説明

移動無線端末

【課題】E-UTRANで待ち受けている場合に、E-UTRANを経由してCS系サービスのイベントを受信したとき、CS系のアクセス網に好適にイベントに対する応答を送信することができるようにする。
【解決手段】本発明の移動無線端末においては、無線送受信部は、回線交換網に属する基地局と無線信号を用いて送受信し、回線交換網に接続され、回線交換網とともに1つの統合通信網を形成する移動体通信網に属する基地局と無線信号を用いて送受信し、制御部は、移動体通信網に属する基地局で待ち受ける場合に、無線送受信部を起動し、回線交換網に属する基地局との同期を維持するように制御することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動無線端末に係り、特に、E-UTRANで待ち受けている場合に、E-UTRANを経由してCS系サービスのイベントを受信したとき、CS系のアクセス網に接続することができるようにした移動無線端末に関する。
【背景技術】
【0002】
第3世代携帯電話規格の標準化団体である3GPPによって規定されている3GPP TS23.272 V8.0.0(以下、「TS23.272」という)では、E-UTRAN(Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network)と、回線交換網(CS網)を有する移動体通信網(例えばUTRAN(Universal Terrestrial Radio Access Network)やGERAN(GSM/EDGE Radio Access Network)、cdma2000 1x CSアクセス網(以下、「1x CSアクセス網」という)など)とが統合されたEPS(Evolved Packet System)において、移動無線端末(UE: User Equipment)がE-UTRANで待ち受けている際にCSサービスを実施する場合での協調動作(CS Fallback)方法が規定されている。
【0003】
図1は、CS Fallback機能を有するEPSの概略を示している。図1に示されるように、EPSはE-UTRANと、CSサービスを提供するアクセス網としてのUTRANとGERANを有し、これらは各インタフェースを介してCN(Core Network)内のMSC(Mobile-services Switching Center)Serverに接続されている。勿論、EPSは、E-UTRANと、CSサービスを提供するアクセス網としてのUTRANとGERANを有するようにしているが、1x CSアクセス網を有するようにしてもよい。
【0004】
CS Fallback機能を有するEPSにおいては、移動無線端末は通常E-UTRANで待ち受けを実施する。そして、移動無線端末は、EPS側からのCS着信通知や移動無線端末内のサービス要求などのCS系サービスのイベント(CS発信、CS着信、CS SMS(Short Message Service)等)が発生した場合に、CSサービスを実施するためにUTRANやGERAN、または1x CSアクセス網に接続し、これらの網との間で情報を送受信する。§6.4, 7.2では、E-UTRAN基地局で待ち受けていた移動無線端末が、CSサービスを提供するUTRANまたはGERANへ発信と着信を実施する処理について解説している。図2は、E-UTRAN基地局で待ち受けていた移動無線端末がCS着信を受けて、UTRANまたはGERAN側に対して接続する際のシーケンスを示している。また、1x CSアクセス網へ接続も同様に、Annex B2.2, B2.3にて解説されている。
【0005】
図3は、移動無線端末がE-UTRANで待ち受けている場合に1x CSアクセス網に対して発信する際の移動無線端末とEPSの各構成間の処理のシーケンスを示している。図4は、移動無線端末がE-UTRANで待ち受けている場合に1x CSアクセス網からの着信を処理する際の移動無線端末とEPS各構成間の処理のシーケンスを示している。このようにTS23.272によれば、移動無線端末はE-UTRANで待ち受けてさえいれば、CS Fallback機能を用いることで、CS系のアクセス網に対して待ち受けすることなくE-UTRAN自身が直接提供しないCS系サービスを利用することができる。
【非特許文献1】3GPP TS23.272 V8.0.0
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
3GPP TS23.272 V8.0.0では、移動無線端末がE-UTRANで待ち受けている場合、移動無線端末はCS系サービスのイベントがあったときに初めて1x CSアクセス網への接続を開始する。そのため、移動無線端末は通常E-UTRANだけに待ち受けを実施しておけばよく、1x CSアクセス網に対する待ち受けを実施する必要がなく、従って、E-UTRAN以外のアクセス網に対しては必要な場合にのみ移動無線端末内のE-UTRAN以外の回路を起動し、同期、報知情報受信、およびメッセージ送受信を実施しさせすればよい。このように移動無線端末がE-UTRANだけで待ち受けしている状態は、移動無線端末にて低消費電力化を図るという観点から好ましい。
【0007】
しかしながら、E-UTRANと例えばUTRANのようなCS系のアクセス網との間ではネットワーク間の同期が取られていない。そのため、E-UTRANの同期タイミングからCS系のアクセス網の同期タイミングを割り出すことはできず、CS系サービスの要求があった後にUTRANの同期を最初から取る必要がある。その結果、CS系サービスが開始するまでに時間がかかってしまうという課題があった。勿論、E-UTRANと1x CSアクセス網の場合についても同様の課題が発生する。
【0008】
以下、上述した課題について具体的に説明する。図2では、移動無線端末がE-UTRANで待ち受けを実施している場合に移動無線端末がCS着信を認識した場合のシーケンスが規定されているが、ここでは、CS系のアクセス網側(UTRAN、GERAN、または1x CSアクセス網)に対しては待ち受けが実施されていない。そのため、移動無線端末は、図2の6.でCS着信の通知(Paging)を受けた後に初めてCS系のアクセス網側への接続を開始する。図5は、CS着信の通知(Paging)を受けた場合における移動無線端末側の時系列的な処理を示している。ここで、移動無線端末は、E-UTRANに接続する機能を有するE-UTRAN L1部と、1x CSアクセス網に接続する機能を有する1x CSアクセス網L1部を備える。E-UTRAN L1部とU1x CSアクセス網L1部は無線インタフェースの下位のプロトコルであり、これらの処理は移動無線端末の通信制御系のCPUによって統括されているものとする。
【0009】
図5に示されるように、移動無線端末はE-UTRAN L1部を用いてE-UTRANだけに待ち受けを実施しており、移動無線端末は、E-UTRAN L1部を用いてPage Indicator Channelを使用した間欠受信動作を行う。図5に示されるように、E-UTRAN基地局は、CS Fallback機能により、CS着信の有無を通信するためにPaging Indicatorを送信する。移動無線端末のE-UTRAN L1部は、CS着信通知があったことを認識すると、CPUにCS着信通知があったことを伝達する。CPUは、CS着信を受けるために無線その他の処理を1x CSアクセス網L1部にて実行させるためにE-UTRAN L1部から1x CSアクセス網L1部への切り替えを指示し、1x CSアクセス網で通信ができるように無線部その他を起動する。
【0010】
ところが、移動無線端末は、CS着信の応答(Paging response)を1x CSアクセス網に対して返すために、移動無線端末の1x CSアクセス網L1部にて基地局を探索して同期を取得し、報知情報を受信しなければならない。これら一連の処理を行うのに要する時間は、移動無線端末の構成にもよるが、移動無線端末内の無線ソフトウェア間の処理のオーバーヘッドなどを含めると数秒程度要する場合もある。さらに、Pagingを受信してからPaging responseまでの時間が長くなってしまうと、EPS側で移動無線端末側からのPaging responseを待つタイマがタイムアウトしてしまい、その結果、この移動無線端末への着信がかからない恐れがあり得る。また、同様の理由でCS発信時など他のCSサービスの場合にも問題があり、特に移動無線端末がCS発信として緊急呼発信をする場合に発信動作が遅れてしまうと、最悪の場合、緊急発信相手先に電話がかからないという不快感をユーザに持たせてしまう恐れがある。
【0011】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、E-UTRANで待ち受けている場合に、E-UTRANを経由してCS系サービスのイベントを受信したとき、CS系のアクセス網に好適にイベントに対する応答を送信することができる移動無線端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の移動無線端末は、上述した課題を解決するために、回線交換網に属する基地局と無線信号を用いて送受信する回線交換網送受信手段と、回線交換網に接続され、回線交換網とともに1つの統合通信網を形成する移動体通信網に属する基地局と無線信号を用いて送受信する移動体通信網送受信手段と、移動体通信網に属する基地局で待ち受ける場合に、回線交換網送受信手段を起動し、回線交換網に属する基地局との同期を維持するように制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の移動無線端末は、上述した課題を解決するために、少なくともUTRAN、GERAN、およびcdma2000 1x CSアクセス網が含まれる回線交換網に属する基地局と無線信号を用いて送受信する回線交換網送受信手段と、回線交換網に接続され、回線交換網とともに1つの統合通信網を形成するE-UTRANに属する基地局と無線信号を用いて送受信する移動体通信網送受信手段と、E-UTRANに属する基地局で待ち受ける場合に、回線交換網送受信手段を起動し、回線交換網に属する基地局との同期を維持するように制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、E-UTRANで待ち受けている場合に、E-UTRANを経由してCS系サービスのイベントを受信したとき、CS系のアクセス網に好適にイベントに対する応答を送信することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
本発明に係る移動無線端末は、E-UTRANの基地局とCS系のアクセス網の基地局のいずれにも通信することができる。また、本発明が対象とする移動通信網は、TS23.272に記載のEPSのように、E-UTRANとCS系のアクセス網とが1つの統合されたネットワークとして構成され、かつ協調できるようにEPSの構成要素のそれぞれが接続されており、E-UTRANで待ち受ける移動無線端末がCSサービスを利用することができるように構成されている。なお、本発明の実施形態においては、EPSなどのようにE-UTRANとCS系のアクセス網とが1つの統合されたネットワークを「統合通信網」と定義する。
【0017】
[第1実施形態]
図6は、本発明の第1の実施形態に係る移動無線端末1の内部の構成を表している。移動無線端末1は主に、アンテナ31、無線送受信部32、信号処理部33、制御部39、記憶部40、E-UTRAN間欠受信クロック生成部43、およびCS系アクセス網方式同期処理クロック生成部44などを備える。
【0018】
移動無線端末1は、E-UTRAN方式とCS系アクセス網方式のいずれの移動無線通信システムによっても音声通信やデータ通信を行うことが可能であり、アンテナ31、無線送受信部32、および信号処理部33はこれらの両方式に対応している。また、CS系アクセス網方式はいくつかの方式を取ることができ、例えばUTRAN、 GERAN、または1x CSアクセス網などを用いた方式を取ることができる。本発明の実施形態においては、CS系アクセス網方式として例えば1x CSアクセス網方式を取った場合について明示的に記載する。
【0019】
無線送受信部32は、アンテナ31を介して、移動通信網に収容される基地局BSとの間でE-UTRAN方式もしくは1x CSアクセス網方式で無線通信する。無線送受信部32は、信号処理部33にて生成された変調信号に基づいて、制御部39から指示されるキャリア周波数の無線信号を生成する。また、無線送受信部32は、制御部39から指示されるキャリア周波数の無線信号を受信し、周波数シンセサイザから出力された局部発振信号とミキシングして中間周波数信号に周波数変換(ダウンコンバート)する。そして、無線送受信部32は、このダウンコンバートされた中間周波数信号を直交復調して受信ベースバンド信号を出力する。この受信結果は、信号処理部33と制御部39に出力される。
【0020】
信号処理部33は、DSP(Digital Signal Processor)などにより構成され、受信ベースバンド信号に所定の信号処理を施し、所定の伝送フォーマットの受信パケットデータを得る。また、信号処理部33は、受信パケットデータに含まれる音声信号を復調し、この復調結果を復号して音声データなどを得る。一方、信号処理部33は、送話音声信号を符号化し、符号化によって得た音声データやその他のデータに基づいて変調信号を生成するとともに、生成された変調信号を無線送受信部32に出力する。
【0021】
制御部39は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)などからなり、CPUは、ROMに記憶されているプログラムまたは記憶部40からRAMにロードされた、オペレーティングシステム(OS)を含む各種のアプリケーションプログラムや制御プログラムに従って各種の処理を実行するとともに、種々の制御信号を生成し、各部に供給することにより移動無線端末1を統括的に制御する。具体的には、無線送受信部32が用いるキャリア周波数を制御し、無線送受信部32での受信結果に基づいてパイロット信号の探索を行う。RAMは、CPUが各種の処理を実行する上において必要なデータなどを適宜記憶する。
【0022】
制御部41には、必要に応じて1または複数のCPUが備えられる。なお、本発明の実施形態では、2つのCPUが備えられる例を示すが、これに限定されず、1つのCPUで実施するように制御してもよいし、3つ以上のCPUで実施するようにしてもよい。通信系制御部39aは、図示せぬ通信処理CPUを備え、通信処理に用いる制御を行う。通信系制御部39aは、アンテナ31、送受信部32、信号処理部33、PCMコーデック34、受話増幅器35、および送話増幅器37などを用いた通信処理を制御する。一方、UI系制御部39bは、図示せぬUI処理CPUを備え、記憶部40、操作部41、表示部42、時計回路47などを用いたUI処理に関して制御を行う。
【0023】
移動無線端末1の通信系制御部39aは、E-UTRANに接続する機能を有するE-UTRAN L1部と、1x CSアクセス網に接続する機能を有する1x CSアクセス網L1部を備える。E-UTRAN L1部と1x CSアクセス網L1部は無線インタフェースの下位のプロトコルであり、これらの処理は移動無線端末1の通信処理CPUによって統括されているものとする。
【0024】
記憶部40は、例えば、電気的に書換えや消去が可能な不揮発性メモリであるフラッシュメモリ素子やHDD(Hard Disc Drive)などからなり、制御部39のCPUにより実行される種々のアプリケーションプログラムや種々のデータ群、移動無線端末1の制御プログラムや制御データ、移動無線端末1またはユーザに固有に割り当てられた識別情報を格納する。この他にも、記憶部40は、名前と電話番号を対応づけた電話帳データや、データ通信により取得したデータやダウンロードしたデータを適宜記憶する。電源回路46は、バッテリ45の出力を基に所定の動作電源電圧Vccを生成して各回路部に供給する。移動無線端末1には、現在の時刻を測定する時計回路(タイマ)47が設けられている。
【0025】
E-UTRAN間欠受信クロック生成部43は、E-UTRANとの同期や移動無線端末1に報知されてくる着信情報の監視を実施する際の間欠受信を行うためのE-UTRAN間欠受信クロックを生成し、生成されたE-UTRAN間欠受信クロックを制御部39に出力する。CS系アクセス網方式同期処理クロック生成部44は、CS系アクセス網方式(例えば1x CSアクセス網方式)との同期を取得するための起床タイミングの基準となるCS系アクセス網方式同期処理クロックを生成し、生成されたCS系アクセス網方式同期処理クロックを制御部39に出力する。
【0026】
なお、移動無線端末1は、受話増幅器35、受話音声信号を拡声出力するスピーカ36、送話増幅器37、送話音声信号を入力するマイクロホン38、ユーザに要求を受け付ける操作部41、および受信データに基づく画像を表示する表示部42を備える。
【0027】
次に、図7は、図6の移動無線端末1における、E-UTRANで待ち受けている場合での1x CSアクセス網同期取得動作を示している。本発明に係る移動無線端末1は、E-UTRANで待ち受けを実施し、通信系制御部39aのE-UTRAN L1部は、E-UTRAN基地局との同期維持および着信を監視するためにE-UTRANより指定される間欠受信周期(DRXE-UTRAN)を用いて間欠起床をして間欠受信を行うとともに、通信系制御部39aの1x CSアクセス網L1部は、E-UTRANの間欠受信(間欠起床)の合間に1x CSアクセス網との同期を維持するために1x CSアクセス網同期取得起床を行う。
【0028】
図8のフローチャートを参照して、図6の移動無線端末1における、E-UTRANで待ち受けている場合での1x CSアクセス網同期取得動作についてさらに説明する。ステップS1において、時計回路47を用いて設定されているタイマが満了した場合、CS系アクセス網方式同期処理クロック生成部44は、1x CSアクセス網方式との同期を取得するための起床タイミングの基準となるCS系アクセス網方式同期処理クロックを生成し、生成されたCS系アクセス網方式同期処理クロックを制御部39に出力する。ステップS2において、通信系制御部39aの1x CSアクセス網L1部は、CS系アクセス網方式同期処理クロック生成部44からのCS系アクセス網方式同期処理クロックに基づいて、1x CSアクセス網との同期を維持するために1x CSアクセス網同期取得起床を行う。ステップS3において、通信系制御部39aの1x CSアクセス網L1部は、無線送受信部32および信号処理部33を制御し、1x CSアクセス網基地局BSから送られてくる無線フレームの同期を取得し、同期フレーム(1x CSアクセス網の場合、Sync channelの無線フレーム)を取得する。これにより、1x CSアクセス網との同期を維持することができる。
【0029】
ステップS4において、通信系制御部39aの1x CSアクセス網L1部は、1x CSアクセス網と同期を維持するための次回の同期起床間隔を所定の値(一定値)に設定する。ステップS5において、通信系制御部39aの1x CSアクセス網L1部は、時計回路47を用いて、同期起床間隔用のタイマをリセットする。ステップS6において、通信系制御部39aの1x CSアクセス網L1部は、設定された次回の同期起床間隔を用いて同期起床間隔用のタイマを時計回路47に設定する。ステップS7において、時計回路47は、設定された同期起床間隔用のタイマのカウント動作を開始する。ステップS8において、通信系制御部39aの1x CSアクセス網L1部は、無線送受信部32および信号処理部33を制御し、1x CSアクセス網用の回路を停止するとともに、通信系制御部39aの1x CSアクセス網L1部はSleepする。その後、処理はステップS1に戻り、ステップS1以降の処理が繰り返し実行される。
【0030】
ここで、1x CSアクセス網同期取得起床は、E-UTRANのように着信監視のための間欠起床と異なり、同期維持の目的で1x CSアクセス網の基地局の同期取得を実施する起床である。そのため、1x CSアクセス網の着信通知サイクルと関係なく移動無線端末1の独自のサイクル(周期)で起床し、1x CSアクセス網との同期を維持するために起床を実施することができる。すなわち、1x CSアクセス網の同期処理は、1x CSアクセス網から指示される間欠受信周期(DRX 1x CS)では起床しなくてよく、任意のサイクルで実施することができる。従って、図7に示されるように、1x CSアクセス網との同期維持のための起床間隔(TSYNC,k)は、それぞれの1x CSアクセス網同期取得起床のタイミングでTSYNC,kを再設定することによって各回で異なる起床間隔で1x CSアクセス網同期取得起床することができる。すなわち、たとえTSYNC,k≠TSYNC,k+1であっても許容される。同期維持の目的でUTRANとの間欠起床処理が発生し得るが、起床間隔TSYNC,kは移動無線端末1が1x CSアクセス網と同期を維持することができる限り最大の起床間隔に設定することが可能であり、その結果、1x CSアクセス網との同期に必要な消費電力を最小限に抑えることができる。
【0031】
以下に、1x CSアクセス網との同期維持のための起床間隔の具体的な補正方法について説明する。本発明の移動無線端末1においては、同期取得起床のタイミングを適応的に変化させることが可能である。通信系制御部39aの1x CSアクセス網L1部は、同期取得起床して1x CSアクセス網基地局BSから送られてくる無線フレームの同期を取得した際、同期フレーム(1x CSアクセス網の場合にはSync channelの無線フレーム)を取得するが、移動無線端末1内部のクロックのずれなどにより実際の1x CSアクセス網基地局BSから送られてくる無線フレームの境界との誤差が発生する。そこで、1x CSアクセス網L1部の同期取得起床時に、フレームの同期を取得するとともにこの誤差を補正する。次に、この誤差がある一定のしきい値(Max_sync_diff)以上である場合、移動無線端末1内部クロックから計算される誤差が大きいと判断し、次回の同期取得起床間隔(間欠起床周期)を短縮するように設定する。一方、この誤差がある一定のしきい値(Min_sync_diff)よりも小さい場合、移動無線端末1内部のクロックにより、現在の同期取得起床間隔で1x CSアクセス網との間で十分な同期が取れていると判断し、次回の同期取得起床間隔(間欠起床周期)を長く設定する。なお、この誤差がしきい値(Max_sync_diff)としきい値(Min_sync_diff)との間にある場合には、現在の同期取得起床間隔が維持される。このようにすることで、1x CSアクセス網と同期を十分に取りながら、移動無線端末1の低消費電力化を図ることができる。以下、1x CSアクセス網との同期維持のための起床間隔が適宜変更される場合での、E-UTRANで待ち受けているときの1x CSアクセス網同期取得動作の詳細について説明する。
【0032】
図9のフローチャートを参照して、1x CSアクセス網との同期維持のための起床間隔が適宜変更される場合での、図6の移動無線端末1におけるE-UTRANで待ち受けているときの1x CSアクセス網同期取得動作の詳細について説明する。なお、図9のステップS21乃至S23、およびステップS28乃至S31の処理は、図8のステップS1乃至S3、およびステップS5乃至S8の処理と同様であり、その説明は繰り返しになるので省略する。
【0033】
ステップS23において通信系制御部39aの1x CSアクセス網L1部が同期フレームを取得すると、通信系制御部39aの1x CSアクセス網L1部はステップS24で、実際の1x CSアクセス網基地局BSから送られてくる無線フレームの境界と取得された同期フレームとの誤差(すなわち、「同期ずれ」)が、ある一定のしきい値(Max_sync_diff)以上であるか否かを判定する。ステップS24において通信系制御部39aの1x CSアクセス網L1部が、同期ずれがある一定のしきい値(Max_sync_diff)以上であると判定した場合、通信系制御部39aの1x CSアクセス網L1部はステップS25で、移動無線端末1内部クロックから計算される誤差が大きいと判断し、1x CSアクセス網と同期を維持するための次回の同期取得起床間隔を所定の値短縮するように設定する。その後、処理はステップS28に進む。
【0034】
一方、ステップS24において通信系制御部39aの1x CSアクセス網L1部が、同期ずれがある一定のしきい値(Max_sync_diff)以上ではないと判定した場合、通信系制御部39aの1x CSアクセス網L1部はステップS26で、同期ずれがある一定のしきい値(Min_sync_diff)よりも小さいか否かを判定する。ステップS26において通信系制御部39aの1x CSアクセス網L1部が、同期ずれがある一定のしきい値(Min_sync_diff)よりも小さいと判定した場合、通信系制御部39aの1x CSアクセス網L1部はステップS27で、移動無線端末1内部のクロックにより現在の同期取得起床間隔で1x CSアクセス網との間で十分な同期が取れていると判断し、より移動無線端末1の低消費電力化を図るべく、1x CSアクセス網と同期を維持するための次回の同期取得起床間隔(間欠起床周期)を長く設定する。その後、処理はステップS28に進む。
【0035】
ステップS26において通信系制御部39aの1x CSアクセス網L1部が、同期ずれがある一定のしきい値(Min_sync_diff)よりも大きいと判定した場合、通信系制御部39aの1x CSアクセス網L1部はステップS32で、移動無線端末1内部のクロックにより現在の同期取得起床間隔で1x CSアクセス網との間で許容の範囲内で同期が取れていると判断し、現在の同期取得起床間隔を維持し、現在の同期取得起床間隔を次回の同期取得起床間隔に設定する。その後、処理はステップS28に進む。
【0036】
なお、本発明の実施形態においては、一定のしきい値(Max_sync_diff)と(Min_sync_diff)の2つを用いて同期取得起床間隔を維持または短縮・延長の設定をするようにしたが、しきい値をより多く設けるようにしてより高精細(多段階)に同期取得起床間隔を短縮・延長するようにしてもよい。これにより、1x CSアクセス網との同期をとりつつ、省電力化を好適に図ることができる。
【0037】
以上のように、本発明の実施形態においては、E-UTRANで待ち受けている場合であっても、CS系のサービス開始時の処理時間の短縮を図ることができる。以下、図10を用いて、本発明による改善効果について説明する。図10は、E-UTRANで待ち受けている場合に、CS着信の通知(Paging)を受けた場合における移動無線端末1側の時系列的な処理を示している。図10に示されるように、E-UTRANの間欠受信処理の合間に、通信系制御部39aの通信処理CPUにより1x CSアクセス網L1部を起動し、1x CSアクセス網との同期を維持することができる。そして、1x CSアクセス網との同期を維持することができている状態で、1x CSアクセス網でCS着信のPagingを受信したとする。この場合、従来方式と同様に通信系制御部39aの通信処理CPUにより1x CSアクセス網L1部を起動することになるが、送信対象の1x CSアクセス網の基地局情報や送信フレームのタイミングは、図8または図9を用いて説明した1x CSアクセス網同期取得起床動作によってすでに取得されている。そのため、1x CSアクセス網基地局への送信のためのRF回路の起動・設定の実施後に、1x CSアクセス網基地局BSの探索や報知情報の受信などの一連の処理を行うことなく、1x CSアクセス網との同期維持情報の再生と送信タイミングの算出を実施するだけでPaging responseを1x CSアクセス網に対して返すことができる。
【0038】
本発明の実施形態によれば、Paging受信からPaging response送信までの時間を短縮でき、ネットワーク側の待ち時間を短縮するとともに、移動無線端末1に対して着信を掛けてきた相手の応答時間を短縮することができる。従って、E-UTRANで待ち受けている場合に、E-UTRANを経由してCS系サービスのイベントを受信したとき、CS系のアクセス網に好適にイベントに対する応答を送信することができる。
【0039】
なお、上記においては、1x CSアクセス網をCS Fallback設定を行う対象としたが、同じようにCS系のアクセス網を有する移動体通信網(例えばUTRANやGERAN)についても同様に本発明を適用することができる。
【0040】
[第2実施形態]
図11は、発明の第2の実施形態に係る移動無線端末1の内部の構成を表している。本発明の第2実施形態においては、本発明の第1実施形態と異なり、移動無線端末1は、間欠受信を制御する移動無線端末1内部のクロック生成部をE-UTRANだけについて有しており、E-UTRANとの同期や移動無線端末1に報知されてくる着信情報の監視を実施する際の間欠受信を行うためのE-UTRAN間欠受信クロック生成部43のみを備える。そして、本発明の第2実施形態においては、E-UTRANの間欠受信周期(DRXE-UTRAN)をカウントすることによって、1x CSアクセス網との同期取得のタイミングを計算する。すなわち、E-UTRAN間欠受信クロックの生成を利用することで、1x CSアクセス網との同期取得間隔の算出に必要なクロックを生成し、E-UTRAN側のクロックによって1x CSアクセス網側の同期取得起床のタイミングを計算する。従って、1x CSアクセス網用の回路は、同期取得のタイマカウンタ動作を含めて同期取得時以外に一切起動されない。なお、図11の構成は図6の構成と基本的に同様であり、その説明は繰り返しになるので省略する。
【0041】
次に、図12乃至図14を用いて、E-UTRAN側のクロック制御のみで1x CSアクセス網と同期を維持するために1x CSアクセス網用の回路を駆動させる方法について説明する。前提として、E-UTRAN基地局間では基地局間同期がとれており、かつ、1x CSアクセス網基地局間でも基地局間同期がとれているものとする。
【0042】
まず、図12は、E-UTRANの無線フレームと1x CSアクセス網の無線フレームの関係を示している。E-UTRANと1x CSアクセス網との間には、フレーム境界のタイミング差(T_offset)が存在するだけでなく、各々のアクセス網で計時に使用されるクロックが異なることにより発生する定常的なクロック差(δdrift)が存在する。図12に示されるように、δdriftは定常的な偏差であることから、時間が経過するにつれてδdriftの積算値が大きくなる。そのため、移動無線端末1がE-UTRANで待ち受けを実施している場合に、E-UTRAN間欠受信クロック生成部43により生成されるE-UTRAN間欠受信クロックを用いて1x CSアクセス網との同期を維持しようとするとき、このδdriftの積算値が大きくなると、1x CSアクセス網との同期がとれなくなる恐れが想定される。そこで、この観点から、E-UTRAN間欠受信クロックを用いて1x CSアクセス網との同期を取るようにする。
【0043】
次に、図13は、E-UTRANと1x CSアクセス網間の無線フレームオフセットおよびドリフト量の具体的な計測方法について説明する。δdriftは、E-UTRANと1x CSアクセス網のフレームのオフセットT_offsetから算出される。そのため、T_offsetをまず計算する。T_offsetは、E-UTRANの間欠受信の際にE-UTRANのフレーム境界タイミングを保存しておき、保存されたE-UTRANフレーム境界タイミングから1x CSアクセス網の同期取得を実施した際の同期チャネルフレームの先頭までの時間(T_1xCSAcq)を計測する。1x CSアクセス網との同期が得られていない場合、図13に示されるように時間T_1xCSAcqには複数の1x CS同期チャネルフレームが跨って存在する。このことを考慮すると、E-UTRANのフレーム境界と1x CSアクセス網フレーム境界のオフセットT_offsetは数1にて計算される。
【0044】
[数1]
T_offset = T_1xCS-Acq mod (1x CSアクセス網同期チャネルフレーム長)
【0045】
数1においてある時に測定されたT_offsetをT_offset(k)とおくと、δdriftはk-1 回目とk回目で測定された値を用いて[数2]のように表される。
【0046】
[数2]
δdrift = T_offset(k) - T_offset(k-1)
数2において、k-1回目とk回目の測定タイミングの間隔が、E-UTRANの間欠受信間隔DRXE-UTRANで実施されたとする。さらに、前回の1xCSアクセス網との同期からの経過時間から現在までのドリフト量の推定値Δ^は、数3にて計算される。
【0047】
【数3】

【0048】
そこで、このΔ^に基づいて1x CSアクセス網との同期を取得するかを判定することができる。以下、この方法を用いた、E-UTRANで待ち受けているときのE-UTRAN間欠受信動作の詳細について説明する。
【0049】
図14のフローチャートを参照して、図6の移動無線端末1におけるE-UTRANで待ち受けているときのE-UTRAN間欠受信動作の詳細について説明する。
【0050】
ステップS51において、時計回路47を用いて設定されているE-UTRAN間欠受信間隔用のタイマが満了した場合、E-UTRAN間欠受信クロック生成部43は、E-UTRANとの同期や移動無線端末1に報知されてくる着信情報の監視を実施する際の間欠受信を行うためのE-UTRAN間欠受信クロックを生成し、生成されたE-UTRAN間欠受信クロックを制御部39に出力する。ステップS52において、通信系制御部39aのE-UTRAN L1部は、E-UTRAN間欠受信クロック生成部43からのE-UTRAN間欠受信クロックに基づいて、E-UTRANの着信監視のための間欠起床を行う。ステップS53において、通信系制御部39aのE-UTRAN L1部は、無線送受信部32および信号処理部33を制御し、E-UTRAN間欠受信を行う。このとき、通信系制御部39aのE-UTRAN L1部は、E-UTRAN無線フレーム境界に対する1x CSアクセス網無線フレームの相対差(T_offset)を測定し、δdriftを計算しておく。
【0051】
ステップS54において、通信系制御部39aのE-UTRAN L1部は、E-UTRAN間欠起床を実施した際にΔ^にδdriftを加算(インクリメント)する(すなわち、今回のE-UTRAN間欠受信時におけるΔ^=前回のE-UTRAN間欠受信時におけるΔ^+δdrift)。ステップS55において、通信系制御部39aのE-UTRAN L1部は、1x CSアクセス網との同期を取得するかどうかを判断する。具体的には、通信系制御部39aのE-UTRAN L1部は、Δ^が1x CSアクセス網との同期を取得する同期ウィンドウの例えば8割に到達したか否かを判定する。なお、ステップS55の判定処理においては、Δ^が同期ウィンドウに外れてしまった場合には1x CSアクセス網との同期が外れてしまい、1x CSアクセス網との同期が維持できなくなることから、同期ウィンドウサイズの或る程度少ない値をしきい値として同期取得を判断する。勿論、このような場合に限られず、Δ^が1x CSアクセス網との同期を取得する同期ウィンドウの例えば7割などに到達したか否かを判定するようにしてもよい。
【0052】
ステップS55において通信系制御部39aのE-UTRAN L1部が、Δ^が1x CSアクセス網との同期を取得する同期ウィンドウの8割に到達したと判定した場合、通信系制御部の1x CSアクセス網L1部は、通信系制御部39aのE-UTRAN L1部の指示に従い、1x CSアクセス網同期取得起床を行う。ステップS57において、通信系制御部39aの1x CSアクセス網L1部は、無線送受信部32および信号処理部33を制御し、1x CSアクセス網基地局BSから送られてくる無線フレームの同期を取得し、同期フレーム(1x CSアクセス網の場合、Sync channelの無線フレーム)を取得する。これにより、1x CSアクセス網との同期を維持することができる。
【0053】
ステップS58において、通信系制御部39aのE-UTRAN L1部は、E-UTRAN無線フレームと1x CSアクセス網同期チャネルフレームとのオフセットT_offsetを補正・更新する。ステップS59において、通信系制御部39aの1x CSアクセス網L1部は、無線送受信部32および信号処理部33を制御し、1x CSアクセス網用の回路を停止するとともに、通信系制御部39aの1x CSアクセス網L1部はSleepする。ステップS60において、通信系制御部39aのE-UTRAN L1部は、先ほどの処理でδdriftが補正されたため、Δ^をリセットする(Δ^=0)。ステップS61において、通信系制御部39aのE-UTRAN L1部は、E-UTRANから指定される間欠受信周期(DRXE-UTRAN)を用いてE-UTRAN間欠受信用タイマを設定する。ステップS62において、時計回路47は、設定されたE-UTRAN間欠受信用タイマのカウント動作を開始する。ステップS63において、通信系制御部39aのE-UTRAN L1部は、無線送受信部32および信号処理部33を制御し、E-UTRAN用の回路を停止するとともに、通信系制御部39aのE-UTRAN L1部はSleepする。
【0054】
一方、ステップS55において通信系制御部39aのE-UTRAN L1部が、Δ^が1x CSアクセス網との同期を取得する同期ウィンドウの8割に到達していないと判定した場合、通信系制御部39aのE-UTRAN L1部は1x CSアクセス網の同期を取得しなくてもよいと判断し、1x CSアクセス網との同期を取得せず、処理はステップS61に進み、E-UTRAN側だけで間欠受信処理を終了し、E-UTRAN用の回路を停止するとともに、通信系制御部39aのE-UTRAN L1部はスリープする。なお、この場合、Δ^が1x CSアクセス網との同期を取得する同期ウィンドウの8割に到達していないと判定されていることから、Δ^が1x CSアクセス網との同期を取得する同期ウィンドウの8割に到達していないと判定されるまでステップS54においてδdriftの加算処理が繰り返し実行される。
【0055】
本発明の実施形態においては、1x CSアクセス網側の同期起床タイミングを生成するために1x CSアクセス網側へのカウンタを持っておく必要がない。そのため、移動無線端末1の構成をより簡素化することができる。その上、1x CSアクセス網側の同期が必要であると判断されるまで1x CSアクセス網用の回路を停止することができるので、移動無線端末1の低消費電力化を図ることができる。
【0056】
なお、無線送受信部32が1xCSアクセス網とE-UTRANとで共通化されている移動無線端末の構成の場合、1x CSアクセス網の同期取得のための処理をE-UTRANの間欠起床に引き続いて実施させることもできる。図15に示されるように、E-UTRANの間欠起床と1x CSアクセス網の同期取得のための処理を1回の無線送受信部32の起動により実現することができる。これにより、無線送受信32の起動に伴う電力消費を削減することができる。
【0057】
なお、本発明の第2実施形態においては、E-UTRAN基地局間で基地局間同期がとれており、かつ、1x CSアクセス網基地局間でも基地局間同期がとれているが、E-UTRANと1x CSアクセス網とで保持するクロックが異なることに起因するシステム間の無線フレームのドリフトが存在する場合を前提とした。そのため、移動無線端末1が待ち受けるE-UTRAN基地局が変化(リセレクション)したとしても、E-UTRAN待ち受け時に一度ドリフト量を測定しておくことで同じドリフト量を推定して使用することができる。
【0058】
一方、ある移動体通信網の基地局間で同期が取れていないシステムをCS系のアクセス網として適用する場合、例えばUTRAN(WCDMAシステム)の場合には前述の内容が適用できない。しかし、この場合には、例えば図16に示されるように、同期を取得する対象となるUTRAN基地局が切り替わった度に(すなわちUTRAN基地局毎に)、図12乃至図14を用いて説明したドリフト量を算出することでUTRANとの同期を取得するようにしてもよい。さらに、E-UTRAN側でマルチキャストをしない場合にはE-UTRAN側が基地局間で同期を取らない構成をとっておくことができるが、この場合にも基地局毎にドリフトを計算しておくことでCS系のアクセス網との同期を取得することができる。
【0059】
[第3実施形態]
図17は、本発明の第3実施形態に係る、E-UTRANと1x CSアクセス網とで別々の無線送受信部32−1と32−2および信号処理部33−1と33−2をもつ移動無線端末1の構成を示している。図17に示される移動無線端末1の場合、E-UTRANと1x CSアクセス網の処理を同時に処理することができる。例えば図18に示されるように、E-UTRANの間欠受信処理中に1x CSアクセス網の同期取得処理を実施することができる。これにより、1x CSアクセス網側の同期を取得したいタイミングで同期取得処理を実施することができ、1x CSアクセス網の発着信処理についてもE-UTRANの無線送受信部32−1および信号処理部33−1の処理を待たずに開始することができるため、処理時間をさらに短縮することができる。
【0060】
また、本発明の実施形態において説明した一連の処理は、ソフトウェアにより実行させることもできるが、ハードウェアにより実行させることもできる。
【0061】
さらに、本発明の実施形態では、フローチャートのステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理の例を示したが、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別実行される処理をも含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】CS Fallback機能を有するEPSの概略を示す図。
【図2】E-UTRAN基地局で待ち受けていた移動無線端末がCS着信を受けて、UTRANまたはGERAN側に対して接続する際のシーケンスを示す図。
【図3】移動無線端末がE-UTRANで待ち受けている場合に1x CSアクセス網に対して発信する際の移動無線端末とEPSの各構成間の処理のシーケンスを示す図。
【図4】移動無線端末がE-UTRANで待ち受けている場合に1x CSアクセス網からの着信を処理する際の移動無線端末とEPS各構成間の処理のシーケンスを示す図。
【図5】CS着信の通知(Paging)を受けた場合における移動無線端末側の時系列的な処理を示す図。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る移動無線端末の内部の構成を示すブロック図。
【図7】図6の移動無線端末における、E-UTRANで待ち受けている場合での1x CSアクセス網同期取得動作を示す図。
【図8】図6の移動無線端末における、E-UTRANで待ち受けている場合での1x CSアクセス網同期取得動作をさらに説明するフローチャート。
【図9】1x CSアクセス網との同期維持のための起床間隔が適宜変更される場合での、図6の移動無線端末におけるE-UTRANで待ち受けているときの1x CSアクセス網同期取得動作の詳細を説明するフローチャート。
【図10】E-UTRANで待ち受けている場合に、CS着信の通知(Paging)を受けた場合における移動無線端末側の時系列的な処理を示す図。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る移動無線端末1の内部の構成を示すブロック図。
【図12】E-UTRANの無線フレームと1x CSアクセス網の無線フレームの関係を示す図。
【図13】E-UTRANと1x CSアクセス網間の無線フレームオフセットおよびドリフト量の具体的な計測方法を説明する説明図。
【図14】図6の移動無線端末におけるE-UTRANで待ち受けているときのE-UTRAN間欠受信動作の詳細を説明するフローチャート。
【図15】時間的に連続して行われるE-UTRANの間欠起床と1x CSアクセス網の同期取得のための処理を示す図。
【図16】同期を取得する対象となるUTRAN基地局が切り替わった度に行われるドリフト量の算出方法を示す図。
【図17】本発明の第3実施形態に係る、E-UTRANと1x CSアクセス網とで別々の無線送受信部とおよび信号処理部をもつ移動無線端末の構成を示すブロック図。
【図18】E-UTRANの間欠受信処理中に実施される1x CSアクセス網の同期取得処理を示す図。
【符号の説明】
【0063】
1…移動無線端末、31(31−1乃至31−2)…アンテナ、32(32−2乃至32−2)…無線送受信部、33(33−1乃至33−2)…信号処理部、34…PCMコーデック、35…受話増幅器、36…スピーカ、37…送話増幅器、38…マイクロホン、39…制御部、40…記憶部、41…操作部、42…表示部、43…E-UTRAN間欠受信クロック生成部、44…CS系アクセス網方式同期処理クロック生成部、45…バッテリ、46…電源回路、47…時計回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回線交換網に属する基地局と無線信号を用いて送受信する回線交換網送受信手段と、
前記回線交換網に接続され、前記回線交換網とともに1つの統合通信網を形成する移動体通信網に属する基地局と無線信号を用いて送受信する移動体通信網送受信手段と、
前記移動体通信網に属する基地局で待ち受ける場合に、前記回線交換網送受信手段を起動し、前記回線交換網に属する基地局との同期を維持するように制御する制御手段とを備えることを特徴とする移動無線端末。
【請求項2】
前記制御手段は、前記移動体通信網に属する基地局で待ち受ける場合に前記移動体通信網により指定される間欠受信周期で実行される前記移動体通信網送受信手段による間欠受信処理の間に、前記回線交換網送受信手段を起動し、前記回線交換網に属する基地局との同期を維持するように制御することを特徴とする請求項1に記載の移動無線端末。
【請求項3】
前記制御手段は、前記移動体通信網に属する基地局で待ち受ける場合に、前記回線交換網により指定される間欠受信周期と同期または非同期で前記回線交換網送受信手段を起動し、前記回線交換網に属する基地局との同期を維持するように制御することを特徴とする請求項1に記載の移動無線端末。
【請求項4】
前記回線交換網との同期を取得するためのタイミングの基準となる同期処理クロックを生成する同期処理クロック生成手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記同期処理クロック生成手段により生成された前記同期処理クロックに基づいて前記回線交換網送受信手段を起動することを特徴とする請求項1に記載の移動無線端末。
【請求項5】
前記同期処理クロック生成手段は、前記回線交換網に属する基地局との前回の同期維持処理時に前記制御手段により設定される同期間隔で、前記同期処理クロックを生成することを特徴とする請求項4に記載の移動無線端末。
【請求項6】
前記制御手段は、前記回線交換網に属する基地局から送られてくる同期フレームを前記回線交換網送受信手段を介して取得し、前記回線交換網に属する基地局から送られてくる無線フレームの境界と前記同期フレームとの誤差が所定の範囲内であるか否かを判断し、
前記同期間隔は、この判断結果に基づいて可変に設定可能であることを特徴とする請求項5に記載の移動無線端末。
【請求項7】
前記制御手段は、前記移動体通信網に属する基地局で待ち受ける場合に前記回線交換網からのイベントが発生したとき、前記回線交換網送受信手段を起動し、
前記回線交換網送受信手段は、同期が維持された前記回線交換網に属する基地局に前記イベントに対する応答を送信することを特徴とする請求項1に記載の移動無線端末。
【請求項8】
前記移動体通信網との間で間欠受信するための移動体通信網間欠受信クロックを生成する移動体通信網間欠受信クロック生成手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記移動体通信網間欠受信クロック生成手段により生成された前記移動体通信網間欠受信クロックに基づいて前記移動体通信網送受信手段を起動するとともに、前記移動体通信網の無線フレームと前記回線交換網の無線フレームとのずれ量に基づいて、前記回線交換網との同期を取得するか否かを判断し、前記回線交換網との同期を取得すると判断した場合、前記回線交換網送受信手段を起動し、前記回線交換網に属する基地局との同期を維持するように制御することを特徴とする請求項1に記載の移動無線端末。
【請求項9】
前記制御手段は、前記移動体通信網の無線フレームと前記回線交換網の無線フレームとのずれ量が前記回線交換網との同期を取得する同期ウィンドウの所定の値に到達したか否かを判断することにより、前記回線交換網との同期を取得するか否かを判断することを特徴とする請求項8に記載の移動無線端末。
【請求項10】
前記制御手段は、前記移動体通信網との間で間欠受信ごとに、前記移動体通信網の無線フレームと前記回線交換網の無線フレームとのずれ量を加算することを特徴とする請求項8または9に記載の移動無線端末。
【請求項11】
前記回線交換網に属する基地局間で同期し、かつ、前記移動体通信網に属する基地局間で同期する場合、前記移動無線端末の待ち受け先の基地局が前記移動体通信網に属する第1の基地局から第2の基地局に遷移したとき、前記制御手段は、前記第1の基地局との間での間欠受信時に取得された、前記移動体通信網の無線フレームと前記回線交換網の無線フレームのずれ量に基づいて、前記回線交換網に属する基地局との同期を維持するように制御することを特徴とする請求項8に記載の移動無線端末。
【請求項12】
前記回線交換網に属する基地局間で非同期である場合、前記制御手段は、前記移動無線端末の待ち受け先の基地局が遷移する度に、遷移後の前記基地局との間での間欠受信時に取得された、前記移動体通信網の無線フレームと前記回線交換網の無線フレームのずれ量に基づいて、前記回線交換網に属する基地局との同期を維持するように制御することを特徴とする請求項8に記載の移動無線端末。
【請求項13】
前記移動体通信網に属する基地局間で非同期である場合、前記制御手段は、前記移動無線端末の待ち受け先の基地局が遷移する度に、遷移後の前記基地局との間での間欠受信時に取得された、前記移動体通信網の無線フレームと前記回線交換網の無線フレームのずれ量に基づいて、前記回線交換網に属する基地局との同期を維持するように制御することを特徴とする請求項8に記載の移動無線端末。
【請求項14】
前記移動体通信網の無線フレームと前記回線交換網の無線フレームのずれ量には、移動体通信網と前記回線交換網との間の無線フレーム境界のずれ量と、前記移動体通信網の無線フレームと前記回線交換網の無線フレーム間で発生するドリフト量が含まれることを特徴とする請求項8に記載の移動無線端末。
【請求項15】
前記回線交換網送受信手段と前記移動体通信網送受信手段とは1ユニット化され、
前記制御手段は、前記移動体通信網送受信手段による前記移動体通信網との間で間欠受信と連続して、前記回線交換網送受信手段を起動し、前記回線交換網に属する基地局との同期を維持するように制御することを特徴とする請求項1に記載の移動無線端末。
【請求項16】
前記回線交換網には、少なくとも、UTRAN、GERAN、およびcdma2000 1x CSアクセス網のいずれか1つ以上が含まれることを特徴とする請求項1に記載の移動無線端末。
【請求項17】
前記回線交換網送受信手段と前記移動体通信網送受信手段は独立して動作可能であり、前記回線交換網送受信手段による前記回線交換網との間での同期取得処理の時間帯と、前記移動体通信網送受信手段による前記移動体通信網との間で間欠受信処理の時間帯とが一部または全部で重複することを特徴とする請求項1に記載の移動無線端末。
【請求項18】
少なくともUTRAN、GERAN、およびcdma2000 1x CSアクセス網のいずれか1つ以上が含まれる回線交換網に属する基地局と無線信号を用いて送受信する回線交換網送受信手段と、
前記回線交換網に接続され、前記回線交換網とともに1つの統合通信網を形成するE-UTRANに属する基地局と無線信号を用いて送受信する移動体通信網送受信手段と、
前記E-UTRANに属する基地局で待ち受ける場合に、前記回線交換網送受信手段を起動し、前記回線交換網に属する基地局との同期を維持するように制御する制御手段とを備えることを特徴とする移動無線端末。
【請求項19】
前記統合通信網は、CS Fallback機能を有することを特徴とする請求項18に記載の移動無線端末。
【請求項20】
前記回線交換網はcdma2000 1x CSアクセス網であり、
前記制御手段は、sync channelの無線フレームを用いて、前記回線交換網としてのcdma2000 1x CSアクセス網に属する基地局との同期を維持するように制御することを特徴とする請求項18に記載の移動無線端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−63014(P2010−63014A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228755(P2008−228755)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】