説明

穀粒排出装置

【課題】揚穀筒4から固定搬送筒6側への穀粒の引き継ぎ搬送をスムーズに行うことができる穀粒排出装置を提供すること。
【解決手段】グレンタンク3内の底部に配置される穀粒搬送用の第5螺旋10bに連動して作動する縦方向に伸びた穀粒搬送用の第1螺旋4bを有する揚穀筒4と、該揚穀筒4内の第1螺旋4bに連動して横方向に穀粒を搬送する穀粒搬送用の第2螺旋5bを有する横搬送筒5を含む排穀オーガGを備え、揚穀筒4内の第1螺旋4bの終端部を二重螺旋とすると、揚穀筒4から横搬送筒5へ送られる穀粒が螺旋の引継ぎ部で詰まることがなく、横搬送筒5での穀粒の搬送効率が従来より向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインや穀粒専用運搬車などの穀粒排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコンバインの穀粒排出装置は、本出願人の先の出願発明(特開20001−340014号公報)に開示したように、穀粒を一時貯留するグレンタンクの底部に横方向に穀粒を搬送する底部螺旋を設け、該底部螺旋に連接して縦方向に穀粒を搬送し、かつ縦軸回りに旋回自在の揚穀筒と、該揚穀筒に連接して横方向に穀粒を搬送し、上下昇降自在で、かつ長さ方向にズーム伸縮自在の固定搬送筒と移動搬送筒とからなる排穀オーガを設ける構成になっている。
【0003】
そして、排穀作業時に排穀すべき位置にオーガ排出口を配置するために、揚穀筒を旋回し、固定搬送筒と移動搬送筒を昇降し、かつ移動搬送筒をズーム伸張あるいはズーム短縮し、また、刈取り作業時、路上走行時など排穀作業を行わないときには、移動搬送筒をズーム短縮させてコンバイン上のオーガ受けに着座、収納する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−340014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1記載のコンバインにおいて、グレンタンク内の下部に設けた底部螺旋で揚穀筒に搬送される穀粒は、該揚穀筒から固定搬送筒と移動搬送筒内の各螺旋により横方向に搬送される。
このとき揚穀筒から排穀オーガの固定搬送筒側への穀粒の引き継ぎ搬送がスムーズに行われているとはいえなく、螺旋引継ぎ部で詰まりが生じていた
そこで、本発明の課題は、排穀オーガの揚穀筒から固定搬送筒側への穀粒の引き継ぎ搬送をスムーズに行うことができる穀粒排出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題は、次の構成により解決される。
請求項1記載の発明は、穀稈を脱穀して得られた穀粒を一時的に貯留するグレンタンク(3)と、グレンタンク(3)内の底部に配置される穀粒搬送用の第5螺旋(10b)と、該穀粒搬送用の第5螺旋(10b)に連動して作動する縦方向に伸びた穀粒搬送用の第1螺旋(4b)を有する揚穀筒(4)と、該揚穀筒(4)内の穀粒搬送用の第1螺旋(4b)に連動して横方向に穀粒を搬送する穀粒搬送用の第2螺旋(5b)を有する横搬送筒(5)を含む排穀オーガ(G)を備えた穀粒排出装置において、揚穀筒(4)内の穀粒搬送用の第1螺旋(4b)の終端部を二重螺旋としたことを特徴とする穀粒排出装置である。
【0007】
請求項2記載の発明は、揚穀筒(4)内の穀粒搬送用の第1螺旋(4b)の終端部を、横搬送筒(5)の穀粒搬送用の第2螺旋(5b)の始端部にオーバーラップして配置したことを特徴とする請求項1記載の穀粒排出装置である。
【0008】
請求項3記載の発明は、揚穀筒(4)内の穀粒搬送用の第1螺旋(4b)における二重螺旋の終端部に羽根板(4d)を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の穀粒排出装置である。
【0009】
請求項4記載の発明は、グレンタンク(3)内の底部に穀粒搬送用の第4螺旋軸(10a)とその廻りに穀粒搬送用の第5螺旋(10b)を配置し、該穀粒搬送用の第5螺旋(10b)の終端部と揚穀筒(4)内の穀粒搬送用の第1螺旋(4b)の始端部とを側面視で直交させ、穀粒搬送用の第5螺旋(10b)から揚穀筒(4)への穀粒引継部の穀粒搬送用の第4螺旋軸(10a)の軸廻りに均等な取り付け角度で複数の羽根(10c)を設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の穀粒排出装置である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、揚穀筒4内の穀粒搬送用の第1螺旋4bの終端部を二重螺旋としたので、揚穀筒4から横搬送筒5へ送られる穀粒が螺旋の引継ぎ部で詰まることがなく、横搬送筒5での穀粒の搬送効率が従来より向上する。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明に効果に加えて、揚穀筒4内の穀粒搬送用の第1螺旋4bの終端部を、横搬送筒5の穀粒搬送用の第2螺旋5bにオーバーラップして配置したことにより、第1螺旋4bと第2螺旋5bの穀粒搬送作用部分がより大きくなり、穀粒の搬送効率が従来より向上した。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明に効果に加えて、揚穀筒4内の穀粒搬送用の第1螺旋4bの終端部側に羽根板4dを取り付けることで、揚穀筒4内の第1螺旋4bから搬送されて来る穀粒の戻りを少なくすることができ、また前記羽根板4dが穀粒を跳ね出すため、横搬送筒5での穀粒搬送の効率が従来より向上する。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、請求項1ないし3のいずれかに記載の発明に効果に加えて、穀粒搬送用の第5螺旋10bの終端部と揚穀筒4内の穀粒搬送用の第1螺旋4bの始端部とを側面視で直交させ、穀粒搬送用の第5螺旋10bから揚穀筒4への穀粒引継部の穀粒搬送用の第4螺旋軸10aの軸廻りに均等な取り付け角度で複数の羽根10cを設けたので、グレンタンク3からの穀粒排出途中で排穀オーガGの穀粒排出を止めて穀稈刈り取り作業をした場合に、穀粒搬送用の第5螺旋10bの周りに揚穀筒4から落下してくる穀粒が入り込まない空間を確保することができ、従来より少ない負荷で排穀オーガGの再起動が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態のコンバインの左側面図である。
【図2】図1のコンバインの排穀用のオーガ部分の構造を説明する図である。
【図3】図1のコンバインの機体側面からみたグレンタンク廻りの穀粒搬送部の構成図である。
【図4】図3の揚穀筒内の螺旋の終端部と横搬送筒付近の内部構造の拡大図である。
【図5】図3の変形例の揚穀筒内の螺旋の終端部と横搬送筒付近の内部構造の拡大図である。
【図6】図3の揚穀筒内の螺旋の終端部側に羽根を取り付けた変形例である。
【図7】図6の変形例の揚穀筒内の螺旋の終端部と横搬送筒付近の内部構造の拡大図である。
【図8】本発明の他の実施例のグレンタンク底部の螺旋の終端部と揚穀筒内および横搬送筒付近の内部構造を示す図である。
【図9】図8の揚穀筒をコンバインの底面から見た図である。
【図10】本発明の実施例のコモンレールディーゼルエンジンを用いるコンバインのエンジン制御ブロック図である。
【図11】図10のエンジン制御CPUに基づくエンジン回転数に対するエンジン出力の関係を示す図である。
【図12】本発明の実施例のコモンレールディーゼルエンジンを用いるコンバインのエンジン制御ブロック図である。
【図13】図1のコンバインの排穀オーガの螺旋単体の斜視図である。
【図14】図1のコンバインの排穀オーガの螺旋単体の別の角度から見た斜視図である。
【図15】図1のコンバインの排穀オーガの複数の螺旋単体が互いに最も離れた状態の伸縮螺旋を構成する斜視図である。
【図16】図1のコンバインの排穀オーガの複数の螺旋単体が互いに最も近づいた状態の伸縮螺旋を構成する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について以下図面と共に説明する。
図1は本発明のコンバインの左側面図であり、図2はコンバインの排穀用のオーガ部分の構造を説明する図であり、図1と図2を参照して、コンバインの機能の概略を説明する。
【0016】
コンバインは、クローラ1を有する車台2の上に操縦席40を設けて、該操縦席40においてオペレータが操縦、操作して圃場に植立する穀稈を刈り取る刈取装置34、刈り取られた穀稈を供給搬送装置で搬送した後、これを脱穀する脱穀装置37、脱穀された穀粒を収容するグレンタンク3、このグレンタンク3の底部に設けた穀粒搬送用の第5螺旋10bによって後方へ排出される穀粒をコンバインの外部へ搬送する排穀オーガGなどから構成される。
【0017】
排穀オーガGは、穀粒搬送用の第5螺旋10bの後端部に連接されて上方へ搬送する揚穀筒4および揚穀筒4に連接され、横方向へ穀粒を搬送する横搬送筒5と該横搬送筒5に接続した長さが不変の固定搬送筒6と該固定搬送筒6に接続した長さを変更できる移動搬送筒7などからなる。移動搬送筒7の先端にはオーガ排出口9が設けられている。なお、固定搬送筒6の横搬送筒5との接続部は横搬送筒5を中心として回転可能にしている。
【0018】
図1に示すコンバインは、車台2の下部にゴムなどの可撓性材料を素材として無端帯状に成型した左右一対のクローラ1を持ち、乾田はもちろんのこと、湿田においてもクローラ1が若干沈下するだけで自由に走行できる構成の走行装置を備え、車台2の前部には刈取装置34を搭載し、車台2の上部にはエンジン43(図10)ならびにグレンタンク3、脱穀装置37、操縦席40を備えている。
【0019】
コンバインのグレンタンク3に貯留された穀粒は穀粒搬送用の第5螺旋10bから排出されるが、穀粒搬送用の第5螺旋10bは図2に示すようにグレンタンク3の底部に軸装して設け、始端側を機外の伝動軸11にクラッチ装置12を介して連結し、終端側を揚穀筒4の下部まで延長して、内装している第1螺旋軸4aに取り付けられた第1螺旋4bの始端部に接続して構成している。
【0020】
そして、排穀オーガGは前記揚穀筒4の上部に接続した横搬送筒5と、該横搬送筒5に回転自在に接続されるが、螺旋軸方向には伸縮しない固定搬送筒6と、これに接続する移動搬送筒7とから構成されているが、以下、その構成を具体的に説明する。
図3は機体側面からみたグレンタンク廻りの穀粒搬送部の構成図である。揚穀筒4の上部に横搬送筒5を接続し、該横搬送筒5の先端部に固定筒6を接続し、固定筒6は横搬送筒5の第2螺旋軸5aを中心にして回動自在である。また図4には図3の揚穀筒4内の第1螺旋4bの終端部と横搬送筒5付近の内部構造の拡大図を示す。
【0021】
横搬送筒5の第2螺旋軸5aの両端部には第2ベベルギヤ5c、第3ベベルギア5dが設けられ、また揚穀筒4の第1螺旋軸4aの終端部にも第1ベベルギア4cが設けられており、該第1ベベルギア4cが前記第2螺旋軸5aの一端部の第2ベベルギヤ5cと噛合している。そして横搬送筒5の第2螺旋軸5aの他端の第3ベベルギヤ5dは固定搬送筒6の第3螺旋軸6aの端部の第4ベベルギア6cと噛合している。
【0022】
ここで図3及び図4のグレンタンク廻りの穀粒搬送部の構成図に示すように揚穀筒4の第1螺旋軸4aの横搬送筒5との引継部にある第1螺旋4bの一部を第1螺旋軸4aを中心として二重螺旋構成にすると、揚穀筒4から横搬送筒5へ送られる穀粒が螺旋の引継ぎ部で詰まることがなく、横搬送筒5での穀粒の搬送効率が従来より向上する。
【0023】
また、図5に図3の揚穀筒4内の第1螺旋4bの終端部と横搬送筒5付近の内部構造の変形例の拡大図を示すように、揚穀筒4の第1螺旋軸4aの横搬送筒5との引継部の第1螺旋4bの一部を第1螺旋軸4aを中心として二重螺旋構成とすると共に横搬送筒5の第2螺旋5bとオーバーラップさせた構成にしても良い。
この場合は、前記オーバーラップさせた第1螺旋4bと第2螺旋5bの穀粒搬送作用部分がより大きくなり、穀粒の搬送効率が従来より向上した。
【0024】
また図3に示すように、揚穀筒4の第1螺旋軸4aの横搬送筒5との引継部の第1螺旋4bの一部を第1螺旋軸4a中心として二重螺旋構成とすると共に横搬送筒5の第2螺旋5bとオーバーラップさせないような構成とすることもできる。この場合は、揚穀筒4の第1螺旋4bの上部と横搬送筒5の第2螺旋5bとの距離を適度に保つことが可能となり、また揚穀筒4の第1螺旋軸4aの終端部を二重螺旋とすることで穀粒搬送能力が向上するのでオーバーラップさせずとも良好な穀粒搬送が行える。
【0025】
図6に示すように揚穀筒4内の第1螺旋4bの終端部側に羽根板4dを取り付けることで、揚穀筒4内の第1螺旋4bから搬送されて来る穀粒の戻りを少なくすることができ、また前記揚穀筒4内の第1螺旋4bに羽根板4dを取り付けることで、羽根板4dが穀粒を跳ね出すため、横搬送筒5での穀粒搬送の効率が従来より向上する。
【0026】
揚穀筒4の第1螺旋4bの終端部側に設けた羽根板4dの回転軌跡が横搬送筒5の第2螺旋5bの回転軌跡と一部オーバーラップするように配置すると、螺旋による穀粒の搬送作用がない空間が生じないので、穀粒の搬送効率を従来より向上させることができるため、穀粒排出時間の短縮化が可能になる。
【0027】
図6に示す構成とは逆に図7に揚穀筒4内の第1螺旋4bの終端部と横搬送筒5付近の内部構造の拡大図に示すように揚穀筒4の第1螺旋4bの終端部側に設けた羽根板4dの回転軌跡が横搬送筒5の第2螺旋5bの回転軌跡とオーバーラップしない配置にしても良い。この場合は、揚穀筒4の第1螺旋4bの上部と横搬送筒5の第2螺旋5bとの距離を適度に保つことが可能となり、羽根板4dで送られた穀粒が横搬送筒5の第2螺旋5bで跳ね返されることを抑えるため、穀粒の搬送効率を従来より向上させることができる。
【0028】
また図8の揚穀筒4内をコンバイン側面から見た図と図9の揚穀筒4をコンバインの底面から見た図に示す構成では、揚穀筒4内の第1螺旋4bを全て二重螺旋とし、さらに穀粒搬送用の第5螺旋10bの径を揚穀筒4内の第1螺旋4bの径と同じとし、前記穀粒搬送用の第5螺旋10bの終端部と揚穀筒4内の穀粒搬送用の第1螺旋4bの始端部とを側面視で直交するように配置し、穀粒搬送用の第5螺旋10bの揚穀筒4側の端部であって、揚穀筒4への穀粒引継部の穀粒搬送用の第4螺旋軸10aの軸廻りに均等な取り付け角度で4枚の羽根10cを穀粒搬送用の第4螺旋軸10aに設けた。
【0029】
従来の揚穀筒4への穀粒引継部で穀粒搬送用の第4螺旋軸10aの廻りに1個もしくは2個の羽根10cを等分配置した構成では、グレンタンク3からの穀粒排出途中で排穀オーガGの排出を停止して穀稈刈り取り作業をした場合、穀粒がグレンタンク底部の穀粒搬送用の第5螺旋10bの終端部に満充填され、排穀オーガGが再起動できない不具合があった。
しかし、図8に示す構成を採用することで、グレンタンク底部の穀粒搬送用の第5螺旋10bの周りに穀粒搬送用の第5螺旋10bと羽根10cによって隔離された空間、すなわち揚穀筒4から落下してくる穀粒(籾)が入り込まない空間を確保でき、上記不具合を解消でき、穀粒搬送用の第5螺旋10bから揚穀筒4の螺旋への穀粒搬送効率が従来より向上する。
【0030】
次に、固定搬送筒6と移動搬送筒7について説明する。
固定搬送筒6は基部を前記揚穀筒4の上部に連接された横搬送筒5に連結し、先端部を外方に延長して設け、その筒内に内装した穀粒搬送用の第3螺旋6bにより揚穀筒4から受け継いだ穀粒を搬送する構成としている。
【0031】
移動搬送筒7は先端部にオーガ排出口9を開口して設け、基部側を前記固定搬送筒6の先端側から挿入嵌合して摺動自由に連結している。また、穀粒搬送用の第4螺旋7aは図2に示すように移動搬送筒7内において、先端部をオーガ排出口9の上方位置に軸受して後部を固定搬送筒6側に延長して前記穀粒搬送用の第3螺旋軸6a内に摺動自由に挿入した伝動軸16を軸架して設け、この伝動軸16に多数の螺旋単体17(図13)を摺動自由に嵌合して相互の間隔を調節できるように構成している。
【0032】
また、図2に示すように、伸縮駆動装置23は揚穀筒4の上部位置に装備した伸縮用駆動モータ24に減速装置を介してオーガ伸縮用螺旋軸25の基端部を連結して強制駆動する構成としている。そして、移動装置26は上記オーガ伸縮用螺旋軸25の螺旋溝に係合している伝動ピンを介して、強制的に軸方向に移動するように設け、前記固定搬送筒6の基部側に一体的に連結して構成している。
【0033】
なお、伸縮駆動装置23は、図2に示すように、排穀オーガGの最縮側と最伸張側とにそれぞれリミットセンサS1、S2を設け、前記移動装置26がリミットセンサS1またはリミットセンサS2に達すると伸縮用駆動モータ24を自動停止する構成としている。
【0034】
また、移動搬送筒7の先端部の位置が種々変化し得るが、排穀オーガGの先端部の位置はズームオーガの長さの中間位置でオーガ受け35に収納される場合が多い。
【0035】
なお、伸縮用駆動モータ24は、操縦席40の操作パネル(図示せず)に設けたスイッチ(伸縮スイッチ)のオン操作に基づいて、正転または逆転方向に駆動されてオーガ伸縮用螺旋軸25を回転駆動する構成とし、オーガ伸縮用螺旋軸25が正転すれば、係合している移動装置26を介して移動搬送筒7を伸張し、逆転すれば縮小方向に強制的に移動する構成としている。
【0036】
このようにして、移動搬送筒7は固定搬送筒6に嵌合した状態で固定搬送筒6に沿って伸び縮みして、先端部のオーガ排出口9の位置を、排穀オーガGの基部の揚穀筒4に対して、遠ざけたり、近づけたり調節して穀粒の落下位置を選択できる構成としている。
【0037】
なお、図2において、昇降油圧シリンダ27は排穀オーガGを昇降させ、オーガ旋回モータ28はその回転軸に設けられた旋回ギア29にかみ合う揚穀筒4の外周部に設けられた駆動ギヤ30を介して揚穀筒4の旋回を行う。
【0038】
そして、支持ローラ31は図2に示すように移動搬送筒7の基部位置の下部に軸架して設け、固定搬送筒6の周面を転動しながら支持する構成にしている。また、移動搬送筒7の基部位置の上部には、案内車輪32を設け、該案内車輪32を案内する案内レール(図示せず)を固定搬送筒6の長手方向に設けている構成である。
【0039】
前述のごとく構成されたコンバインを作業させながら前進させると、植立穀稈はコンバイン作業としては刈取装置34(図1)により刈り取られ、その後、脱穀装置37の始端部へと搬送され、フィードチェン38で搬送されながら脱穀選別される。脱穀装置37で脱穀選別された穀粒は、グレンタンク3内へ一時貯留され、該グレンタンク3内の穀粒が満杯になると、オーガ受け35から排穀オーガGを離脱させて、該排穀オーガGからトラック等の荷台へと穀粒を排出する。
【0040】
このとき、オーガ排出口9の位置が短い場合には、移動搬送筒7を伸ばして、より遠くへと穀粒を排出するようにする。また、移動搬送筒7を伸縮させて、穀粒をトラック荷台へ均一に排出するようにする。このようにして、グレンタンク3内の穀粒を排出し終えると、排穀オーガGを再びオーガ受け35へと収納する。
【0041】
図2に示す移動搬送筒7の穀粒搬送用の第4螺旋7aは合成樹脂製の複数の螺旋単体17からなっている。
図13には螺旋単体17の斜視図を示す。図14には螺旋単体17の別の角度から見た斜視図を示す。図15には、複数の螺旋単体17が連結しながら、互いに最も離れた状態の穀粒搬送用の第4螺旋7aを構成する側面図を示し、図16には複数の螺旋単体17が連結しながら、互いに最も近づいた状態の穀粒搬送用の第4螺旋7aを構成する側面図を示す。
【0042】
螺旋単体17は、図13、図14に示すように前記伝動軸16(図15)に摺動自由に嵌合する外周部が円筒状の軸受ボス18と、その外周面に支持固定され、軸受ボス18の外周をほぼ一周するスパイラル形状の螺旋体20と該螺旋体20を軸受ボス18に接続するためのスペーサ19とからなる。スペーサ19は軸受ボス18の両端部に接続され、かつ、その外周面のほぼ両端部に螺旋体20が接続固定されている。スペーサ19は軸受ボス18に螺旋体20を接続固定するための接続部分を構成し、また複数の螺旋単体17を連結しながら、かつ互いに離れたり、接近したりすることができる構成になっている。
【0043】
そのため、スペーサ19は螺旋体20と同じく軸受ボス18の外周をほぼ一周するようにスパイラル状になっており、図15に示すように、複数の螺旋単体17が連結しながら、互いに最も離れた状態にある時には、互いに隣接するスペーサ19の肉厚部19a(図13)同士と係合可能になっている。また、軸受ボス18の長さAは図13に示すように、スペーサ19の長さBの約半分であり、またスペーサ19の内径を軸受ボス18の外径より若干大きくしているので、複数の螺旋単体17は図16に示すように螺旋体20が隣接の螺旋体20に最も接近したときには、隣接の軸受ボス18との間に間隔ができないように近接させることができる。このとき軸受ボス18の外周とスペーサ19の内周の間にある穀粒はスペーサ19に設けた孔19bから外部に逃がすことができる。
【0044】
従来のディーゼルエンジンを搭載しているコンバインでは、穀粒排出時のオーガ螺旋の回転数で穀粒排出時間が決まるため、エンジン回転をフル回転で使用するため不必要な馬力を発生させ、無駄なエネルギーを消費していた。
【0045】
そこで、図10の制御ブロックで示すように、コモンレールディーゼルエンジン43を搭載して排穀オーガGから穀粒を排出するとき、コモンレールディーゼルエンジン43の燃料噴射量を減らす構成にすることにより、インジェクション46の制御が簡単に行えるため、燃料噴射量を減らして不必要な馬力を発生させることなくエンジン43の回転数を維持でき、無駄なエネルギーを消費することが無くなる。
【0046】
このとき、エンジン回転センサ(=エンジン負荷センサ)42からのエンジン回転数検出値が予め設定した基準値より低いと判断したら、コモンレールディーゼルエンジン43の発火気筒数を減少させるエンジン制御構成とすることもできる。
【0047】
前記エンジン回転センサ(=エンジン負荷センサ)42からのエンジン回転数検出値が予め設定した基準値より低いと判断したら、コモンレールディーゼルエンジン43の発火気筒数を減少させるエンジン制御構成において、発火気筒数を減少させた後でもエンジン負荷が予め設定した基準値(前記基準値と同じ数値)より低いと前記エンジン負荷センサ42が判断したら、エンジン制御CPU44がエンジン43の燃料噴射量を減らす制御を行う。こうして発火気筒数を減少させ、さらに燃料噴射量を減らすことで不必要な馬力を発生させることなくエンジン43の回転数を維持でき、無駄なエネルギーを消費することが無くなる。
【0048】
図10に示すエンジン回転数の制御構成において、エンジン制御CPU44にインジェクタ46からの燃料噴射量と、エンジン回転センサ(=エンジン負荷センサ)42からのエンジン回転数と、使用するエンジン43の気筒位置センサ47からの使用する気筒位置(点火タイミングの間隔が平均的になるように気筒を休止させる)が入力され、さらには排穀オーガGから穀粒を排出させるためのクラッチ装置12(図2)の作動制御用の穀粒排出スイッチ48のオン・オフ信号がコンバインCPU50に入力される構成である。穀粒排出スイッチ48のオン・オフ信号に基づき作成されるコンバインCPU50からのエンジン負荷信号がエンジン制御CPU44に入力され、該エンジン制御CPU44がオーガ作動時の負荷に応じてエンジン回転数を制御する。
また、図11にはエンジン制御CPU44に基づくエンジン回転数に対するエンジン出力の関係を示すが、燃料の高噴射量の関係を示す。
【0049】
上記構成を採用することによりエンジン負荷を検出するセンサ42を設けているので、排穀オーガGから穀粒を排出する時に、コモンレールディーゼルエンジン43の燃料噴射量を減らす構成とし、エンジン負荷センサ42が予め設定されている標準負荷に比べてエンジン負荷が軽いと判断したら、エンジン43の発火気筒数を減少させることができる。
【0050】
また、従来のディーゼルエンジンを搭載しているコンバインでは、低速作業でも穀稈の刈取り作業時の脱穀装置37の扱胴回転数を一定にしなければならないため、エンジン回転をフル回転付近の一定回転で使用している。しかしエンジンをフル回転付近に設定することは不必要な馬力を発生させることになり、無駄なエネルギーを消費していた。
【0051】
そこで図12の制御ブロックに示す構成により、脱穀装置37に扱胴の回転数を検出する脱穀負荷センサ52と脱穀クラッチ(図示せず)の作動検出用の脱穀センサ53を設けておき、脱穀負荷センサ52が負荷が予め設定した基準値より軽いと判断したら、コモンレールディーゼルエンジン43の燃料噴射量を減らす構成とすることもできる。このとき、燃料噴射量を減らしても、脱穀負荷センサ52の負荷検出信号により、扱胴の回転数に基づく脱穀負荷が設定値より軽いと判断したら、気筒数を減少させるエンジン制御を行うこともできる。
【0052】
こうして、コモンレールディーゼルエンジン43を搭載することにより、インジェクション46の制御が簡単に行えるため、燃料噴射量を減らし、気筒数を減少させることにより不必要な馬力を発生させることなくエンジン43の回転数を維持でき、無駄なエネルギーを消費することがなくなる。
【0053】
また前記脱穀負荷センサ52の検出値が予め設定した負荷基準値より低いと判断したら、脱穀負荷センサ52の検出値にのみ基づき、コモンレールディーゼルエンジン43の発火気筒数を減少させるエンジン制御構成とすることもできる。また、さらに発火気筒数を減少させても前記脱穀負荷センサ52の検出値が予め設定した前記基準値より低いと判断したら、コモンレールディーゼルエンジン43の燃料噴射量を減らす構成とすることもできる。
こうして、発火気筒数を減らし、かつ燃料噴射量を減らすことで不必要な馬力を発生させることなくエンジン43の回転数を維持でき、無駄なエネルギーを消費することが無くなる。
【0054】
また、従来はオーガ排出クラッチ装置12と脱穀クラッチ(図示せず)をそれぞれ独立して手動で作動させていたが、オーガ排出クラッチが入りのときには脱穀クラッチを自動的に切りにし、またオーガ排出クラッチ装置12が切りのときには脱穀クラッチを自動的に入りにする構成にすると、排穀オーガGを作動させて穀粒を排出しているときには、脱穀装置37が作動することがないので安全であり、また排穀オーガGから穀粒を排出させていないときに初めて脱穀装置37を作動させることで無駄なエネルギーの消費をなくすることができる。
【符号の説明】
【0055】
1 クローラ 2 車台
3 グレンタンク 4 揚穀筒
4a 第1螺旋軸4a
4b 穀粒搬送用の第1螺旋
4c 第1ベベルギア 4d 羽根板
5 横搬送筒 5a 第2螺旋軸
5b 穀粒搬送用の第2螺旋
5c 第2ベベルギヤ 5d 第3ベベルギア
6 固定搬送筒 6a 第3螺旋軸
6b 穀粒搬送用の第3螺旋
6c 第4ベベルギア 7 移動搬送筒
7a 穀粒搬送用の第4螺旋
9 オーガ排出口
10a 穀粒搬送用の第4螺旋軸
10b 穀粒搬送用の第5螺旋
10c 羽根 11 伝動軸
12 クラッチ装置 16 伝動軸
17 螺旋単体 18 軸受ボス
19 スペーサ
19a スペーサ肉厚部 19b 孔
20 螺旋体 23 伸縮駆動装置
24 伸縮用駆動モータ
25 オーガ伸縮用螺旋軸
26 移動装置 27 昇降油圧シリンダ
28 オーガ旋回モータ 29 旋回ギア
30 駆動ギア 31 支持ローラ
32 案内車輪 34 刈取装置
35 オーガ受け 37 脱穀装置
38 フィードチェン 40 操縦席
42 エンジン負荷検出センサ
43 エンジン
44 エンジン制御CPU
46 インジェクタ 47 気筒位置センサ
48 排出スイッチ
50 コンバインCPU
53 脱穀クラッチセンサ
52 脱穀負荷センサ G 排穀オーガ
S1、S2 リミットセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀稈を脱穀して得られた穀粒を一時的に貯留するグレンタンク(3)と、グレンタンク(3)内の底部に配置される穀粒搬送用の第5螺旋(10b)と、該穀粒搬送用の第5螺旋(10b)に連動して作動する縦方向に伸びた穀粒搬送用の第1螺旋(4b)を有する揚穀筒(4)と、該揚穀筒(4)内の穀粒搬送用の第1螺旋(4b)に連動して横方向に穀粒を搬送する穀粒搬送用の第2螺旋(5b)を有する横搬送筒(5)を含む排穀オーガ(G)を備えた穀粒排出装置において、
揚穀筒(4)内の穀粒搬送用の第1螺旋(4b)の終端部を二重螺旋としたことを特徴とする穀粒排出装置。
【請求項2】
揚穀筒(4)内の穀粒搬送用の第1螺旋(4b)の終端部を、横搬送筒(5)の穀粒搬送用の第2螺旋(5b)の始端部にオーバーラップして配置したことを特徴とする請求項1記載の穀粒排出装置。
【請求項3】
揚穀筒(4)内の穀粒搬送用の第1螺旋(4b)における二重螺旋の終端部に羽根板(4d)を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の穀粒排出装置。
【請求項4】
グレンタンク(3)内の底部に穀粒搬送用の第4螺旋軸(10a)とその廻りに穀粒搬送用の第5螺旋(10b)を配置し、該穀粒搬送用の第5螺旋(10b)の終端部と揚穀筒(4)内の穀粒搬送用の第1螺旋(4b)の始端部とを側面視で直交させ、穀粒搬送用の第5螺旋(10b)から揚穀筒(4)への穀粒引継部の穀粒搬送用の第4螺旋軸(10a)の軸廻りに均等な取り付け角度で複数の羽根(10c)を設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の穀粒排出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2011−152093(P2011−152093A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16514(P2010−16514)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】