説明

移植栽培方法並びに移植栽培装置

【課題】苗床容器中で草花や低木などを成長させてから、苗床容器ごとそのまま定植場所に移送して、現場で容器を除去するだけで容易に能率的に定植可能な移植栽培方法並びに移植用の装置を実現する。
【解決手段】凹溝状の土壌容器の底に布状シートを敷いてその上に土壌を入れ、目的の植物を挿し木したり種子を蒔いて成長させた後、前記の土壌入れ容器ごと現場に移送して容器を水平方向に引き出して除去し、布状シートと土壌をそのまま一緒に定植位置に残す方法を採っているため、現場で容器を除去するだけで定植状態となるので、極めて簡単な作業で能率的に移植できる。土壌容器の底に布状シートを敷き、その上に土壌を入れて苗床とし、移植時には布状シートは土壌を包んだまま一緒に残すので、土壌容器を取り去る際に、植物の生えている土壌が崩れる恐れがなく、取り扱いが簡便である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、草花や低木などを苗床で成長させてから、目的の場所に移動して定植する場合に好適な移植栽培方法並びに移植用の装置に関する。
【背景技術】
【0002】
草花や低木などを苗床で成長させてから、そのまま定植場所に移送して配置し定植する方法として、特開平5−195535に記載のように、多数の穴の開いた方形のバスケットに土壌を入れて芝生などを植生してなる多数のバスケットを法面に敷きつめて法面を緑化する方法が提案されている。この方法は、切り土や岩盤などの法面を安定的に緑化植生するのに適している。
【0003】
これに対し、特開2005−110590で提案されている「培養土を入れた繊維構造体及び筒状生地に培養土を入れる方法並びにその装置」によると、ビルの屋上、その他適当な場所に植物を生育させる為、ビルに大きな負担がかからず、又施工が簡単な植栽地盤を形成する繊維構造体を提供すべく、編物、織物、又は不織布で構成される筒状生地に培養土を充填して繊維構造体とし、これを渦巻き状に捲いたり、ジグザグ状として植栽地盤を形成し、前記筒状生地に穴を開けて、内部の培養土に植物の苗を植付ける構成が開示されている。
【特許文献1】特開平5−195535
【特許文献2】特開2005−110590
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、多数の穴の開いたバスケットに土壌を入れて芝生などを植生する方法は、バスケットを定植場所に移送して敷きつめた場合、合成樹脂製のバスケットが半永久に残るため、自然環境保護の観点では好ましくない。
これに対し、特許文献2のように、培養土を入れた繊維構造体及び筒状生地に培養土を入れて植栽地盤とする方法の場合は、繊維構造体及び筒状生地が腐食性の材質であれば、合成樹脂製のように半永久に残存する問題は解消される。しかしながら、草花や低木などの苗床としては使いづらいばかりか、渦巻き状に捲いたり、ジグザグ状にして植栽地盤を形成した状態で移動したり、定植場所に再配置することは極めて困難である。
本発明の技術的課題は、このような問題に着目し、苗床容器中で草花や低木などを成長させてから、苗床容器ごとそのまま定植場所に移送して、現場で容器を除去するだけで容易に能率的に定植可能な移植栽培方法並びに移植用の装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の技術的課題は次のような手段によって解決される。請求項1は、草花や低木などの植物を苗床で成長させてから、目的の場所に移動して定植する方法であって、土壌容器の底に布状シートを敷き、その上に土壌を入れて植物を挿し木したり種子を蒔いて成長させた後、前記の土壌容器ごと目的の場所に移送して容器を除去し、布状シートと土壌をそのまま一緒に定植位置に残すことを特徴とする移植栽培方法である。
このように、土壌入れ容器の底に布状シートを敷いてその上に土壌を入れ、目的の植物を挿し木したり種子を蒔いて成長させた後、前記の土壌入れ容器ごと現場に移送して容器を除去し、布状シートと土壌をそのまま一緒に定植位置に残す方法を採っているため、現場で容器を除去するだけで定植状態となるので、極めて簡単な作業で能率的に移植できる。
また、土壌容器は取り去るため、繰り返し何度も再利用できるほか、腐食性である必要もない。土壌容器の底に布状シートを敷き、その上に土壌を入れて苗床とし、移植時には布状シートは土壌を包んだまま一緒に残すので、土壌容器を取り去る際に、植物の生えている土壌が崩れる恐れがなく、取り扱いが簡便である。定植後は、植物の根が布状シートを容易に突き破れるし、布状シートを腐食性にすれば、土壌中に分解し消失するので環境に優しい。したがって、布状シートは、植物性の繊維からなる織布や編布が適している。植物性の繊維なら不織布でもよい。
【0006】
請求項2は、前記の土壌容器は凹溝状をしていて、移植場所で、布状シートに対し凹溝状容器を水平方向に引き抜きスライドさせることによって、布状シートと土壌を一緒に残すことを特徴とする請求項1に記載の移植栽培方法である。このように、前記の土壌入れ容器は凹溝状をしているため、移植現場で、布状シートに対し凹溝状容器を水平方向に引き抜きスライドするだけで、容易に、布状シートと土壌を一緒に残してそのまま定植でき、定植作業も簡便である。土壌に植えた植物の根が定植後の布状シートに絡みつくので、植物は土壌に強固に定着でき、土壌も崩れにくい。
【0007】
請求項3は、前記の布状シートを凹溝状容器中の土壌部の両側に延長して固定代とし、定植位置で凹溝状容器を引き抜き除去した後、布状シート両側の固定代を上側に折り重ねた状態で斜面などの地面にピンなどの固定手段で固定することを特徴とする請求項2に記載の移植栽培方法である。このように、前記の布状シートを土壌部の両側に延長して固定代とし、定植位置で凹溝状容器を引き抜き除去した後、布状シート両側の固定代を上側に折り重ねた状態で斜面などの地面にピンなどの固定手段で固定する方法を採っているので、斜面等のように、凹溝状容器を引き抜き除去しただけでは、布状シート中の土壌と植物を安定させかつ確実に定植することが困難な状況であっても、確実にかつ安定的に定植し、根づかせることが可能である。
【0008】
請求項4は、鋏構造のように軸を一対のクロスアームの支点孔に挿通し、それぞれの支点孔から逆方向に延びる片方のアーム部に取っ手手段を設け、他方の保持アーム部は、凹溝状容器の底部外面に挿入できる凹曲部又は凹折曲部を有することを特徴とする凹溝状土壌容器の運搬器具である。このように、鋏構造のように軸を一対のクロスアームの支点孔に挿通し、それぞれの支点孔から逆方向に延びる片方のアーム部に取っ手手段を設け、他方の保持アーム部は、凹溝状容器の底部外面に挿入できる凹曲部又は凹折曲部を有しているため、この凹曲部又は凹折曲部を凹溝状容器の底部両側に位置決めした状態で、一対の取っ手手段を閉じると、凹溝状土壌容器が一対の凹曲部又は凹折曲部の上に両側から抱き込まれるため、そのまま持ち上げて移動したり、積み込んだりできる。
【0009】
請求項5は、前記の一対の保持アーム部に、凹溝状容器の両側の縁部が入る小凹部を設けてあることを特徴とする請求項4に記載の凹溝状土壌容器の運搬器具である。このように、前記の一対の保持アーム部に、凹溝状容器の両側の縁部が入る小凹部を設けてあるため、一対の凹曲部又は凹折曲部の上に凹溝状土壌容器を両側から抱き込んだ上に、凹溝状容器の両側の強度の強い縁部が小凹部に入り込んで保持されるため、土壌の入った重い状態の凹溝状容器を強度の強い両縁部と一対の凹曲部又は凹折曲部の両方で保持でき、土壌で重いにも係わらず、確実に持ち上げて安定移動できる。
【0010】
請求項6は、請求項4記載の運搬器具を2組以上離して設けて、前記軸を長くした軸棒をそれぞれの前記支点孔に挿通すると共に、それぞれの組の取っ手側アーム部の先端に共通の長くした取っ手棒を取付けてなることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の凹溝状土壌容器の運搬器具である。凹溝状容器は長いために単一の運搬器具では持ち上げ操作が困難であるが、請求項6のように、請求項4記載の運搬器具を2組以上離して設けて、前記軸を長くした軸棒をそれぞれの前記支点孔に挿通して一体化してあるため、複数組を一緒に操作できる。結局、独立の運搬器具を2組用いて別々に操作し、別々に持ち上げ操作する場合より操作性が向上し、確実かつ容易に持ち上げたり、運搬できる。また、それぞれの組の取っ手側アーム部の先端に共通の長くした取っ手棒を取付けてあるため、共通の長くした取っ手棒を操作し開閉するだけで、2組以上の複数の保持具を同時に一緒に開閉操作できて便利である。
【0011】
請求項7は、布状シートを敷き、その上に土壌を入れるための凹溝状容器と、その両端に着脱する側壁とを有していることを特徴とする移植用の凹溝状土壌容器である。凹溝状であれば、雨樋のような半円状でもよいし、逆台形状などでもよい。このように、布状シートを敷き、その上に土壌を入れるための凹溝状容器と、その両端に着脱する側壁とを有しているため、側壁を取付けて両端を閉じた状態で土壌を入れて挿し木したり育苗しておき、定植現場に移送してから、側壁を取り外してオープンにすれば、土壌の入った布状シートを水平方向に引っ張って、凹溝状容器から引きずり出すことができ、定植作業が容易になる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1のように、土壌入れ容器の底に布状シートを敷いてその上に土壌を入れ、目的の植物を挿し木したり種子を蒔いて成長させた後、前記の土壌入れ容器ごと現場に移送して容器を除去し、布状シートと土壌をそのまま一緒に定植位置に残す方法を採っているため、現場で容器を除去するだけで定植状態となるので、極めて簡単な作業で能率的に移植できる。
また、土壌容器は取り去るため、繰り返し何度も再利用できるほか、腐食性である必要もない。土壌容器の底に布状シートを敷き、その上に土壌を入れて苗床とし、移植時には布状シートは土壌を包んだまま一緒に残すので、土壌容器を取り去る際に、植物の生えている土壌が崩れる恐れがなく、取り扱いが簡便である。定植後は、植物の根が布状シートを容易に突き破れるし、布状シートを腐食性にすれば、土壌中に分解し消失するので環境に優しい。したがって、布状シートは、植物性の繊維からなる織布や編布が適している。植物性の繊維なら不織布でもよい。
【0013】
請求項2のように、前記の土壌入れ容器は凹溝状をしているため、移植現場で、布状シートに対し凹溝状容器を水平方向に引き抜きスライドするだけで、容易に、布状シートと土壌を一緒に残してそのまま定植でき、定植作業も簡便である。土壌に植えた植物の根が定植後の布状シートに絡みつくので、植物は土壌に強固に定着でき、土壌も崩れにくい。
【0014】
請求項3のように、前記の布状シートを土壌部の両側に延長して固定代とし、定植位置で凹溝状容器を引き抜き除去した後、布状シート両側の固定代を上側に折り重ねた状態で斜面などの地面にピンなどの固定手段で固定する方法を採っているので、斜面等のように、凹溝状容器を引き抜き除去しただけでは、布状シート中の土壌と植物を安定させかつ確実に定植することが困難な状況であっても、確実にかつ安定的に定植し、根づかせることが可能である。
【0015】
請求項4のように、鋏構造のように軸を一対のクロスアームの支点孔に挿通し、それぞれの支点孔から逆方向に延びる片方のアーム部に取っ手手段を設け、他方の保持アーム部は、凹溝状容器の底部外面に挿入できる凹曲部又は凹折曲部を有しているため、この凹曲部又は凹折曲部を凹溝状容器の底部両側に位置決めした状態で、一対の取っ手手段を閉じると、凹溝状土壌容器が一対の凹曲部又は凹折曲部の上に両側から抱き込まれるため、そのまま持ち上げて移動したり、積み込んだりできる。
【0016】
請求項5のように、前記の一対の保持アーム部に、凹溝状容器の両側の縁部が入る小凹部を設けてあるため、一対の凹曲部又は凹折曲部の上に凹溝状土壌容器を両側から抱き込んだ上に、凹溝状容器の両側の強度の強い縁部が小凹部に入り込んで保持されるため、土壌の入った重い状態の凹溝状容器を強度の強い両縁部と一対の凹曲部又は凹折曲部の両方で保持でき、土壌で重いにも係わらず、確実に持ち上げて安定移動できる。
【0017】
凹溝状容器は長いために単一の運搬器具では持ち上げ操作が困難であるが、請求項6のように、請求項4記載の運搬器具を2組以上離して設けて、前記軸を長くした軸棒をそれぞれの前記支点孔に挿通して一体化してあるため、複数組を一緒に操作できる。結局、独立の運搬器具を2組用いて別々に操作し、別々に持ち上げ操作する場合より操作性が向上し、確実かつ容易に持ち上げたり、運搬できる。また、それぞれの組の取っ手側アーム部の先端に共通の長くした取っ手棒を取付けてあるため、共通の長くした取っ手棒を操作し開閉するだけで、2組以上の複数の保持具を同時に一緒に開閉操作できて便利である。
【0018】
請求項7のように、布状シートを敷き、その上に土壌を入れるための凹溝状容器と、その両端に着脱する側壁とを有しているため、側壁を取付けて両端を閉じた状態で土壌を入れて挿し木したり育苗しておき、定植現場に移送してから、側壁を取り外してオープンにすれば、土壌の入った布状シートを水平方向に引っ張って、凹溝状容器から引きずり出すことができ、定植作業が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に本発明による移植栽培方法並びに移植用の装置が実際上どのように具体化されるか実施形態を説明する。図1は本発明による移植栽培方法における苗の育成方法を示す斜視図である。1は半円筒状をした雨樋状容器で、両端に半円状の側壁2、3を着脱可能になっている。材料は、金属板製でも合成樹脂製でもよく、竹を2分割してもよい。
4は例えば麻布などのような布状シートで、雨樋状容器1の半円筒状の底面より多少大きめの面積が適している。この布状シート4を雨樋状容器1の中に敷いた状態で、その上に土壌5を入れて苗床とし、苗木6を挿し木すると、図2のような状態となり、1〜2週間で根づく。前記のように、布状シート4のサイズは、雨樋状容器1の半円筒状の底面より大きめになっているので、布状シート4の両幅4a、4bは雨樋状容器1の両縁1a、1b又は土壌5から多少はみ出している。両端4c、4dも雨樋状容器1の両端側壁2、3から多少はみ出している。
【0020】
雨樋状容器1中の土壌5に植えた植物6pが根づいたら、植物の生えている雨樋状容器1全体を定植場所に移送する。そして、現場で定植位置に雨樋状容器1を配置してから、片方の半円状側壁2を取り外して、布状シート4の一端4cを固定したり、手で持った状態で、雨樋状容器1の右端を矢印a1方向に引っ張ると、布状シート4と一緒に土壌5を雨樋状容器1から引きずり降ろして残すことができ、植物6pの定植が完了する。
定植場所が平坦な場合は、雨樋状容器1を抜き去った後に布状シート4上に土壌5と植物6pを残したままで、移植完了となるが、予め地面を凹溝状に掘っておいて、その中に布状シート4を引きずり降ろすと、定植がより確実となる。
【0021】
一方、法面などのような傾斜地の場合は、土壌5や植物6pが崩れ落ちる恐れがあり、確実に定植場所に根づかないことがある。そこで、傾斜地などの不安定な場所に定植する場合は、図3のように、雨樋状容器1の両縁1a、1bからはみ出している両側の固定代4a、4bを傾斜地の坂上側に折り重ねた状態で、2枚重ねの×印の位置で釘状のピンなどを打ち込んで固定すると、布状シート4中の土壌5や植物6pが根づく前に崩れ落ちるのを防止できる。雑草の多い場所では、予め除草剤を撒くなどの雑草対策をしておくとよい。
【0022】
雨樋状容器1は下部が半円筒状で、土壌を入れると全体的に半円柱状となり、ねじれたり変形し易いため、運搬には特殊構造の保持具が必要である。図4はシングル構造の保持具の斜視図で、全体的に鋏状の構造になっていて、土壌5の入った雨樋状容器1の下側に潜り込む凹曲面状の腕部12、12’を有している。一対のアーム7、8の中間に設けた、円筒状の支点孔9に軸10を挿通することで、一対のアーム7、8が常時クロスする構造になっている。クロスアーム7、8それぞれの支点孔9から延びる片方のアーム部に取っ手バー11、11’を設けてあり、支点孔9から逆方向に延びる他方のアーム部12、12’は凹曲面が形成されていて、雨樋状容器1の底部に潜り込み易い形状にしてある。
【0023】
使用に際しては、同様な構造の保持具を2組用いて、雨樋状容器1の前後2か所を持ち上げる。すなわち、図4のように、一対の取っ手バー11、11’を開くと、一対の凹曲面アーム部12、12’が開くので、雨樋状容器1の両外側を下降して地面に位置決めしてから、取っ手バー11、11’を閉じると、鋏の開閉と同様にして、凹曲面アーム部12、12’も閉じる。このとき、一対の凹曲面アーム部12、12’を雨樋状容器1の下側に潜り込ます。こうして、雨樋状容器1の前後2か所に保持具の凹曲面アーム部12、12’を潜り込ませた状態で、それぞれの取っ手バー11、11’を閉じた状態で握って持ち上げると、雨樋状容器1を目的の定植場所に運搬できる。
【0024】
目的地に着いたら、取っ手バー11、11’の開放操作によって、雨樋状容器1の下部から凹曲面アーム部12、12’を開いて、雨樋状容器1から除去すると、図2の状態になる。図4では、2組の保持具が独立しているのに対し、図5は、2組の保持具における軸棒10と10、取っ手バー11と11、取っ手バー11’と11’をそれぞれ延長して一体化することによってダブル構造にしてある。その結果、2組の保持具における共通の取っ手バー11、11’を開閉することによって、同時に2組の保持具の凹曲面アーム部12、12’を開閉操作できるので、操作性が向上するし、二人で前後を持って運搬することもできる。図8は共通の1本の軸棒10を2組の支点孔9、9から抜いて、2組が一体となった一対のアーム7・7と8・8を分解した状態である。このように分解状態の片方の凹曲面アーム部12又は12’だけでも、雨樋状容器1を運搬可能であるが、安定性に欠ける。なお、3組以上の保持具を一体化する構造も可能である。
【0025】
一対の凹曲面アーム部12、12’の上部には、雨樋状容器1の両縁部1a、1bが嵌入する小凹部h、h’を設けてあるため、図6のように凹曲面アーム部12、12’を閉じた際に、雨樋状容器1の両縁部1a、1bが小凹部h、h’に嵌入することによって、雨樋状容器1の強度の高い縁部1a、1bを小凹部h、h’で挟持し支持できる。その結果、凹曲面アーム部12、12’で雨樋状容器1の下側から抱き抱えるようにしながら、強度の高い両縁部1a、1bを小凹部h、h’で支持することによって、土壌が入って重くなった雨樋状容器1をより安定よく保持することが可能となる。
【0026】
軸棒10を支点にして、一対の凹曲面アーム部12、12’を開閉する操作は、鋏の操作と全く同様であるため、図5のように、取っ手バー11に、鋏と同様に人差し指を挿入する指掛けFを設けると共に、他方の取っ手バー11’に、親指を挿入する指掛けfを設けると、開閉操作が楽になる。指掛けF、fは、環状に閉じた孔でもよいし、図示のようなU字状や逆U字状などのフック形状でも足りる。指掛けF、fは、図4のような独立タイプの保持具における取っ手バー11、11’に設けると、楽に操作できる。
【0027】
指掛けF、fに加えて、又は指掛けF、fに代えて、図7のように、片手を挿入して手で握れるような、専用の握り取っ手(ハンドル)13、13’を取っ手バー11、11’に設けることもできる。この場合は、図6のように一対の凹曲面アーム部12、12’を閉じた際に、一対の専用の握り取っ手13、13’を一緒に手で握ると、凹曲面アーム部12、12’が不用意に開いて、雨樋状容器1が落下したりするのを確実に防止できる。
【0028】
雨樋状容器1の長さは、例えば2m程度が適しているが、長さ寸法は任意である。また、布状シート4としては、植物性などのように、土壌の中で腐食しやすい材質の織布や編布が適している。ジュート布なども好適である。
半円状の側壁2、3は、片方は固定構造も可能であるが、両方とも分離可能にしておくと、任意の側壁2、3を外して、どの方向からでも布状シート4を引き出すことができる。なお、側壁2、3無しの構造も可能だが、運搬時に土壌5が溢れる恐れがある。
【0029】
土壌を入れる容器1は、不安定な半円状の雨樋状に代えて、半円の底面を平坦にした形状や逆台形状などの各種の凹溝状が適用でき、安定性も増す。この場合、側壁2、3は、半円状に代えて、凹溝状の各種断面形状に応じた形状とすることは勿論である。
また、凹溝状容器1を保持する凹曲面状アーム12、12’も、凹溝状土壌容器1の各種断面形状に応じて、下端(先端)が直線状の凹曲面や凹折曲状などの各種形状となる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上のように、本発明によると、土壌入れ容器の底に敷いた布状シートの上に土壌を入れて目的の植物を挿し木したり種子を蒔いて成長させてから、土壌入れ容器ごと定植地に移送して、容器を除去すれば、布状シートと土壌と植物をそのまま一緒に一体的に定置し定植することができ、定植作業が極めて容易になり、簡便化される。したがって、雑草を除去した後に、以後の雑草抑えとして草花や草木などを速成栽培したいような場合にも最適である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明による移植方法における苗の育成方法を順次示す斜視図である。
【図2】雨樋状容器の中で育苗中の状態を示す斜視図である。
【図3】布状シート両側の固定代を傾斜地に折り重ねて固定する状態を示す斜視図である。
【図4】シングル構造の保持具を示す斜視図である。
【図5】2組の保持具における軸棒と一対の取っ手バーをそれぞれ延長して一体化した実施形態の斜視図である。
【図6】図5のダブル構造の保持具で雨樋状容器を保持している状態を示す斜視図である。
【図7】専用の握り取っ手を設けた実施形態の斜視図である。
【図8】軸棒を2組の支点孔から抜いて分解した状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1 雨樋(凹溝)状の土壌容器
1a・1b 縁部
2・3 端部の側壁
4 布状シート
4a、4b 布状シート両縁のはみ出し部
5 土壌
6p 植物
7・8 一対のアーム
9 支点孔
10 軸棒
11・11’ 取っ手バー
12・12’ 凹曲面アーム
h、h’ 小凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
草花や低木などの植物を苗床で成長させてから、目的の場所に移動して定植する方法であって、
土壌容器の底に布状シートを敷き、その上に土壌を入れて植物を挿し木したり種子を蒔いて成長させた後、
前記の土壌容器ごと目的の場所に移送してから容器を除去し、布状シートと土壌をそのまま一緒に定植位置に残すことを特徴とする移植栽培方法。
【請求項2】
前記の土壌容器は凹溝状をしていて、移植場所で、布状シートに対し凹溝状容器を水平方向に引き抜きスライドさせることによって、布状シートと土壌を一緒に残すことを特徴とする請求項1に記載の移植栽培方法。
【請求項3】
前記の布状シートを土壌容器中の土壌部の両側に延長して固定代とし、
定植位置で凹溝状容器を引き抜き除去した後、布状シート両側の固定代を上側に折り重ねた状態で斜面などの地面にピンなどの固定手段で固定することを特徴とする請求項2に記載の移植栽培方法。
【請求項4】
鋏構造のように軸を一対のクロスアームの支点孔に挿通し、それぞれの支点孔から逆方向に延びる片方のアーム部に取っ手手段を設け、他方の保持アーム部は、凹溝状容器の底部外面に挿入できる凹曲部又は凹折曲部を有することを特徴とする凹溝状土壌容器の運搬器具。
【請求項5】
前記の一対の保持アーム部に、凹溝状容器の両側の縁部が入る小凹部を設けてあることを特徴とする請求項4に記載の凹溝状土壌容器の運搬器具。
【請求項6】
請求項4記載の運搬器具を2組以上離して設けて、前記軸を長くした軸棒をそれぞれの前記支点孔に挿通すると共に、それぞれの組の取っ手側アーム部の先端に共通の長くした取っ手棒を取付けてなることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の凹溝状土壌容器の運搬器具。
【請求項7】
布状シートを敷き、その上に土壌を入れるための凹溝状容器と、その両端に着脱する側壁とを有していることを特徴とする移植用の凹溝状土壌容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−72069(P2009−72069A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241301(P2007−241301)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【特許番号】特許第4171763号(P4171763)
【特許公報発行日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(507312356)
【Fターム(参考)】