説明

移動通信システム、マルチキャストデータ配信方法、コアネットワークノード、アクセスネットワークノード、および端末

【課題】 コアネットワークで管理するマルチキャストデータ通信に用いる識別情報のデータ量を削減する。
【解決手段】
端末は、MBMSサービスへ参加するための参加処理を行う。コアネットワークは、MBMSサービスに割り当てられたTEIDをアクセスネットワークに送信する。アクセスネットワークはTEIDを受信し、マルチキャストデータを端末に送信する。端末は、マルチキャストデータを受信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の端末へデータのマルチキャストが可能な移動通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、3GPPでは、3GPP−LTE(Long Term Evolution)として次世代移動体通信システムの検討がなされている。3GPP−LTEでは、CN(Core Network)とUTRAN(UMTS Terrestrial Radio Access Network)の間がIPネットワークで接続される。データ転送ではCNとUTRANの間にトンネルが設定される。IPネットワーク上のユーザデータはトンネルの識別情報によって識別される。これにより例えばCNからのデータを適切な端末(UE)に転送することが可能となる。
【0003】
トンネルの識別情報には、通常、TEID(Tunnel Endpoint Identifier)が用いられる。TEIDはトンネルの設定の際に割り当てられる。TEIDの割り当てはCNおよびUTRANでそれぞれ行なわれ、それらのTEIDがRAB(Radio Access Bearer)の設定時にCNとUTRANの間で相互に交換される。下りリンクのデータ転送に用いられるTEIDはUTRANが設定してCNに通知し、上りリンクのデータ転送に用いられるTEIDはCNが設定してUTRARNに通知する。
【0004】
実際のデータの転送にはGTP(GPRS Tunnel Protocol)が用いられる。実際のデータを転送するパケット(データパケット)にはGTPのU−Plane(User Plane)であるGTP−Uのヘッダが付与される。図1は、GTP−Uのヘッダの構成例を示す図である。図1を参照すると、GTP−Uのヘッダに4オクテットのTEIDが設定されている。
【0005】
送信側装置はTEIDをGTP−Uのヘッダに設定したデータパケットを送出する。受信側装置は、受信したデータパケットのTEIDによってユーザデータを識別する。例えば、下りデータであれば、CNは、GTP−UのヘッダにTEIDを設定したデータパケットを送信する。UTRANは、受信したデータパケットのGTP−Uのヘッダに設定されたTEIDを参照してユーザ(UE)を識別し、そのUEに対応する無線チャネルへデータをマッピングする。
【0006】
3GPP−LTEでは、複数のUEに同じデータをマルチキャストするMBMS(Multimedia Broadcast/Multicast Service)が行なわれる(「特開2004−135260号公報」、「3GPP TS25.413 V7.4.0 (2006−12), 'UTRAN Iu interface RANAP signalling (Release 7)'」、「3GPP TS25.414 V7.1.0 (2006−09), 'UTRAN Iu interface data transport & transport signaling (Release 7)'」参照)。MBMSでは、通常のデータ通信と異なり、下りリンクでのみデータが転送される。上述したように下りリンクのTEIDはUTRANが設定してCNに通知するので、MBMSではTEIDの設定はUTRANでのみ行なわれ、CNでは行なわれない。CNは、通知されたTEIDを用いてデータを送信するだけである。
【発明の概要】
【0007】
図2は、移動通信システムの構成を示すブロック図である。図2を参照すると、CNのノード(CN Node)は、複数の制御装置(RNC:Radio Network Controller)と接続している。そして、各RNCは複数のNodeBをそれぞれに収容している。RNCとNodeBによって、UTRANのような無線アクセスネットワーク(RAN:Radio Access Network)が構成されている。
【0008】
MBMSのサービス展開においては全エリアの基地局でサービスを提供できるようするのが好ましい。例えば、Mobile TVのサービスは全国で均一に展開されることが好ましい。その場合、CNから全てのエリアのNodeBに対してMBMSのデータをマルチキャストできることが要求される。
【0009】
上述したように、下りリンクのTEIDはRANからCNに指定される。各RANは相互に連携することなく独自にTEIDを設定するので、各RANによって設定されるTEIDは互いに異なる値である。それ故、CNには、1つのMBMSに対して複数のTEIDを管理し、それらのTEIDを用いてデータをマルチキャストするという複雑な処理が要求される。また、1つのMBMSに対して複数のTEIDを管理するので、MBMSのために必要とされるメモリ容量が大きくなる。図2の例では、CNは1つのMBMSに対して複数のRNCから通知されたTEIDを管理する必要がある。
【0010】
また、3GPP−LTEでは複数のNodeBを束ねて収容する制御装置がUTRANに存在しないのでCNはIPネットワークを介してNodeBと直接対向する。図3は、3GPP−LTEの移動通信システムの構成を示すブロック図である。図3を参照すると、3GPP−LTEではCNがNodeBと直接対向している。
【0011】
図4は、3GPP−LTEのCNにおけるTEIDの管理状態を示す図である。図4に示すように、CNは、各NodeBで設定されたTEIDをNodeB IDと対応付けて管理している。そして、CNは、NodeBに対応するTEIDを検索して取得し、データの転送に用いる。このような3GPP−LTEの構成では、CNで管理すべきTEIDの数は、UTRAN内で複数のNodeBを束ねる制御装置が下りリンクのTEIDを設定する図2の構成と比べて更に多くなる。
【0012】
この場合、CNがTEIDを保持するために確保しなければならないメモリ量は(1つのTEIDの長さ)×(NodeB数)である。例えばTEIDの長さが4バイトであり、NodeB数が1万個であるとすると、CNはMBMSの1つのサービスに対して40Kバイトのメモリを確保しておく必要がある。更に、同時に提供できるサービスの数を10とすると、CNは、TEIDを管理するために400Kバイトのメモリを確保しておく必要がある。
【0013】
本発明の目的は、コアネットワークで管理するマルチキャストデータ通信に用いる識別情報のデータ量を削減した移動通信システムを提供することである。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の一態様による移動通信システムは、コアネットワークと、アクセスネットワークと、端末とを有し、マルチキャストデータを配信するMBMSサービスを提供する移動通信システムであって、
前記端末は、前記MBMSサービスへ参加するための参加処理を行い、
前記コアネットワークは、前記MBMSサービスに割り当てられたTEIDを前記アクセスネットワークに送信し、
前記アクセスネットワークは前記TEIDを受信し、前記マルチキャストデータを前記端末に送信し、
前記端末は、前記マルチキャストデータを受信する。
【0015】
本発明の一態様によるコアネットワークは、アクセスネットワークと端末とを有し、MBMSサービスを提供する移動通信システムに含まれるコアネットワークであって、
前記MBMSサービスに割り当てられたTEIDをアクセスネットワークに送信する手段を有する。
【0016】
本発明の一態様によるアクセスネットワークは、端末とコアネットワークとを有し、マルチキャストデータを配信するMBMSサービスを提供する移動通信システムに含まれるアクセスネットワークであって、
前記MBMSサービスに割り当てられたTEIDを、前記コアネットワークノードから受信する手段と、
前記マルチキャストデータを前記端末に送信する手段と、を有する。
【0017】
本発明の一態様による端末は、コアネットワークと、アクセスネットワークとを有し、マルチキャストデータを配信するMBMSサービスを提供する移動通信システムにおける端末であって、
前記MBMSサービスへ参加する処理を行う手段と、
前記MBMSサービスに割り当てられたTEIDを前記コアネットワークから受信する前記アクセスネットワークから、前記マルチキャストデータを受信する手段と、を有する。
【0018】
本発明の一態様による移動通信システムのマルチキャストデータ配信方法は、コアネットワークと、アクセスネットワークと、端末とを有し、マルチキャストデータを配信するMBMSサービスを提供する移動通信システムのマルチキャストデータ配信方法であって、
前記MBMSサービスに割り当てられたTEIDを前記コアネットワークから送信し、
前記マルチキャストデータを前記端末に送信する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】GTP−Uのヘッダの構成例を示す図である。
【図2】移動通信システムの構成を示すブロック図である。
【図3】3GPP−LTEの移動通信システムの構成を示すブロック図である。
【図4】3GPP−LTEのCNにおけるTEIDの管理状態を示す図である。
【図5】第1の実施形態による移動通信システムの構成を示すブロック図である。
【図6】第1の実施形態のコアネットワークノードの構成を示すブロック図である。
【図7】第1の実施形態の基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図8】第1の実施形態の端末の構成を示すブロック図である。
【図9】第1の実施形態の移動通信システムによるMBMSデータ通信の動作を示すシーケンス図である。
【図10】セッション開始メッセージの構成例を示す図である。
【図11】GTP−Uのヘッダの構成例を示す図である。
【図12】第2の実施形態の移動通信システムによるMBMSデータ通信の動作を示すシーケンス図である。
【図13】第3の実施形態の移動通信システムによるMBMSデータ通信の動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
(第1の実施形態)
図5は、第1の実施形態による移動通信システムの構成を示すブロック図である。ここでは3GPP−LTE移動通信システムの例が示されている。図5を参照すると、移動通信システムは、コアネットワークノード(CN Node)11、基地局装置(eNodeB)12、および端末(UE)13を有している。コアネットワークノード11と基地局装置12とはIPネットワーク14を介して接続されている。
【0022】
コアネットワークノード11は、コアネットワークを構成する装置であり、端末13のMBMSへの参加(join)を処理した後、各基地局装置12とのセッション確立においてトンネルを設定し、そのトンネルによってMBMSのデータを配信する。なお、コアネットワークは他にASGW(Access Gateway)、Access Anchor、EPC(Evolved Packet Core)などと言われることもある。
【0023】
基地局装置12は、アクセスネットワークであるUTRANを構成する基地局装置(eNodeB)であり、コアネットワークノード11とのセッション確立においてトンネルを設定するとともに、端末13との無線チャネルを設定する。その後、基地局装置12は、コアネットワークノード11から配信されたデータを受信し、無線チャネルにマッピングして端末13へ配信する。
【0024】
端末13は、コアネットワークノード11との間でMBMSへの参加の処理を行った後、コアネットワークノード11から基地局装置12を介して配信されたデータを受信する。
【0025】
MBMSデータのパケットはコアネットワークノード11から基地局装置12への下りリンクでのみ転送されるので、コアネットワークノード11と基地局装置12は下りのトンネルだけを設定する。本実施形態のトンネル設定においては、コアネットワークノード11が、トンネルを識別するためのトンネル識別子(トンネルID)を設定して基地局装置12に通知する。コアネットワークノード11は、1つのMBMSのサービスに対して1つのトンネルIDを決めて各基地局装置12へ通知する。トンネルIDはコアネットワークノード11が決めるのでコアネットワークノード11毎には異なるが、同じコアネットワーク11に接続する全ての基地局装置12で共通である。
【0026】
そしてデータ配信時には、コアネットワークノード11は、トンネルIDを付与したMBMSデータのパケットをIPネットワーク14に送信する。基地局装置12は、IPネットワーク14から受信したパケットから、コアネットワークノード11から通知されたトンネルIDを用いてMBMSデータのパケットを識別する。
【0027】
図6は、第1の実施形態のコアネットワークノードの構成を示すブロック図である。図6を参照すると、コアネットワークノード11は、参加処理部21、セッション制御部22、記憶部23、およびデータ配信部24を有している。
【0028】
参加処理部21は、端末13のMBMSへの参加(join)の処理を行う。参加の処理において、参加処理部21はMBMSのサービスを識別するためのサービス識別子(サービスID)を端末13に通知する。
【0029】
セッション制御部22は、基地局装置12との間でMBMSのセッション確立の処理を行う。このセッション確立の処理において、セッション制御部22は、各基地局装置12に共通のトンネルIDを設定して記憶部23に格納するとともに各基地局装置12に通知する。
【0030】
記憶部23は、セッション制御部22によって設定された各MBMSのトンネルIDを記憶する。
【0031】
データ配信部24は、MBMSデータのパケットを生成し、そのパケットに、記憶部23に記憶されているMBMSのトンネルIDを付与してIPネットワーク14に送信する。
【0032】
図7は、第1の実施形態の基地局装置の構成を示すブロック図である。図7を参照すると、基地局装置12は、マッピング制御部31、記憶部32、およびデータ処理部33を有している。
【0033】
マッピング制御部31は、コアネットワークノード11との間でMBMSのセッション確立の処理を行うとともに、無線チャネルの割り当て処理を行う。セッション確立処理において、コアネットワークノード11との間のトンネルのトンネルIDはコアネットワークノード11から通知される。また、マッピング制御部31は、無線チャネルの割り当て処理において、MBMSに割り当てた無線チャネルの情報を端末13に通知する。
【0034】
また、マッピング制御部31は、MBMSセッションの確立処理で通知されたトンネルIDと、無線チャネルの割り当て処理で割り当てた無線チャネルとのマッピング情報を記憶部32に格納する。
【0035】
記憶部32は、マッピング制御部31によって設定されたマッピング情報を記憶する。
【0036】
データ処理部33は、IPネットワーク14から受信したパケットのトンネルIDを参照してMBMSのデータパケットを識別し、記憶部32に記憶されているマッピング情報を参照して対応する無線チャネルを判定する。そして、データ処理部33は、MBMSデータを無線チャネルにマッピングして端末13に送信する。
【0037】
図8は、第1の実施形態の端末の構成を示すブロック図である。図8を参照すると、端末13は参加処理部41およびデータ受信部42を有している。
【0038】
参加処理部41は、コアネットワークノード11との間でMBMSへの参加(join)の処理を行う。参加処理部41は、コアネットワークノード11から通知された、MBMSのサービスを識別するためのサービスIDを取得する。
【0039】
データ受信部42は、基地局装置12によってMBMSに割り当てられた無線チャネルの情報の通知を受け、その後にその無線チャネルで基地局装置12から送信されたMBMSデータを受信する。
【0040】
図9は、第1の実施形態の移動通信システムによるMBMSデータ通信の動作を示すシーケンス図である。ここでは、コアネットワークノード11と基地局装置12の間のS1インタフェース上の制御プロトコルをeRANAP(Radio Access Network Application Part)と呼ぶことにする。eRANAPはコネクション型での制御メッセージを送受信するプロトコルであるとする。
【0041】
図9を参照すると、端末13とコアネットワークノード11とは、端末13のMBMSへの参加の処理を行う(ステップ101)。この処理によって端末13はMBMSに参加することができる。参加によって端末13はMBMSデータを受信できるようになる。
【0042】
次に、コアネットワークノード11は、基地局装置12にeRANAPのMBMSセッション開始(MBMS Session Start)メッセージを送る(ステップ102)。MBMSセッション開始メッセージには、サービスIDであるTMGI(Temporary Mobile Group Identity)、コアネットワークノード11が決めたトンネルIDであるTEID(Tunnel Endpoint Identifier)、およびQoS(Quality of Service)情報が含まれている。TEIDの値はコアネットワークノード11が決めたものである。QoS情報によってMBMSのサービスのビットレートなどが指定される。
【0043】
図10は、セッション開始メッセージの構成例を示す図である。図10のメッセージに含まれている「TMGI」情報要素としてTMGIが入り、「QoS Label」情報要素としてQoSが入り、「Iu Transport Association」情報要素としてTEIDが入る。これらは本例のセッション開始メッセージにおいて必須(Presence=M(Mandatory))の情報要素である。なお図10において、オプションの情報要素はPresence=O(Option)と示されている。
【0044】
MBMSセッション開始メッセージを受信した基地局装置12は、そのメッセージに含まれているTEIDを記憶する(ステップ103)。例えば、TEIDは、MBMSセッション開始メッセージに、S1インタフェース上の転送の関連付けを示す(S1 Transport Association)情報要素として記載されてもよい。その場合、基地局装置12は、MBMSセッション開始メッセージからその情報要素を取得して記憶し、MBMSセッションが継続している間その情報要素を保持する。また、基地局装置12はQoSも記憶する。
【0045】
続いて、基地局装置12は、QoS情報に従って無線チャネルの割り当て処理を行う(ステップ104)。この無線チャネルの割り当て処理によって、基地局装置12は無線チャネルを捕捉し、TEIDと無線チャネルとのマッピング情報を設定する。さらに、基地局装置12は、MBMS無線チャネル指示(MBMS Radio Channel indication)メッセージで無線チャネルを端末13に通知する(ステップ105)。
【0046】
マッピングが設定され、MBMSの無線アクセスベアラの設定が完了すると、基地局装置11は、コアネットワークノード11にMBMSセッション開始応答(MBMS Session Start Response)メッセージを送って設定が完了したことを通知する(ステップ106)。MBMSセッション開始応答メッセージには、基地局装置12が割り当てたIPアドレスが、トランスポートレイヤアドレス(Transport Address)として含まれる。
【0047】
なお、ここでは基地局装置11が無線チャネルを捕捉した後にコアネットワークノード11にMBMSセッション開始応答メッセージを送る(ステップ106)という手順を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。他の例として、基地局装置11は、ステップ102にてMBMSセッション開始メッセージを受信すると、まずコアネットワークノード11にMBMSセッション開始応答メッセージを送り、それから無線チャネルを捕捉するという手順を採ってもよい。
【0048】
MBMSのセッションが確立した後、コアネットワークノード11は、不図示のMBMSサーバからMBMSデータを取得し(ステップ107)、TEIDを付与したMBMSデータを基地局装置12に配信する(ステップ108)。TEIDは、MBMSデータのパケットのGTP−Uのヘッダに記載される。
【0049】
MBMSデータを転送するベアラ(transport bearer for MBMS)は、GTP−Uのヘッダに記載されているTEIDと、IPアドレスとによって識別することができる。IPアドレスは基地局装置12によって割り当てられるが、TEIDはコアネットワークノード11によって割り当てられる。
【0050】
基地局装置12は、MBMSデータを受信し、GTP−Uのヘッダに記載されているTEIDによってマッピング情報を参照してトンネルを識別し、マッピング情報に従ってMBMSデータを端末13への無線チャネルにマッピングする(ステップ109)。これにより基地局装置12から端末13へMBMSデータが無線で送信される。端末13は、無線チャネルからMBMSデータを受信する。
【0051】
以上説明したように、本実施形態によれば、MBMSデータを転送するトンネルのトンネルIDをコアネットワークノード11が1つのサービスに対して1つ決めて各基地局装置12に通知するので、コアネットワークノード11は、マルチキャストのために基地局装置12毎に異なるトンネルIDを管理する必要が無くなり、処理が容易になりメモリ容量が低減される。
【0052】
なお、本実施形態では、コアネットワークノード11と基地局装置12がIPネットワーク14を介して直接対向する3GPP−LTE移動通信システムの例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。他の例として、コアネットワークノードと基地局装置の間に、複数の基地局装置を束ねる制御装置が存在する構成の移動通信システムであってもよい。このようにアクセスネットワークが制御装置と基地局装置を有する場合には、コアネットワークノードは決定したトンネルIDを制御装置に通知することにしてよく、また制御装置を介して基地局装置に通知することにしてもよい。
【0053】
(第2の実施形態)
第1の実施形態ではコアネットワークノードがトンネルIDを決定したが、第2の実施形態では、MBMSのサービスに固有の値をとるサービスIDをトンネルIDとして用いる。これにより第2の実施形態ではコアネットワークノードがトンネルIDを決定する処理が不要となる。
【0054】
ただし、MBMSでない通常のデータを転送するためのトンネルのトンネルIDは従来通りコアネットワークノードと基地局装置がそれぞれに決定して交換する。それ故、サービスIDによって固定的に決まる、MBMSデータを転送するためのトンネルのトンネルIDと、MBMSでないデータを転送するためのトンネルのトンネルIDとの重複を防止するのが好ましい。そこで、本実施形態では、MBMSデータか否かを示す指示情報がパケットに付加される。これによりトンネルIDの重複による処理の不都合が解消される。
【0055】
一例として、トンネルIDの所定の1ビットをMBMSデータか否かの指示情報に用いればよい。具体例として、図1に示したGTP−UのヘッダのTEIDの第1オクテットの第8ビットが"1"であればMBMSデータであり、"0"であればMBMSデータでないと規定すればよい。
【0056】
また、他の例として、トンネルIDの他に、MBMSデータか否かを表示する情報要素を付加すればよい。具体例として、図11に示すようにGTP−UのヘッダのTEIDの前にMBMS指示(MBMS Indicator)の情報要素を付加すればよい。
【0057】
第2の実施形態による移動通信システムは図5に示した第1の実施形態のものと同様の構成である。また、コアネットワークノード11、基地局装置12、および端末13も図6、7、および8に示した第1の実施形態のものと同様の構成である。
【0058】
本実施形態では、第1の実施形態と異なり、コアネットワークノード11は、自身でトンネルIDを決定するのではなく、MBMSのサービスを示すサービスIDをトンネルIDとして用い、基地局装置12に通知する。そして、コアネットワークノード11は、MBMSデータを配信するとき、MBMSデータのパケットにトンネルID(=サービスID)とMBMS指示情報とを付加する。
【0059】
基地局装置12は、コアネットワークノード11から通知されたトンネルIDを保持しておき、配信されたMBMSデータのパケットを、トンネルIDとMBMS指示情報とで識別する。
【0060】
図12は、第2の実施形態の移動通信システムによるMBMSデータ通信の動作を示すシーケンス図である。ここでは主に第2の実施形態が第1の実施形態と異なる部分について説明する。
【0061】
図12を参照すると、本実施形態では、ステップ101に続くステップ102'として、コアネットワークノード11は、基地局装置12にeRANAPのMBMSセッション開始メッセージを送る。このMBMSセッション開始メッセージには、一例として、TMGI、TEID、およびQoS情報が含まれており、TEIDにはTMGIがそのまま用いられている。また、他の例としてMBMSセッション開始メッセージにTEIDのフィールドが無くてもよい。その場合、基地局装置12はTMGIをTEIDとして取得すればよい。
【0062】
MBMSセッション開始メッセージを受信した基地局装置12は、ステップ103において、そのメッセージに含まれている、TEID(=TMGI)、QoS、および他のセッション属性情報を取得し、保持する。例えばQoSは、MBMSセッション開始メッセージに、無線アクセスベアラのパラメータ(RAB Parameter)の情報要素もしくはQoS Lavelの情報要素として含まれる。本実施形態では、TMGIは、MBMSのサービスを個別に識別するTMGI識別子としての意味を持ち、かつトランスポートレイヤの関連付けをするTEIDとしての意味も持つこととなる。
【0063】
また、ステップ106にてMBMSのセッションの確立が完了すると、コアネットワークノード11は、GTP−UのヘッダにTEID(=TMGI)とMBMS指示情報とを付与したMBMSデータのパケットを基地局装置12に配信する(ステップ108')。
【0064】
MBMSデータを転送するベアラ(transport bearer for MBMS)は、GTP−Uのヘッダに記載されているTEIDと、IPアドレスとによって識別することができる。IPアドレスは基地局装置12によって割り当てられるが、TEIDはTMGIと等しい値である。
【0065】
基地局装置12は、MBMS指示情報の付与されたMBMSデータを受信し、GTP−Uのヘッダに記載されているTEIDによってマッピング情報を参照してトンネルを識別し、マッピング情報に従ってMBMSデータを端末13への無線チャネルにマッピングする(ステップ109')。
【0066】
以上説明したように、本実施形態によれば、コアネットワークノード11は、MBMSデータを転送するトンネルのトンネルIDとして、MBMSのサービスを識別するためのサービスIDを各基地局装置12に通知するので、コアネットワークノード11は、マルチキャストのために基地局装置12毎に異なるトンネルIDを管理する必要が無くなり、処理が容易になりメモリ容量が低減される。また、基地局装置12とコアネットワークノード11のどちらもトンネルIDを決定する処理を行う必要が無い。
【0067】
(第3の実施形態)
第1および第2の実施形態では、MBMSデータをコアネットワークノード11からGTP−UのヘッダにTEIDを記載したパケットにより配信したが、第3の実施形態では、コアネットワークノード11からMBMSデータをIPマルチキャストで配信する。
【0068】
そのために、第3の実施形態では、コアネットワークノード11は、セッション確立の際にIPマルチキャストアドレスを基地局装置12に通知する。基地局装置12は、そのIPマルチキャストアドレスで示されるIPマルチキャストグループに参加(join)する。IPマルチキャストグループに参加した基地局装置12にはIPネットワーク14内のIPマルチキャストルータによってMBMSデータのパケットが配信される。
【0069】
第3の実施形態による移動通信システムは図5に示した第1の実施形態のものと同様の構成である。本実施形態では、IPマルチキャストによってMBMSデータを配信するので、IPネットワーク14内にIPマルチキャストルータがある必要がある。また、コアネットワークノード11、基地局装置12、および端末13も図6、7、および8に示した第1の実施形態のものと同様の構成である。
【0070】
本実施形態では、第1の実施形態と異なり、コアネットワークノード11は、MBMSデータの配信に用いるIPマルチキャストアドレスを決定し、基地局装置12に通知する。そして、コアネットワークノード11は、MBMSデータを配信するとき、MBMSデータのパケットにIPマルチアドレスを付加する。IPマルチアドレスの付加されたMBMSデータのパケットは、IPネットワーク14内でIPマルチキャストルータによって、IPマルチキャストグループに参加している各基地局装置12に配信される。
【0071】
基地局装置12は、コアネットワークノード11から通知されたIPマルチキャストアドレスで指定されたIPマルチキャストグループに参加し、IPマルチキャストルータからのMBMSデータのパケットの配信を受ける。
【0072】
図13は、第3の実施形態の移動通信システムによるMBMSデータ通信の動作を示すシーケンス図である。ここでは主に第3の実施形態が第1、第2の実施形態と異なる部分について説明する。
【0073】
図13を参照すると、本実施形態では、ステップ101に続くステップ102''として、コアネットワークノード11は、基地局装置12にeRANAPのMBMSセッション開始メッセージを送る。このMBMSセッション開始メッセージには、TMGI、IPマルチキャストアドレス、およびQoS情報が含まれている。
【0074】
MBMSセッション開始メッセージを受信した基地局装置12は、ステップ103''において、そのメッセージに含まれている、IPマルチキャストアドレス、QoS、および他のセッション属性情報を取得し、保持する。また、基地局装置12は、S1インタフェース上のトランスポートレイヤのアドレスであるIPアドレスを記憶し、MBMSセッションが継続している間保持する。
【0075】
続いて、基地局装置12は、QoS情報に従って無線チャネルを捕捉するともに(ステップ104a'')、IPマルチキャストグループに参加(join)して(ステップ104b'')、MBMSデータのIPアドレスと無線チャネルとのマッピング情報を設定する。IPマルチキャストグループへのjoinには例えばIETF(Internet Engineer Task Forces)のRFC2236に規定された手順を用いればよい。
【0076】
続いて、基地局装置12は、MBMS無線チャネル指示(MBMS Radio Channel indication)メッセージで無線チャネルを端末13に通知し(ステップ105)、コアネットワークノード11にMBMSセッション開始応答(MBMS Session Start Response)メッセージを送って設定が完了したことを通知する(ステップ106)。
【0077】
MBMSデータを転送するベアラ(transport bearer for MBMS)は、IPマルチキャストアドレスによって識別することができる。
【0078】
MBMSのセッションが確立した後、コアネットワークノード11は、不図示のMBMSサーバからMBMSデータを取得し(ステップ107)、IPマルチキャストアドレスを付与したMBMSデータをIPネットワーク14に送信する(ステップ108a'')。IPネットワーク14内のIPマルチキャストルータ14Aは、IPマルチキャストグループに参加している基地局装置12にMBMSデータを配信する(ステップ108b'')。
【0079】
基地局装置12は、IPマルチキャストルータ14Aで配信されたMBMSデータをIPアドレスで識別して受信し、マッピング情報に従ってMBMSデータを端末13への無線チャネルにマッピングする(ステップ109'')。MBMSデータの転送にはGTP−Uが用いられ、GTP−UのヘッダにTEIDのフィールドが必須であれば、MBMSデータのパケットにはTEIDのフィールドを設けておき、更にIPマルチキャストアドレスのフィールドを設ければよい。例えば、図11に示したGTP−UのヘッダにIPマルチキャストアドレスのフィールドを追加すればよい。しかし、本実施形態ではMBMSデータのパケットの転送にTEIDを用いないのでTEIDは本来不要である。そこで例えば送信側ではTEIDのフィールドに固定値を設定し、受信側ではTEIDのフィールドの内容を無視すればよい。本実施形態では、基地局装置12は、コアネットワークノード11によってGTP−Uのヘッダに何らかのTEIDが設定されているか否かと関係なく、MBMSデータのパケットのGTP−UのヘッダにあるTEIDのフィールドを無視するとする。
【0080】
以上説明したように、本実施形態によれば、MBMSデータを転送するためのIPマルチキャストアドレスをコアネットワークノード11から各基地局装置12に通知し、基地局装置12はそのIPマルチキャストアドレスで指定されたIPマルチキャストグループに参加するので、コアネットワークノード11は、マルチキャストのために基地局装置12毎に異なるトンネルIDを管理する必要が無くなり、処理が容易になりメモリ容量が低減される。
【0081】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではない。請求項に定義された本発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0082】
この出願は、2007年1月30日に出願された日本出願特願2007−19071を基礎として優先権の利益を主張するものであり、その開示の全てを引用によってここに取り込む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアネットワークと、アクセスネットワークと、端末とを有し、マルチキャストデータを配信するMBMSサービスを提供する移動通信システムであって、
前記端末は、前記MBMSサービスへ参加するための参加処理を行い、
前記コアネットワークは、前記MBMSサービスに割り当てられたTEIDを前記アクセスネットワークに送信し、
前記アクセスネットワークは前記TEIDを受信し、前記マルチキャストデータを前記端末に送信し、
前記端末は、前記マルチキャストデータを受信する、移動通信システム。
【請求項2】
前記コアネットワークは、コアネットワークノードを有し、
前記コアネットワークノードは、前記TEIDを前記アクセスネットワークに送信する、請求項1に記載の移動通信システム。
【請求項3】
前記コアネットワークは、前記TEIDを、セッション開始メッセージに含めて送信する、請求項1または2に記載の移動通信システム。
【請求項4】
前記アクセスネットワークは基地局を有し、
前記基地局は、前記コアネットワークから送信された前記TEIDを受信する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の移動通信システム。
【請求項5】
前記アクセスネットワークは、基地局と、前記基地局を制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記コアネットワークから送信された前記TEIDを受信する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の移動通信システム。
【請求項6】
アクセスネットワークと端末とを有し、MBMSサービスを提供する移動通信システムに含まれるコアネットワークであって、
前記MBMSサービスに割り当てられたTEIDをアクセスネットワークに送信する手段を有するコアネットワーク。
【請求項7】
前記コアネットワークは、コアネットワークノードを有し、
前記コアネットワークノードは、前記TEIDを前記アクセスネットワークに送信する、請求項6に記載のコアネットワーク。
【請求項8】
前記コアネットワークは、前記TEIDを、セッション開始メッセージに含めて送信する、請求項6または7に記載のコアネットワーク。
【請求項9】
前記アクセスネットワークは、基地局を有し、
前記コアネットワークは、前記TEIDを前記基地局に送信する、請求項6乃至8のいずれか一項に記載のコアネットワーク。
【請求項10】
前記アクセスネットワークは、基地局と、前記基地局を制御する制御装置と、を有し、
前記コアネットワークは、前記TEIDを前記制御装置に送信する、請求項6乃至8のいずれか一項に記載のコアネットワーク。
【請求項11】
端末とコアネットワークとを有し、マルチキャストデータを配信するMBMSサービスを提供する移動通信システムに含まれるアクセスネットワークであって、
前記MBMSサービスに割り当てられたTEIDを、前記コアネットワークノードから受信する手段と、
前記マルチキャストデータを前記端末に送信する手段と、を有するアクセスネットワーク。
【請求項12】
前記コアネットワークは、コアネットワークノードを有し、
前記アクセスネットワークは、前記コアネットワークノードから前記TEIDを受信する、請求項11に記載のアクセスネットワーク。
【請求項13】
前記アクセスネットワークは、前記TEIDを含むセッション開始メッセージを受信する、請求項11または12に記載のアクセスネットワーク。
【請求項14】
前記アクセスネットワークは、基地局を有し、
前記基地局は、前記コアネットワークから前記TEIDを受信する、請求項11乃至13のいずれか一項に記載のアクセスネットワーク。
【請求項15】
前記アクセスネットワークは、基地局と、前記基地局を制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記コアネットワークから前記TEIDを受信する、請求項11乃至13のいずれか一項に記載のアクセスネットワーク。
【請求項16】
コアネットワークと、アクセスネットワークとを有し、マルチキャストデータを配信するMBMSサービスを提供する移動通信システムにおける端末であって、
前記MBMSサービスへ参加する処理を行う手段と、
前記MBMSサービスに割り当てられたTEIDを前記コアネットワークから受信する前記アクセスネットワークから、前記マルチキャストデータを受信する手段と、を有する端末。
【請求項17】
前記コアネットワークはコアネットワークノードを有し、
前記アクセスネットワークは、前記コアネットワークノードから、前記TEIDを受信する、請求項16に記載の端末。
【請求項18】
前記コアネットワークは、前記TEIDを、セッション開始メッセージに含めて送信する、請求項16または17に記載の端末。
【請求項19】
前記アクセスネットワークは基地局を有し、
前記基地局は、前記コアネットワークから送信された前記TEIDと前記マルチキャストデータとを受信する、請求項16乃至18のいずれか一項に記載の端末。
【請求項20】
前記アクセスネットワークは、基地局と、前記基地局を制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記コアネットワークから送信された前記TEIDと前記マルチキャストデータとを受信する、請求項16乃至18のいずれか一項に記載の端末。
【請求項21】
コアネットワークと、アクセスネットワークと、端末とを有し、マルチキャストデータを配信するMBMSサービスを提供する移動通信システムのマルチキャストデータ配信方法であって、
前記MBMSサービスに割り当てられたTEIDを前記コアネットワークから送信し、
前記マルチキャストデータを前記端末に送信する、移動通信システムのマルチキャストデータ配信方法。
【請求項22】
前記コアネットワークは、コアネットワークノードを有し、
前記コアネットワークノードは前記TEIDを送信する、請求項21に記載の移動通信システムのマルチキャストデータ配信方法。
【請求項23】
前記コアネットワークは、前記TEIDを、セッション開始メッセージに含めて送信する、請求項21または22に記載の移動通信システムのマルチキャストデータ配信方法。
【請求項24】
前記アクセスネットワークは、基地局を有し、前記コアネットワークは、前記TEIDを前記基地局に送信する、請求項21乃至23のいずれか一項に記載の移通信システムのマルチキャストデータ配信方法。
【請求項25】
前記アクセスネットワークは、基地局と、前記基地局を制御する制御装置と、を有し、前記コアネットワークは、前記TEIDを前記制御装置に送信する、請求項21乃至23のいずれか一項に記載の移通信システムのマルチキャストデータ配信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−70396(P2013−70396A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−245682(P2012−245682)
【出願日】平成24年11月7日(2012.11.7)
【分割の表示】特願2011−232785(P2011−232785)の分割
【原出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】