説明

移植可能な浸透ポンプと一緒の使用のためのモジュール型の吸入速度低下器

浸透ポンプシステムは、少なくとも1つの送出口を有するカプセル、カプセルの内部と外部の間の流体−透過性障壁を提供する送出口から離れたカプセルの開放端部に保持された膜栓、並びにカプセルに連結可能な取り外し可能な吸入速度低下器を含む。吸入速度低下器は膜栓の表面積より小さい選択された寸法を有するオリフィスと選択された厚さ、表面積、放射圧縮、および透過性を有する膜よりなる群から選択される1つもしくはそれ以上の流調節器を含んでなる。吸入速度低下器は薬品の注文送出を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、有益剤(beneficial agent)を送出するための移植可能な浸透ポンプに関する。より特に、本発明は有益剤の送出速度を調節するための半透膜を有する移植可能な浸透ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
有益剤を患者の体内に送出するための移植可能な浸透ポンプは当該技術で既知である。説明目的のために、図1は移植可能なカプセル102を有する典型的な移植可能な浸透ポンプ100の断面図を示す。送出口104はカプセル102の閉鎖された端部106に形成され、そして半透膜栓108がカプセル102の開放端部110内に受容される。半透膜栓108はカプセル102の外部および内部の間で流体−透過性障壁を形成する。ピストン112がカプセル102内に配置され、カプセル102の中に2つの室114、116を形成する。室114は浸透剤118を含有し、そして室116は有益剤120を含有する。浸透ポンプ100が患者内に移植される時に、患者の体からの流体が半透膜栓108を通って室114に入り、浸透剤118を浸透させそして浸透剤118を膨潤させる。膨潤した浸透剤118がピストン112を半透膜栓108から離れた方向に押し、室116の容量を減少させそしてある量の有益剤120をカプセル102の外に送出口104を通って患者の体内に強制的に出す。
【0003】
浸透ポンプ100が有益剤を患者に送出する速度は、流体が半透膜栓108中で膨潤する速度に依存する。流体が吸入される速度は、半透膜栓108の透過性、厚さ、露出表面積、および放射方向の圧縮に依存する。それ故、浸透ポンプ100が組み立てられると、有益剤120が患者に送出されるであろう速度はすでに設定されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このことが例えば看護人が非標準的投与処方を用いて患者に対する薬用量投与の融通性を必要とする個人専用の管理の如き用途における浸透ポンプの使用を限定している。これらの用途のためには、浸透ポンプの送出速度を製造後に且つ移植前に調節できることが有利でありうる。好ましくは、調節手段は浸透ポンプが有益剤を分配する能力に悪影響を与えない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要旨
1つの面において、本発明は、少なくとも1つの送出口を有するカプセル、カプセルの内部および外部の間の流体−透過性障壁を提供する送出口から離れたカプセルの開放端部に保持された膜栓、並びにカプセルに連結された取り外し可能な吸入速度低下器を含んでなる浸透ポンプシステムに関する。吸入速度低下器は膜栓の表面積より小さい選択された寸法を有するオリフィスと選択された厚さ、表面積、放射方向の圧縮、および透過性を有する膜よりなる群から選択される1つもしくはそれ以上の流調節器を含んでなる。
【0006】
他の面において、本発明は、第一端部に浸透ポンプの内部と外部の間の流体−透過性障壁を形成する膜栓をそして第一端部から離れた第二端部に送出口を有する移植可能な浸透ポンプを含んでなる浸透ポンプシステムに関する。膜栓は浸透ポンプの内部と外部の間に流体−透過性障壁を形成する。浸透ポンプシステムは、浸透ポンプに連結可能な取り外し可能な吸入速度低下器をさらに含む。吸入速度低下器は、選択された寸法を有するオリフ
ィスを有するオリフィスモジュール、選択された厚さ、表面積、放射方向の圧縮、および透過性を有する膜を有するオリフィスモジュール、並びにそれらの組み合わせよりなる群から選択される。オリフィスおよび膜は、浸透ポンプの吸入速度を低下させるように構成される。
【0007】
別の面において、本発明は、浸透ポンプの外部と内部の間に流体−透過性障壁を形成する膜栓を有する浸透ポンプの予め規定された送出速度を調節する方法に関する。この方法は、吸入速度低下器を浸透ポンプに連結させて吸入速度低下器を通すことにより流体が膜栓に入るようにすることにより浸透ポンプの吸入速度を低下させることを含んでなる。吸入速度低下器は、選択された寸法を有するオリフィスと選択された厚さ、表面積、放射方向の圧縮、および透過性を有する膜よりなる群から選択される1つもしくはそれ以上の流調節器を含んでなる。オリフィスは膜栓の有効表面積を減少させるように構成され、そして膜は膜栓の有効流路長さを増加させるように構成される。
【0008】
さらに別の面において、本発明は、浸透ポンプの内部と外部の間で流体−透過性障壁を形成する半透膜栓を含む移植可能な浸透ポンプ、膜栓の有効流路長さを増加させるための膜モジュール、並びに膜栓の有効表面積を減少させるためのオリフィスモジュールを含んでなる浸透ポンプキットであって、ここで膜モジュールおよびオリフィスモジュールが別個に且つ独立して浸透ポンプに連結可能でありまたは取り外し可能であるキットに関する。
【0009】
本発明の他の特徴および利点は以下の記述から明らかになるであろう。
【0010】
発明の詳細な記述
本発明を、次に、添付図面に示されているいくつかの好ましい態様を参照しながら詳細に記述する。以下の記述では、本発明の充分な理解を与えるために多くの具体的な詳細事項が示される。しかしながら、これらの具体的な詳細事項の一部または全部を用いずに本発明を実施できることは当業者に明らかであろう。他の場合には、本発明を不必要に不明確にすることがないように既知の特徴および/または工程段階は詳細に記述されていない。本発明の特徴および利点は図面および以下の論議を参照してさらに良く理解できよう。
【0011】
本発明の態様に従う吸入速度低下器は浸透ポンプに対して製造後に連結または取り外しできる。吸入速度低下器が浸透ポンプに連結される時に、それは浸透ポンプの吸入速度を低下させるために機能する。本発明の態様によると、吸入速度低下器は浸透ポンプの外部と内部の間に流体−透過性障壁を形成する半透膜栓の露出表面積を減少させるためのオリフィスおよび/または膜栓の有効な流路長さを増加させるための1つもしくはそれ以上の膜を含む。吸入速度低下器は浸透ポンプの送出速度を浸透ポンプの吸入速度における低下に対応する量だけ低下させうる。1つの実用的な用途では、看護人は特定の患者に必要とされるものより多い量の薬品を送出するように設計された浸透ポンプを用いて始めることができた。看護人により所望される実際の送出速度に基づき、吸入速度低下器を構成するために、必要な吸入速度を与えるであろう露出表面積における減少および/または有効な流路長さにおける増加が決定されそして使用されるであろう。
【0012】
吸入速度低下器は製造後に且つ移植前にオリフィスモジュールおよび/または1つもしくはそれ以上の膜モジュールを用いて構成することができる。説明目的のために、図2は本発明の1つの態様に従うオリフィスモジュール200の断面図を示す。オリフィスモジュール200は、蓋がされた端部204および開放端部206を有するハウジング202を含む。開放端部206は浸透ポンプ(示されていない)の末端部分を覆って適合するような寸法にされる。蓋がされた端部204にオリフィス208が装備され、その中を流体が通ってハウジング202の内部210に流入する。オリフィスモジュール200は浸透ポンプに連結され、オリフィス208が浸透ポンプの半透膜栓(示されていない)を先行させる。この方法で、浸透ポンプの外部からの流体がオリフィス208および半透膜栓を通って浸透ポンプの内部に流入する。オリフィス208は、それが半透膜栓の露出表面積を、そしてその結果として浸透ポンプの吸入速度を有効に低下させるような寸法にされる。
【0013】
本発明は半透膜栓中への流れを調節するための単一オリフィス208の使用に限定されるものでないことに注目すべきである。例えば、孔の集団が単一オリフィス208を代替することができ、孔の一緒になった流れ領域が吸入速度における所望する低下を達成するように選択される。オリフィスモジュール200の使用による吸入速度における低下は、有益剤が浸透ポンプにより分配される速度において対応する低下を生ずる。
【0014】
ハウジング202は、それが半透膜栓を含む浸透ポンプの末端部分に連結されうるように構成される。好ましくは、ハウジング202は浸透ポンプにスナップではめ込まれうる。1つの態様では、環状突出部212がハウジング202の内表面214に装備される。環状突出部212は浸透ポンプの外表面に装備された環状溝(示されていない)とかみ合うことができる。或いは、環状突出部が浸透ポンプ上に装備されそして環状突出部とかみ合うための環状溝をハウジング202上に装備することもできる。基本的には、例えば糸を通す接続の如き連結用の管状部品を使用してハウジング202を浸透ポンプに固定することができる。浸透ポンプを殺菌状態に保つために、ハウジング202を浸透ポンプに無菌技術を用いて連結すべきである。一般的に、ハウジング202の断面はそれが浸透ポンプの末端部分上またはそれを覆って適合できるように選択すべきである。一般的に、生流体路がハウジング202の接合部と浸透ポンプの末端部分との間で形成できないようないずれの配置でも使用することができる。例えば、半透膜栓を含有する浸透ポンプの末端部分が環状断面を有する場合には、ハウジング202は好ましくは環状断面を有していなければならない。
【0015】
ハウジング202は不活性なそして好ましくは生相容性の物質から形成される。物質は、それが使用中に接触するであろう物質と反応しないであろうという意味で「不活性」である。例示の不活性な生相容性物質は、金属、例えばチタン、ステンレス鋼、白金およびそれらの合金、並びにコバルト−クロム合金などを包含するが、それらに限定されない。他の相容性物質は、重合体、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などを包含する。
【0016】
図3A−3Fは、膜モジュールの種々の組み合わせを示す。図3Aでは、膜モジュール300はスリーブ302およびスリーブ302中に挿入された膜304を包含する。膜304の厚さは、浸透ポンプ(示されていない)の外部から浸透ポンプの端部にある半透膜栓(示されていない)を通って浸透ポンプの内部までの有効な流路長さを増加させるように選択される。有効な流路長さにおける増加が、吸入速度における低下および浸透ポンプの送出速度における対応する低下を生ずる。膜304の製造で使用される物質は、浸透ポンプの半透膜栓の製造で使用される物質と同一であることもできもしくは相異なることもできる。膜304の製造で使用される物質は好ましくは半透過性でありそして好ましくは湿潤時にスリーブ302の内部形状に一致させそしてスリーブ302の内表面に付着することができる。適する半透過性物質は典型的には、可塑化されたセルロース物質、強化されたPMMA、例えばメタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、並びに弾性物質、例えばポリウレタンおよびポリアミド、ポリエーテル−ポリアミド共重合体、熱可塑性コポリエステルなどを包含するが、それらに限定されない重合体物質である。
【0017】
膜304の露出表面積は、浸透ポンプの半透膜栓の露出表面積と同一であることができもしくは相異なることもできる。すなわち、流体膨潤は膜304の厚さだけでなく膜30
4の露出表面積によっても調節されうる。スリーブ302は膜304を放射方向に拘束され、ある量の放射方向の圧縮を膜304にかける。膜304の厚さに沿ったこの放射方向の圧縮、透過性、および露出表面積は浸透ポンプの吸入速度における所望する低下を達成するように選択できる。
【0018】
膜モジュール300は、それが浸透ポンプに製造後且つ移植前に連結されうるように、構成される。好ましくは、膜モジュール300は浸透ポンプにスナップではめ込まれうる。1つの態様では、これは半透膜栓を含有する浸透ポンプの末端部分上で環状溝(示されていない)とかみ合うことができるスリーブ304の内表面308上に環状突出部306を装備することにより達成されうるであろう。或いは、環状突出部を浸透ポンプ上に装備することができ、そして環状突出部とかみ合うことができる環状溝をスリーブ304上に装備することもできる。しかしながら、本発明は膜モジュール300を浸透ポンプに連結させるための環状突出部/環状溝の使用に限定されない。一般的に、連結用の管状部品、例えば糸を通す接続のいずれかの手段を使用して膜モジュール300を浸透ポンプに固定することができる。好ましくは、使用される連結用の配置は生流体路がスリーブ302の接合部と浸透ポンプの末端部分の間で形成できないようなものである。膜モジュール300は無菌技術を用いて浸透ポンプに連結されるべきである。
【0019】
膜モジュール300は、複数の膜モジュールが一緒に連結されて膜積層を形成できるようにも構成される。図3Bでは、例えば、膜モジュール300、300aを連結することにより膜積層312が形成される。積層中の膜モジュールの特性、例えば厚さ、浸透性、露呈される表面積、およびモジュール中の膜の放射方向の圧縮、は同一もしくは相異なりうることに注目すること。図3Aに戻ると、1つの態様では、環状溝314が他の膜モジュールの内表面上の環状突出部(環状突出部306と同様)とのかみ合わせ用の膜モジュールの外表面310上に装備され、それにより複数の膜モジュールが積層されて所望する流路長さを与える。管状部品を連結する他の手段、例えば糸を通す接続を使用して複数の膜モジュールを一緒に連結することもできる。好ましくは、使用される連結配置は生流体路が複数のスリーブ302の接合部の間で形成できないようなものである。スリーブ302の外径は、膜モジュール300が浸透ポンプに適合される時にスリーブ302の外表面310が浸透ポンプの外表面と同じ高さであるように選択することができる。
【0020】
スリーブ302は不活性なそして好ましくは生相容性の物質から形成される。例示の不活性な生相容性物質は、金属、例えばチタン、ステンレス鋼、白金およびそれらの合金、並びにコバルト−クロム合金などを包含するが、それらに限定されない。他の相容性物質の例は、重合体、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などを包含する。
【0021】
膜モジュール300は種々の方法で改変されうる。例えば、図3Cに示されているように、膜304の外表面は膜304およびスリーブ302の間で密封部分を形成する突出部316(または糸、隆起など)を包含しうる。図3Dでは、スリーブ302は孔318を含み、その中を通って流体がスリーブ302に流入するかまたは圧力をスリーブ302から出すこともできる。Rupal Ayerにより米国特許第6,270,787号明細書に教示されているように、孔318は膜304用の保持手段として二倍にすることもできる。図3Eでは、スリーブ302は適合表面、例えば環状突出部(図2における212)をオリフィスモジュール(図2における200)上に含む。図3Fに示されているように、オリフィスモジュール200のハウジング202上の環状突出部212が膜モジュール300のスリーブ302上の環状溝320の中に適合される。この構造が浸透ポンプ上に設置される時に、浸透ポンプの吸入速度はオリフィスモジュール200中のオリフィス208および膜モジュール300中の膜304の両者により低下させうる。
【0022】
実際に、吸入速度低下器は図2および3A−3Fに記載されたモジュール構造のいずれかを用いて構成することができる。上記のように、オリフィスモジュールおよび膜モジュールはそれらが別個に且つ独立して浸透ポンプに連結されうるように設計される。さらに、膜モジュールの積層を形成しそして浸透ポンプに連結することもできる。また、オリフィスモジュールを膜モジュールに連結し、それを次に浸透ポンプに連結することもできる。吸入速度低下器は浸透ポンプに製造後に且つ移植前に設置して選択された量により浸透ポンプの吸入速度を低下させることができ、ここで吸入速度における低下は浸透ポンプの送出速度における対応する低下を生ずる。
【0023】
説明目的のために、図4Aは本発明の態様に従う浸透ポンプ402上に設置される吸入速度低下器、例えばオリフィスモジュール200、を有する浸透ポンプシステム400を示す。浸透ポンプ402の内部構造は説明目的だけのために示されておりそして本発明を限定することは意図しない。本発明は一般的にいずれかの数の形状を有する全ての浸透ポンプおよび移植可能な浸透分配技術で投与される全てのそのようなポンプに適用可能である。
【0024】
図4Aに示されているように、浸透ポンプ402は細長い円筒状カプセル404を含む。カプセル404は、それが体内に移植できるような寸法にすることができる。図4Aでは、カプセル404の一方の端部406は閉鎖されそしてカプセル404の他方の端部408は開放している。閉鎖された端部406は送出口410を含む。別の態様では、Peterson他により米国特許第6,524,305号明細書に教示されているように、閉鎖された端部406は流調節器(示されていない)を含むように改変することができる。半透膜栓412はカプセル404の開放端部408中に受容される。半透膜栓412は開放端部408中に部分的にまたは完全に挿入されうる。前者の場合には、半透膜栓412はカプセル404の端部とかみ合う停止部品として作用する拡大される末端部分を含むことができる。Chen他の米国特許第6,113,938号明細書に教示されているように、半透膜栓412の外表面は、膜412およびカプセル404の内表面の間で密封部を形成する膜412およびカプセル突出部、糸、隆起などを有することができる。
【0025】
半透膜栓412は、カプセル内の組成物がカプセルから出ることを防止しながらカプセル404の外部からカプセル404の内部への水の通過を可能にする半透過性物質から製造される。本発明における使用に適する半透過性物質は当該技術で既知である。膜栓用の半透過性物質は、湿潤時にカプセルの形状に一致することができ且つカプセルの内表面に付着することができるものである。典型的には、これらの物質は重合体物質であり、それらはポンプ速度およびシステム構成条件に基づき選択することができ、そして可塑化されたセルロース物質、強化されたPMMA、例えばメタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、並びに弾性物質、例えばポリウレタンおよびポリアミド、ポリエーテル−ポリアミド共重合体、熱可塑性コポリエステルなどを包含するが、それらに限定されない。
【0026】
2つの室414、416がカプセル404の内部で規定される。室414、416は、密封方式でカプセル内で適合しそしてカプセル内を縦方向に移動するように構成される仕切り418、例えば滑走可能なピストンまたは柔軟性隔膜により分離される。好ましくは、仕切り418は不透過性の弾力性物質から形成される。一例として、仕切り418は不透過性の弾力性物質から製造されそしてカプセル404の内表面との密封部を形成する環状環形状の突起を含む滑走可能なピストンでありうる。浸透剤420は半透膜栓412に隣接する室414内に配置され、そして体に分配される有益剤422は送出口410に隣接する室416内に配置される。使用中に定常流において有益剤422が送出口410を通って使用環境からの液体がオリフィスモジュール200および半透膜栓412を通って、浸透剤420に流入する速度に対応する速度で排出されるような、仕切り418が有益剤422を、半透膜栓412を通ってカプセル40に入ることが可能な環境液体から単離する。
【0027】
浸透剤420は示されているような錠剤の形状であってもよくまたは他の形状、構成、密度、およびコンシステンシーを有することもできる。例えば、浸透剤420は粉末または顆粒形態でありうる。浸透剤は、例えば、非揮発性の水溶性浸透剤、水との接触時に膨潤する浸透重合体、またはこれら2種の混合物でありうる。
【0028】
一般的に、本発明は生理学的または薬理学的に活性な物質を含む有益剤の投与に応用される。有益剤422は、人間または動物の体に送出されることが知られるいずれかの剤、例えば薬品、ビタミン、栄養素などでありうる。本発明により送出することができる薬剤は、末梢神経、アドレナリン受容体、コリン作動性受容体、骨格筋、心臓血管系、平滑筋、血液循環系、シノプティックサイト(synoptic sites)部位、神経効果器接合部位、内分泌およびホルモン系、免疫学的系、再生系、骨格系、オータコイド系、食事および排泄系、ヒスタミン系、並びに中枢神経系、に作用する薬品を包含する。適する剤は、例えば、蛋白質、酵素、ホルモン、ポリヌクレオチド、核蛋白質、多糖、糖蛋白質、リポ蛋白質、ポリペプチド、ステロイド、鎮痛薬、局部麻酔薬、抗生物質剤、抗炎症性コルチコステロイド、眼科薬品並びにこれらの種類の合成同族体から選択することができる。浸透ポンプシステム400を用いて送出されうる薬品の例示リストは米国特許第6,270,787号明細書に開示されている。リストは引用することにより本発明の内容となる。
【0029】
有益剤422は広範囲の化学的および物理的形態、例えば固体、液体およびスラリーで存在しうる。分子レベルでは、種々の形態は未変化の分子、分枝複合体、並びに製薬学的に許容可能な酸付加塩および塩基付加塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ラウリル酸塩、オレイン酸塩、およびサリチル酸塩を包含しうる。酸性化合物用には、金属の塩、アミンおよび有機カチオンを使用することができる。例えばエステル類、エーテル類およびアミド類の如き誘導体を使用することもできる。有益剤は単独でまたは他の有益剤と混合して使用することができる。有益剤は場合により製薬学的に許容可能な担体並びに/または追加成分、例えば酸化防止剤、安定剤、および透過促進剤を包含しうる。
【0030】
カプセル404用に使用できる物質は、その寸法または形状を変えずに浸透剤420の膨張に耐えるのに充分硬くなければならない。さらに、物質はカプセル404がそれが移植中に受けうるストレス下でまたは操作中に発生する圧力によるストレス下で漏出、割れ、破壊、または変形しないように確保すべきである。カプセル404は、当該技術で既知である化学的に不活性な、生相容性の、天然または合成物質から製造できる。カプセル物質は好ましくは、使用後の患者内に留まる非−生腐食性物質、例えばチタンである。しかしながら、カプセルの物質は有益剤の分配後に環境内で生腐食する生腐食性物質でもありうる。一般的に、カプセル404用の好ましい物質は人間用の移植に許容可能なものである。
【0031】
一般的に、本発明に従うカプセル404に適する典型的な構成物質は、非反応性重合体または生相容性金属もしくは合金を包含する。重合体は、アクリロニトリル重合体、例えばアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン三元重合体など;ハロゲン化された重合体、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンの共重合体;ポリイミド;ポリスルホン;ポリカーボネート;ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリ塩化ビニル−アクリル系共重合体;ポリカーボネート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン;ポリスチレンなどを包含する。カプセル404に有用な金属物質はステンレス鋼、チタン、白金、タンタル、金、およびそれらの合金、並びに金−メッキされた第一鉄、白金−メッキされた第一鉄、コバルト−クロム合金および窒化チタンコーティングされたステンレス鋼を包含する。
【0032】
チタン、または60%以上の、しばしば85%以上のチタンを有するチタン合金から製造されるカプセル404がほとんどの寸法−厳密用途にとって、高いペイロード能力のためにおよび長期間用途にとってそして調剤が移植において体の化学物質に敏感性であるかまたは体が調剤に対して敏感性である用途にとって特に好ましい。ある種の態様では、そして不安定な有益剤調合物、特に蛋白質および/またはペプチド調合物がカプセル404内にある具体的に記載されている流体−膨潤装置以外の用途のためには、調合物が露呈される金属成分はチタンまたは上記のその合金から製造されなければならない。
【0033】
オリフィスモジュール200は、例えばハウジング202上の環状突出部212をカプセル404の外表面上の環状溝424中にスナップ操作することにより設置される。前記のように、オリフィスモジュール200を設置する他の手段、例えば糸を通す接続部を使用することができる。随意の多孔性基質426、例えばスクリーンまたは網をオリフィス208および半透膜栓412の間に挿入して膜412の変形を防止することができる。すなわち、半透膜栓412はカプセル404内部の圧力のために膨れうる。膨れが調節されない場合には、半透膜栓412はオリフィス204内に伸びうる。所望するなら、室(示されていない)が半透膜栓412およびハウジング202の蓋がされた端部204の間に形成されてカプセル404の内部圧力の結果としてハウジング202中への半透膜412の移動度を可能にするようにハウジング202は寸法設定される。蓋がされた端部204は、半透膜栓412が浸透ポンプ402から分離するのを防止するための停止具として作用しうる。
【0034】
図4Bは、浸透ポンプ402上に設置された膜モジュール300を示す。前記のように、開示されたオリフィスモジュール(図2における200)および膜モジュール(図3A−3Dにおける300)並びに他の変種のいずれかを浸透ポンプ上に設置して浸透ポンプの吸入速度を選択された量だけ低下させうる。
【0035】
本発明は典型的には下記の利点を与える。本発明は浸透ポンプの送出速度を製造後に調節する手段を与える。浸透ポンプの操作に悪影響を与えずに種々の送出プロフィールを達成することができる。これは看護人に対して処置選択肢における融通性を与える。
【0036】
本発明を限定された数の態様に関して記載してきたが、この開示の利益を受ける当業者はここに開示された発明の範囲を逸脱しないような他の態様を類推しうることを認識するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は先行技術の浸透ポンプの断面図である。
【図2】図2は本発明の1つの態様に従う浸透ポンプの吸入速度を低下させるためのオリフィスモジュールの断面図である。
【図3A】図3Aは本発明の1つの態様に従う浸透ポンプの吸入速度を低下させるための膜モジュールを示す。
【図3B】図3Bは本発明の他の態様に従う膜モジュール積層を形成するために一緒に連結された2つの膜モジュールを示す。
【図3C−3E】図3C−3Eは図3Aの膜モジュールの可能な変更例を示す。
【図3F】図3Fは本発明の他の態様に従う浸透ポンプの吸入速度低下用の膜モジュールに連結されたオリフィスモジュールを示す。
【図4A】図4Aは本発明の1つの態様に従う浸透ポンプ上に設置されたモジュール型の吸入速度低下器を含む浸透ポンプシステムを示す。
【図4B】図4Bは本発明の他の態様に従う浸透ポンプ上に設置されたモジュール型の吸入速度低下器を含む浸透ポンプシステムを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの送出口を有するカプセル、
カプセルの内部と外部の間の流体−透過性障壁を提供する、送出口から離れたカプセルの開放端部に保持された膜栓、並びに
膜栓の表面積より小さい選択された寸法を有するオリフィスと選択された厚さ、表面積、放射方向の圧縮、および透過性を有する膜よりなる群から選択される1つもしくはそれ以上の流調節器を含んでなる、カプセルに連結された取り外し可能な吸入(imbibition)速度低下器
を含んでなる浸透ポンプシステム。
【請求項2】
オリフィスがハウジングの蓋がされた端部に形成されそして膜がスリーブにより放射方向に拘束され、ハウジングおよびスリーブが別個に且つ独立してカプセル上の対応する適合表面(mating surface)とかみ合うかまたはかみ合わなくてもよい適合表面を有する請求項1の浸透ポンプシステム。
【請求項3】
膜の積層を形成可能にするようにスリーブが膜を取り囲む別のスリーブ上の対応する適合表面とかみ合うかまたはかみ合わなくてもよい適合表面をさらに含む請求項2の浸透ポンプシステム。
【請求項4】
ハウジングに連結または連結解除が可能になるようにスリーブがハウジング上の対応する適合表面とかみ合うかまたはかみ合わなくてもよい適合表面をさらに含む請求項2の浸透ポンプシステム。
【請求項5】
膜がスリーブの内表面とかみ合うかまたはかみ合わなくてもよいその外表面上に形成された複数の間隔がおかれた突起を有する請求項2の浸透ポンプシステム。
【請求項6】
スリーブがスリーブの内部と外部の間の連絡を可能にする1つもしくはそれ以上の孔を含む請求項2の浸透ポンプシステム。
【請求項7】
浸透剤および有益剤(beneficial agent)をそれぞれ含有するためのカプセル内に規定された第一および第二室をさらに含んでなる請求項1の浸透ポンプシステム。
【請求項8】
第一室と第二室の間に配置された移動可能な仕切りをさらに含んでなる請求項7の浸透ポンプシステム。
【請求項9】
膜栓または膜の変形を防止するためにオリフィスおよび膜栓の間またはオリフィスと膜の間に挿入することができる多孔性基質をさらに含んでなる請求項1の浸透ポンプシステム。
【請求項10】
浸透ポンプの内部と外部の間の流体−透過性障壁を形成する膜栓を第一端部にそして送出口を第一端部から離れた第二端部に有する移植可能な浸透ポンプ、並びに
選択された寸法をもつオリフィスを有するオリフィスモジュール、選択された厚さ、表面積、放射方向の圧縮、および透過性を有する膜を有するオリフィスモジュール、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択される、浸透ポンプに連結可能な取り外し可能な吸入速度低下器
を含んでなり、ここでオリフィスおよび膜が浸透ポンプの吸入速度を選択された量だけ低下させるように構成されている浸透ポンプシステム。
【請求項11】
オリフィスモジュールおよび膜モジュールが別個に且つ独立して浸透ポンプとかみ合うかまたはかみ合わなくてもよい請求項10の浸透ポンプシステム。
【請求項12】
浸透ポンプに取り外し可能に連結されうる膜の積層を形成するように複数の膜モジュールが取り外し可能に連結されうる請求項10の浸透ポンプシステム。
【請求項13】
オリフィスモジュールが膜モジュールに取り外し可能に連結されうる、請求項11の浸透ポンプシステム。
【請求項14】
膜モジュール中の膜の変形を防止するための膜モジュールとオリフィスモジュールの間への挿入のための多孔性基質をさらに含んでなる請求項13の浸透ポンプシステム。
【請求項15】
膜栓の変形を防止するための膜栓とオリフィスモジュールの間への挿入のための多孔性基質をさらに含んでなる請求項10の浸透ポンプシステム。
【請求項16】
吸入速度低下器を浸透ポンプに連結させて流体が吸入速度低下器を通って膜栓に入るようにすることにより浸透ポンプの吸入速度を低下させることを含んでなる浸透ポンプの外部と内部の間に流体−透過性障壁を形成する膜栓を有する浸透ポンプの予め規定された送出速度を調節する方法であって、
吸入速度低下器が選択された寸法を有するオリフィスと選択された厚さ、表面積、放射方向の圧縮、および透過性を有する膜よりなる群から選択される1つもしくはそれ以上の流調節器を含んでなり、
オリフィスが膜栓の有効表面積を減少させるように構成されそして膜が膜栓の有効流路長さを増加させるように構成される方法。
【請求項17】
浸透ポンプの内部と外部の間で流体−透過性障壁を形成する半透膜栓を含む移植可能な浸透ポンプ、
膜栓の有効流路長さを増加させるための膜モジュール、並びに
膜栓の有効表面積を減少させるためのオリフィスモジュール
を含んでなる浸透ポンプキットであって、
膜モジュールおよびオリフィスモジュールが別個に且つ独立して浸透ポンプに連結可能であり且つ取り外し可能であるキット。
【請求項18】
それぞれ膜栓または膜モジュールの変形を防止するための、膜栓とオリフィスモジュールの間またはオリフィスモジュールと膜モジュールの間に挿入することができる多孔性基質をさらに含んでなる請求項17の浸透ポンプキット。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2007−526792(P2007−526792A)
【公表日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538417(P2006−538417)
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/036350
【国際公開番号】WO2005/046639
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(503073787)アルザ・コーポレーシヨン (113)
【Fターム(参考)】