説明

積層セラミック電子部品の製造方法

【課題】内部電極を側面に露出させた状態のグリーンチップにおいて、内部電極の側部に保護領域を形成するため、グリーンチップの側面にセラミックグリーンシートを貼付するといった工程を進めるにあたって、グリーンチップに不所望な変形を生じさせずに、グリーンチップを取り扱うことができるようにする。
【解決手段】マザーブロックの切断後の行および列方向に配列された状態の複数のグリーンチップ19を、互いの間隔を広げた状態としてから転動させ、それによって、複数のグリーンチップ19の各々の側面20を揃って開放面としてから、側面20に接着剤を付与し、次いで、貼付用弾性体48上に側面用セラミックグリーンシート47を置き、グリーンチップ19の側面20を側面用セラミックグリーンシート47に押し付けることによって、側面用セラミックグリーンシート47を打ち抜くとともに側面20に付着させた状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、積層セラミック電子部品の製造方法に関するもので、特に、積層セラミック電子部品における内部電極の側部に保護領域を形成するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この発明が向けられる積層セラミック電子部品として、たとえば積層セラミックコンデンサがある。積層セラミックコンデンサを製造するためには、典型的には、図21(A)および(B)にそれぞれ示すように、第1の内部電極1が形成された第1のセラミックグリーンシート3と第2の内部電極2が形成された第2のセラミックグリーンシート4とを交互に複数層ずつ積層する工程が実施される。この積層工程によって、生の部品本体が得られ、生の部品本体が焼成された後、焼結した部品本体の相対向する第1および第2の端面に第1および第2の外部電極が形成される。これによって、第1および第2の端面にそれぞれ引き出された第1および第2の内部電極1および2が第1および第2の外部電極にそれぞれ電気的に接続され、積層セラミックコンデンサが完成される。
【0003】
近年、積層セラミックコンデンサは、小型化の一途をたどっており、一方で取得静電容量の高いものが求められている。これらの要望に応えるには、積層されるセラミックグリーンシート3および4上をそれぞれ占有する内部電極1および2の各有効面積、つまり、内部電極1および2が互いに対向する面積を増やすことが有効である。このような有効面積を増やすには、図21に示した側部の保護領域5および端部の保護領域6の寸法を減じることが重要となる。
【0004】
しかし、端部の保護領域6の寸法を減じると、不所望にも、第1の外部電極と第2の外部電極とが、内部電極1および2のいずれかを介して短絡してしまう危険性が高められる。したがって、積層セラミックコンデンサの信頼性を考慮したとき、端部の保護領域6の寸法を減じるより、側部の保護領域5の寸法を減じる方が好ましいことがわかる。
【0005】
上記のように、側部の保護領域5の寸法を減じる有効な方法として、特許文献1に記載のものがある。特許文献1では、内部電極パターンが印刷されたセラミックグリーンシートを複数枚積層・圧着してマザーブロックを作製し、マザーブロックを所定のサイズに切断することによって、切断面である側面に内部電極が露出した状態にある、複数のグリーンチップを取り出した後、これら複数のグリーンチップをホルダによって保持させ、この状態で、各グリーンチップの側面に側面用セラミックグリーンシートを貼り付けることによって側部の保護領域を形成することが記載されている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術には次のような解決されるべき課題がある。
【0007】
特許文献1には、マザーブロックを切断して、複数のグリーンチップを得た後、これら複数のグリーンチップをホルダによって保持した状態とするための具体的な方法が記載されていない。
【0008】
マザーブロックを切断して得られたグリーンチップにおいては、その端面には、互いに同極となる複数の内部電極が露出するが、その側面には、すべての内部電極、すなわち互いに異極となる複数の内部電極が露出する。そのため、グリーンチップの取扱いに際して、その側面に対しては細心の注意を払わなければ、互いに異極の内部電極同士が不所望にも短絡してしまうことがある。特に、積層用のセラミックグリーンシートが薄くなればなるほど、互いに異極の内部電極間の距離が縮まり、短絡の危険性が高まる。短絡が生じると、たとえば積層セラミックコンデンサの場合には、ショート不良を起こすことになる。
【0009】
したがって、グリーンチップの側面には、なるべく触れないことが重要である。しかしながら、特許文献1には、上述したような課題については何ら示唆されておらず、よって、マザーブロックを切断して得られたグリーンチップの良好な取扱い方法に関して、何らの提案もなされていない。
【0010】
なお、同様の課題は、積層セラミックコンデンサを製造する場合に限らず、積層セラミックコンデンサ以外の積層セラミック電子部品を製造する場合においても遭遇し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平6−349669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、この発明の目的は、上述したような課題を解決し得る積層セラミック電子部品の製造方法を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、第1の局面では、積層された複数のセラミックグリーンシートと、セラミックグリーンシート間の複数の界面に沿ってそれぞれ配置された内部電極パターンとを含む、マザーブロックを作製する工程と、マザーブロックを互いに直交する第1方向の切断線および第2方向の切断線に沿って切断することによって、生の状態にある複数のセラミック層と複数の内部電極とをもって構成された積層構造を有し、かつ第1方向の切断線に沿う切断によって現れた切断側面に内部電極が露出した状態にある、複数のグリーンチップを得る、切断工程と、上記切断側面に側面用セラミックグリーンシートを貼付して、生のセラミック保護層を形成することによって、生の部品本体を得る、貼付工程と、生の部品本体を焼成する工程とを備えている。
【0014】
上記切断工程を経て得られた複数のグリーンチップは、行および列方向に配列された状態にある。
【0015】
この発明の第1の局面に係る製造方法は、前述した技術的課題を解決するため、上記貼付工程の前に、行および列方向に配列された状態の複数のグリーンチップの互いの間隔を広げた状態で、複数のグリーンチップを転動させ、それによって、複数のグリーンチップの各々の切断側面を揃って開放面とする、転動工程が実施され、貼付工程は、開放面とされたグリーンチップの切断側面に側面用セラミックグリーンシートを貼付する工程を含むことを特徴としている。
【0016】
上述した転動工程において、行および列方向に配列された状態の複数のグリーンチップの互いの間隔を広げた状態とするため、行および列方向に配列された状態の複数のグリーンチップを、拡張性のある粘着シート上に貼り付け、その状態で、粘着シートを拡張する工程が実施されることが好ましい。
【0017】
この発明に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、第2の局面では、積層された複数のセラミックグリーンシートと、セラミックグリーンシート間の複数の界面に沿ってそれぞれ配置された内部電極パターンとを含む、マザーブロックを作製する工程と、マザーブロックを第1方向の切断線に沿って切断することによって、生の状態にある複数のセラミック層と複数の内部電極とをもって構成された積層構造を有し、かつ第1方向の切断線に沿う切断によって現れた切断側面に内部電極が露出した状態にある、複数の棒状のグリーンブロック体を得る、第1切断工程と、切断側面に側面用セラミックグリーンシートを貼付して、生のセラミック保護層を形成する、貼付工程と、生のセラミック保護層が形成された棒状のグリーンブロック体を、第1方向に直交する第2方向の切断線に沿って切断することによって、複数の生の部品本体を得る、第2切断工程と、生の部品本体を焼成する工程とを備え、第1切断工程を経て得られた複数の棒状のグリーンブロック体は、所定方向に配列された状態にあり、貼付工程の前に、所定方向に配列された状態の複数の棒状のグリーンブロック体の互いの間隔を広げた状態で、複数の棒状のグリーンブロック体を転動させ、それによって、複数の棒状のグリーンブロック体の各々の切断側面を揃って開放面とする、転動工程が実施され、貼付工程は、開放面とされた棒状のグリーンブロック体の切断側面に側面用セラミックグリーンシートを貼付する工程を含むことを特徴としている。
【0018】
この発明の第2の局面においても、好ましくは、上記転動工程において、所定方向に配列された状態の複数の棒状のグリーンブロック体の互いの間隔を広げた状態とするため、所定方向に配列された状態の複数の棒状のグリーンブロック体を、拡張性のある粘着シート上に貼り付け、その状態で、粘着シートを拡張する工程が実施される。
【0019】
この発明において、側面用セラミックグリーンシートとグリーンチップまたは棒状のグリーンブロック体の切断側面との間に接着剤を付与する工程をさらに備えることが好ましい。
【0020】
また、上記貼付工程では、貼付用弾性体上に側面用セラミックグリーンシートを置き、貼付用弾性体が弾性変形する程度の力で、グリーンチップまたは棒状のグリーンブロック体の切断側面を側面用セラミックグリーンシートに押し付け、次いで、側面用セラミックグリーンシートを切断側面に付着させた状態で、グリーンチップまたは棒状のグリーンブロック体を貼付用弾性体から離隔するようにすることが好ましい。
【0021】
上記の好ましい実施態様において、側面用セラミックグリーンシートは、グリーンチップまたは棒状のグリーンブロック体の切断側面より大きい寸法を有し、グリーンチップまたは棒状のグリーンブロック体の切断側面を側面用セラミックグリーンシートに押し付けるとき、側面用セラミックグリーンシートをグリーンチップまたは棒状のグリーンブロック体の切断側面の周縁によって打ち抜くようにすることがより好ましい。
【0022】
また、この発明において、側面用セラミックグリーンシートがグリーンチップまたは棒状のグリーンブロック体の切断側面より大きい寸法を有している場合には、前述した貼付工程の後、側面用セラミックグリーンシートの、グリーンチップまたは棒状のグリーンブロック体の切断側面に貼付された部分を除く不要部分を除去する工程がさらに実施される。
【0023】
この発明は、また、グリーンチップまたは棒状のグリーンブロック体の切断側面に側面用セラミックグリーンシートを貼り付けて、生のセラミック保護層を形成した後、グリーンチップまたは棒状のグリーンブロック体と生のセラミック保護層との接着性を向上するため、互いを200℃以下の温度で加熱圧着する工程をさらに備えることが好ましい。
【0024】
この発明に係る積層セラミック電子部品の製造方法において、さらに、特定の内部電極と電気的に接続されるように、部品本体の所定の面上に外部電極を形成する工程が実施されてもよい。
【0025】
この発明に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、第3の局面では、積層された複数のセラミックグリーンシートと、セラミックグリーンシート間の複数の界面に沿ってそれぞれ配置された内部電極パターンとを含む、マザーブロックを作製する工程と、マザーブロックを互いに直交する第1方向の切断線および第2方向の切断線に沿って切断することによって、生の状態にある複数のセラミック層と複数の内部電極とをもって構成された積層構造を有し、かつ第1方向の切断線に沿う切断によって現れた切断側面に内部電極が露出した状態にある、複数のグリーンチップを得る、切断工程とを備え、切断工程を経て得られた複数のグリーンチップは、行および列方向に配列された状態にあり、切断工程の後、行および列方向に配列された状態の複数のグリーンチップの互いの間隔を広げた状態で、複数のグリーンチップを転動させ、それによって、複数のグリーンチップの各々の切断側面を揃って開放面とする、転動工程をさらに備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、マザーブロックを切断して得られた、行および列方向に配列された状態の複数のグリーンチップまたは所定方向に配列された複数の棒状のグリーンブロック体を取り扱うに際して、配列された状態の複数のグリーンチップまたは棒状のグリーンブロック体の互いの間隔を広げた状態で、複数のグリーンチップまたは棒状のグリーンブロック体を転動させ、それによって、複数のグリーンチップまたは棒状のグリーンブロック体の各々の切断側面を揃って開放面とする、転動工程を実施するようにしているので、グリーンチップまたは棒状のグリーンブロック体の切断側面に対して不所望な外力が及ぼされる可能性を低減することができる。よって、積層用セラミックグリーンシートが薄くなり、それによって、互いに異極の内部電極間の距離が縮まったとしても、短絡を生じにくくすることができる。
【0027】
また、この発明の第1の局面によれば、開放面とされたグリーンチップの切断側面に側面用セラミックグリーンシートを貼付して、生のセラミック保護層を形成する、貼付工程が、行および列方向に配列された状態であって、各々の切断側面が揃って開放面となる方向に向けられた複数のグリーンチップに対して一挙に実施されるので、第2の局面での棒状のグリーンブロック体に対して貼付工程を実施する場合と同様、貼付工程を能率的に進めることができるとともに、グリーンチップ間での生のセラミック保護層の厚みのばらつきを生じにくくすることができる。
【0028】
この発明において、側面用セラミックグリーンシートとグリーンチップまたは棒状のグリーンブロック体の切断側面との間に接着剤を付与するようにすれば、側面用セラミックグリーンシートとグリーンチップまたは棒状のグリーンブロック体の切断側面との間の接着性を高めることができる。したがって、接着性を高めるための加熱工程をたとえ実施しても、その加熱温度をそれほど高くする必要がない。したがって、加熱による側面用セラミックグリーンシートおよびグリーンチップまたは棒状のグリーンブロック体の不所望な変形を生じにくくすることができる。
【0029】
この発明において、グリーンチップまたは棒状のグリーンブロック体の切断側面に側面用セラミックグリーンシートを貼り付けて、生のセラミック保護層を形成した後、互いを200℃以下の温度で加熱圧着するようにすれば、加熱によるグリーンチップまたは棒状のグリーンブロック体の不所望な変形を抑制しながら、グリーンチップまたは棒状のグリーンブロック体と生のセラミック保護層との接着性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の第1の実施形態を説明するためのもので、この発明に係る製造方法によって得られる積層セラミック電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサ11の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示した積層セラミックコンデンサ11に備える部品本体12の外観を示す斜視図である。
【図3】図2に示した部品本体12を得るために用意されるグリーンチップ19の外観を示す斜視図である。
【図4】図3に示したグリーンチップ19を得るために用意される内部電極パターン32が形成された積層用セラミックグリーンシート31を示す平面図である。
【図5】図4に示した積層用セラミックグリーンシート31を所定間隔ずらしながら積層する工程を説明するための平面図であり、図4より拡大して示している。
【図6】(1)は、図5を用いて説明した積層工程によって得られたマザーブロック35を切断して得られた複数のグリーンチップ19を示す平面図であり、(2)は、(1)において行および列方向に配列された状態の複数のグリーンチップ19の互いの間隔を広げた状態を示す平面図である。
【図7】図6(2)に示した状態にある複数のグリーンチップ19を転動させる転動工程を説明するためのもので、グリーンチップ19の端面方向から示した図である。
【図8】図7に示した転動工程の結果、開放面とされたグリーンチップ19の第1の切断側面20に接着剤43を塗布する工程を説明するためのもので、グリーンチップ19の主面方向から示した図である。
【図9】図8に示した塗布プレート44の平面図である。
【図10】グリーンチップ19の第1の切断側面20に側面用セラミックグリーンシート47を貼付して、生の第1のセラミック保護層22を形成する、貼付工程を説明するためのもので、グリーンチップ19の端面方向から示した図である。
【図11】図10(3)に示した側面用セラミックグリーンシート47の不要部分47aをロール剥離によって除去している状態を、グリーンチップ19の端面方向から示した図である。
【図12】第1の切断側面20に生の第1のセラミック保護層22を形成した後、グリーンチップ19の、セラミック保護層22側を圧着用弾性体52に押し込む圧着工程を、グリーンチップ19の端面方向から示した図である。
【図13】図12に示した圧着工程の後、複数のグリーンチップ19を再び転動させる転動工程を説明するためのもので、グリーンチップ19の端面方向から示した図である。
【図14】図13に示した転動工程を経て得られた状態であって、複数のグリーンチップ19が第1のセラミック保護層22を介して粘着シート38に粘着しながら支持台40によって保持された状態を、グリーンチップ19の端面方向から示した図である。
【図15】図14に示した状態にて、接着剤塗布工程、側面用セラミックグリーンシート貼付工程および圧着工程を再び実施した後に得られた、グリーンチップ19の第1および第2の切断側面20および21の各々に生の第1および第2のセラミック保護層22および23が形成された状態にある生の部品本体12を、その端面方向から示した図である。
【図16】図15に示した粘着シート38から生の部品本体12を回収する工程を、生の部品本体12の端面方向から示す図である。
【図17】この発明の第2の実施形態を説明するためのもので、第1の変形例としての塗布プレート44aを示す平面図である。
【図18】この発明の第3の実施形態を説明するためのもので、第2の変形例としての塗布プレート44bを示す平面図である。
【図19】この発明の第4の実施形態を説明するためのもので、グリーンチップ19aの外観を示す斜視図である。
【図20】図19に示したグリーンチップ19aを得るために用意される内部電極パターン32aが形成された積層用セラミックグリーンシート31aを示す平面図である。
【図21】従来の積層セラミックコンデンサの一般的な製造方法を説明するためのもので、第1の内部電極1が形成された第1のセラミックグリーンシート3と第2の内部電極2が形成された第2のセラミックグリーンシート4とを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、この発明を実施するための形態を説明するにあたり、積層セラミック電子部品として、積層セラミックコンデンサを例示する。
【0032】
図1ないし図16は、この発明の第1の実施形態を説明するためのものである。
【0033】
まず、図1に示すように、積層セラミックコンデンサ11は、部品本体12を備えている。部品本体12は、図2に単独で示されている。部品本体12は、互いに対向する1対の主面13および14と、互いに対向する1対の側面15および16と、互いに対向する1対の端面17および18とを有する、直方体状またはほぼ直方体状をなしている。
【0034】
部品本体12の詳細を説明するにあたり、部品本体12を得るために用意されるグリーンチップ19の外観を示す図3をも参照する。なお、部品本体12は、後の説明から明らかになるように、図3に示したグリーンチップ19の互いに対向する1対の側面(以下、「切断側面」という。)20および21上に生のセラミック保護層22および23をそれぞれ形成したものを焼成して得られたものに相当する。以後の説明において、焼成後の部品本体12におけるグリーンチップ19に由来する部分を積層部24と呼ぶことにする。
【0035】
部品本体12における積層部24は、主面13および14の方向に延びかつ主面13および14に直交する方向に積層された複数のセラミック層25と、セラミック層25間の界面に沿って形成された複数対の第1および第2の内部電極26および27とをもって構成された積層構造を有している。また、部品本体12は、その側面15および16をそれぞれ与えるように積層部24の切断側面20および21上に配置される1対のセラミック保護層22および23を有している。セラミック保護層22および23は、好ましくは、互いに同じ厚みとされる。
【0036】
なお、図1等において、積層部24とセラミック保護層22および23の各々との境界が明瞭に図示されているが、境界を明瞭に図示したのは説明の便宜のためであり、実際には、このような境界は明瞭に現れるものではない。
【0037】
第1の内部電極26と第2の内部電極27とはセラミック層25を介して互いに対向する。この対向によって、電気的特性が発現する。すなわち、この積層セラミックコンデンサ11の場合には、静電容量が形成される。
【0038】
第1の内部電極26は、部品本体12の第1の端面17に露出する露出端を持ち、第2の内部電極27は、部品本体12の第2の端面18に露出する露出端を持っている。しかし、前述したセラミック保護層22および23が配置されるため、内部電極26および27は、部品本体12の側面15および16には露出しない。
【0039】
積層セラミックコンデンサ11は、さらに、内部電極26および27の各々の露出端にそれぞれ電気的に接続されるように、部品本体12の少なくとも1対の端面17および18上にそれぞれ形成された、外部電極28および29を備えている。
【0040】
内部電極26および27のための導電材料としては、たとえば、Ni、Cu、Ag、Pd、Ag−Pd合金、Auなどを用いることができる。
【0041】
セラミック層25ならびにセラミック保護層22および23を構成するセラミック材料としては、たとえば、BaTiO、CaTiO、SrTiO、CaZrOなどを主成分とする誘電体セラミックを用いることができる。
【0042】
セラミック保護層22および23を構成するセラミック材料は、セラミック層25を構成するセラミック材料と少なくとも主成分が同じであることが好ましい。この場合、最も好ましくは、同じ組成のセラミック材料が、セラミック層25とセラミック保護層22および23との双方に用いられる。
【0043】
なお、この発明は、積層セラミックコンデンサ以外の積層セラミック電子部品にも適用することができる。積層セラミック電子部品が、たとえば、圧電部品の場合には、PZT系セラミックなどの圧電体セラミック、サーミスタの場合には、スピネル系セラミックなどの半導体セラミックが用いられる。
【0044】
外部電極28および29は、前述したように、部品本体12の少なくとも1対の端面17および18上にそれぞれ形成されるが、この実施形態では、主面13および14ならびに側面15および16の各一部にまで回り込んだ部分を有している。
【0045】
外部電極28および29は、図示しないが、下地層と下地層上に形成されるめっき層とで構成されることが好ましい。下地層のための導電材料としては、たとえば、Cu、Ni、Ag、Pd、Ag−Pd合金、Auなどを用いることができる。下地層は、導電性ペーストを未焼成の部品本体12上に塗布して部品本体12と同時焼成するコファイア法を適用することによって形成されても、導電性ペーストを焼成後の部品本体12上に塗布して焼き付けるポストファイア法を適用することによって形成されてもよい。あるいは、下地層は、直接めっきにより形成されてもよく、熱硬化性樹脂を含む導電性樹脂を硬化させることにより形成されてもよい。
【0046】
下地層上に形成されるめっき層は、好ましくは、Niめっきおよびその上のSnめっきの2層構造とされる。
【0047】
次に、図4ないし図16をさらに参照しながら、上述した積層セラミックコンデンサ11の製造方法について説明する。
【0048】
まず、図4にその一部を示すように、セラミック層25となるべき積層用セラミックグリーンシート31が用意される。より詳細には、セラミック粉末、バインダおよび溶剤を含むセラミックスラリーが用意され、このセラミックスラリーが、図示しないキャリアフィルム上で、ダイコータ、グラビアコータ、マイクログラビアコータなどを用いてシート状に成形されることにより、積層用セラミックグリーンシート31が得られる。積層用セラミックグリーンシート31の厚みは、好ましくは、3μm以下とされる。
【0049】
次に、同じく図4に示すように、積層用セラミックグリーンシート31上に、所定のパターンをもって導電性ペーストが印刷される。これによって、内部電極26および27の各々となるべき内部電極パターン32が形成された積層用セラミックグリーンシート31が得られる。より具体的には、積層用セラミックグリーンシート31上に、帯状の内部電極パターン32が複数列形成される。内部電極パターン32の厚みは、好ましくは、1.5μm以下とされる。
【0050】
図5において、帯状の内部電極パターン32が延びる長手方向(図5による左右方向)の切断線33およびこれに対して直交する幅方向(図5による上下方向)の切断線34の各一部が図示されている。帯状の内部電極パターン32は、2つ分の内部電極26および27が各々の引出し部同士で連結されたものが、長手方向に沿って連なった形状を有している。なお、図5は図4より拡大されている。
【0051】
次に、上述のように内部電極パターン32が形成された積層用セラミックグリーンシート31を、図5(A)と(B)とに示すように、幅方向に沿って所定間隔、すなわち内部電極パターン32の幅方向寸法の半分ずつ、ずらしながら所定枚数積層し、その上下に導電性ペーストが印刷されていない外層となる積層用セラミックグリーンシートを所定枚数積層することが行なわれる。切断線33および34が図5(A)および(B)に共通して図示されていることから、図5(A)と(B)とを対照すれば、積層用セラミックグリーンシート31の積層時のずらし方が容易に理解される。
【0052】
上述した積層工程の結果、図6(1)に示したマザーブロック35が得られる。図6において、マザーブロック35の内部に位置する最も上の内部電極パターン32ないしは内部電極26が破線で示されている。
【0053】
次に、マザーブロック35は、静水圧プレスなどの手段により積層方向にプレスされる。
【0054】
次に、マザーブロック35は、互いに直交する第1方向の切断線34および第2方向の切断線33に沿って切断され、図6(1)に示すように、行および列方向に配列された状態の複数のグリーンチップ19が得られる。この切断には、ダイシング、押切り、レーザカットなどが適用される。なお、図6(1)等の図面では、図面作成上の問題から、1個のマザーブロック35は、そこから6個のグリーンチップ19が取り出されるような寸法とされたが、実際には、より多数のグリーンチップ19が取り出される寸法とされる。
【0055】
各グリーンチップ19は、図3に単独で示すように、生の状態にある複数のセラミック層25と複数の内部電極26および27とをもって構成された積層構造を有している。グリーンチップ19の切断側面20および21は、第1方向の切断線34に沿う切断によって現れた面であり、端面36および37は第2方向の切断線33の切断によって現れた面である。切断側面20および21には、内部電極26および27のすべてが露出している。また、一方の端面36には、第1の内部電極26のみが露出し、他方の端面37には、第2の内部電極27のみが露出している。
【0056】
図6(1)に示すように、行および列方向に配列された状態の複数のグリーンチップ19は、拡張性のある粘着シート38上に貼り付けられる。そして、粘着シート38は、図示しないエキスパンド装置によって、矢印39で示すように拡張される。これによって、図6(2)に示すように、行および列方向に配列された状態の複数のグリーンチップ19は、互いの間隔を広げた状態とされる。
【0057】
このとき、後で実施される転動工程において、複数のグリーンチップ19同士がぶつからず、円滑に転動させることを可能とする程度に、粘着シート38が拡張される。グリーンチップ19の寸法にもよるが、一例として、粘着シート38は、元の寸法の160%程度拡張される。
【0058】
上述の粘着シート38としては、たとえば、塩化ビニル樹脂からなり、粘着層がアクリル系粘着剤によって与えられるものが用いられる。この粘着シート38は、一旦拡張されると、完全に元の形態には戻らない可塑性を有している。したがって、拡張された後の粘着シート38のハンドリングが容易である。たとえば、マザーブロック35の切断によって複数のグリーンチップ19を得た後、グリーンチップ19に含まれるバインダによって、隣り合うグリーンチップ19の切断側面20および21同士あるいは端面36および37同士が再接着する可能性があるが、粘着シート38は、一旦拡張されると、完全に元の形態には戻らないため、切断側面20および21同士あるいは端面36および37同士が接触することがなく、よって、再接着するような事態を避けることができる。
【0059】
次に、複数のグリーンチップ19を転動させ、それによって、複数のグリーンチップ19の各々の第1の切断側面20を揃って開放面とする、転動工程が実施される。
【0060】
そのため、図7(1)に示すように、複数のグリーンチップ19が、粘着シート38とともに、支持台40上に置かれ、他方、転動作用板41がグリーンチップ19に対して上から作用し得る状態に置かれる。支持台40および転動作用板41は、好ましくは、シリコーンゴムから構成される。
【0061】
次に、支持台40が転動作用板41に対して矢印42方向へ移動される。これによって、図7(2)に示すように、複数のグリーンチップ19が一挙に90度回転し、その第1の切断側面20を上方へ向けた状態とされる。この状態で転動作用板41を除去すれば、第1の切断側面20が開放面となる。
【0062】
なお、上記のグリーンチップ19の転動をより円滑に生じさせるようにするため、粘着シート38から粘着性ゴムシート上へグリーンチップ19を移し替えてから転動操作を行なってもよい。この場合、粘着性ゴムシートは、弾性率が50MPa以下で厚さが5mm以下であることが好ましい。
【0063】
次に、必要に応じて、図8に示すように、開放面とされたグリーンチップ19の第1の切断側面20に接着剤43を塗布する、接着剤塗布工程が実施される。接着剤43は、単一成分のものでも、溶剤中に樹脂を溶解したものでもよく、さらには、その中にセラミック粒子が分散したペーストであってもよい。
【0064】
接着剤43の塗布のため、図8および図9に示す塗布プレート44が用意される。塗布プレート44は、グリーンチップ19の切断側面20に当接する塗布面45を有し、塗布面には、接着剤43を保持するための凹部46が形成され、凹部46には、接着剤43が充填されている。この実施形態では、凹部46は、図9によく示されているように、複数の溝によって与えられる。
【0065】
接着剤塗布工程を実施するにあたり、図8に示すように、グリーンチップ19の切断側面20に、塗布プレート44の塗布面45を当接させるとともに、凹部46に充填された接着剤43を接触させる工程と、グリーンチップ19を塗布プレート44から離隔させながら、凹部46に充填された接着剤43をグリーンチップ19の切断側面20に転移させる工程とが実施される。この場合、毛細管現象等も働いて、グリーンチップ19の切断側面20全面に接着剤43が塗布され、他方、切断側面20以外の面には接着剤43は付与されない。接着剤43の塗布厚みは、凹部46の幅、深さもしくは配列ピッチ、または接着剤43の粘度などによって調整することができる。
【0066】
次に、図10に示すように、開放面とされたグリーンチップ19の第1の切断側面20に側面用セラミックグリーンシート47を貼付して、生の第1のセラミック保護層22を形成する、貼付工程が実施される。側面用セラミックグリーンシート47についても、前述した積層用セラミックグリーンシート31の場合と同様、セラミック粉末、バインダおよび溶剤を含むセラミックスラリーが用意され、このセラミックスラリーが、図示しないキャリアフィルム上で、ダイコータ、グラビアコータ、マイクログラビアコータなどを用いてシート状に成形されることによって得られる。
【0067】
より詳細には、まず、図10(1)に示すように、グリーンチップ19の第1の切断側面20に対向する状態に、側面用セラミックグリーンシート47が配置される。側面用セラミックグリーンシート47は貼付用弾性体48上に置かれ、貼付用弾性体48は固定テーブル49上に置かれる。この段階では、側面用セラミックグリーンシート47はキャリアフィルムで裏打ちされていないことが好ましい。側面用セラミックグリーンシート47は、グリーンチップ19の第1の切断側面20より大きい寸法を有している。
【0068】
なお、前述した接着剤塗布は、グリーンチップ19に対して実施されるのではなく、たとえば噴霧法を適用して、側面用セラミックグリーンシート47に対して実施されてもよい。もちろん、グリーンチップ19と側面用セラミックグリーンシート47の双方に接着剤が塗布されてもよい。
【0069】
次に、グリーンチップ19が、側面用セラミックグリーンシート47に対して近接され、図10(2)に示すように、貼付用弾性体48が弾性変形する程度の力で、グリーンチップ19の第1の切断側面20が側面用セラミックグリーンシート47に押し付けられる。このとき、好ましくは、側面用セラミックグリーンシート47は、グリーンチップ19の切断側面20の周縁からのせん断力を作用させることによって、切断側面20の寸法分だけ打ち抜かれる。この打抜き工程において、特に加熱は必要ではないが、加熱される場合には、側面用セラミックグリーンシート47が打ち抜かれずにつぶれてしまうことを防止するため、側面用セラミックグリーンシート47が軟化する転移点以下の温度に設定される。
【0070】
上述のせん断力は、グリーンチップ19が貼付用弾性体48へ押し込まれることによって発生する。このとき、グリーンチップ19の稜線部は、図6に示した切断工程を終えたままの状態、すなわち、バレル研磨等による面取りがされていない状態であるので、鋭利に尖っており、そのため、せん断力を側面用セラミックグリーンシート47の打ち抜き部分に集中させることができる。したがって、側面用セラミックグリーンシート47の打ち抜きを円滑に行なうことができる。
【0071】
前述したように、側面用セラミックグリーンシート47がキャリアフィルムによって裏打ちされていない方が、その打ち抜きを容易に行なうことができる。この場合、側面用セラミックグリーンシート47の厚みは10〜50μmであることが好ましい。厚みが10μm未満であると、キャリアフィルムによって裏打ちされていないため、軟弱に過ぎ、そのハンドリングが困難になり、他方、厚みが50μmを超えると、打ち抜きが困難になるためである。
【0072】
上述のような打ち抜きをより円滑なものとするため、側面用セラミックグリーンシート47の破断強度は1MPa以上かつ50MPa以下、破断歪みは50%以下とすることが好ましい。また、グリーンチップ19の貼付用弾性体48への押し込み量は、グリーンチップ19の厚み方向(図10の左右方向)での隣り合うグリーンチップ19間の間隔の半分以下とすることが好ましい。この押し込み量が多すぎると、グリーンチップ19にダメージを与えることがある。
【0073】
また、貼付用弾性体48の弾性率は50MPa以下であり、厚さは5mm以下であることが好ましい。貼付用弾性体48に対する側面用セラミックグリーンシート47の弾性率が低いほど、グリーンチップ19の切断側面20の周縁部分にせん断力がかかりやすく、そのため、打ち抜いた側面用セラミックグリーンシート47の欠けやバリ、あるいはグリーンチップ19の切断側面20の周縁部分でのクラックをより生じにくくすることができる。
【0074】
グリーンチップ19で側面用セラミックグリーンシート47を打ち抜く際、1回のみの押し込みではなく、側面用セラミックグリーンシート47の弾性変形域での押し込みを複数回繰り返してもよい。このような方法により、側面用セラミックグリーンシート47の塑性変形を抑制することができ、したがって、打ち抜き後の側面用セラミックグリーンシート47の不要部分47aによるグリーンチップ19の締め付け力を低減することができる。この締め付け力の低減は、この後に実施される、図10(3)に示したグリーンチップ19を貼付用弾性体48から離隔する工程において、側面用セラミックグリーンシート47の不要部分47aの除去を容易にする。
【0075】
なお、側面用セラミックグリーンシート47の貼付工程において、この側面用セラミックグリーンシート47の可塑性が増大するためにもたらされる不所望な変形が生じない程度に加熱して、側面用セラミックグリーンシート47とグリーンチップ19との接着性を向上させるようにしてもよい。
【0076】
側面用セラミックグリーンシート47、またはそのグリーンチップ19に貼付されるセラミック保護層22となる部分以外の不要部分47aの取り扱いを容易にするために、側面用セラミックグリーンシート47をキャリアフィルムによって裏打ちされた状態で取り扱ってもよい。
【0077】
次に、図10(3)に示すように、側面用セラミックグリーンシート47のセラミック保護層22となった部分を第1の切断側面20に付着させた状態で、グリーンチップ19が貼付用弾性体48から離隔される。このとき、打ち抜き後の側面用セラミックグリーンシート47の不要部分47aは、貼付用弾性体48側に残される。このように、不要部分47aを貼付用弾性体48側に残すため、不要部分47aは貼付用弾性体48に固定されなければならないが、この固定は、不要部分47a全体での粘着による固定であっても、グリーンチップ19の配列領域の周囲部分のみでの固定でも、個々のグリーンチップ19の各々の周囲部分での固定でもよい。
【0078】
また、図10(3)に示した側面用セラミックグリーンシート47の不要部分47aの除去を容易に進めるため、図11に示すようなロール剥離を適用してもよい。すなわち、不要部分47aは、その端部をロール状に巻き込みながら、グリーンチップ19から除去される。
【0079】
以上のようにして、粘着シート38を介して支持台40によって支持された複数のグリーンチップ19が、その第1の切断側面20に生の第1のセラミック保護層22を形成した状態とされる。
【0080】
なお、側面用セラミックグリーンシート47は、グリーンチップ19の切断側面20より大きい寸法を有するのではなく、切断側面20と同じ寸法を有するように予めカットしておいてから貼付工程を実施するようにしてもよい。
【0081】
次に、図12に示すように、固定テーブル51に保持された圧着用弾性体52が用意される。上述のように、第1の切断側面20に生の第1のセラミック保護層22を形成した後、グリーンチップ19と生のセラミック保護層22との接着性を向上するため、グリーンチップ19の、セラミック保護層22側を圧着用弾性体52に押し込む、圧着工程が実施される。このとき、グリーンチップ19および側面用セラミックグリーンシート47に不所望な変形や割れなどが生じないように、200℃以下の温度、好ましくは側面用セラミックグリーンシート47が軟化する転移点以下の温度で加熱される。圧着用弾性体52の弾性率は、側面用セラミックグリーンシート47より硬く、グリーンチップ19より柔らかい弾性率、たとえば50MPa以下であり、厚さは5mm以下であることが好ましい。
【0082】
次に、図7を参照して説明した工程と同様の転動工程が実施される。すなわち、複数のグリーンチップ19を転動させ、それによって、複数のグリーンチップ19の各々の第2の切断側面21を揃って開放面とする、転動工程が実施される。
【0083】
そのため、図13(1)に示すように、粘着シート38を介して支持台40によって支持された複数のグリーンチップ19に対して、転動作用板41が上から作用し得る状態に置かれる。
【0084】
次に、支持台40が転動作用板41に対して矢印53方向へ移動される。これによって、複数のグリーンチップ19が一挙に90度回転することを2回繰り返し、図13(2)に示すように、複数のグリーンチップ19が各々の第2の切断側面21を上方へ向けた状態とされる。この状態で転動作用板41を除去すれば、第2の切断側面21が開放面となる。
【0085】
図14には、図13を参照して説明した工程を経て得られた状態が示されている。すなわち、複数のグリーンチップ19が第1のセラミック保護層22を介して粘着シート38に粘着しながら支持台40によって保持された状態であって、グリーンチップ19の第2の切断側面21を下方に向けた状態が示されている。
【0086】
図14に示した状態にて、前述した接着剤塗布工程、側面用セラミックグリーンシート貼付工程および圧着工程が、グリーンチップ19の第2の切断側面21に対して実施される。それによって、図15に示すように、複数のグリーンチップ19が粘着シート38を介して支持台40によって支持されながら、2回の貼付工程の結果、グリーンチップ19の第1および第2の切断側面20および21の各々に生の第1および第2のセラミック保護層22および23が形成された状態にある生の部品本体12が得られる。
【0087】
なお、圧着工程については、第2のセラミック保護層23を形成した後にのみ実施し、第1および第2のセラミック保護層22および23の双方について一度に加熱圧着を施すようにしてもよい。
【0088】
次に、複数の生の部品本体12が粘着シート38とともに支持台40から外された後、図16に示すように、生の部品本体12から粘着シート38を剥離することによって、生の部品本体12が回収される。この工程では、生の部品本体12が粘着シート38から垂れ下がった状態としながら、ナイフエッジ54を上方から粘着シート38に押し当てることにより、粘着シート38を下方へ突出するように屈曲させることが行なわれる。生の部品本体12は、粘着シート38が屈曲されることにより、粘着シート38から剥がれ、下方へ落下し、回収される。
【0089】
次に、生の部品本体12が焼成される。焼成温度は、積層用セラミックグリーンシート31ならびにセラミック保護層22および23に含まれるセラミック材料や内部電極26および27に含まれる金属材料にもよるが、たとえば900〜1300℃の範囲に選ばれる。前述した側面用セラミックグリーンシート47は、焼成前に厚みがたとえば25〜40μmであれば、焼成後において、その厚みが20〜30μm程度に収縮する。
【0090】
次に、焼成後の部品本体12の両端面17および18に導電性ペーストを塗布し、焼き付け、さらに、必要に応じて、めっきが施されることによって、外部電極28および29が形成される。なお、導電性ペーストの塗布は、生の部品本体12に対して実施され、生の部品本体12の焼成時に、導電性ペーストの焼付けを同時に行なうようにしてもよい。
【0091】
このようにして、図1に示した積層セラミックコンデンサ11が完成される。
【0092】
以上、この発明を特定的な実施形態に関連して説明したが、この発明の範囲内において、その他種々の変形例が可能である。
【0093】
たとえば、図8および図9に示した塗布プレート44については、以下のような変形例も可能である。図17および図18は、それぞれ、塗布プレートの第1および第2の変形例を示すものである。図17および図18において、図8および図9に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0094】
図17に示した塗布プレート44aは、グリーンチップの切断側面に当接する塗布面45を有し、この塗布面45には、平面形状がたとえば円形の複数の凹部46が形成されている。複数の凹部46は、塗布面45においてほぼ等間隔に分布している。凹部46には、接着剤43が充填されている。
【0095】
図17に示した塗布プレート44bは、グリーンチップの切断側面に当接する塗布面45を有するが、この塗布面45は、平面形状がたとえば円形の複数の凸部の上面によって与えられる。複数の凸部は、塗布プレート44bの面方向に分布しており、凸部以外の部分が凹部46とされる。凹部46には、接着剤43が充填されている。
【0096】
また、内部電極および内部電極パターンは、たとえば、以下のように変更することもできる。図19は、図3に対応する図であって、グリーンチップ19aの外観を示す斜視図であり、図20は、図5に対応する図であって、図19に示したグリーンチップ19aを得るために用意される内部電極パターン32aが形成された積層用セラミックグリーンシート31aを示す平面図である。
【0097】
グリーンチップ19aは、図19に示すように、生の状態にある複数のセラミック層25aと複数の内部電極26aおよび27aとをもって構成された積層構造を有している。第1の内部電極26aと第2の内部電極27aとは、積層方向において交互に配置される。
【0098】
他方、図20に示すように、積層用セラミックグリーンシート31a上に形成される内部電極パターン32aは、網状をなしており、内部電極26aの主要部としての対向部となるべき部分と内部電極27aの主要部としての対向部となるべき部分とが上下方向に交互に連結されながら連なった形態を有している。
【0099】
図20において、第1方向、すなわち左右方向の切断線34aおよびこれに対して直交する第2方向、すなわち上下方向の切断線33aが図示されている。前述したグリーンチップ19aにおいて、切断側面20aおよび21aは、第1方向の切断線34aに沿う切断によって現れた面であり、端面36aおよび37aは第2方向の切断線33aの切断によって現れた面である。切断側面20aおよび21aには、内部電極26aおよび27aのすべてが露出している。また、一方の端面36aには、第1の内部電極26aのみが露出し、他方の端面37aには、第2の内部電極27aのみが露出している。
【0100】
図20に示した網状の内部電極パターン62aには、内部電極パターンが形成されない上下方向に長手の八角形状の穴あき部65が千鳥状に配置されている。上下方向に隣接する穴あき部65間には、内部電極26aおよび27aの引出し部となるべき部分が位置している。
【0101】
積層用セラミックグリーンシート31aを積層するにあたっては、図20(A)と同(B)とに示すように、穴あき部65の左右方向の間隔分ずつ、内部電極パターン62aを左右方向にずらすように、積層用セラミックグリーンシート31aがずらされながら積層される。
【0102】
上述の積層によって得られたマザーブロックは、図20に示した切断線33aおよび34aに沿って切断され、図19に示すようなグリーンチップ19aが得られる。第2方向の切断線33aの各々は、穴あき部65を左右方向において2等分するように位置しており、第1方向の切断線34aは、その2本が1つの穴あき部65を横切るように位置している。
【0103】
図19および図20を参照して説明した実施形態では、内部電極26aおよび27aの各々の引出し部は、各々の対向部より狭い幅を有し、かつ一定の幅をもって延びている。また、対向部の、引出し部へと連なる領域では、引出し部の幅と等しくなるように、幅が次第に狭くなっている。
【0104】
上述した実施形態において、穴あき部65の形状を変更することにより、内部電極26aおよび27aの引出し部およびそれらに連なる対向部の端部の形状を種々に変更することができる。たとえば、穴あき部65の形状を長方形に変更することも可能である。
【0105】
また、前述した実施形態では、マザーブロック35から、図5に示した切断線33および34の各々に沿う切断工程を実施して、複数のグリーンチップ19を得てから、切断側面20および21に側面用セラミックグリーンシート47を貼付する工程を実施したが、以下のように変更することも可能である。
【0106】
すなわち、マザーブロック35を得た後、マザーブロック35を図5に示した第1方向の切断線34のみに沿って切断することによって、第1方向の切断線34に沿う切断によって現れた切断側面20および21に内部電極26および27が露出した状態にある、複数の棒状のグリーンブロック体を得る、第1切断工程がまず実施される。
【0107】
次に、棒状のグリーンブロック体に対して、図7ないし図15を参照して前述した貼付工程および転動工程と実質的に同様の貼付工程および転動工程が実施されることによって、切断側面20および21に側面用セラミックグリーンシート47が貼付され、棒状のグリーンブロック体に生のセラミック保護層22および23が形成される。
【0108】
次に、生のセラミック保護層22および23が形成された棒状のグリーンブロック体を、上記第1方向に直交する第2方向の切断線33に沿って切断することによって、複数の生の部品本体12を得る、第2切断工程が実施される。
【0109】
その後、前述した実施形態の場合と同様、生の部品本体12が焼成され、以降同様の工程が実施されることにより、積層セラミックコンデンサ11が完成される。
【符号の説明】
【0110】
11 積層セラミックコンデンサ
12 部品本体
19,19a グリーンチップ
20,21,20a,21a グリーンチップの切断側面
22,23 セラミック保護層
24 積層部
25,25a セラミック層
26,27,26a,27a 内部電極
28,29 外部電極
31,31a 積層用セラミックグリーンシート
32,32a 内部電極パターン
33,34,33a,34a 切断線
35 マザーブロック
38 粘着シート
40 支持台
41 転動作用板
43 接着剤
47 側面用セラミックグリーンシート
48 貼付用弾性体
52 圧着用弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数のセラミックグリーンシートと、前記セラミックグリーンシート間の複数の界面に沿ってそれぞれ配置された内部電極パターンとを含む、マザーブロックを作製する工程と、
前記マザーブロックを互いに直交する第1方向の切断線および第2方向の切断線に沿って切断することによって、生の状態にある複数のセラミック層と複数の内部電極とをもって構成された積層構造を有し、かつ前記第2方向の切断線に沿う切断によって現れた切断側面に前記内部電極が露出した状態にある、複数のグリーンチップを得る、切断工程と、
前記切断側面に側面用セラミックグリーンシートを貼付して、生のセラミック保護層を形成することによって、生の部品本体を得る、貼付工程と、
前記生の部品本体を焼成する工程と
を備え、
前記切断工程を経て得られた複数の前記グリーンチップは、行および列方向に配列された状態にあり、
前記貼付工程の前に、行および列方向に配列された状態の複数の前記グリーンチップの互いの間隔を広げた状態で、複数の前記グリーンチップを転動させ、それによって、複数の前記グリーンチップの各々の前記切断側面を揃って開放面とする、転動工程が実施され、
前記貼付工程は、前記開放面とされた前記グリーンチップの前記切断側面に前記側面用セラミックグリーンシートを貼付する工程を含む、
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記転動工程において、行および列方向に配列された状態の複数の前記グリーンチップの互いの間隔を広げた状態とするため、行および列方向に配列された状態の複数のグリーンチップを、拡張性のある粘着シート上に貼り付け、その状態で、粘着シートを拡張する工程が実施される、請求項1に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項3】
積層された複数のセラミックグリーンシートと、前記セラミックグリーンシート間の複数の界面に沿ってそれぞれ配置された内部電極パターンとを含む、マザーブロックを作製する工程と、
前記マザーブロックを第1方向の切断線に沿って切断することによって、生の状態にある複数のセラミック層と複数の内部電極とをもって構成された積層構造を有し、かつ前記第1方向の切断線に沿う切断によって現れた切断側面に前記内部電極が露出した状態にある、複数の棒状のグリーンブロック体を得る、第1切断工程と、
前記切断側面に側面用セラミックグリーンシートを貼付して、生のセラミック保護層を形成する、貼付工程と、
前記生のセラミック保護層が形成された前記棒状のグリーンブロック体を、前記第1方向に直交する第2方向の切断線に沿って切断することによって、複数の生の部品本体を得る、第2切断工程と、
前記生の部品本体を焼成する工程と
を備え、
前記第1切断工程を経て得られた複数の前記棒状のグリーンブロック体は、所定方向に配列された状態にあり、
前記貼付工程の前に、所定方向に配列された状態の複数の前記棒状のグリーンブロック体の互いの間隔を広げた状態で、複数の前記棒状のグリーンブロック体を転動させ、それによって、複数の前記棒状のグリーンブロック体の各々の前記切断側面を揃って開放面とする、転動工程が実施され、
前記貼付工程は、前記開放面とされた前記棒状のグリーンブロック体の前記切断側面に前記側面用セラミックグリーンシートを貼付する工程を含む、
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記転動工程において、所定方向に配列された状態の複数の前記棒状のグリーンブロック体の互いの間隔を広げた状態とするため、所定方向に配列された状態の複数の棒状のグリーンブロック体を、拡張性のある粘着シート上に貼り付け、その状態で、粘着シートを拡張する工程が実施される、請求項3に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記側面用セラミックグリーンシートと前記切断側面との間に接着剤を付与する工程をさらに備える、請求項1ないし4のいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記貼付工程は、
貼付用弾性体上に前記側面用セラミックグリーンシートを置く工程と、
前記貼付用弾性体が弾性変形する程度の力で、前記切断側面を前記側面用セラミックグリーンシートに押し付ける工程と、
前記側面用セラミックグリーンシートを前記切断側面に付着させた状態で、前記グリーンチップまたは前記棒状のグリーンブロック体を前記貼付用弾性体から離隔する工程と
を含む、
請求項1ないし5のいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項7】
前記側面用セラミックグリーンシートは、前記切断側面より大きい寸法を有し、前記切断側面を側面用セラミックグリーンシートに押し付ける工程は、前記側面用セラミックグリーンシートを前記切断側面の周縁によって打ち抜く工程を含む、請求項6に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記側面用セラミックグリーンシートは、前記切断側面より大きい寸法を有し、前記貼付工程の後、前記側面用セラミックグリーンシートの、前記切断側面に貼付された部分を除く不要部分を除去する工程をさらに備える、請求項1ないし7のいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項9】
前記切断側面に前記側面用セラミックグリーンシートを貼り付けて、前記生のセラミック保護層を形成した後、前記グリーンチップと前記生のセラミック保護層との接着性を向上するため、互いを200℃以下の温度で加熱圧着する工程をさらに備える、請求項1ないし8のいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項10】
特定の前記内部電極と電気的に接続されるように、前記部品本体の所定の面上に外部電極を形成する工程をさらに備える、請求項1ないし9のいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項11】
積層された複数のセラミックグリーンシートと、前記セラミックグリーンシート間の複数の界面に沿ってそれぞれ配置された内部電極パターンとを含む、マザーブロックを作製する工程と、
前記マザーブロックを互いに直交する第1方向の切断線および第2方向の切断線に沿って切断することによって、生の状態にある複数のセラミック層と複数の内部電極とをもって構成された積層構造を有し、かつ前記第1方向の切断線に沿う切断によって現れた切断側面に前記内部電極が露出した状態にある、複数のグリーンチップを得る、切断工程と
を備え、
前記切断工程を経て得られた複数の前記グリーンチップは、行および列方向に配列された状態にあり、
前記切断工程の後、行および列方向に配列された状態の複数の前記グリーンチップの互いの間隔を広げた状態で、複数の前記グリーンチップを転動させ、それによって、複数の前記グリーンチップの各々の前記切断側面を揃って開放面とする、転動工程をさらに備える、
積層セラミック電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−209539(P2012−209539A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−24233(P2012−24233)
【出願日】平成24年2月7日(2012.2.7)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】