説明

積層コンデンサ

【課題】表面リークを緩和可能な積層コンデンサを提供する。
【解決手段】積層コンデンサCは、素体1と、素体1の端面1a,1bに設けられた第1及び第2の端子電極2,3を備える。素体1は、複数の第1及び第2の内部電極層6,7を備える。第1の内部電極層6は、基端部6aが第1の端子電極2と電気的に接続され、先端部6bが素体1の中央より第2の端子電極2側に伸びている。第2の内部電極層7は、基端部7aが第2の端子電極3と電気的に接続され、先端部7bが素体1の中央より第1の端子電極2側に伸びている。素体1は、側面1cと側面1dとにそれぞれに配置された第1の表面電極4と第2の表面電極5とを備える。第1の表面電極4は、最も側面1c側に配置された第1の最外電極層8の先端部8bと重なり、第2の表面電極5は、最も側面1d側に配置された第2の最外電極層9の先端部9bと重なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
積層コンデンサとして、直方体状に形成された誘電体素体と、誘電体素体の両端部にそれぞれ形成された第1及び第2の端子電極と、を有するものがある。この積層コンデンサの誘電体素体の内部には、第1の端子電極に基端部が接続された複数の第1の内部電極層と第2の端子電極に基端部が接続された複数の第2の内部電極層とが交互に配置されている。
【0003】
このような積層コンデンサの第1及び第2の端子電極間に電圧を印加することにより、コンデンサとしての機能が発揮される。しかし、印加する電圧が高いと、第1の端子電極と第2の内部電極層の先端部との間、及び、第2の端子電極と第1の内部電極層の先端部との間に高い電位差が生じ、放電が発生する。
【0004】
すなわち、第1及び第2の端子電極と第1及び第2の内部電極層の先端部との間を誘電体素体の表面に沿って電流が流れる。この表面リークを発生しにくくするために、放電が発生する印加電圧を高くする技術がある。例えば、下記特許文献1には、第1及び第2の内部電極層を端子電極との接続部分から遠ざかるほどその幅を短くした積層コンデンサが記載されている。
【特許文献1】特開平10−208971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された積層コンデンサでは、第1及び第2の内部電極層が矩形状の場合より、表面リークが発生する印加電圧は高くなる。しかしながら、印加する電圧が高くなれば、やはり表面リークが発生する。素体表面を流れるリーク電流値が大きい場合やリーク電流が流れる領域が大きいと、積層コンデンサを含む回路上の不具合が生じるので問題がある。
【0006】
そこで本発明は、表面リークを緩和可能な積層コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る積層コンデンサは、略直方体形状で、互いに対向する第1及び第2の面と、第1及び第2の面に垂直で互いに対向する第3及び第4の面とを有する素体と、第1の面に形成された部分を含む第1の端子電極と、第2の面に形成された部分を含む第2の端子電極と、を備え、素体は、素体の内部に第3及び第4の面の対向方向に対向して交互に配置された複数の第1の内部電極層及び複数の第2の内部電極層と、第3の面に位置する第1の表面電極と、第4の面に位置する第2の表面電極と、を有し、複数の第1の内部電極層の第1の面側の基端部が、第1の端子電極と電気的に接続され、複数の第1の内部電極層の基端部に対向する先端が、素体における中央より第2の端子電極側に位置し、複数の第2の内部電極層の第2の面側の基端部が、第2の端子電極と電気的に接続され、複数の第2の内部電極層の基端部に対向する先端が、素体における中央より第1の端子電極側に位置し、第1の表面電極は、第1及び第2の端子電極と電気的に絶縁され、複数の第1及び複数の第2の内部電極層のうち最も第3の面側に位置する第1の最外電極層の先端と第3の面側から見て重なると共に、第1及び第2の端子電極のうち第1の最外電極層と電気的に絶縁された端子電極側に位置し、第2の表面電極は、第1及び第2の端子電極と電気的に絶縁され、複数の第1及び複数の第2の内部電極層のうち最も第4の面側に位置する第2の最外電極層の先端と第4の面側から見て重なると共に、第1及び第2の端子電極のうち第2の最外電極層と電気的に絶縁された端子電極側に位置していることを特徴とする。
【0008】
本発明の積層コンデンサでは、複数の第1の内部電極層と複数の第2の内部電極層とが対向して交互に積層されていることにより、コンデンサとしての電気容量を発揮することとなる。そして、第1の表面電極が第3の面における第1の最外電極層の先端と重なる位置に配置されている。この第1の最外電極層の先端は、素体の中央より電気的に絶縁された端子電極側に位置し、第1の表面電極は、第1の最外電極層と電気的に絶縁された端子電極側に位置する。これにより、第1の表面電極は、第1の最外電極層と電気的に接続された端子電極より、第1の最外電極層と電気的に絶縁された端子電極との間で放電し易い。第1の表面電極と第1の最外電極層から絶縁された端子電極とが導通した状態では、第1の最外電極層の先端を含む先端部と第1の表面電極とがコンデンサ電極として機能し、第1の最外電極層の先端部と第1の表面電極との間で電荷が安定する。これにより、電荷が素体の第1の面を流れることを抑制し、第3の面における表面リークを緩和することができる。第2の表面電極も同様に、第4の面における第2の最外電極層の先端と重なる位置に配置されている。そして、第2の表面電極は、第2の最外電極層と電気的に絶縁された端子電極側に位置する。従って、第4の面における表面リークを緩和することができる。
【0009】
好ましくは、複数の第1及び複数の第2の内部電極層の先端は、角部を有し、第1の表面電極は、第1の最外電極層の先端における角部と第3の面側から見て重なり、第2の表面電極は、第2の最外電極層の先端における角部と第4の面側から見て重なる。この場合、放電が発生し易い第1及び第2の最外電極層の先端における角部と第1及び第2の表面電極とが対向するので、第1及び第2の最外電極層の先端における角部と第1及び第2の表面電極との間で電荷が安定する。よって、表面リークをより緩和することができる。
【0010】
好ましくは、第1及び第2の端子電極のうち第2の最外電極層と絶縁された端子電極と第2の表面電極との間の距離は、第1及び第2の端子電極のうち第1の最外電極層と絶縁された端子電極と第1の表面電極との間の距離より大きい。これにより、第4の面が基板と対向した状態で、第1及び第2の端子電極を基板にハンダ付けする場合に、ハンダと第2の表面電極とが導通することを防止できる。ハンダと第2の表面電極とが導通すると、印加電圧が放電の条件を満たさない場合でも第2の表面電極と第2の最外電極層の先端部との間で静電容量が発生するので、積層コンデンサとしての静電容量が変化する。このため、ハンダと第2の表面電極とが導通することを防止することにより、静電容量の変化を防止することができる。
【0011】
好ましくは、第1の端子電極は、第3及び第4の面の第1の面側の部分を覆う第1の部分を含み、第2の端子電極は、第3及び第4の面の第2の面側の部分を覆う第2の部分を含み第2の表面電極の厚さは、第1及び第2の部分の厚さより薄い。これにより、第4の面が基板と対向した状態で、第1及び第2の端子電極を基板にハンダ付けする場合に、第2の表面電極の厚さが第1及び第2の端子電極の第1及び第2の部分の厚さより薄いので、第2の表面電極がハンダと導通することを防止できる。これにより、積層コンデンサとしての静電容量の変化を防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の積層コンデンサによれば、表面リークを緩和することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る積層コンデンサの斜視図である。図2は、本実施形態に係る積層コンデンサの平面図及び断面図である。本実施形態に係る積層コンデンサCは、例えば、車のライトやデジタルカメラ等のチャージ用に用いる中高圧セラミックコンデンサである。この積層コンデンサCは、外形が直方体形状で、例えば、長手方向の長さが3.2mm程度、幅方向の長さが1.6mm程度、厚さ方向の長さが1.1mm程度である。
【0015】
積層コンデンサCは、直方体形状の素体1と、素体1に形成された第1の端子電極2及び第2の端子電極3とで構成されている。素体1は、互いに対向する端面(第1の面及び第2の面)1a,1bと、端面1a,1bに垂直で互いに対向する側面(第3の面及び第4の面)1c,1dと、端面1a,1b及び側面1c,1dに垂直で互いに対向する側面1e,1fと、を備えている。なお、図2(a)は、側面1c側から見た平面図である。図2(b)は、側面1e,1fと平行で、積層コンデンサCの中央を通る面の断面図である。
【0016】
第1の端子電極2は、端面1aの全域を覆う部分2bと、側面1c〜1fの端面1a側の一部を覆う第1の部分2aとを有している。第2の端子電極3は、端面1bの全域を覆う部分3bと、側面1c〜1fの端面1b側の一部を覆う第2の部分3aとを有している。
【0017】
素体1は、側面1cと側面1dとにそれぞれ形成された第1の表面電極4と第2の表面電極5とを備える。第1の表面電極4及び第2の表面電極5は、長方形状の導体層で、第1の端子電極2側に配置されている。そして、第1及び第2の表面電極4,5は、長手方向の一辺が端面1aと平行となるように配置されている。この第1及び第2の表面電極4,5は、第1及び第2の端子電極2,3と電気的に絶縁されている。
【0018】
素体1は、誘電体セラミック材料で形成され、図2(b)に示すように、内部に設けられた複数の第1及び第2の内部電極層6,7を有している。複数(本実施形態では2つ)の第1の内部電極層6は、第1の端子電極2に電気的に接続された電極層である。複数(本実施形態では3つ)の第2の内部電極層7は、第2の端子電極3に電気的に接続された電極層である。
【0019】
引き続いて、第1及び第2の表面電極4,5と複数の第1及び第2の内部電極層6,7とについて、図2〜図5を参照して詳細に説明する。図3(a)は、素体1における側面1cと平行で第1の内部電極層6を含む面の断面図である。図3(b)は、素体1における側面1cと平行で第2の内部電極層7を含む面の断面図である。図4は、素体1の側面1cから見た平面図である。図5は、図2(b)に示す断面図の部分拡大図である。
【0020】
第1の内部電極層6及び第2の内部電極層7は、同形状及び同寸法の長方形状である。第1の内部電極層6及び第2の内部電極層7は、素体1の側面1c,1dと平行となるように配置されている。そして、第1の内部電極層6と第2の内部電極層7とは、間に素体1の一部を挟んで互いに対向するように交互に配置されている。
【0021】
第1の内部電極層6は、第2の内部電極層7に対して素体1の端面1a側にずれて配置され、短手方向に伸びる一辺が、素体1の端面1aに露出している。従って、第1の内部電極層6の短手方向に伸びる一辺を含む基端部6aが、素体1の端面1aに形成された第1の端子電極2と機械的且つ電気的に接続されている。
【0022】
第2の内部電極層7は、第2の内部電極層6に対して素体1の端面1b側にずれて配置され、短手方向に伸びる一辺が、素体1の端面1bに露出している。従って、第2の内部電極層7の短手方向に伸びる一辺を含む基端部7aが、素体1の端面1bに形成された第2の端子電極3と機械的且つ電気的に接続されている。
【0023】
図3(a)に示すように、第1の内部電極層6の基端部6aに対向する辺を含む先端部6bは、素体1の中央部より第2の端子電極3(端面1b)側に位置する。すなわち、第1の内部電極層6は、素体1の端面1aから中心線Zを越えて端面1b側まで延びている。中心線Zは、素体1の中心を通り、端面1a,1bと平行な直線を示す。そして、複数の第1の内部電極層6の先端部6bは、側面1cと側面1dとの対向方向に揃うように配置されている。
【0024】
第1の内部電極層6を含み側面1cと平行な面において、先端部6bから端面1bまでの領域10は、誘電体材料で構成され、領域10には導体層は配置されていない。第1の内部電極層6の長手方向の長さL1は、先端部6bから端面1bまでの領域10の長さL2より長い。
【0025】
図3(b)に示すように、第2の内部電極層7の基端部7aに対向する辺を含む先端部7bは、素体1の中央部より第1の端子電極2(端面1a)側に位置する。すなわち、第2の内部電極層7は、素体1の端面1bから中心線Zを越えて端面1a側まで延びている。そして、複数の第2の内部電極層7の先端部7bは、側面1cと側面1dとの対向方向に揃うように配置されている。
【0026】
第2の内部電極層7を含み側面1cと平行な面において、先端部7bから端面1aまでの領域11は、誘電体材料で構成され、領域11には導体層は配置されていない。第2の内部電極層7の長手方向の長さL1は、先端部7bから端面1bまでの領域11の長さL2より長い。
【0027】
図4,5に示すように、第1の表面電極4は、側面1cにおいて素体1の中央より端面1a(第1の端子電極2)側に配置されている。そして、第1の表面電極4は、側面1cから見て、第1及び第2の内部電極層6,7のうち最も側面1c側に位置する第1の最外電極層8の先端部8bを覆うように配置されている。すなわち、第1の表面電極4は、側面1cから見て、第1の最外電極層8の先端と重なっている。
【0028】
また、第1の表面電極4の長手方向の寸法、すなわち、素体1の側面1eと側面1fとの対向方向の寸法W1は、第1の最外電極層8の短手方向の寸法W2より大きい。そして、第1の表面電極4は、第1の最外電極層8の先端部8bにおける2つの角部8c,8dを覆っている。
【0029】
第1の表面電極4における第1の端子電極2側の辺4aは、第1の最外電極層8の先端部8bより第1の端子電極2側に位置している。すなわち、第1の表面電極4における第1の端子電極2側の辺4aと第1の端子電極2との間のギャップGは、第1の最外電極層8の先端部8bと第1の端子電極2との間の端面1aと端面1bとの対向方向のギャップGより小さい。
【0030】
また、第1の表面電極4における一辺4aと対向する辺4bは、第1の最外電極層8の先端部8bより第2の端子電極3側に位置している。すなわち、第1の表面電極4の辺4aと辺4bとの間の距離である幅寸法をSとすると、(G−G)<S<Gの関係となる。つまり、第1の表面電極4は、第1の最外電極層8の先端部8bと対向する部分と、領域11と対向する部分とを有する。
【0031】
また、第1の表面電極4の厚さT1は、第1の端子電極2の第1の部分2aの厚さT2及び第2の端子電極3の第2の部分3aの厚さT2より薄い。ここで、厚さT2とは、第1及び第2の部分2a,3aにおける側面1cと側面1dとの対向方向の厚さである。
【0032】
第2の表面電極5は、側面1dにおいて第1の表面電極4と同様に配置されている。第2の表面電極5は、側面1dにおいて素体1の中央より端面1a(第1の端子電極2)側に配置されている。そして、第2の表面電極5は、側面1dから見て、第1及び第2の内部電極層6,7のうち最も側面1d側に位置する第2の最外電極層9の先端部9bを覆うように配置されている。すなわち、第2の表面電極5は、側面1dから見て、第2の最外電極層9の先端と重なっている。そして、第2の表面電極5は、第2の最外電極層9の先端部9bと対向する部分と、領域11と対向する部分とを有する。
【0033】
また、第2の表面電極5の長手方向の寸法、すなわち、素体1の側面1eと側面1fとの対向方向の寸法W1は、第2の最外電極層9の短手方向の寸法W2より大きい。すなわち、第2の表面電極5は、第2の最外電極層9の先端部9bにおける2つの角部を覆っている。また、第2の表面電極5の厚さT1は、第1の端子電極2の第1の部分2aの厚さT2及び第2の端子電極3の第2の部分3aの厚さT2より薄い。
【0034】
以上説明した積層コンデンサCは、次のようにして製造することができる。最初に、セラミックグリーンシートを形成し、乾燥させる。セラミックグリーンシートは、誘電体材料としてのセラミック粒子にバインダ樹脂、溶剤、及び可塑剤等を加えて混合分散することにより得たセラミックスラリーを支持体上に塗布して形成する。
【0035】
次に、セラミックグリーンシートに第1及び第2の内部電極層6,7となる内部電極パターンを複数形成し、乾燥させる。また、セラミックグリーンシートに第1及び第2の表面電極4,5となる表面電極パターンを複数形成し、乾燥させる。内部電極パターン及び表面電極パターンは、電極ペーストをセラミックグリーンシート上にスクリーン印刷することにより形成される。電極ペーストは、例えばNi、Ag、Pdなどの金属粉末に樹脂と溶剤等を混合したペースト状の組成物である。
【0036】
続いて、内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを積層し、その上下に、表面電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを表面電極パターンが外側となるように積層して積層体を形成する。そして、積層体を切断することにより、積層チップ体を形成する。その後、積層チップ体を加熱して、乾燥、脱バインダを行う。脱バインダを行った後、焼成を行うことにより、素体1を得る。続いて、素体1の端面1a,1bに第1及び第2の端子電極2,3を形成する。
【0037】
内部電極パターンが焼成されて形成された内部電極のうち、第1の端子電極2に電気的に接続された内部電極が第1の内部電極層6となる。内部電極パターンが焼成されて形成された内部電極のうち、第2の端子電極3に電気的に接続された内部電極が第2の内部電極層7となる。積層されたセラミックグリーンシートは焼成されることにより、誘電体層となり、誘電体としての機能を発揮する。このようにして積層コンデンサCが製造される。
【0038】
以上説明した積層コンデンサCは、使用時には、回路基板に組み込まれ、通常時、例えば1〜6kV程度の電圧が印加される。そして、電源を入れた時など、瞬間的に通常時以上の高電圧が印加される場合がある。この積層コンデンサCは、第1及び第2の表面電極4,5が、第1及び第2の最外電極層8,9と絶縁された第1の端子電極2側に寄せて配置され、それぞれ第1及び第2の最外電極層8,9の先端は側面1c,1dから見て第1及び第2の表面電極と重なっている。これにより、先端部8b,9bと第1の端子電極2間で放電が発生し易くなっている。
【0039】
そこに、高電圧が印加され、第1の最外電極層8の先端部8bと第1の端子電極2との間において第1の表面電極4を介した放電の条件が満たされると、第1の表面電極4と第1の端子電極2との間において表面リークが発生し、第1の表面電極4と第1の端子電極2とが導通する。導通した状態では、第1及び第2の最外電極層8,9の先端部8b,9bにおける電気力線の集中を緩和するので、先端部8b,9bからの放電を抑制することができる。同時に、この状態では、第1の最外電極層8の先端部8bと第1の表面電極4とがコンデンサ電極として機能し、第1の最外電極層8の先端部8bと第1の表面電極4との間で電荷が安定するので、電荷が素体1の表面を流れることを抑制できる。従って、素体1の側面1cにおける表面リークを緩和することができる。
【0040】
第2の表面電極5側においても同様である。高電圧が印加され、第2の最外電極層9の先端部9bと第1の端子電極2との間において第2の表面電極5を介した放電の条件が満たされると、第2の表面電極5と第1の端子電極2との間において表面リークが発生し、第2の表面電極5と第1の端子電極2とが導通する。そして、第2の最外電極層9の先端部9bと第2の表面電極5とがコンデンサ電極として機能し、第2の最外電極層9の先端部9bと第2の表面電極5との間で電荷が安定するので、電荷が素体1の表面を流れることを抑制できる。従って、素体1の側面1dにおける表面リークを緩和することができる。
【0041】
ところで、第1の表面電極4と第1の端子電極2とを最初から機械的に接触させ、常に導通した状態にすることでも、表面リークを緩和することは可能である。この場合は、常に、第1の最外電極層8の先端部8bと第1の表面電極4との間に静電容量が発生することとなる。このような構成の場合、第1の端子電極2を形成する際に側面1c,1d上の部分をより端面1b側に延ばして、第1の表面電極4を一体的に形成することとなる。このようにして機械的に接触した第1の表面電極4と第1の端子電極2とを一体的に形成すると、第1の表面電極4の部分の位置や大きさを精度よく制御することができない。このため、第1の最外電極層8の先端部8bと第1の表面電極4の部分との間に発生する静電容量のばらつきが大きくなり、問題となる。
【0042】
これに対して、本実施形態に係る積層コンデンサCでは、放電条件が満たされて、第1の表面電極4と第1の端子電極2とが導通した場合にのみ、静電容量は変化するものの、放電条件が満たされない通常時は、第1の表面電極4と第1の端子電極2とは絶縁されているので、第1及び第2の内部電極層6,7による一定の静電容量を発揮することができる。
【0043】
また、本実施形態に係る積層コンデンサCでは、第1の表面電極4は、側面1cから見て第1の最外電極層8の先端部8bにおける2つの角部8c,8dと重なり、第2の表面電極5は、側面1dから見て第2の最外電極層9の先端部9bにおける2つの角部と重なっている。この場合、放電が発生し易い第1及び第2の最外電極層8,9の先端部8b,9bにおける角部を第1及び第2の表面電極4,5が覆うこととなる。よって、表面リークをより緩和することができる。
【0044】
また、本実施形態に係る積層コンデンサCでは、第1及び第2の表面電極T1の厚さは、第1及び第2の端子電極2,3の第1及び第2の部分2a,3aの厚さT2より薄い。この場合、積層コンデンサC1の第1及び第2の端子電極2,3を基板にハンダ付けすることにより、側面1c又は側面1dが基板と対向するように実装した状態で、第1又は第2の表面電極4,5がハンダと接触することを防止できる。第1又は第2の表面電極4,5がハンダと接触して導通すると、この表面電極と対向する第1又は第2の最外電極層8,9との間に静電容量が発生するので、問題がある。従って、第1及び第2の表面電極4,5とハンダとが導通することを防止することにより、積層コンデンサCとしての静電容量の変化を防止することができる。
【0045】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0046】
例えば、図6に、本実施形態の第1の変形例に係る積層コンデンサC1の断面図を示す。第1の変形例に係る積層コンデンサC1は、2つの第1の内部電極層6と2つの第2の内部電極層7とを備えている。そして、第1及び第2の内部電極層6,7のうち素体1の側面1d側に最も近い第2の最外電極層9は、第1の内部電極層6である。この場合、第2の表面電極5は、第2の最外電極層9(第1の内部電極層6)の先端部9bを覆う位置に配置されるので、素体1の中央より第2の端子電極3側に配置されることとなる。
【0047】
この場合も、上記実施形態と同様な原理で、放電条件を満たす高圧が積層コンデンサC2に印加されると、第2の表面電極5と第2の端子電極3とが導通することにより、側面1dにおける表面リークを緩和することができる。
【0048】
また例えば、図7に、本実施形態の第2の変形例に係る積層コンデンサC2の断面図を示す。第2の変形例に係る積層コンデンサC2は、第2の表面電極5が第1の表面電極4より中央寄りに配置されている。この場合、第1の表面電極4と第2の表面電極5とは同形状且つ同寸法であるため、第2の表面電極5と第1の端子電極2との間の距離D2が第1の表面電極4と第1の端子電極2との間の距離D1より大きい。ここで、距離D1とは、第1の表面電極4の第1の端子電極2側の端と、第1の端子電極2の第1の部分2aにおける第1の表面電極4側の端との間の距離である。また、距離D2とは、第2の表面電極5の第1の端子電極2側の端と、第1の端子電極2の第1の部分2aにおける第2の表面電極5側の端との間の距離である。
【0049】
この場合、積層コンデンサC2の側面1dが基板に対向するように、第1及び第2の端子電極2,3を基板にハンダ付けすると、ハンダと第2の表面電極5とが導通することを防止できる。ハンダと第2の表面電極5とが導通すると、印加電圧が放電の条件を満たさない場合でも第2の表面電極5と第2の最外電極層9の先端部9bとの間で静電容量が発生してしまうので、積層コンデンサとしての静電容量が変化してしまう。従って、ハンダと第2の表面電極5とが導通することを防止することにより、静電容量の変化を防止することができる。
【0050】
また例えば、図8に、本実施形態の第3の変形例に係る積層コンデンサC3の断面図を示す。第3の変形例に係る積層コンデンサC3は、第2の表面電極5の幅S2が第1の表面電極4の幅S1より小さい。幅S1,S2は、それぞれ、第1及び第2の表面電極4,5における素体1の端面1aと端面1bとの対向方向の寸法である。ただし、第2の表面電極5は、第2の最外電極層9の先端部9bと対向する領域と、領域10と対向する領域とを有し、先端部9bを覆っている。
【0051】
この場合、第1の表面電極4と第2の表面電極5とは同形状且つ同寸法であるため、第2の表面電極5と第1の端子電極2との間の距離D2が第1の表面電極4と第1の端子電極2との間の距離D1より大きい。これにより、積層コンデンサC2の側面1dが基板に対向するように、第1及び第2の端子電極2,3を基板にハンダ付けすると、ハンダと第2の表面電極5とが導通することを防止できる。従って、ハンダと第2の表面電極5とが導通することを防止することにより、静電容量の変化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施形態に係る積層コンデンサの斜視図である。
【図2】本実施形態に係る積層コンデンサの平面図及び断面図である。
【図3】本実施形態に係る積層コンデンサが備える素体の断面図である。
【図4】本実施形態に係る積層コンデンサが備える素体の平面図である。
【図5】図2(b)に示す断面図の部分拡大図である。
【図6】本実施形態の第1の変形例に係る積層コンデンサの断面図である。
【図7】本実施形態の第2の変形例に係る積層コンデンサの断面図である。
【図8】本実施形態の第3の変形例に係る積層コンデンサの断面図である。
【符号の説明】
【0053】
C,C1,C2,C3…積層コンデンサ、1…素体、1a,1b…端面、1c-1f…側面、2…第1の端子電極、2a…第1の部分、3…第2の端子電極、3a…第2の部分、4…表面電極、4a…辺、4b…辺、5…表面電極、6…第1の内部電極層、6a…基端部、6b…先端部、7…第2の内部電極層、7a…基端部、7b…先端部、8…第1の最外電極層、8b…先端部、8c,8d…角部、9…第2の最外電極層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略直方体形状で、互いに対向する第1及び第2の面と、前記第1及び第2の面に垂直で互いに対向する第3及び第4の面とを有する素体と、
前記第1の面に形成された部分を含む第1の端子電極と、
前記第2の面に形成された部分を含む第2の端子電極と、
を備え、
前記素体は、
前記素体の内部に前記第3及び前記第4の面の対向方向に対向して交互に配置された複数の第1の内部電極層及び複数の第2の内部電極層と、
前記第3の面に位置する第1の表面電極と、
前記第4の面に位置する第2の表面電極と、を有し、
前記複数の第1の内部電極層の前記第1の面側の基端部が、前記第1の端子電極と電気的に接続され、前記複数の第1の内部電極層の前記基端部に対向する先端が、前記素体における中央より前記第2の端子電極側に位置し、
前記複数の第2の内部電極層の前記第2の面側の基端部が、前記第2の端子電極と電気的に接続され、前記複数の第2の内部電極層の前記基端部に対向する先端が、前記素体における中央より前記第1の端子電極側に位置し、
前記第1の表面電極は、前記第1及び前記第2の端子電極と電気的に絶縁され、前記複数の第1及び前記複数の第2の内部電極層のうち最も前記第3の面側に位置する第1の最外電極層の前記先端と前記第3の面側から見て重なると共に、前記第1及び前記第2の端子電極のうち前記第1の最外電極層と電気的に絶縁された端子電極側に位置し、
前記第2の表面電極は、前記第1及び前記第2の端子電極と電気的に絶縁され、前記複数の第1及び前記複数の第2の内部電極層のうち最も前記第4の面側に位置する第2の最外電極層の前記先端と前記第4の面側から見て重なると共に、前記第1及び前記第2の端子電極のうち前記第2の最外電極層と電気的に絶縁された端子電極側に位置していることを特徴とする積層コンデンサ。
【請求項2】
前記複数の第1及び前記複数の第2の内部電極層の先端は、角部を有し、
前記第1の表面電極は、前記第1の最外電極層の先端における前記角部と前記第3の面側から見て重なり、
前記第2の表面電極は、前記第2の最外電極層の先端における前記角部と前記第4の面側から見て重なることを特徴とする請求項1記載の積層コンデンサ。
【請求項3】
前記第1及び第2の端子電極のうち前記第2の最外電極層と絶縁された端子電極と前記第2の表面電極との間の距離は、前記第1及び第2の端子電極のうち前記第1の最外電極層と絶縁された端子電極と前記第1の表面電極との間の距離より大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の積層コンデンサ。
【請求項4】
前記第1の端子電極は、前記第3及び前記第4の面の前記第1の面側の部分を覆う第1の部分を含み、
前記第2の端子電極は、前記第3及び前記第4の面の前記第2の面側の部分を覆う第2の部分を含み
前記第2の表面電極の厚さは、前記第1及び前記第2の部分の厚さより薄いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層コンデンサ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−176946(P2009−176946A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−13977(P2008−13977)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】