穀粒乾燥機
【課題】
本発明は、穀粒の胴割れを防止しながら所謂高速乾燥を継続して行なうことを課題とする。
【解決手段】
乾燥対象物に乾燥用熱風を作用させて乾燥する乾燥部と、乾燥中の乾燥対象物の水分を定期的に検出する水分検出手段と、乾燥対象物通過後の排風を前記乾燥用熱風に合流させる戻し手段と、該排風の戻し量を調節する調節手段と、乾燥対象物の水分値に応じて排風の戻し量又は全排風量に対する戻し比率を予め設定し記憶する手段と、前記調節手段を前記水分検出手段によって検出された水分値に応じた排風の戻し量又は戻し比率に作動する制御手段とを設けた乾燥装置とする。
本発明は、穀粒の胴割れを防止しながら所謂高速乾燥を継続して行なうことを課題とする。
【解決手段】
乾燥対象物に乾燥用熱風を作用させて乾燥する乾燥部と、乾燥中の乾燥対象物の水分を定期的に検出する水分検出手段と、乾燥対象物通過後の排風を前記乾燥用熱風に合流させる戻し手段と、該排風の戻し量を調節する調節手段と、乾燥対象物の水分値に応じて排風の戻し量又は全排風量に対する戻し比率を予め設定し記憶する手段と、前記調節手段を前記水分検出手段によって検出された水分値に応じた排風の戻し量又は戻し比率に作動する制御手段とを設けた乾燥装置とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀粒や椎茸等の農産物や海産物、若しくは木材等の乾燥方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1における乾燥装置においては、乾燥穀粒の水分値に関連してバーナ部へ戻す排風量を制御して、排風を有効に再利用することで省エネルギー効果を得られ、外気が低いときのバーナの適正燃焼を維持しようとするものである。
【0003】
ところが、外気条件が高温で、かつ多湿な外気条件のもとで排熱風を循環利用することになり、穀温が上昇し穀物の品質を劣化させることとなるとして、特許文献2では、排熱風の再利用を外気の混合比が20gr/kg以下となっている外気条件の場合のみ利用し、この混合比以下のときには排熱風を再利用しないこととし、穀物乾燥能力の低下や穀温の上昇による品質劣化を未然に防止しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−195266号公報
【特許文献2】特許2599270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2においては、乾燥初期における排熱風の混合比が高い値のときには再利用する排熱風の量を少なく、乾燥が進んで乾燥中期、仕上期になるにつれて段階的に利用する排熱風の量が自動的に増加して乾燥に必要なエネルギー効率を高めることができるとしているが、乾燥時間を短縮する技術については何ら記載が無く、穀粒の胴割れを防止しながら所謂高速乾燥を継続して行なうために改良の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために以下のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に係る発明は、乾燥対象物に乾燥用熱風を作用させて乾燥する乾燥部と、乾燥中の乾燥対象物の水分を定期的に検出する水分検出手段と、乾燥対象物通過後の排風を前記乾燥用熱風に合流させる戻し手段と、該排風の戻し量を調節する調節手段と、
乾燥対象物の水分値に応じて排風の戻し量又は全排風量に対する戻し比率を予め設定し記憶する手段と、前記調節手段を前記水分検出手段によって検出された水分値に応じた排風の戻し量又は戻し比率に作動する制御手段とを設けた乾燥装置とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、乾燥開始後に排風を略全て機外に排出する排風全量機外排出工程(A1)をすべく調節手段を調節した後に、水分検出手段で検出される乾燥対象物の水分値に応じて乾燥部(3)に戻す排風戻し制御工程(A3)をすべく調節手段(22,23)を調節することを特徴とする請求項1記載の乾燥装置とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明では、乾燥対象物の表面に必要な水分を与えながら熱を与えることができる。そのため、乾燥対象物内部の水分勾配を小さい状態にしながら、乾燥対象物内部の温度を上昇させるため、胴割れの少ない高速の乾燥を行なうことができる。また、乾燥部(3)に戻す排風量を水分検出手段(10)で検出する穀粒の水分値に対応して調節することで、排風の湿度を検出する湿度センサを必要とせず、コスト高にならない。
【0009】
請求項2記載の発明においては、乾燥初期に乾燥対象物に含まれる塵埃の多くを機外に排出してから排風を戻すことで、乾燥部(3)に戻す塵埃量を減少することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本実施の形態を穀粒乾燥機に用いた場合について説明する。
図1は穀粒乾燥機の内部を説明する斜視図で、直方体形状の本体1の内部に上部から穀粒を貯留する貯留部2、貯留部2で貯留した穀粒を下方に流下しながら乾燥する乾燥部3、乾燥部3で乾燥した穀粒が集まる集穀部4とを設ける。そして貯留部2に張り込まれた穀粒は乾燥部3で乾燥されて集穀部4に供給され、再度貯留部2に供給され調質される構成のいわゆる循環式の穀粒乾燥機の構成である。
【0011】
なお、本実施の形態では本体1の長手方向sを前後方向、短手方向tを左右方向と呼ぶ。
本体1の前後方向の前側でかつ乾燥部3に対向する左右中央位置に、スリット状の外気取り入れ口50を正面側に多数形成したバーナケース40を取り付け、該バーナケース40内には燃焼バーナ5を収容配置している。そして、燃焼バーナ5の燃焼盤面5dを本体1側と対向するよう燃焼バーナ5を載置している。
【0012】
本体1の前後方向の後側には乾燥部3に対向する左右中央位置に排風ファン6を設ける。
また、本体1の前後方向の前側でバーナケース40に隣接する位置には穀粒を揚穀する昇降機7を設け、本体1の上部には移送螺旋(図示せず)を内装し、昇降機7で揚穀した穀粒を貯留部2に搬送する上部搬送装置8及び上部搬送装置8で搬送中の穀粒に混入する藁屑等の夾雑物を吸引除去する吸塵ファン9を設けている。
【0013】
10は穀粒の水分を検出する水分計で、昇降機7に取り付け設定時間毎に揚穀中の穀粒のうちサンプル穀粒を取り込み単粒毎の電気抵抗値を検出することにより水分値を算出する。
【0014】
乾燥部3は、本体1の左右両側に燃焼バーナ5で生成した乾燥熱風が通過する熱風室11を設け、本体1の左右中央部に排風ファン6と連通する排風室12を設け、熱風室11と排風室12との間には穀粒流下通路13を設け、穀粒流下通路13の下端部には穀粒を集穀部4に繰り出すロータリバルブ14を設け、ロータリバルブ14の回転により貯留室2の穀粒が順次通過する構成である。
【0015】
集穀部4には穀粒を昇降機7に搬送する下部螺旋15を設けている。
排風ファン6は断面円形のファン胴6a内部に、軸流式のファン羽根6bと、ファン羽根6bで発生させる排風に圧力を与える固定板6cとを内装し、排風ファン6の排風排出側には断面円形の排風ダクト20を連結している。
【0016】
排風ダクト20内には排風を排風ダクト20外と排風供給ダクト21に排出する量の割合を調節する第一調節弁23を設けている。
排風ダクト20の上部には排風を本体1内側に供給するための断面方形の排風供給ダクト21を設け、排風供給ダクト21の排風入口には排風供給ダクト21内に供給される排風の量を調節する第二調節弁22を設けている。
【0017】
第一調節弁23と第二調節弁22は横軸心の回動軸23a及び回動軸22aでそれぞれ回動する構成とし、このうち回動軸23aには調節弁駆動モータ25を連結している。第一調節弁23と第二調節弁22とは連結ロッド24で連結し、第一調節弁23と第二調節弁22との回動動作が連動する構成としている。第二調節弁22が全閉位置gaにあって排風が排風供給ダクト21内に排出されない時には、第一調節弁23が全開位置faにあって排風を全て機外に排出される。
【0018】
反対に第二調節弁22が全開位置gbにあって、排風が最も排風供給ダクト21内に最も多くの排風が排出される時には、第一調節弁23が最も排風の量を排風供給ダクト21側に排風を排出する閉位置fbに位置する。なお、第一調節弁23と第二調節弁22はそれぞれ無段階に開閉調節できる構成とし、排風供給ダクト21に排出する排風量を制御部Fで適宜調節している。
【0019】
上記のように、排風戻り量の演算によって、第一調節弁23の回動角度θが決定され、軸23aに組み込んだ角度検出センサ23bにて回動角度θが検出されるまで調節弁駆動モータ25を正逆転連動する構成としている。なお、第二調節弁22は、第一調節弁23に連動するものであるから、その回動角度は検出しない構成としているが、両調節弁を独立的に回動調節するように構成してもよくこの場合には夫々に角度検出センサおよび調節弁駆動モータを設けるものである。
【0020】
第一調節弁23が最も排風の量を排風供給ダクト21側に排風を排出する閉位置fbにあるときに、排風ダクト20の下部の内周面20aと第一調節板23の該周縁23aとの間に設定間隔の隙間zができるよう第一調節弁23の回動軸23aから外周までの長さbを排風ダクト20の中心から内周面20aまでの長さより短くし、第一調節弁23の面積を排風ダクト20の開口面積より小さく構成している。jは第一調節弁23の回動軌跡である。
【0021】
また、第一調節弁23がもっとも排風の量を排風供給ダクト21側に排風を排出する閉位置fbは、図4に示すように前下がり傾斜に位置する構成とし、第二調節弁22は後ろ下がり傾斜に位置する構成とすることで、排風を排風供給ダクト21内に案内し易くしている。
【0022】
排風供給ダクト21と本体1との間には排風供給ダクト21内を通過した排風を左右両側に分散する排風分散通路となる排風分散ケース26を排風ファン6の上部から左右両側に亘って設ける。排風分散ケース26の左右両端部と後述する熱風室内貫通通路を形成する戻りダクト27の後端部とを第一排風開口部mで連通する構成としている。
【0023】
戻りダクト27は左右の熱風室11内前後方向に沿って備える筒形状の通路で、本実施の形態では断面形状で上部が尖った台形状に形成している。
本体1とバーナケース40の間には本体1内を通過して戻された排風が通過する第一戻し通路41と燃焼バーナ5で生成した熱風が通過する熱風通路42を内部に形成する熱排風通過ケース43を備えている。そして、戻りダクト27の一端と第一戻し通路41とを第二排風開口部pで連通する構成とすると共に、第一戻し通路41とバーナケース40の左右両側に形成する第二戻し通路44とを第三排風開口部rで連通する構成としている。バーナケース40の下方には塵埃貯留ケース45を形成している。塵埃貯留ケース45の左右両側の上端部に第四排風開口部dを形成して第二戻し通路44と連通する構成としている。
【0024】
熱排風通過ケース43の構成について詳述する。
熱排風通過ケース43内の熱風通路42は、バーナケース40と第一熱風開口部cで連通する第一熱風通路46と、第一熱風通路46を通過した熱風を第二熱風開口部vから第三熱風開口部wを経て熱風室11に供給する第二熱風通路47とを設けている。
【0025】
第一戻し通路41と第二熱風通路47とは本体1の正面左右両側にあって上下二段に形成し、第一熱風通路46は左右中央側にあってバーナケース40に対向する位置に設けている。第一熱風開口部cは第一熱風通路46及びバーナケース40の中央部に形成している。
【0026】
なお、本実施の形態では排風供給ダクト21から第二戻し通路44に至るまでの排風が通過する経路を総称して戻し通路と呼ぶ。
燃焼バーナ5の周囲について説明する。
【0027】
バーナケース40内にあって燃焼バーナ5の左右に隣接して設ける第二戻し通路44には排風を排出する第五排風開口部eを設ける。第五排風開口部eの位置は燃焼バーナ5の燃焼盤面位置kより本体1側に向かって設け、多数のスリット状に形成している。そして、第五排風開口部eは燃焼バーナ5の燃焼盤面5dと同様本体1側と対向するよう形成している。
【0028】
そして、第五排風開口部eから排出される排風と燃焼バーナ5で生成した熱風とを燃焼バーナ5の燃焼炎Q側に位置する熱排風混合部40aで混合され、混合された熱排風が熱風通路42、すなわち第一熱風通路46と第二熱風通路47の順に通過し、熱風室11に供給される構成である。
【0029】
また、第五排風開口部eは図7及び図8に示すように、本体下側に向かっても多数のスリットが形成されている。
燃焼バーナ5の上方でかつ燃焼盤面位置kより本体1側には燃焼バーナ5の一次空気を吸引して燃焼バーナ5に供給するバーナファン5aを設け、燃焼炎Qの上方に位置することで暖気化して空気ダクト5bを介して燃焼バーナ5に送風できる構成としている。
【0030】
70は風の流れの有無を検出する風検知板である。5cは燃焼バーナ5に燃焼を供給する燃焼ポンプである。
熱排風通過ケース43の側壁に燃焼炎Qの状態を確認するスリット状の燃焼炎確認用開口部43aを設け、燃焼炎の状態を確認できるだけでなく外気を導入できるため熱風が通過する熱排風通過ケース43の熱で側壁を熱くなり難くしている。
【0031】
次に燃焼バーナ5で生成した熱風が排風ファン6の吸引作用を受けて乾燥熱風として熱風室11から流下通路13の穀粒に作用した後、排風となって排風室12及び戻し通路を経て、熱風と混合して熱風室11に供給されるまでの過程について説明する。
【0032】
燃焼バーナ5で生成した熱風はバーナケース40から第一熱風開口部cを通過し、第一熱風通路46から第二熱風開口部v、第二熱風通路47、第三熱風開口部wを通過して熱風室11に供給される。
【0033】
熱風室11内の熱風は多数のスリット(図示省略)を形成する穀粒流下通路13を流下する穀粒内を通過し、穀粒に作用して水分を奪って排風室12に排出され、排風ファン6にて排風ダクト20に排風として排出される。
【0034】
排風ダクト20内の排風は第一調節弁23及び第二調節弁22の開度の制御により適宜必要な排風量を戻し通路を経て再度熱風室11側に循環すべく排風供給ダクト21に供給される。
【0035】
排風供給ダクト21に供給された排風は排風分散ケース26で左右に分散され、第一排風開口部mから戻りダクト27に供給される。そして、戻りダクト27内の排風は第二排風開口部pから第一戻し通路41、第三排風開口部r、第二戻し通路44を経て第五排風開口部eから燃焼バーナ5の燃焼炎Qの側方から燃焼炎Qの噴出する方向と並行して排出され、燃焼バーナ盤面と対向する位置にある熱排風混合部40aで熱風と混合して第一熱風開口部cから第一熱風通路46に供給される。なお、第二戻し通路44の排風に含まれる塵埃は自重で落下して第四排風開口部dを通過して塵埃貯留ケース45に貯留される。
【0036】
次に本実施の形態の構成に伴う作用及び効果について説明する。
排風ファン20からの排風を熱風室11に供給することによって、燃焼バーナ5で供給する熱風に排風中の熱が加わり、熱風室11ひいては流下通路13の穀粒に作用させ得て短時間で穀温を上昇させることができる。そして、排風の戻し量を制御することによって穀粒流下通路13の穀粒に作用する乾燥熱風の絶対湿度を高くし、穀粒表面からの気化量を抑止することができる。
【0037】
排風と混合した乾燥熱風を供給すると穀粒表面から蒸発しようとする気化量を高くなった穀粒表面の絶対湿度により抑止する一方、穀粒に作用する熱は主に穀温の上昇を促進し、穀粒内の水分流動性を高め、穀粒単位の内部と表面側との水分勾配を小さくでき、胴割れが少なく、かつ高速で乾燥作業を行なえる。
【0038】
また、本実施の形態では穀粒中の水分の気化を抑止するものとして、例えば特開平7−260351号に記載されているように別の加湿器を用いて穀粒に加湿するのではなく、穀粒から一旦除去した水分を戻して穀粒に与えるため、新たに加湿された加湿水分除去のための余分な燃焼が不要で燃料効率が良いものでありながら高速な乾燥を行なえる。
【0039】
また、第一調節弁23が最も排風の量を排風供給ダクト21側に排出する閉位置fbにあるときに、排風ダクト20の下側の内周面20aと第一調節板23の端部23bとの間に隙間zができるよう第一調節板23の面積を排風ダクト20の開口面積より小さく構成することで、排風に含まれる比較的大きな塵埃が排風ダクト20の隙間zから機外に排出され易くなり、排風供給ダクト21から第三戻し通路45に至るまでの排風循環通路内に塵埃が堆積し難くする事ができ、排風の通過を円滑にすることができる。また、排風供給ダクト21が排風ダクト20の上方にあるため、大きな塵埃が排風供給ダクト21に入り難くして機外に排出し易くすることができる。
【0040】
戻しダクト27を熱風室11内に設けることで、戻しダクト27内部の温度も高くなり、塵埃を含む高湿度の排風が戻しダクト27内部で結露して塵埃が付着したりするのを防止することができる。また、排風室12内に排風を通過する通路を設けると排風室12の空間が小さくなり排風ファン6の吸引力が低下するという欠点が生じるが、熱風室11内に備えることで本実施の形態によりそれを防止することができる。
【0041】
熱風室11を本体1の左右両側に設け、排風室12を本体1の中央部に設けたことで、外気温度が低い場合において、排風と熱風が混合した高温高湿度の混合気体が排風として通過する排風室12内を結露し難くすることができる。
【0042】
戻しダクト27から第一熱風通路46に排風を供給するまでにバーナケース40に隣接する第二戻し通路44を経て第五排風開口部eから燃焼バーナ5の燃焼炎Qの側方において燃焼炎Qの噴出方向と並行状態で熱排風混合部40aに排風を排出することで、燃焼炎Qが乱流せず、安定した燃焼バーナ5の燃焼を行なうことができるものである。しかも燃焼バーナ5の燃焼側で排風を合流させるため、戻し排風量の変化による燃焼バーナ5周辺を通過する風の量の変化を小さくすることができ、燃焼炎Qの変化を小さくすることができる。そして、排風と熱風の混合を促進させることができる。そして、排風を燃焼バーナ5に直接晒さないことにより、塵埃や水分等の作用による燃焼バーナ5の劣化を防止することができる。
【0043】
また、塵埃貯留ケース45に排風中の塵埃を多く落下堆積させることが可能になり、第一熱風通路46及び熱風室11に供給される塵埃の量を減少させることができる。戻し通路をバーナケース40に隣接して設けることで、排風の保温性を向上させることができる。
【0044】
本実施の形態のように、外気を直接燃焼バーナ5で加熱して燃焼ガスに含まれた空気を乾燥対象物に供給する乾燥機においては、塵埃の含まれる排風を燃焼バーナ5の燃焼炎Qで加熱すると塵埃が燃焼し、該燃焼した塵埃が穀粒に供給されて穀粒の品質が低下する場合が生じていたが、本実施の形態により、塵埃の燃焼がされ難く穀粒の品質低下を防止することができる。
【0045】
次に、本実施の形態の乾燥制御について説明する。
図9は乾燥作業に伴う穀温の変化及び水分値の変化を示すグラフで、L1は本実施の形態の乾燥工程を示し、L2は従来の乾燥工程を示す。また、L3は本実施の形態の水分値の変化を示し、L4は従来の水分値の工程を示す。
【0046】
L2は従来の乾燥工程で、燃焼バーナ5が燃焼量を一定にした場合のグラフであるが、燃焼を開始してから次第に穀温が上昇し、仕上げ水分に到達するまで穀温が略一定の傾きで上昇していることを示している。
【0047】
それに対して、L1の乾燥工程は以下の工程を行なう。
まず、燃焼バーナ5の燃焼開始後、所定時間(例えば張り込み穀粒が一循環する時間)においては第一調節板23を全開し、排風を略全量を機外に排出し、燃焼開始直後に多く発生する塵埃が再度戻し通路から熱風室11内に供給されることを防止する(乾燥初期全量機外排出工程A1)。
【0048】
所定時間経過すると、戻す排風の割合が所定以上(例えば75%以上)の状態でしばらく一定にするよう第一調節板23と第二調節板22を調節し、排風ファン20から排出された排風の多くを戻し通路側に排出し、熱排風混合部40a内に供給される。そして、排風と燃焼バーナ5で発生した熱風と混合され、熱風室11から流下通路13の穀粒に供給される(乾燥初期全量戻し工程A2)。
【0049】
そのため、供給された熱により穀粒の表面から蒸発しようとする水分が、熱と共に供給された水分によって抑止され、水分が穀粒内部にとどまる。そして穀温は燃焼バーナで生成した熱に排風の熱がプラスされて穀粒に付与されることにより、多くの熱が与えられ穀温が急激に上昇する。
【0050】
なお、この工程は外気温度によって戻し量が補正され、外気温が高くなるほど還戻す排風の割合を低くするよう第一調節板23と第二調節板22を調節している。また、この工程は全乾燥工程で最も多くの排風を戻す工程である。
【0051】
その後、設定時間毎に水分計10で検出する穀粒水分値に応じた水分量を含む排風絶対湿度Haの排風を戻す調節を行なう(排風絶対湿度戻し工程A3)。そして、穀粒流下通路13内が飽和水蒸気圧を超えて結露しない程度に、すなわち飽和水蒸気圧未満でかつ飽和水蒸気圧近傍になる排風絶対湿度Haの排風を供給する。
【0052】
仕上げ水分値に近くなると、第一調節弁23と第二調節弁22は排風を順次機外に排出する割合を高くするよう調節制御することで、穀温を順次低下させ、設定水分に到達して乾燥作業終了した後の籾摺り工程を早く行なえるようにしている(仕上排出工程A4)。
【0053】
ここで、穀粒を例に乾燥理論、すなわち、穀粒に水分と熱を与えるということを図11で説明すると、
従来の乾燥制御では図11の(A)に示すように、燃焼バーナ5で発生して穀粒に供給された乾燥熱風による乾燥熱量を100とすると、乾燥初期には主として穀粒内の水分が蒸発されるための熱量である気化熱量に消費され(例えば95)、残りは穀温の上昇に用いられる。すなわち、乾燥初期は穀粒の水分値が高いために供給された熱量の多くが水分の気化に用いられる。そのため、乾燥熱量を単純に増加させるだけでは穀粒表面側の乾燥が穀粒内部側より促進され、かえって穀粒中の水分勾配が高くなり胴割れがしやすくなってしまう。
【0054】
それに対し、本実施の形態の乾燥制御については、図11の(B)で示すように、乾燥初期に排風を戻して所定条件の乾燥熱風を生成することにより、胴割れし難く高速乾燥を可能にするものである。すなわち、燃焼バーナ5で発生した熱量を100とし、さらにこの乾燥熱風の熱量に排風中に含まれる排風の熱量50が加わるとすると、乾燥熱風に排風が合流した熱量全体は150となる。ここで新たな乾燥風の条件は絶対湿度が飽和水蒸気圧近傍でかつ該飽和水蒸気圧以下であることを知見している。
【0055】
そして、新たな乾燥風が穀粒に作用すると熱量を与えられた穀粒中の水分が穀粒表面から気化しようとする一方で、絶対湿度が上記のように飽和水蒸気圧近傍でかつ飽和水蒸気圧以下に調整されることにより穀粒表面からの水分検出は抑止され、付与される熱量は穀粒内部に作用し、例えば気化熱量に用いられる熱量は従来の95より低い60となり、穀温上昇に用いられる熱量が90となる。そのため、穀温が急激に上昇するが穀粒中の水分移行が促進され水分勾配が急激に高くならず、胴割れが発生し難いものである。
【0056】
そして、戻り排風の排風量を乾燥中に検出する穀粒の水分値に対応して調節することができるため、排風の湿度を検出する湿度センサ等を必要とせず、コスト高にならず、また、適正な水分、すなわち穀粒流下通路13が飽和水蒸気圧未満でかつ飽和水蒸気圧近傍を保つ程度の水分を乾燥対象物に与えながら乾燥することができる。
【0057】
以上に説明の新たな乾燥風の条件は、燃焼バーナ5による乾燥熱風と排風との合流によって得られることを知見している。すなわち、穀粒に作用する乾燥風は水分を吸収して排風となって排出されるが、この排風の絶対湿度に着目して排風戻し量を調整しようとする。
【0058】
ここで、図10のグラフに示すように排風絶対湿度は穀粒の水分値に略対応していることが試験により知見されている。すなわち、穀粒の水分値が高い程排風絶対湿度も高くなっている。これは、穀粒表面から気化しようとする水蒸気圧が高いため、それを抑止するためにその分多くの排風湿度を必要としているためであり、乾燥作業が進行し、穀粒水分値が下がるほど穀粒から気化する水分量が減り、穀粒中の水分を抑止するための水分量が少なくともよくなるためである。本実施例では、図10のグラフを制御部Fの記憶部MEに記憶しておき、検出水分値のデータに基づき必要とする排風絶対湿度の値を導き出す構成としている。
【0059】
飽和水蒸気を超えると結露して穀粒が蒸れて品質が損なわれる恐れがあるが、超えない程度に、排風中に含まれる熱と水分を穀粒に与えることで穀粒内部に多くの熱を供給すると共に、穀粒の表面から蒸発しようとする水分を排風中の水分により穀物対象物の内部に抑止する。穀粒内部に熱と供給すると内部水分の表面側の移行が促進されるため、穀粒内部の水分勾配を小さくすることができ、高速で乾燥させるものでありながら穀粒の内部が亀裂等を起こし難くすることができる。
【0060】
次に調節弁の開度を調節するための制御例について代表数値を用いて説明する。
外気温度センサTAで検出された外気温が20℃で、外気湿度センサTHで検出された外気湿度が70%で制御部Fで演算された絶対湿度(Z)が13g/m3とする。そして、前述の図10で水分計10で検出した穀粒水分値に対応して設定されている制御目標とする排風(Y)の絶対湿度(U)が25g/m3である場合とする。そして、本実施例の排風ファン7の風量は1900kg/hで、穀粒乾燥機に供給された穀粒(籾)量を800kg、乾燥速度を示す乾減率(一時間あたりに乾燥される水分の割合)を1.2%/hとした場合、どの程度の割合の排風を熱風室13に戻すかを以下の式より求める。
【0061】
絶対湿度(U)−絶対湿度(Z)=12(g/m3) …B1
外気が吸水できる最大吸水量は
12×1900/1000≒23(kg) …B2
そして、一時間あたりに穀粒から除去される水分量は
800(kg)×1.2(%/h)=9.6(kg/h) …B3
B2の式とB3の式より
23/(9.6+23)≒0.71 →71% …B4
すなわち、排風ファン7から排出される排風量の71%を熱風室11に戻すべく調節弁駆動モータ25を制御して第一調節弁23及び第二調節弁22を調節する。
【0062】
すなわち、排風の戻し割合に見合う前記第一調節弁23の回動角度θを予め記憶部MEに記憶しておき、上記計算結果に基づく排風割合71%に対応するよう調節弁駆動モータ25を正・逆転連動する。
【0063】
前述の演算式についてさらに詳述すると、前記外気温度センサTAと前記外気湿度センサHAでそれぞれ検出された外気の温度と湿度から制御部(図示せず)で外気の絶対湿度(Z)を演算し、外気の絶対湿度(Z)と水分計10で検出された穀粒水分の条件から予め設定する排風の絶対湿度(U)との差異(増加水量)を外気が吸収できる最大の吸水量として演算する(式B1と式B2)。そして、一方では乾燥作業により穀粒から蒸発する蒸発水量(本実施の形態では前述の一時間あたりに穀粒から除去される水分量)を求め(式B3)、増加水量が乾燥作業による蒸発水量と合算された値に対する割合が、排風を戻す割合と考えるものである。
【0064】
すなわち、前記式B4は
増加水量/(穀物から蒸発する水量+増加水量)
を示している。この式においては、いわゆる連続的に乾燥対象物に乾燥作用をなす乾燥機について特に有効である。
【0065】
但し、本実施の形態のように穀粒を貯留部2と乾燥部3とを循環させて乾燥作用と調質作用(いわゆるテンパリング)を交互に行なう穀粒乾燥機においては、前述のように乾燥部で熱と水分を供給した穀粒が貯留部2に循環されると、供給する熱と水分が多すぎた場合に、穀粒内部の水分の移行より穀粒表面からの乾燥が進行し、穀粒の胴割れが増加する場合がある。
【0066】
そこで、特に穀粒乾燥機の場合には式B4に変わって下記の式B5に基づいて乾燥制御を行なっても良い。
増加水量/(穀物から蒸発する水量+排風の絶対湿度(U)) …B5
23/(9.6+47.5)≒0.42 すなわち、42%の排風を戻すようにする。
【0067】
なお、47.5(kg)とは前述の絶対湿度(U)の25g/m3と排風ファンの風量1900kg/hとから算出される。
47.5=25×1900/1000 …B6
テンパリング方式で乾燥を行なう循環型の乾燥機においては、貯留部2に停留している間の表面乾燥を抑制するために、式B5では貯留部2を通過する絶対湿度が設定する排風の絶対湿度になるように、単位時間あたりに穀物内を通過する風が持つ総水量を変更補正する。
【0068】
なお、第一調節弁23及び第二調節弁22が排風量の71%より多くの量を熱風室11に戻すよう調節された場合には、多くなればなるほど戻される水分量が多くなるため、穀粒から新たに水分を除去し難くなる。また、第一調節弁23及び第二調節弁22が排風量の71%より少ない量を熱風室11に戻した場合には熱風室11に戻される熱量が少なくなるため、穀粒の温度の上昇がし難くなり乾燥速度が遅くなる。
【0069】
本実施の形態の式から排風を戻す割合を調節することで、排風ファン6から排出された排風が帯びる熱、すなわち吸水力をできる限り適正に利用することで燃焼効率の良い乾燥作業を行うことができる。
【0070】
図12は前述の図10に基づく穀粒水分値と排風絶対湿度に基づいて設定する排風を戻す割合を補正することを示す図である。
補正する条件として外気温度と穀粒張込量を示している。すなわち、外気温度が高い程排風を戻す割合を低減させるよう補正する。そして曲線M1,M2,M3,M4,M5は張込量毎による排風戻し率の補正を示し、張込量が多いほど排風を戻す割合を低減させるよう補正する。
【0071】
外気温度が高くなるほど穀粒の乾燥が促進するのでその分排風を戻す量を低減できる。また、張込量が多いほど最も上昇する穀温が高くなるためその分排風を戻す量を低減できる。
【0072】
上記実施例では、排風戻し量として排風全量に対する戻し割合を導き出す手段として説明したが、排風戻し量を記憶手段に記憶しておき、当該排風戻し量を制御する形態でもよい。
【0073】
また、本実施の形態では乾燥速度を示す乾減率を1.2%としたが、乾減率によって排風を戻す割合が変更される。
なお、本実施の形態では外気湿度センサHAから外気の絶対湿度を求めているが、外気湿度センサの代わりに外気温度基準による外気の絶対湿度を定めてこれを代用値としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本実施の形態では籾・麦・豆等の穀粒乾燥機について記載したが、そのほかに椎茸や材木や海産物等の自然から採取された物で、乾燥対象物の表面部分と内部中心部分に水分勾配を伴うものを乾燥対象物とする乾燥機の場合にも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】穀粒乾燥機全体の内部を説明する斜視図
【図2】乾燥部と集穀部の構成を説明する斜視図
【図3】乾燥部と集穀部の構成を説明する正面図
【図4】第一調節弁と第二調節弁の連動構成を説明する排風ファンの側面図及び背面図
【図5】排風供給ダクトと排風分散ケースと排風ファンを示した斜視図
【図6】バーナケース及び熱排風通過ケースの内部を説明する斜視図
【図7】バーナケース内部を説明する側面図
【図8】バーナケース内部を説明する斜視図
【図9】乾燥工程と穀温の関係を示すグラフ
【図10】排風絶対湿度と穀粒水分値との関係を示す図
【図11】穀粒に供給する熱について説明する図
【図12】外気温度及び張込量による排風を還流する割合を変更することを示す図
【図13】ブロック図
【符号の説明】
【0076】
1 本体
5 燃焼バーナ
5a 燃焼バーナの燃焼盤面
6 排風ファン
11 熱風室
13 穀粒流下通路
20 排風ダクト
22 第二調節板
23 第一調節板
23a回動軸
24 ロッド
44 第二戻し通路
k 燃焼バーナの燃焼盤面位置
e 第五排風開口部
Q 燃焼炎
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀粒や椎茸等の農産物や海産物、若しくは木材等の乾燥方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1における乾燥装置においては、乾燥穀粒の水分値に関連してバーナ部へ戻す排風量を制御して、排風を有効に再利用することで省エネルギー効果を得られ、外気が低いときのバーナの適正燃焼を維持しようとするものである。
【0003】
ところが、外気条件が高温で、かつ多湿な外気条件のもとで排熱風を循環利用することになり、穀温が上昇し穀物の品質を劣化させることとなるとして、特許文献2では、排熱風の再利用を外気の混合比が20gr/kg以下となっている外気条件の場合のみ利用し、この混合比以下のときには排熱風を再利用しないこととし、穀物乾燥能力の低下や穀温の上昇による品質劣化を未然に防止しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−195266号公報
【特許文献2】特許2599270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2においては、乾燥初期における排熱風の混合比が高い値のときには再利用する排熱風の量を少なく、乾燥が進んで乾燥中期、仕上期になるにつれて段階的に利用する排熱風の量が自動的に増加して乾燥に必要なエネルギー効率を高めることができるとしているが、乾燥時間を短縮する技術については何ら記載が無く、穀粒の胴割れを防止しながら所謂高速乾燥を継続して行なうために改良の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために以下のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に係る発明は、乾燥対象物に乾燥用熱風を作用させて乾燥する乾燥部と、乾燥中の乾燥対象物の水分を定期的に検出する水分検出手段と、乾燥対象物通過後の排風を前記乾燥用熱風に合流させる戻し手段と、該排風の戻し量を調節する調節手段と、
乾燥対象物の水分値に応じて排風の戻し量又は全排風量に対する戻し比率を予め設定し記憶する手段と、前記調節手段を前記水分検出手段によって検出された水分値に応じた排風の戻し量又は戻し比率に作動する制御手段とを設けた乾燥装置とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、乾燥開始後に排風を略全て機外に排出する排風全量機外排出工程(A1)をすべく調節手段を調節した後に、水分検出手段で検出される乾燥対象物の水分値に応じて乾燥部(3)に戻す排風戻し制御工程(A3)をすべく調節手段(22,23)を調節することを特徴とする請求項1記載の乾燥装置とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明では、乾燥対象物の表面に必要な水分を与えながら熱を与えることができる。そのため、乾燥対象物内部の水分勾配を小さい状態にしながら、乾燥対象物内部の温度を上昇させるため、胴割れの少ない高速の乾燥を行なうことができる。また、乾燥部(3)に戻す排風量を水分検出手段(10)で検出する穀粒の水分値に対応して調節することで、排風の湿度を検出する湿度センサを必要とせず、コスト高にならない。
【0009】
請求項2記載の発明においては、乾燥初期に乾燥対象物に含まれる塵埃の多くを機外に排出してから排風を戻すことで、乾燥部(3)に戻す塵埃量を減少することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本実施の形態を穀粒乾燥機に用いた場合について説明する。
図1は穀粒乾燥機の内部を説明する斜視図で、直方体形状の本体1の内部に上部から穀粒を貯留する貯留部2、貯留部2で貯留した穀粒を下方に流下しながら乾燥する乾燥部3、乾燥部3で乾燥した穀粒が集まる集穀部4とを設ける。そして貯留部2に張り込まれた穀粒は乾燥部3で乾燥されて集穀部4に供給され、再度貯留部2に供給され調質される構成のいわゆる循環式の穀粒乾燥機の構成である。
【0011】
なお、本実施の形態では本体1の長手方向sを前後方向、短手方向tを左右方向と呼ぶ。
本体1の前後方向の前側でかつ乾燥部3に対向する左右中央位置に、スリット状の外気取り入れ口50を正面側に多数形成したバーナケース40を取り付け、該バーナケース40内には燃焼バーナ5を収容配置している。そして、燃焼バーナ5の燃焼盤面5dを本体1側と対向するよう燃焼バーナ5を載置している。
【0012】
本体1の前後方向の後側には乾燥部3に対向する左右中央位置に排風ファン6を設ける。
また、本体1の前後方向の前側でバーナケース40に隣接する位置には穀粒を揚穀する昇降機7を設け、本体1の上部には移送螺旋(図示せず)を内装し、昇降機7で揚穀した穀粒を貯留部2に搬送する上部搬送装置8及び上部搬送装置8で搬送中の穀粒に混入する藁屑等の夾雑物を吸引除去する吸塵ファン9を設けている。
【0013】
10は穀粒の水分を検出する水分計で、昇降機7に取り付け設定時間毎に揚穀中の穀粒のうちサンプル穀粒を取り込み単粒毎の電気抵抗値を検出することにより水分値を算出する。
【0014】
乾燥部3は、本体1の左右両側に燃焼バーナ5で生成した乾燥熱風が通過する熱風室11を設け、本体1の左右中央部に排風ファン6と連通する排風室12を設け、熱風室11と排風室12との間には穀粒流下通路13を設け、穀粒流下通路13の下端部には穀粒を集穀部4に繰り出すロータリバルブ14を設け、ロータリバルブ14の回転により貯留室2の穀粒が順次通過する構成である。
【0015】
集穀部4には穀粒を昇降機7に搬送する下部螺旋15を設けている。
排風ファン6は断面円形のファン胴6a内部に、軸流式のファン羽根6bと、ファン羽根6bで発生させる排風に圧力を与える固定板6cとを内装し、排風ファン6の排風排出側には断面円形の排風ダクト20を連結している。
【0016】
排風ダクト20内には排風を排風ダクト20外と排風供給ダクト21に排出する量の割合を調節する第一調節弁23を設けている。
排風ダクト20の上部には排風を本体1内側に供給するための断面方形の排風供給ダクト21を設け、排風供給ダクト21の排風入口には排風供給ダクト21内に供給される排風の量を調節する第二調節弁22を設けている。
【0017】
第一調節弁23と第二調節弁22は横軸心の回動軸23a及び回動軸22aでそれぞれ回動する構成とし、このうち回動軸23aには調節弁駆動モータ25を連結している。第一調節弁23と第二調節弁22とは連結ロッド24で連結し、第一調節弁23と第二調節弁22との回動動作が連動する構成としている。第二調節弁22が全閉位置gaにあって排風が排風供給ダクト21内に排出されない時には、第一調節弁23が全開位置faにあって排風を全て機外に排出される。
【0018】
反対に第二調節弁22が全開位置gbにあって、排風が最も排風供給ダクト21内に最も多くの排風が排出される時には、第一調節弁23が最も排風の量を排風供給ダクト21側に排風を排出する閉位置fbに位置する。なお、第一調節弁23と第二調節弁22はそれぞれ無段階に開閉調節できる構成とし、排風供給ダクト21に排出する排風量を制御部Fで適宜調節している。
【0019】
上記のように、排風戻り量の演算によって、第一調節弁23の回動角度θが決定され、軸23aに組み込んだ角度検出センサ23bにて回動角度θが検出されるまで調節弁駆動モータ25を正逆転連動する構成としている。なお、第二調節弁22は、第一調節弁23に連動するものであるから、その回動角度は検出しない構成としているが、両調節弁を独立的に回動調節するように構成してもよくこの場合には夫々に角度検出センサおよび調節弁駆動モータを設けるものである。
【0020】
第一調節弁23が最も排風の量を排風供給ダクト21側に排風を排出する閉位置fbにあるときに、排風ダクト20の下部の内周面20aと第一調節板23の該周縁23aとの間に設定間隔の隙間zができるよう第一調節弁23の回動軸23aから外周までの長さbを排風ダクト20の中心から内周面20aまでの長さより短くし、第一調節弁23の面積を排風ダクト20の開口面積より小さく構成している。jは第一調節弁23の回動軌跡である。
【0021】
また、第一調節弁23がもっとも排風の量を排風供給ダクト21側に排風を排出する閉位置fbは、図4に示すように前下がり傾斜に位置する構成とし、第二調節弁22は後ろ下がり傾斜に位置する構成とすることで、排風を排風供給ダクト21内に案内し易くしている。
【0022】
排風供給ダクト21と本体1との間には排風供給ダクト21内を通過した排風を左右両側に分散する排風分散通路となる排風分散ケース26を排風ファン6の上部から左右両側に亘って設ける。排風分散ケース26の左右両端部と後述する熱風室内貫通通路を形成する戻りダクト27の後端部とを第一排風開口部mで連通する構成としている。
【0023】
戻りダクト27は左右の熱風室11内前後方向に沿って備える筒形状の通路で、本実施の形態では断面形状で上部が尖った台形状に形成している。
本体1とバーナケース40の間には本体1内を通過して戻された排風が通過する第一戻し通路41と燃焼バーナ5で生成した熱風が通過する熱風通路42を内部に形成する熱排風通過ケース43を備えている。そして、戻りダクト27の一端と第一戻し通路41とを第二排風開口部pで連通する構成とすると共に、第一戻し通路41とバーナケース40の左右両側に形成する第二戻し通路44とを第三排風開口部rで連通する構成としている。バーナケース40の下方には塵埃貯留ケース45を形成している。塵埃貯留ケース45の左右両側の上端部に第四排風開口部dを形成して第二戻し通路44と連通する構成としている。
【0024】
熱排風通過ケース43の構成について詳述する。
熱排風通過ケース43内の熱風通路42は、バーナケース40と第一熱風開口部cで連通する第一熱風通路46と、第一熱風通路46を通過した熱風を第二熱風開口部vから第三熱風開口部wを経て熱風室11に供給する第二熱風通路47とを設けている。
【0025】
第一戻し通路41と第二熱風通路47とは本体1の正面左右両側にあって上下二段に形成し、第一熱風通路46は左右中央側にあってバーナケース40に対向する位置に設けている。第一熱風開口部cは第一熱風通路46及びバーナケース40の中央部に形成している。
【0026】
なお、本実施の形態では排風供給ダクト21から第二戻し通路44に至るまでの排風が通過する経路を総称して戻し通路と呼ぶ。
燃焼バーナ5の周囲について説明する。
【0027】
バーナケース40内にあって燃焼バーナ5の左右に隣接して設ける第二戻し通路44には排風を排出する第五排風開口部eを設ける。第五排風開口部eの位置は燃焼バーナ5の燃焼盤面位置kより本体1側に向かって設け、多数のスリット状に形成している。そして、第五排風開口部eは燃焼バーナ5の燃焼盤面5dと同様本体1側と対向するよう形成している。
【0028】
そして、第五排風開口部eから排出される排風と燃焼バーナ5で生成した熱風とを燃焼バーナ5の燃焼炎Q側に位置する熱排風混合部40aで混合され、混合された熱排風が熱風通路42、すなわち第一熱風通路46と第二熱風通路47の順に通過し、熱風室11に供給される構成である。
【0029】
また、第五排風開口部eは図7及び図8に示すように、本体下側に向かっても多数のスリットが形成されている。
燃焼バーナ5の上方でかつ燃焼盤面位置kより本体1側には燃焼バーナ5の一次空気を吸引して燃焼バーナ5に供給するバーナファン5aを設け、燃焼炎Qの上方に位置することで暖気化して空気ダクト5bを介して燃焼バーナ5に送風できる構成としている。
【0030】
70は風の流れの有無を検出する風検知板である。5cは燃焼バーナ5に燃焼を供給する燃焼ポンプである。
熱排風通過ケース43の側壁に燃焼炎Qの状態を確認するスリット状の燃焼炎確認用開口部43aを設け、燃焼炎の状態を確認できるだけでなく外気を導入できるため熱風が通過する熱排風通過ケース43の熱で側壁を熱くなり難くしている。
【0031】
次に燃焼バーナ5で生成した熱風が排風ファン6の吸引作用を受けて乾燥熱風として熱風室11から流下通路13の穀粒に作用した後、排風となって排風室12及び戻し通路を経て、熱風と混合して熱風室11に供給されるまでの過程について説明する。
【0032】
燃焼バーナ5で生成した熱風はバーナケース40から第一熱風開口部cを通過し、第一熱風通路46から第二熱風開口部v、第二熱風通路47、第三熱風開口部wを通過して熱風室11に供給される。
【0033】
熱風室11内の熱風は多数のスリット(図示省略)を形成する穀粒流下通路13を流下する穀粒内を通過し、穀粒に作用して水分を奪って排風室12に排出され、排風ファン6にて排風ダクト20に排風として排出される。
【0034】
排風ダクト20内の排風は第一調節弁23及び第二調節弁22の開度の制御により適宜必要な排風量を戻し通路を経て再度熱風室11側に循環すべく排風供給ダクト21に供給される。
【0035】
排風供給ダクト21に供給された排風は排風分散ケース26で左右に分散され、第一排風開口部mから戻りダクト27に供給される。そして、戻りダクト27内の排風は第二排風開口部pから第一戻し通路41、第三排風開口部r、第二戻し通路44を経て第五排風開口部eから燃焼バーナ5の燃焼炎Qの側方から燃焼炎Qの噴出する方向と並行して排出され、燃焼バーナ盤面と対向する位置にある熱排風混合部40aで熱風と混合して第一熱風開口部cから第一熱風通路46に供給される。なお、第二戻し通路44の排風に含まれる塵埃は自重で落下して第四排風開口部dを通過して塵埃貯留ケース45に貯留される。
【0036】
次に本実施の形態の構成に伴う作用及び効果について説明する。
排風ファン20からの排風を熱風室11に供給することによって、燃焼バーナ5で供給する熱風に排風中の熱が加わり、熱風室11ひいては流下通路13の穀粒に作用させ得て短時間で穀温を上昇させることができる。そして、排風の戻し量を制御することによって穀粒流下通路13の穀粒に作用する乾燥熱風の絶対湿度を高くし、穀粒表面からの気化量を抑止することができる。
【0037】
排風と混合した乾燥熱風を供給すると穀粒表面から蒸発しようとする気化量を高くなった穀粒表面の絶対湿度により抑止する一方、穀粒に作用する熱は主に穀温の上昇を促進し、穀粒内の水分流動性を高め、穀粒単位の内部と表面側との水分勾配を小さくでき、胴割れが少なく、かつ高速で乾燥作業を行なえる。
【0038】
また、本実施の形態では穀粒中の水分の気化を抑止するものとして、例えば特開平7−260351号に記載されているように別の加湿器を用いて穀粒に加湿するのではなく、穀粒から一旦除去した水分を戻して穀粒に与えるため、新たに加湿された加湿水分除去のための余分な燃焼が不要で燃料効率が良いものでありながら高速な乾燥を行なえる。
【0039】
また、第一調節弁23が最も排風の量を排風供給ダクト21側に排出する閉位置fbにあるときに、排風ダクト20の下側の内周面20aと第一調節板23の端部23bとの間に隙間zができるよう第一調節板23の面積を排風ダクト20の開口面積より小さく構成することで、排風に含まれる比較的大きな塵埃が排風ダクト20の隙間zから機外に排出され易くなり、排風供給ダクト21から第三戻し通路45に至るまでの排風循環通路内に塵埃が堆積し難くする事ができ、排風の通過を円滑にすることができる。また、排風供給ダクト21が排風ダクト20の上方にあるため、大きな塵埃が排風供給ダクト21に入り難くして機外に排出し易くすることができる。
【0040】
戻しダクト27を熱風室11内に設けることで、戻しダクト27内部の温度も高くなり、塵埃を含む高湿度の排風が戻しダクト27内部で結露して塵埃が付着したりするのを防止することができる。また、排風室12内に排風を通過する通路を設けると排風室12の空間が小さくなり排風ファン6の吸引力が低下するという欠点が生じるが、熱風室11内に備えることで本実施の形態によりそれを防止することができる。
【0041】
熱風室11を本体1の左右両側に設け、排風室12を本体1の中央部に設けたことで、外気温度が低い場合において、排風と熱風が混合した高温高湿度の混合気体が排風として通過する排風室12内を結露し難くすることができる。
【0042】
戻しダクト27から第一熱風通路46に排風を供給するまでにバーナケース40に隣接する第二戻し通路44を経て第五排風開口部eから燃焼バーナ5の燃焼炎Qの側方において燃焼炎Qの噴出方向と並行状態で熱排風混合部40aに排風を排出することで、燃焼炎Qが乱流せず、安定した燃焼バーナ5の燃焼を行なうことができるものである。しかも燃焼バーナ5の燃焼側で排風を合流させるため、戻し排風量の変化による燃焼バーナ5周辺を通過する風の量の変化を小さくすることができ、燃焼炎Qの変化を小さくすることができる。そして、排風と熱風の混合を促進させることができる。そして、排風を燃焼バーナ5に直接晒さないことにより、塵埃や水分等の作用による燃焼バーナ5の劣化を防止することができる。
【0043】
また、塵埃貯留ケース45に排風中の塵埃を多く落下堆積させることが可能になり、第一熱風通路46及び熱風室11に供給される塵埃の量を減少させることができる。戻し通路をバーナケース40に隣接して設けることで、排風の保温性を向上させることができる。
【0044】
本実施の形態のように、外気を直接燃焼バーナ5で加熱して燃焼ガスに含まれた空気を乾燥対象物に供給する乾燥機においては、塵埃の含まれる排風を燃焼バーナ5の燃焼炎Qで加熱すると塵埃が燃焼し、該燃焼した塵埃が穀粒に供給されて穀粒の品質が低下する場合が生じていたが、本実施の形態により、塵埃の燃焼がされ難く穀粒の品質低下を防止することができる。
【0045】
次に、本実施の形態の乾燥制御について説明する。
図9は乾燥作業に伴う穀温の変化及び水分値の変化を示すグラフで、L1は本実施の形態の乾燥工程を示し、L2は従来の乾燥工程を示す。また、L3は本実施の形態の水分値の変化を示し、L4は従来の水分値の工程を示す。
【0046】
L2は従来の乾燥工程で、燃焼バーナ5が燃焼量を一定にした場合のグラフであるが、燃焼を開始してから次第に穀温が上昇し、仕上げ水分に到達するまで穀温が略一定の傾きで上昇していることを示している。
【0047】
それに対して、L1の乾燥工程は以下の工程を行なう。
まず、燃焼バーナ5の燃焼開始後、所定時間(例えば張り込み穀粒が一循環する時間)においては第一調節板23を全開し、排風を略全量を機外に排出し、燃焼開始直後に多く発生する塵埃が再度戻し通路から熱風室11内に供給されることを防止する(乾燥初期全量機外排出工程A1)。
【0048】
所定時間経過すると、戻す排風の割合が所定以上(例えば75%以上)の状態でしばらく一定にするよう第一調節板23と第二調節板22を調節し、排風ファン20から排出された排風の多くを戻し通路側に排出し、熱排風混合部40a内に供給される。そして、排風と燃焼バーナ5で発生した熱風と混合され、熱風室11から流下通路13の穀粒に供給される(乾燥初期全量戻し工程A2)。
【0049】
そのため、供給された熱により穀粒の表面から蒸発しようとする水分が、熱と共に供給された水分によって抑止され、水分が穀粒内部にとどまる。そして穀温は燃焼バーナで生成した熱に排風の熱がプラスされて穀粒に付与されることにより、多くの熱が与えられ穀温が急激に上昇する。
【0050】
なお、この工程は外気温度によって戻し量が補正され、外気温が高くなるほど還戻す排風の割合を低くするよう第一調節板23と第二調節板22を調節している。また、この工程は全乾燥工程で最も多くの排風を戻す工程である。
【0051】
その後、設定時間毎に水分計10で検出する穀粒水分値に応じた水分量を含む排風絶対湿度Haの排風を戻す調節を行なう(排風絶対湿度戻し工程A3)。そして、穀粒流下通路13内が飽和水蒸気圧を超えて結露しない程度に、すなわち飽和水蒸気圧未満でかつ飽和水蒸気圧近傍になる排風絶対湿度Haの排風を供給する。
【0052】
仕上げ水分値に近くなると、第一調節弁23と第二調節弁22は排風を順次機外に排出する割合を高くするよう調節制御することで、穀温を順次低下させ、設定水分に到達して乾燥作業終了した後の籾摺り工程を早く行なえるようにしている(仕上排出工程A4)。
【0053】
ここで、穀粒を例に乾燥理論、すなわち、穀粒に水分と熱を与えるということを図11で説明すると、
従来の乾燥制御では図11の(A)に示すように、燃焼バーナ5で発生して穀粒に供給された乾燥熱風による乾燥熱量を100とすると、乾燥初期には主として穀粒内の水分が蒸発されるための熱量である気化熱量に消費され(例えば95)、残りは穀温の上昇に用いられる。すなわち、乾燥初期は穀粒の水分値が高いために供給された熱量の多くが水分の気化に用いられる。そのため、乾燥熱量を単純に増加させるだけでは穀粒表面側の乾燥が穀粒内部側より促進され、かえって穀粒中の水分勾配が高くなり胴割れがしやすくなってしまう。
【0054】
それに対し、本実施の形態の乾燥制御については、図11の(B)で示すように、乾燥初期に排風を戻して所定条件の乾燥熱風を生成することにより、胴割れし難く高速乾燥を可能にするものである。すなわち、燃焼バーナ5で発生した熱量を100とし、さらにこの乾燥熱風の熱量に排風中に含まれる排風の熱量50が加わるとすると、乾燥熱風に排風が合流した熱量全体は150となる。ここで新たな乾燥風の条件は絶対湿度が飽和水蒸気圧近傍でかつ該飽和水蒸気圧以下であることを知見している。
【0055】
そして、新たな乾燥風が穀粒に作用すると熱量を与えられた穀粒中の水分が穀粒表面から気化しようとする一方で、絶対湿度が上記のように飽和水蒸気圧近傍でかつ飽和水蒸気圧以下に調整されることにより穀粒表面からの水分検出は抑止され、付与される熱量は穀粒内部に作用し、例えば気化熱量に用いられる熱量は従来の95より低い60となり、穀温上昇に用いられる熱量が90となる。そのため、穀温が急激に上昇するが穀粒中の水分移行が促進され水分勾配が急激に高くならず、胴割れが発生し難いものである。
【0056】
そして、戻り排風の排風量を乾燥中に検出する穀粒の水分値に対応して調節することができるため、排風の湿度を検出する湿度センサ等を必要とせず、コスト高にならず、また、適正な水分、すなわち穀粒流下通路13が飽和水蒸気圧未満でかつ飽和水蒸気圧近傍を保つ程度の水分を乾燥対象物に与えながら乾燥することができる。
【0057】
以上に説明の新たな乾燥風の条件は、燃焼バーナ5による乾燥熱風と排風との合流によって得られることを知見している。すなわち、穀粒に作用する乾燥風は水分を吸収して排風となって排出されるが、この排風の絶対湿度に着目して排風戻し量を調整しようとする。
【0058】
ここで、図10のグラフに示すように排風絶対湿度は穀粒の水分値に略対応していることが試験により知見されている。すなわち、穀粒の水分値が高い程排風絶対湿度も高くなっている。これは、穀粒表面から気化しようとする水蒸気圧が高いため、それを抑止するためにその分多くの排風湿度を必要としているためであり、乾燥作業が進行し、穀粒水分値が下がるほど穀粒から気化する水分量が減り、穀粒中の水分を抑止するための水分量が少なくともよくなるためである。本実施例では、図10のグラフを制御部Fの記憶部MEに記憶しておき、検出水分値のデータに基づき必要とする排風絶対湿度の値を導き出す構成としている。
【0059】
飽和水蒸気を超えると結露して穀粒が蒸れて品質が損なわれる恐れがあるが、超えない程度に、排風中に含まれる熱と水分を穀粒に与えることで穀粒内部に多くの熱を供給すると共に、穀粒の表面から蒸発しようとする水分を排風中の水分により穀物対象物の内部に抑止する。穀粒内部に熱と供給すると内部水分の表面側の移行が促進されるため、穀粒内部の水分勾配を小さくすることができ、高速で乾燥させるものでありながら穀粒の内部が亀裂等を起こし難くすることができる。
【0060】
次に調節弁の開度を調節するための制御例について代表数値を用いて説明する。
外気温度センサTAで検出された外気温が20℃で、外気湿度センサTHで検出された外気湿度が70%で制御部Fで演算された絶対湿度(Z)が13g/m3とする。そして、前述の図10で水分計10で検出した穀粒水分値に対応して設定されている制御目標とする排風(Y)の絶対湿度(U)が25g/m3である場合とする。そして、本実施例の排風ファン7の風量は1900kg/hで、穀粒乾燥機に供給された穀粒(籾)量を800kg、乾燥速度を示す乾減率(一時間あたりに乾燥される水分の割合)を1.2%/hとした場合、どの程度の割合の排風を熱風室13に戻すかを以下の式より求める。
【0061】
絶対湿度(U)−絶対湿度(Z)=12(g/m3) …B1
外気が吸水できる最大吸水量は
12×1900/1000≒23(kg) …B2
そして、一時間あたりに穀粒から除去される水分量は
800(kg)×1.2(%/h)=9.6(kg/h) …B3
B2の式とB3の式より
23/(9.6+23)≒0.71 →71% …B4
すなわち、排風ファン7から排出される排風量の71%を熱風室11に戻すべく調節弁駆動モータ25を制御して第一調節弁23及び第二調節弁22を調節する。
【0062】
すなわち、排風の戻し割合に見合う前記第一調節弁23の回動角度θを予め記憶部MEに記憶しておき、上記計算結果に基づく排風割合71%に対応するよう調節弁駆動モータ25を正・逆転連動する。
【0063】
前述の演算式についてさらに詳述すると、前記外気温度センサTAと前記外気湿度センサHAでそれぞれ検出された外気の温度と湿度から制御部(図示せず)で外気の絶対湿度(Z)を演算し、外気の絶対湿度(Z)と水分計10で検出された穀粒水分の条件から予め設定する排風の絶対湿度(U)との差異(増加水量)を外気が吸収できる最大の吸水量として演算する(式B1と式B2)。そして、一方では乾燥作業により穀粒から蒸発する蒸発水量(本実施の形態では前述の一時間あたりに穀粒から除去される水分量)を求め(式B3)、増加水量が乾燥作業による蒸発水量と合算された値に対する割合が、排風を戻す割合と考えるものである。
【0064】
すなわち、前記式B4は
増加水量/(穀物から蒸発する水量+増加水量)
を示している。この式においては、いわゆる連続的に乾燥対象物に乾燥作用をなす乾燥機について特に有効である。
【0065】
但し、本実施の形態のように穀粒を貯留部2と乾燥部3とを循環させて乾燥作用と調質作用(いわゆるテンパリング)を交互に行なう穀粒乾燥機においては、前述のように乾燥部で熱と水分を供給した穀粒が貯留部2に循環されると、供給する熱と水分が多すぎた場合に、穀粒内部の水分の移行より穀粒表面からの乾燥が進行し、穀粒の胴割れが増加する場合がある。
【0066】
そこで、特に穀粒乾燥機の場合には式B4に変わって下記の式B5に基づいて乾燥制御を行なっても良い。
増加水量/(穀物から蒸発する水量+排風の絶対湿度(U)) …B5
23/(9.6+47.5)≒0.42 すなわち、42%の排風を戻すようにする。
【0067】
なお、47.5(kg)とは前述の絶対湿度(U)の25g/m3と排風ファンの風量1900kg/hとから算出される。
47.5=25×1900/1000 …B6
テンパリング方式で乾燥を行なう循環型の乾燥機においては、貯留部2に停留している間の表面乾燥を抑制するために、式B5では貯留部2を通過する絶対湿度が設定する排風の絶対湿度になるように、単位時間あたりに穀物内を通過する風が持つ総水量を変更補正する。
【0068】
なお、第一調節弁23及び第二調節弁22が排風量の71%より多くの量を熱風室11に戻すよう調節された場合には、多くなればなるほど戻される水分量が多くなるため、穀粒から新たに水分を除去し難くなる。また、第一調節弁23及び第二調節弁22が排風量の71%より少ない量を熱風室11に戻した場合には熱風室11に戻される熱量が少なくなるため、穀粒の温度の上昇がし難くなり乾燥速度が遅くなる。
【0069】
本実施の形態の式から排風を戻す割合を調節することで、排風ファン6から排出された排風が帯びる熱、すなわち吸水力をできる限り適正に利用することで燃焼効率の良い乾燥作業を行うことができる。
【0070】
図12は前述の図10に基づく穀粒水分値と排風絶対湿度に基づいて設定する排風を戻す割合を補正することを示す図である。
補正する条件として外気温度と穀粒張込量を示している。すなわち、外気温度が高い程排風を戻す割合を低減させるよう補正する。そして曲線M1,M2,M3,M4,M5は張込量毎による排風戻し率の補正を示し、張込量が多いほど排風を戻す割合を低減させるよう補正する。
【0071】
外気温度が高くなるほど穀粒の乾燥が促進するのでその分排風を戻す量を低減できる。また、張込量が多いほど最も上昇する穀温が高くなるためその分排風を戻す量を低減できる。
【0072】
上記実施例では、排風戻し量として排風全量に対する戻し割合を導き出す手段として説明したが、排風戻し量を記憶手段に記憶しておき、当該排風戻し量を制御する形態でもよい。
【0073】
また、本実施の形態では乾燥速度を示す乾減率を1.2%としたが、乾減率によって排風を戻す割合が変更される。
なお、本実施の形態では外気湿度センサHAから外気の絶対湿度を求めているが、外気湿度センサの代わりに外気温度基準による外気の絶対湿度を定めてこれを代用値としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本実施の形態では籾・麦・豆等の穀粒乾燥機について記載したが、そのほかに椎茸や材木や海産物等の自然から採取された物で、乾燥対象物の表面部分と内部中心部分に水分勾配を伴うものを乾燥対象物とする乾燥機の場合にも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】穀粒乾燥機全体の内部を説明する斜視図
【図2】乾燥部と集穀部の構成を説明する斜視図
【図3】乾燥部と集穀部の構成を説明する正面図
【図4】第一調節弁と第二調節弁の連動構成を説明する排風ファンの側面図及び背面図
【図5】排風供給ダクトと排風分散ケースと排風ファンを示した斜視図
【図6】バーナケース及び熱排風通過ケースの内部を説明する斜視図
【図7】バーナケース内部を説明する側面図
【図8】バーナケース内部を説明する斜視図
【図9】乾燥工程と穀温の関係を示すグラフ
【図10】排風絶対湿度と穀粒水分値との関係を示す図
【図11】穀粒に供給する熱について説明する図
【図12】外気温度及び張込量による排風を還流する割合を変更することを示す図
【図13】ブロック図
【符号の説明】
【0076】
1 本体
5 燃焼バーナ
5a 燃焼バーナの燃焼盤面
6 排風ファン
11 熱風室
13 穀粒流下通路
20 排風ダクト
22 第二調節板
23 第一調節板
23a回動軸
24 ロッド
44 第二戻し通路
k 燃焼バーナの燃焼盤面位置
e 第五排風開口部
Q 燃焼炎
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥対象物に乾燥用熱風を作用させて乾燥する乾燥部と、
乾燥中の乾燥対象物の水分を定期的に検出する水分検出手段と、
乾燥対象物通過後の排風を前記乾燥用熱風に合流させる戻し手段と、
該排風の戻し量を調節する調節手段と、
乾燥対象物の水分値に応じて排風の戻し量又は全排風量に対する戻し比率を予め設定し記憶する手段と、
前記調節手段を前記水分検出手段によって検出された水分値に応じた排風の戻し量又は戻し比率に作動する制御手段と、
を設けた乾燥装置。
【請求項2】
乾燥開始後に排風を略全て機外に排出する排風全量機外排出工程(A1)をすべく調節手段を調節した後に、水分検出手段で検出される乾燥対象物の水分値に応じて乾燥部(3)に戻す排風戻し制御工程(A3)をすべく調節手段(22,23)を調節することを特徴とする請求項1記載の乾燥装置。
【請求項1】
乾燥対象物に乾燥用熱風を作用させて乾燥する乾燥部と、
乾燥中の乾燥対象物の水分を定期的に検出する水分検出手段と、
乾燥対象物通過後の排風を前記乾燥用熱風に合流させる戻し手段と、
該排風の戻し量を調節する調節手段と、
乾燥対象物の水分値に応じて排風の戻し量又は全排風量に対する戻し比率を予め設定し記憶する手段と、
前記調節手段を前記水分検出手段によって検出された水分値に応じた排風の戻し量又は戻し比率に作動する制御手段と、
を設けた乾燥装置。
【請求項2】
乾燥開始後に排風を略全て機外に排出する排風全量機外排出工程(A1)をすべく調節手段を調節した後に、水分検出手段で検出される乾燥対象物の水分値に応じて乾燥部(3)に戻す排風戻し制御工程(A3)をすべく調節手段(22,23)を調節することを特徴とする請求項1記載の乾燥装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−177548(P2012−177548A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−140981(P2012−140981)
【出願日】平成24年6月22日(2012.6.22)
【分割の表示】特願2007−201933(P2007−201933)の分割
【原出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月22日(2012.6.22)
【分割の表示】特願2007−201933(P2007−201933)の分割
【原出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]