説明

積層コンデンサ

【課題】コンデンサユニットを遮断部に取付ける際に、コンデンサユニットを構成する絶縁筒に曲げの力がかかっても、コンデンサ素子同士が点接触や横ずれを起こさない積層コンデンサを提供する。
【解決手段】遮断部間に配置されるコンデンサユニットを構成する積層コンデンサにおいて、該積層コンデンサを構成するコンデンサ素子の一方の電極には嵌合凸部23を設け、他方の電極には嵌合凹部22を設け、該嵌合凸部と嵌合凹部が半径方向の空隙を有しないように嵌め合う構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電力用遮断器において、遮断直後に発生する過渡回復電圧(TRV)を抑制するために使用される積層コンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
遮断器の遮断部に取付けられるコンデンサユニットには、例えば、強誘電体を用いたセラミックコンデンサが用いられる。この場合、セラミックコンデンサ素子1個あたりの耐電圧性能が不足するため、複数のコンデンサ素子を直列に接続したコンデンサユニットとして使用する。また、コンデンサユニット数本を遮断部に対して並列に接続し、所望の静電容量を確保することが行われる。
【0003】
コンデンサユニットは、コンデンサ列の両端に各々電極を設け、この電極及びコンデンサ列の外周を絶縁筒で覆うことで構成される。各々のコンデンサ素子は、横ずれを防止するためにバネにより積層方向に押圧力が与えられている。
【0004】
コンデンサユニットの両端は、図1に示すように、遮断部間に対向して取付けられた取付金具の取付面にボルト等で固定される。コンデンサ素子同士の横ずれを防止するためには、取付けるコンデンサユニットに曲げが生じないようにするために、対向する取付金具の取付面を高さが同じでかつ互いに並行にすることが望ましい。
【0005】
しかし、遮断部組立時に生じる累積公差や製造後のゆがみ等により、取付金具の取付面の高さを同じにすることができない場合がある。また、取付面が互いに平行に取付けられない場合がある。
【0006】
一方、コンデンサユニットに用いられる絶縁筒には、一般にフッ素樹脂等の耐熱性および電気絶縁性にすぐれた材料が用いられるが、フッ素樹脂は強度が弱いという問題がある。このような場合にコンデンサユニットの両端を各々の取付金具に取付けると、絶縁筒に曲げが生じるおそれがある。
【0007】
コンデンサユニットは、一般的には円盤状のコンデンサ素子を積層して絶縁筒に収納する構造となっている。このため、絶縁筒に曲げが生じると、図6(a)に示すように、個々のコンデンサ素子15aが点接触となるおそれがある。点接触となることで、所望の静電容量を得られず、コンデンサ素子が所期の性能を発揮することができなくなる。
【0008】
また、コンデンサユニットに曲げが生じることで、図6(b)に示すように、コンデンサ素子が横ずれを起こす場合がある。この場合には、突出したコンデンサ素子に電界が集中し電位が高くなる。これによってコンデンサ素子の寿命が短くなったり、絶縁破壊につながるおそれがある。
【0009】
特許文献1には、耐電圧性能を確保するため複数のコンデンサ素子を直列に接続したコンデンサユニット数本を遮断部に対して並列に接続し、所望の静電容量を確保する並列コンデンサが開示されている。
【0010】
この並列コンデンサは、図7、図8で示すように、複数のコンデンサユニットが絶縁棒31を中心に円周状に配置され、絶縁棒31の両端部に固定された端部金具32を介して絶縁棒31に支持されている。このように絶縁棒31によって絶縁筒を支持することで、コンデンサユニットを取付ける時等に絶縁筒が曲がるおそれを低減することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭50−61662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、この構成では絶縁棒31及び端部金具32を含む並列コンデンサが遮断部付近に配置されるため、遮断部のタンク寸法の大型化という問題が新たに生じる。また、上記構成は、絶縁筒の強度自体を強化するものでもなく、遮断時等に生じる振動や衝撃によりコンデンサ素子同士が点接触や横ずれを起こすおそれが依然として存在する。
【0013】
本発明の目的は、コンデンサユニットを遮断部間に取付けるとき等に絶縁筒に曲げが生じることでコンデンサ素子同士が点接触となることを防止することである。また、コンデンサ素子同士の横ずれを防止し、電解の集中が生じるのを防ぐことである。さらには、絶縁筒の強度を補強するための支持部材等を絶縁筒に沿って設けることなく、コンデンサユニットを直接遮断部間に取付けることで、遮断部のタンク寸法を大型化せずにコンデンサ素子同士の横ずれ等を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記目的を達成するために、電力用遮断器のタンク内に収納されているコンデンサ素子を複数個積層した積層コンデンサにおいて、コンデンサ素子の一方の電極に凹部を形成し、他方の電極にはこの凹部と嵌め合う凸部を形成し(以下、それぞれ嵌合凹部および嵌合凸部という。)、該嵌合凹部と嵌合凸部が半径方向の空隙を有しないように嵌め合う構成とすることを特徴とする。
【0015】
好ましくは、上記嵌合凹部と嵌合凸部が半径方向の空隙を有しないように嵌め合う構成において、嵌合凸部の高さが、嵌合凹部の深さより低いことにより、コンデンサ素子同士が環状面で接触することを特徴とする。
【0016】
また好ましくは、上記嵌合凹部と嵌合凸部が半径方向の空隙を有しないように嵌め合う構成において、嵌合凸部の高さが、嵌合凹部の深さより高いことにより、コンデンサ素子同士が突出した平面と窪んだ平面で接触することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の積層コンデンサは、各コンデンサ素子の一方の電極に嵌合凸部を、他方の電極には嵌合凹部を設けることでコンデンサ素子同士を半径方向の空隙が生じないように互いに嵌め合わせることができる。これにより、コンデンサユニットの取付け時等に、絶縁筒に曲げが生じてコンデンサ素子同士が点接触となることを防止することができる。また、コンデンサ素子同士の横ずれを防止し、電解の集中を緩和することができる。さらには、絶縁筒の強度を補強するための支持部材等を絶縁筒に沿って設けることなくコンデンサ素子のずれを防止することができるので、支持部材等を設ける場合に比べ遮断部のタンク寸法を小型化し、遮断器の軽量化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のコンデンサユニットを組み込んだ遮断器の一実施例を示す概略縦断面図である。
【図2】本発明の積層コンデンサを収納したコンデンサユニットの縦断面図である。
【図3】図2のX−X線に沿う平面において切断した断面図である。図3(a)は1つのコンデンサユニットを遮断部間に取付けた場合の断面図であり、図3(b)は複数のコンデンサユニットを遮断部間に取付けた場合の断面図である。
【図4】図2に示すコンデンサ素子15の拡大図である。図4(a)はコンデンサ素子単体を示す側面図であり、図4(b)は各々のコンデンサ素子を嵌め合わせ積層コンデンサとした状態を示す側面図である。
【図5】コンデンサ素子の別の一例を示す拡大図である。図5(a)はコンデンサ素子単体を示す側面図であり、図5(b)は各々のコンデンサ素子を嵌め合わせ積層コンデンサとした状態を示す側面図である。
【図6】従来の積層コンデンサに曲げが生じた状態を示す側面図である。図6(a)はコンデンサ素子同士の点接触状態を示す側面図であり、図6(b)はコンデンサ素子が横ずれを起こした状態を示す側面図である。
【図7】両端部を絶縁棒に支持された従来のコンデンサユニットの縦断面図である。
【図8】図7のY−Y線に沿う平面において切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明に係るコンデンサユニット1を組み込んだ遮断器の一実施例を示す概略縦断面図である。SF6ガス等の絶縁ガス2を封入したタンク3内に遮断部4が設けられている。遮断部4は、可動接触子5と固定接触子6で構成されている。それぞれの接触子はシールド8、9で覆われており、導体10、11を介して架線に接続されている。また、可動接触子5および固定接触子6には、コンデンサユニット1の端部を覆うコンデンサシールド12、13が取付けられている。タンク3の可動接触子5側の外部には可動接触子5を操作する操作器7が取付けられている。
【0021】
図1のガス遮断器において、電力系統に事故が発生すると、遮断器に対して遮断指令が発せられる。遮断指令を受け、操作器7により可動接触子5が固定接触子6から解離される。両接触子間に発生するアークは、タンク3内の絶縁ガス2により吹き消されて遮断が行われる。このとき、コンデンサユニット1は、過渡回復電圧の初期上昇率を低減し、遮断部の遮断可能電流を増大する。
【0022】
図2は、本発明に係るコンデンサユニット1の一実施例を示す縦断面図である。コンデンサユニット1は、フッ素樹脂等の耐熱性および電気絶縁性にすぐれた材料で形成された絶縁筒14内に、複数個のコンデンサ素子15を直列に接続した状態で収納したものである。複数個直列に接続したコンデンサ素子15の両端には、電極16、17が配置される。電極の片側にはバネ18があり、バネ18はコンデンサ素子15を押圧している。バネ18の両端には電極16、19が配置され、電極16、19はバネ18を挟んで電気的に接続されている。また、コンデンサユニット1は、遮断部の固定側と可動側に取付けられた取付金具20に電極17、19をナット21で固定することで支持されている。
【0023】
なお、コンデンサユニットは、図3(a)に示すように、遮断部間に遮断部と並列に単独で取付けてもよいが、コンデンサの容量が不足する場合には、図3(b)に示すように複数本のコンデンサユニットを遮断部間に遮断部と並列に取付けてもよい。
【0024】
図4は、図2に示すコンデンサ素子15の拡大図である。図4(a)はコンデンサ素子単体を示す側面図であり、図4(b)は各々のコンデンサ素子を嵌め合わせ積層コンデンサとした状態を示す側面図である。
【0025】
遮断部に並列して設置されるコンデンサとして一般的に用いられているものに、エポキシモールド型コンデンサ、セラミックコンデンサ等がある。本発明は主として、高周波特性及び絶縁性能に優れているセラミックコンデンサ素子を使用したコンデンサユニットに関するものであるが、セラミックコンデンサに限定するものではなく、複数のコンデンサ素子を組み合わせて構成するコンデンサユニット全般に関するものである。
【0026】
コンデンサ素子の嵌合凹部および嵌合凸部の形状、個数、位置はコンデンサ素子同士が横方向のずれを生じないよう、嵌合凹部および嵌合凸部が半径方向の空隙を有しないように嵌め合うことができるものであれば特に限定されない。また嵌合凹部の深さおよび嵌合凸部の高さはコンデンサ素子同士が横ずれや点接触を起こさない範囲であれば特に限定されない。
【0027】
嵌合凹部および嵌合凸部の構成として、例えば、図4に示すように、嵌合凸部23の高さが嵌合凹部22の深さより低いことにより、コンデンサ素子同士が環状面24で接触するものがあげられる。この場合には、コンデンサ素子同士の接触面の面積をできるだけ大きくするために、環状面24の面積が、突出した平面25および窪んだ平面26の面積より大きな構成とするのが好ましい。
【0028】
また他の構成として、例えば、図5に示すように、嵌合凸部の高さが、嵌合凹部の深さより高いことにより、コンデンサ素子同士が突出した平面27と窪んだ平面28で接触するものがあげられる。この場合には、コンデンサ素子同士の接触面の面積をできるだけ大きくするために、突出した平面27および窪んだ平面28の接触面の面積が環状の非接触面29、30の面積より大きな構成とするのが好ましい。
【0029】
これらの例で示すように、コンデンサ素子を嵌め合い構造にすることで、コンデンサユニットの取付け時に絶縁筒に曲げが作用してコンデンサ素子同士が横ずれる方向、すなわち円周方向に力が生じた場合でも、その力はコンデンサ素子の嵌合凹および嵌合凸部で受けられることとなる。
【0030】
以上より、コンデンサユニットを遮断部間に取付けるときに絶縁筒に曲げが作用しても、コンデンサ素子同士が点接触となることを防止することができる。また、コンデンサ素子同士の横ずれを防止し、横ずれにより生じる電解集中を緩和することができる。さらには、絶縁筒の強度を補強するための支持部材等を絶縁筒に沿って設けることなく、コンデンサユニットを直接遮断部間に取付けることで、遮断部のタンク寸法を大型化せずにコンデンサ素子同士の横ずれ等を防止することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 コンデンサユニット
4 遮断部
14 絶縁筒
15 本願のコンデンサ素子
15a 従来のコンデンサ素子
16、17、19 電極
18 バネ
20 取付金具
22 嵌合凹部
23 嵌合凸部
24 環状面
25、27 突出した平面
26、28 窪んだ平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力用遮断器のタンク内に収納されるコンデンサ素子を複数個積層した積層コンデンサにおいて、前記コンデンサ素子の一方の電極には嵌合凸部を有し、他方の電極には嵌合凹部を有し、前記嵌合凸部と前記嵌合凹部が半径方向の空隙を有しないように嵌め合うことを特徴とする積層コンデンサ。
【請求項2】
前記嵌合凸部の高さが、前記嵌合凹部の深さより低いことにより、前記コンデンサ素子同士が環状面で接触することを特徴とする請求項1に記載の積層コンデンサ。
【請求項3】
前記嵌合凸部の高さが、前記嵌合凹部の深さより高いことにより、前記コンデンサ素子同士が突出した平面と窪んだ平面で接触することを特徴とする請求項1に記載の積層コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−18724(P2011−18724A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161570(P2009−161570)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(501383635)株式会社日本AEパワーシステムズ (168)
【Fターム(参考)】