説明

移動通信システム、無線ネットワーク制御局及び方法

【課題】RNCに接続されている複数の交換機の内、少なくとも1つが輻輳した場合、複数の交換機の間で負荷の再配分を速やかに実行できるようにすること、および接続失敗によるユーザ体感品質低下のない交換機選択を可能とすること。
【解決手段】移動通信システムにおける複数の交換機に接続された無線ネットワーク制御局は、複数の交換機と通信するための交換機側インターフェースと、無線基地局を介して移動局からの呼接続信号を受信する移動局側インターフェースと、複数の交換機各々の輻輳レベルを管理する管理部と、制御部とを有する。交換機側インターフェースは、複数の交換機各々から、輻輳の程度を示す輻輳レベルの情報を取得する。制御部は、輻輳レベルが高い交換機宛の呼接続信号の内、輻輳レベルに応じた所定の割合の呼接続信号を、輻輳レベルが低い交換機に転送することを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信システム、無線ネットワーク制御局及び方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
W−CDMAシステムは、主に無線アクセス制御を行う無線アクセスネットワーク(RAN)と、移動管理、呼制御、サービス制御等を行うコアネットワーク(CN)に分類される。RANには、無線ネットワーク制御局(RNC:Radio Network Controller)及び無線基地局(NodeB)が含まれる。CNは、回線交換(CS:Circuit Switched)ドメイン、パケット交換(PS:Packet Switched)ドメインから構成される。一般に、CSドメインは音声系サービスを提供し、PSドメインはデータ通信系サービスを提供する。移動局に対して各ドメインのサービスを提供するノードとして、CSドメインの場合、移動サービス交換機(MSC:Mobile−services Switching Centre)があり、PSドメインの場合、サービングGPRSサポートノード(SGSN:Serving GPRS Support Node)がある。MSC、SGSNはRNCとのインターフェースを有し、RNCとMSC/SGSN間のインターフェースはIuインターフェースと呼ばれる。
【0003】
従来の一般的なネットワークの場合、RNCを制御する交換機(MSC/SGSN)は一つであるが、ドメイン内に複数のCNノード(交換機)が存在する場合、
呼接続時においてRNCがドメイン内の複数のコアノードの内1つを適宜選択できれば、コアネットワーク内の負荷分散を図ることが可能になる。また、ドメイン内の特定のCNノードに障害が発生している場合、別のCNノードを利用できれば、呼接続を中断せずに済み、コアノードの冗長化を図ることができる。このような観点から、3GPP標準仕様(非特許文献1)では、ドメイン内に複数のCNノードが存在するネットワークにおいて、RNCが接続先CNノードを決定する手法が規定されている。この手法はIu−Flexと呼ばれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】3GPP TS23.236 v8.1.0(2009−12)
【非特許文献2】3GPP TS25.331 v8.10.0(2010−03)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Iu−Flex方式のネットワーク構成においては、複数のCNノードに移動局の加入者プロファイルが分散して収容される。何らかの要因により、1つ又は複数のCNノードに呼接続や位置登録トラヒックが偏った場合、それらのCNノードは輻輳状態となり、正常な処理を継続できなくなってしまうことが懸念される。また、設備投資等その他の事情により、プールエリア内のCNノード各々の処理能力を不均一に構成にすることがある。この場合、処理能力の低いCNノードは、輻輳状態に陥りやすく、正常な処理を継続できなくなる懸念がある。なお、プールエリア(Pool Area)とは、1つのRNCに接続されている複数のCNノードが収容するエリアを意味する。
【0006】
輻輳しているCNノードが、移動局から位置登録要求を受信した場合、そのCNノードは、NRI(Network Resource Identifier)としては無効な値が設定されているNRIを含む設定TMSI/P−TMSIを移動局に払い出す。したがって、次回、移動局が位置登録要求を行う場合、RRCメッセージ(INITIAL DIRECT TRANSFER)に設定されるNRIは無効な値を示す。設定されているNRIが無効であることを認識したRNCは、利用可能なCNノードの中からランダムにCNノードを選択し、そのCNノードに位置登録要求信号を転送する。これにより、輻輳したCNノードに位置登録要求信号が接続されてしまうことを回避し、他のCNノードに接続することで、CNノード間の負荷の再分配を行うことができる。
【0007】
しかしながらこの方法は、輻輳しているCNノードが、位置登録要求を受けた際に、自ら無効なNRIを払い出すことで、次回の位置登録以降、負荷の再分配が可能となるものである。したがって、RNCは、輻輳しているCNノードへ一度は信号を転送することになる。このため、輻輳が発生しているCNノードの負荷を即座に再分配することはできないという欠点がある。また、輻輳しているCNノードは、無効なNRIを設定してTMSI/P−TMSIを払い出す必要があり、CNノードの処理負担が重くなってしまう。
【0008】
さらに、無効なNRIが設定されたTMSI/P−TMSIが払い出された後、次回、位置登録が完了するまでの間に、移動局が発信しようとした場合、移動局が送信する信号内のNRIは無効である。RNCにとって、その移動局がどのCNノードに収容されているのかは不明であるので、RNCはランダムにCNノードを選択する。これにより、輻輳状態でないCNノードに信号が転送される可能性は高くなるが、移動局の加入者情報を保持していないCNノードに接続要求を行うことになるので、接続に失敗するおそれもある。
【0009】
さらに、Iu−Flex方式の場合、CNノードが輻輳状態であったとしても、位置登録を行っていない移動局から通常の接続要求があった場合、その接続要求は、そのまま輻輳しているCNノードに接続される。上記の負荷の再分配を行う方法では、位置登録契機をもって負荷の再分配を行うからである。
【0010】
したがって、従来の負荷の再分配方法は即効性に欠け、CNノードの処理能力が限界に近づいていて、速やかに負荷を軽減させるべき場合に、負荷の再分配が追いつかないおそれがある。
【0011】
本発明の課題は、RNCに接続されている複数の交換機の内、少なくとも1つが輻輳した場合、複数の交換機の間で負荷の再配分を速やかに実行できるようにことである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一形態による無線ネットワーク制御局は、
移動通信システムにおける複数の交換機に接続された無線ネットワーク制御局であって、
前記複数の交換機と通信するための交換機側インターフェースと、
無線基地局を介して移動局からの呼接続信号を受信する移動局側インターフェースと、
複数の交換機各々の輻輳レベルを管理する管理部と、
制御部と
を有し、前記交換機側インターフェースは、前記複数の交換機各々から、輻輳の程度を示す輻輳レベルの情報を取得し、
前記制御部は、輻輳レベルが高い交換機宛の呼接続信号の内、輻輳レベルに応じた所定の割合の呼接続信号を、輻輳レベルが低い交換機に転送することを決定する、無線ネットワーク制御局である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一形態によれば、RNCに接続されている複数の交換機の内、少なくとも1つが輻輳した場合、複数の交換機の間で負荷の再配分を速やかに実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】Iu−Flex方式のネットワークにおいて、移動局がアタッチを実施する場合のシーケンスを示す図。
【図2】図1によるアタッチ実施後の移動局がPS発信を行う手順を示す図。
【図3】CNノード各々にNRIが設定されている様子を示す図。
【図4】移動通信システムを示す図。
【図5】RNCの機能ブロック図。
【図6】第1動作例を説明するためのシーケンス図。
【図7】複数の交換機が輻輳している移動通信システムを示す図。
【図8】第2動作例を説明するためのシーケンス図。
【図9】第3動作例を説明するためのシーケンス図。
【図10】呼種別と迂回開始レベルの対応関係の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に説明する実施例によれば、RNCは、CNノードが輻輳状態であることを明示的に知ることができ、これにより、輻輳状態のCNノードに対する信号量を適切に削減することができる。さらに複数のCNノードが輻輳している場合でも、各CNノードの負荷レベルを考慮して、負荷を適切に再分配することができる。
【0016】
以下の観点から実施例を説明する。
【0017】
1.Iu−Flex
2.移動通信システム
3.RNC
4.第1動作例
5.第2動作例
6.第3動作例
【実施例1】
【0018】
<1.Iu−Flex>
本発明の実施例によるRNC及び動作例を説明する前に、実施例で前提としているIu−Flex方式について説明する。
【0019】
上述したように、Iu−Flex方式では、1つのRNCに複数のコアノードが接続され、負荷分散性及び障害耐性を向上させる。RNCは、移動局が発した呼を接続する際(呼接続時に)、呼の制御を行うコアノード又はサービングCN(Serving CN)を決定する。サービングCNは、当該呼の加入者プロファイルを保持するコアノードである。加入者プロファイルは、発呼した移動局のユーザの契約情報等を含む。コアノードには識別子が付与されており、この識別子により、CS及びPSドメイン各々において、プールエリア(Pool Area)内でコアノードを一意に特定することができる。この識別子はNRI(Network Resource Identifier)と呼ばれる。プールエリアとは、1つのRNCに接続されている複数のコアノードを示す。
【0020】
図1は、Iu−Flex方式のネットワークにおいて、移動局40がアタッチを実施する場合の一般的なシーケンスを示す。RNC10の上位にはSGSN20、SGSN21、SGSN22、MSC30、MSC31及びMSC32が接続されており、RNC10配下に移動局40が存在するものとする。移動局40は、無線通信することができる適切な如何なるユーザ装置でもよく、例えば、携帯電話、情報端末、パーソナルディジタルアシスタント、携帯用パーソナルコンピュータ等であるが、これらに限定されない。
【0021】
移動局40がアタッチを実施する場合、まず移動局40及びRNC10の間でRRCコネクション(無線コネクション)を確立する必要がある。このため、移動局40は、RRCコネクションリクエスト(RRC Connection Request)メッセージを送信し、RRCコネクションの確立を要求する。RNC10は移動局40に対してRRCコネクションの確立を指示するメッセージを送信する。このメッセージは、RRC CONNECTION SETUPと呼ばれる。
【0022】
RRCコネクションが確立した後、移動局40は、アタッチ要求信号をRNC10に通知する(Initial Direct Transfer)。この際、IDNNS(Intra Domain NAS Node Selector)と呼ばれる情報要素が、アタッチ要求信号に設定されている。IDNNSは、移動局40をネットワーク内で識別するための識別情報であるTMSI、P−TMSI、IMSI及びIMEIの内のいずれかを使用して生成される10ビットのビット列情報と、その10ビットの情報がTMSI、P−TMSI、IMSI及びIMEIのいずれを基にして生成されたものであるかを示す情報から構成される。IDNNSの10ビットの情報はルーティングパラメータ(Routing Parameter)と呼ばれてもよい。これらの識別子を使用する優先順位は、高い順に、TMSI、P−TMSI、IMSI及びIMEIである。概して、TMSI及びP−TMSIは交換機が払い出すIDである。TMSI(Temporary Mobile Subscriber Identifier)は、回線交換ドメインの交換機が払い出す識別子である。P−TMSI(Packet TMSI)は、パケット交換ドメインの交換機が払い出す識別子である。IMSI及びIMEIは加入者や端末に固有に予め設定されているIDである。IMSI(International Mobile Subscriber Identifier)は、ユーザに一意に割り当てられる加入者識別子である。IMEI(International Mobile Equipment Identifier)は、移動局に一意に割り当てられている端末識別子である。アタッチの場合、TMSIやP−TMSIは未だ払い出されていないので、使用可能な識別子はIMSI又はIMEIである。図示の例の場合、アタッチ要求信号のIDNNSには、IMSIが設定されている。
【0023】
RNC10は、アタッチ要求信号(移動局からの発呼)に応答して、サービングCNを決定する。アタッチ要求信号に設定されているルーティングパラメータ(IDNNS)は、IMSIに設定されている。アタッチの場合、接続先の交換機は未だ決まっておらず、移動局の加入者プロファイルは、どの交換機にも登録されていない。そこで、RNC10は、任意のコアノードをランダムに選択する。アタッチ手順は一般的にはPSドメインで実施されるため、図示の例では、RNC10がSGSN22を選択し、RNC10は、移動局40から受信したアタッチ信号をSGSN22へ転送する(Initial UE Message)。
【0024】
SGSN22は、アタッチ信号の受信を契機に、発呼した移動局に対する加入者プロファイルを作成することに加えて、P−TMSIを払い出す。P−TMSIには、SGSN22のNRI(PS−NRI)が埋め込まれる。具体的には、P−TMSIの14〜23ビット目の10ビットの中に、SGSN22のNRIが含められる。例えば、SGSN20、21、22各々のNRIが、0、1、2であったとすると、SGSN22が払い出すP−TMSIには、NRI=2(2進法で"10")の情報が含まれている。
【0025】
次に、SGSN22はCSドメインに対するアタッチを実施するため、複数の交換機MSC30〜32の内、いずれか1つのMSCを選択する。目下の場合、どの交換機MSCにも移動局の加入者プロファイルは作成されていないので(サービングMSCは未定であるため)、任意のMSCがランダムに選択される。図示の例では、MSC31が選択され、CSドメインへのアタッチ要求信号がMSC31に送信されている。
【0026】
MSC31では、アタッチした移動局に対する加入者プロファイルを作成することに加えて、TMSIを払い出す。TMSIには、MSC31のNRI(CS−NRI)が埋め込まれる。より具体的には、TMSIの14〜23ビット目の10ビットの中に、MSC31のNRIが含められる。例えば、MSC30、31、32各々のNRIが、0、1、2であったとすると、MSC31が払い出すTMSIには、NRI=1(2進法で"01")の情報が含まれている。
【0027】
払い出されたTMSIは、MSC31からSGSN22へ通知される。
【0028】
SGSN22は、P−TMSIおよびTMSIを、アタッチ応答信号によりRNC10に通知する(Direct Transfer)。RNC10はアタッチ応答信号を移動局40に通知する(DL Direct Transfer)。
【0029】
このようにして、アタッチにより、TMSI及びP−TMSIが払い出される。
【0030】
図2は、図1によるアタッチ実施後の移動局40が、PS発信を行う場合の手順を示す。説明の簡明化のため、図2ではPS発信の場合しか示されていないが、同様に、CS発信を行うこともできる。
【0031】
まず、移動局40は、RNC10に対してRRCコネクションの確立を要求する(RRC Connection Request)。RRCコネクションの確立後、移動局40は、PS発信要求信号をRNC10に通知する(Initial Direct Transfer)。PS発信要求信号には、ルーティングパラメータ(IDNNS)が設定される。移動局40が、TMSI又はP−TMSIからルーティングパラメータを生成する場合、TMSI又はP−TMSIの14〜23ビット目の10ビットを抜き出して、その10ビットをルーティングパラメータとして設定する。上述したように、この10ビットの部分に接続先のコアノードのNRIが含まれている。目下の例の場合、PS発信なので、IDNNSにはP−TMSIが設定されており、このP−TMSIは、SGSN22のNRIが含まれている。
【0032】
PS発信要求信号を受信したRNC10は、接続先のSGSNを決定するためにIDNNSを参照する。目下の例の場合、IDNNSは、P−TMSIの14〜23ビット目の10ビットに設定されている。RNC10は、このルーティングパラメータ("0000000010")を記憶する。RNC10は、交換機とNRIの対応関係を予め記憶している(図3)。RNC10は、そのような対応関係を参照し、NRIに対応するSGSN22をサービングCNとして特定する。RNC10は、特定されたSGSN22に対して、PS発信要求信号を送信する(Initial UE Message)。これによりSGSN22においてPS呼接続手順が実施される。
【0033】
このように、Iu−Flex方式では、複数の交換機が存在することを許容し、適切な交換機を適宜指定することで、負荷分散性及び障害耐性を向上させることができる。
【0034】
<2.移動通信システム>
図4は、本発明の実施例において使用される移動通信システムを示す。移動通信システムは、複数の交換機(MSC30−32、SGSN20−22)と、複数の交換機に接続された無線ネットワーク制御局(RNC10−12)と、移動局(40−42)とを少なくとも含む。図示及び説明の簡明化のため、移動局及び無線ネットワーク制御局間に存在する無線基地局は図示されていない。
【0035】
交換機の各々は、移動通信システムのコアネットワークにおける処理を行い、例えば、加入者プロファイルのような加入者情報の管理、移動管理、発着信制御、課金制御、QoS制御等を行う。RNC11の配下には、移動局(40−42)が存在する。
【0036】
無線ネットワーク制御局(RNC10−12)は、主に無線リソースの管理を行う。後述するように本実施例では、特に、呼接続信号の転送先を各交換機の輻輳レベルに応じて決定する。図示の例では、RNC11のみが複数の交換機に接続しているように描かれているが、実際にはRNC10及びRNC11も複数の交換機に接続されている。
【0037】
移動局(40−42)は、通信することが可能な適切な如何なるユーザ装置でもよく、例えば、携帯電話、情報端末、パーソナルディジタルアシスタント、携帯用パーソナルコンピュータ等であるが、これらに限定されない。
【0038】
<3.RNC>
図5は、本発明の一実施例による無線ネットワーク制御局(RNC)を示す。このRNCは、図4のRNC10−12として使用可能である。図示の都合上、交換機として、パケットドメインの交換機ノード(SGSN)しか示されていないが、1つ以上の回線交換ドメインの交換機ノード(MSC)に接続されてもよい。
【0039】
RNC11は、移動局側インターフェース51と、交換機側インターフェース52と、記憶部53と、規制状態管理部54と、制御部55とを有する。制御部55は、呼制御部551を含む。図5には、RNC11の様々な機能要素の内、本実施例に特に関連するものしか示されていない点に留意を要する。
【0040】
移動局側インターフェース51は、不図示の無線基地局を介して移動局40−42と通信するためのインターフェースである。例えば、移動局側インターフェース51は、移動局の通信開始手順において、移動局との間でRRCコネクション(無線コネクション)を確立するように構成されている。
【0041】
交換機側インターフェース52は、様々な交換機と通信するためのインターフェースである。例えば、交換機インターフェース52は、移動局からの位置登録要求信号や発信要求信号を、交換機に送信する際のインターフェース機能を果たす。
【0042】
記憶部53は、データ、パラメータ、変数値その他のRNC11において使用される情報を記憶する。例えば、記憶部53は、移動局から通知されたTMSIや、P−TMSIを示す情報を記憶する。TMSIやP−TMSIが、位置登録エリアの更新に応じて変更された場合、変更後のTMSI及びP−TMSIが上書きされる。
【0043】
規制状態管理部54は、交換機各々から受信した輻輳レベルを記憶又は管理し、どの交換機がどの程度輻輳しているかを管理する。後述するように、各交換機の輻輳レベルは、移動局が送信する呼接続信号の種別に応じて管理されてもよい。輻輳レベルは、各交換機が測定し、定期的に又は必要に応じて各交換機が無線ネットワーク制御局(RNC)に報告する。図4において「輻輳レベル対応表」として示されているように、様々な負荷状態に応じて、輻輳レベルが予め決定されている。交換機は、自身の負荷状態に対応する輻輳レベルを無線ネットワーク制御局に報告する。「負荷状態」とは、輻輳の目安となる量である。より具体的には、交換機がRNCに通知する輻輳レベルは、その後にRNCが交換機に呼接続信号を転送する場合に、RNCが交換機に転送する呼接続信号の量をどの程度削減してほしいか(何割を他の交換機に転送してほしいか)を示す。言い換えれば、交換機は、輻輳しているか否かだけでなく、どの程度輻輳しているか、どの程度の信号量の流入を避ければ輻輳を回避できるか等を、きめ細かくRNCに通知することができる。例えば、交換機SGSN20の負荷状態が70%であり、この負荷状態を示す輻輳レベルがRNC11に報告されたとする。この場合、RNC11は、移動局から受信した交換機SGSN20宛の呼接続信号の内、70%の呼接続信号をSGSN20以外の交換機(SGSN21−24の内の何れか)に転送し、残りの30%の呼接続信号をSGSN20に転送する。規制状態管理部54は、このような輻輳レベルを管理し、制御部55又は呼制御部551からの要請に応じて、各交換機の輻輳レベルを返す。
【0044】
制御部55は、RNC11内の機能要素の動作を制御することに加えて、制御に必要な管理及び判断を行う。例えば、制御部55は、移動局からのRRCメッセージ受信時に、TMSIが通知されているか否かの判定、IDNNSが通知されているか否かの判定、接続先ドメインの判定(デフォルト交換機の判定も含む)等を行う。
【0045】
呼制御部551は、制御部55における一般的な制御と共に、呼制御を行う。本実施例では、特に、呼制御部551は、交換機の輻輳レベルを規制状態管理部54に問い合わせ、移動局からの呼接続信号の転送先を決定し、交換機インターフェース52に通知する。なお、制御部55の一部として呼制御部551が示されているが、このことは本発明に必須ではなく、適切な如何なる形態で実施されてもよい。
【0046】
<4.第1動作例>
図4に示すような移動通信システムにおいて、RNC11がCNノードの輻輳レベルを認識し、移動局41からの呼接続信号の転送先を決定する動作例を説明する(説明ではMSCを例にとっているが、SGSNについても同様である。)。
【0047】
図6は、第1の動作例を説明するためのシーケンスを示す。交換機(MSC30−32、SGSN20−22)の各々は、各自の輻輳状態を測定している。図4に示されているような輻輳レベル対応表を用いて、各交換機は、自身の輻輳レベルを決定する。輻輳レベル対応表は、段階的な複数の負荷状態と、各負荷状態に対応する輻輳レベルとを規定している。段階的な複数の負荷状態の何れに該当するかは、負荷状態毎に予め決められている閾値との大小比較により決定できる。
【0048】
ステップS1において、各交換機は自身の輻輳状態を示す輻輳レベルをRNC11に報告する。図6では全ての交換機が一斉に輻輳レベルを報告しているが、このことは本発明に必須でない。報告は、周期的に行われてもよいし、要求に応じて不定期的に行われてもよい。また、輻輳している場合にのみ報告を行い、輻輳していない場合は報告しないようにしてもよい。ステップS1における報告は、例えば、RANAP:OVERLOADメッセージにより行われるが、具体的な信号名は本発明に必須ではない。輻輳レベルを通知できる適切な如何なる信号又はメッセージが使用されてもよい。図示されてはいないが、各交換機(MSC30−32、SGSN20−22)の輻輳レベルは、RNC11だけでなく、RNC10、RNC12にも報告されている。
【0049】
ステップS3において、RNC11は、受信した各交換機の輻輳レベルを更新する。説明の便宜上、交換機MSC31のみが輻輳しており、その輻輳レベルは50%であるとする。RNC11の規制状態管理部54は、このような輻輳の状態を交換機毎に(必要に応じて呼接続信号の種別毎に)管理している。
【0050】
ステップS5において、RNC11は、移動局41からの位置登録要求の呼接続信号を受信している。
【0051】
ステップS7において、RNC11は、位置登録要求の受信に応じて、呼接続信号を接続する交換機(接続先)を決める。RNC11の呼制御部551は、受信した呼接続信号(RRC:INITIAL DIRECT TRANSFER)に含まれているNRIの値を参照し、意図されている接続先の交換機を特定する。意図されている接続先のNRIの値は1(MSC31)であるとする。RNC11の呼制御部551は、各交換機の輻輳レベルを規制状態管理部54に問い合わせ、規制状態管理部54は各交換機の輻輳レベルを返す。呼接続信号で意図されている交換機はMSC31(NRI=1)であるが、この交換機は現在輻輳している。輻輳レベルは50%なので、MSC31宛の呼接続信号の内、50%はMSC31以外の交換機に転送され、残りの50%がMSC31に転送される。すなわち、輻輳レベルに応じた割合の呼接続信号が、他のCNノードへ迂回転送される。RNC11の呼制御部551は、輻輳レベルに応じた割合(すなわち確率)にしたがって、MSC31宛の呼接続信号の転送先を決定する。決定法は適切な如何なる方法で行われてもよい。
【0052】
例えば、乱数を発生させ、奇数ならばMSC31に接続し、偶数ならば他のCNノードに接続することにし、先ず、輻輳しているMSC31に接続するか否かを判定してもよい。乱数が偶数であり、MSC31以外に接続すべき場合、選択肢はMSC30又はMSC32である。これらは輻輳しておらず、ランダムに何れかを選択することで、転送先を決めることができる。
【0053】
あるいは、輻輳しているMSC31よりも輻輳レベルが低い交換機を探し、それらが転送先として決定されてもよい。目下の例の場合MSC31の輻輳レベルは50%であり、MSC30、MSC32は輻輳していないので、MSC30又はMSC32が転送先として決定される。説明の便宜上、転送先は、MSC32に決定されたとする。
【0054】
ステップS9において、RNC11は、MSC32に呼接続信号を転送する。MSC32は、移動局41に対してTMSIを新たに払い出す。このTMSIは、MSC32を示すNRIが設定されている。以後、移動局41が発信要求を行った場合、その発信要求(RRC:INITIAL DIRECT TRANSFER)に付随するTMSIに含まれているNRIは2(NRI=2)であるので、RNC11は、移動局41からの呼接続信号をMSC32へ転送する。これにより、MSC30、MSC31、MSC32間での負荷再分配が可能となる。
【0055】
本動作例によれば、MSC31は、輻輳レベルに応じた割合の信号量が削減された信号量しか受信しないので、輻輳状態となった直後からただちに信号量を削減することが可能となる。
【0056】
<5.第2動作例>
次に、複数のCNノードが輻輳状態となっている場合のRNCのおけるCNノードの選択方法を説明する。動作フローは図6に示すものと同様であるが、ステップS7における判断が異なる。
【0057】
図7は複数の交換機が輻輳している移動通信システムを示す。概して図4と同様であるが、複数の交換機(MSC30、MSC31)が輻輳している点、100%の輻輳レベルが通知されている点、複数の移動局(40、41)から呼接続信号が送信されている点等が異なる。
【0058】
図8は、図7に示すような移動通信システムにおける第2動作例を示すシーケンス図である。ステップS11において、図6のステップS1と同様に、各交換機は自身の輻輳状態を示す輻輳レベルをRNC11に報告する。全ての交換機が一斉に輻輳レベルを報告しているが、このことは本発明に必須でない。報告は、周期的に行われてもよいし、要求に応じて不定期的に行われてもよい。ステップS11において、交換機MSC30は、RANAP:OVERLOADメッセージにより、負荷状態50%に対応する輻輳レベルをRNC11に通知している。交換機MSC31は、RANAP:OVERLOADメッセージにより、負荷状態100%に対応する輻輳レベルをRNC11に通知している。交換機MSC32は輻輳していない。
【0059】
ステップS13において、RNC11は、受信した各交換機の輻輳レベルを更新する。目下の例の場合、交換機MSC30及びMSC31が輻輳しており、MSC32は輻輳していない。交換機MSC30の輻輳レベルは50%である。交換機MSC31の輻輳レベルは100%である。図6のステップS3と同様に、RNC11の規制状態管理部54は、このような輻輳の状態を交換機毎に(必要に応じて呼接続信号の種別毎に)管理している。
【0060】
ステップS15において、RNC11は、移動局41からの位置登録要求の呼接続信号を受信している。
【0061】
ステップS17において、RNC11は、位置登録要求の受信に応じて、呼接続信号を接続する交換機(接続先)を決める。RNC11の呼制御部551は、受信した呼接続信号(RRC:INITIAL DIRECT TRANSFER)に含まれているNRIの値を参照し、意図されている接続先の交換機を特定する。意図されている接続先のNRIの値は1(MSC31)であるとする。RNC11の呼制御部551は、各交換機の輻輳レベルを規制状態管理部54に問い合わせ、規制状態管理部54は各交換機の輻輳レベルを返す。呼接続信号で意図されている交換機はMSC31(NRI=1)であるが、この交換機は現在輻輳している。輻輳レベルは100%なので、MSC31宛の呼接続信号の内、100%がMSC31以外の交換機に転送される。すなわち、交換機MSC31は非常に輻輳しており、呼接続信号を一切受け付けることができない。RNC11の呼制御部551は、輻輳レベルに応じた割合(すなわち確率)にしたがって、MSC31宛の呼接続信号の転送先(MSC31以外)を決定する。図6のステップS7と同様に、適切な如何なる方法で転送先が決定されてもよい。
【0062】
例えば、交換機MSC31の輻輳レベルよりも低い輻輳レベルの交換機の中から、1つの交換機が選択されてもよい。交換機MSC31の輻輳レベルは100%であり、これより低い輻輳レベルの交換機は、MSC30及びMSC32であり、これら2つが転送先の候補である。ただし、MSC32は輻輳していないが、MSC30は輻輳しており、MSC30の輻輳レベルは50%である。この場合、輻輳レベルに基づいて計算された所定の確率でMSC32が転送先として決定され、残余がMSC30を転送先として決定される。また、MSC30およびMSC32からランダムに転送先を決定しても、輻輳レベル最小のMSC32を転送先として決定してもよい。 ステップS19では、決定された転送先の交換機(MSC30又はMSC32)に呼接続信号が転送される。
【0063】
ステップS21において、RNC11は、移動局41からの位置登録要求の呼接続信号を受信している。
【0064】
ステップS23において、RNC11は、位置登録要求の受信に応じて、呼接続信号を接続する交換機(接続先)を決める。RNC11の呼制御部551は、受信した呼接続信号(RRC:INITIAL DIRECT TRANSFER)に含まれているNRIの値を参照し、意図されている接続先の交換機を特定する。意図されている接続先のNRIの値は0(MSC30)であるとする。RNC11の呼制御部551は、各交換機の輻輳レベルを規制状態管理部54に問い合わせ、規制状態管理部54は各交換機の輻輳レベルを返す。呼接続信号で意図されている交換機はMSC30(NRI=0)であるが、この交換機は現在輻輳している。輻輳レベルは50%なので、MSC30宛の呼接続信号の内、50%がMSC30以外の交換機に転送され、残りの50%がMSC30に転送される。RNC11の呼制御部551は、輻輳レベルに応じた割合(すなわち確率)にしたがって、MSC30宛の呼接続信号の転送先を決定する。図6のステップS7と同様に、適切な如何なる方法で転送先が決定されてもよい。
【0065】
例えば、交換機MSC30以外の候補を選ぶ場合、交換機MSC30の輻輳レベルよりも低い輻輳レベルの交換機の中から、1つの交換機が選択されてもよい。交換機MSC30の輻輳レベルは50%であり、これより低い輻輳レベルの交換機は、MSC32の交換機1つしかないので、これが接続先となってもよい。MSC31の輻輳レベルは100%なので、転送先の候補には含まれない。交換機MSC30の輻輳レベルよりも低い輻輳レベルの交換機が複数個存在した場合、各自の輻輳レベルに応じて何れか1つの交換機が転送先として決定されてもよいし、あるいは、最も低い輻輳レベルの交換機が転送先として決定されてもよい。輻輳している交換機から通知されている輻輳レベルより小さな輻輳レベルの交換機の中から、転送先の交換機が選択されるので、効率的な負荷分散を速やかに実現できる。
【0066】
ステップS25では、決定された転送先の交換機(MSC30又はMSC32)に呼接続信号が転送される。
【0067】
なお、より低い輻輳レベルの交換機に負荷を配分し直す場合において、全ての交換機が輻輳していた場合、最も輻輳レベルが低い交換機は、負荷をさらに減らすことが困難になってしまうことが懸念される。したがって、このような場合、最も低い輻輳レベルに応じた割合の呼接続信号が拒否されるように、アクセス規制が発動されてもよい。例えば、図示の例の3つの交換機MSC30、MSC31、MSC32の輻輳レベルが、50%、100%、10%であったとする。この場合、MSC32宛の呼接続信号の内、10%の呼接続信号は拒否される。このようにすることで、アクセス規制により拒否する呼接続数を最小限に抑えることができる。
【0068】
<6.第3動作例>
輻輳時に呼接続信号の転送先を変更する上記の方法が、移動局からの呼接続信号の全てについて適用されることは、必ずしも好ましくない。例えば、ユーザ(移動局)が意図的に操作して接続される要求(例えば、音声系サービス等)が、意図されていない他の交換機へ迂回転送されてしまうからである。迂回転送された場合、転送先の交換機には該当する加入者情報が存在しないため、いったん呼接続の失敗となり、位置登録からやりなおす必要が生じる。このような接続の失敗をユーザが体感することは、サービス品質の観点から好ましくない。
【0069】
一方、このような懸念に対処するために、他の交換機へ迂回転送する呼接続信号の種別を位置登録に関するものに限定することが考えられる。位置登録に関する呼接続信号は、ユーザが意識して行うものではない点で、迂回転送に適しているからである。しかしながら、このようにすると、交換機の輻輳レベルが致命的に高い場合でさえも、位置登録に関するもの以外の信号(例えば、音声系サービスの接続要求)が、迂回されずに、輻輳している交換機に転送されてしまう。このため、緊急回避的に負荷を再分配することができなくなってしまうことが懸念される。むしろそのような緊急事態の場合は、呼種別によらず他の交換機へ迂回転送させた方が有利である。
【0070】
他方、位置登録に関する呼接続信号を、他の交換機へ転送する場合に、問題がないわけではない。新規に位置登録する場合、すなわち加入者情報を保持していない交換機へ位置登録要求を行う場合、新たに位置登録要求を受け付けた交換機は、加入者情報を生成し、それまで加入者情報を保持していた旧交換機は加入者情報を削除する。このような処理は、位置登録に関する呼種別に限定して上記の迂回転送を行ったとしても、交換機同士の間で発生する。新規の位置登録でなく、周期的に確認される位置登録の場合、処理を行う交換機が同じであれば、上記のような交換機同士のやりとりは生じない。しかしながら、迂回転送が行われて交換機が変わると、周期的な位置登録でさえ、新たな位置登録の場合と同様に、交換機同士の間で加入者情報をやりとりする必要が生じ、処理負荷が新たに増えてしまうという問題が懸念される。本発明の一実施例における第3動作例は、上記のような問題に対処する。
【0071】
図9は、第3動作例を説明するためのシーケンス図を示す。
【0072】
ステップS91において、交換機SSGN21が、RANAP:OVERLOADメッセージにより輻輳レベルをRNC11に報告している。他の交換機も自身の輻輳レベルをRNC11に報告しているが、図示及び説明の簡明化のため図示されていない。この例の場合、SGSN21が輻輳している。
【0073】
ステップS92において、RNC11は、移動局41から呼接続信号であるRRCメッセージ(RRC Connection Request)を受信している。
【0074】
ステップS93において、RNC11は、受信したRRCメッセージから「Establishment Cause」を抽出及び記憶する。「Establishment Cause」は、呼が位置登録に関するものであるか否かを識別する情報である。
【0075】
RRCコネクション確立後、ステップS94において、RNC11は、移動局41から呼接続信号(Initial Direct Transfer)を受信する。説明の便宜上、この呼接続信号は、アタッチを要求する信号(Attach Request)であるとする。RNC11は、呼接続信号に付随するルーティングパラメータ(IDNNS)からNRIを見出し、接続先として意図されている交換機を特定する。RNC11の呼制御部551は、規制状態管理部54に全ての交換機の輻輳レベルを問い合わせ、接続先のNRIに対応する交換機の輻輳レベルを確認する。説明の便宜上、NRI=1(SSGN21)とする。
【0076】
ステップS95において、RNC11は、受信したメッセージから「CN Domain Identity」と、「IDNNS」とを抽出及び記憶する。「CN Domain Identity」は、接続先がCSドメインかPSドメインかを示す。位置登録にする呼接続信号の場合、「IDNNS」のルーティングベース(Routing basis)情報を考慮することで、位置登録が、新規の位置登録(アタッチ)であるのか、あるいは周期的な位置登録であるかを判別できる。さらに、位置登録が、ロケーションエリア(LA:Location Area)又はルーティングエリア(RA:Routing Area)を跨ったことによる位置登録であるか否かを特定することもできる。
【0077】
ステップS97において、RNC11は、移動局から受信した呼接続信号の種別を判定する。ステップS93、S95及びS96により、RNC11は、位置登録に関する呼であるか否かを示す識別情報(Establishment Cause)と、交換機のドメインを示す情報(CN Domain Identity)と、ルーティングパラメータの情報(IDNNS)とを記憶している。
【0078】
CS/PS両ドメインにおける「Establishment Cause」と「IDNNS」の組み合わせの数は多岐に渡る。しかしながら、呼の種別を判定するのに必要なことは、呼接続信号が、位置登録に関するものか否か、位置登録に関するものである場合、交換機同士が加入者情報をやりとりするか否か(「LA/RA跨り位置登録である」か、あるいは「アタッチ又は周期的な位置登録である」か)がわかればよいので、比較的少ないパターン数に集約できる。このような観点から、第3動作例では、上記の組み合わせのパターンをあらかじめRNC11で保持しておくことで、RNC11は、移動局の呼種別を特定する。
【0079】
RNC11は、図10に示されるような呼種別と迂回開始レベルの対応関係を予め保持している。対応関係は呼種別ごとに、パターンA〜Dのようにいくつかのパターンに分類されている。RNC11は、考察対象の呼接続信号が該当するパターンを特定し、そのパターンの場合に、迂回転送を開始する輻輳レベルを特定する。この対応関係を参照することで、RNC11の呼制御部551は、輻輳している交換機を迂回して、受信した呼接続信号を他の交換機に迂回転送すべきか、そのままNRIの指示どおりに輻輳している交換機に呼接続信号を転送すべきか否かを適切に判断できる。本動作例では、パターンに応じて迂回転送を開始する輻輳レベルが異なる。
【0080】
以後、RNC11は、迂回転送するか否かの判断に従って、迂回転送先の交換機へ呼接続信号を転送する(ステップS98)、又はNRIが示す交換機へ呼接続信号を転送する(ステップS99)。
【0081】
例えばパターンAが、「LA/RA跨りの場合の位置登録発信」、パターンBが「アタッチ又は周期的な位置登録発信」、パターンCが「位置登録ではない通常の発信」、そしてパターンDが「パターンA−C以外の発信」であるように定義したとする。そして、それぞれのパターンについて、迂回転送を開始する輻輳レベルが、10%、50%、90%のように設定されていたとする。
【0082】
呼接続信号の種別が「LA/RA跨りの場合の位置登録発信」(パターンA)であった場合、輻輳レベルが10%になれば、迂回転送が開始される。上述したように、この位置登録はユーザが意識するものではなく、迂回転送に相応しい呼接続信号である。したがって、呼接続信号がこのような位置登録の場合は、迂回転送を積極的に行ってよいので、迂回転送を開始できる輻輳レベルは、比較的低く設定されている。
【0083】
呼接続信号の種別が「アタッチ又は周期的な位置登録発信」(パターンB)であった場合、輻輳レベルが50%に達しなければ、迂回転送は開始されない。パターンAの場合と同様に、位置登録はユーザが意識せずに実行できる。しかしながら、アタッチ又は周期的な位置登録の場合において、使用される交換機が変更されると交換機同士の間で加入者情報をやりとりする新たな負荷が発生してしまう。このため、パターンBの場合に迂回転送を開始できる輻輳レベルは、パターンAの場合よりも高く設定されている。
【0084】
呼接続信号の種別が「位置登録ではない通常の発信」(パターンC)であった場合、輻輳レベルが90%に達しなければ、迂回転送は開始されない。例えば音声発信のような通常の発信の場合、接続先の交換機が、加入者情報を有していない交換機に変更されることは好ましくない。このため、通常の発信についてはできるだけ迂回転送しないように配慮することが好ましい。このため、迂回転送を開始できる輻輳レベルは、90%のように非常に高く設定されている。
【0085】
呼接続信号の種別が「パターンA−C以外の発信」(パターンD)であった場合、輻輳レベルによらず、迂回転送は開始されない。
【0086】
このようにパターン毎に迂回開始輻輳レベルを予め決定しておくことで、状況に応じて相応しい負荷分散を行うことができる。例えば、交換機が少しでも輻輳すると迂回転送が行われるが、迂回転送の対象は、LA/RA跨りの場合の位置登録発信に限られる。この位置登録は、ユーザに接続失敗を感じさせず、かつ交換機同士の間で加入者情報のやりとりが発生しないからである。交換機がかなり輻輳してくると、アタッチによる位置登録及び周期的な位置登録による発信も、迂回転送の対象とする。このような場合は、交換機同士の間で新たなやりとりが多少発生したとしても、輻輳を解消することを優先させた方が有利だからである。そして、交換機が極めて輻輳している場合は、通常の発信でさえも迂回転送の対象とし、輻輳の解消を最優先させる。このように、本動作例によれば、呼接続信号の種別に応じて、迂回転送を開始する輻輳レベルを適切に設定できるので、輻輳を効果的に解消できる。
【0087】
以上のように、本発明の実施例によるRNCは、輻輳状態の交換機を認識し、その輻輳レベルに応じて適切な信号量を他の交換機へ速やかに迂回転送することができ、複数のCNノードの輻輳状態を管理し、それぞれの輻輳レベルに応じて適切な負荷分配を行うことができる。また、交換機は、輻輳したか否かだけでなく、どの程度輻輳しているか、どの程度の信号量の流入を避ければ輻輳を回避できるか等をRNCに通知することができる。RNCは、その通知に応じて、輻輳の程度に応じて各交換機への負荷を適切に配分し直すことができる。これにより、交換機は、能力限界に達する前に、輻輳を効果的に解消することができる。
【0088】
以上本発明は特定の実施例を参照しながら説明されてきたが、それらは単なる例示に過ぎず、当業者は様々な変形例、修正例、代替例、置換例等を理解するであろう。例えば、本発明は、無線ネットワーク局(RNC)が複数の交換機に接続される適切な如何なる移動通信システムに適用されてもよい。例えば本発明は、W−CDMA方式のシステム、HSDPA/HSUPA方式のW−CDMAシステム等に適用されてもよい。発明の理解を促すため具体的な数値例を用いて説明がなされたが、特に断りのない限り、それらの数値は単なる一例に過ぎず適切な如何なる値が使用されてもよい。実施例又は項目の区分けは本発明に本質的ではなく、2以上の項目に記載された事項が必要に応じて組み合わせて使用されてよいし、ある実施例又は項目に記載された事項が、別の項目に記載された事項に(矛盾しない限り)適用されてよい。説明の便宜上、本発明の実施例に係る装置は機能的なブロック図を用いて説明されたが、そのような装置はハードウェアで、ソフトウェアで又はそれらの組み合わせで実現されてもよい。ソフトウェアは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ、読み取り専用メモリ(ROM)、EPROM、EEPROM、レジスタ、ハードディスク(HDD)、リムーバブルディスク、CD−ROM、データベース、サーバその他の適切な如何なる記憶媒体に用意されてもよい。本発明は上記実施例に限定されず、本発明の精神から逸脱することなく、様々な変形例、修正例、代替例、置換例等が本発明に包含される。
【符号の説明】
【0089】
11 RNC
20−22 SGSN
30−32 MSC
40−42 移動局
51 移動局側インターフェース
52 交換機側インターフェース
53 記憶部
54 規制状態管理部
55 制御部
551 呼制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動通信システムにおける複数の交換機に接続された無線ネットワーク制御局であって、
前記複数の交換機と通信するための交換機側インターフェースと、
無線基地局を介して移動局からの呼接続信号を受信する移動局側インターフェースと、
複数の交換機各々の輻輳レベルを管理する管理部と、
制御部と
を有し、前記交換機側インターフェースは、前記複数の交換機各々から、輻輳の程度を示す輻輳レベルの情報を取得し、
前記制御部は、輻輳レベルが高い交換機宛の呼接続信号の内、輻輳レベルに応じた所定の割合の呼接続信号を、輻輳レベルが低い交換機に転送することを決定する、無線ネットワーク制御局。
【請求項2】
前記交換機インターフェースは、前記制御部にしたがって、前記輻輳レベルが高い交換機宛の呼接続信号の内、前記所定の割合の接続信号以外の接続信号を、前記輻輳レベルが高い交換機に転送する、請求項1記載の無線ネットワーク制御局。
【請求項3】
前記複数の交換機全てが輻輳していた場合、前記制御部は、各交換機の輻輳レベルの中で最も低い輻輳レベルに応じた所定の割合の呼接続信号が拒否されるように、アクセス規制を発動することを決定する、請求項1又は2に記載の無線ネットワーク制御局。
【請求項4】
前記管理部は、各交換機の輻輳レベルに応じて輻輳レベルの低い交換機に転送させる信号を、呼接続信号の種別毎に管理し、前記制御部は、呼接続の種別に応じて、呼接続信号の接続先の交換機を決定する、請求項1ないし3の何れか1項に記載の無線ネットワーク制御局。
【請求項5】
複数の交換機と、
複数の交換機に接続された無線ネットワーク制御局と
を有する移動通信システムであって、前記無線ネットワーク制御局は、
前記複数の交換機と通信するための交換機側インターフェースと、
無線基地局を介して移動局からの呼接続信号を受信する移動局側インターフェースと、
複数の交換機各々の輻輳レベルを管理する管理部と、
制御部と
を有し、前記複数の交換機の各々は、輻輳の程度を示す輻輳レベルを前記無線ネットワーク制御局に通知し、
前記無線ネットワーク制御局の前記制御部は、輻輳レベルが高い交換機宛の呼接続信号の内、輻輳レベルに応じた所定の割合の呼接続信号を、輻輳レベルが低い交換機に転送することを決定する、移動通信システム。
【請求項6】
前記交換機インターフェースは、前記制御部にしたがって、前記輻輳レベルが高い交換機宛の呼接続信号の内、前記所定の割合の接続信号以外の接続信号を、前記輻輳レベルが高い交換機に転送する、請求項5記載の移動通信システム。
【請求項7】
前記複数の交換機全てが輻輳していた場合、前記制御部は、各交換機の輻輳レベルの中で最も低い輻輳レベルに応じた所定の割合の呼接続信号が拒否されるように、アクセス規制を発動することを決定する、請求項5又は6に記載の移動通信システム。
【請求項8】
前記管理部は、各交換機の輻輳レベルに応じて輻輳レベルの低い交換機に転送させる信号を、呼接続信号の種別毎に管理し、前記制御部は、呼接続の種別に応じて、呼接続信号の接続先の交換機を決定する、請求項5ないし7の何れか1項に記載の移動通信システム。
【請求項9】
複数の交換機と、複数の交換機に接続された無線ネットワーク制御局とを有する移動通信システムにおける方法であって、
前記無線ネットワーク制御局が、前記複数の交換機各々から、輻輳の程度を示す輻輳レベルの情報を取得し、複数の交換機各々の輻輳レベルを管理し、無線基地局を介して移動局からの呼接続信号を受信するステップを有し、
前記無線ネットワーク制御局は、輻輳レベルが高い交換機宛の呼接続信号の内、輻輳レベルに応じた所定の割合の呼接続信号を、輻輳レベルが低い交換機に転送する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−4934(P2012−4934A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139131(P2010−139131)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】