説明

移動端末、制御方法、及びプログラム

【課題】セルサーチを制御すること。
【解決手段】セルサーチを行うにあたり、当該移動端末100の位置が前回のセルサーチ時の位置と同じである場合、全波セルサーチ時にRSSIの値が所定のRSSIしきい値未満であった周波数の信号、及び全波セルサーチ時にEc/Noの値が所定のEc/Noしきい値未満であった周波数の信号を除く信号に対してセルサーチを行うよう制御する制御部110を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動端末、制御方法、及びプログラムに関する。特に、本発明は、セルサーチを制御する移動端末、当該移動端末を制御する制御方法、並びに当該移動端末用のプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ブロードバンド無線アクセス方式においては、セルラー環境だけでなく、地下街、空港、ホテルロビー等のホットスポットエリア、屋内オフィス等の環境に対して連続的なサービスエリアの展開が重要である。特に屋内環境への柔軟なシステム展開を実現するためには、自システムで閉じた基地局間非同期システムが、時間同期をベースとする基地局間同期システムに比較して有利であると考えられる。
【0003】
移動端末は、基地局、移動端末間の伝搬ロスが最小となる基地局に無線リンクを接続する必要がある。マルチセル構成のセルラーシステムだけをサポートする無線アクセス方式においては、基地局、移動端末間の伝搬ロスが最小という状況は、下りリンクにおける基準信号の受信レベルが最も大きいという状態に、ほぼ相当すると考えられる。したがって、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)においては、下り共通パイロットチャネルの受信電力が最も大きなセルを最適なセルとして選択する。しかしながら、セルラー及び孤立セル双方をサポートするブロードバンド無線アクセス方式においては、セルラーセルとホットスポットセルの基地局送信電力に違いがあり、下りリンクの共通パイロットチャネルの受信電力が大きい場合でも、基地局、移動端末間の伝搬ロスが小さいとは限らない。
【0004】
このように、セルラーシステムに加えて、ホットスポット、屋内オフィス等の孤立セル環境が混在するシステムにおいては、基地局、移動端末間の伝搬ロスが最小となるセルを選択する、即ちセルサーチを行う必要がある。セルサーチは、初期セルサーチ、通信中のセルサーチ、待受時におけるセルサーチに大きく分類できる。
【0005】
既知の移動端末は、圏外においてセルサーチを行う場合、妨害波や雑音等の不要な信号や、位置登録するには受信信号のレベルが低い信号までセルサーチの対象としている。そのため、既知の移動端末は、圏外においてセルサーチを行う場合、処理時間や受信機の消費電流を不要に増やしていることになる。
【0006】
移動端末におけるサービスキャリアの検出処理に関する技術としては、キャリアサーチを効率的に行い、サービスキャリアを検出する間での時間を短縮化すると共に、無駄なセルサーチ回数を減らすことによって消費電力を低減し、結果として連続待受け時間を長期化することができる技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3851525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術によっては、無駄なセルサーチ回数を減らすことはできるものの、サービスキャリア以外の信号や、サービスキャリアの信号であっても位置登録するにはレベルの低い信号を、セルサーチの対象から完全に除外することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態によると、セルサーチを制御する移動端末であって、セルサーチを行うにあたり、当該移動端末の位置が前回のセルサーチ時の位置と同じである場合、全波セルサーチ時にRSSIの値が所定のRSSIしきい値未満であった周波数の信号、及び全波セルサーチ時にEc/Noの値が所定のEc/Noしきい値未満であった周波数の信号を除く信号に対してセルサーチを行うよう制御する制御部を備える。
【0010】
本発明の第2の形態によると、セルサーチを制御する移動端末を制御する制御方法であって、セルサーチを行うにあたり、当該移動端末の位置が前回のセルサーチ時の位置と同じである場合、全波セルサーチ時にRSSIの値が所定のRSSIしきい値未満であった周波数の信号、及び全波セルサーチ時にEc/Noの値が所定のEc/Noしきい値未満であった周波数の信号を除く信号に対してセルサーチを行うよう制御する制御段階を備える。
【0011】
本発明の第3の形態によると、セルサーチを制御する移動端末用のプログラムであって、移動端末を、セルサーチを行うにあたり、当該移動端末の位置が前回のセルサーチ時の位置と同じである場合、全波セルサーチ時にRSSIの値が所定のRSSIしきい値未満であった周波数の信号、及び全波セルサーチ時にEc/Noの値が所定のEc/Noしきい値未満であった周波数の信号を除く信号に対してセルサーチを行うよう制御する制御部として機能させる。
【0012】
なおまた、上記のように発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【発明の効果】
【0013】
以上の説明から明らかなように、この発明によっては、セルサーチに要する時間と消費電力を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施形態に係る携帯電話100のブロック構成の一例を示す図である。
【図2】RSSIの測定結果の一例を示す図である。
【図3】Ec/Noの算出結果の一例を示す図である。
【図4】メインメモリ140に記憶される3段階セルサーチに失敗した受信信号の周波数リストの一例をテーブル形式で示す図である。
【図5】メインメモリ140に記憶されるEc/Noの値がしきい値未満のW−CDMA信号の周波数リストの一例をテーブル形式で示す図である。
【図6】メインメモリ140に記憶されるEc/Noの値がしきい値以上のW−CDMA信号の周波数の一例をテーブル形式で示す図である。
【図7】メインメモリ140に記憶される携帯電話100の位置情報の一例をテーブル形式で示す図である。
【図8】携帯電話100の動作フローの一例を示す図である。
【図9】携帯電話100の動作フローの他の例を示す図である。
【図10】他の実施形態に係る携帯電話200のブロック構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は、特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
図1は、一実施形態に係る携帯電話100のブロック構成の一例を示す。携帯電話100は、セルサーチを制御する機能を有する。なおまた、携帯電話100は、この発明における「移動端末」の一例であってよい。
【0017】
携帯電話100は、アプリケーション用CPU(Central Processing Unit)110、通信用CPU120、GPS(Global Positioning System)受信機130、メインメモリ140、及びアンテナ150を備える。なおまた、アプリケーション用CPU110は、この発明における「制御部」の一例であってよい。また、通信用CPU120は、この発明における「通信制御部」の一例であってよい。また、GPS受信機130は、この発明における「位置測定部」の一例であってよい。また、メインメモリ140は、この発明における「データ記憶部」の一例であってよい。
【0018】
アプリケーション用CPU110は、携帯電話100を構成する部品の一つで、通信用CPU120、GPS受信機130、及びメインメモリ140の制御やデータの計算、加工を行う装置である。アプリケーション用CPU110は、通信用CPU120、GPS受信機130、及びメインメモリ140とそれぞれ電気的に接続されている。
【0019】
通信用CPU120は、無線通信の変復調を行う専用CPUである。通信用CPU120は、アプリケーション用CPU110、及びアンテナ150とそれぞれ電気的に接続されている。
【0020】
GPS受信機130は、複数のGPS衛星からの電波を受信してそれぞれとの距離を割り出すことにより、現在位置を測定する装置である。GPS受信機130は、アプリケーション用CPU110と電気的に接続されている。
【0021】
メインメモリ140は、携帯電話100内でデータやプログラムを記憶する装置である。メインメモリ140は、アプリケーション用CPU110と電気的に接続されている。
【0022】
アンテナ150は、電波を受信するためのアンテナである。アンテナ150は、通信用CPU120と電気的に接続されている。
【0023】
図2は、RSSI(Received Signal Strength Indicator)の測定結果の一例を示す。図3は、Ec/No(received energy per chip divided by the power density)の算出結果の一例を示す。図4は、メインメモリ140に記憶される3段階セルサーチに失敗した受信信号の周波数リストの一例をテーブル形式で示す。図5は、メインメモリ140に記憶されるEc/Noの値がしきい値未満のW−CDMA信号の周波数リストの一例をテーブル形式で示す。図6は、メインメモリ140に記憶されるEc/Noの値がしきい値以上のW−CDMA信号の周波数の一例をテーブル形式で示す。図7は、メインメモリ140に記憶される携帯電話100の位置情報の一例をテーブル形式で示す。図8は、携帯電話100の動作フローの一例を示す。この動作フローは、全波セルサーチの動作フローである。この動作フローの説明においては、図1から図7を共に参照する。
【0024】
先ず、全波セルサーチが開始されると、携帯電話100の通信用CPU120は、RSSIを測定する(S101)。そして、携帯電話100のアプリケーション用CPU120は、RSSI測定結果が図2の受信波1、2、4のように、しきい値α以上の場合(S102:Yes)、3段階セルサーチを行うよう通信用CPU120を制御する。
【0025】
そして、3段階セルサーチ処理に成功すると(S103:Yes)、携帯電話100のアプリケーション用CPU110は、GPS受信機130によって携帯電話100の現在位置情報を取得し、メインメモリ140に保存する(S104)。
【0026】
そして、通信用CPU120は、RSCP(Received Signal Code Power)を測定し、Ec/Noを算出する(S105)。
【0027】
そして、アプリケーション用CPU110は、Ec/Noの値が、図3の受信波2のように、位置登録可能なしきい値β以上の場合(S106:Yes)、その受信波の受信周波数を、図6に示すようにメインメモリに保存する(S107)。
【0028】
そして、アプリケーション用CPU110は、Ec/Noの値がしきい値β以上の信号を送信した基地局へ位置登録する(S108)。
【0029】
一方、図2の受信波3のように、測定したRSSIがしきい値αより小さい場合、全周波数のセルサーチが終了している場合は(S111:Yes)、一回目の全波セルサーチは終了し、全周波数のセルサーチが終了していない場合は(S111:No)、異なる周波数のRSSI測定が行われる(S101)。
【0030】
また、3段階サーチ処理に成功していない場合(S103:No)、アプリケーション用CPU110は、その受信周波数を、図4に示すようにメインメモリ140に保存して(S109)、ステップS111の処理へ進む。
【0031】
また、Ec/Noが、図3の受信波4のように、位置登録可能なしきい値βより小さい場合(S106:No)、アプリケーション用CPU110は、その受信周波数を、図5に示すようにメインメモリ140に保存して(S110)、ステップS111no処理へ進む。
【0032】
図9は、携帯電話100の動作フローの別の例を示す。この動作フローは、全波セルサーチ後のセルサーチの動作フローである。この動作フローの説明においては、図1から図8を共に参照する。
【0033】
図8の全波セルサーチ後にセルサーチが開始されると、アプリケーション用CPU110は、GPS受信機130を起動し、携帯電話100の現在の位置情報を取得する(S201)。そして、一回目の全波セルサーチ時に取得した位置情報と、現在の位置情報が同じ場合(S202:Yes)、アプリケーション用CPU110は、全波セルサーチ時にRSSIの値がしきい値α未満であった周波数の信号、及び全波セルサーチ時にEc/Noの値が所定のしきい値β未満であった周波数の信号を除く信号に対してセルサーチを行うよう、通信用CPU120を制御する(S203)。このようにして、携帯電話100の位置登録に成功した場合(S204:Yes)、全波サーチを終了する。一方、携帯電話100の位置登録に成功しなかった場合(S204:No)、ステップS201からの処理を繰り返す。
【0034】
一方、一回目の全波サーチ時に取得した位置情報と、現在の位置情報が異なる場合(S202:No)、メインメモリ140の位置情報と周波数情報を消去し、図8の全波セルサーチの処理を行う(S205)。
【0035】
以上説明したように、本発明において以下に記載するような効果を奏する。圏外エリアに長時間留まっているような場合に、携帯電話100では、RSSIとRSCPの測定結果よりEc/No(=RSCP/RSSI)を算出し、Ec/Noと位置情報より不要な受信信号のサーチを省略することで、セルサーチに要する時間を短縮することができ、受信機の消費電流を削減することができる。
【0036】
また、携帯電話100の移動を検出することで、即座にセルサーチを行うことができ、伝播環境の変化に対してリアルタイムに対応することができる。
【0037】
また、既存無線システムをそのまま使用することができるため、特別なシステムの追加構築を必要としない。
【0038】
図10は、他の実施形態に係る携帯電話200のブロック構成の一例を示す。上記実施形態の携帯電話100では、GPS受信機130によって携帯電話100の移動を検出し、不要な受信信号のサーチ処理を省略するか否かを判定するようにした。
【0039】
携帯電話200の構成は、携帯電話200の移動を検出するための加速度センサー260を有する。携帯電話200では、加速度センサー260によって携帯電話200の移動を検出し、不要な受信信号のサーチ処理を省略するか否かを判定する。携帯電話200は、図8の動作フローのステップS104、及び図9の動作フローのステップS201の処理を、加速度センサー260を用いて行う。
【0040】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は、上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0041】
100 携帯電話
110 アプリケーション用CPU
120 通信用CPU
130 GPS受信機
140 メインメモリ
150 アンテナ
200 携帯電話
210 アプリケーション用CPU
220 通信用CPU
240 メインメモリ
250 アンテナ
260 加速度センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルサーチを制御する移動端末であって、
セルサーチを行うにあたり、当該移動端末の位置が前回のセルサーチ時の位置と同じである場合、全波セルサーチ時にRSSIの値が所定のRSSIしきい値未満であった周波数の信号、及び全波セルサーチ時にEc/Noの値が所定のEc/Noしきい値未満であった周波数の信号を除く信号に対してセルサーチを行うよう制御する制御部
を備える移動端末。
【請求項2】
前記制御部は、セルサーチを行うにあたり、当該移動端末の位置が前回のセルサーチ時の位置と異なる場合、全周波数の信号に対してセルサーチを行うよう制御する
請求項1に記載の移動端末。
【請求項3】
当該移動端末の位置を測定する位置測定部
を更に備え、
前記制御部は、セルサーチを行うにあたり、前記位置検出部が測定した当該移動端末の位置が前回のセルサーチ時の位置と同じである場合、全波セルサーチ時にRSSIの値が所定のRSSIしきい値未満であった周波数の信号、及び全波セルサーチ時にEc/Noの値が所定のEc/Noしきい値未満であった周波数の信号を除く信号に対してセルサーチを行うよう制御する
請求項1又は2に記載の移動端末。
【請求項4】
前記制御部は、全周波数の信号に対してセルサーチを行う場合、Ec/Noの値が所定のEc/Noしきい値以上の信号を送信した基地局へ位置登録する
請求項2又は3に記載の移動端末。
【請求項5】
データを記憶するデータ記憶部
を更に備え、
前記制御部は、全周波数の信号に対してセルサーチを行う場合、Ec/Noの値が所定のEc/Noしきい値未満の信号周波数を示すデータを前記データ記憶部へ保存する
請求項2から4のいずれか一項に記載の移動端末。
【請求項6】
受信信号のEc/Noを算出する通信制御部
を更に備え、
前記制御部は、全周波数の信号に対してセルサーチを行う場合、前記通信制御部が算出したEc/Noの値が所定のEc/Noしきい値以上の信号を送信した基地局へ位置登録する
請求項4又は5に記載の移動端末。
【請求項7】
前記通信制御部は、3段階セルサーチ処理に成功した後にRSCPを測定して、当該RSCPの値に基づいて、受信信号のEc/Noを算出する
請求項6に記載の移動端末。
【請求項8】
前記通信制御部は、RSSIの値が所定のRSSIしきい値以上の信号について、3段階セルサーチを行い、当該3段階セルサーチ処理に成功した場合、RSCPを測定して、当該RSCPの値に基づいて、受信信号のEc/Noを算出する
請求項7に記載の移動端末。
【請求項9】
セルサーチを制御する移動端末を制御する制御方法であって、
セルサーチを行うにあたり、当該移動端末の位置が前回のセルサーチ時の位置と同じである場合、全波セルサーチ時にRSSIの値が所定のRSSIしきい値未満であった周波数の信号、及び全波セルサーチ時にEc/Noの値が所定のEc/Noしきい値未満であった周波数の信号を除く信号に対してセルサーチを行うよう制御する制御段階
を備える制御方法。
【請求項10】
セルサーチを制御する移動端末用のプログラムであって、前記移動端末を、
セルサーチを行うにあたり、当該移動端末の位置が前回のセルサーチ時の位置と同じである場合、全波セルサーチ時にRSSIの値が所定のRSSIしきい値未満であった周波数の信号、及び全波セルサーチ時にEc/Noの値が所定のEc/Noしきい値未満であった周波数の信号を除く信号に対してセルサーチを行うよう制御する制御部
として機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−191548(P2012−191548A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55157(P2011−55157)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】