説明

移動農機

【課題】排出オーガの近くで作業している作業者の意に反して、機体側の作業者が排出オーガを操作することを防止するコンバインを提供する。
【解決手段】少なくともオーガ機体側リモコン30aからの指令に基づいて排出オーガ9を操作可能な通常モードと、オーガ先端側リモコン30bからの指令のみによって排出オーガ9を操作する優先モードと、の2つのモードを設け、オーガ先端側リモコン30bの操作に基づいて、制御部50を通常モードから優先モードに切換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばコンバインなどの移動農機に係り、詳しくはグレンタンクから穀粒を排出する排出オーガの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、収穫作業を行う移動農機として、圃場を走行しつつ穀稈を刈取ると共に、この刈り取った穀稈から脱穀した穀粒をグレンタンクに貯留するコンバインが広く知られている。
【0003】
上記グレンタンクに貯留された穀粒は、排出オーガによって畔際に停車されたトラックなどに排出されるが、従来、この排出オーガを運転席側からだけではなく、穀粒が排出されるトラック側からも操作できるように構成されたコンバインが案出されている(特許文献1参照)。
【0004】
具体的には、上記特許文献1記載のコンバインは、排出オーガ7を操作するオーガ操作具を、運転席1と、排出オーガ7の先端部とに設けていると共に、作業者が排出オーガ先端部に設けられたオーガ操作具(第2オーガ操作具)22を操作している間に、他の作業者が運転席側に設けられたオーガ操作具(第1オーガ操作具)18を操作したとしても、この第1オーガ操作具からの指令に基づいて排出オーガ7が作動しないように、これら第1及び第2オーガ操作具18,22からの排出オーガ7への操作が競合した場合には、第2オーガ操作具からの操作を優先するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−050169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
確かに、上記特許文献1記載のコンバインのように、第1及び第2オーガ操作具18,22からの操作が競合した場合、排出オーガ7の先端に設けられた第2オーガ操作具22からの操作を優先させるように構成すると、コンバインから離れた位置で排出オーガ7を操作する作業者と、運転席1側から操作する作業者と、が同時に排出オーガ7を操作しようとしても、第2オーガ操作具22からの操作が優先されるため、運転席側の作業者に比して、排出オーガ7に近い位置で作業している、オーガ先端側の作業者の意に反して排出オーガ7が作動することを防止することができる。
【0007】
しかしながら、穀粒の排出作業中、オーガ先端側の作業者は、常に第2オーガ操作具を操作しながら作業をしているわけではないため、第2オーガ操作具22を操作していない場合には、第1オーガ操作手段18によって、自由に排出オーガ7を操作することができ、依然として運転席側の作業者が、排出オーガ先端側の作業者とコミュニケーションが取れていない状況で、運転席側から排出オーガ7を操作してしまう虞があった。
【0008】
そこで、本発明は、排出オーガの先端側から排出オーガを操作する第2排出オーガ操作手段が操作されると、機体側に設けられた第1排出オーガ操作手段からの操作をキャンセルし、排出オーガを、第2排出オーガ操作手段のみによって操作可能にすることにより、上記課題を解決したコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、走行装置(2)に支持された機体(3)に、穀粒が貯留されるグレンタンク(7)と、該グレンタンク内の穀粒を排出する排出オーガ(9)と、を備え、前記排出オーガ(9)を旋回及び昇降可能に構成した移動農機(1)において、
前記機体側から前記排出オーガ(9)を操作する第1オーガ操作手段(30a)と、
前記排出オーガ(9)の先端側から該排出オーガ(9)を操作する第2オーガ操作手段(30b)と、
少なくとも前記第1オーガ操作手段(30a)からの指令に基づいて前記排出オーガ(9)を操作可能な通常モードと、前記第2オーガ操作手段(30b)が操作されることにより前記通常モードから切換り、前記第1オーガ操作手段(30a)からの指令をキャンセルして、前記第2オーガ操作手段(30b)からの指令のみによって前記排出オーガ(9)を操作する優先モードと、を有する制御部(50)と、を備えた、ことを特徴とする。
【0010】
また、前記制御部(50)は、前記第1オーガ操作手段(30a)からの指令を所定回数キャンセルした場合に、前記優先モードを前記通常モードに切換える、と好適である。
【0011】
更に、前記制御部は、前記排出オーガ(9)の収納位置(C)への収納を検知した場合に、前記優先モードを前記通常モードに切換える、と好適である。
【0012】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであり、これにより特許請求の範囲を何等限定するものでない。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によると、作業者が第2オーガ排出手段によって排出オーガの先端側から排出オーガを操作すると、制御部が優先モードに切換り、この優先モード中は、第2オーガ排出手段によってしか排出オーガを操作できないため、穀粒を排出するトラック側で作業者が作業している間、これらトラック側の作業者の意に反して排出オーガが作動することを防止することができる。
【0014】
請求項2に係る発明によると、第1オーガ操作手段を所定回数操作することによって、制御部を優先モードから、第1オーガ操作手段により排出オーガを操作可能な通常モードに切換えるため、排出オーガの近くで他の作業者が作業している際に、誤って機体側から排出オーガを操作してしまうことを防止することができる。また、作業者は、第2オーガ操作手段で特殊な操作をせずとも、機体側から第1オーガ操作手段によって制御部を、上記通常モードに切換えることができるため、穀粒の排出作業が終わると、第1オーガ操作手段によって、排出オーガを収納位置に戻して、そのまま、収穫作業に復帰でき、作業効率を向上させることができる。
【0015】
請求項3に係る発明によると、排出オーガの収納位置への収納を検知すると、自動的に制御部を通常モードへと切換えるため、次に穀粒の排出作業を行う際には、作業者は、機体側から第1オーガ操作手段によって、常に排出オーガを操作できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るコンバインの斜視図。
【図2】本発明の実施形態に係るコンバインの側面図。
【図3】本発明の実施形態に係る排出オーガの排出口を示す模式図。
【図4】本発明の実施形態に係るコンバインの運転操作部を示す模式図。
【図5】本発明の実施形態に係る排出オーガの先端部を示す模式図。
【図6】本発明の実施形態に係る排出オーガの操作リモコンを示す模式図。
【図7】本発明の実施形態に係るコンバインの制御部を示すブロック図。
【図8】本発明の実施形態に係るコンバインの穀粒の排出作業を示す模式図。
【図9】本発明の実施形態に係る排出オーガの操作リモコンの優先制御を示すフローチャート図。
【図10】本発明の実施形態に係る排出オーガの操作リモコンの変形例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に沿って、本発明の実施形態に係る移動農機としてのコンバインについて説明をする。なお、以下の説明中において、その方向は作業者が運転座席に着座した状態を基準とする。
【0018】
[コンバインの全体構成]
図1及び図2に示すように、コンバイン1は、左右一対のクローラ走行装置2によって支持された機体3を有しており、該機体3の前方には、穀稈を刈取り取ると共に、刈取った穀稈を機体後方へと搬送してフィードチェン(不図示)に受け渡す前処理部5が昇降自在に設けられている。また、前処理部5の後方側には、フィードチェンによって搬送された穀稈を脱穀する脱穀部(不図示)、排稈を処理するための後処理部(不図示)が設けられていると共に、該脱穀部の下方には、脱穀部の受網から漏下した被選別物(脱穀された穀粒と夾雑物との混合物)を選別する選別部(不図示)が設けられている。
【0019】
一方、前処理部5の側方には、作業者が着座して運転操作を行う運転操作部6が設けられていると共に、この運転操作部6の後方側かつ脱穀部の側方には、上記選別部によって選別された穀粒を貯留するグレンタンク7が配設されている。
【0020】
グレンタンク内に貯留された穀粒は、排出オーガ9によって機体外に排出されるように構成されており、この排出オーガ9は、下方に行くほど幅狭に形成された漏斗状のグレンタンク7の底部で、機体前後方向に延設された横ラセン10と、グレンタンク7の後方側で上下に延設されると共に、横ラセン10によって搬送された穀粒が受け渡される縦ラセン11と、該縦ラセン11の上端部で穀粒が受け渡され、水平方向に排出口9aへと穀粒を搬送する排出ラセン12と、これら縦ラセン11及び排出ラセン12を収納するオーガ筒13,15と、を有して構成されている。
【0021】
上記横ラセン10、縦ラセン11及び排出ラセン12は、それぞれラセン軸10a,11a,12aの周囲にラセン羽根10b,11b,12bが巻着されて構成されていると共に、これら横ラセン軸10a、縦ラセン軸11a及び排出ラセン軸12aの端部には、それぞれベベルギヤが互いに噛合する形で設けられている。
【0022】
また、縦ラセン軸11aの下端部には、排出オーガ9を駆動させるための穀粒排出モータ16が取付けられており、この排出駆動モータ16から上記縦ラセン11に入力された回転が、ベベルギヤを介して、各ラセン軸10a,11a,12aに伝達されることによって排出オーガ9は、駆動するように構成されている。
【0023】
更に、上記排出オーガ9は、縦ラセン11を収納する縦オーガ筒13を旋回させるオーガ旋回モータ17と、上記排出ラセン12及び排出ラセン12を収納する排出オーガ筒15を昇降させるオーガ昇降シリンダと、を有している。そして、上記オーガ旋回モータ17によって縦オーガ筒13を縦ラセン軸回りに回動させることによって、縦オーガ筒13の上端部に設けられた排出ラセン12及び排出オーガ筒15を旋回させ、排出オーガ筒15の先端部に設けられた排出口9aの水平方向位置が、調節可能に構成されていると共に、オーガ昇降シリンダ19によって排出ラセン12及び排出オーガ筒15を昇降させることによって、排出口9aの高さ位置が調節可能に構成されている。即ち、排出オーガ9は、旋回及び昇降可能に構成され、排出口9aの位置調節が可能となっている。
【0024】
ところで、上記排出オーガ9の排出口9aは、図3に詳しく示すように、排出オーガ筒15の先端部の下方部分が開口すると共に、この開口部の前後左右の4面の側板で囲まれて形成されている。
【0025】
また、上記排出口9aには、排出口9aを開閉する排出口開閉装置20が設けられており、この排出口開閉装置20は、排出口内に設けられた矩形状のプレートからなるフラップ21と、フラップ21の回動軸に取り付けられたセクタギヤ22と、このセクタギヤ22を介してフラップ21を開閉させる電動モータ23と、フラップ21の位置を検出するフラップ開度ポテンショメータ25と、から構成されている。
【0026】
そして、排出オーガ9は、上記フラップ21が、穀粒の非排出時には排出口9aを閉じる閉位置になって排出口9aからの穀粒の漏れを防止すると共に、穀粒排出時には、フラップ21の回動位置を調節して穀粒の排出位置を微調節可能になっている。
【0027】
[オーガリモコンの構成]
ついで、上記排出オーガ9を操作するオーガリモコン30について説明をする。図4に示すように、上述した運転操作部6は、その中央にキャビン31に覆われた運転座席32を有しており、該運転座席32の前方には、機体3の左右旋回及び前処理部5の昇降を操作するマルチステアリングレバー33、機体3の変速操作を行う主変速レバー35、作業目的や刈取り条件に応じて、低速位置(車輌積降し・倒伏)、中速位置(標準)、高速位置(走行)及び中立位置に切換えられる副変速レバー36などが設けられている。
【0028】
また、運転座席32の側方には、上記排出オーガ9を操作するオーガリモコン30(オーガ機体側リモコン30a、第1オーガ操作手段)が設けられている。
【0029】
このオーガリモコン30は、機体側に設けられた上記オーガ機体側リモコン30aだけではなく、図5に示すように、排出オーガ9の先端部9Fにも設けられており(オーガ先端側リモコン30b、第2オーガ操作手段)、それぞれ、有線式となって、コード37の範囲内でオーガリモコン30をホルダ38から取り外して操作できるようになっている。
【0030】
具体的には、上記オーガリモコン30は、図6に示すように、正面視長方形状をしており、その操作面の中央部には、オーガ昇降シリンダ19を制御して排出オーガ9を昇降させる昇降スイッチ40u,40dと、オーガ旋回モータ17を制御して排出オーガ9を左右に旋回させる旋回スイッチ41L,41Rと、が十字状に配設されている(以下、十字スイッチ42という)。
【0031】
また、上記十字スイッチ42の中央部には、排出オーガ9を設定された位置まで自動的に旋回させる自動旋回スイッチ43が設けられていると共に、十字スイッチ42の上方側には、自動旋回スイッチ43が押された際に、排出オーガ9を機体の右側方、左側方、後方のどの位置に旋回させるかを設定する選択スイッチ45が設けられている。
【0032】
更に、この選択スイッチ45の側方には、穀粒排出モータ16を駆動させて穀粒の排出を開始させる穀粒排出スイッチ46が設けられており、十字スイッチ42の下方側には、穀粒の排出口9aに設けられたフラップ21の開閉を操作するフラップ調整スイッチ47o,47cが設けられている。
【0033】
なお、上記自動旋回スイッチ43は、排出オーガ9を非排出作業時に収納される収納位置(図1及び図2の位置C)へと旋回させる収納スイッチとしても兼用されており、排出オーガ9が収納位置以外の位置にある際に、自動旋回スイッチ43が操作されると、排出オーガ9は、収納位置Cへと自動的に旋回するようになっている。
【0034】
また、オーガリモコン30は、上記自動旋回時に選択可能な各位置に対応し、選択スイッチ45によって選択された自動旋回位置を知らせる3つのLEDランプ51L,51B,51Rや、穀粒の排出/非排出を知らせるLEDランプ52など、排出オーガ9の状況を知らせる複数のLEDランプが設けられている。
【0035】
[制御部の構成]
ついで、上記排出オーガ9を制御する制御部50の構成について説明をする。図7に示すように、制御部50の入力側には、上記排出オーガ9の最上昇位置を検知するオーガ上限スイッチ58、排出オーガ9(縦オーガ筒13)の旋回位置を検知するオーガ旋回モータポテンショメータ59及び排出口開閉装置20のフラップ21の開度を検知するフラップ開度ポテンショメータ25などが接続されており、その出力側には、油圧式の上記穀粒排出モータ16及びオーガ昇降シリンダ19のそれぞれの出力を制御する穀粒排出モータ油圧バルブ53及びオーガ昇降シリンダ油圧バルブ55、オーガ旋回モータ56、フラップ駆動モータ57などが接続されている。
【0036】
また、制御部50は、上述したオーガ機体側リモコン30a及びオーガ先端側リモコン30bと双方向に通信可能に接続していると共に、これらオーガ機体側リモコン30a及びオーガ先端側リモコン30bからの指令に基づいて、上記排出オーガ9を駆動させるオーガ駆動手段60と、オーガ機体側リモコン30a及びオーガ先端側リモコン30bの両方から排出オーガ9を操作可能な通常モードと、オーガ機体側リモコン30aからの指令をキャンセルして、オーガ先端側リモコン30bからの指令のみによって排出オーガ9を操作可能にする優先モードと、に制御部50を切換えるモード切換手段61と、優先モード時にオーガ機体側リモコン30aからの指令をキャンセルするキャンセル手段62と、キャンセル手段62がオーガ機体側リモコン30aからの指令をキャンセルする際に、排出オーガ9の駆動を停止させる停止手段64と、現在のモード設定などを記憶する記憶手段63と、を有している。
【0037】
ついで、本実施形態に係るコンバイン1の作用について、図8及び図9に基づいて説明をする。収穫作業によってグレンタンク7が穀粒によって一杯になると、作業者Aは、コンバイン1を畔際に止めてあるトラックに近接して停車させ、オーガ機体側リモコン30aの自動旋回スイッチ43を操作して排出オーガ9の排出口9aの大まかな位置を操作する。
【0038】
そして、排出オーガ9が選択スイッチ45によって選択された作業位置Dまで旋回すると、畔際にいる(排出オーガ9の先端側にいる)補助者Bは排出オーガ9の先端側に設けられているオーガ先端側リモコン30bを取り、十字スイッチ42によって排出口9aの位置を最終的に調整する。
【0039】
この時、オーガ先端側リモコン30bからの制御信号が制御部50に出力されると、制御部50は、モード切換手段61によって通常モードから優先モードに切換えられる。また、制御部50は、通常モード時、全てが消灯された状態にあったオーガ先端側リモコン30bのLEDランプ51L,51R,51B,52を、オーガ機体側リモコン30aと同じ点灯状態とし、排出オーガ9を操作する優先権がオーガ先端側リモコン30bにあることを補助者Bに知らせる(S1,S2,S4)。
【0040】
上記補助者Bは、排出口9aの位置が決まると、穀粒排出スイッチ46をONにして排出オーガ9を駆動させる。なお、この時、穀粒の排出位置を更に調整したい場合、作業者Bは、フラップ調整スイッチ47o,47cによって、全開位置にあるフラップ21を開閉して、穀粒の排出位置を最適な位置に調節して排出作業を継続する。
【0041】
ところで、補助者Bが排出オーガ9近くで排出作業をしている際に(優先モードの際に)、機体側の作業者Aがオーガ機体側リモコン30aを操作して、このオーガ機体側リモコン30aからの電気指令が制御部50に入力されると、キャンセル手段62によって、このオーガ機体側リモコン30aからの指令はキャンセルされると共に、停止手段64によって排出オーガ9の全ての動作が停止される(S1,S5,S8)。
【0042】
また、停止手段64によって排出オーガ9の動作が停止されると同時に、モード切換え手段61によって、制御部50の穀粒排出モードが、上記優先モードから通常モードに切換えられ、オーガ先端側リモコン30bのLEDランプ51L,51R,51B,52が消灯し、オーガ機体側リモコン30aによって排出オーガ9が操作可能になったことを補助者Bに知らせる(S9,S3)。
【0043】
一方、穀粒の排出作業が終了し、補助者Bから排出作業が完了したことを知らされた場合には、作業者Aは、上述した優先モード時にオーガ機体側リモコン30aを操作した場合と同様に、オーガ機体側リモコン30aを操作して、排出オーガ9の駆動を停止させ、優先モードから通常モードに切換える。そして、オーガ機体側リモコン30aの自動旋回スイッチ43を操作して排出オーガ9を収納位置に収納し、収穫作業へと復帰する。
【0044】
なお、上記排出オーガ9は、オーガ先端側リモコン30bを排出オーガ9の先端側に戻し、補助者Bがオーガ先端側リモコン30bの自動旋回スイッチ43を操作することによって収納位置Cに収納してもよい。
【0045】
また、制御部50は、排出オーガ9の非排出作業時に収納される収納位置Cへの収納を検知すると、強制的にモード切換手段61によって、穀粒排出モードを通常モードへと切り換えられ、次回の穀粒排出作業時には、オーガ機体側リモコン30aによって、排出オーガ9を操作できるようになっている。
【0046】
上述したように、機体3側の運転操作部6と、排出オーガ9の先端部9Fとに排出オーガ9を操作するオーガ操作リモコン30をそれぞれ設けたコンバインにおいて、排出オーガ9に近い位置で作業をする作業者(補助者)Bが操作を行うオーガ先端側リモコン30bが操作されると、機体側に設けられたオーガ機体側リモコン30aからの操作をキャンセルし、オーガ先端側リモコン30bからしか排出オーガ9を操作できないようにしたことによって、排出オーガ9に近い位置で作業する作業者Bの意に反して、機体側の作業者Aが排出オーガ9を作動させることを防止することができる。
【0047】
また、上記オーガ先端側リモコン30bにのみによって排出オーガ9を操作可能な優先モードの際に、上記オーガ機体側リモコン30aが操作されると、排出オーガ9の駆動を停止させるため、機体側、オーガ先端側の作業者の両者に、機体側の作業者Aが排出オーガを操作したことを注意喚起することができる。
【0048】
更に、優先モード時に、オーガ機体側リモコン30aからの指令を所定回数(本実施形態では1回)キャンセルすることで、優先モードから通常モードへと切り換えるように制御部50を構成したことによって、機体側の作業者は、排出作業が終了すると、オーガ先端側リモコン30bの操作を必要とせず、オーガ機体側リモコン30aを所定回数操作するだけの簡単な操作で、このオーガ機体側リモコン30aの機能を復帰させることができる。そして、排出オーガ9を操作できるようになったオーガ機体側リモコン30aによって排出オーガ9を収納位置Cに格納し、そのまま収穫作業に復帰することができるため、収穫作業及び排出作業の作業効率を向上させることができる。
【0049】
また、排出オーガ9の収納位置Cへの収納を検知すると、制御部50のオーガ排出モードが強制的に通常モードとなるため、制御部50の排出モードを通常モードへと戻し忘れることを防止することができる。そのため、次の排出作業を開始する際には、常に排出オーガ9をオーガ機体側リモコン30aによって操作することができる。
【0050】
なお、排出オーガ9の収納位置Cへの収納の検知は、自動旋回スイッチ43の操作を検知することや、排出オーガ9の収納位置Cを検出する位置センサを設け、この位置センサからの出力信号などの方法によって検知される。
【0051】
更に、非優先モード時には、オーガ先端側リモコン30bの全てのLEDランプを消灯することによって、排出オーガ9の制御状態を、排出オーガ9の先端側の作業者Bに視覚的に容易に把握させることができる。
[他の実施形態]
【0052】
ついで、本発明の他の実施形態について説明をする。なお、この他の実施形態は、主に排出オーガ9を操作するオーガリモコン30に、そのオーガリモコンが他のオーガリモコンに対して優先的に排出オーガ9を操作できるかどうかを示すランプ(以下、優先ランプという)44を設けている点で相違しており、以下、上述した実施形態との相違点のみを説明する。また、同一構成及び作用の部材については、同一の名称及び参照符号を用いる。
【0053】
図10に示すように、オーガリモコン30の下部には、そのオーガリモコンが他のオーガリモコンに対して優先的に排出オーガ9を操作できるかどうかを示すランプ(以下、優先ランプという)44が設けられている。
【0054】
この優先ランプ44は、制御部50の穀粒排出モードが通常モードの場合には、制御部50によって、オーガ機体側リモコン30aの優先ランプ44が点灯されると共に、オーガ先端側リモコン30bの優先ランプ44が消灯される。
【0055】
また、優先モードの場合には、オーガ機体側リモコン30aの優先ランプ44が消灯されると共に、オーガ先端側リモコン30bの優先ランプ44が点灯される。
【0056】
そのため、機体側の作業者Aと、排出オーガ9の先端側の作業者Bとの両方に、この優先ランプによって、どちらのオーガリモコン30に排出オーガ9の操作の優先権があるかを、視覚的に容易に把握させることができる。
【0057】
また、制御部50は、穀粒排出モードが、優先モードから通常モードに移行した場合には、選択スイッチ45によって選択された排出オーガ9の自動旋回位置を、予め設定された初期の設定位置(例えば後方位置)にキャンセルする。
【0058】
即ち、機体側の作業者Aが不意にオーガ機体側リモコン30bを操作した場合以外、大抵の場合、優先モードから通常モードに切換ることは排出作業の終了を意味する。そして、この排出作業の終了の可能性の高い、通常作業へと移行する段階において、自動旋回位置を所定の設定位置にリセットすることで、次回の排出作業開始時において、作業者が選択スイッチ45を操作しなければ、常に一定の位置に旋回させることができる。
【0059】
なお、上述した実施形態では、オーガ機体側リモコン30a及びオーガ先端側リモコン30bを有線式のリモコンによって構成したが、例えば、オーガ機体側リモコン30aを、運転操作部6に設けたスイッチ群によって構成しても良いと共に、オーガ先端側リモコン30bを無線式のリモコンによって構成しても良い。即ち、排出オーガ9の先端側から排出オーガ9を操作するオーガ先端側リモコン30は、必ずしも、排出オーガ9の先端部9Fに取り付けられていなくても良い。
【0060】
更に、上記オーガ機体側リモコン30aは、必ずしも運転操作部6に設けられていなくても良く、例えば、縦オーガ筒13の近傍に設けても良い。
【0061】
また、これらオーガ機体側リモコン30a及びオーガ先端側リモコン30bは、それぞれ複数の操作手段によって構成されても良い。
【0062】
更に、本実施形態では、優先モード中に1度、オーガ機体側リモコン30aを操作すれば、通常モードへと移行するように構成されているが、この回数は、任意の数に設定されてよい。即ち、制御部50は、オーガ機体側リモコン30aからの指令を、所定回数キャンセルした場合に、優先モードを通常モードに切換えればよい。なお、設定回数を複数回とする場合には、タイマを設け、所定時間内にオーガ機体側リモコン30aを所定回数操作しなければ通常モードへと移行できないように構成することが望ましい。
【0063】
また、本実施形態では、優先モード中にオーガ機体側リモコン30aからの操作がキャンセルされると、排出オーガ9の作動を停止させているが、排出オーガ9の作動を停止させる代わりに、警報などの手段によって作業者に注意喚起しても良い。
【0064】
更に、上記通常モードでは、オーガ機体側リモコン30aと、オーガ先端側リモコン30bとの両方によって、排出オーガ9を操作できるように構成したが、少なくともオーガ機体側リモコン30aによって排出オーガ9を操作できれば良い。
【0065】
また、オーガリモコン30に排出オーガ9を収納位置Cに旋回させる収納スイッチを設けても良い。この場合、当然に収納スイッチの入切によって、排出オーガ9の収納を検知しても良い。
【0066】
更に、上述した実施形態では、自脱型のコンバインを例として説明したが、汎用コンバイン、ハーベスタなどの移動農機に本発明を適用しても当然に良い。
【0067】
また、上述した実施形態において説明された本発明は、どのように組み合わされても良い。
【符号の説明】
【0068】
1 移動農機(コンバイン)
2 走行装置
3 機体
7 グレンタンク
9 排出オーガ
30a 第1オーガ操作手段(オーガ機体側リモコン)
30b 第2オーガ操作手段(オーガ先端側リモコン)
50 制御部
C 収納位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置に支持された機体に、穀粒が貯留されるグレンタンクと、該グレンタンク内の穀粒を排出する排出オーガと、を備え、前記排出オーガを旋回及び昇降可能に構成した移動農機において、
前記機体側から前記排出オーガを操作する第1オーガ操作手段と、
前記排出オーガの先端側から該排出オーガを操作する第2オーガ操作手段と、
少なくとも前記第1オーガ操作手段からの指令に基づいて前記排出オーガを操作可能な通常モードと、前記第2オーガ操作手段が操作されることにより前記通常モードから切換り、前記第1オーガ操作手段からの指令をキャンセルして、前記第2オーガ操作手段からの指令のみによって前記排出オーガを操作する優先モードと、を有する制御部と、を備えた、
ことを特徴とする移動農機。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1オーガ操作手段からの指令を所定回数キャンセルした場合に、前記優先モードを前記通常モードに切換える、
請求項1記載の移動農機。
【請求項3】
前記制御部は、前記排出オーガの収納位置への収納を検知した場合に、前記優先モードを前記通常モードに切換える、
請求項1又は2記載の移動農機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−143189(P2012−143189A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3926(P2011−3926)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】