説明

移動端末及びアンテナ制御方法

【課題】使用状態に応じて変化するアンテナの特性変化を検出し、変化するアンテナの特性に適応することによって送受信性能の劣化を抑制できる移動端末及びアンテナ制御方法を提供する。
【解決手段】 移動端末10は、アンテナの共振周波数を基準とした基準周波数、及び基準周波数から所定周波数離れたオフセット周波数における高周波信号の受信レベルを測定する受信レベル測定部113と、受信レベル測定部113によって測定されたオフセット周波数における受信レベルが、基準周波数における受信レベルよりも高い場合、アンテナ13を制御することによって、共振周波数を基準周波数の方向にシフトさせるアンテナ制御部115とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナと、高周波増幅回路と、インピーダンスのマッチング回路とを備える移動端末、及び移動端末のアンテナ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話端末などの移動端末では、使用状態によってアンテナの特性インピーダンスが変化すると、無線信号の送受信性能に大きな影響が生じる。
【0003】
このようなアンテナの特性インピーダンスの変化による送受信性能の劣化を検出する方法が知られている。例えば、無線通信装置(無線基地局)が、検波信号のレベル変動に基づいて、アンテナの特性インピーダンスと給電側(高周波増幅回路)のインピーダンスとの不整合の要因、具体的には、アンテナの接続端子の外れや破損など、アンテナの異常を検出する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3462391号公報(第4−5頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、移動端末の場合、アンテナの異常に限らず、移動端末の使用状態によってアンテナの特性インピーダンスが変化するといった問題がある。
【0006】
例えば、移動端末の近傍に人間が居る場合と、金属製の物体がある場合とでは、アンテナの特性インピーダンスが変化する。さらに、折り畳み式の移動端末では、折り畳まれた状態と、広げられた状態とでは、アンテナの特性インピーダンスが変化する。
【0007】
また、アンテナの特性インピーダンスが変化すると、アンテナの共振周波数、つまり、アンテナを介して受信した無線信号の中心周波数も変化する。
【0008】
すなわち、上述した従来の方法では、単に、検波信号のレベル変動に基づいてアンテナの異常を検出しているだけである。このため、移動端末の使用状態によって変化するアンテナの特性インピーダンスや共振周波数などの特性変化を検出し、変化した特性インピーダンスや共振周波数に適応することができないといった問題があった。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、使用状態に応じて変化するアンテナの特性変化を検出し、変化するアンテナの特性に適応することによって送受信性能の劣化を抑制できる移動端末及びアンテナ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した問題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、アンテナ(アンテナ13)と、前記アンテナから出力された高周波信号を増幅する高周波増幅回路(高周波増幅回路107)と、前記アンテナのインピーダンス(インピーダンスZ)と前記高周波増幅回路のインピーダンス(インピーダンスZ)とをマッチングさせるマッチング回路(マッチング回路103)とを備える移動端末(移動端末10)であって、第1端子(端子105)、前記第1端子の後段に位置する第2端子(端子105)、及び前記第2端子の後段に位置する第3端子(端子105)を有し、前記第1端子から前記第2端子への片方向にのみ及び前記第2端子から前記第3端子への片方向にのみ前記高周波信号を通過させるサーキュレータ(サーキュレータ105)と、前記高周波信号の有無を検出する検波器(検波器109)と、前記検波器によって前記高周波信号が検出された場合、前記マッチング回路を制御することによって前記アンテナのインピーダンスを変化させるマッチング回路制御部(マッチング回路制御部111)とを備え、前記マッチング回路は、前記第1端子に接続され、前記高周波増幅回路は、前記第2端子に接続され、前記検波器は、前記第3端子に接続されることを要旨とする。
【0011】
このような移動端末によれば、アンテナのインピーダンスと高周波増幅回路のインピーダンスとがマッチングしていない場合、高周波増幅回路からの反射波がサーキュレータの第3端子に高周波信号として出力される。すなわち、移動端末の使用状態に応じてアンテナの特性インピーダンスが変化したことを検出することができる。さらに、アンテナの特性インピーダンスが変化したことが検出されると、マッチング回路を制御することによってアンテナのインピーダンスを変化させることできる。
【0012】
つまり、このような移動端末によれば、使用状態に応じて変化するアンテナの特性変化を検出し、変化するアンテナの特性に適応することによって送受信性能の劣化を抑制できる。
【0013】
本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記マッチング回路制御部は、前記検波器によって前記高周波信号が検出された場合、前記アンテナのインピーダンスを増大させることを要旨とする。
【0014】
本発明の第3の特徴は、アンテナと、前記アンテナから出力された高周波信号を増幅する高周波増幅回路とを備える移動端末におけるアンテナ制御方法であって、前記アンテナのインピーダンスと前記高周波増幅回路のインピーダンスとの不整合に伴って発生する前記高周波増幅回路からの反射波の有無を検出するステップと、前記反射波が検出された場合、前記アンテナのインピーダンスを変化させるステップとを備えることを要旨とする。
【0015】
本発明の第4の特徴は、アンテナ(アンテナ13)と、前記アンテナから出力された高周波信号を増幅する高周波増幅回路(高周波増幅回路107)と、前記アンテナと接続され、前記アンテナのインピーダンス(インピーダンスZ)と前記高周波増幅回路のインピーダンス(インピーダンスZ)とをマッチングさせるマッチング回路(マッチング回路103)とを備える移動端末(移動端末10)であって、前記アンテナの共振周波数を基準とした基準周波数(周波数f)、及び前記基準周波数から所定周波数離れたオフセット周波数(周波数f,周波数f)における前記高周波信号の受信レベル(例えば、RSCP)を測定する測定部(受信レベル測定部113)と、前記測定部によって測定された前記オフセット周波数における前記受信レベルが、前記基準周波数における前記受信レベルよりも高い場合、前記アンテナを制御することによって、前記共振周波数を前記基準周波数の方向にシフトさせるアンテナ制御部(アンテナ制御部115)とを備えることを要旨とする。
【0016】
このような移動端末によれば、アンテナの共振周波数を基準とした基準周波数と、基準周波数から所定周波数離れたオフセット周波数とにおける高周波信号の受信レベルが測定部によって測定される。
【0017】
このため、移動端末の使用状態に応じたアンテナの特性インピーダンスの変化に伴うアンテナの共振周波数の変化を検出することができる。また、オフセット周波数における高周波信号の受信レベルが、基準周波数における受信レベルよりも高い場合、アンテナを制御することによって、共振周波数が基準周波数の方向にシフトさせられる。
【0018】
つまり、このような移動端末によれば、使用状態に応じて変化するアンテナの特性変化を検出し、変化するアンテナの特性に適応することによって送受信性能の劣化を抑制できる。
【0019】
本発明の第5の特徴は、本発明の第4の特徴に係り、前記測定部は、前記オフセット周波数として、前記基準周波数よりも高い高オフセット周波数(周波数f)、及び前記基準周波数よりも低い低オフセット周波数(周波数f)における受信レベルを測定し、前記アンテナ制御部は、前記高オフセット周波数及び前記低オフセット周波数における前記受信レベルに基づいて、前記共振周波数を前記基準周波数の方向にシフトさせることを要旨とする。
【0020】
本発明の第6の特徴は、アンテナを備える移動端末におけるアンテナ制御方法であって、前記アンテナの共振周波数を基準とした基準周波数、及び前記基準周波数から所定周波数離れたオフセット周波数における前記高周波信号の受信レベルを測定するステップと、測定された前記オフセット周波数における前記受信レベルが、前記基準周波数における前記受信レベルよりも高い場合、前記アンテナを制御することによって、前記共振周波数を前記基準周波数の方向にシフトさせるステップと
を備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の特徴によれば、使用状態に応じて変化するアンテナの特性変化を検出し、変化するアンテナの特性に適応することによって送受信性能の劣化を抑制できる移動端末及びアンテナ制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る移動端末10の全体概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る無線通信部100の機能ブロック構成図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る無線通信部100がアンテナ13のインピーダンスZ(特性インピーダンス)を制御する動作フローを示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る無線通信部100Aの機能ブロック構成図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る無線通信部100Aがアンテナ13の共振周波数を制御する動作フローを示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る基準周波数及びオフセット周波数の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態について説明する。具体的には、(1)第1実施形態、(2)第2実施形態及び(3)その他の実施形態について説明する。
【0024】
なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0025】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0026】
(1)第1実施形態
第1実施形態では、サーキュレータ及び検波器を用いてアンテナの特性インピーダンスの変化を検出する移動端末について説明する。具体的には、(1.1)移動端末の概略構成、(1.2)無線通信部の機能ブロック構成、(1.3)無線通信部の動作及び(1.4)作用・効果について説明する。
【0027】
(1.1)移動端末の概略構成
図1は、本実施形態に係る移動端末10の全体概略構成図である。図1に示すように、移動端末10は、本体部11、液晶表示部12及びアンテナ13を備える。
【0028】
本体部11と液晶表示部12とは、回動可能に連結される。すなわち、移動端末10は、当該連結部分を中心として折り畳んだり、広げたりすることができる。
【0029】
また、本体部11の内部には、無線基地局(不図示)との無線通信を実行する無線通信部100が設けられる。
【0030】
(1.2)無線通信部の機能ブロック構成
図2は、移動端末10(本体部11)の内部に設けられる無線通信部100の機能ブロック構成図である。図2に示すように、無線通信部100は、デュープレクサ101、マッチング回路103、サーキュレータ105、高周波増幅回路107、検波器109及びマッチング回路制御部111を備える。
【0031】
デュープレクサ101には、アンテナ13が接続される。デュープレクサ101は、無線基地局に向けて送信される上り信号と、無線基地局から送信された下り信号とを分離する。アンテナ13を介して受信した下り信号は、マッチング回路103に出力される。
【0032】
マッチング回路103は、アンテナ13のインピーダンスZと、高周波増幅回路107のインピーダンスZとをマッチング(整合)させる。
【0033】
特に、本実施形態では、マッチング回路103は、移動端末10の使用状態によってアンテナ13のインピーダンスZ(特性インピーダンス)が変化した場合、マッチング回路制御部111からの制御に基づいて、アンテナ13のインピーダンスZを変化させる。移動端末10の使用状態によってアンテナ13の特性インピーダンスが変化する場合としては、例えば、移動端末10の近傍に人間が居る場合と、金属製の物体がある場合が挙げられる。また、移動端末10が折り畳まれている状態から広げられている状態とでもアンテナ13の特性インピーダンスが変化する。
【0034】
サーキュレータ105は、マッチング回路103、高周波増幅回路107及び検波器109と接続される。具体的には、サーキュレータ105は、端子105(第1端子)、端子105(第2端子)及び端子105(第3端子)を有する。端子105は、端子105の後段に位置する。端子105は、端子105の後段に位置する。
【0035】
マッチング回路103は、端子105に接続される。高周波増幅回路107は、端子105に接続される。また、検波器109は、端子105に接続される。
【0036】
サーキュレータ105は、端子105から端子105への方向にのみ、アンテナ13側から出力された高周波信号を通過させる。また、サーキュレータ105は、端子105から端子105への方向にのみ当該高周波信号を通過させる。
【0037】
高周波増幅回路107は、アンテナ13から出力された高周波信号を増幅する。具体的には、アンテナ13から出力された高周波信号は、デュープレクサ101、マッチング回路103及びサーキュレータ105を介して高周波増幅回路107に入力される。
【0038】
検波器109は、サーキュレータ105の端子105に出力された高周波信号の有無を検出する。具体的には、検波器109は、サーキュレータ105の端子105に出力された電流を検出する。
【0039】
検波器109は、当該高周波信号を検出した場合、当該高周波信号を検出したことをマッチング回路制御部111に出力する。
【0040】
上述した構成を有する無線通信部100では、アンテナ13(及びデュープレクサ101)のインピーダンスZと、高周波増幅回路107のインピーダンスZとがマッチングしていない場合、アンテナ13から出力された高周波信号の一部は、高周波増幅回路107に入力されず、高周波増幅回路107からの反射波となってアンテナ13の方向に戻る。つまり、インピーダンスZとインピーダンスZとの不整合に伴って高周波増幅回路107からの反射波が発生する。
【0041】
一方、マッチング回路103が最適な状態で動作している場合、つまり、インピーダンスZとインピーダンスZとがマッチングしている場合、高周波増幅回路107からの反射波は発生しない。この場合、検波器109は、端子105において高周波信号、具体的には、高周波増幅回路107からの反射波を検出することはない。また、高周波増幅回路107からの反射波は、サーキュレータ105の機能によって、端子105から端子105への方向にのみ出力される。
【0042】
マッチング回路制御部111は、マッチング回路103を制御する。具体的には、マッチング回路制御部111は、検波器109によって高周波信号(反射波)が検出された場合、マッチング回路103を制御することによってアンテナ13のインピーダンスZを変化させる。本実施形態では、マッチング回路制御部111は、検波器109によって高周波信号が検出された場合、アンテナ13のインピーダンスZを増大させる。
【0043】
ここで、検波器109によって高周波信号(反射波)が検出された場合、アンテナ13のインピーダンスZが、高周波増幅回路107のインピーダンスZよりも小さい否かは、判断できない。本実施形態では、マッチング回路制御部111は、検波器109によって高周波信号(反射波)が検出された場合、インピーダンスZがインピーダンスZよりも小さいと仮定してインピーダンスZを増大させる。なお、アンテナ13のインピーダンスZの具体的な制御方法については、後述する。
【0044】
(1.3)無線通信部の動作
次に、移動端末10の動作について説明する。具体的には、無線通信部100がアンテナ13のインピーダンスZ(特性インピーダンス)を制御する動作について説明する。
【0045】
図3は、無線通信部100がアンテナ13のインピーダンスZ(特性インピーダンス)を制御する動作フローを示す。図3に示すように、ステップS10において、無線通信部100は、サーキュレータ105の端子105において、高周波信号(反射波)を検出したか否かを判定する。具体的には、無線通信部100は、端子105において検出電流Iがあるか否かを判定する。
【0046】
検出電流Iがある場合(ステップS10のYES)、ステップS20において、無線通信部100は、アンテナ13のインピーダンスZ(特性インピーダンス)を増大させる。具体的には、マッチング回路103を制御することによって、アンテナ13のインピーダンスZを予め規定された値(例えば、1Ω分)増大させる。
【0047】
ステップS30において、無線通信部100は、端子105において検出電流Iがあるか否かを判定する。
【0048】
検出電流Iがある場合(ステップS30のYES)、ステップS40において、無線通信部100は、検出電流Iが検出電流I以下か否かを判定する。
【0049】
検出電流Iが検出電流I以下である場合(ステップS40のYES)、ステップS50において、無線通信部100は、マッチング回路103を制御することによってアンテナ13のインピーダンスZを予め規定された値増大させる。
【0050】
ステップS60において、無線通信部100は、端子105において検出電流Iがあるか否かを判定する。
【0051】
検出電流Iがある場合(ステップS60のYES)、ステップS70において、無線通信部100は、無線通信部100は、検出電流Iが検出電流I以下か否かを判定する。
【0052】
一方、検出電流I、検出電流Iまたは検出電流Iがない場合(ステップS10のNO、ステップS30のNOまたはステップS60のNO)、無線通信部100は、アンテナ13(及びデュープレクサ101)のインピーダンスZと、高周波増幅回路107のインピーダンスZとがマッチングしていると判定する。
【0053】
検出電流Iが検出電流I以下である場合(ステップS70のYES)、ステップS80において、無線通信部100は、マッチング回路103を制御することによってアンテナ13のインピーダンスZを予め規定された値増大させる。
【0054】
検出電流Iが検出電流Iを上回る場合(ステップS70のNO)、ステップS90において、無線通信部100は、マッチング回路103を制御することによってアンテナ13のインピーダンスZを予め規定された値減少させる。
【0055】
また、検出電流Iが検出電流Iを上回る場合(ステップS40のNO)、ステップS100において、無線通信部100は、マッチング回路103を制御することによってアンテナ13のインピーダンスZを予め規定された値減少させる。
【0056】
次いで、ステップS110〜S140では、上述したステップS60〜S90と同様の処理が実行される。また、無線通信部100は、端子105において電流、つまり、反射波が検出されなくなるまで、ステップS40〜S140における処理を繰り返す。
【0057】
(1.4)作用・効果
移動端末10、具体的には、無線通信部100によれば、アンテナ13のインピーダンスZと高周波増幅回路107のインピーダンスZとがマッチングしていない場合、高周波増幅回路107からの反射波がサーキュレータ105の端子105に高周波信号として出力される。すなわち、移動端末10の使用状態に応じてアンテナ13の特性インピーダンスが変化したことを検出することができる。さらに、アンテナ13の特性インピーダンスが変化したことが検出されると、マッチング回路103を制御することによってアンテナ13のインピーダンスZを変化させることできる。
【0058】
つまり、無線通信部100によれば、使用状態に応じて変化するアンテナ13の特性変化を検出し、変化するアンテナ13の特性に適応することによって、無線通信部100の送受信性能の劣化を抑制できる。
【0059】
本実施形態では、検波器109によって高周波信号(反射波)が検出された場合、マッチング回路制御部111は、アンテナ13のインピーダンスZを増大させる。上述したように、検波器109によって高周波信号が検出された場合、アンテナ13のインピーダンスZが、高周波増幅回路107のインピーダンスZよりも小さい否かは、判断できない。
【0060】
そこで、本実施形態では、マッチング回路制御部111は、当該高周波信号が検出された場合、インピーダンスZがインピーダンスZよりも小さいと仮定してインピーダンスZを増大させる。さらに、インピーダンスZを増大させた後における当該高周波信号のレベル、具体的には、検波器109による検出電流(検出電流I,検出電流I)と、増大前における検出電流(検出電流I,検出電流I)とを比較することによって、インピーダンスZを増大させるか減少させるかが決定される。
【0061】
すなわち、無線通信部100によれば、検波器109と、マッチング回路103を制御するマッチング回路制御部111とによる簡素な構成としつつ、アンテナ13の特性インピーダンスの変化に適応することができる。
【0062】
(2)第2実施形態
第2実施形態では、アンテナの共振周波数、つまり、アンテナを介して受信した無線信号の中心周波数のずれに基づいてアンテナの特性インピーダンスの変化を検出する移動端末について説明する。具体的には、(2.1)無線通信部の機能ブロック構成、(2.2)無線通信部の動作及び(2.3)作用・効果について説明する。
【0063】
(2.1)無線通信部の機能ブロック構成
本実施形態でも、第1実施形態に係る移動端末10(図1参照)と同様の形状を有する移動端末が用いられる。本実施形態では、第1実施形態に係る無線通信部100(図2参照)に代えて、無線通信部100Aが設けられる。
【0064】
図4は、無線通信部100Aの機能ブロック構成図である。図2に示すように、無線通信部100Aは、デュープレクサ101、マッチング回路103、高周波増幅回路107、受信レベル測定部113及びアンテナ制御部115を備える。
【0065】
デュープレクサ101、マッチング回路103及び高周波増幅回路107は、第1実施形態に係る無線通信部100に備えられている当該機能ブロックと同様の機能を有する。なお、マッチング回路103は、高周波増幅回路107と直接接続される。
【0066】
受信レベル測定部113は、高周波増幅回路107に入力された高周波信号の受信レベルを測定する。本実施形態において、受信レベル測定部113は、測定部を構成する。
【0067】
具体的には、図6に示すように、受信レベル測定部113は、アンテナ13の共振周波数を基準とした基準周波数(周波数f)におけるReceived Signal Code Power(RSCP)を測定する。
【0068】
また、受信レベル測定部113は、当該基準周波数から所定周波数離れたオフセット周波数(周波数f,周波数f)におけるRSCPを測定する。周波数f(高オフセット周波数)は、周波数fよりも高く、周波数f(低オフセット周波数)は、周波数fよりも低い。本実施形態では、周波数fと周波数fとの差、及び周波数fと周波数fとの差は、それぞれ2.5MHzに設定される。
【0069】
受信レベル測定部113は、測定したRSCPをアンテナ制御部115に所定の時間間隔で出力する。
【0070】
アンテナ制御部115は、アンテナ13の共振周波数を制御する。具体的には、アンテナ制御部115は、受信レベル測定部113によって測定されたオフセット周波数(周波数fまたは周波数f)における受信レベル(RSCP)が、基準周波数(周波数f)における受信レベルよりも高い場合、アンテナ13を制御することによって、アンテナ13の共振周波数を基準周波数の方向にシフトさせる。
【0071】
本実施形態では、アンテナ制御部115は、周波数f(高オフセット周波数)、及び周波数f(低オフセット周波数)における受信レベルに基づいて、アンテナ13の共振周波数を基準周波数の方向にシフトさせる。
【0072】
例えば、図6に示すように、アンテナ13の特性インピーダンスの変化に伴って、アンテナ13の共振周波数、具体的には、アンテナ13を介して受信した無線信号の中心周波数が、周波数fが周波数F’に変化した場合、周波数fにおける受信レベルが最大となる。アンテナ制御部115は、アンテナ13を介して受信した無線信号の中心周波数が低くなるようにアンテナ13を制御する。なお、アンテナ13の共振周波数の具体的な制御方法については、後述する。
【0073】
(2.2)無線通信部の動作
次に、無線通信部100Aがアンテナ13の共振周波数を制御する動作について説明する。図5は、無線通信部100Aがアンテナ13の共振周波数を制御する動作フローを示す。図5に示すように、ステップS210において、無線通信部100Aは、基準周波数(周波数f)及びオフセット周波数(周波数f,周波数f)における受信レベル(RSCP)を測定する。
【0074】
ステップS220において、無線通信部100Aは、RSCPが最大である周波数を判定する。
【0075】
周波数fのRSCPが最大である場合(ステップS220のf)、ステップS230において、無線通信部100Aは、アンテナ13を制御し、中心周波数(周波数F’)を上昇させる。
【0076】
周波数fのRSCPが最大である場合(ステップS220のf)、ステップS240において、無線通信部100Aは、アンテナ13を制御し、中心周波数(周波数F’)を低下させる。
【0077】
周波数fのRSCPが最大である場合(ステップS220のf)、ステップS250において、無線通信部100Aは、現在の中心周波数を維持する。
【0078】
無線通信部100Aは、周波数fのRSCPが最大になるまで、ステップS210〜S250の処理を繰り返す。
【0079】
(2.3)作用・効果
無線通信部100Aによれば、アンテナ13の共振周波数を基準とした基準周波数(周波数f)と、オフセット周波数(周波数fまたは周波数f)とにおける高周波信号のRSCPが受信レベル測定部113によって測定される。
【0080】
このため、移動端末の使用状態に応じたアンテナ13の特性インピーダンスの変化に伴うアンテナ13の共振周波数の変化を検出することができる。また、オフセット周波数における高周波信号のRSCPが、基準周波数におけるRSCPよりも高い場合、アンテナ13を制御することによって、共振周波数が基準周波数の方向にシフトさせられる。
【0081】
つまり、無線通信部100Aが設けられた移動端末によれば、使用状態に応じて変化するアンテナ13の特性変化を検出し、変化するアンテナ13の特性に適応することによって送受信性能の劣化を抑制できる。
【0082】
本実施形態では、基準周波数(周波数f0)よりも高い周波数f2、及び基準周波数よりも低い周波数f1における受信レベルが測定される。このため、アンテナ13の共振周波数の変化をより迅速に基準周波数に近付けることができる。
【0083】
(3)その他の実施形態
上述したように、本発明の第1実施形態及び第2実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態が明らかとなろう。
【0084】
例えば、第1実施形態では、検波器109によって高周波信号が検出された場合、まず、アンテナ13のインピーダンスZを増大させていたが、アンテナ13のインピーダンスZを減少させてもよい。
【0085】
第1実施形態では、サーキュレータ105が用いられていたが、サーキュレータ105に代えて、アイソレータを用いても構わない。
【0086】
また、第2実施形態では、周波数f1及び周波数f2の複数のオフセット周波数が用いられていたが、オフセット周波数は、何れか一方でも構わない。
【0087】
第2実施形態では、受信レベル測定部113は、RSCPを測定したが、必ずしもRSCPでなくてもよく、当該高周波信号の受信レベルを示す値あれば、他の値を用いても構わない。
【0088】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0089】
10…移動端末、11…本体部、12…液晶表示部、13…アンテナ、100,100A…無線通信部、101…デュープレクサ、103…マッチング回路、105…サーキュレータ、105〜105…端子、107…高周波増幅回路、109…検波器、111…マッチング回路制御部、113…受信レベル測定部、115…アンテナ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナを備える移動端末であって、
前記アンテナの共振周波数を基準とした基準周波数、及び前記基準周波数から所定周波数離れたオフセット周波数における前記高周波信号の受信レベルを測定する測定部と、
前記測定部によって測定された前記オフセット周波数における前記受信レベルが、前記基準周波数における前記受信レベルよりも高い場合、前記アンテナを制御することによって、前記共振周波数を前記基準周波数の方向にシフトさせるアンテナ制御部と
を備える移動端末。
【請求項2】
前記測定部は、前記オフセット周波数として、前記基準周波数よりも高い高オフセット周波数、及び前記基準周波数よりも低い低オフセット周波数における受信レベルを測定し、
前記アンテナ制御部は、前記高オフセット周波数及び前記低オフセット周波数における前記受信レベルに基づいて、前記共振周波数を前記基準周波数の方向にシフトさせる請求項1に記載の移動端末。
【請求項3】
アンテナを備える移動端末におけるアンテナ制御方法であって、
前記アンテナの共振周波数を基準とした基準周波数、及び前記基準周波数から所定周波数離れたオフセット周波数における前記高周波信号の受信レベルを測定するステップと、
測定された前記オフセット周波数における前記受信レベルが、前記基準周波数における前記受信レベルよりも高い場合、前記アンテナを制御することによって、前記共振周波数を前記基準周波数の方向にシフトさせるステップと
を備えるアンテナ制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−39658(P2012−39658A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237483(P2011−237483)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【分割の表示】特願2007−161687(P2007−161687)の分割
【原出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】