説明

移載装置

【課題】進退するクランプ部により物品をクランプする移載装置において、簡素な構成によって、物品に過大なクランプ力が作用しないようにする。
【解決手段】移載装置29は、荷物Wを荷物収納棚11との間で移載する。移載装置29は、第1ベース部材51a及び第2ベース部材51bと第1アーム53aおよび第2アーム53bと移載制御部とを備えている。第1アーム53a及び第2アーム53bは、荷物Wを挟持して荷物収納棚11に向けて進出および退入可能となるように第1ベース部材51a及び第2ベース部材51bにそれぞれ設けられる。移載制御部は、荷物Wを挟持した状態で第1アーム53a及び第2アーム53bが荷物収納棚11から退入するとき、第1アーム53a及び第2アーム53bの間隔を退入距離に応じて広げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移載装置に関し、特に、荷物を他の装置との間で移載する移載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動倉庫に設けられたスタッカクレーンは、走行台車と、走行台車に設けられたマストに昇降可能に装着された昇降台と、昇降台に設けられた移載装置とを有している。
【0003】
移載装置としては、荷物の両側面を挟持可能でかつ伸縮自在なクランプ部を有するものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
従来の移載装置では、クランプ部は、昇降台に設けられた一対のベースと、ベースに対して各別に進退する一対のアームを有している。各アームは、ベース部に対して進出および退入する中間アーム部と、中間アーム部に対して進出および退入する先端アーム部と、を有している。物品は、先端アーム部の間にクランプされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−138949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようにクランプ部を有する特許文献1の移載装置では、先端アーム部を進出させた状態では、アーム全体の剛性が低くなり、クランプ力が小さくなる。一方、先端アーム部を退入させた状態では、アーム全体の剛性が高くなり、クランプ力が大きくなりやすい。クランプ力が過大になると、物品に先端アーム部が食い込んで物品を傷つけるおそれがある。
【0007】
これを防止するためには、先端アーム部にクランプ力を測定するセンサ等を配置することが考えられる。しかし、進出および退入する先端アーム部にセンサを配置することで、配線および制御が複雑になる。
【0008】
本発明の課題は、進出および退入するクランプ部により物品をクランプして移載する移載装置において、簡素な構成で物品に過大なクランプ力が作用しないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明に係る移載装置は、物品を移載場所との間で移載する装置である。移載装置は、一対のベースと、一対のアームと、移載制御部と、を備えている。一対のアームは、物品を挟持して移載場所に向けて進出および退入可能となるように一対のベースにそれぞれ設けられる。移載制御部は、一対のアームが物品を挟持した状態で移載場所から一対のベースに退入するとき、一対のアームの間隔を一対のアームの退入距離に応じて広げる。
この移載装置では、物品を挟持した状態で一対のアームが一対のベースに退入するときには、退入距離に応じて一対のアームの間隔が広くなる。この退入距離は、アームの移動量を検出する、アームの制御に必要な検出器(例えば、ロータリエンコーダ)から得ることができる。このため、クランプ力を検出するセンサ等を設けることなく、クランプ力が強くなる退入側において過大なクランプ力の発生を抑制できる。これにより、簡素な構成によって、過大なクランプ力が物品に作用しないようになる。
【0010】
移載装置は、アームの退入距離と一対のアームの間隔との関係を記憶する記憶部をさらに備えてもよい。移載制御部は、退入距離に対応する一対のアームの間隔を記憶部から読み出して、読み出した間隔となるように一対のアームの間隔を定めてもよい。例えば、所定退入距離毎にクランプ力が過大とならないような間隔を予め求め、求めた退入距離と一対のアームの間隔との関係を記憶部に記憶しておく。これにより、退入距離に応じた一対のアームの間隔を記憶部から読み出すだけの簡単な制御となり、その結果アームの退入動作を迅速に行える。
【0011】
移載制御部は、一対のアームが物品を挟持して移載場所に向けて進出するとき、一対のアームの間隔を一対のアームの進出距離に応じて狭めてもよい。これにより、進出距離に応じてクランプ力が小さくなるのを抑えることができ、アームの保持力を適正に維持できる。以上の結果、物品が移動不能という事態が生じにくい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、クランプ力を検出するセンサ等を設けることなく、クランプ力が強くなる退入側において過大なクランプ力の発生を抑制できる。これにより、簡素な構成によって、過大なクランプ力が物品に作用しないようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る第1実施形態の移載装置が採用された自動倉庫の概略平面図。
【図2】図1のII−II矢視図であり、ラックとスタッカクレーンを説明するための図。
【図3】図1のIII−III矢視図であり、ラックとスタッカクレーンを説明するための図。
【図4】移載装置の模式平面図。
【図5】移載装置の模式側面図。
【図6】クレーン制御部のブロック図。
【図7】移載制御部の荷積み動作の一例を示すフローチャート。
【図8】移載制御部の荷卸し動作の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1)自動倉庫全体
以下、本発明に係る第1実施形態が採用された自動倉庫1を説明する。なお、この実施形態において、図1の上下方向が自動倉庫1の前後X方向(移載方向である第1方向の一例)であり、図1の左右方向が自動倉庫1の左右Y方向である。
【0015】
図1において、自動倉庫1は、主に、前ラック2aおよび後ラック2bと、その間を走行するスタッカクレーン3とから構成されている。
【0016】
(2)ラック
前ラック2aおよび後ラック2bは、左右Y方向に延びるスタッカクレーン3の走行通路5を挟むよう前後に配置されている。前ラック2aおよび後ラック2bは、走行通路5側に所定間隔で左右に並ぶ多数の第1支柱7と、走行通路5と反対側に所定間隔を空けて並ぶ第2支柱9と、隣り合う第1支柱7および第2支柱9の間に設けられた多数の荷物収納棚11とを有している。荷物収納棚11には、図1から明らかなように、スタッカクレーン3が後端基準(走行通路5側の荷物Wの端面)で荷物W(物品の一例)を載置する。また、荷物収納棚11には荷物Wを検知するセンサ(図示せず)が設けられている。
【0017】
前ラック2aの左側の最下段の荷物収納棚11には、荷物Wを入庫するための入庫ステーション17が配置されている。後ラック2bの左側の最下段の荷物収納棚11には、荷物Wを出庫するための出庫ステーション19が配置されている。
【0018】
(3)スタッカクレーン
図1、図2および図3において、走行通路5に沿って、上ガイドレール21aおよび下ガイドレール21bが設けられており、上ガイドレール21aおよび下ガイドレール21bにスタッカクレーン3が左右Y方向に移動可能に案内されている。スタッカクレーン3は、多数の荷物収納棚11と入庫ステーション17と出庫ステーション19との間で荷物Wを搬送する。
【0019】
スタッカクレーン3は、図2および図3に示すように、走行台車22と、昇降台27と、昇降台27に設けられた移載装置29と、を有している。走行台車22は、左右Y方向の両端部に左走行車輪23aおよび右走行車輪23bを有している。左走行車輪23aおよび右走行車輪23bは、走行台車22に軸受により回転自在に支持され、下ガイドレール21b上を走行する。走行台車22は、下ガイドレール21bを挟んで両端に一対配置された前ガイドローラ23cおよび後ガイドローラ23dにより下ガイドレール21bに案内される。右走行車輪23bは、走行用モータ87により駆動される。走行台車22の左走行車輪23aおよび右走行車輪23bの内側には、左マスト25aおよび右マスト25bが固定されている。左マスト25aおよび右マスト25bは、上下方向に延びている。昇降台27は、走行台車22に設けられた左マスト25aおよび右マスト25bに昇降自在に装着されている。右マスト25bには、スタッカクレーン3を制御するためのクレーン制御部81(図6参照)が収納された制御盤80が取り付けられている。
【0020】
(4)移載装置
移載装置29は、スタッカクレーン3と、入庫ステーション17、出庫ステーション19および荷物収納棚11と、の間で荷物Wを移載するための装置である。移載装置29は、図4および図5に示すように、昇降台27としても機能する装置本体31と、コンベア部32と、物品Wを第1方向に移動させるクランプ部33と、コンベア部32およびクランプ部33を制御する移載制御部81c(図6)と、を備えている。
【0021】
図4に示すように、コンベア部32は、装置本体31の左右Y方向の中央部分に設けられている。コンベア部32は、装置本体31内で荷物Wを載置して前後X方向(移載方向)に沿って荷物収納棚11側へ移動させる。クランプ部33は、装置本体31のコンベア部32の外側に設けられている。クランプ部33は、荷物Wを把持して荷物収納棚11側へ移動させる。
【0022】
(4−1)装置本体
装置本体31は、荷物Wを載置可能な荷物載置領域31aを有している。荷物載置領域31aには、荷物Wが後端基準で載置される。ここで荷物Wの後端とは、クランプ部33が把持する側であり、移載対象の前ラック2aまたは後ラック2bから離れた端部である。したがって、前ラック2aが移載対象の場合、図4左側の端部が後端になり、後ラック2bが移載対象の場合、図4右側の端部が後端になる。
【0023】
(4−2)コンベア部
コンベア部32は、荷物Wを載置して移動させるものであり、図4および図5に示すように、装置本体31の左右Y方向の中央部分に設けられている。コンベア部32は、中心に対して対称に配置された第1コンベアユニット32aおよび第2コンベアユニット32bと、これらを駆動するコンベア駆動部42と、を有している。第1コンベアユニット32aおよび第2コンベアユニット32bは、例えばベルトコンベアである。第1コンベアユニット32aおよび第2コンベアユニット32bは、同じ構造である。コンベア駆動部42は、コンベア駆動モータ96と、コンベア駆動モータ96から動力を駆動プーリ(図示せず)に伝達する駆動軸40と、を有している。なお、コンベアの種類としては、ベルトコンベアでなくてもよく、ローラコンベアやチェーンコンベア等でもよい。
【0024】
(4−3)クランプ部
クランプ部33の構成を、図4及び図5により説明する。クランプ部33は、荷物Wの両側面をクランプして前後X方向に移動させる機構である。クランプ部33は、第1ベース部材51aおよび第2ベース部材51bと、第1アーム53aおよび第2アーム53bと開閉駆動部60と、移動駆動部61と、を有している。開閉駆動部60は、第1ベース部材51aおよび第2ベース部材51bと、第1アーム53aおよび第2アーム53bと、を開閉させる。移動駆動部61は、第1アーム53aおよび第2アーム53bを同期して進退させる。第1アーム53aおよび第2アーム53bは、図4に示すホームポジションでは、前後X方向の中心が第1ベース部材51aおよび第2ベース部材51bの前後X方向の中心に一致するように配置されている。また、左右Y方向では、第1アーム53aおよび第2アーム53bが最も離反して配置される。
【0025】
(4−4)第1ベース部材および第2ベース部材
第1ベース部材51aおよび第2ベース部材51bは、左右Y方向に互いに接近および離反して開閉可能に装置本体31に設けられている。第1ベース部材51aおよび第2ベース部材51bは、荷物載置領域31aの左右Y方向両側に配置されている。第1ベース部材51aおよび第2ベース部材51bは、対向する内側面で第1アーム53aおよび第2アーム53bを前後X方向に移動自在に支持する。第1ベース部材51aおよび第2ベース部材51bは、装置本体31に左右Y方向に移動自在に支持されている。第1ベース部材51aおよび第1アーム53aと、第2ベース部材51bおよび第2アーム53bは、鏡像関係にある構造である。
【0026】
(4−5)第1アームおよび第2アーム
第1アーム53aおよび第2アーム53bは、第1ベース部材51aおよび第2ベース部材51bに前後X方向に進出および退入可能に各別に設けられている。
第1アーム53aは、第1中間アーム部54aと、第1先端アーム部55aと、を有している。第2アーム53bは、第2中間アーム部54bと、第2先端アーム部55bと、を有している。第1中間アーム部54aおよび第2中間アーム部54bは、第1ベース部材51aおよび第2ベース部材51bの内側面に前後X方向に移動自在に支持されている。第1中間アーム部54aおよび第2中間アーム部54bは概ね矩形板状の部材である。
【0027】
第1先端アーム部55aおよび第2先端アーム部55bは、第1中間アーム部54aおよび第2中間アーム部54bの内側面に前後X方向に移動自在に支持されている。第1先端アーム部55aおよび第2先端アーム部55bは、概ね矩形板状の部材である。第1先端アーム部55aおよび第2先端アーム部55bは、図示しない連動機構を介して第1中間アーム部54aおよび第2中間アーム部54bに連結されている。連動機構は、第1中間アーム部54aおよび第2中間アーム部54bの移動に連動して第1先端アーム部55aおよび第2先端アーム部55bを2倍の速度で移動するように動作させる。
【0028】
(4−6)開閉駆動部
開閉駆動部60は、図4に示すように、第1ベース部材51aおよび第2ベース部材51bを左右Y方向に開閉駆動するための機構である。この開閉駆動により、第1先端アーム部55aおよび第2先端アーム部55bが荷物Wの両側面に接触する接触位置と離反する離反位置とに移動する。開閉駆動部60は、アーム開閉モータ93とアーム開閉モータ93に連結されたボールねじ軸62と、を有している。また、開閉駆動部60は、図6に示すように、ボールねじ軸62に螺合する第1ナット部材64aおよび第2ナット部材64bを有している。ナット部材64は、第1ベース部材51aおよび第2ベース部材51bに各別に設けられている。ボールねじ軸62は、中間部でねじの方向の異なっており、例えば、図4下側は右ねじ部62aであり、図4上側は左ねじ部62bである。
【0029】
図5に示すように、第1ナット部材64aおよび第2ナット部材64bは、第1ベース部材51aおよび第2ベース部材51bの対向する内側面に各別に配置されている。ここで、第1ナット部材64aは、右ねじ部62aに螺合する右ねじの部材であり、第2ナット部材64bは、左ねじ部62bに螺合する左ねじの部材である。
【0030】
アーム開閉モータ93によりボールねじ軸62が一方向に回転することで、第1ベース部材51aと第2ベース部材51bが互いに離反する開方向に移動し、他方向に回転することで接近する閉方向に移動する。
【0031】
(4−7)移動駆動部
移動駆動部61は、図4に示すように、第1アーム53aおよび第2アーム53bを同期して前後X方向に往復移動させるものである。移動駆動部61は、アーム駆動モータ91と、スプライン軸69と、を有している。スプライン軸69には、図示しない駆動スプロケットに一体回転可能かつ軸方向移動自在に連結されている。駆動スプロケットは、第1ベース部材51aおよび第2ベース部材51bに回転自在かつ軸方向不能に連結さている。駆動スプロケットには、第1中間アーム部54aおよび第2中間アーム部54bを前後駆動する駆動チェーンが巻回されている。これにより、第1中間アーム部54aおよび第2中間アーム部54bが同期して前後X方向に伸縮する。また、第1先端アーム部55aおよび第2先端アーム部55bは、前述したように第1中間アーム部54aおよび第2中間アーム部54bと移動に連動して2倍の速度で伸縮する。
【0032】
(5)クレーン制御部
図6において、スタッカクレーン3のクレーン制御部81は、スタッカクレーン3の制御盤80に搭載されている。クレーン制御部81は、自動倉庫1全体を制御するコントローラ82と通信可能である。クレーン制御部81は、CPUやメモリ等のコンピュータ・ハードウェアを含んでいるが、図6においてはコンピュータ・ハードウェアとソフトウェアの協働によって実現される機能ブロックとして表現されている。なお、制御信号の送受信は無線(電波)で行っているが、有線であってもよい。
【0033】
クレーン制御部81は、走行台車22の走行および停止の制御を行う走行制御部81aと、昇降台27の昇降制御を行う昇降制御部81bと、移載装置29の移載制御を行う移載制御部81cとを機能構成として有している。クレーン制御部81には、走行用モータ87と、走行量検出用のロータリエンコーダ88と、昇降用モータ89と、昇降量検出用のロータリエンコーダ90と、が接続されている。また、クレーン制御部81には、アーム駆動モータ91と、アーム移動量検出用のロータリエンコーダ92と、アーム開閉モータ93と、アーム開閉量検出用のロータリエンコーダ95と、コンベア駆動モータ96と、記憶部97と、が接続されている。
【0034】
記憶部97には、アーム移動量検出用のロータリエンコーダ92の出力とアーム開閉量検出用のロータリエンコーダ95の出力との関係が、荷物Wの種類毎に予め記憶されている。ロータリエンコーダ92の出力は、クランプ部33の退入距離および進出距離に関連して変化する。したがって、ロータリエンコーダ92の出力に基づいて進出距離および退入距離がわかる。また、ロータリエンコーダ95の出力に基づいて一対のクランプ部33の間隔がわかる。
【0035】
記憶部97には、荷積み用に、第1アーム53aと第2アーム53bの間隔が退入距離に応じて徐々に広くなるような関係が記憶されている。また、荷卸し用に、間隔が進出距離に応じて徐々に狭くなるような関係が記憶されている。なお、荷積みおよび荷卸しにおいて、コンベア部32による荷物Wの搬送が行われている場合は、間隔の調整は行われない。
【0036】
荷積み時に荷物Wがコンベア部32により搬送されているか否か判断は、実際には、荷物Wの先端(荷物収納棚11側の端部)が移載装置29内に配置されたことに基づいて判断する。例えば、図示しない荷はみセンサの出力がオンからオフに変化したことに基づいて、コンベア部32により荷物Wが搬送されていると判断される。荷はみセンサは、荷物Wが移載装置29からはみ出していることを検出するセンサであり、荷物載置領域31aの外側に荷物Wがはみ出していることを検出する。
【0037】
荷卸し時のコンベア部32より荷物Wが搬送されているか否かの判断は、実際には、荷物Wの先端が移載装置29外に配置されたことに基づいて、荷物Wがコンベア部32に搬送されていないと判断する。例えば、荷はみセンサの出力がオフからオンに変化したことに基づいて判断される。
【0038】
(6)移載制御部の動作
(6−1)荷積み動作
図7に示す移載制御部81cの制御フローチャートを用いて、移載装置29の荷積み動作の一例を説明する。図7では、空のスタッカクレーン3が搬送元まで到達してからの荷積み動作を説明する。なお、搬送元に到着したとき、第1アーム53aおよび第2アーム53bは最も開いた状態であり、かつ第1アーム53aおよび第2アーム53bは後端基準位置に配置されている。
【0039】
図7のステップS1では、アーム駆動モータ91を正転させ、第1アーム53aおよび第2アーム53bの後端基準位置からの進出を開始する。なお、ここで、アーム駆動モータ91の正転とは、第1アーム53aおよび第2アーム53bを進出させる回転方向である。ステップS2では、第1アーム53aおよび第2アーム53bが所定距離進出したか否かを判断する。この判断は、ロータリエンコーダ92の出力に基づいて行う。この所定距離は、第1アーム53aおよび第2アーム53bが荷物収納棚11にある荷物Wを後端基準でクランプ可能な進出距離である。
【0040】
第1アーム53aおよび第2アーム53bが所定距離進出するまではステップS2に戻り、所定距離進出することでステップS3に移行する。ステップS3では、第1アーム53aおよび第2アーム53bを停止する。ステップS4では、第1アーム53aおよび第2アーム53bを閉じて荷物Wをクランプする。このとき、図示しない荷物検出センサからの出力に基づいてクランプを確認する。ステップS5では、アーム駆動モータ91を逆転させ第1アーム53aおよび第2アーム53bの退入を開始する。また、コンベア駆動モータ96を正転させ、コンベア部32の正転を開始する。なお、コンベア部32の正転とは、コンベア部32の荷積み方向の動作を言う。
【0041】
ステップS6では、ロータリエンコーダ92から第1アーム53aおよび第2アーム53bの現在の退入距離を取り込む。ステップS7では、取り込んだ退入距離からそのときの間隔を記憶部97から読み出す。ステップS8では、読み出した間隔となるようにアーム開閉モータ93を制御する。これにより、退入距離が長くなる、つまり荷物載置領域31aに接近するにつれて第1アーム53aおよび第2アーム53bの間隔が広くなる。なお、間隔は、例えばロータリエンコーダ95の出力に関連して記憶部97に記憶されている。ステップS9では、コンベア部32が荷物Wを搬送するのを待つ。この判断は前述したように荷はみセンサの出力に基づいて行う。荷物Wがコンベア部32により搬送されるまではステップS6に戻り、第1アーム53aおよび第2アーム53bの間隔を徐々に広げる。
【0042】
コンベア部32が荷物Wを搬送することで、ステップS9からステップS10に移行する。ステップS10では、第1アーム53aおよび第2アーム53bが前述した所定距離だけ退入するのを待つ。第1アーム53aおよび第2アーム53bが所定距離退入すれば、ステップS10からステップS11に移行する。ステップS11では、第1アーム53aおよび第2アーム53bの退入を停止し、コンベア部32の正転を停止する。これにより、荷物Wは、荷物載置領域31a内に後端基準で配置される。
【0043】
これにより、荷物Wを移載装置29に荷積みするとき、第1アーム53aおよび第2アーム53bが退入することによる剛性の増加が生じても、クランプ力が過大に大きくならない。このため、荷物Wが変形しにくくなる。
【0044】
(6−2)荷卸し動作
図8に示す移載制御部81cの制御フローチャートを用いて、移載装置29の荷卸し動作の一例を説明する。図8では、荷物Wを積んだスタッカクレーン3が搬送先まで到達してからの荷卸し動作を説明する。なお、搬送先に到着したとき、第1アーム53aおよび第2アーム53bは閉じた状態であり、かつ第1アーム53aおよび第2アーム53bは、後端基準位置に配置されている。
【0045】
図8のステップS21では、アーム駆動モータ91を正転させ、第1アーム53aおよび第2アーム53bの後端基準位置からの進出を開始する。また、コンベア駆動モータ96を逆転させ、コンベア部32の逆転を開始する。なお、コンベア部32の逆転とは、コンベア部32の荷卸し方向の動作を言う。ステップS22では、コンベア部32により荷物Wが搬送されなくなるのを待つ。この判断は、前述したように、荷はみセンサの出力に基づいて行う。荷物Wがコンベア部32に搬送されなくなると、ステップS23に移行する。ステップS23では、ロータリエンコーダ92の出力に基づいて第1アーム53aおよび第2アーム53bの現在の進出位置を取り込む。ステップS24では、取り込んだ進出距離からそのときの間隔を記憶部97から読み出す。ステップS25では、読み出した間隔となるようにアーム開閉モータ93を制御する。これにより、進出距離が長くなる、つまり荷物載置領域31aから離反するにつれて第1アーム53aおよび第2アーム53bの間隔が狭くなる。これにより、進出時の第1アーム53aおよび第2アーム53bの剛性が低下してもクランプ力が減少しにくくなる。ステップS26では、第1アーム53aおよび第2アーム53bが所定距離進出するのを待つ。この判断は、ロータリエンコーダ92の出力に基づいて行う。この所定距離は、第1アーム53aおよび第2アーム53bが荷物収納棚11の所定位置に荷物Wを後端基準で載置可能な進出距離である。第1アーム53aおよび第2アーム53bが所定距離進出するまでは、ステップS23に戻り、第1アーム53aおよび第2アーム53bの間隔を狭める制御を行う。
【0046】
第1アーム53aおよび第2アーム53bが所定距離進出すると、ステップS26からステップS27に移行する。ステップS27では、第1アーム53aおよび第2アーム53bの進出を停止する。また、コンベア部32を停止する。ステップS28では、第1アーム53aおよび第2アーム53bを開いて荷物Wのクランプを解除する。ステップS28では、第1アーム53aおよび第2アーム53bを荷物載置領域31aの後端基準位置まで退入させる。この退入処理時には、第1アーム53aおよび第2アーム53bの間隔は制御されない。
【0047】
これにより、荷物Wを荷物収納棚11に荷卸しするとき、第1アーム53aおよび第2アーム53bが進出することによる剛性の低下が生じても、クランプ力を維持でき、荷物Wをクランプ不能になりにくくなる。
【0048】
(7)特徴
(A)移載装置29は、荷物Wを荷物収納棚11との間で移載する装置である。移載装置29は、第1ベース部材51aおよび第2ベース部材51bと、第1アーム53aおよび第2アーム53bと、移載制御部81cと、を備えている。第1アーム53aおよび第2アーム53bは、荷物Wを挟持して移載場所に向けて進出および退入可能となるように第1ベース部材51aおよび第2ベース部材51bにそれぞれ設けられる。移載制御部81cは、荷物Wを挟持した状態で第1アーム53aおよび第2アーム53bが移載場所から第1ベース部材51aおよび第2ベース部材51bに退入するとき、第1アーム53aおよび第2アーム53bの間隔を第1アーム53aおよび第2アーム53bの退入距離に応じて広げる。
【0049】
この移載装置29では、荷物Wを挟持した状態で第1アーム53aおよび第2アーム53bが第1ベース部材51aおよび第2ベース部材51bに退入するときには、退入距離に応じて第1アーム53aおよび第2アーム53bの間隔が広くなる。この退入距離は、ロータリエンコーダ92から得ることができる。このため、クランプ力を検出するセンサ等を設けることなく、クランプ力が強くなる退入側において過大なクランプ力の発生を抑制できる。これにより、簡素な構成によって、過大なクランプ力が荷物Wに作用しないようになる。
【0050】
(B)移載装置29は、第1アーム53aおよび第2アーム53bの退入距離と第1アーム53aおよび第2アーム53bの間隔との関係を記憶する記憶部97をさらに備えている。移載制御部81cは、退入距離に対応する第1アーム53aおよび第2アーム53bの間隔を記憶部97から読み出して、読み出した間隔となるように第1アーム53aおよび第2アーム53bの間隔を定める。ここでは、例えば、所定退入距離毎にクランプ力が過大とならないような第1アーム53aおよび第2アーム53bの間隔を予め求め、求めた退入距離と第1アーム53aおよび第2アーム53bの間隔との関係を記憶部97に予め記憶する。これにより、退入距離に応じた第1アーム53aおよび第2アーム53bの間隔を記憶部97から読み出すだけの簡単な制御によって、迅速に第1アーム53aおよび第2アーム53bの退入動作を行える。
【0051】
(C)移載制御部81cは、第1アーム53aおよび第2アーム53bが荷物Wを挟持して荷物収納棚11に向けて進出するとき、第1アーム53aおよび第2アーム53bの間隔を第1アーム53aおよび第2アーム53bの進出距離に応じて狭めてもよい。これにより、進出距離に応じてクランプ力が小さくなるのを抑えることができ、つまり第1アーム53aおよび第2アーム53bの保持力を適正に維持できる。この結果、荷物Wが移動不能になる事態が生じにくい。
【0052】
(8)他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態および変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0053】
(a)前記実施形態では、第1アーム53aを第1中間アーム部54aおよび第1先端アーム部55a(または、第2アーム53bを第2中間アーム部54bおよび第2先端アーム部55b)で構成したが、本発明はそのような実施形態に限定されない。第1アームおよび第2アームの各々が一つのアーム部で構成されてもよい。
【0054】
(b)前記実施形態では、制御を簡素化するために後端基準出に持つWを移載するように構成したが、本発明はこれに限定されない。荷物を中心基準および先端基準で移載してもよい。
【0055】
(c)前記実施形態では、コンベア部としてベルトコンベアを例示したが、本発明はこれに限定されない。コンベア部としては、荷物を搬送可能なチェーンコンベアまたはローラコンベアを用いてもよい。
【0056】
(d)前記実施形態では、開閉駆動部に左ねじおよび右ねじを有するボールねじ軸を用いたが、本発明はこれに限定されない。例えばパンタグラフ構造やチェーン等を用いて開閉駆動部を構成してもよい。
(e)前記実施形態では、1台の移載装置がスタッカクレーンに1台に搭載されているが、複数の移載装置を左右方向に並べてスタッカクレーンに搭載してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る移載装置は、例えば、自動倉庫のスタッカクレーン等に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 自動倉庫
2a 前ラック
2b 後ラック
3 スタッカクレーン
5 走行通路
7 第1支柱
9 第2支柱
11 荷物収納棚
17 入庫ステーション
19 出庫ステーション
21a 上ガイドレール
21b 下ガイドレール
22 走行台車
23a 左走行車輪
23b 右走行車輪
23c 前ガイドローラ
23d 後ガイドローラ
25a 左マスト
25b 右マスト
27 昇降台
29 移載装置
31 装置本体
31a 荷物載置領域
32 コンベア部
32a 第1コンベアユニット
32b 第2コンベアユニット
33 クランプ部
40 駆動軸
42 コンベア駆動部
51a 第1ベース部材
51b 第2ベース部材
53a 第1アーム
53b 第2アーム
54a 第1中間アーム部
54b 第2中間アーム部
55a 第1先端アーム部
55b 第2先端アーム部
60 開閉駆動部
61 移動駆動部
62 ボールねじ軸
62a 右ねじ部
62b 左ねじ部
64a 第1ナット部材
64b 第2ナット部材
69 スプライン軸
80 制御盤
81 クレーン制御部
81a 走行制御部
81b 昇降制御部
81c 移載制御部
82 コントローラ
87 走行用モータ
88 ロータリエンコーダ
89 昇降用モータ
90 ロータリエンコーダ
91 アーム駆動モータ
92 ロータリエンコーダ
93 アーム開閉モータ
95 ロータリエンコーダ
96 コンベア駆動モータ
97 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を移載場所との間で移載する移載装置であって、
一対のベースと、
前記物品を挟持して前記移載場所に向けて進出および退入可能となるように前記一対のベースにそれぞれ設けられた一対のアームと、
前記一対のアームが前記物品を挟持した状態で前記移載場所から前記一対のベースに退入するとき、前記一対のアームの間隔を前記一対のアームの退入距離に応じて広げる移載制御部と、
を備えた移載装置。
【請求項2】
前記一対のアームの前記退入距離と前記一対のアームの間隔との関係を記憶する記憶部をさらに備え、
前記移載制御部は、前記退入距離に対応する前記一対のアームの間隔を前記記憶部から読み出して、読み出した間隔となるように前記一対のアームの間隔を定める、請求項1に記載の移載装置。
【請求項3】
前記移載制御部は、前記一対のアームが前記物品を挟持して前記移載場所に向けて進出するとき、前記一対のアームの間隔を前記一対のアームの進出距離に応じて狭める、請求項1または2に記載の移載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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