説明

移動通信端末のマナーモードまたはセルフモード設定方式

【課題】極めて簡単な構成で、かつ極めて簡単な処理モード設定操作により、移動通信端末に対して、マナーモードあるいはセルフモードを自動的に設定することを可能にする。
【解決手段】 ユーザが、乗車駅のホーム又は改札でマナーモードを設定するポイント(始点)の設定を移動通信端末上で行うと、制御部33は、このポイント(始点)の設定を受けてそのとき受信したP−SCを、始点のP−SCとして移動通信端末内部の記憶部34に保存するとともに、ユーザが、ポイント(終点)の設定を移動通信端末上で行うまでに受信したP−SCを時系列として記憶部34に保存する。2回目からは判定部37においてモニタしているセル情報を記憶部34に保存されているデータと比較し、マナーモード設定条件にマッチしているかどうかを判定し、条件にマッチしていると判定された場合、自動的にマナーモードに移行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機等の移動通信端末に対して、着信時、音を鳴らさずにバイブレータの振動、あるいは着信表示のみを行うマナーモード、または電波の送信を停止してカメラや内蔵ゲームのみ使えるようにするセルフモードを設定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の移動通信システムは、携帯電話機等の移動通信端末の急速な性能アップに加え、基地局(ネットワーク)側のサービスエリア拡大により、あらゆるシーンで利用可能となってきている。これにより、ユーザの利便性は格段に向上しているが、どこでも周りを気にせず使用できてしまうため、幾つか社会的問題(公共空間での利用によるトラブル、社会的マナーの低下)も生まれている。そのため、例えば電車やバスといった小スペースな空間では、心臓ペースメーカーを利用されている方への電磁波妨害にあたるとして、利用を規制(制限)するアナウンスが行われている。
【0003】
また、マナー的な観点から、映画館あるいは劇場等において移動通信端末の使用を制限することが求められる場所は多く存在する。一般的に、移動通信端末にはマナー良く使用するためにマナーモードという設定(モード)がある。これは、マナーとして静粛が要求される公共空間で移動通信端末を利用することを可能にするために移動通信端末に搭載されている機能である。通常、マナーモードに設定するためにはユーザ操作が必要であり、そのため、マナーを求められる公共空間ではその都度自発的にマナーモードに変更する必要があった。
【0004】
その一方で、移動通信端末を利用するにあたり、これらのエリアにおける使用を率先して制限しているユーザは少ないのが実状である。また、利用できるから利用してしまうというのがユーザ心理でもある。このような問題を解決する方法として、例えば特許文献1〜2では、移動通信端末の使用禁止エリアへの進入路上に移動通信端末の使用制限信号を送信するゲート、あるいは移動通信端末の使用禁止エリア内に移動通信端末の使用制限信号を送信する送信機を設け、移動通信端末がこの使用制限信号を受信することにより、マナーモード等の所定の使用制限を移動無線端末に対して自動的に設定する技術が提案されている。
【0005】
また、特許文献3では、基地局から報知される報知位置情報を移動通信端末の報知情報検出手段で検出し、該移動通信端末が位置を移動通信網に伝える移動通信端末において、該移動通信端末に、ユーザが指定する特定の報知位置情報、及び、報知位置情報の変化を管理する報知位置情報管理手段と、該報知情報検出手段が検出した報知位置情報が、該報知位置情報管理手段により管理されている情報と一致したときに、予め、登録しておいた該情報に対応した処理を実行する登録処理実行手段を備えることにより、移動通信端末の使用者は、実行サービスの一つである移動通信端末の着信方式を、場所(自宅、図書館、会議室等)に応じて例えば、リンガ、バイブレータ、表示のみ等の選択を自動的に設定可能としている(特許文献3の段落0029等)。
【0006】
【特許文献1】特開2003−134564号公報
【特許文献2】特開2002−044736号公報
【特許文献3】特開平11−018137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜2に記載の技術によれば、例えばユーザが移動通信端末をマナーモードに設定し忘れて移動通信端末の使用制限エリアに入っても、自動的にマナーモードに設定されるので、周囲に迷惑を掛けることを未然に防止することが可能であるが、そのために、移動通信端末の使用禁止エリアへの進入路上に移動通信端末の使用制限信号を送信するゲート、あるいは移動通信端末の使用禁止エリア内に移動通信端末の使用制限信号を送信する送信機を、移動通信端末の使用禁止エリア毎にそれぞれ設けなければならず、そのためのハードウェア、設置作業も必要となり、構成も複雑であってコストがかかるという問題がある。
【0008】
一方、特許文献3に記載の技術によれば、移動通信端末の使用者が、あらかじめ選定した場所(ゾーン)における移動通信端末の所定の処理モード(マナーモード等)を1回設定すれば、それ以降、該移動通信端末が前記選定された場所に位置しているときには、自動的に上記設定された所定の処理モードが実行されるので、上記特許文献1〜2に記載の発明のように、選定された場所に、上記所定の処理モードを実行させるための指示信号を送信する手段を設ける必要はなくなり、簡単な構成でマナーモード等の自動設定手段を実現することができるが、特許文献3に記載の技術の場合、使用者による上記処理モードの設定(登録処理)作業が煩雑である。
【0009】
即ち、特許文献3の図23〜図24に示されているように、使用者が上記処理モードの設定を行う場合、まず、携帯電話機の所有者は、現報知位置情報記憶手段に記憶した報知位置情報に対してユーザ定義エリア名を登録する処理を実行し、さらに、記憶手段に登録した報知位置情報とユーザ定義エリア名に関連付けて、実行サービスを記憶手段に登録する処理を実行しなければならない。
【0010】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、極めて簡単な構成で、かつ極めて簡単な処理モード設定操作により、移動通信端末に対して、着信時、音を鳴らさずにバイブレータを振動させる、または着信表示のみを行うマナーモード、あるいは電波の送信を停止してカメラや内蔵ゲームのみ使えるようにするセルフモードを自動的に設定することが可能な手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の移動通信端末にマナーモードまたはセルフモード設定する方法は、移動通信端末の記憶部に、該移動通信端末に対してマナーモードまたはセルフモードが設定された状態で通過したときに受信した複数の通信サービスエリア情報を記憶しておき、その後、前記移動通信端末が移動中に受信した通信サービスエリアの情報が、連続する第1の所定数に亘って前記記憶されている複数の通信サービスエリア情報の中の連続する前記第1の所定数の通信サービスエリアの情報と一致していることが判定されたとき、前記移動通信端末に対して自動的にマナーモードまたはセルフモードを設定することを特徴としている。
【0012】
また、前記移動通信端末が移動中に受信した通信サービスエリアの情報が、連続する第2の所定数に亘って前記記憶されている複数の通信サービスエリア情報の中の連続する前記第2の所定数の通信サービスエリアの情報と一致しないとき、前記設定されているマナーモードまたはセルフモードを自動的に解除する手段を付加することができる。
【0013】
また、本発明の移動通信端末にマナーモードまたはセルフモードを設定する他の方法は、移動通信端末の記憶部に、該移動通信端末に対してマナーモードが設定されたときに位置していた通信サービスエリアの情報を記憶しておき、その後、前記移動通信端末が受信した通信サービスエリアの情報を前記記憶されている通信サービスエリアの情報と比較し、前記移動通信端末が前記通信サービスエリア内に第1の所定時間滞在していることが判定されたとき、前記移動通信端末に対して自動的にマナーモードを設定することを特徴としている。
【0014】
その場合、前記移動通信端末の記憶部に、該移動通信端末に対してマナーモードまたはセルフモードが設定されたときに位置していた通信サービスエリアの情報と、隣接する通信サービスエリアの情報を記憶し、前記移動通信端末が前記通信サービスエリアまたは前記隣接する通信サービスエリア内に前記第1の所定時間滞在していることが判定されたとき、前記移動通信端末に対して自動的にマナーモードまたはセルフモードを設定する方法とすることもできる。
【0015】
この場合も、前記移動通信端末が、第2の所定時間前記記憶されている通信サービスエリア外であることが判定されたとき、前記移動通信端末に設定されているマナーモードまたはセルフモードを自動的に解除する手段を付加することができる。
【0016】
通常、各サービスエリア(セル)には、それぞれのセルを識別するためのコードである各地点固有の位置登録情報(プライマリースクランブリングコード:以後P−SCと表記する)が割り当てられており、このP-SC信号が各セルの基地局から送信されている。また電源オン状態の移動通信端末は、このP−SCを周期的に受信している。従って例えば、同一経路を通過する場合には、その都度、該経路上の通過セルのP−SCをモニタする確率は高い。
【0017】
そこで、本発明ではこの特徴を利用し、ユーザが移動通信端末にマナーモードまたはセルフモードを設定した時点で受信したP−SCを、始点P−SCとして記憶部に記憶し、以降、マナーモードまたはセルフモードが解除されるまでに周期的に受信したP−SCを時系列として記憶部に記憶し、マナーモードまたはセルフモードが解除された時点で受信したP−SCを、終点P−SCとして記憶部に記憶する。
【0018】
それ以後、移動通信端末の電源がオンされてP−SCを周期的にモニタしているとき、記憶部に記憶されている始点から終点までのP−SCの時系列情報と、受信したP−SCの第1の所定数からなる時系列情報を比較し、記憶部に記憶されている始点から終点までのP−SCの時系列情報の中に、受信したP−SCの第1の所定数からなる時系列情報と一致する時系列情報が検出されたとき、当該移動通信端末を自動的にマナーモードまたはセルフモードを設定する。その後、受信したP−SCの時系列情報と記憶部に記憶されているP−SCの時系列情報との間に第2の所定数に亘って不一致が生じたとき、当該移動通信端末に設定されているマナーモードまたはセルフモードを自動的に解除する。
【0019】
従って、ユーザがマナーモードまたはセルフモードを設定した地域(経路又は場所)に、2回目以降進入した際、移動通信端末内の判定部においてモニタセルのP−SCにより条件判定を行い、条件にマッチした場合自動的にマナーモードもしくはセルフモードへの変更制御が行われるので、ユーザが意図して操作することなくマナーモードまたはセルフモードへの対応が可能となる。
【0020】
あわせて、マナーモードに設定された場合は、間欠受信のインターバルを延ばすことにより、通信可能頻度を下げる代わりに移動通信端末内部の処理を低減することで、消費電力の削減(待ち受け時間の向上)を可能とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、移動通信端末の使用を制限(規制)している空間において、最初、ユーザが自発的にマナーモードやセルフモード設定を行えば、以降、前記空間内に位置しているとき自動的にマナーモードやセルフモードが設定されるので、ユーザが移動通信端末の設定状態を意識することなく、マナー対応が可能となる。
【0022】
また、ユーザは場所ごとに自発設定が可能であるため、マナー対応を必要とする任意のエリアに対して、本制御を有効利用できる。
【0023】
また、本制御時には、移動通信端末の使用が制限(規制)されていることに鑑み、内部処理を低減させるために間欠受信のインターバルを延ばし、消費電力面で効率化を図ることにより、移動通信端末の消費電力の削減(→待ち受け時間向上)を実現することができ、それに伴い、周辺の移動通信端末に対する干渉の抑制効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、本発明の実施形態を示す移動通信端末のブロック構成図である。なお、移動通信端末には、図1に示す構成以外に、キー入力部、音声処理部、スピーカ、マイク等の構成も備えているが、図1では、説明の便宜上、本発明と関連するブロックのみを示している。
【0025】
本発明の移動通信端末は、電波を送受信するアンテナ部31、アンテナ部31で受信した電波を復調して制御部33へ出力するとともに制御部33から入力したデータを変調してアンテナ部31へ出力する無線部32と、記憶部34に格納されている制御プログラムに従って、本発明の制御を含む移動通信端末の各種制御を実行する制御部33と、制御部33が実行する各種制御プログラムを格納するとともに、各種データを保存する、ROM、RAM、フラッシュメモリ等からなる記憶部34と、データを表示するディスプレイ35と、本発明の制御を実行するかどうかを判断する判定部36を備えている。
【0026】
図2は、本実施形態の移動通信端末における制御部33の受信電界計測制御のブロックを示している。図2において、アンテナ部31で受信した電波は、無線部32で復調され、復調されたデータが制御部33に入る。復調されたデータのうち、モニタセルの情報は、受信電界品質チェック部(RRC)44からの指示にもとづき、受信電界計測部(PHY)41からRRC44へ周期的に報告される。
【0027】
本発明では、モニタセルの周期報告をもとに制御部33において各制御条件が定められる。なお、検出されたセルの電界情報(受信電界レベル等)は、一時的に記憶部34にストックされる。また、制御部33は、マナーモードもしくはセルフモード設定時に並行して間欠受信のインターバルを延ばす制御を行うことにより、移動通信端末内部の処理を低減させ消費電力を抑える。これより、移動通信端末の待ち受け時間向上を図る。
【0028】
図3は、例えば、よく利用する電車(またはバス)の乗車区間においてマナーモードあるいはセルフモードを設定する場合の、本発明の第1の実施形態を示す概略図である。
【0029】
ユーザは、この乗車区間においてマナーモードあるいはセルフモードを設定する場合、予め一度だけ乗車駅のホーム又は改札でポイント(始点)の設定を移動通信端末上で行う。制御部33は、このポイント(始点)の設定を受けて、そのとき受信したP−SCを、始点のP−SCとして移動通信端末内部の記憶部34に保存する。この操作により始点が設定された後は、制御部33は、移動通信端末をマナーモードあるいはセルフモードに設定するとともに、セルサーチにより検出されたセルの電界レベルを周期的に計測することにより、モニタするセルのP−SCを時系列的に記憶部34に保存する。そして、下車駅のホーム又は改札でユーザがポイント(終点)の設定を移動通信端末上で行うと、制御部33は、そのとき受信したP−SCを、終点のP−SCとして移動通信端末内部の記憶部34に保存する。
【0030】
このように本発明では、ユーザは、極めて簡単な操作によって、移動通信端末に対してマナーモードあるいはセルフモードを設定することができる。
【0031】
そして、記憶部34に保存されたデータ(セル情報)をもとに、2回目からは判定部37においてモニタしているセル情報を記憶部34に保存されているデータと比較し、マナーモード設定条件にマッチしているかどうかを判定し、条件にマッチしていると判定された場合、自動的にマナーモードに移行させる。既にマナーモード時は、その限りでない。マナーモード設定条件としては、例えば、モニタしているセル情報が、初回(初めてセルが一致する)セルを含めて記録部34に時系列的に保存されている内容(セル情報)と連続して一致する数(N)が、予め設定した数(N_manner)となった(N=N_manner)ときに、条件にマッチしていると判定する。
【0032】
また、本制御によるマナーモード時、音声着信・AV(TV電話)着信があった場合は、『現在マナーモード設定中のため電話にでることができない』旨の音声ガイダンスを自動的に流すよう制御する。
【0033】
また、マナーモードが設定されている状態のときに、マナーモード解除条件にマッチしていると判定された場合には、設定されているマナーモードを自動的に解除する。マナーモード解除条件としては、例えば、モニタしているセル情報が、初回(初めてセルが不一致となる)セルを含めて記録部34に時系列的に保存されている内容(セル情報)と連続して不一致となる数(N)が、予め設定した数(N_exit)となった(N=N_exit)とき、マナーモード解除条件にマッチしていると判定する。
【0034】
図4は、本実施形態の移動通信端末における制御部33の制御動作を示すフローチャートであり、図5は、本実施形態の動作を説明する時系列の例を示しており、図6は、マナーモード設定時におけるP−SCの間欠受信インターバルを延ばす例を示している。以下、図1〜図6を参照して、本実施形態の動作について説明する。
【0035】
ユーザは、移動通信端末の使用が制限(規制)されている地域にて、マナーモード制御の条件となるP−SCを移動通信端末上に登録する。使用制限(規制)地域が電車・バスなどの公共移動乗り物内である場合、ユーザが、移動通信端末をマナーモードに設定して、電車・バスなどの公共移動乗り物を利用すると、本実施形態の移動通信端末は、この公共移動乗り物の移動経路がそのサービスエリアに含まれているセルのP−SCを、ユーザがマナーモードを解除するまで、その移動経路に従って時系列で取得して記憶部34に保存する。例えば図3に示すように、セル1→セル2→セル3→セル4→セル5→セル6→・・・の時系列でモニタセルのP−SCが記憶部34に記憶される。
【0036】
以降、移動通信端末は、IDLE(間欠待ち受け)状態のときに、図3に示す特定地域に入ってそのエリアのセルのP−SCを受信すると、本制御条件にマッチしているか判定する。図5は、N_manner=4(回)、N_exit=3(回)に設定されている場合の動作例を示しており、記憶部34に記憶されているマナーモードが設定されたモニタセルのP−SCの時系列が、1,2,3,4,5,6,7,8,9,10である場合、ユーザがこの特定地域に入ると、記憶部34に記憶されているP−SCが受信される。
【0037】
移動通信端末の判定部36は、受信したP−SCと記憶部34に記憶されているP−SCの時系列とを比較し、受信したP−SCの時系列が、記憶部34に記憶されているP−SCの時系列と連続して例えば4回一致したときには、移動通信端末が上記の電車・バスなどの公共移動乗り物を利用して移動中と考えられるので、本制御の起動する信号を制御部33へ出力する。制御部33は、この起動信号を受けて移動通信端末に対してマナーモードの設定制御を行う。
【0038】
図5の例では、始点(条件に沿う一番目のP−SC1)となるセルをモニタし、その後4回(N=N_manner)連続してマッチしている時点でマナーモードの設定制御を起動する。判定部36は、この制御条件が満たされないときは本制御を起動しない。その後、マナーモード設定状態で、セルのP-SCをモニタしているときに、モニタセルのP-SCが3回(N=N_exit)連続して不一致となった場合、制御部33は、移動通信端末が上記の電車・バスなどの公共移動乗り物から降りたと判定して、移動通信端末に設定されているマナーモードの解除制御を行う。3回連続して不一致とならなければ、マナーモードの解除制御は行わずに、マナーモード制御を継続して実行する。
【0039】
また、本制御時は移動通信端末の使用を大きく制限しても影響が少ないため、並行して、図6に示すように間欠受信のインターバルを延ばすことで、消費電力面で効率化を図る。間欠受信のインターバルを延ばすことは必然的に通信可能頻度とトレードオフになるが、これにより、移動通信端末内部の処理を大きく低減することができるため、消費電力の削減(待ち受け時間の向上)が可能となる。
【0040】
図7は、本発明の第2の実施形態を示す概略図であり、病院・映画館など原則として移動通信端末の使用を禁止している空間において、電波の送信を停止するセルフモードを設定制御する場合の例を示している。
【0041】
本実施形態の場合も、第1の実施形態と同様に、一度ユーザが任意の場所(セル11のサービスエリア)でセルフモードを設定するポイントの設定を移動通信端末上で行うことにより、当該P−SC11を移動通信端末内部の記憶部34に保存する。その際同時に、図7に示すように、報知情報より得られる当該P−SCの隣接セル情報(12〜16)も記憶部34に保存する。
【0042】
図8は、本実施形態の移動通信端末における制御部33の制御動作を示すフローチャートであり、図9は、本実施形態の動作を説明する時系列の例を示している。以下、図1〜図2、図7〜図9を参照して、本実施形態の動作について説明する。
【0043】
ユーザは、移動通信端末の使用が制限(規制)されている地域にて、セルフモード制御の条件となるP−SCを移動通信端末上に登録する。例えば図7に示すように、セルフモードを設定するポイントのセル11と、セル11と隣接しているセル2,3,4,5,6のP−SCが記憶部34に保存される。そして、記録部34に保存された記録データをもとに、2回目からは移動通信端末がIDLE(間欠待ち受け)状態のときに、図7に示す特定地域に入ってそのエリアのセルのP−SCを受信すると、本制御条件にマッチしているか判定する。
【0044】
即ち、制御部33は、記憶部34に本制御(セルフモード)の起動条件となる記憶データが存在しているか判断し(図8、1.)、記憶データが存在していなければ、本制御は行われず、移動通信端末は通常動作状態となっている(図8、2.)。記憶データが存在していれば、判定部36により、モニタしているセル情報と記録データとの間でセルフモード設定条件、例えば、モニタしているセル情報が、記憶部34に保存されている内容(当該セルに滞在している最小設定時間;T_self)に対してT=T_selfの条件にマッチしているかどうかを判定させる(図8、3.)。判定部36は、条件にマッチしていると判定したとき、自動的にセルフモードに移行させるための起動信号を制御部33へ出力する。制御部33はこの起動信号を受けて移動通信端末に対してセルフモードの設定制御を行う(図8、4.)。既にセルフモード時は、その限りでない。
【0045】
また、判定部36は、セルフモードが設定されている状態で、モニタしているセル情報が、記憶部34に保存されている内容(当該セルに滞在している最小設定時間;T_exit)に対してT=T_exitに亘って不一致であるかどうかを判定し(図8、5.)、T_exitに亘って不一致であると判定された場合、自動的にセルフモードを解除するための起動信号を制御部33へ出力する。制御部33はこの起動信号を受けて移動通信端末設定されているセルフモードの解除制御を行う(図8、2.)。これにより、移動通信端末の使用が制限されている空間において、ユーザが意識することなくマナーモードあるいはセルフモードに設定することができ、自動的にマナー対応が可能となる。
【0046】
図9の例では、移動通信端末がIDLE(間欠待ち受け)状態にて病院・映画館などの特定場所に入ってセル11をモニタし、その後60秒(T=T_self)に亘って受信セルのP-SCが記憶部34に保存されているP-SCと一致しているとき、マナーモードの設定制御を起動する。判定部36は、この制御条件が満たされないときは本制御を起動しない。その後、マナーモード設定状態で、セルのP-SCをモニタしているときに、モニタセルのP-SCが30秒(T=T_exit)に亘って記憶部34に保存されているP-SCと不一致となったとき、移動通信端末が上記特定場所から出たと判定して、移動通信端末に設定されているマナーモードの解除制御を行う。マナーモードが設定されている状態で、不一致期間が30秒に満たないときは、マナーモードの解除制御は行わずに、マナーモード制御を継続して実行する。
【0047】
なお、上記の実施形態では、移動通信端末の使用を制限(規制)されている公共空間の代表として、電車(バス)・病院・映画館を例にして説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、マナーモード・セルフモードの設定を必要とするあらゆるシーンで利用可能である。また、マナーモード・セルフモードは、独立して機能させることができる。つまり、移動通信端末に対して両制御を併用することも単独で制御することも可能である。
【0048】
また、本制御を実行するときの条件(パラメータ:N_manner,T_selfの値)、本制御を解除するときの条件(パラメータ:N_exit,T_exitの値)は、可変可能であり、適宜変更して実施できる。それらの値の変更は、予め記憶部34に記憶されているモニタセルの情報により可変制御を実行することもできる。
【0049】
また、実施例では、マナーモードあるいはセルフモードを設定するエリアとして1つの場合について説明したが、例えば、マナーモードを3つのエリアに独立に設定するとともに、セルフモードを1つのエリアに独立に設定する等、本制御を複数設定することも可能である。
【0050】
また、マナーモードあるいはセルフモード制御時に、ユーザが音声通話を発信しようとしたとき、ディスプレイおよび音声ガイダンスにてマナーモードあるいはセルフモード中である旨を知らせる手段を設けることにより、ユーザに、マナーモードあるいはセルフモード設定エリアに居ることを確認させる方法を付加することができる。
【0051】
さらに、本発明では、本実施形態の制御を、例えば、
・月曜 〜 金曜 PM8:00 〜 9:00 −−−−−> マナーモード設定
・4/1(金) PM 1:00 〜 3:00 −−−−−> セルフモード設定
というように、マナーモードあるいはセルフモードの設定を、指定した日時に機能するよう設定することも可能である。
【0052】
また、上記第1の実施形態では、本制御を実行する上で重要な始点・終点の位置登録(当該P−SC)はユーザ操作により実行されているが、例えば、非接触方式ICを内蔵している移動通信端末の場合、駅の自動改札を移動通信端末を利用して通過する際、
・乗車する駅の改札 −−−−−> 始点登録
・下車する駅の改札 −−−−−> 終点登録
として、自動的に始点・終点のP−SCを記録するように構成すれば、始点・終点の位置登録のためのユーザ操作をより簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態を示す移動通信端末のブロック構成図である。
【図2】本実施形態の移動通信端末における制御部の受信電界計測制御のブロックを示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の例を示す概略図である。
【図4】第1の実施形態の移動通信端末における制御部の制御動作を示すフローチャートである。
【図5】第1の実施形態の動作を説明する時系列の例を示す図である。
【図6】マナーモード設定時におけるP−SCの間欠受信インターバルを延ばす例を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態の例を示す概略図である。
【図8】第2の実施形態の移動通信端末における制御部の制御動作を示すフローチャートである。
【図9】第2の実施形態の動作を説明する時系列の例を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1〜10、11〜16 記憶セルのサービスエリア
31 アンテナ
32 無線部
33 制御部
34 記憶部
35 ディスプレイ部
36 判定部
41 受信電界計測(PHY)部
42 フレーム形式規定(MAC)部
43 再送制御(RLC)部
44 受信電界品質チェック(RRC)部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動通信端末の記憶部に、該移動通信端末に対してマナーモードまたは電波の送信を停止するセルフモードが設定された状態で通過したときに受信した複数の通信サービスエリア情報を記憶しておき、その後、前記移動通信端末が移動中に受信した通信サービスエリアの情報が、連続する第1の所定数に亘って前記記憶されている複数の通信サービスエリア情報の中の連続する前記第1の所定数の通信サービスエリアの情報と一致していることが判定されたとき、前記移動通信端末に対して自動的にマナーモードまたはセルフモードを設定することを特徴とする移動通信端末のマナーモードまたはセルフモード設定方法。
【請求項2】
前記移動通信端末が移動中に受信した通信サービスエリアの情報が、連続する第2の所定数に亘って前記記憶されている複数の通信サービスエリア情報の中の連続する前記第2の所定数の通信サービスエリアの情報と一致しないとき、前記設定されているマナーモードまたはセルフモードを自動的に解除することを特徴とする請求項1に記載の移動通信端末のマナーモードまたはセルフモード設定方法。
【請求項3】
前記移動通信端末に内蔵されている非接触方式ICが駅の自動改札を通過したことが検出されたときに受信した通信サービスエリア情報を、前記複数の通信サービスエリア情報の始点および終点の位置登録情報として記憶することを特徴とする請求項1または2に記載の移動通信端末のマナーモードまたはセルフモード設定方法。
【請求項4】
移動通信端末の記憶部に、該移動通信端末に対してマナーモードまたは電波の送信を停止するセルフモードが設定されたときに位置していた通信サービスエリアの情報を記憶しておき、その後、前記移動通信端末が受信した通信サービスエリアの情報を前記記憶されている通信サービスエリアの情報と比較し、前記移動通信端末が前記通信サービスエリア内に第1の所定時間滞在していることが判定されたとき、前記移動通信端末に対して自動的にマナーモードまたはセルフモードを設定することを特徴とする移動通信端末のマナーモードまたはセルフモード設定方法。
【請求項5】
前記移動通信端末の記憶部には、該移動通信端末に対してマナーモードまたはセルフモードが設定されたときに位置していた通信サービスエリアの情報と、隣接する通信サービスエリアの情報が記憶され、前記移動通信端末が前記通信サービスエリアまたは前記隣接する通信サービスエリア内に前記第1の所定時間滞在していることが判定されたとき、前記移動通信端末に対して自動的にマナーモードまたはセルフモードを設定することを特徴とする請求項4に記載の移動通信端末のマナーモードまたはセルフモード設定方法。
【請求項6】
前記移動通信端末が、第2の所定時間前記記憶されている通信サービスエリア外であることが判定されたとき、前記移動通信端末に設定されているマナーモードまたはセルフモードを自動的に解除することを特徴とする請求項4または5に記載の移動通信端末のマナーモードまたはセルフモード設定方法。
【請求項7】
ユーザにより指定された期日及び又は時間に、前記マナーモードまたはセルフモード制御機能が実行されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の移動通信端末のマナーモードまたはセルフモード設定方法。
【請求項8】
前記マナーモードまたはセルフモードが設定されているとき、前記移動通信端末の間欠受信のインターバルを通常動作時よりも延ばすことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の移動通信端末のマナーモードまたはセルフモード設定方法。
【請求項9】
前記マナーモードまたはセルフモードが設定されている状態で、ユーザによる音声通話発信操作が行われたとき、ディスプレイおよびまたは音声ガイダンスにてマナーモードまたはセルフモード中である旨を知らせることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の移動通信端末のマナーモードまたはセルフモード設定方法。
【請求項10】
前記マナーモードが設定されているとき、音声またはAV(TV電話)着信を自動的に拒絶することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の移動通信端末のマナーモード設定方法。
【請求項11】
ユーザによりマナーモードまたは電波の送信を停止するセルフモードが設定された状態で通過したときに受信した複数の通信サービスエリア情報を記憶する記憶部と、
受信した通信サービスエリアの情報を前記記憶部に記憶されている通信サービスエリア情報と比較し、受信した通信サービスエリアの情報が連続する第1の所定数に亘って前記記憶されている複数の通信サービスエリア情報の中の連続する前記第1の所定数の通信サービスエリアの情報と一致していることが判定されたとき一致信号を出力する判定部と、
前記判定部から前記一致信号を受けてマナーモードまたはセルフモードの設定制御を行う制御部と、
を備えていることを特徴とする移動通信端末。
【請求項12】
前記判定部は、受信した通信サービスエリアの情報が連続する第2の所定数に亘って前記記憶されている複数の通信サービスエリア情報の中の連続する前記第2の所定数の通信サービスエリアの情報と不一致が生じたときに不一致信号を出力し、前記制御部は、前記判定部から前記不一致信号を受けて前記設定されているマナーモードまたはセルフモードの解除制御を行うことを特徴とする請求項8に記載の移動通信端末。
【請求項13】
前記移動端末は、駅の自動改札を通過時に非接触で該自動改札側と通信を行う非接触方式ICを内蔵しており、
前記記憶部には、前記非接触方式ICにより前記自動改札を通過したことが検出されたときに受信した通信サービスエリア情報が、前記複数の通信サービスエリア情報の始点および終点の位置登録情報として記憶されることを特徴とする請求項11または12に記載の移動通信端末。
【請求項14】
ユーザによりマナーモードまたは電波の送信を停止するセルフモードが設定されたときに位置していた通信サービスエリアの情報を記憶する記憶部と、
受信した通信サービスエリアの情報を前記記憶部に記憶されている通信サービスエリア情報と比較し、受信した通信サービスエリアの情報が第1の所定時間前記記憶されている通信サービスエリア情報と一致していることが判定されたとき一致信号を出力する判定部と、
前記判定部から前記一致信号を受けてマナーモードまたはセルフモードの設定制御を行う制御部と、
を備えていることを特徴とする移動通信端末。
【請求項15】
ユーザによりマナーモードまたは電波の送信を停止するセルフモードが設定されたときに位置していた通信サービスエリアの情報と、隣接する通信サービスエリアの情報を記憶する記憶部と、
受信した通信サービスエリアの情報を前記記憶部に記憶されている通信サービスエリア情報および隣接する通信サービスエリアの情報と比較し、受信した通信サービスエリアの情報が第1の所定時間前記記憶されている通信サービスエリア情報または隣接する通信サービスエリアの情報と一致していることが判定されたとき一致信号を出力する判定部と、
前記判定部から前記一致信号を受けてマナーモードまたはセルフモードの設定制御を行う制御部と、
を備えていることを特徴とする移動通信端末。
【請求項16】
前記判定部は、受信した通信サービスエリアの情報が第2の所定時間前記記憶されている通信サービスエリア情報または隣接する通信サービスエリアの情報と不一致のときに、不一致信号を出力し、前記制御部は、前記判定部から前記不一致信号を受けて前記設定されているマナーモードまたはセルフモードの解除制御を行うことを特徴とする請求項14または15に記載の移動通信端末。
【請求項17】
前記制御部は、前記マナーモードまたはセルフモードが設定されているとき、前記移動通信端末の間欠受信のインターバルを通常動作時よりも延ばす制御を行うことを特徴とする請求項11〜16のいずれか1項に記載の移動通信端末。
【請求項18】
前記マナーモードまたはセルフモード制御機能が実行される期日及び又は時間を指定可能にする手段を備えていることを特徴とする請求項11〜17のいずれか1項に記載の移動通信端末。
【請求項19】
前記マナーモードまたはセルフモードが設定されている状態で、ユーザによる音声通話発信操作が行われたとき、ディスプレイおよびまたは音声ガイダンスにてマナーモードまたはセルフモード中である旨を通知する手段を備えていることを特徴とする請求項11〜18のいずれか1項に記載の移動通信端末。
【請求項20】
前記制御部は、前記マナーモードが設定されているとき、音声またはAV(TV電話)着信を自動的に拒絶する制御を行うことを特徴とする請求項11〜19のいずれか1項に記載の移動通信端末。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−142593(P2007−142593A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−330712(P2005−330712)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】