説明

穀物粉食品用品質改良剤及び穀物粉食品の製造方法

【課題】 生地の気泡性や保湿性を向上させることにより、穀物粉食品の食感の改良やボリューム感の付与等の充分な効果を有する安全性の高い穀物粉食品用品質改良剤、及び該穀物粉食品用品質改良剤を用いた穀物粉食品の製造方法を提供する。
【解決手段】 穀物粉食品用品質改良剤の有効成分として、平均分子量1万〜10万の魚類由来のゼラチンを含有させる。該品質改良剤は、前記平均分子量1万〜10万の魚類由来のゼラチンを10質量%以上含有することが好ましい。また、生地原料の混合・混捏工程において、平均分子量1万〜10万の魚類由来のゼラチンを生地に混合することにより穀物粉食品の製造する。前記生地に含まれる穀物粉に対して、前記平均分子量1万〜10万の魚類由来のゼラチンを0.2〜10質量%添加することが好ましく、前記生地に、前記平均分子量1万〜10万の魚類由来のゼラチンを粉末のまま混合することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生地の気泡性や保湿性を向上させて、パン等の食感の改良やボリューム感の付与等の効果を有する穀物粉食品用品質改善剤、及び穀物粉食品用該品質改善剤を使用した穀物粉食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、パンは、小麦粉、イースト及び水を基本原料として、食塩、糖類、乳製品、卵等の副原料と混捏・成型・ホイロした後、焼成することにより製造されており、現代社会において米と並ぶ主食の一つとなっている。また、クッキーやケーキ等の焼菓子類もパンと同様に小麦粉を基本原料とし、食塩、糖類、乳製品、卵等の副原料と混捏・成型した後、焼成することにより製造されている。
【0003】
従来より、上記パンや焼菓子類等、穀物粉の一種である小麦粉を含有する食品の製造工程においては、焼成後の食感やボリューム感に影響を及ぼす、生地の気泡性、乳化性、保湿性、老化防止等を向上させるために、基本原料である小麦粉の改善や副原料の配合改善、副原料として加工澱粉、油脂(ショートニング)、膨張剤(ベーキングパウダー)、その他乳化剤等の化学合成品からなる品質改良剤の添加が行われてきた。また、近年では、健康志向の高まりから、上記化学合成品からなる品質改良剤の代わりに、大豆蛋白、小麦蛋白、乳蛋白、卵蛋白、コラーゲン、ゼラチン等の蛋白由来の素材も品質改良剤として用いられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、平均粒子径が20μm以下の粉末蛋白素材を含有することを特徴とする製菓、製パン用品質改良剤が開示されている。また、特許文献2には卵黄又は全卵のプロテアーゼ処理物を含有することを特徴とする製菓、製パン用品質改良剤、特許文献3には卵白の酵素加水分解物を含有することを特徴とする製菓、製パン用品質改良剤が開示されている。さらに特許文献4には、セルロースと、ポリペプチド及び/又は食用多糖類のゲスト成分とを含む構造体からなる可食体であって、ポリペプチドをゲスト成分とするときは前記セルロースがポリペプチドの島を取り囲む海成分を形成し、食用多糖類をゲスト成分とするときは前記セルロースが食用多糖類との均質な連続体を形成し、さらに、該海成分又は該連続体が前記構造体中に少なくとも10%以上存在する可食体と、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル及び起泡性油脂組成物を含有することを特徴とする品質改良剤が開示されている。
【特許文献1】特開2002−171897号
【特許文献2】特開2003−038088号
【特許文献3】特開2003−038087号
【特許文献4】特開平10−304828号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載された製菓、製パン用品質改良剤は、従来の化学合成品からなる品質改良剤と比較して充分満足できる効果が得られるとは言い難く、更に、上記特許文献1に記載された製菓、製パン用品質改良剤は、粉末蛋白素材の分散性を向上させるために微粒子化する必要があり、製造に手間がかかるという問題があった。
【0006】
一方、上記特許文献4に記載された品質改良剤は、充分な効果を得るために蛋白由来の素材の他にグリセリンコハク酸脂肪酸エステル等の化学合成品を必要とし、近年の健康志向には沿わないものであった。
【0007】
また、上記特許文献1〜3には、コラーゲンやゼラチンを併用できることが記載されており、上記特許文献4には、品質改良剤の成分であるポリペプチドとしてコラーゲンやゼラチンを使用できる旨記載されているが、従来使用されていたコラーゲンやゼラチンは、牛、豚、鶏等の家畜由来のものであり、近年の狂牛病や豚口蹄疫、鳥インフルエンザ等の家畜疫病の発生により安全性の面で問題があった。そして、小麦粉食品におけるコラーゲンやゼラチンの品質改良効果に関する詳細な検討はほとんど行われていない。
【0008】
したがって、本発明の目的は、生地の気泡性や保湿性を向上させることにより、穀物粉食品の食感の改良やボリューム感の付与等の充分な効果を有する安全性の高い穀物粉食品用品質改良剤、及び該穀物粉食品用品質改良剤を用いた穀物粉食品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の穀物粉食品用品質改良剤は、平均分子量1万〜10万の魚類由来のゼラチンを含有することを特徴とする。
【0010】
本発明の穀物粉食品用品質改良剤においては、前記平均分子量1万〜10万の魚類由来のゼラチンを10質量%以上含有することが好ましい。
【0011】
本発明の穀物粉食品用品質改良剤は、平均分子量1万〜10万の魚類由来のゼラチンを含有することにより、生地の気泡性や保湿性を向上させることができ、食感の改良やボリューム感の付与等の充分な品質改良効果を有する。また、魚類由来のゼラチンであるため安全性も高い。
【0012】
本発明の穀物粉食品用品質改良剤は製パン又は製菓に好適に用いることができる。
【0013】
また、本発明の穀物粉食品の製造方法は、生地原料の混合・混捏工程において、平均分子量1万〜10万の魚類由来のゼラチンを生地に混合することを特徴とする。
【0014】
本発明の製造方法においては、前記生地に含まれる穀物粉に対して、前記平均分子量1万〜10万の魚類由来のゼラチンを0.2〜10質量%添加することが好ましい。
【0015】
また、前記生地に、前記平均分子量1万〜10万の魚類由来のゼラチンを粉末のまま混合することが好ましい。
【0016】
本発明の製造方法によれば、生地原料の混合・混捏工程において、平均分子量1万〜10万の魚類由来のゼラチンを生地に混合することにより、生地の気泡性や保湿性を向上させて、食感やボリューム感に優れた穀物粉食品を得ることができる。また、上記魚類由来のゼラチンは、水等で溶解することなく粉末のまま添加しても生地中に均一に混捏することができるので作業性にも優れており、低分子ペプチドの有する苦味等の食味に及ぼす悪影響もない。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、作業性に優れ、食感の改良やボリューム感の付与等の充分な効果を有する安全性の高い穀物粉食品用品質改良剤を提供できる。また、該穀物粉食品用品質改良剤を用いて穀物粉食品を製造することにより、食感やボリューム感に優れた穀物粉食品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明において「穀物粉食品」とは、例えば、小麦、大麦、燕麦、ライ麦等の麦類や、米、うるち米、もち米等の米類、その他、とうもろこし、そば、あわ、きび、ひえ等の穀物を製粉することにより得られる穀物粉を基本原料として含む生地を加熱処理することにより得られる食品全般を意味し、中でも小麦由来の穀物粉である小麦粉を含む食品(小麦粉食品)が好ましく例示できる。
【0019】
本発明において、魚類由来のゼラチンとは、魚皮、魚骨、魚鱗等から抽出されたコラーゲンを加熱やその他処理により変性したものをいう。また、該ゼラチンの由来となる魚種に制限はないが、例えば、タラ類、カレイ類、サケ類、マス類、サメ類、エイ類、ティラピア類、アジ類、サバ類、カワハギ類、ハタ類、カツオ、マグロ類、カジキ類、フグ類、カサゴ類、タイ類、ウナギ類、イワシ類、ニシン、サンマ、メバル、ブリ等が挙げられ、中でも大量かつ安定的な調達が可能であるクロマグロ、ミナミマグロ、キハダ、ビンナガ、メバチ、メジ等のマグロ類、タラ、コマイ、スケソウダラ等のタラ類、カレイ、ソウハチ、オヒョウ、ヒラメ等のカレイ類の魚皮、若しくはタイ類の魚鱗等が好ましく用いられる。
【0020】
本発明で用いられる魚類由来のゼラチンは、平均分子量が1万〜10万であることが好ましく、平均分子量が5万〜10万であることがより好ましい。なお、本発明における平均分子量とは、プルランを標準物質としてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を意味する。
【0021】
このような魚類由来のゼラチンは例えば下記の方法により得ることができる。
【0022】
まず、上記魚類原料からコラーゲンを抽出する方法は公知の方法を採用できるが、水を加えて加熱抽出する方法が好ましく採用される。この抽出方法によれば、水難溶性であるエラスチン等の不溶性タンパク質が溶出せず、効率よくコラーゲンを抽出できる。また、加圧抽出に比べて抽出温度が低いため、抽出されたコラーゲンが目的とする分子量よりも低分子化することもない。
【0023】
なお、抽出効率を上げるために、魚類原料は適当な手段により切断、細断、粉砕、あるいはミンチしてから用いることが好ましく、魚骨や魚鱗は予め塩酸等により脱灰してから用いることが好ましい。また、魚皮、魚骨、魚鱗については適当な手段により洗浄を行い、油脂や汚泥等の不純物を除去してから用いることが好ましい。抽出条件については、魚類原料100質量部に対して、100〜1,000質量部の水を加えて、酸を用いてpH4〜5に調整後、60〜100℃で0.5〜4時間加熱抽出することが好ましい。また、上記酸は、塩酸を用いることが好ましい。
【0024】
上記の抽出法で抽出されたコラーゲンは、抽出時の加熱により水溶性のゼラチンとなっている。このようにして得られた魚類由来のゼラチンは、必要に応じて脱臭、脱色、不純物除去等の精製や濃縮を行ってもよく、最終的に噴霧乾燥、熱風乾燥、真空乾燥等により粉末化することが好ましい。
【0025】
また、上記魚類由来のゼラチンの市販品として、例えば「フィッシュコラーゲン」(商品名、焼津水産化学工業株式会社製)等を用いることもできる。
【0026】
このような魚類由来のゼラチンは、生地の気泡性や保湿性を向上させて、焼成後の穀物粉食品の食感の改良やボリューム感の付与等の効果を有するだけでなく、他の粉体原料と混捏する際に、水等で溶解させることなく粉末のまま用いても生地中に均一に含有させることができるので作業性に優れている。また、焼成後は、魚類由来の独特の風味を感じることがなく、低分子ペプチドの有する苦味等の食味に及ぼす悪影響もない。
【0027】
本発明の穀物粉食品用品質改良剤は、上記魚類由来のゼラチンを10質量%以上含有することが好ましく、30質量%以上含有することがより好ましく、50%以上含有することが更に好ましい。なお、上記魚類由来のゼラチンをそのまま穀物粉食品用品質改良剤として用いることもできる。
【0028】
本発明の穀物粉食品用品質改良剤においては、穀物粉食品の品質に悪影響を与えない範囲で、キシリトール、マンニトール、乳糖、グルコース、スクロース、デキストリン、ショ糖、果糖、キシロース、ラクチュロース、フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、エリスリトール、ラクチトール、マルチトール、マルトース、ソルビトール、還元パラチノース等の糖類を賦形剤として添加してもよい。また、従来より用いられている大豆蛋白、小麦蛋白、乳蛋白、卵蛋白等の蛋白質素材やこれらの分解物、油脂類、ビタミンC、イーストフード、その他の乳化剤、膨張剤、増粘剤、ゲル化剤等の品質改良剤を混合・併用してもよい。
【0029】
本発明の穀物粉食品用品質改良剤の形態は特に限定されるものではなく、使用態様に応じて粉末状、顆粒状、液状等を適宜選択できるが、保存性やハンドリングの面から粉末状であることが好ましい。
【0030】
本発明の穀物粉食品用品質改良剤は、製パン又は製菓に好適に用いることができるが、穀物粉を使用した加熱食品という点で類似する、お好み焼き、たこ焼き、ピザ、中華まんじゅうの皮、餃子の皮、もち等にも使用することができ、市販されているプレミックスへ混合して使用してもよい。
【0031】
製パンに用いる場合には、例えば、食パン、バターロール、クロワッサン、ブリオッシュ、ツォブフ、デニッシュ、フォカッチャ、ロゼッタ、パニーニ、ナン、ベーグル、ピロシキ、フランスパン、ドイツパン、中国パン、菓子パン類等の様々なパン類の製造に好適に使用することができる。また、小麦粉の一部若しくは全部の代替として、ライ麦粉、とうもろこし粉等、他の穀物粉を使用したパン類にも使用できる。
【0032】
また、製菓に用いる場合には、例えば、クッキー、ビスケット、サブレ、プリッツェル、パイ、マフィン、マドレーヌ、ドーナツ、蒸しパン、シュークリーム、エクレア、シフォンケーキ、パウンドケーキ、スポンジケーキ、ロールケーキ、ホットケーキ、その他ケーキ類、せんべい、団子、まんじゅう等の様々な菓子類の製造に好適に用いることができる。
【0033】
次に、本発明の穀物粉食品の製造方法について説明する。
【0034】
本発明の製造方法においては、生地原料の混合・混捏工程において、上記平均分子量1万〜10万の魚類由来のゼラチンを生地に混合すること以外は、基本的に各穀物粉食品における通常の製造方法にしたがって行うことができる。すなわち、例えば、製パンにおいては、生地原料を混合・混捏する際に、上記平均分子量1万〜10万の魚類由来のゼラチンを添加・混合してパン生地を調製し、ストレート法や中種法等の常法に従ってパン生地の発酵、分割、成形後、最終発酵を行い、焼成すればよい。
【0035】
また、クッキーを製造する場合は、小麦粉やベーキングパウダー等の粉体原料と上記平均分子量1万〜10万の魚類由来のゼラチンを混合した後、他の原料と混合してクッキー生地を調製し、成型後、焼成すればよい。
【0036】
本発明の製造方法において、上記平均分子量1万〜10万の魚類由来のゼラチンの添加量は、穀物粉食品の種類等に応じて適宜設定することができるが、通常、生地に含まれる穀物粉からなる粉体原料に対して0.2〜10質量%が好ましく、0.4〜5質量%がより好ましい。
【0037】
また、上記平均分子量1万〜10万の魚類由来のゼラチンの添加方法は、適量の水若しくは水分を含む原材料に溶解させてから添加してもよいが、粉末のまま添加することが好ましい。粉末のまま添加する場合には、例えば、穀物粉と予め混合した後、穀物粉と共に生地に添加することができる。粉末のまま添加することにより、余分な水を使用することなく、水分が少ない配合にも適用が可能である。
【実施例1】
【0038】
(食パンの製造)
平均分子量10万の魚類由来のゼラチンである「フィッシュコラーゲン」(商品名、焼津水産化学工業株式会社製)を用いて、表1の配合で食パンを作った。なお、「フィッシュコラーゲン」(商品名、焼津水産化学工業株式会社製)は、強力粉と共に予め粉体混合して使用した。
【0039】
まず、常法に従い原料を混捏・成型後、温度38℃、湿度85%の条件下で45分間ホイロを行い、最後に200℃で30分間焼成を行った。なお、ゼラチンが均一にならない等の工程上の支障はなかった。
【0040】
【表1】

【0041】
(食パンの評価)
得られた食パンを一晩常温保管した後、外観、キメの状態、粘りの状態、柔らかさ、味について、下記の基準で評価を行った。その結果を表2に示す。
【0042】
(評価基準)
外観:良く膨らんでいる(3点)、普通(2点)、あまり膨らんでいない(1点)
キメの状態:細かい(3点)、普通(2点)、粗い(1点)
粘りの状態:もちもち感がある(3点)、普通(2点)、ぱさつき感がある(1点)
柔らかさ:柔らかい(3点)、普通(2点)、硬い(1点)
味:おいしい(3点)、普通(2点)、おいしくない(1点)


【0043】
【表2】

【0044】
表2から、魚類由来のゼラチンを0.2質量%添加した実施例1−A及び魚類由来のゼラチンを10質量%添加した実施例1−Eの食パンは、外観及び味については魚類由来のゼラチンを使用しなかった比較例1−Gの食パンとほとんど差がなかったが、食感(キメの状態、粘り状態、柔らかさ)が改善されていることが分かる。
【0045】
そして、魚類由来のゼラチンを0.4〜5質量%添加した実施例1−B、1−C及び1−Dの食パンは、外観、キメの状態、粘り状態、及び柔らかさの評価項目で高い評価が得られていることが分かる。また、実施例1−B、1−Cの食パンでは風味の向上効果も見られた。
【0046】
一方、魚類由来のゼラチンを12質量%添加した比較例1−Fの食パンはキメか細かくなりすぎて、逆に膨らみにくくなったために、食感も硬くなってしまい、評価が低いものとなった。
【実施例2】
【0047】
(バターロールの製造)
平均分子量10万の魚類由来のゼラチンである「フィッシュコラーゲン」(商品名、焼津水産化学工業株式会社製)を用いて、表3の配合でバターロールを作った。なお、「フィッシュコラーゲン」(商品名、焼津水産化学工業株式会社製)は、強力粉と共に予め粉体混合して使用した。
【0048】
まず、常法に従い原料を混捏・成型後、温度38℃、湿度85%の条件下で45分間でホイロを行い、最後に200℃で15分間焼成を行った。なお、ゼラチンが均一にならない等の工程上の支障はなかった。












【0049】
【表3】

【0050】
(バターロールの評価)
得られた各バターロールを一晩常温保管した後、外観、キメの状態、粘りの状態、柔らかさ、味について、下記の基準で評価を行った。その結果を表4に示す。
【0051】
(評価基準)
外観:良く膨らんでいる(3点)、普通(2点)、あまり膨らんでいない(1点)
キメの状態:細かい(3点)、普通(2点)、粗い(1点)
粘りの状態:もちもち感がある(3点)、普通(2点)、ぱさつき感がある(1点)
柔らかさ:柔らかい(3点)、普通(2点)、硬い(1点)
味:おいしい(3点)、普通(2点)、おいしくない(1点)
【0052】
【表4】

【0053】
表4から、魚類由来のゼラチンを1質量%添加した実施例2−Aのバターロール、及び魚類由来のゼラチンを2質量%添加した実施例2−Bのバターロールは、共に全ての評価項目で高い評価が得られていることが分かる。また、これらのバターロールにおいては風味の向上効果も見られた。
【0054】
以上の結果から、魚類由来のゼラチンを添加することにより、食パンやバターロール等のパン類の外観、食感、味等を向上できることが分かる。
【実施例3】
【0055】
(クッキーの製造)
平均分子量10万の魚類由来のゼラチンである「フィッシュコラーゲン」(商品名、焼津水産化学工業株式会社製)を用いて、表5の配合で、常法に従い原料を混合・成型後、180℃のオーブンで7分間焼成を行いクッキーを作った。なお、「フィッシュコラーゲン」(商品名、焼津水産化学工業株式会社製)は、薄力粉、ペーキングパウダーと共に予め粉体混合して使用した。なお、ゼラチンが均一にならない等の工程上の支障はなかった。
【0056】
【表5】

【0057】
(クッキーの評価)
得られた各クッキーを一晩常温保管した後、外観、キメの状態、硬さ、歯ごたえ、味について下記の基準で評価を行った。その結果を表6に示す。
【0058】
(評価基準)
外観:良く膨らんでいる(3点)、普通(2点)、あまり膨らんでいない(1点)
キメの状態:細かい(3点)、普通(2点)、粗い(1点)
硬さ:ボディーがしっかりしている(3点)、普通(2点)、もろい(1点)
歯ごたえ:柔らかい(3点)、普通(2点)、硬い(1点)
味:おいしい(3点)、普通(2点)、おいしくない(1点)
【0059】
【表6】

【0060】
表6から、魚類由来のゼラチンをクッキーに添加することにより、外観、食感(キメの状態、硬さ、歯ごたえ)、味等を向上できることが分かる。なお、食感の中でも、特に歯ごたえが良好であった。
【実施例4】
【0061】
(ホットケーキの製造)
市販のホットケーキミックスに、平均分子量10万の魚類由来のゼラチンである「フィッシュコラーゲン」(商品名、焼津水産化学工業株式会社製)2.0質量%を粉体混合して、ホットケーキを作った。また、比較例として、同じホットケーキミックスを使用し、「フィッシュコラーゲン」(商品名、焼津水産化学工業株式会社製)を添加せずにホットケーキを作った。なお、ゼラチンが均一にならない等の工程上の支障はなかった。
【0062】
(ホットケーキの評価)
得られた各ホットケーキを、外観、キメの状態、粘りの状態、口どけ、味について下記の基準で評価を行った。その結果を表7に示す。
【0063】
(評価基準)
外観:良く膨らんでいる(3点)、普通(2点)、あまり膨らんでいない(1点)
キメの状態:細かい(3点)、普通(2点)、粗い(1点)
粘りの状態:もちもち感がある(3点)、普通(2点)、ぱさつき感がある(1点)
口溶け:早い(3点)、普通(2点)、遅い(1点)
味:おいしい(3点)、普通(2点)、おいしくない(1点)











【0064】
【表7】

【0065】
表7から、魚類由来のゼラチンをホットケーキに添加することにより、食感(キメの状態、粘りの状態、口溶け)を向上できることが分かる。具体的には、生地の保水性や起泡性の向上によって食感がしっとりとし、キメの状態も細かくなり、口当たりがマイルドになった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の穀物粉食品用品質改良剤は、穀物粉食品の食感やボリューム感を改善することができ、パンや菓子類等の製造に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均分子量1万〜10万の魚類由来のゼラチンを含有することを特徴とする穀物粉食品用品質改良剤。
【請求項2】
前記平均分子量1万〜10万の魚類由来のゼラチンを10質量%以上含有する請求項1記載の穀物粉食品用品質改良剤。
【請求項3】
製パン又は製菓に用いられる請求項1又は2記載の穀物粉食品用品質改良剤。
【請求項4】
生地原料の混合・混捏工程において、平均分子量1万〜10万の魚類由来のゼラチンを生地に混合することを特徴とする穀物粉食品の製造方法。
【請求項5】
前記生地に含まれる穀物粉に対して、前記平均分子量1万〜10万の魚類由来のゼラチンを0.2〜10質量%添加する請求項4記載の穀物粉食品の製造方法。
【請求項6】
前記生地に、前記平均分子量1万〜10万の魚類由来のゼラチンを粉末のまま混合する請求項4又は5記載の穀物粉食品の製造方法。

【公開番号】特開2006−345803(P2006−345803A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−177948(P2005−177948)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(390033145)焼津水産化学工業株式会社 (80)
【Fターム(参考)】