式クレーン車の制御装置。
【請求項8】
前記移動式クレーン車の総重量と総合重心位置とが前記所定の条件を満たしていない場合に、
前記制御装置は、前記カウンタウェイト及び前記ジブの状態が前記所定の条件を満たす状態となるように誘導するガイド手段を備えることを特徴とする請求項5又は6に記載の移動式クレーン車の制御装置。
【請求項9】
複数の車軸を備えた移動式クレーン車の制御方法であって、
前記移動式クレーン車の総重量と総合重心位置とが所定の条件を満たしていると判定された場合にアウトリガの縮小操作を許可することを特徴とする移動式クレーン車の制御方法。
【請求項10】
請求項9に記載の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−126562(P2012−126562A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281965(P2010−281965)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】