説明

移動通信装置

【課題】逆拡散処理の遅延量が異なる異種類のチャネル間の無瞬断ハンドオーバを可能とする移動通信装置を提供する。
【解決手段】移動通信装置内で受信信号の逆拡散処理を行う所定のベースバンド処理部において、所定ベースバンド部における第一の信号処理部で逆拡散処理されている受信信号のチャネル種別が第一のチャネル(E-DPDCH)から第二のチャネル(DPDCH)に変更されるときに、第二のチャネルに対応する受信信号の逆拡散処理の開始タイミングが第一のチャネルに対応する受信信号の逆拡散処理の停止タイミングより早い場合、第一の信号処理部の逆拡散処理をその終了タイミングで停止させ、第二のチャネルに対応する受信信号の逆拡散処理を、その開始タイミング(又はそれより前のタイミング)から第一の信号処理部とは別の第二の信号処理部で開始させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペクトラム拡散通信技術を用いたCDMA(Code Division Multiple Access)方式による移動通信装置に関し、特に、受信信号のチャネル種別切替時にハンドオーバ処理を行う移動通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CDMA方式を採用した第3世代(3G)の移動通信方式であるW-CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)の標準規格である3GPP(3rd Generation Partnership Project)の「Release99」に準拠するDPDCHチャネルと、3GPPの「Release6」に準拠するE-DPDCHチャネルは、共に移動端末から基地局への上り方向(アップリンク)のデータチャネルである。
【0003】
DPDCHチャネルは、主に音声信号やパケットデータサービスのデータ伝送に使用され、E-DPDCHチャネルは、HSUPA(High Speed Uplink Packet Access)として高速データサービスのデータ伝送向けのチャネルである。なお、下り方向の高速データ伝送については、3GPPの「Release5」において、HSDPA(High Speed Downlink Packet Access)として標準化されている。
【0004】
「Release99」、「Release5」、「Release6」におけるアップリンク(Uplink)伝送に用いられるチャネルを整理すると以下の通りとなる。
【0005】
Release99:DPCCH+DPDCH
Release5 :DPCCH+DPDCH+HS-DPCCH
Release6 :DPCCH+HS-DPCCH+E-DPCCH+E-DPDCH
すなわち、Release99及びRelease5におけるアップリンクデータチャネルであるDPDCHは、Release99では、制御チャネルであるDPCCHとともに伝送され、Release5においてはDPCCH及びHSDPA用の制御チャネルであるHS-DPCCHとともに伝送される。そして、Release6におけるアップリンクデータチャネルであるE-DPDCHは、DPCCH、HS-DPCCH及びHSUPA用の制御チャネルであるE-DPCCHとともに伝送される。
【0006】
図1は、受信側(基地局装置)におけるDPDCHチャネル及びE-DPDCHの逆拡散処理のタイミングチャートを示す図である。図1(a)におけるDPDCHチャネルでは、1フレーム(例えば10ms周期)につき、一つの移動端末(UE)が割り当てられ、各フレームにおいて、受信レートは可変となっている。
【0007】
図1(b)におけるE-DPDCHチャネルでは、1フレーム(10ms周期)内に複数の移動端末(UE)が割り当て可能であり、処理する移動端末が例えば2ms毎に切り替え可能となっている。図では、最初のフレームでは、2ms毎に順に移動端末UE#1、UE#2、UE#3、UE#4からのデータ信号を逆拡散処理し、各移動端末に対する受信レートも受信環境に応じて可変である。もちろん、DPDCHチャネル同様に、1フレームにおいて、同一の移動端末のみに対する処理が行われてもよい。また、フレーム内において、処理が行われないタイミングが存在する場合もある。
【0008】
図2は、DPDCHチャネルの逆拡散処理のタイミング調整を説明する図である。データの逆拡散処理タイミングは、相関検出から得られるパス情報により求められるが、電波環境や移動端末の移動によりデータの受信タイミングが変動すると、逆拡散処理するデータが一部重なってしまう状況が生じる。
【0009】
例えば、移動端末が基地局に対して近づきながら移動している場合、データの受信タイミングは、前のフレームの受信タイミングより早くなるので、先に受信されたデータ1と後に受信されたデータ2の一部が重なってしまう。逆拡散処理タイミングも重なってしまうと、同一のチャネルでは、重複部分の一方(データ1の重複部分)を逆拡散できず、データが一部欠落してしまう。これを防ぐために、図示されるように、受信したデータ2をバッファに蓄積して、その処理タイミングを遅延させることで、処理タイミングが重複するのを避けることができる。このときに必要なバッファの遅延量は、基地局と移動端末との最大距離における伝搬遅延分を吸収する量で足りる。例えば、基地局のアンテナでカバーするセル半径が50kmの場合の最大伝搬遅延量は333μsである。
【0010】
下記特許文献1には、伝搬遅延量が大きいパスから伝搬遅延量が小さいパスへの切り替え時に、逆拡散結果の欠損を生じさせないように、逆拡散重複期間において、複数の逆拡散器を動作させ、それぞれの逆拡散結果をバッファに記憶させ、順次読み出すことにより、タイミング調整を行う技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−72508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図3は、バッファを用いたE-DPDCHチャネルの逆拡散処理のタイミング調整を説明する図である。E-DPDCHチャネルにおいても、DPDCHチャネルと同様に、バッファによりデータ重複期間分を吸収する手法を採用することで、重複部分のデータ欠損を防止することができる。しかしながら、E-DPDCHチャネルでは、上述したように、1フレーム内において、複数の移動端末からの受信データを処理するため、バッファは、伝搬遅延分に加えて、移動端末毎の遅延差を吸収する遅延量を必要とする。図3では、4つの移動端末の受信タイミングをそろえるために1スロット分(1フレーム10msで15スロットの場合、1スロットは667μs)の遅延量が必要となる。なお、2ms(3スロット)毎に移動端末を切り替える場合、最大2ms(3スロット分)の遅延量が必要となり、DPDCHチャネルと比較して、大幅に大きい遅延量を必要とする。
【0012】
さらに、DPDCHチャネルを用いたアップリンク通信とE-DPDCHチャネルを用いたアップリンク通信を同一の移動端末内で切り替えられる場合、基地局装置では、DPDCHチャネルとE-DPDCHチャネル間のハンドオーバ処理が必要となるが、上述したように、DPDCHチャネルとE-DPDCHにおける逆拡散処理の最大遅延量の相違から、DPDCHチャネルとE-DPDCHチャネル間の無瞬断ハンドオーバを行う場合に、逆拡散処理の重複が生じる。
【0013】
図4は、DPDCHチャネルとE-DPDCHチャネルの逆拡散処理タイミングを示す図であり、図4(a)に示すように、DPDCHチャネルにおける遅延量(遅延量1)に対して、E-DPDCHチャネルにおける遅延量(遅延量2)の方が大きいため、図4(b)に示すように、E-DPDCHチャネルからDPDCHチャネルへのハンドオーバを行う場合、逆拡散するデータが重複する問題が生じる。逆拡散するデータが重複すると、一方のデータ(この場合E-DPDCHチャネル)の重複部分を逆拡散できず、データ欠損が生じる。
【0014】
DPDCHチャネルにおける遅延量1をE-DPDCHチャネルにおける遅延量2に合わせることで、ハンドオーバ時の両者の処理タイミングを合わせることができるが、DPDCHチャネルのバッファ量を増やすことになり、回路規模の増大を招く。また、DPDCHチャネルは、音声通話に用いられるチャネルであるので、遅延量を増大させることで、音声品質の劣化を招く弊害が生じる。
【0015】
そこで、本発明の目的は、逆拡散処理の遅延量を増大させることなく、逆拡散処理の遅延量が異なる異種類のチャネル間の無瞬断ハンドオーバを可能とする移動通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するための移動通信装置の第一の構成は、受信信号を逆拡散処理可能な複数の信号処理部を含む複数のベースバンド部と、前記複数のベースバンド部を制御する制御部とを備え、前記複数のベースバンド部のうちの第一のベースバンド部における第一の信号処理部で逆拡散処理されている所定受信信号のチャネル種別が第一のチャネルから第二のチャネルに変更されるときに、前記第二のチャネルに対応する前記所定受信信号の逆拡散処理の開始タイミングが前記第一のチャネルに対応する前記所定受信信号の逆拡散処理の停止タイミングより早い場合、前記制御部は、前記第一の信号処理部の逆拡散処理を前記終了タイミングで停止させ、前記第二のチャネルに対応する前記受信信号の逆拡散処理を、遅くとも前記開始タイミングから前記第一の信号処理部とは別の第二の信号処理部で開始させる。
【0017】
移動通信装置の第二の構成は、上記第一の構成において、前記第二の信号処理部は、前記第一のベースバンド部における未使用の信号処理部である。
移動通信装置の第三の構成は、上記第一の構成において、前記第二の逆拡散処理部は、前記第一のベースバンド部とは別の第二のベースバンド部における未使用の信号処理部である。
【0018】
移動通信装置の第四の構成は、上記第一の構成において、前記第一の信号処理部は、逆拡散処理された復調信号の出力を前記停止タイミングで停止する第一の出力制御部を有し、前記第二の信号処理部は、逆拡散処理された復調信号を前記開始タイミングから上位装置に出力する第二の出力制御部を有する。
【0019】
移動通信装置の第五の構成は、上記第一の構成において、前記第一のチャネルはE-DPDCHチャネルであり、前記第二のチャネルはDPDCHチャネルである。
【発明の効果】
【0020】
チャネル間のハンドオーバ処理において、変更後のチャネルの逆拡散処理を別の未使用の信号処理部(ベースバンド処理部)に割り当てることで、移動通信装置のチャネルリソースを有効に活用でき、回路規模の増大が抑制される。また、逆拡散処理の遅延量を増大させる必要がなく、通信品質の劣化を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0022】
本実施の形態における移動通信装置は、CDMA(符号分割多重接続)通信方式(W-CDMAを含む)を採用する移動通信システムにおける基地局装置であり、基地局装置(BTS)は、移動端末(UE)からのアップリンク信号を受信し、そのアップリンク信号を逆拡散処理して、上位装置の基地局制御装置(RNC)に伝送し、一方、基地局制御装置(RNC)からのDownlink信号を受信すると、そのDownlink信号を拡散処理して、移動端末(UE)に送信する。本実施の形態例では、アップリンク信号の逆拡散処理時におけるチャネル切替によるハンドオーバ処理について説明する。基地局装置は、アップリンク信号のチャネルとして、上述したDPDCHチャネル及びE-DPDCHチャネルの両方を逆拡散処理するものとする。
【0023】
図5は、本発明の実施の形態における基地局装置(BTS : Base Transceiver Station)の構成例を示す図である。基地局装置(BTS)は、移動端末(UE)からのアップリンク信号を受信する受信部1、受信信号を復調する複数のベースバンドカード(BBカード)2、上位装置である基地局制御装置(RNC : Radio Network Controller)との通信を中継するインターフェースカード(HWY)3及びベースバンドカード2とインターフェースカード3を制御する制御カード(CP)4を備える。1台の基地局装置(BTS)は、例えば、15枚のベースバンドカード(BB)2を備え、そのうちの1枚は、他のベースバンドカードが故障した場合に用いられる予備カードであり、通常運用においては用いられない。また、各ベースバンドカード2は、同時に複数チャネルの信号処理が可能なように、複数の信号処理回路(本実施の形態例では、アップリンク処理部)を並列に搭載する。
【0024】
図6は、本発明の実施の形態における基地局装置のベースバンドカード2の構成例を示す図である。受信部1のアンテナで受信された受信信号はI信号とQ信号に分離され、それぞれA/D変換されて受信データ信号(I/Q)として複数のアップリンク処理部10それぞれに入力される。なお、図6では、受信データ信号(I/Q)を一本の信号として表している。
【0025】
各アップリンク処理部10は、制御カード4の制御により割り当てられたチャネルに対応する受信信号の逆拡散処理を実行する。アップリンク処理部10は、逆拡散部11、検波処理部12、復調部13、パス検出部14及びスケジューリング部15及びスイッチ17を備える。図6では、2つのアップリンク処理部10が示されるが、各アップリンク処理部10は同一機能を有し、1枚のベースバンドカード2に搭載されるアップリンク処理部の数はこれに限られない。
【0026】
逆拡散部11は、DPDCHチャネルを逆拡散するDPDCH逆拡散部111とE-DPDCHチャネルを逆拡散するE-DPDCH逆拡散部112の両方を備え、さらに、制御チャネル(DPCCH,HS-DPCCH,E-DPCCH)を逆拡散する制御チャネル逆拡散部113を備える。逆拡散処理された制御チャネルは、検波処理部12に入力される。
【0027】
DPDCH逆拡散部111は、逆拡散処理するデータのパス切替時の重複を避けるためのバッファ111Aを有し、E-DPDCH逆拡散部112も逆拡散処理するデータのパス切替時(移動端末切替時も含む)の重複を避けるためのバッファ112Aを有する。このとき、図2、3及び4で説明したように、DPDCHチャネル用のバッファ111Aの遅延量は図4における遅延量1に相当し、E-DPDCHチャネル用のバッファ112Aの遅延量は図4における遅延量2に相当し、バッファ111Aはバッファ112Aより小さい。すなわち、上述したように、遅延量1は、基地局と移動端末との最大距離における伝搬遅延分を吸収する量であり、遅延量2は、遅延量1に加えてさらに移動端末毎の遅延差を吸収する量を必要とする。
【0028】
選択部114は、逆拡散されたDPDCHチャネル又はE-DPDCHチャネルのうち現在使用されているチャネルを選択して検波処理部12に出力する。
【0029】
検波処理部12は、制御チャネルにより同期検波情報を取得し、DPDCHチャネル又はE-DPDCHチャネルの検波を行い、RAKE合成処理などによりデータ信号を生成する。
【0030】
復調部13は、データ信号に対して復号処理、誤り訂正処理を実施し、復調データを出力する。
【0031】
パス検出部14は、受信データ信号に対する相関検出処理を行い、逆拡散処理の開始タイミングであるパス情報を逆拡散部11に供給する。
【0032】
スケジューリング部15は、HSUPAであるE-DPDCHチャネルの逆拡散コード割り当てや、逆拡散処理のシンボルレートの指定などを実施する(Mac-e制御)。
【0033】
MPU16は、アップリンク処理部10を制御する制御部であり、チャネルを起動するためのチャネルパラメータの指定やチャネル切替時のハンドオーバ制御を実行する。
【0034】
スイッチ17は、逆拡散処理された復調データの出力ON/OFFを切り替えるスイッチである。
【0035】
上記構成において、DPDCH拡散部111のバッファ111AがE-DPDCHのバッファ112Aより小さい場合、上述したように、E-DPDCHチャネルからDPDCHチャネルへのハンドオーバ時において、逆拡散処理するデータが重複する。本実施の形態例では、重複したデータを両方とも同時に逆拡散処理するために、E-DPDCHチャネルからDPDCHチャネルへのハンドオーバを行う場合、ハンドオーバ対象の移動端末に対していままでチャネル割り当てされていたアップリンク処理部から、同一のベースバンドカード内の未使用のアップリンク処理(空きリソース)又は別のベースバンドカード内の空きリソースへ切り替える。
【0036】
ハンドオーバ時に逆拡散処理するアップリンク処理部を切り替えることで、重複したE-DPDCHチャネルのデータとDPDCHチャネルの受信信号を同時に逆拡散処理することが可能となる。
【0037】
図7は、本実施の形態におけるE-DPDCHチャネルからDPDCHチャネルへのハンドオーバ処理のフローチャートである。また、図8は、本実施の形態におけるE-DPDCHチャネルからDPDCHチャネルへのハンドオーバ処理のタイミングチャートである。図7及び8の例では、所定の移動端末(UE)からのアップリンク信号の逆拡散処理するアップリンク処理部を、当該移動端末(UE)に対して現在割り当てられているベースバンドカード2−1のアップリンク処理部から別のベースバンドカード2−2の未使用アップリンク処理部に切り替える例を示す(ベースバンドカード2−1の各構成要素には、添字「−1」を付し、ベースバンドカード2−2の各構成要素には、添字「−2」を付す)。
【0038】
制御カード4のMPU41は、所定の移動端末に対する基地局制御装置(RNC)からE-DPDCHチャネルからDPDCHチャネルへのハンドオーバ要求を受信することで、該ハンドオーバ処理を開始する。この時点で、ベースバンドカード2−1のアップリンク処理部10−1は、逆拡散処理を実行しており(受信ON状態)、選択部114−1により、E-DPDCHチャネルの逆拡散処理結果が選択されて出力される。
【0039】
制御カード4のMPU41は、ベースバンドカード2−1に対してパラメータ要求を行う(S102)。要求するパラメータは、ハンドオーバ対象の移動端末(UE)の逆拡散コード番号や逆拡散処理のタイミング情報を含む。ベースバンドカード2−1のアップリンク処理部10−1は、パラメータを生成する(S104)。生成されたパラメータは、アップリンク処理部10−1からMPU16−1を介して制御カード4のMPU41に転送される。
【0040】
続いて、制御カードのMPU41は、ハンドオーバ先のベースバンドカード2−2に対して、受信ON要求(逆拡散処理開始要求)を行う(S106)。制御カード4は、配下のベースバンドカード内のアップリンク処理部の使用/未使用を管理しており(図9参照)、一つの未使用アップリンク処理部(空きリソース)を選択する。図7の例では、ベースバンドカード2−2のアップリンク処理部10−2を選択し、ベースバンドカード2−2のMPU16−2に対して受信ON要求する。
【0041】
また、ベースバンドカード2−1から取得したパラメータをベースバンドカード2−2のMPU16−2に転送する。
【0042】
ベースバンドカード2−2のMPU16-2は、パラメータをアップリンク処理部10−2に設定し、アップリンク処理部10−2を起動し、受信ON設定する。これにより、アップリンク処理部10−2は、逆拡散処理を開始し、受信ON状態となる(S108)。このとき、選択部114−2は、DPDCHチャネルの逆拡散処理結果を選択して、出力する。ただし、ベースバンドカード2−2のスイッチ17−2は閉じた状態のままであり、復調信号はベースバンドカード2−2から出力されない。すなわち、データチャネルはE-DPDCHチャネルからDPDCHチャネルにまだ切り替わっていないが、事前にDPDCHチャネルの逆拡散処理を開始しておき、後述の切替タイミングパラメータにより、DPDCHチャネルの逆拡散処理結果を出力するようにすることで、ハンドオーバが実現される。
【0043】
アップリンク処理部10−2が受信ON状態となると、受信ON完了信号を制御カード4のMPU41に応答する。
【0044】
MPU41は、受信ON完了信号を受信すると、ハンドオーバ要求を行う(S110)。具体的には、ベースバンドカード2−1に対して受信OFF要求を行うとともに、ベースバンドカード2−2に対して切替タイミングパラメータを転送して、ハンドオーバ要求を行う。切替タイミングパラメータは、受信信号がE-DPDCHチャネルからDPDCHチャネルに切り替わるタイミング(図8のt1)であり、移動端末(UE)の伝搬遅延を考慮したタイミングであるので、E-DPDCHチャネルの逆拡散処理が終了するタイミング(図8のt2)より早いタイミングとなる。切替タイミングパラメータの設定とハンドオーバ要求により、ベースバンド処理部2−2のスイッチ17−2は、タイミングt1で復調データを出力開始させ、E-DPDCHチャネルからDPDCHチャネルへの無瞬断ハンドオーバが実現する(S112)。
【0045】
一方、E-DPDCHチャネルの逆拡散処理が終了するタイミングt2は、受信OFF要求に含まれており、ベースバンドカード2−1のアップリンク処理部10−1は、タイミングt2で逆拡散処理を停止するとともに、スイッチ17−1もタイミングt2で復調データの出力を停止する(受信OFF状態)(S114)。
【0046】
制御カード4のMPU41は、ベースバンドカード2−2からのハンドオーバ完了信号及びベースバンドカード2−1からの受信OFF完了信号を受信し、ハンドオーバ処理を完了する。
【0047】
図8に示されるように、E-DPDCHチャネルからDPDCHチャネルへのハンドオーバ時において、DPDCHチャネルの逆拡散処理を別の未使用アップリンク処理部に割り当て、DPDCHチャネルの逆拡散処理開始タイミングとE-DPDCHチャネルの逆拡散処理終了タイミングをずらすことで、逆拡散処理が重複する期間(タイミングt1−t2間)において、2チャネルの逆拡散処理を同時に実行することが可能となる。
【0048】
インターフェースカード3は、タイミングt1−t2間において、同一の移動端末(UE)についてDPDCHチャネルとE-DPDCHチャネルの復調信号を同時に受信するが、E-DPDCHチャネル復調信号の後にDPDCHチャネルの復調信号を基地局制御装置(RNC)に送信する。
【0049】
図7の処理では、スイッチ17―1、17−2がタイミングt1及びt2での逆拡散信号の出力ON/OFF制御を行う例を示したが、選択部114−1、114−2にその制御機能を実施させることもできる。
【0050】
図9は、制御カード4におけるリソース管理を説明する図であり、制御カード4のリソース管理メモリの状態を模式的に示す図である。各チャネルはベースバンド処理部10に相当する。また、状態1、2、3は、それぞれ図7及び図8のそれらと対応し、状態1(〜S108)は、ベースバンド2−2が受信ON状態になる前の状態であり、ベースバンドカード2−1のアップリンク処理部2−1(チャネル01に相当)のみが受信ON状態である。状態2(S108〜S114)は、ベースバンド2−1のアップリンク処理部2−1(チャネル01に相当)、ベースバンドカード2−2のアップリンク処理部10−2(チャネル02に相当)ともに受信ONの状態となっている。状態3(S114〜)は、ベースバンドカード2−2のアップリンク処理部10−2(チャネル02に相当)のみが受信ON状態となり、ベース板東カード2−1のアップリンク処理部10−1(チャネル01に相当)は、受信OFF状態となっている。
【0051】
上述の例では、ハンドオーバ対象の移動端末に対してチャネル割り当てされるアップリンク処理部を、別のベースバンドカードの未使用アップリンク処理部に切り替える例を示したが、同一のベースバンドカード内の未使用アップリンク処理に切り替える処理も、上述と同様に行われる(例えば、ベースバンドカード2−1の未使用チャネル)。また、別のベースバンドカードは、通常運用用カードであってもよいし、予備カード(通常運用では使用されず、通常運用用カードに故障、障害が発生した場合にのみ使用されるカード)のいずれであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】受信側(基地局装置)におけるDPDCHチャネル及びE-DPDCHの逆拡散処理のタイミングチャートを示す図である。
【図2】DPDCHチャネルの逆拡散処理のタイミング調整を説明する図である。
【図3】バッファを用いたE-DPDCHチャネルの逆拡散処理のタイミング調整を説明する図である。
【図4】DPDCHチャネルとE-DPDCHチャネルの逆拡散処理タイミングを示す図である。
【図5】本発明の実施の形態における基地局装置(BTS : Base Transceiver Station)の構成例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態における基地局装置のベースバンドカード2の構成例を示す図である。
【図7】本実施の形態におけるE-DPDCHチャネルからDPDCHチャネルへのハンドオーバ処理のフローチャートである。
【図8】本実施の形態におけるE-DPDCHチャネルからDPDCHチャネルへのハンドオーバ処理のタイミングチャートである。
【図9】制御カード4におけるリソース管理を説明する図である。
【符号の説明】
【0053】
1:受信部、2:ベースバンドカード、3:インターフェースカード、4:制御カード、10:アップリンク処理部、11:逆拡散部、12:検波処理部、13:復調部、14:パス検出部、15:スケジューリング部、16:MPU、17:スイッチ、111:逆拡散部DPDCH、111A:バッファ、112:E-DPDCH逆拡散部、112A:バッファ、113:制御チャネル逆拡散部、114:選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号を逆拡散処理可能な複数の信号処理部を含む複数のベースバンド部と、
前記複数のベースバンド部を制御する制御部とを備え、
前記複数のベースバンド部のうちの第一のベースバンド部における第一の信号処理部で逆拡散処理されている所定受信信号のチャネル種別が第一のチャネルから第二のチャネルに変更されるときに、前記第二のチャネルに対応する前記所定受信信号の逆拡散処理の開始タイミングが前記第一のチャネルに対応する前記所定受信信号の逆拡散処理の停止タイミングより早い場合、前記制御部は、前記第一の信号処理部の逆拡散処理を前記終了タイミングで停止させ、前記第二のチャネルに対応する前記受信信号の逆拡散処理を、遅くとも前記開始タイミングから前記第一の信号処理部とは別の第二の信号処理部で開始させることを特徴とする移動通信装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第二の信号処理部は、前記第一のベースバンド部における未使用の信号処理部であることを特徴とする移動通信装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記第二の逆拡散処理部は、前記第一のベースバンド部とは別の第二のベースバンド部における未使用の信号処理部であることを特徴とする移動通信装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記第一の信号処理部は、逆拡散処理された復調信号の出力を前記停止タイミングで停止する第一の出力制御部を有し、
前記第二の信号処理部は、逆拡散処理された復調信号を前記開始タイミングから上位装置に出力する第二の出力制御部を有することを特徴とする移動通信装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記第一のチャネルはE-DPDCHチャネルであり、前記第二のチャネルはDPDCHチャネルであることを特徴とする移動通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−74404(P2010−74404A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238296(P2008−238296)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】