説明

積層コンデンサ

【課題】実装の方向性を無くしつつ、高ESR及び低ESLを図ると共に十分な静電容量を確保することができる積層コンデンサを提供する。
【解決手段】積層コンデンサ1は、第1の静電容量部10と、第2の静電容量部12A,12Bを含むESR制御部11A,11Bとを有する積層体2を備える。第1の静電容量部10は、内部電極8a,8bが交互に積層されてなり、ESR制御部11A,11Bは、積層体2の積層方向において第1の静電容量部10を挟んでそれぞれ配置されており、内部電極8c〜8fを有する。内部電極8c,8fの端子引出部8cB,8fBの幅は、主電極部8cA,8fAの幅よりも小さくなっており、内部電極8c,8fの端子引出部8cB,8fBの長さは、導体引出部8cC,8fCの長さよりも長くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁体層を介在させて複数の内部電極を交互に積層させた積層体と、積層体の端面に設けられ且つ互いに絶縁された外部電極と、積層体の側面に設けられ且つ互いに絶縁された接続導体とを備えた積層コンデンサが知られている。
【0003】
この種の積層コンデンサとして、例えば特許文献1記載のものがある。特許文献1記載の積層コンデンサの積層体は、4種の内部電極を有している。そのうち2種の内部電極は、静電容量を形成する主電極部と、当該主電極部に接続され、積層体の側面に一端部が露出するように伸びて接続導体に接続される突出部とを含んでいる。他の2種の内部電極は、積層体の端面に一端部が露出するように伸びて外部電極に接続される引出部と、この引出部に接続され、積層体の側面に一端部が露出するように伸びて接続導体に接続される突出部とを含んでいる。後者の2種の内部電極では、外部電極に接続される引出部は幅広となっており、引出部と外部電極とを確実に接触させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−168621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
積層コンデンサをデカップリングコンデンサとして用いる場合には、等価直列抵抗(ESR:Equivalent Series Resistance)を大きくしつつ、等価直列インダクタンス(ESL:Equivalent Series Inductance)を小さくすることが求められる。上記特許文献1に記載の積層コンデンサでは、前者の2種の内部電極の主電極同士において、逆向きに電流が流れてこの電流に起因して発生する磁界が相殺されるため、積層コンデンサのESLを小さくすることが可能である。しかしながら、この積層コンデンサでは、後者の2種の内部電極が幅広な引出部を有しているためESRが小さく、ESRを向上させる点で改善の余地がある。また、積層コンデンサには、実装時の作業性の観点から実装の方向性を無くすと共に、十分な静電容量を確保することが求められている。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、実装の方向性を無くしつつ、高ESR及び低ESLを図ると共に十分な静電容量を確保することができる積層コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る積層コンデンサは、誘電体層を介在させて複数の内部電極が積層された積層体と、積層体の一端面に形成された第1の外部電極及び他端面に形成された第2の外部電極と、積層体の各端面と交差する第1及び第2の側面に互いに対向するようにそれぞれ形成された第1の接続導体及び第2の接続導体と、を備え、複数の内部電極は、第1〜第5の内部電極を含み、積層体は、第1の接続導体に接続される第1の内部電極と第2の接続導体に接続される第2の内部電極とを有し、第1の内部電極と第2の内部電極とが誘電体層を介して対向して配置された第1の静電容量部と、積層体の積層方向において第1の静電容量部を挟んでそれぞれ配置され、第1の外部電極及び第1の接続導体に接続される第3の内部電極と、第2の外部電極及び第2の接続導体に接続される第4の内部電極とを有するESR制御部と、を有し、ESR制御部は、第3の内部電極と第4の内部電極との間に配置され、第1の接続導体又は第2の接続導体に接続される第5の内部電極を有する第2の静電容量部を含み、第3の内部電極は、第1及び第2の側面の対向方向において第1の幅を有する第1の主電極部と、第1の主電極部から一端面側に第2の幅を有して伸び、第1の外部電極に接続される第1の引出部と、第1の主電極部から第1の側面側に伸びて第1の接続導体に接続される第2の引出部とを有し、第4の内部電極は、第1及び第2の側面の対向方向において第3の幅を有する第2の主電極部と、第2の主電極部から他端面側に第4の幅を有して伸び、第2の外部電極に接続される第3の引出部と、第2の主電極部から第2の側面側に伸びて第2の接続導体に接続される第4の引出部とを有し、第2の幅及び第4の幅は、第1の幅及び第3の幅よりも狭くなっており、第1の引出部及び第3の引出部は、第2の引出部及び第4の引出部よりも長いことを特徴とする。
【0008】
この積層コンデンサでは、ESR制御部が第1の静電容量部の上下に分離配置されている。したがって、積層コンデンサを基板等に実装する際の向きを上下で任意に配置することができ、実装の方向性を無くすことができる。また、外部電極の電流ループ距離が短くなるため、低ESL(Equivalent Series Inductance:等価直列インダクタンス)を実現できる。また、第1の静電容量部の第1及び第2の内部電極は、接続導体のみに接続されるため、高ESR(Equivalent Series Resistance:等価直列抵抗)とすることができる。また、外部電極に接続される第1及び第3の引出部の第2の幅及び第4の幅は、主電極部の第1の幅及び第3の幅よりも狭くなっており、外部電極に接続される第1の引出部及び第3の引出部は、接続導体に接続される第2の引出部及び第4の引出部よりも長いため、ESRを更に高くすることができる。更に、ESR制御部の第3の電極と第4の電極との間に、接続導体にのみ接続される第5の内部電極を有する第2の静電容量部が配置されているため、静電容量を十分に確保することができる。
【0009】
複数の内部電極は、第6の内部電極を含み、第2の静電容量部は、第1の接続導体に接続される第5の内部電極と、第2の接続導体に接続される第6の内部電極とからなり、第5の内部電極と第6の内部電極とが誘電体層を介して対向して配置されていることが好ましい。このような構成によれば、第2の静電容量部において、静電容量をより十分に確保することができる。
【0010】
第1の静電容量部は、第1及び第2の内部電極が交互に積層されてなり、第2の静電容量部は、第5及び第6の内部電極が交互に積層されてなり、第2の静電容量部の第5及び第6の内部電極の積層数は、第1の静電容量部の第1及び第2の内部電極の積層数よりも少ないことが好ましい。このような構成によれば、外部電極の電流ループ距離を更に短くできるため、低ESL化を更に図ることができる。特に、第5の内部電極及び第6の内部電極の2つにて第2の静電容量部が形成されていることが好ましい。このような構成によれば、外部電極の電流ループが長くなることを抑制できるため、低ESL化を維持することができる。
【0011】
第2の静電容量部のそれぞれは、第5及び第6の内部電極の積層数が同数であることが好ましい。このような構成によれば、実装の方向性によって内部電極の積層数が変化して外部電極の電流ループ距離が変化することがないため、実装の方向性による特性のばらつきを防止することができる。
【0012】
複数の内部電極は、第6の内部電極を含み、第2の静電容量部は、第1の接続導体に接続される第5の内部電極と、第2の接続導体に接続される第6の内部電極とが同一の誘電体層上に形成されてなることが好ましい。このように、同一の誘電体層上に第2の静電容量部を構成する第5及び第6の内部電極を形成することにより、静電容量を確保しつつ、外部電極の電流ループ距離を短くでき、低ESLを維持することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、実装の方向性を無くしつつ、高ESR及び低ESLを図ると共に十分な静電容量を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態に係る積層コンデンサを示す斜視図である。
【図2】図1に示す積層コンデンサのII−II線断面図である。
【図3】図1に示す積層コンデンサの層構成を示す図である。
【図4】複合層を示す図である。
【図5】静電容量形成領域を説明するための図である。
【図6】第2実施形態に係る積層コンデンサの断面図である。
【図7】図6に示す積層コンデンサの層構成を示す図である。
【図8】複合層を示す図である。
【図9】静電容量形成領域を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0016】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る積層コンデンサを示す斜視図である。図2は、図1に示す積層コンデンサのII−II線断面図であり、図3は、図1に示す積層コンデンサの層構成を示す斜視図である。
【0017】
図1に示すように、積層コンデンサ1は、略直方体形状の積層体2と、外部電極3,4と、接続導体5,6とを備えている。
【0018】
積層体2は、互いに対向する一対の端面2a,2bと、一対の端面2a,2b間を連結するように伸び且つ互いに対向する一対の側面2c,2dと、一対の側面2c,2dを連結するように伸び且つ互いに対向する一対の主面2e,2fとを有する。積層体2は、図3に示すように、誘電体層7の上に異なるパターンの内部電極8a〜8fが形成されてなる複数の複合層9a〜9fと、複合層9a〜9fの最表層に積層され、保護層として機能する誘電体層7とによって形成されている。誘電体層7は、誘電体セラミックを含むセラミックグリーンシートの焼結体からなり、内部電極8a〜8fは、導電性ペーストの焼結体からなる。なお、実際の積層コンデンサ1では、誘電体層7間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0019】
外部電極3,4及び接続導体5,6は、導電性金属粉末及びガラスフリットを含む導電性ペーストを焼き付けることによって形成されている。外部電極3,4は、積層コンデンサ1の実装の際に、所定の極性となる電極である。また、接続導体5,6は、積層体2における後述のESR制御部11A,11Bに属する内部電極8同士を並列に接続する導体であり、実装基板に直接接続されない導体である。
【0020】
外部電極(第1の外部電極)3は、積層コンデンサ1の基板実装の際に例えば+極性(第1の極性)のランド電極に接続される電極であり、積層体2における長手方向の一端面2aを覆うように形成されている。外部電極(第2の外部電極)4は、積層コンデンサ1の基板実装の際に例えば−極性(第2の極性)のランド電極に接続される電極であり、積層体2における長手方向の他端面2bを覆うように形成されている。
【0021】
接続導体(第1の接続導体)5は、積層体2の一端面2a及び他端面2bと直交する側面2c,2dのうち、積層方向に沿う一方の側面2cに形成され、接続導体(第2の接続導体)6は、側面2cと対向する他方の側面2dに形成されている。接続導体5,6は、側面2c,2dにおいて上述の積層方向に帯状に延在すると共に、積層体2の主面2e,2fに張り出すパッド部分を有している。外部電極3は、外部電極4及び接続導体6と所定の間隔をあけて離間した状態となっており、互いに電気的に絶縁されている。また、接続導体5は、外部電極4及び接続導体6と所定の間隔をあけて離間した状態となっており、互いに電気的に絶縁されている。
【0022】
次に、積層体2の構成について更に詳細に説明する。
【0023】
図2及び図3に示すように、積層体2は、積層コンデンサの静電容量に主として寄与する第1の静電容量部10と、積層コンデンサ1のESR(Equivalent Series Resistance:等価直列抵抗)を制御するESR制御部11A,11Bとを有している。積層体2では、積層方向(図示上下方向)から見て静電容量部10を挟むようにESR制御部11A,11Bが上下に配置されている。つまり、積層体2は、ESR制御部11A、静電容量部10、ESR制御部11Bがこの順に配置されて構成されている。
【0024】
静電容量部10は、異なる2つの内部電極を有する複合層9a,9bが交互に複数積層されて構成されている。複合層9aは、誘電体層7上に内部電極(第1の内部電極)8aが形成されている。内部電極8aは、中央部分に形成された矩形状の主電極部8aAと、主電極部8aAの一辺から側面2c側に引き出された帯状の導体引出部8aBとを有している。導体引出部8aBの端部は、積層体2の側面2cに露出し、接続導体5に接続されている。内部電極8aは、接続導体5を介して+極性となる。
【0025】
複合層9bは、誘電体層7上に内部電極(第2の内部電極)8bが形成されている。内部電極8bは、中央部分に形成された矩形状の主電極部8bAと、主電極部8bAの一辺から側面2d側に引き出された帯状の導体引出部8bBとを有している。導体引出部8bBの端部は、導体引出部8aBとは反対に積層体2の側面2dに露出し、接続導体6に接続されている。内部電極8bは、接続導体6を介して−極性となる。静電容量部10は、内部電極8aと内部電極8bとが誘電体層7を介して異なる極性として対向して配置されている。なお、図3においては、複合層9a及び複合層9bを6層しか図示していないが、複合層9a及び複合層9bの積層数は、コンデンサの設計に合わせて適宜設定される。
【0026】
ESR制御部11A,11Bのそれぞれは、異なる4つの内部電極を有する複合層9c〜9fが積層されて構成されている。複合層9d及び複合層9eは、第2の静電容量部12A,12Bを構成している。すなわち、第2の静電容量部12A,12Bは、複合層9cと複合層9fとの間に配置されている。
【0027】
複合層9cは、誘電体層7上に内部電極(第3の内部電極)8cが形成されている。図4(a)に示すように、内部電極8cは、矩形状の主電極部8cAと、主電極部8cAの一辺から端面2aに露出するように引き出された帯状の端子引出部8cBと、主電極部8cAの一辺から側面2cに露出するように引き出された帯状の導体引出部8cCとを有している。端子引出部8cB及び導体引出部8cCは、一定の幅を保ったまま伸びている。主電極部8cAの誘電体層7の短辺方向(側面2c、2dの対向方向)に沿った幅(第1の幅)w1は、端子引出部8cBの誘電体層7の短辺方向に沿った幅(第2の幅)w2よりも大きく(広く)なっている。つまり、端子引出部8cBの幅w2は、主電極部8cAの幅w1よりも狭い(w2<w1)。端子引出部8cBの誘電体層7の長辺方向に沿った長さL1は、導体引出部8cCの誘電体層7の短辺方向に沿った長さL2よりも長くなっている。つまり、導体引出部8cCの長さL2は、端子引出部8cBの長さL1よりも短い(L2<L1)。内部電極8cは、外部電極3に接続されて+極性となる。
【0028】
複合層9dは、誘電体層7上に内部電極(第6の内部電極)8dが形成されている。内部電極8dは、中央部分に形成された矩形状の主電極部8dAと、主電極部8dAの一辺から側面2d側に引き出された帯状の導体引出部8dBとを有している。導体引出部8dBの端部は、積層体2の側面2dに露出し、接続導体6に接続されている。内部電極8dは、接続導体6を介して−極性となる。
【0029】
複合層9eは、誘電体層7上に内部電極(第5の内部電極)8eが形成されている。内部電極8eは、中央部分に形成された矩形状の主電極部8eAと、主電極部8eAの一辺から側面2c側に引き出された帯状の導体引出部8eBとを有している。導体引出部8eBの端部は、導体引出部8dBとは反対に積層体2の側面2cに露出し、接続導体5に接続されている。内部電極8eは、接続導体5を介して+極性となる。
【0030】
複合層9fは、誘電体層7上に内部電極(第4の内部電極)8fが形成されている。図4(b)に示すように、内部電極8fは、矩形状の主電極部8fAと、主電極部8fAの一辺から端面2bに露出するように引き出された帯状の端子引出部8fBと、主電極部8fAの一辺から側面2dに露出するように引き出された帯状の導体引出部8fCとを有している。端子引出部8fB及び導体引出部8fCは、一定の幅を保ったまま伸びている。主電極部8fAの誘電体層7の短辺方向に沿った幅(第3の幅)w3は、端子引出部8fBの誘電体層7の短辺方向に沿った幅(第4の幅)w4よりも大きくなっている。つまり、端子引出部8fBの幅w4は、主電極部8fAの幅w3よりも狭い(w4<w3)。端子引出部8fBの誘電体層7の長辺方向に沿った長さL3は、導体引出部8fCの誘電体層7の短辺方向に沿った長さL4よりも長くなっている。つまり、導体引出部8fCの長さL4は、端子引出部8fBの長さL3よりも短い(L4<L3)。内部電極8fは、外部電極4に接続されて−極性となる。
【0031】
ESR制御部11A,11Bは、内部電極8c〜8fが誘電体層7を介して異なる極性として対向して配置されている。つまり、内部電極8cと内部電極8dとが異なる極性として対向して配置され、内部電極8dと内部電極8eとが異なる極性として対向して配置され、内部電極8eと内部電極8fとが異なる極性として対向して配置されている。第2の静電容量部12A,12Bを構成する複合層9d及び複合層9eの積層数は、コンデンサの設計に合わせて適宜設定されるが、第1の静電容量部10の複合層9a及び複合層9bの積層数よりも少なく設定されている。
【0032】
図5は、静電容量形成領域を説明するための図である。図5に示すように、以上のような構成を有するESR制御部11A,11Bでは、積層方向から見て誘電体層7を介して対向する内部電極8c〜8fが重なり合う部分が静電容量形成領域となっている(図5の斜線部分)。従来のESR制御部においては、本実施形態の複合層9c,9fに該当する2層のみで構成されているため、細長い端子引出部8cBと主電極部8fA、細長い端子引出部8fBと主電極部8cAとが重なっていた。そのため、対向面積が小さく、静電容量を十分に確保できていなかった。これに対して、本実施形態では、内部電極8c(8f)の主電極部8cA(8fA)の全面と重なるような内部電極8d(8e)を間に配置して対向させている。具体的には、内部電極8cの主電極部8cAの全面と内部電極8dの主電極部8dAとが重なっており、内部電極8eの主電極部8eAと内部電極8fの主電極部8fAの全面とが重なっている。このように、積層コンデンサ1では、内部電極8c〜8f同士の対向面積を増加させることができるため、静電容量が十分に確保されている。
【0033】
以上説明したように、積層コンデンサ1では、ESR制御部11A,11Bが第1の静電容量部10の上下に分離配置されている。したがって、積層コンデンサ1を基板等に実装する際の向きを上下で任意に配置することができ、実装の方向性を無くすことができる。また、外部電極3,4の電流ループ距離が短くなるため、低ESL(Equivalent Series Inductance:等価直列インダクタンス)を実現できる。また、第1の静電容量部10の内部電極8a,8bは、接続導体5,6のみに接続されるため、高ESR(Equivalent Series Resistance:等価直列抵抗)とすることができる。
【0034】
また、ESR制御部11A,11Bの複合層9c,9fにおいて、外部電極3,4に接続される端子引出部8cB,8fBの幅w2,w4は、主電極部8cA,8fAの幅w1,w3よりも狭くなっており、外部電極3,4に接続される端子引出部8cB,8fBの長さL1,L3は、接続導体5,6に接続される導体引出部8cC,8fCの長さL2,L4よりも長いため、ESRを更に高くすることができる。更に、ESR制御部11A,11Bの内部電極8cと内部電極8fとの間に、接続導体5,6にのみ接続される内部電極8d及び内部電極8eからなる第2の静電容量部12A,12Bが配置されているため、静電容量形成領域を確保でき、静電容量を十分に確保することができる。
【0035】
また、第2の静電容量部12A,12Bの複合層9d及び複合層9eの積層数は、第1の静電容量部10の複合層9a及び複合層9bの積層数よりも少なく設定されている。そして、第2の静電容量部12A,12Bは、複合層9d及び複合層9eの2層により構成されている。これにより、外部電極3,4の電流ループ距離が長くなることを抑制できるため、更に低ESLとすることができる。
【0036】
また、第2の静電容量部12A,12Bにおいて、上下に配置される複合層9d及び複合層9eの積層数は同数となっている。そのため、積層コンデンサ1を基板に実装する際、実装の方向性による特性のばらつきを防止できる。
【0037】
[第2実施形態]
続いて、第2実施形態について説明する。図6は、第2実施形態に係る積層コンデンサの断面図であり、図7は、図6に示す積層コンデンサの層構成を示す図である。各図に示すように、積層コンデンサ1Aは、複合層9gの構成及び複合層9a〜9c,9fの層構成が第1実施形態と異なっており、複合層9a〜9c,9f、外部電極3,4及び接続導体5,6の構成は第1実施形態と同様である。
【0038】
図6及び図7に示すように、積層コンデンサ1Aの積層体2Aでは、積層方向から見てESR制御部11C,11Dが第1の静電容量部10Aを挟むように配置されている。つまり、積層体2Aは、ESR制御部11C、第1の静電容量部10A、ESR制御部11Dがこの順番に配置されて構成されている。第1の静電容量部10Aは、複合層9a,9bが交互に複数積層されて構成されており、内部電極8aと内部電極8bとが誘電体層7を介して異なる極性として対向して配置されている。なお、図6及び図7においては、複合層9a及び複合層9bを10層しか図示していないが、複合層9a及び複合層9bの積層数は、設計に合わせて適宜設定される。
【0039】
ESR制御部11C,11Dのそれぞれは、異なる3つの内部電極を有する複合層9c,9f,9gが積層されて構成されている。複合層9gは、第2の静電容量部12C,12Dを構成している。すなわち、第2の静電容量部12C,12Dは、複合層9cと複合層9fとの間に配置されており、複合層9gの1層だけで構成されている。
【0040】
図8は、複合層9gを示す図である。図8に示すように、複合層9gは、誘電体層7上に内部電極(第5の内部電極)8g及び内部電極(第6の内部電極)8hが形成されている。内部電極8gと内部電極8hとは、同一の誘電体層7に互いに離間して配置され、電気的に絶縁した状態となっている。内部電極8gは、L字状を呈する主電極部8gAと、主電極部8gAの一辺から側面2c側に引き出された帯状の導体引出部8gBとを有している。主電極部8gAは、複合層9fに形成された内部電極8fの主電極部8fAの外形と積層方向において重なる形状となっている。導体引出部8gBの端部は、積層体2Aの側面2cに露出し、接続導体5に接続されている。内部電極8gは、接続導体5を介して+極性となる。
【0041】
内部電極8hは、L字状を呈する主電極部8hAと、主電極部8hAの一辺から側面2d側に引き出された帯状の導体引出部8hBとを有している。主電極部8hAは、複合層9cに形成された内部電極8cの主電極部8cAの外形と積層方向において重なる形状となっている。導体引出部8hBの端部は、導体引出部8gBとは反対に積層体2Aの側面2dに露出し、接続導体6に接続されている。内部電極8hは、接続導体6を介して−極性となる。内部電極8gと内部電極8hとは、主電極部8gAと主電極部8hAとが誘電体層7の面方向において対向し、誘電体層7の中央部分に配置されている。
【0042】
ESR制御部11C,11Dは、内部電極8c,8f〜8hが誘電体層7を介して異なる極性として対向して配置されている。つまり、内部電極8cと内部電極8hとが異なる極性として対向して配置され、内部電極8fと内部電極8gとが異なる極性として対向して配置されている。
【0043】
図9は、静電容量形成領域を説明するための図である。図9に示すように、以上のような構成を有するESR制御部11C,11Dでは、積層方向から見て誘電体層7を介して対向する内部電極8c,8f〜8hが重なり合う部分が静電容量形成領域となっている(図9の斜線部分)。本実施形態では、内部電極8cの主電極部8cAと内部電極8hの主電極部8hAとが重なっており、内部電極8fの主電極部8fAと内部電極8gの主電極部8gAとが重なっている。このように、積層コンデンサ1Aでは、内部電極8c,8f〜8h同士の対向面積を増加させることができるため、静電容量が十分に確保されている。
【0044】
以上説明したように、積層コンデンサ1Aでは、第1実施形態と同様に、ESR制御部11C,11Dが第1の静電容量部10Aの上下に分離配置されている。したがって、積層コンデンサ1Aを基板等に実装する際の向きを上下で任意に配置することができ、実装の方向性を無くすことができる。また、外部電極3,4の電流ループ距離が短くなるため、低ESLを実現できる。また、第1の静電容量部10Aの内部電極8a,8bは、接続導体5,6のみに接続されるため、高ESRとすることができる。
【0045】
また、ESR制御部11C,11Dの複合層9c,9fにおいて、外部電極3,4に接続される端子引出部8cB,8fBの幅w2,w4は、主電極部8cA,8fAの幅w1,w3よりも狭くなっており、外部電極3,4に接続される端子引出部8cB,8fBの長さL1,L3は、接続導体5,6に接続される導体引出部8cC,8fCの長さL2,L4よりも長いため、ESRを更に高くすることができる。更に、ESR制御部11C,11Dの内部電極8cと内部電極8fとの間に、接続導体5,6にのみ接続される内部電極8g及び内部電極8hからなる第2の静電容量部12C,12Dが配置されているため、静電容量形成領域を確保でき、静電容量を十分に確保することができる。
【0046】
また、第2の静電容量部12C,12Dは、内部電極8g及び内部電極8hが誘電体層7上に形成された複合層9gの1層にて構成されている。このように、同一の誘電体層7上に第2の静電容量部12C,12Dを構成する内部電極8g及び内部電極8hを形成することにより、静電容量を確保しつつ、外部電極3,4の電流ループ距離を短くでき、低ESLを維持することができる。
【0047】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、複合層の層構成は、上記の形態のみに限定されない。要は、積層方向において第1の静電容量部を挟むようにESR制御部が配置され、ESR制御部において接続導体5,6にのみ接続される内部電極が配置されていればよい。
【符号の説明】
【0048】
1,1A…積層コンデンサ、2,2A…積層体、3,4…外部電極(第1の外部電極、第2の外部電極)、5,6…接続導体(第1の接続導体、第2の接続導体)、7…誘電体層、8a〜8h…内部電極、8cA…主電極部(第1の主電極部)、8cB…端子引出部(第1の引出部)、8cC…導体引出部(第2の引出部)、8fA…主電極部(第2の主電極部)、8fB…端子引出部(第3の引出部)、8fC…導体引出部(第4の引出部)、10,10A…第1の静電容量部、11A〜11D…ESR制御部、12A〜12D…第2の静電容量部、w1〜w4…幅(第1〜第4の幅)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層を介在させて複数の内部電極が積層された積層体と、
前記積層体の一端面に形成された第1の外部電極及び他端面に形成された第2の外部電極と、
前記積層体の前記各端面と交差する第1及び第2の側面に互いに対向するようにそれぞれ形成された第1の接続導体及び第2の接続導体と、を備え、
前記複数の内部電極は、第1〜第5の内部電極を含み、
前記積層体は、
前記第1の接続導体に接続される前記第1の内部電極と前記第2の接続導体に接続される前記第2の内部電極とを有し、前記第1の内部電極と前記第2の内部電極とが前記誘電体層を介して対向して配置された第1の静電容量部と、
前記積層体の積層方向において前記第1の静電容量部を挟んでそれぞれ配置され、前記第1の外部電極及び前記第1の接続導体に接続される前記第3の内部電極と、前記第2の外部電極及び前記第2の接続導体に接続される前記第4の内部電極とを有するESR制御部と、を有し、
前記ESR制御部は、前記第3の内部電極と前記第4の内部電極との間に配置され、前記第1の接続導体又は前記第2の接続導体に接続される前記第5の内部電極を有する第2の静電容量部を含み、
前記第3の内部電極は、前記第1及び第2の側面の対向方向において第1の幅を有する第1の主電極部と、前記第1の主電極部から前記一端面側に第2の幅を有して伸び、前記第1の外部電極に接続される第1の引出部と、前記第1の主電極部から前記第1の側面側に伸びて前記第1の接続導体に接続される第2の引出部とを有し、
前記第4の内部電極は、前記第1及び第2の側面の対向方向において第3の幅を有する第2の主電極部と、前記第2の主電極部から前記他端面側に第4の幅を有して伸び、前記第2の外部電極に接続される第3の引出部と、前記第2の主電極部から前記第2の側面側に伸びて前記第2の接続導体に接続される第4の引出部とを有し、
前記第2の幅及び前記第4の幅は、前記第1の幅及び前記第3の幅よりも狭くなっており、
前記第1の引出部及び前記第3の引出部は、前記第2の引出部及び前記第4の引出部よりも長いことを特徴とする積層コンデンサ。
【請求項2】
前記複数の内部電極は、第6の内部電極を含み、
前記第2の静電容量部は、前記第1の接続導体に接続される前記第5の内部電極と、前記第2の接続導体に接続される前記第6の内部電極とからなり、
前記第5の内部電極と前記第6の内部電極とが前記誘電体層を介して対向して配置されていることを特徴とする請求項1記載の積層コンデンサ。
【請求項3】
前記第1の静電容量部は、前記第1及び第2の内部電極が交互に積層されてなり、
前記第2の静電容量部は、前記第5及び第6の内部電極が交互に積層されてなり、
前記第2の静電容量部の前記第5及び第6の内部電極の積層数は、前記第1の静電容量部の前記第1及び第2の内部電極の積層数よりも少ないことを特徴とする請求項2記載の積層コンデンサ。
【請求項4】
前記第2の静電容量部のそれぞれは、前記第5及び第6の内部電極の積層数が同数であることを特徴とする請求項2又は3記載の積層コンデンサ。
【請求項5】
前記複数の内部電極は、第6の内部電極を含み、
前記第2の静電容量部は、前記第1の接続導体に接続される前記第5の内部電極と、前記第2の接続導体に接続される前記第6の内部電極とが同一の誘電体層上に形成されてなることを特徴とする請求項1記載の積層コンデンサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−138391(P2012−138391A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287801(P2010−287801)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】