説明

積層チューブ

【課題】薬液透過防止性、層間接着性、特に、高温雰囲気下における層間接着強度の耐久性に優れた積層チューブを提供する。
【解決手段】脂肪族ポリアミドよりなる層、特定量のポリグリコール酸重合体と芳香族ポリエステル重合体からなるポリエステル系重合体組成物よりなる層、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸でグラフト変性した変性ポリエステル系エラストマーよりなる層、及び炭素数9〜13の脂肪族ジアミン単位を特定量含むジアミン単位と、テレフタル酸及び/又はナフタレンジカルボン酸単位を特定量含むジカルボン酸単位とからなる半芳香族ポリアミド又は炭素数9〜13の脂肪族ジアミン単位を特定量含むジアミン単位と、蓚酸単位を特定量含むジカルボン酸単位とからなるポリオキサミドよりなる層を含む、少なくとも4層からなる積層チューブ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層チューブに関し、さらに詳しくは、薬液透過防止性、及び層間接着性、特に高温雰囲気下での層間接着性の耐久性に優れる積層チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車配管用チューブにおいては、古くは道路の凍結防止剤による発錆の問題や、近年、地球温暖化防止、省エネルギー化の要請を受けて、その主要素材としては、金属から、防錆性に優れ軽量な、樹脂への代替が進みつつある。配管用チューブとして使用される樹脂としては、通常は、ポリアミド系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂等が挙げられるが、これらを使用した単層チューブの場合、耐熱性、耐薬品性等が不十分なことから、適用可能な範囲が限定されていた。
【0003】
自動車配管用チューブは、ガソリンの消費節約、高性能化の観点から、メタノール、エタノール等の沸点の低いアルコール類、あるいはメチル−t−ブチルエーテル(MTBE)等のエーテル類をブレンドした含酸素ガソリン等が移送される。さらに、近年、環境汚染防止の観点から、配管用チューブ隔壁を通じての揮発性炭化水素等の拡散による大気中への漏洩防止を含めた厳しい排ガス規制が実施されている。将来においては、益々厳しい法規制が課せられることから、配管用チューブ隔壁から透過して蒸散する燃料を極限まで抑制することが望まれる。かかる厳しい規制に対しては、従来から使用されている、ポリアミド系樹脂、特に、強度、靭性、耐薬品性、柔軟性に優れるポリアミド11又はポリアミド12を単独で使用した単層チューブは、上記の薬液に対する透過防止性は十分でなく、特に含アルコールガソリン透過防止性に対する改良が求められている。
【0004】
この問題を解決する方法として、薬液透過防止性の良好な樹脂、例えばエチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(TFE/HFP,FEP)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体(TFE/HFP/VDF,THV)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)が配置された積層チューブが提案されてきた(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
一方、ポリグリコール酸は、薬液透過防止性がポリアミドやエチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)よりも優れていることから、内外層に高密度ポリエチレン層を配置し、芯層にポリグリコール酸層を配置した層構成を有する多層プラスチック燃料容器が提案されている(特許文献2参照)。同技術においては、ポリアミド系樹脂を構成材料とするポリグリコール酸との積層チューブに関する示唆はない。また、積層チューブにおいては、加工中や使用中に、層間剥離が生じないよう、強固な層間接着強度が必要である。該多層プラスチック燃料容器において、高密度ポリエチレンとポリグリコール酸の層間に介在させる接着性樹脂として、グリシジル基含有ポリオレフィン共重合体等が提案されているが、同文献には、多層プラスチック燃料容器における層間剥離強度に関するデータの開示はなく、また、ポリアミド樹脂とポリグリコール酸の層間に介在させる接着性樹脂として、グリシジル基含有ポリオレフィン共重合体を使用した場合においても、使用環境条件等により層間接着性のバラツキ、低下が大きく、特に、高温雰囲気下における層間接着強度の耐久性に劣るという欠点を有しており、実使用に問題がある。さらに、北米やヨーロッパ、日本等の先進国において排ガス、燃料の総量規制が、一層強化されつつあり、自動車配管用チューブにはより高度な薬液透過防止性能が求められるようになってきている。
【0006】
【特許文献1】米国特許第5554425号明細書
【特許文献2】特開2003−261168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、前記問題点を解決し、薬液透過防止性、層間接着性、特に、高温雰囲気下における層間接着強度の耐久性に優れた積層チューブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記問題点を解決するために、鋭意検討した結果、脂肪族ポリアミドよりなる層、ポリグリコール酸重合体と芳香族ポリエステル重合体からなるポリエステル系重合体組成物よりなる層、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸でグラフト変性した変性ポリエステル系エラストマーよりなる層、特定の構造を有する半芳香族ポリアミド又はポリオキサミドよりなる層からなる積層チューブが、薬液透過防止性、及び層間接着性、特に高温雰囲気下での層間接着性の耐久性に優れ、低温耐衝撃性、耐熱性、耐薬品性等の特性が良好であることを見出した。
【0009】
即ち、本発明は、(A)脂肪族ポリアミドよりなる(a)層、(B)ポリエステル系重合体組成物よりなる(b)層、(C)変性ポリエステル系エラストマーよりなる(c)層、及び(D1)半芳香族ポリアミド又は(D2)ポリオキサミドよりなる(d)層を含む、少なくとも4層からなる積層チューブであり、
(B)ポリエステル系重合体組成物が、(B1)ポリグリコール酸重合体60〜90質量%と(B2)芳香族ポリエステル重合体40〜10質量%からなるポリエステル系重合体組成物であり、
(C)変性ポリエステル系エラストマーが、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸でグラフト変性した変性ポリエステル系エラストマーであり、
(D1)半芳香族ポリアミドが、全ジアミン単位に対して、炭素数9〜13の脂肪族ジアミン単位を60モル%以上含むジアミン単位と、全ジカルボン酸単位に対して、テレフタル酸及び/又はナフタレンジカルボン酸単位を50モル%以上含むジカルボン酸単位とからなる半芳香族ポリアミドであり、
(D2)ポリオキサミドが、全ジアミン単位に対して、炭素数9〜13の脂肪族ジアミン単位を60モル%以上含むジアミン単位と、全ジカルボン酸単位に対して、蓚酸単位を60モル%以上含むジカルボン酸単位とからなるポリオキサミドである積層チューブを提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の積層チューブは、薬液透過防止性が良好であり、層間接着性に優れ、特に、高温雰囲気下における層間接着強度の著しい低下という欠点が認められず、層間接着強度の耐久性に優れる。よって、本発明の積層チューブは、あらゆる環境下において使用可能であり、その利用価値は極めて大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明を詳細に説明する。
[(A)脂肪族ポリアミド]
本発明において使用される、(A)脂肪族ポリアミドは、主鎖中にアミド結合(−CONH−)を有し、ラクタム、アミノカルボン酸、又は脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸とからなるナイロン塩を原料として、溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法で重合、又は共重合することにより得られる。
【0012】
ラクタムとしては、カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドン等、アミノカルボン酸としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0013】
ナイロン塩を構成する脂肪族ジアミンとしては、1,2−エタンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,13−トリデカンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、1,15−ペンタデカンジアミン、1,16−ヘキサデカンジアミン、1,17−ヘプタデカンジアミン、1,18−オクタデカンジアミン、1,19−ノナデカンジアミン、1,20−エイコサンジアミン、2−/3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0014】
ナイロン塩を構成する脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、トリデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ペンタデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、エイコサンジカルボン酸等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0015】
(A)脂肪族ポリアミドとしては、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリエチレンアジパミド(ポリアミド26)、ポリテトラメチレンスクシナミド(ポリアミド44)、ポリテトラメチレングルタミド(ポリアミド45)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリテトラメチレンアゼラミド(ポリアミド49)、ポリテトラメチレンセバカミド(ポリアミド410)、ポリテトラメチレンドデカミド(ポリアミド412)、ポリペンタメチレンスクシナミド(ポリアミド54)、ポリペンタメチレングルタミド(ポリアミド55)、ポリペンタメチレンアジパミド(ポリアミド56)、ポリペンタメチレンアゼラミド(ポリアミド59)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)、ポリペンタメチレンドデカミド(ポリアミド512)、ポリヘキサメチレンスクシナミド(ポリアミド64)、ポリヘキサメチレングルタミド(ポリアミド65)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリノナメチレンアジパミド(ポリアミド96)、ポリノナメチレンアゼラミド(ポリアミド99)、ポリノナメチレンセバカミド(ポリアミド910)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリデカメチレンアゼラミド(ポリアミド109)、ポリデカメチレンセバカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリドデカメチレンアジパミド(ポリアミド126)、ポリドデカメチレンアゼラミド(ポリアミド129)、ポリドデカメチレンセバカミド(ポリアミド1210)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)等の単独重合体やこれらを形成する原料モノマーを数種用いた共重合体等が挙げられる。
【0016】
これらの中でも、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリデカメチレンセバカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)やこれらを形成する原料モノマーを数種用いた共重合体等が好ましく、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンデカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリデカメチレンデカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、及びポリドデカンアミド(ポリアミド12)からなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0017】
また、(A)脂肪族ポリアミドは、前記の単独重合体の混合物、前記の共重合体の混合物、単独重合体と共重合体の混合物であってもよいし、あるいは他のポリアミド系樹脂又はその他の熱可塑性樹脂との混合物であってもよい。混合物中の(A)脂肪族ポリアミドの含有率は60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
【0018】
他のポリアミド系樹脂としては、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリメタキシリレンスベラミド(ポリアミドMXD8)、ポリメタキシリレンアゼラミド(ポリアミドMXD9)、ポリメタキシリレンセバカミド(ポリアミドMXD10)、ポリメタキシリレンドデカミド(ポリアミドMXD12)、ポリメタキシリレンテレフタラミド(ポリアミドMXDT)、ポリメタキシリレンイソフタラミド(ポリアミドMXDI)、ポリメタキシリレンナフタラミド(ポリアミドMXDN)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンテレフタラミド(ポリアミドPACMT)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンイソフタラミド(ポリアミドPACMI)、ポリイソホロンアジパミド(ポリアミドIPD6)、ポリイソホロンドデカミド(ポリアミドIPD12)、ポリイソホロンテレフタラミド(ポリアミドIPDT)、ポリイソホロンイソフタラミド(ポリアミドIPDI)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド(ポリアミド5T)、ポリペンタメチレンイソフタルアミド(ポリアミド5I)、ポリペンタメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド5T(H))、ポリペンタメチレンナフタラミド(ポリアミド5N)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリヘキサメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド6T(H))、ポリヘキサメチレンナフタラミド(ポリアミド6N)、ポリ2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド(ポリアミドM5T)、ポリ2−メチルペンタメチレンイソフタルアミド(ポリアミドM5I)、ポリ2−メチルペンタメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミドM5T(H))、ポリ2−メチルペンタメチレンナフタラミド(ポリアミドM5N)、ポリノナメチレンイソフタラミド(ポリアミド9I)、ポリノナメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド9T(H))、ポリ2−メチルオクタメチレンイソフタルアミド(ポリアミドM8I)、ポリ2−メチルオクタメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミドM8T(H))、ポリトリメチルヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミドTMHI)、ポリトリメチルヘキサメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミドTMHT(H))、ポリデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド10I)、ポリデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド10T(H))、ポリウンデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド11I)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド11T(H))、ポリドデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド12I)、ポリドデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド12T(H))やこれらポリアミド原料モノマー及び/又は上記脂肪族ポリアミドの原料モノマーを数種用いた共重合体等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0019】
また、混合するその他の熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン/プロピレン共重合体(EPR)、エチレン/ブテン共重合体(EBR)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン/メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン/アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン/アクリル酸エチル共重合体(EEA)等のポリオレフィン系樹脂及び、カルボキシル基及びその塩、酸無水物基、エポキシ基等の官能基が含有された上記ポリオレフィン系樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリアリレート(PAR)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル(LCP)等のポリエステル系樹脂、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド(PPO)等のポリエーテル系樹脂、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)等のポリサルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリチオエーテルサルホン(PTES)等のポリチオエーテル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリルエーテルケトン(PAEK)等のポリケトン系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS)、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体(MBS)等のポリニトリル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)等のポリメタクリレート系樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体等のポリビニル系樹脂、酢酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体(ETFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(TFE/HFP,FEP)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/ビニリデンフルオライド共重合体(TFE/HFP/VDF,THV)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)等のフッ素系樹脂、ポリカーボネート(PC)等のポリカーボネート系樹脂、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド等のポリイミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0020】
(A)脂肪族ポリアミドの製造装置としては、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機等の混練反応押出機等、公知のポリアミド製造装置が挙げられる。重合方法としては溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法を用い、常圧、減圧、加圧操作を繰り返して重合することができる。これらの重合方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。
【0021】
また、得られる積層チューブの機械的性質を確保することと、溶融時の粘度を適正範囲にして積層チューブの望ましい成形性を確保する観点から、JIS K−6920に準拠して、96%硫酸、ポリアミド濃度1%、25℃の条件下にて測定した(A)脂肪族ポリアミドの相対粘度は、1.5〜5.0であることが好ましく、2.0〜4.5であることがより好ましい。
【0022】
(A)脂肪族ポリアミドは、該ポリアミド1gあたりの末端アミノ基濃度を[A](μeq/g)、末端カルボキシル基濃度を[B](μeq/g)とした時、[A]>[B]+5を満たす(以下、末端調整脂肪族ポリアミドと称する場合がある。)ことが(C)変性ポリエステルエラストマーとの層間接着性、特に高温雰囲気下における層間接着強度の耐久性を考慮すると好ましく、[A]>[B]+10であることがより好ましく、[A]>[B]+15であることがさらに好ましい。さらに、ポリアミドの溶融安定性、ゲル状物発生抑制の点から、[A]>20であることが好ましく、30<[A]<120であることがより好ましい。
【0023】
尚、末端アミノ基濃度[A](μeq/g)は、該ポリアミドをフェノール/メタノール混合溶液に溶解し、0.05Nの塩酸で滴定して測定することができる。末端カルボキシル基濃度[B](μeq/g)は、該ポリアミドをベンジルアルコールに溶解し、0.05Nの水酸化ナトリウム溶液で滴定して測定することができる。
【0024】
末端調整脂肪族ポリアミドは、前記(A)脂肪族ポリアミドの原料を、アミン類の存在下に、溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法で重合、又は共重合する事により製造される。あるいは、重合後、アミン類の存在下に、溶融混練することにより製造される。このように、アミン類は、重合時の任意の段階、あるいは、重合後、溶融混練時の任意の段階において添加できるが、積層チューブの高温雰囲気下における層間接着強度の耐久性を考慮した場合、重合時の段階で添加することが好ましい。
【0025】
上記アミン類としてはモノアミン、ジアミン、トリアミン、ポリアミンが挙げられる。また、アミン類の他に、上記の末端基濃度条件の範囲を外れない限り、必要に応じて、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸等のカルボン酸類を添加しても良い。これら、アミン類、カルボン酸類は、同時に添加しても、別々に添加しても良い。また、下記例示のアミン類、カルボン酸類は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0026】
添加するモノアミンの具体例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オクタデシレンアミン、エイコシルアミン、ドコシルアミン等の脂肪族モノアミン、シクロヘキシルアミン、メチルシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン、ベンジルアミン、β−フエニルメチルアミン等の芳香族モノアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、N,N−ジヘキシルアミン、N,N−ジオクチルアミン等の対称第二アミン、N−メチル−N−エチルアミン、N−メチル−N−ブチルアミン、N−メチル−N−ドデシルアミン、N−メチル−N−オクタデシルアミン、N−エチル−N−ヘキサデシルアミン、N−エチル−N−オクタデシルアミン、N−プロピル−N−ヘキサデシルアミン、N−プロピル−N−ベンジルアミン等の混成第二アミンが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0027】
添加するジアミンの具体例としては、1,2−エタンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,13−トリデカンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、1,15−ペンタデカンジアミン、1,16−ヘキサデカンジアミン、1,17−ヘプタデカンジアミン、1,18−オクタデカンジアミン、2−/3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−/1,4−シクロヘキサンジメチルアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、5−アミノ−2,2,4−トリメチル−1−シクロペンタンメチルアミン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン等の脂環式ジアミン、m−/p−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0028】
添加するトリアミンの具体例としては、1,2,3−トリアミノプロパン、1,2,3−トリアミノ−2−メチルプロパン、1,2,4−トリアミノブタン、1,2,3,4−テトラミノブタン、1,3,5−/1,2,4−/1,2,3−トリアミノシクロヘキサン、1,2,4,5−テトラミノシクロヘキサン、1,3,5−/1,2,4−/1,2,3−トリアミノベンゼン、1,2,4,5−テトラミノベンゼン、1,2,4−/2,5,7−トリアミノナフタレン、2,4,6−トリアミノピリジン、1,2,7,8−/1,4,5,8−テトラミノナフタレン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0029】
添加するポリアミンは、一級アミノ基(−NH)及び/又は二級アミノ基(−NH−)を複数有する化合物であればよく、例えば、ポリアルキレンイミン、ポリアルキレンポリアミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等が挙げられる。活性水素を備えたアミノ基は、ポリアミンの反応点である。
【0030】
ポリアルキレンイミンは、エチレンイミンやプロピレンイミン等のアルキレンイミンをイオン重合させる方法、或いは、アルキルオキサゾリンを重合させた後、該重合体を部分加水分解又は完全加水分解させる方法等で製造される。ポリアルキレンポリアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミン、或いは、エチレンジアミンと多官能化合物との反応物等が挙げられる。ポリビニルアミンは、例えば、N−ビニルホルムアミドを重合させてポリ(N−ビニルホルムアミド)とした後、該重合体を塩酸等の酸で部分加水分解又は完全加水分解することにより得られる。ポリアリルアミンは、一般に、アリルアミンモノマーの塩酸塩を重合させた後、塩酸を除去することにより得られる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、ポリアルキレンイミンが好ましい。
【0031】
ポリアルキレンイミンとしては、エチレンイミン、プロピレンイミン、1,2−ブチレンイミン、2,3−ブチレンイミン、1,1−ジメチルエチレンイミン等の炭素数2〜8アルキレンイミンの1種又は2種以上を常法により重合して得られる単独重合体や共重合体が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンイミンがより好ましい。ポリアルキレンイミンは、アルキレンイミンを原料として、これを開環重合させて得られる1級アミン、2級アミン及び3級アミンを含む分岐型ポリアルキレンイミン、あるいはアルキルオキサゾリンを原料とし、これを重合させて得られる1級アミンと2級アミンのみを含む直鎖型ポリアルキレンイミン、三次元状に架橋された構造のいずれであってもよい。更に、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、ジヘキサメチレントリアミン、アミノプロピルエチレンジアミン、ビスアミノプロピルエチレンジアミン等を含むものであってもよい。ポリアルキレンイミンは、通常、含まれる窒素原子上の活性水素原子の反応性に由来して、第3級アミノ基の他、活性水素原子をもつ第1級アミノ基や第2級アミノ基(イミノ基)を有する。
【0032】
ポリアルキレンイミン中の窒素原子数は、特に制限はないが、4〜3,000であることが好ましく、8〜1,500であることがより好ましく、11〜500であることがさらに好ましい。また、ポリアルキレンイミンの数平均分子量は、100〜20,000であることが好ましく、200〜10,000であることがより好ましく、500〜8,000であることがさらに好ましい。
【0033】
一方、添加するカルボン酸類としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、カプリン酸、ペラルゴン酸、ウンデカン酸、ラウリル酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキン酸、ベヘン酸、エルカ酸等の脂肪族モノカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、メチルシクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸、安息香酸、トルイン酸、エチル安息香酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ヘキサデカ二酸、ヘキサデセン二酸、オクタデカ二酸、オクタデセン二酸、エイコサン二酸、エイコセン二酸、ドコサン二酸、ジグリコール酸、2,2,4−/2,4,4−トリメチルアジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,3−/1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、m−/p−キシリレンジカルボン酸、1,4−/2,6−/2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,3,5−ペンタントリカルボン酸、1,2,6−/1,3,6−ヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、トリメシン酸等のトリカルボン酸が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0034】
添加されるアミン類の使用量は、製造しようとする末端調整脂肪族ポリアミドの末端アミノ基濃度、末端カルボキシル基濃度及び相対粘度を考慮して、公知の方法により適宜決められる。十分な反応性を得ることと、所望の粘度を有するポリアミドの製造を容易とする観点から、通常、ポリアミド原料1モルに対して(繰り返し単位を構成するモノマー又はモノマーユニット1モル)、アミン類の添加量は、0.5〜20meq/モルであることが好ましく、1.0〜10meq/モルであることがより好ましい(アミノ基の当量(eq)は、カルボキシル基と1:1で反応してアミド基を形成するアミノ基の量を1当量とする。)。
【0035】
末端調整脂肪族ポリアミドにおいては、上記例示のアミン類のうち、末端基濃度の条件を満たすために、ジアミン及び/又はポリアミンを重合時に添加することが好ましく、ゲル発生抑制という観点から、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、及びポリアミンよりなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0036】
また、末端調整脂肪族ポリアミドは、前記末端基濃度を満たす限りにおいては、末端基濃度の異なる2種類以上のポリアミドの混合物でも構わない。この場合、ポリアミド混合物の末端アミノ基濃度、末端基カルボキシル濃度は、混合物を構成するポリアミドの末端アミノ基濃度、末端カルボキシル基濃度及びその配合割合により決まる。
【0037】
また、(A)脂肪族ポリアミドには、可塑剤を添加することが好ましい。可塑剤としては、ベンゼンスルホン酸アルキルアミド類、トルエンスルホン酸アルキルアミド類、ヒドロキシ安息香酸アルキルエステル類等が挙げられる。
【0038】
ベンゼンスルホン酸アルキルアミド類としては、ベンゼンスルホン酸プロピルアミド、ベンゼンスルホン酸ブチルアミド、ベンゼンスルホン酸2−エチルヘキシルアミド等が挙げられる。トルエンスルホン酸アルキルアミド類としては、N−エチル−o−/N−エチル−p−トルエンスルホン酸ブチルアミド、N−エチル−o−/N−エチル−p−トルエンスルホン酸2−エチルヘキシルアミド等が挙げられる。ヒドロキシ安息香酸アルキルエステル類としては、o−/p−ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシル、o−/p−ヒドロキシ安息香酸ヘキシルデシル、o−/p−ヒドロキシ安息香酸エチルデシル、o−/p−ヒドロキシ安息香酸オクチルオクチル、o−/p−ヒドロキシ安息香酸デシルドデシル、o−/p−ヒドロキシ安息香酸メチル、o−/p−ヒドロキシ安息香酸ブチル、o−/p−ヒドロキシ安息香酸ヘキシル、o−/p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、o−/p−ヒドロキシ安息香酸デシル、o−/p−ヒドロキシ安息香酸ドデシル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0039】
これらの中でも、ベンゼンスルホン酸ブチルアミド、ベンゼンスルホン酸2−エチルヘキシルアミド等のベンゼンスルホン酸アルキルアミド類、N−エチル−p−トルエンスルホン酸ブチルアミド、N−エチル−p−トルエンスルホン酸2−エチルヘキシルアミド等のトルエンスルホン酸アルキルアミド類、p−ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシル、p−ヒドロキシ安息香酸ヘキシルデシル、p−ヒドロキシ安息香酸エチルデシル等のヒドロキシ安息香酸アルキルエステル類が好ましく、ベンゼンスルホン酸ブチルアミド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシル、及び/又はp−ヒドロキシ安息香酸ヘキシルデシルがより好ましい。
【0040】
可塑剤の配合量は、積層チューブの低温耐衝撃性を十分に確保する観点から、(A)脂肪族ポリアミド100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、1〜15質量部であることがより好ましい。
【0041】
また、(A)脂肪族ポリアミドには、耐衝撃改良材を添加することが好ましい。耐衝撃改良材としては、ゴム状重合体が挙げられ、衝撃改良効果を十分に付与する観点から、ASTM D−790に準拠して測定した曲げ弾性率が500MPa以下であることが好ましい。
【0042】
耐衝撃改良材としては、α−オレフィンとエチレン及び/又はプロピレンを含む共重合体、エチレン及び/又はプロピレン並びにα,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステルを含む共重合体、アイオノマー重合体、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を含むブロック共重合体が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0043】
上記のα−オレフィンとエチレン及び/又はプロピレンを含む共重合体は、エチレン及び/又はプロピレンと炭素数3以上のα−オレフィンを共重合した重合体であり、炭素数3以上のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。また、1,4−ペンタジエン、1,4−/1,5−ヘキサジエン、1,4−/1,5−/1,6−/1,7−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、4,8−ジメチル−1,4,8−デカトリエン(DMDT)、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、5−ビニルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,5−ノルボルナジエン等の非共役ジエンのポリエンを共重合してもよい。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0044】
上記のエチレン及び/又はプロピレン並びにα,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステルを含む共重合体は、エチレン及び/又はプロピレンとα,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル単量体を共重合した重合体であり、α,β−不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられ、α,β−不飽和カルボン酸エステル単量体としては、これら不飽和カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0045】
上記のアイオノマー重合体は、オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸を含む共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部が金属イオンの中和によりイオン化されたものである。オレフィンとしてはエチレンが好ましく用いられ、α,β−不飽和カルボン酸としてはアクリル酸、メタクリル酸が好ましく用いられるが、ここに例示したものに限定されるものではなく、不飽和カルボン酸エステル単量体が共重合されていても構わない。また、金属イオンはLi、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の他、Al、Sn、Sb、Ti、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Cd等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0046】
また、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を含むブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン化合物系重合体ブロックからなるブロック共重合体であり、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックを少なくとも1個と、共役ジエン化合物系重合体ブロックを少なくとも1個有するブロック共重合体が用いられる。また、上記のブロック共重合体では、共役ジエン化合物系重合体ブロックにおける不飽和結合が水素添加されていてもよい。
【0047】
芳香族ビニル化合物系重合体ブロックは、芳香族ビニル化合物に由来する単位から主としてなる重合体ブロックである。その場合の芳香族ビニル化合物としては、スチレン、o−/m−/p−メチルスチレン、1,5−/2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。また、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックは、場合により少量の他の不飽和単量体からなる単位を有していてもよい。
【0048】
共役ジエン化合物系重合体ブロックは、1,3−ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエン系化合物の1種又は2種以上から形成された重合体ブロックであり、水素添加した芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を含む共重合体では、その不飽和結合の一部又は全部が飽和結合になっている。
【0049】
芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を含む共重合体、及びその水素添加物の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状、又はそれら任意の組み合わせのいずれであってもよい。これらの中でも、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を含むブロック共重合体及びその水素添加物として、1個の芳香族ビニル化合物重合体ブロックと1個の共役ジエン化合物系重合体ブロックが直鎖状に結合したジブロック共重合体、芳香族ビニル化合物系重合体ブロック−共役ジエン化合物系重合体ブロック−芳香族ビニル化合物系重合体ブロックの順に3つの重合体ブロックが直鎖状に結合しているトリブロック共重合体、及びそれらの水素添加物の1種又は2種以上が好ましく用いられ、未水添又は水添スチレン/ブタジエンブロック共重合体、未水添又は水添スチレン/イソプレンブロック共重合体、未水添又は水添スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体、未水添又は水添スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、未水添又は水添スチレン/(イソプレン/ブタジエン)/スチレンブロック共重合体等が挙げられる。
【0050】
また、耐衝撃改良材として用いられるα−オレフィンとエチレン及び/又はプロピレンを含む共重合体、エチレン及び/又はプロピレン並びにα,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステルを含む共重合体、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を含む共重合体は、カルボン酸及び/又はその誘導体で変性された重合体が好ましく使用される。このような成分により変性することにより、(A)脂肪族ポリアミドに対して親和性を有する官能基をその分子中に含むこととなる。
【0051】
(A)脂肪族ポリアミドに対して親和性を有する官能基としては、カルボキシル基、酸無水物基、カルボン酸エステル基、カルボン酸金属塩、カルボン酸イミド基、カルボン酸アミド基、エポキシ基等が挙げられる。これらの官能基を含む化合物の例として、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸及びこれらカルボン酸の金属塩、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸アミノエチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物、マレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0052】
耐衝撃改良材の配合量は、積層チューブの機械的強度を十分に確保する観点から、(A)脂肪族ポリアミド100質量部に対して、1〜35質量部であることが好ましく、5〜25質量部であることがより好ましい。
【0053】
さらに、(A)脂肪族ポリアミドには、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、滑剤、無機充填材、帯電防止剤、難燃剤、結晶化促進剤、着色剤等を添加してもよい。
【0054】
[(B)ポリエステル系重合体組成物]
本発明において使用される(B)ポリエステル系重合体組成物は、(B1)ポリグリコール酸重合体60〜90質量%と(B2)芳香族ポリエステル重合体40〜10質量%からなる。
【0055】
[(B1)ポリグリコール酸重合体]
(B1)ポリグリコール酸重合体は、下記一般式(1)
【0056】
【化1】

【0057】
で表わされる繰り返し単位を含有する単独重合体又は共重合体である。(B1)ポリグリコール酸重合体中の式(1)で表わされる繰り返し単位の含有割合は、(B1)ポリグリコール酸重合体が本来有している結晶性を損なわず、積層チューブの薬液透過防止性、耐熱性等を好適に維持する観点から、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0058】
(B1)ポリグリコール酸重合体には、前記一般式(1)で表わされる繰り返し単位以外に、例えば、下記式(2)〜(6)からなる群から選択される少なくとも一つの繰り返し単位を含有させることができる。
【0059】
【化2】

【0060】
【化3】

【0061】
【化4】

【0062】
【化5】

【0063】
【化6】

【0064】
上記一般式(2)において、nは1〜10の整数を表し、mは0〜10の整数を表す。また、上記一般式(3)において、jは1〜10の整数を表す。さらに、上記一般式(4)において、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表し、kは2〜10の整数を表す。これらのその他の繰り返し単位を1質量%以上の割合で導入することにより、前記ポリグリコール酸単独重合体の融点を下げることができる。そして、(B1)ポリグリコール酸重合体の融点を下げれば、加工温度を下げることができ、溶融加工時の熱分解を低減させることができる。また、共重合化により、ポリグリコール酸重合体の結晶化速度を制御して、加工性を改良することもできる。
【0065】
また、(B1)ポリグリコール酸重合体を合成する方法としては、グリコール酸の脱水重縮合する方法、グリコール酸アルキルエステルの脱アルコール重縮合する方法、グリコリドの開環重合する方法等を挙げられる。これらの中でも、グリコリドを少量の触媒(例えば、有機カルボン酸錫、ハロゲン化錫、ハロゲン化アンチモン等のカチオン触媒)の存在下に、約120〜250℃の温度に加熱して、開環重合する方法によってポリグリコール酸(すなわち、ポリグリコリド)を合成する方法が好ましい。尚、このような開環重合は、塊状重合法又は溶液重合法によることが好ましい。
【0066】
一方、(B1)ポリグリコール酸重合体は、グリコール酸、グリコール酸アルキルエステル及びグリコリドからなる誘導される単位よりなる群から選択される少なくとも1種の繰り返し単位とその他の繰り返し単位を共重合することができる。その他の繰り返し単位としては、例えば、シュウ酸エチレン、ラクチド、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、ピバロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン類から誘導される単位、トリメチレンカーボネート、1,3−ジオキサン等の環状モノマーから誘導される単位、乳酸、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、6−ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸又はそれらのアルキルエステルから誘導される単位、1,2−エタンジオール、1,4−ブタンジオール等の脂肪族ジオールから誘導される単位、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸又はそれらのアルキルエステルから誘導される単位等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0067】
この中でも、共重合させやすく、かつ物性に優れた共重合体が得られやすい点で、ラクチド、カプロラクトン、トリメチレンカーボネート等の環状化合物や乳酸等のヒドロキシカルボン酸から誘導される単位が好ましい。(B1)ポリグリコール酸重合体中のその他の繰り返し単位の含有割合は、生成する重合体の結晶性が損なわず、積層チューブの耐熱性、薬液透過防止性、機械的強度等を好適に維持する観点から、全単量体単位100質量部に対し、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
【0068】
(B1)ポリグリコール酸重合体は、薬液透過防止性、特に含アルコールガソリンに対するバリア性に優れる。含アルコールガソリン透過係数は、イソオクタン、トルエン及びエタノールを45:45:10の容積比で混合したイソオクタン/トルエン/エタノール混合溶媒を投入した透過係数測定用カップに測定対象樹脂から得たシートを入れ、60℃において測定した質量変化から算出される値である。以上説明してきた繰り返し単位の含有率が好適な範囲である(B1)ポリグリコール酸重合体を選択することにより、該重合体の含アルコールガソリン透過係数は、1.0 g・mm/(m・day)以下であることが好ましく、0.01〜0.5 g・mm/(m・day)であることがより好ましく、0.02〜0.4 g・mm/(m・day)であることがさらに好ましい。
【0069】
溶融時の粘度を適正な範囲にし、本発明の積層チューブの好ましい成形性を確保する観点から、融点Tmより20℃高い温度(Tm+20℃)及び剪断速度120sec−1の条件下において測定した(B1)ポリグリコール酸重合体の溶融粘度は、300〜10,000Pa・sであることが好ましく、400〜8,000 Pa・sであることがより好ましく、500〜5,000 Pa・sであることがさらに好ましい。(B1)ポリグリコール酸重合体の分解とそれに伴う分子量の低下や発泡を抑制する観点から、(B1)ポリグリコール酸重合体の溶融加工温度は、260℃前後(例えば、250〜270℃の範囲内)の温度に設定することが望ましい。
【0070】
(B1)ポリグリコール酸重合体の融点(Tm)は、本発明の積層チューブの薬液透過防止性、耐熱性等を好適に維持する観点から、200℃以上であることが好ましく、210℃以上であることがより好ましい。ポリグリコール酸単独重合体の融点は約220℃であり、ガラス転移温度は約38℃で、結晶化温度は約91℃である。ただし、これらの熱的性質は、(B1)ポリグリコール酸重合体の分子量や共重合成分等によって変動する。また、ポリグリコール酸単独重合体の結晶密度(ρ)は、約1.7g/cmである。
【0071】
本発明では、(B1)ポリグリコール酸重合体には、本発明の目的を阻害しない範囲内において、無機フィラー、他の熱可塑性樹脂、可塑剤等、触媒失活剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防湿剤、防水剤、撥水剤、滑剤、離型剤、カップリング剤、顔料、染料等の各種添加剤を含有させることができる。
【0072】
(B1)ポリグリコール酸重合体は、合成時に、その末端が水酸基及び/又はカルボキシル基となる。(B1)ポリグリコール酸重合体は、非酸形成性のOH基封止剤、及び/又はカルボキシル基封止剤によって変性することができる。(B1)ポリグリコール酸重合体は、加水分解性を示し、かつ、溶融加工中に着色し易く、非酸形成性のOH基封止剤、及び/又はカルボキシル基封止剤を配合することにより、耐水性や加水分解性を改善し、着色を抑制することができる。
【0073】
非酸形成性のOH基封止剤における「非酸形成性」とは、(B1)ポリグリコール酸重合体中に残存するOH基と結合してこれを封止した際にカルボキシル基を生成しないことを意味している。非酸形成性のOH基封止剤としては、ジケテン化合物、イソシアネート類等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらのOH基封止剤の中でも、反応性の観点から、ジケテン化合物が好ましい。
OH基末端封止剤の配合量は、(B1)ポリグリコール酸重合体100質量部に対して、0.01〜20質量部であることが好ましく、0.1〜10質量部であることがより好ましい。
【0074】
カルボキシル基封止剤としては、カルボキシル基末端封止作用を有し、脂肪族ポリエステルの耐水性向上剤として知られている化合物を用いることができる。カルボキシル基封止剤の具体例としては、例えば、N,N−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物、2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2−フェニル−2−オキサゾリン、スチレン・イソプロペニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン化合物、2−メトキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン等のオキサジン化合物、N−グリシジルフタルイミド、シクロへキセンオキシド、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート等のエポキシ化合物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
これらのカルボキシル基封止剤の中でも、カルボジイミド化合物がより好ましく、芳香族、脂環族、及び脂肪族のいずれのカルボジイミド化合物も用いられるが、芳香族カルボジイミド化合物がさらに好ましく、特に純度の高いものが耐水安定化効果を与える。カルボキシル基封止剤の配合量は、(B1)ポリグリコール酸重合体100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.05〜2.5質量部であることがより好ましい。
【0075】
(B1)ポリグリコール酸重合体には、溶融安定性を高めるために、熱安定剤を配合することができる。熱安定剤としては、重金属不活性化剤、ペンタエリスリトール骨格構造を有するリン酸エステル、少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つの長鎖アルキルエステル基とを持つリン化合物、炭酸金属塩等が好ましい。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0076】
ホスファイト系酸化防止剤等のリン系化合物の多くは、むしろ(B1)ポリグリコール酸重合体の溶融安定性を阻害する作用を示すため、熱安定剤として使用することは好ましくない。これに対して、ペンタエリスリトール骨格構造を有するリン酸エステルは、特異的にポリグリコール酸重合体の溶融安定性を向上させる作用を示す。ペンタエリスリトール骨格構造を有するリン酸エステルの具体例としては、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(モノノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(4−オクタデシルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
リン系化合物の中では、少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つの長鎖アルキルエステル基とを持つリン化合物が好ましい。長鎖アルキルの炭素原子数は、8〜24個の範囲であることが好ましい。このようなリン化合物の具体例としては、モノ又はジ−ステアリルアシッドホスフェート等が挙げられる。
【0077】
重金属不活性剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−N−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル−ベンズアミド、ビス〔2−(2−ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジン〕ドデカンジカルボン酸等が挙げられる。炭酸金属塩としては、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム等が挙げられる。
【0078】
熱安定剤の配合割合は、積層チューブの成形時の溶融安定性や加工安定性を確保する観点から、(B1)ポリグリコール酸重合体100質量部に対して、0.001〜5質量部であることが好ましく、0.003〜3質量部であることがより好ましく、0.005〜1質量部であることがさらに好ましい。
【0079】
[(B2)芳香族ポリエステル重合体]
本発明において使用される(B2)芳香族ポリエステル重合体とは、主鎖中に芳香環の構造単位、及びエステル結合を有する重合体であって、芳香族ジカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体とジオールあるいはそのエステル形成性誘導体から誘導される単位より構成される重合体ないしは共重合体である。
【0080】
芳香族ジカルボン酸から誘導される単位としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−/1,5−/2,6−/2,7−ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルプロパン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルフィドジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸、3−スルホイソフタル酸ナトリウム、3−スルホイソフタル酸カリウム等、あるいはこれらのエステル形成性誘導体から誘導される単位等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸ジメチル、及び/又は2,6−ナフタレン酸ジメチルから誘導される単位が好ましい。
【0081】
尚、他のジカルボン酸単位を共重合することも可能である。他のジカルボン酸単位としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,3−/1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキシル−4,4−ジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、あるいはこれらのエステル形成性誘導体から誘導される単位等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0082】
また、ジオールから誘導される単位としては、炭素数2〜12の脂肪族ジオール単位が好ましい。炭素数2〜12の脂肪族ジオールとしては、、例えば、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール等から誘導される単位が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、1,2−エタンジオール及び/又は1,4−ブタンジオールから誘導される単位が好ましい。
【0083】
尚、他のジオールから誘導される単位を共重合することも可能である。他のジオールから誘導される単位としては、1,3−/1,4−シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール、キシリレングリコール、1,2−/1,3−/1,4−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン等の芳香族ジオールから誘導される単位が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0084】
また、(B2)芳香族ポリエステル重合体は、実質的に成形性能を失わない範囲で、三官能以上の化合物、例えばグリセリン、トリメチルプロパン、ペンタエリスリトール、トリメリット酸、ピロメリット酸等を共重合することも可能である。
【0085】
(B2)芳香族ポリエステル重合体の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、エチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体、ブチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体、ブチレンテレフタレート/セバケート共重合体、エチレンテレフタレート/シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート共重合体等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びポリブチレンナフタレートからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、経済性や成形温度、薬液透過防止性に優れていることからポリブチレンテレフタレート及び/又はポリブチレンナフタレーがより好ましい。
【0086】
(B2)芳香族ポリエステル重合体は、前記原料成分を、従来公知のポリエステル製造法を用いて重縮合させて得られる。前記モノマー成分を所定の割合で反応容器に仕込み、窒素等の不活性ガスを吹き込みながら、触媒の存在下、反応を開始する。副生する低分子化合物は連続的に反応系外へ除去する。反応は、常圧、減圧、加圧のいずれの条件下でも行うことができるが、減圧して反応させるのが好ましい。次いで所望により、前記ポリマーをチップ又はペレット状にするか、ブロック状にして粉砕して用いる。必要に応じて、常法に従い、固相重合しても良い。
【0087】
使用する触媒として、スズ、アンチモン、コバルト、マンガン、カルシウム、ゲルマニウム、ニッケル、亜鉛、鉛、鉄、マグネシウム、及び/又はチタン化合物等が挙げられる。触媒の添加量は、原料成分に基づいて、5〜100mmol%であることが好ましく、10〜50mmol%であることがより好ましい。さらに、カルボキシル末端基数等の品質をコントロールするため、アルカリ金属を添加しても良い。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムが好ましく、これらの中でもカリウムが好ましい。アルカリ金属の添加量は、原料成分に基づいて、0.1〜20mmol%であることが好ましい。
尚、分子量の調整や反応の制御を目的として、モノカルボン酸、モノアルコール等を必要により使用してもよい。モノカルボン酸としては、安息香酸、p−オキシ安息香酸、トルエンカルボン酸、サリチル酸、酢酸、プロピオン酸、ステアリン酸等が挙げられる。モノアルコールとしては、ベンジルアルコール、トルエン−4−メタノール、シクロヘキサンメタノール等が挙げられる。
【0088】
フェノール/テトラクロロエタンの1:1の混合溶媒を用いて25℃で測定した(B2)芳香族ポリエステル重合体の固有粘度は、重合時の生産性と積層チューブの機械的強度を確保する観点から、0.25〜3.0であることが好ましく、0.40〜2.5であることがより好ましい。
【0089】
(B2)芳香族ポリエステル重合体には、必要に応じて、その物性を著しく損なわない範囲で、各種の添加剤、例えば繊維状、板状、粉粒状等の各形状を有する強化剤、酸化防止剤、熱安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、離型剤、帯電防止剤、防菌剤、蛍光増白剤、結晶化促進剤、結晶核剤、充填剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、可塑剤、耐屈曲疲労性改良材、難燃剤、難燃助剤等を添加することができる。
【0090】
本発明において使用される(B)ポリエステル系重合体組成物は、(B1)ポリグリコール酸重合体と(B2)芳香族ポリエステル重合体からなり、両者の混合割合は、積層チューブの薬液透過防止性と層間接着性、特に、高温雰囲気下の層間接着性の耐久性を確保する観点から、(B)ポリエステル系重合体組成物100質量%に対して、(B1)ポリグリコール酸重合体の配合量は60〜90質量%であり、62〜87質量%であることが好ましく、65〜85質量%であることがより好ましく、(B2)芳香族ポリエステル重合体の配合量は40〜10質量%であり、38〜13質量%であることが好ましく、35〜15質量%であることがより好ましい。
【0091】
(B)ポリエステル系重合体組成物には、必要に応じて、その物性を著しく損なわない範囲で、各種の添加剤、例えば繊維状、板状、粉粒状等の各形状を有する強化剤、酸化防止剤、熱安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、離型剤、帯電防止剤、防菌剤、蛍光増白剤、結晶化促進剤、結晶核剤、充填剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、可塑剤、耐屈曲疲労性改良材、難燃剤、難燃助剤等を添加することができる。(B)ポリエステル系重合体組成物の低温耐衝撃性を改良するために、耐衝撃改良材を添加することが好ましく、(A)脂肪族ポリアミドの説明中に記載した、ASTM D−790に準拠して測定した曲げ弾性率が500MPa以下のゴム状重合体を添加することがより好ましい。
【0092】
(B)ポリエステル系重合体組成物において、(B1)ポリグリコール酸重合体と(B2)芳香族ポリエステル重合体を配合、混合する方法には特に制限がなく、従来から知られている各種の方法を採用することができる。必要に応じて配合される他の添加剤と共に、例えば、両者をドライブレンドする方法、両者を溶融混練する方法等により製造することができる。溶融混練は、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機を使用して行うことができる。
【0093】
[(C)変性ポリエステル系エラストマー]
本発明において使用される、(C)変性ポリエステル系エラストマーは、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸でグラフト変性したポリエステル系エラストマーであり、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸(その無水物も含む)をポリエステル系エラストマーにグラフト変性させることにより得られる重合体である。
【0094】
(C)変性ポリエステル系エラストマーの構成成分であるポリエステル系エラストマーは、飽和ポリエステル系エラストマーであることが好ましく、ポリアルキレンエーテルグリコールからなるソフトセグメントを含有する飽和ポリエステル系エラストマーであることがより好ましい。例えば、ハードセグメントとして芳香族ポリエステル、ソフトセグメントとしてポリアルキレンエーテルグリコールや脂肪族ポリエステルからなるものがさらに好ましい。ソフトセグメントとしてポリアルキレンエーテルグリコールを使用したポリエステルポリエーテルブロック共重合体が特に好ましい。(A)脂肪族ポリアミドや(B)ポリエステル系重合体組成物に対して十分な接着性を発現し、積層チューブに十分な強度や低温耐衝撃性を付与する観点から、ポリアルキレンエーテルグリコール成分の含有量は、生成するブロック共重合体に対して、5〜90質量%であることが好ましく、30〜80質量%であることがより好ましく、55〜80質量%であることがさらに好ましい。
ポリアルキレンエーテルグリコール成分の含有量はH−NMRを使用し、その水素原子の化学シフトとその含有量に基づいて算出することができる。
【0095】
ポリエステルポリエーテルブロック共重合体としては、炭素原子数2〜12の脂肪族及び/又は脂環式ジオールと、芳香族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体、及びポリアルキレンエーテルグリコールを原料とし、エステル化反応又はエステル交換反応により得られたオリゴマーを重縮合させたものが好ましい。
【0096】
炭素数2〜12の脂肪族及び/又は脂環式ジオールとしては、ポリエステルの原料、特にポリエステル系熱可塑性エラストマーの原料として通常用いられるものが使用でき、例えば、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,3−/1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、1,2−エタンジオール、1,4−ブタンジオールが好ましく、1,4−ブタンジオールがより好ましい。
【0097】
芳香族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸としては、ポリエステルの原料、特にポリエステル系熱可塑性エラストマーの原料として一般的に用いられているものが使用でき、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−/2,6−/2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,3−/1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。芳香族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、上記ジカルボン酸のジメチルエステル、ジエチルエステル等のアルキルエステルが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、テレフタル酸ジメチル、2,6−ナフタレン酸ジメチルが好ましい。
【0098】
また、上記の成分以外に3官能性のトリオールやトリカルボン酸又はそれらのエステルを少量共重合させてもよく、さらにアジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸又はそのジアルキルエステルも共重合することもできる。
【0099】
前記ポリアルキレンエーテルグリコールとしては、共重合体のブロック性を確保し、系内での相分離の発生を抑制し、ポリマーの物性を十分に確保する観点から、その数平均分子量は、400〜6,000であることが好ましく、500〜4,000であることがより好ましく、600〜3,000であることがさらに好ましい。尚、ここで、数平均分子量とはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されたものを言う。GPCのキャリブレーションには、英国POLYMERLABORATORIES社のPOLYTETRAHYDROFURANキャリブレーションキットを使用すればよい。
【0100】
ポリアルキレンエーテルグリコールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリ(プロピレンエーテル)グリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンエーテル)グリコール等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールが好ましい。
【0101】
(C)変性ポリエステル系エラストマーの構成成分であるα,β−エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸等の不飽和カルボン酸、コハク酸2−オクテン−1−イル無水物、コハク酸2−ドデセン−1−イル無水物、コハク酸2−オクタデセン−1−イル無水物、マレイン酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、ブロモマレイン酸無水物、ジクロロマレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、1−ブテン−3,4−ジカルボン酸無水物、1−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物、exo−3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、endo−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸無水物等の不飽和カルボン酸無水物が挙げられる。上記のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸は、変性すべきポリエステル系エラストマーや変性条件に応じて適宜選択することができ、1種又は2種以上を用いることができる。α,β−エチレン性不飽和カルボン酸は有機溶剤等に溶解して使用することもできる。
【0102】
ポリエステル系エラストマーの変性反応は、ポリエステル系エラストマーにα,β−エチレン性不飽和カルボン酸を反応させることによって行うことが好ましい。そして、この変性反応は、活性水素化合物の存在下に行うことにより、高分子量化反応と同時に行うこともできる。変性に際してはラジカル発生剤を使用するのが好ましい。この変性反応においては、ポリエステル系エラストマーにα,β−エチレン性不飽和カルボン酸やその誘導体が付加するグラフト反応が主として起こるが、分解反応も起こる。その結果、変性ポリエステル系エラストマーは、分子量が低下して溶融粘度が低くなる。また、上記の変性反応においては、通常、他の反応として、エステル交換反応等も起こるものと考えられ、得られる反応物は、一般的には、未反応原料等を含む組成物であるが、変性ポリエステル系エラストマー単独であってもよい。反応物が組成物の場合、変性ポリエステル系エラストマーの含有率は、10質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。
【0103】
ラジカル発生剤としては、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルへキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ターシャリーブチルオキシ)ヘキサン、3,5,5−トリメチルへキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジブチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、過酸化カリウム、過酸化水素等の有機及び無機の過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(イソブチルアミド)ジハライド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、アゾジ−t−ブタン等のアゾ化合物、ジクミル等の炭素ラジカル発生剤等が挙げられる。上記のラジカル発生剤は、変性反応に使用するポリエステル系エラストマーの種類、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の種類及び変性条件に応じて適宜選択することができ、1種又は2種以上を用いることができる。ラジカル発生剤は有機溶剤等に溶解して使用することもできる。
【0104】
(C)変性ポリエステル系エラストマーを得るための変性反応としては、溶融混練反応法、溶液反応法、懸濁分散反応等公知の反応方法を使用することができるが、通常は溶融混練反応法が好ましい。
溶融混練反応法による場合は、前記の各成分と、必要に応じてその他添加剤を所定の配合割合にて、均一に混合した後に溶融混練すればよい。混合には、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等を用いて均一に混合した後、溶融混練には、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、一軸又は二軸等の多軸混練押出機等が使用される。また、後記の活性水素化合物とその他の任意成分を途中から供給して溶融混練してもよい。溶融混練温度は、樹脂が熱劣化しないように、100〜300℃であることが好ましく、120〜280℃であることがより好ましく、150〜250℃の範囲であることがさらに好ましい。
【0105】
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の配合量は、変性を十分に行い、接着性を確保し、生成する(C)変性ポリエステル系エラストマーの溶融時の粘度を過度に低下させず、成形性を確保する観点から、ポリエステル系エラストマー100質量部に対し、0.01〜30質量部であることが好ましく、0.05〜5質量部であることがより好ましく、0.1〜1質量部であることがさらに好ましい。、
【0106】
ラジカル発生剤の配合量は、変性を十分に行い、接着性を確保し、ポリエステル系エラストマーの変性時の低分子量化(粘度低下)を抑制し、得られる積層チューブの強度を確保する観点から、ポリエステル系エラストマー100質量部に対し、0.001〜3質量部であることが好ましく、0.005〜0.5質量部であることがより好ましく、0.01〜0.2質量部であることがさらに好ましく、0.01〜0.1質量部であることが特に好ましい。
【0107】
上記のようにして得られる(C)変性ポリエステル系エラストマーについては、得られる積層チューブの機械強度や、ゴム弾性と層間接着性を確保する観点から、JIS K−6253に従い測定したデュロメータタイプDによる硬度(JIS−D硬度)は、10〜80であることが好ましく、15〜70であることがより好ましく、20〜60であることがさらに好ましい。さらに、(C)変性ポリエステル系エラストマーのMFR(230℃、2.16kg荷重)は、(C)変性ポリエステル系エラストマーの溶融張力を過度に低下させず、成形時にドローダウン等の問題が発生を防止し、流動性が過度に不足させず成形性を確保する観点から、1〜300g/10分であることが好ましく、3〜150g/10分であることがより好ましく、5〜100g/10分であることがさらに好ましい。
【0108】
また、(C)変性ポリエステル系エラストマーの変性率(グラフト量)は、H−NMR測定により得られるスペクトルから、下記の式に従って求めることができる。グラフト量(質量%)=100×(C÷3×98)/{(A×148÷4)+(B×72÷4)+(C÷3×98)}
(但し、式中のAは7.8〜8.4ppmの積分値、Bは1.2〜2.2ppmの積分値、Cは2.4〜2.9ppmの積分値である。)
【0109】
上記のようにして求めた(C)変性ポリエステル系エラストマーの変性率(グラフト量)は、(C)変性ポリエステル系エラストマー中の官能基が過少とならず、層間接着性を適切に確保し、変性の過程における分子劣化を抑制し、得られる積層チューブの強度を確保する観点から、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.03〜7質量%であることがより好ましく、0.05〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0110】
また、接着性を向上させるために、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、フェニルスチレン、o−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、o−クロロスチレン、o−クロロメチルスチレン等のビニル芳香族単量体等を変性助剤として配合することもできる。
【0111】
(C)変性ポリエステル系エラストマーには、目的に応じて任意の成分を配合することができる。具体的には、樹脂成分、ゴム成分、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ガラス繊維等のフィラー、パラフィンオイル等の可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、架橋剤、架橋助剤、着色剤、難燃剤、分散剤、帯電防止剤、防菌剤、蛍光増白剤等の各種添加物を添加することができる。
【0112】
以上のように、(C)変性ポリエステルエラストマーは、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸でグラフト変性したポリエステル系エラストマーである。すなわち、(C)変性ポリエステルエラストマーは、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーであるため、(B)ポリエステル系重合体組成物との層間接着性に優れ、かつα,β−エチレン性不飽和カルボン酸にてグラフト変性されるため、(A)脂肪族ポリアミドや後記(D)半芳香族ポリアミド又はポリオキサミドとの層間接着性に優れ、特に、該積層チューブにおける層間接着性は、80℃以上の高温雰囲気下においても低下が少なく、その耐久性は良好である。
【0113】
[(D1)半芳香族ポリアミド又は(D2)ポリオキサミド] 本発明において使用される(D1)半芳香族ポリアミドは、全ジアミン単位に対して、炭素数9〜13の脂肪族ジアミン単位を60モル%以上含むジアミン単位と、全ジカルボン酸単位に対して、テレフタル酸及び/又はナフタレンジカルボン酸単位を50モル%以上含むジカルボン酸単位とからなる。一方、ポリオキサミドは、全ジアミン単位に対して、炭素数9〜13の脂肪族ジアミン単位を60モル%以上含むジアミン単位と、全ジカルボン酸単位に対して、蓚酸単位を60モル%以上含むジカルボン酸単位とからなる(以下、。
【0114】
(D1)半芳香族ポリアミド中のテレフタル酸及び/又はナフタレンジカルボン酸単位の含有量は、得られる積層チューブの耐熱性、耐薬品性、薬液透過防止性等の諸物性を十分に確保する観点から、全ジカルボン酸単位に対して、50モル%以上であり、60モル%以上であることが好ましく、75モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましい。ナフタレンジカルボン酸単位としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸から誘導される単位が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。上記ナフタレンジカルボン酸単位の中でも、2,6−ナフタレンジカルボン酸から誘導される単位が好ましい。
【0115】
(D1)半芳香族ポリアミド中のジカルボン酸単位は、本発明の積層チューブの優れた諸特性を損なわない範囲内であれば、テレフタル酸及び/又はナフタレンジカルボン酸から誘導される単位以外の他のジカルボン酸単位を含んでいてもよい。他のジカルボン酸単位としては、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、2,2,4−/2,4,4−トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、2,2−ジエチルコハク酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−/1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、イソフタル酸、1,3−/1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、4,4’−オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルプロパン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−トリフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸から誘導される単位が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、芳香族ジカルボン酸から誘導される単位が好ましい。他のジカルボン酸単位の含有量は、50モル%以下であり、40モル%であることが好ましく、25モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることがさらに好ましい。さらに、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸を溶融成形が可能な範囲内で用いることもできる。
【0116】
また、(D1)半芳香族ポリアミド中の炭素数9〜13の脂肪族ジアミン単位の含有量は、得られる積層チューブの耐熱性、耐薬品性、耐衝撃性等を十分に確保する観点から、全ジアミン単位に対して、60モル%以上であり、75モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。
【0117】
炭素数9〜13の脂肪族ジアミン単位としては、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,13−トリデカンジアミンから誘導される単位が挙げられる。炭素数が上記を満たす限り、2,2,4−/2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4−ジエチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,2−/2,3−/2,4−/2,5−ジメチル−ヘプタンジアミン、2−/3−/4−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,3−/1,4−/2,2−/2,4−/3,3−/3,4−/4,4−/4,5−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン、2−/3−ブチル−1,8−オクタンジアミン等の分岐鎖状脂肪族ジアミンから誘導される単位を含有していても構わない。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0118】
上記、炭素数9〜13の脂肪族ジアミン単位の中でも、(A)脂肪族ポリアミド等との共押出成形性、薬液透過防止性の観点から、1,9−ノナンジアミン及び/又は2−メチル−1,8−オクタンジアミンから誘導される単位が好ましく、低温耐衝撃性の観点から、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンから誘導される単位が好ましい。さらに、1,9−ノナンジアミン単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位のモル比は、成形性及び耐衝撃性のバランスの観点から、30:70〜98:2モル%であることが好ましく、40:60〜95:5モル%であることがより好ましい。
【0119】
(D1)半芳香族ポリアミド中のジアミン単位は、本発明の積層チューブの優れた諸特性を損なわない範囲内であれば、炭素数9〜13の脂肪族ジアミンから誘導される単位以外の他のジアミン単位を含んでいてもよい。他のジアミン単位としては、1,2−エタンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、1,15−ペンタデカンジアミン、1,16−ヘキサデカンジアミン、1,17−ヘプタデカンジアミン、1,18−オクタデカンジアミン、2−/3−メチル−1,5−ペンタンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−/1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−/1,4−シクロヘキサンジメチルアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、5−アミノ−2,2,4−トリメチル−1−シクロペンタンメチルアミン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン等の脂環式ジアミン、m−/p−フェニレンジアミン、m−/p−キシリレンジアミン、1,4−/1,5−/2,6−/2,7−ナフタレンジメチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミンから誘導される単位が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。これら他のジアミン単位の含有量は、40モル%以下であり、25モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。
【0120】
(D1)半芳香族ポリアミドには、本発明の積層チューブの優れた諸特性を損なわない範囲内であれば、ジカルボン酸単位及びジアミン単位以外の他の単位を含んでいてもよい。他の単位としては、カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドン、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸から誘導される単位が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。ジカルボン酸単位及びジアミン単位以外の他の単位の含有量は、30モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。
【0121】
JIS K−6920に準拠して、96%硫酸、ポリアミド濃度1%、25℃の条件下にて測定した(D1)半芳香族ポリアミドの相対粘度は、積層チューブの生産性や機械的強度を十分に確保する観点から、1.5〜4.0であることが好ましく、1.8〜3.5であることがより好ましく、2.0〜3.0であることがさらに好ましい。
【0122】
さらに、(D1)半芳香族ポリアミドの製造装置としては、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機等の混練反応押出機等、公知のポリアミド製造装置が挙げられる。重合方法としては溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法を用い、常圧、減圧、加圧操作を繰り返して重合することができる。これらの重合方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。
【0123】
(D2)ポリオキサミドは、全ジアミン単位に対して、炭素数9〜13の脂肪族ジアミン単位を60モル%以上含むジアミン単位と、全ジカルボン酸単位に対して、蓚酸単位を60モル%以上含むジカルボン酸単位とからなるポリアミドである。
【0124】
(D2)ポリオキサミド中の蓚酸単位の含有量は、得られる積層チューブの耐熱性、耐薬品性、薬液透過防止性等の諸物性を十分に確保する観点から、全ジカルボン酸単位に対して、60モル以上であり、70モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましい。
【0125】
蓚酸単位としては、蓚酸あるいはそのエステル形成性誘導体から誘導される単位が挙げられる。エステル形成性誘導体から誘導される単位としては、蓚酸ジメチル、蓚酸ジエチル、蓚酸ジn−(又はi−)プロピル、蓚酸ジn−(又はi−、又はt−)ブチル等の脂肪族1価アルコールの蓚酸ジエステル、蓚酸ジシクロヘキシル等の脂環式アルコールの蓚酸ジエステル、蓚酸ジフェニル等の芳香族アルコールから誘導される単位が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、炭素原子数が3を超える脂肪族1価アルコールの蓚酸ジエステル、脂環式アルコールの蓚酸ジエステル、芳香族アルコールの蓚酸ジエステルから誘導される単位であることが好ましく、蓚酸ジブチル及び/又は蓚酸ジフェニルから誘導される単位であることがより好ましい。
【0126】
(D2)ポリオキサミド中のジカルボン酸単位は、本発明の積層チューブの優れた諸特性を損なわない範囲内であれば、蓚酸から誘導される単位以外の他のジカルボン酸単位を含んでいてもよい。他のジカルボン酸単位としては、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、2,2,4−/2,4,4−トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、2,2−ジエチルコハク酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−/1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,3−/1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、2,6−/2,7−/1,4−/1,5−ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、4,4’−オキシジ安息香酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルプロパン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−トリフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸から誘導される単位が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。他のジカルボン酸単位の含有量は、40モル%以下であり、30モル%であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることがさらに好ましい。さらに、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸を溶融成形が可能な範囲内で用いることもできる。
【0127】
また、(D2)ポリオキサミド中の炭素数9〜13の脂肪族ジアミン単位の含有量は、得られる積層チューブの耐熱性、耐薬品性、耐衝撃性等を十分に確保する観点から、全ジアミン単位に対して、60モル%以上であり、75モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。
【0128】
炭素数9〜13の脂肪族ジアミン単位としては、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,13−トリデカンジアミンから誘導される単位が挙げられる。炭素数が上記を満たす限り、2,2,4−/2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4−ジエチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,2−/2,3−/2,4−/2,5−ジメチル−ヘプタンジアミン、2−/3−/4−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,3−/1,4−/2,2−/2,4−/3,3−/3,4−/4,4−/4,5−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン、2−/3−ブチル−1,8−オクタンジアミン等の分岐鎖状脂肪族ジアミンから誘導される単位を含有していても構わない。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0129】
上記、炭素数9〜13の脂肪族ジアミン単位の中でも、溶融成形性に優れ、かつ低吸水性、耐薬品性、耐加水分解性の観点から、1,9−ノナンジアミン及び/又は2−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンから誘導される単位が好ましい。さらに、1,9−ノナンジアミン単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位のモル比は、成形性及び耐衝撃性のバランスの観点から、30:70〜98:2モル%であることが好ましく、40:60〜95:5モル%であることがより好ましい。
【0130】
(D2)ポリオキサミド中のジアミン単位は、本発明の積層チューブの優れた諸特性を損なわない範囲内であれば、炭素数9〜13の脂肪族ジアミンから誘導される単位以外の他のジアミン単位を含んでいてもよい。他のジアミン単位としては、1,2−エタンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、1,15−ペンタデカンジアミン、1,16−ヘキサデカンジアミン、1,17−ヘプタデカンジアミン、1,18−オクタデカンジアミン、2−/3−メチル−1,5−ペンタンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−/1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−/1,4−シクロヘキサンジメチルアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、5−アミノ−2,2,4−トリメチル−1−シクロペンタンメチルアミン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン等の脂環式ジアミン、m−/p−フェニレンジアミン、m−/p−キシリレンジアミン、1,4−/1,5−/2,6−/2,7−ナフタレンジメチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミンから誘導される単位が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。他のジアミン単位の含有量は、40モル%以下であり、25モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。
【0131】
(D2)ポリオキサミドには、本発明の積層チューブの優れた諸特性を損なわない範囲内であれば、ジカルボン酸単位及びジアミン単位以外の他の単位を含んでいてもよい。他の単位としては、カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドン、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸から誘導される単位が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。ジカルボン酸単位及びジアミン単位以外の他の単位の含有量は、30モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。
【0132】
JIS K−6920に準拠して、96%硫酸、ポリアミド濃度1%、25℃の条件下にて測定した(D2)ポリオキサミドの相対粘度は、積層チューブの生産性や機械的強度を十分に確保する観点から、1.8〜6.0であることが好ましく、2.0〜5.5であることがより好ましく、2.5〜4.5であることがさらに好ましい。
【0133】
(D2)ポリオキサミドの製造装置としては、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機等の混練反応押出機等、公知のポリアミド製造装置が挙げられる。重合方法としては溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法を用い、常圧、減圧、加圧操作を繰り返して重合することができる。これらの重合方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。具体的には、以下の操作で示されるような、(i)前重縮合工程、(ii)後重縮合工程の順で行うのが好ましい。
【0134】
(i)前重縮合工程:まず反応器内を窒素置換した後、上記ジアミン及び例えば、蓚酸ジエステルを混合する。混合する場合にジアミン及び蓚酸ジエステルが共に可溶な溶媒を用いても良い。ジアミン成分及び蓚酸ジエステルが共に可溶な溶媒としては、特に制限されないが、トルエン、キシレン、トリクロロベンゼン、フェノール、トリフルオロエタノール等が挙げられる。これらの中でもトルエンが好ましい。例えば、ジアミンを溶解したトルエン溶液を50℃に加熱した後、これに対して蓚酸ジエステルを加える。このとき、蓚酸ジエステルと上記ジアミンの仕込み比は、蓚酸ジエステル/上記ジアミンで、通常0.8〜1.5(モル比)であり、0.91〜1.1(モル比)であることが好ましく、0.99〜1.01(モル比)であることがより好ましい。
このように仕込んだ反応器内を攪拌及び/又は窒素バブリングしながら、常圧下で昇温する。前重縮合工程の最終到達温度は80〜150℃であることが好ましく、100〜140℃であることがより好ましい。最終到達温度での反応時間は3〜6時間であることが好ましい。
【0135】
(ii)後重縮合工程:更に高分子量化を図るために、前重縮合工程で生成した重合物を常圧下において反応器内で徐々に昇温する。昇温過程において前重縮合工程の最終到達温度、すなわち80〜150℃から、後重縮合工程の最終到達温度は、220〜300℃であることが好ましく、230〜280℃であることがより好ましく、240〜270℃であることがさらに好ましい。昇温時間を含めて後重合反応時間は1〜8時間であることが好ましく、2〜6時間であることがより好ましい。さらに後重合工程において、必要に応じて減圧下での重合を行うこともできる。減圧重合を行う場合、最終到達圧力は13.3Pa〜0.1MPaであることが好ましい。
【0136】
以下、(D2)ポリオキサミドの製造方法を具体的に説明する。まず原料の蓚酸ジエステルを容器内に仕込み、窒素置換する。容器は、後に行う重縮合反応の温度及び圧力に耐え得るものであれば、特に制限されない。その後、容器を原料のジアミンと混合する温度まで昇温させ、次いでジアミンを注入し重縮合反応を開始させる。原料を混合する温度は、原料の蓚酸ジエステル及びジアミンの融点以上、沸点未満の温度であり、かつ蓚酸ジエステルとジアミンの重縮合反応によって生じるポリオキサミドが熱分解しない温度であれば特に制限されない。混合温度が縮合反応によって生成するアルコールの沸点以上の場合、アルコールを留去、凝縮する装置を備えた容器を用いるのが望ましい。また、縮合反応によって生成するアルコールの存在下で加圧重合する場合には、耐圧容器を用いる。蓚酸ジエステルとジアミンの仕込み比は、蓚酸ジエステル/上記ジアミンで、通常、0.8〜1.2(モル比)であり、0.91〜1.09(モル比)であることが好ましく、0.98〜1.02(モル比)であることがより好ましい。
【0137】
次に、容器内をポリオキサミド樹脂の融点以上かつ熱分解しない温度以下に昇温する。例えば、1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンからなり、かつ1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンのモル比が85:15であるジアミンと蓚酸ジブチルを原料とするポリオキサミド樹脂の場合、融点は235℃であることから、240〜280℃に昇温することが好ましい(圧力は、2〜4MPa)。生成したアルコールを留去しながら、必要に応じて常圧窒素気流下もしくは減圧下において継続して重縮合反応を行う。耐圧容器内で原料を混合し、縮合反応によって生成するアルコールの存在下で加圧重合する場合は、まず生成したアルコールを留去しながら放圧する。その後、必要に応じて常圧窒素気流下もしくは減圧下において継続して重縮合反応を行う。減圧重合を行う場合、最終到達圧力は0.1〜760Torr(13.3Pa〜0.1MPa)であることが好ましい。温度は、240〜280℃であることが好ましい。また、アルコールは水冷コンデンサで冷却して液化し、回収する。
【0138】
(D1)半芳香族ポリアミド又は(D2)ポリオキサミドは、該ポリアミドの1gあたりの末端アミノ基濃度を[A](μeqg)、末端カルボキシル基濃度又は末端ホルムアミド基濃度を[B](μeq/g)とした時、[A]>[B]+5を満たす(以下、(D1)末端調整半芳香族ポリアミド又は(D2)末端調整ポリオキサミドと称する場合がある。)ことが、前記(C)変性ポリエステルエラストマーとの層間接着性、特に高温雰囲気下における層間接着強度の耐久性を考慮すると好ましく、[A]>[B]+10であることがより好ましく、[A]>[B]+15であることがさらに好ましい。さらに、[A]>20であることが好ましく、溶融安定性、ゲル状物発生抑制の点から、30<[A]<120であることがより好ましい。
【0139】
ポリアミドは、長さの異なる多数の高分子鎖の混合物であり、ポリアミド一つの高分子鎖は、分岐していない限り、二つの末端基を持っており、通常はポリアミド原料に由来するアミノ基とカルボキシル基である。しかし、どのような末端基になるかは、ポリアミド製造の際の原料の種類、原料の割合、製造法、変性剤、末端封止剤等によって変わる。(D2)ポリオキサミドにおいて、原料として、上記ジアミン及び蓚酸ジエステルを使用した場合、その末端基はアミノ基、アルコキシ基、ホルムアミド基のうちのいずれかである。ホルムアミド基の生成は、重縮合反応中の末端アルコキシ基の脱炭酸反応により発生し、原料中(上記ジアミン及び蓚酸ジエステル)の水分や反応系内の水分の影響を受ける。
【0140】
尚、末端アミノ基濃度[A](μeq/1g)は、該ポリアミドをフェノール/メタノール混合溶液に溶解し、0.05Nの塩酸で滴定して測定することができる。末端カルボキシル基濃度[B](μeq/1g)は、該ポリアミドをベンジルアルコールに溶解し、0.05Nの水酸化ナトリウム溶液で滴定して測定することができる。末端ホルムアミド基濃度[B](μeq/1g)は、後記の実施例に記載する通り、H−NMRスペクトルから求めたシグナル強度により算出することができる。
【0141】
(D1)末端調整半芳香族ポリアミド又は(D2)末端調整ポリオキサミドは、前記原料を、アミン類の存在下に、溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法で重合、又は共重合する事により製造される。あるいは、重合後、アミン類の存在下に、溶融混練することにより製造される。このように、アミン類は重合時の任意の段階、あるいは、重合後、溶融混練時の任意の段階において添加できるが、重合時の段階で添加することが好ましい。
【0142】
上記アミン類としてはモノアミン、ジアミン、トリアミン、ポリアミンが挙げられる。また、アミン類の他に、上記の末端基濃度条件の範囲を外れない限り、必要に応じて、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸等のカルボン酸類を添加しても良い。これら、アミン類、カルボン酸類は、同時に添加しても、別々に添加しても良い。アミン類、カルボン酸類は、1種又は2種以上を用いることができ、(A)脂肪族ポリアミドの説明中に記載した、モノアミン、ジアミン、トリアミン、ポリアミン、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸等が同様に挙げられる。
【0143】
添加されるアミン類の使用量は、製造しようとする(D1)末端調整半芳香族ポリアミド又は(D2)末端調整ポリオキサミドの末端アミノ基濃度、末端カルボキシル基濃度又は末端ホルムアミド基濃度及び相対粘度を考慮して、公知の方法により適宜決められる。十分な反応性を得ることと、所望の粘度を有するポリアミドの製造を容易とする観点から、通常、ポリアミドの繰り返し単位を構成するモノマー又はモノマーユニットのポリアミド原料1モルに対して()、アミン類の添加量は、0.5〜200meq/モルであることが好ましく、1.0〜100meq/モルあることがより好ましい(アミノ基の当量は、カルボキシル基又はアルコキシ基と1:1で反応してアミド基又はオキサミド基を形成するアミノ基の量を1当量とする。)。
【0144】
(D1)末端調整半芳香族ポリアミド又は(D2)末端調整ポリオキサミドにおいては、上記例示のアミン類のうち、末端基濃度の条件を満たすために、ジアミン及び/又はポリアミンを重合時に添加することが好ましく、ゲル発生抑制という観点から、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、及びポリアミンよりなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。(D1)半芳香族ポリアミドは、全ジアミン単位に対して、炭素数9〜13の脂肪族ジアミン単位を60モル%以上含むジアミン単位と、全ジカルボン酸単位に対して、テレフタル酸及び/又はナフタレンジカルボン酸単位を50モル%以上含むジカルボン酸単位とからなり、(D2)ポリオキサミドはジアミン単位に対して、炭素数9〜13の脂肪族ジアミン単位を60モル%以上含むジアミン単位と、全ジカルボン酸単位に対して、蓚酸単位を60モル%以上含むジカルボン酸単位からなるため、前記末端基濃度の条件を満たすために、重合時の原料ジアミン成分を原料ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体成分に対して過剰に仕込むことが簡便で好ましい方法である。
【0145】
また、(D1)末端調整半芳香族ポリアミド又は(D2)末端調整ポリオキサミドは、前記末端基濃度を満たす限りにおいては、末端基濃度の異なる2種類以上のポリアミドの混合物でも構わない。この場合、ポリアミド混合物の末端アミノ基濃度、末端基カルボキシル又はホルムアミド基濃度は、混合物を構成するポリアミドの末端アミノ基濃度、末端カルボキシル基又はホルムアミド基濃度及びその配合割合により決まる。
【0146】
さらに、(D1)半芳香族ポリアミド又は(D2)ポリオキサミドには、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、滑剤、無機質充填材、帯電防止剤、難燃剤、結晶化促進剤、可塑剤、着色剤、潤滑剤、耐衝撃改良材、他の熱可塑性樹脂等を添加してもよい。(D1)半芳香族ポリアミド又は(D2)ポリオキサミドの低温耐衝撃性を改良するために、耐衝撃改良材を添加することが好ましく、(A)脂肪族ポリアミドの説明中に記載した、ASTM D−790に準拠して測定した曲げ弾性率が500MPa以下の重合体を添加することがより好ましい。
【0147】
(D1)半芳香族ポリアミド又は(D2)ポリオキサミドは、他のポリアミド系樹脂又はその他の熱可塑性樹脂を含有していてもよい。他のポリアミド系樹脂又はその他の熱可塑性樹脂としては、前記(A)脂肪族ポリアミドの場合と同様の樹脂が挙げられる。さらに、(A)脂肪族ポリアミドとの混合物であっても構わない。混合物中の他のポリアミド系樹脂又はその他の熱可塑性樹脂の含有率は20質量%以下であることが好ましい。
【0148】
本発明に係わる積層チューブは、(A)脂肪族ポリアミドよりなる(a)層、(B1)ポリグリコール酸重合体と(B2)芳香族ポリエステル重合体からなる(B)ポリエステル系重合体組成物よりなる(b)層、(C)変性ポリエステル系エラストマーよりなる(c)層、及び(D1)半芳香族ポリアミド又は、(D2)ポリオキサミドよりなる(d)層を有する、少なくとも4層以上から構成される。
【0149】
好ましい実施様態としては、(a)層と(b)層の間、及び(b)層と((d)層の間に(c)層が配置される。これにより、高温雰囲気下における層間接着強度の耐久性に優れる積層チューブを得ることが可能となる。また、(b)層を含むことは必須であり、これにより、薬液透過防止性に優れる積層チューブを得ることが可能となる。より好ましい実施様態としては、(a)層が(d)層が積層チューブの最内層に配置される。(a)層が最外層に配置されることにより、耐薬品性、柔軟性に優れた積層チューブを得ることが可能となる。また、(d)層が最内層に配置されることにより、耐薬品性、薬液透過防止性に優れた積層チューブを得ることが可能となる。
【0150】
また、本発明の積層チューブの最内層に、導電性フィラーを含む(D1)半芳香族ポリアミド組成物又は導電性フィラーを含む(D2)ポリオキサミド組成物からなる層が、積層チューブの最内層に配置されると、耐薬品性、薬液透過防止性に優れるとともに、燃料配管チューブとして使用された場合、配管内を循環する燃料の内部摩擦あるいは管壁との摩擦によって発生したスパークが燃料に引火することを防止することが可能となる。その際、導電性フィラーを含まない(D1)半芳香族ポリアミド又は導電性フィラーを含まない(D2)ポリオキサミドよりなる層が、前記導電層に対して外側に配置されることにより、低温耐衝撃性、導電性を両立することが可能であり、また経済的にも有利である。
【0151】
導電性とは、例えば、ガソリンのような引火性の流体が樹脂のような絶縁体に連続的に接触した場合、静電気が蓄積して引火する可能性があるが、この静電気が蓄積しない程度の電気特性を有することを言う。これにより、燃料等の流体の搬送時に発生する静電気による爆発防止が可能となる。導電性フィラーは、樹脂に導電性能を付与するために添加されるすべての充填材が包含され、粒状、フレーク状及び繊維状フィラー等が挙げられる。
【0152】
粒状フィラーとしては、カーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。フレーク状フィラーとしては、アルミフレーク、ニッケルフレーク、ニッケルコートマイカ等が挙げられる。また、繊維状フィラーとしては、炭素繊維、炭素被覆セラミック繊維、カーボンウィスカー、カーボンナノチューブ、アルミ繊維、銅繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維等の金属繊維等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中では、カーボンナノチューブ、カーボンブラックが好ましい。
【0153】
カーボンナノチューブは、中空炭素フィブリルと称されるものであり、該フィブリルは、規則的に配列した炭素原子の本質的に連続的な多数層からなる外側領域と、内部中空領域を有し、各層と中空領域とが該フィブリルの円柱軸の周囲に実質的に同心に配置されている本質的に円柱状のフィブリルである。更に、上記外側領域の規則的に配列した炭素原子が黒鉛状であり、上記中空領域の直径が2〜20nmであることが好ましい。カーボンナノチューブの外径は、樹脂中への良好な分散性の確保や樹脂成形体へ良好な導電性を付与する観点から、3.5〜70nmであることが好ましく、4〜60nmであることがより好ましい。カーボンナノチューブのアスペクト比(長さ/外径の比をいう)は、5以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましく、500以上であることがさらに好ましい。該アスペクト比を満たすことにより、導電性ネットワークを形成しやすく、少量添加で優れた導電性を発現することができる。
【0154】
カーボンブラックは、導電性付与に一般的に使用されているカーボンブラックがすべて包含され、好ましいカーボンブラックとしては、アセチレンガスを不完全燃焼して得られるアセチレンブラックや、原油を原料にファーネス式不完全燃焼によって製造されるケッチェンブラック等のファーネスブラック、オイルブラック、ナフタリンブラック、サーマルブラック、ランプブラック、チャンネルブラック、ロールブラック、ディスクブラック等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でもアセチレンブラック及び/又はファーネスブラックがより好ましい。
【0155】
また、カーボンブラックは、その粒子径、表面積、DBP吸油量、灰分等の特性の異なる種々のカーボン粉末が製造されている。該カーボンブラックの特性に制限は無いが、良好な鎖状構造を有し、凝集密度の大きいものが好ましい。カーボンブラックの多量配合は耐衝撃性の面で好ましくなく、より少量で優れた電気伝導度を得る観点から、平均粒径は500nm以下であることが好ましく、5〜100nmであることがより好ましく、10〜70nmであることがさらに好ましく、また、表面積(BET法)は10m/g以上であることが好ましく、30m/g以上であることがより好ましく、50m/g以上であることがさらに好ましく、更に、DBP(ジブチルフタレート)吸油量は50ml/100g以上であることが好ましく、100ml/100gであることがより好ましく、150ml/100g以上であることがさらに好ましい。また、灰分は0.5質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以下であることがより好ましい。ここでいうDBP吸油量は、ASTM D−2414に定められた方法で測定した値である。また、カーボンブラックは、揮発分含量が1.0質量%未満であることが好ましい。
これら、導電性フィラーはチタネート系、アルミ系、シラン系等の表面処理剤で表面処理を施されていても良い。また溶融混練作業性を向上させるために造粒されたものを用いることも可能である。
【0156】
導電性フィラーの配合量は、用いる導電性フィラーの種類により異なるため、一概に規定はできないが、導電性と流動性、機械的強度等とのバランスの観点から、(D1)半芳香族ポリアミド又は(D2)ポリオキサミド100質量部に対して、一般に3〜30質量部であることが好ましい。
また、かかる導電性フィラーは、十分な帯電防止性能を得る観点から、溶融押出物の表面固有抵抗値が10 Ω/square以下であることが好ましく、10Ω/square以下であることがより好ましい。但し上記導電性フィラーの配合は強度、流動性の悪化を招きやすい。そのため目標とする導電レベルが得られれば、上記導電性フィラーの配合量はできるだけ少ない方が望ましい。
【0157】
[積層チューブ]
本発明の積層チューブでは、各層の厚みは特に制限されず、各層を構成する重合体の種類、積層チューブにおける全体の層数、用途等に応じて調節し得るが、それぞれの層の厚みは、積層チューブのアルコールガソリン透過防止性、低温耐衝撃性、柔軟性等の特性を考慮して決定され、一般には、(a)層、(b)層、(c)層、(d)層の厚みは、積層チューブ全体の厚みに対してそれぞれ3〜90%であることが好ましい。薬液透過防止性を考慮して(b)層、(d)層の厚みは積層チューブ全体の厚みに対して、5〜50%であることがより好ましく、7〜30%であることがさらに好ましい。
【0158】
また、本発明の積層チューブにおける全体の層数は、(a)層、(b)層、(c)層、(d)層を含む、少なくとも4層である限り、特に限定されない。本発明の積層チューブの層数は4層以上であるが、チューブ製造装置の機構から判断して8層以下であることが好ましく、5層〜7層であることがより好ましい。
また、本発明の積層チューブは、(a)層、(b)層、(c)層、(d)層の4層以外に、更なる機能を付与、あるいは経済的に有利な積層チューブを得るために、他の熱可塑性樹脂よりなる層を1層又は2層以上を有していてもよい。
【0159】
本発明の積層チューブの層構成は、以下に具体的に層構成を例示することができる。
ここで、導電性フィラーを含む(D1)半芳香族ポリアミド組成物又は導電性フィラーを含む(D2)ポリオキサミド組成物からなる(d’)層とする。
4層構造:(a)/(c)/(b)/(d)
5層構造:(a)/(c)/(b)/(c)/(d)、(a)/(c)/(b)/(c)/(d’)
6層構造:(a)/(c)/(b)/(c)/(d)/(d’)、(a)/(c)/(b)/(c)/(a)/(d)、(a)/(c)/(b)/(c)/(a)/(d’)
7層構造:(a)/(c)/(b)/(c)/(a)/(d)/(d’)
が挙げられるが、これに限定されるものではない。
好ましい層構成として、(a)/(c)/(b)/(c)/(d)、(a)/(c)/(b)/(c)/(d)/(d’)、(a)/(c)/(b)/(c)/(a)/(d)、(a)/(c)/(b)/(c)/(a)/(d)/(d’)が挙げられる。
【0160】
他の熱可塑性樹脂としては、本発明において規定された(A)脂肪族ポリアミド、(D1)半芳香族ポリアミド又は(D2)ポリオキサミド以外の、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリメタキシリレンスベラミド(ポリアミドMXD8)、ポリメタキシリレンアゼラミド(ポリアミドMXD9)、ポリメタキシリレンセバカミド(ポリアミドMXD10)、ポリメタキシリレンドデカミド(ポリアミドMXD12)、ポリメタキシリレンテレフタラミド(ポリアミドMXDT)、ポリメタキシリレンイソフタラミド(ポリアミドMXDI)、ポリメタキシリレンナフタラミド(ポリアミドMXDN)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンテレフタラミド(ポリアミドPACMT)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンイソフタラミド(ポリアミドPACMI)、ポリイソホロンアジパミド(ポリアミドIPD6)、ポリイソホロンドデカミド(ポリアミドIPD12)、ポリイソホロンテレフタラミド(ポリアミドIPDT)、ポリイソホロンイソフタラミド(ポリアミドIPDI)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド(ポリアミド5T)、ポリペンタメチレンイソフタルアミド(ポリアミド5I)、ポリペンタメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド5T(H))、ポリペンタメチレンナフタラミド(ポリアミド5N)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリヘキサメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド6T(H))、ポリヘキサメチレンナフタラミド(ポリアミド6N)、ポリ2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド(ポリアミドM5T)、ポリ2−メチルペンタメチレンイソフタルアミド(ポリアミドM5I)、ポリ2−メチルペンタメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミドM5T(H))、ポリ2−メチルペンタメチレンナフタラミド(ポリアミドM5N)、ポリノナメチレンイソフタラミド(ポリアミド9I)、ポリノナメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド9T(H))、ポリ2−メチルオクタメチレンイソフタルアミド(ポリアミドM8I)、ポリ2−メチルオクタメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミドM8T(H))、ポリトリメチルヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミドTMHI)、ポリトリメチルヘキサメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミドTMHT(H))、ポリデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド10I)、ポリデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド10T(H))、ポリウンデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド11I)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド11T(H))、ポリドデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド12I)、ポリドデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド12T(H))やこれらポリアミド原料モノマーを数種用いた共重合体等のポリアミド系樹脂が挙げられる。
【0161】
また、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(EFEP)、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体(THV)、フッ化ビニリデン/パーフルオロアルキルビニルエーテル/テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、クロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/クロロトリフルオロエチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、クロロトリフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン/フッ化ビニリデン共重合体、クロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、クロロトリフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、クロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン/フッ化ビニリデン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂が挙げられる。
【0162】
さらに、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン/プロピレン共重合体(EPR)、エチレン/ブテン共重合体(EBR)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン/メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン/アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン/アクリル酸エチル共重合体(EEA)等のポリオレフィン系樹脂及び、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等のカルボキシル基及びその金属塩(Na、Zn、K、Ca、Mg)、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物等の酸無水物基、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル等のエポキシ基等の官能基が含有された、上記ポリオレフィン系樹脂、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド(PPO)等のポリエーテル系樹脂、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)等のポリサルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリチオエーテルサルホン(PTES)等のポリチオエーテル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリルエーテルケトン(PAEK)等のポリケトン系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS)、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体(MBS)等のポリニトリル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)等のポリメタクリレート系樹脂、ポリ酢酸ビニル(PVAc)等のポリビニルエステル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体等のポリ塩化ビニル系樹脂、酢酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート(PC)等のポリカーボネート系樹脂、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド等のポリイミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマー等が挙げられる。
【0163】
また、熱可塑性樹脂以外の任意の基材、例えば、紙、金属系材料、無延伸、一軸又は二軸延伸プラスチックフィルム又はシート、織布、不織布、金属綿、木材等を積層することも可能である。金属系材料としては、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル、金、銀、チタン、モリブデン、マグネシウム、マンガン、鉛、錫、クロム、ベリリウム、タングステン、コバルト等の金属や金属化合物及びこれら2種類以上からなるステンレス鋼等の合金鋼、アルミニウム合金、黄銅、青銅等の銅合金、ニッケル合金等の合金類等が挙げられる。
【0164】
積層チューブ製造法としては、層の数もしくは材料の数に対応する押出機を用いて、溶融押出し、ダイ内あるいは外において同時に積層する方法(共押出法)、あるいは、一旦、単層チューブあるいは、上記の方法により製造された積層チューブを予め製造しておき、外側に順次、必要に応じては接着剤を使用し、積層する方法(コーティング法)が挙げられる。本発明の積層チューブにおいては、各種材料を溶融状態で共押出し、両者を熱融着(溶融接着)して一段階で積層構造のチューブを製造する共押出成形により製造されることが好ましい。
【0165】
また、得られる積層チューブが複雑な形状である場合や、成形後に加熱曲げ加工を施して成形品とする場合は、成形品の残留歪みを除去するために、上記の積層チューブを形成した後、前記チューブを構成する樹脂の融点のうち最も低い融点未満の温度で、0.01〜10時間熱処理して目的の成形品を得る事も可能である。
【0166】
積層チューブにおいては、波形領域を有するものであってもよい。波形領域とは、波形形状、蛇腹形状、アコーディオン形状、又はコルゲート形状等に形成した領域である。波形領域は、積層チューブ全長にわたり有するものだけではなく、途中の適宜の領域に部分的に有するものであってもよい。波形領域は、まず直管状のチューブを成形した後に、引き続いてモールド成形し、所定の波形形状等とすることにより容易に形成することができる。かかる波形領域を有することにより、衝撃吸収性を有し、取り付け性が容易となる。さらに、例えば、コネクター等の必要な部品を付加したり、曲げ加工によりL字、U字の形状等にする事が可能である。
【0167】
このように成形した積層チューブの外周の全部又は一部には、石ハネ、他部品との摩耗、耐炎性を考慮して、エピクロルヒドリンゴム(ECO)、アクリロニトリル/ブタジエンゴム(NBR)、NBRとポリ塩化ビニルの混合物、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、アクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン/プロピレンゴム(EPR)、エチレン/プロピレン/ジエンゴム(EPDM)、NBRとEPDMの混合物ゴム、塩化ビニル系、オレフィン系、エステル系、アミド系等の熱可塑性エラストマー等から構成するソリッド又はスポンジ状の保護部材(プロテクター)を配設することができる。保護部材は既知の手法によりスポンジ状の多孔体としてもよい。多孔体とすることにより、軽量で断熱性に優れた保護部を形成できる。また、材料コストも低減できる。あるいは、ガラス繊維等を添加してその強度を改善してもよい。保護部材の形状は特に限定されないが、通常は、筒状部材又は積層チューブを受け入れる凹部を有するブロック状部材である。筒状部材の場合は、予め作製した筒状部材に積層チューブを後で挿入したり、あるいは積層チューブの上に筒状部材を被覆押出しして両者を密着して作ることができる。両者を接着させるには、保護部材内面あるいは前記凹面に必要に応じ接着剤を塗布し、これに積層チューブを挿入又は嵌着し、両者を密着することにより、積層チューブと保護部材の一体化された構造体を形成する。また、金属等で補強する事も可能である。
【0168】
積層チューブの外径は、燃料(例えばガソリン)等の流量を考慮し、肉厚は燃料の透過性が増大せず、また、通常のチューブの破壊圧力を維持できる厚みで、かつ、チューブの組み付け作業容易性及び使用時の耐振動性が良好な程度の柔軟性を維持することができる厚みに設計されるが、限定されるものではない。外径は4〜300mm、内径は3〜250mm、肉厚は0.5〜25mmであることが好ましい。
【0169】
本発明の積層チューブは、自動車部品、内燃機関用途、電動工具ハウジング類等の機械部品を始め、工業材料、産業資材、電気・電子部品、医療、食品、家庭・事務用品、建材関係部品、家具用部品等各種用途に使用することが可能である。
【0170】
また、本発明の積層チューブは、薬液透過防止性に優れるため、薬液搬送チューブに好適である。薬液としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール、フェノール系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、二塩化エチレン、パークロルエチレン、モノクロルエタン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、パークロルエタン、クロルベンゼン等のハロゲン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノン等のケトン系溶媒、ガソリン、灯油、ディーゼルガソリン、含アルコールガソリン、メチル−t−ブチルエーテル、含酸素ガソリン、含アミンガソリン、サワーガソリン、ひまし油ベースブレーキ液、グリコールエーテル系ブレーキ液、ホウ酸エステル系ブレーキ液、極寒地用ブレーキ液、シリコーン油系ブレーキ液、鉱油系ブレーキ液、パワーステアリングオイル、含硫化水素オイル、ウインドウオッシャー液、エンジン冷却液、尿素溶液、医薬剤、インク、塗料等が挙げられる。本発明の積層チューブは、上記薬液を搬送するチューブとして好適であり、具体的には、フィードチューブ、リターンチューブ、エバポチューブ、フューエルフィラーチューブ、ORVRチューブ、リザーブチューブ、ベントチューブ等の燃料チューブ、オイルチューブ、石油掘削チューブ、ブレーキチューブ、ウインドウオッシャー液用チューブ、エンジン冷却液(LLC)チューブ、リザーバータンクチューブ、尿素溶液搬送用チューブ、冷却水、冷媒等用クーラーチューブ、エアコン冷媒用チューブ、ヒーターチューブ、ロードヒーティングチューブ、床暖房チューブ、インフラ供給用チューブ、消火器及び消火設備用チューブ、医療用冷却機材用チューブ、インク、塗料散布チューブ、その他薬液チューブが挙げられる。特に、燃料チューブとして好適である。
【実施例】
【0171】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
尚、実施例及び比較例における分析及び物性の測定は次のように行った。
【0172】
ポリアミド系樹脂の特性は、以下の方法で測定した。
[相対粘度]
JIS K−6920に準じて、96%の硫酸中、ポリアミド濃度1%、温度25℃の条件下で測定した。
【0173】
[末端カルボキシル基濃度]
三つ口ナシ型フラスコに所定量のポリアミド試料を入れ、ベンジルアルコール40mLを加えた後、窒素気流下、180℃に設定したオイルバスに浸漬する。上部に取り付けた攪拌モーターにより攪拌溶解し、指示薬にフェノールフタレインを用いて0.05Nの水酸化ナトリウム溶液で滴定を行い、末端カルボキシル基濃度を求めた。
【0174】
[末端アミノ基濃度]
活栓付三角フラスコに所定量のポリアミド試料を入れ、あらかじめ調整しておいた溶媒フェノール/メタノール(体積比9/1)40mLを加えた後、マグネットスターラーで攪拌溶解し、指示薬にチモールブルーを用いて0.05Nの塩酸で滴定を行い、末端アミノ基濃度を求めた。
【0175】
[末端ホルムアミド基濃度]
蓚酸ジブチルを用いた場合、末端アミノ基濃度[NH]、末端ブトキシ基濃度[OBu]、末端ホルムアミド基濃度[NHCHO]は次の式に従ってそれぞれ求めた。
・末端アミノ基濃度[NH]=n(NH)/Mn
・末端ブトキシ基濃度[OBu]=n(OBu)/Mn
・末端ホルムアミド基濃度[NHCHO]=n(NHCHO)/Mn
数平均分子量(Mn)は、H−NMRスペクトルから求めたシグナル強度をもとに、例えば、蓚酸源として蓚酸ジブチル、ジアミン成分として炭素数Xのジアミンを用いて製造したポリオキサミド〔以下、PAX2と略称する。〕の場合は下式により算出した。
Mn=np×(14.02×(炭素数X)+86.06)+n(NH2)×(14.02×(炭素数X)+31.044)+n(OBu)×129.13+n(NHCHO)×29.02
尚、H−NMRの測定条件は以下の通りである。
・使用機種:ブルカー・バイオスピン社製、AVANCE500
・溶媒:重硫酸
・積算回数:1,024回
【0176】
また、前記式中の各項は以下のように規定される。
・np=Np/[(N(NH2)+N(NHCHO)+N(OBu))/2]
・n(NH)=N(NH2)/[(N(NH)+N(NHCHO)+N(OBu))/2]
・n(NHCHO)=N(NHCHO)/[(N(NH)+N(NHCHO)+N(OBu))/2]
・n(OBu)=N(OBu)/[(N(NH)+N(NHCHO)+N(OBu))/2]
・Np=Sp/sp−N(NHCHO)
・N(NH)=S(NH)/s(NH2)
・N(NHCHO)=S(NHCHO)/s(NHCHO)
・N(OBu)=S(OBu)/s(OBu)
但し、各項は以下の意味を有する。
・Np:PAX2の末端ユニットを除いた、分子鎖中の繰り返しユニット総数。
・np:分子1本当たりの分子鎖中の繰り返しユニット数。
・Sp:PAX2の末端を除いた、分子鎖中の繰り返しユニット中のオキサミド基に隣接するメチレン基のプロトンに基づくシグナル(3.1ppm付近)の積分値。
・sp:積分値Spにカウントされる水素数(4個)。
・N(NH):PAX2の末端アミノ基の総数。
・n(NH):分子1本当たりの末端アミノ基の数。
・S(NH):PAX2の末端アミノ基に隣接するメチレン基のプロトンに基づくシグナル(2.6ppm付近)の積分値。
・s(NH):積分値S(NH)にカウントされる水素数(2個)。
・N(NHCHO):PAX2の末端ホルムアミド基の総数。
【0177】
また、積層チューブの各物性は、以下の方法で測定した。
[低温耐衝撃性]
SAE J−2260 7.5に記載の方法で、−40℃にて衝撃試験を実施した。
【0178】
[薬液(含アルコールガソリン)透過防止性]
200mmにカットしたチューブの片端を密栓し、内部にFuelC(イソオクタン/トルエン=50/50体積比)とエタノールを90/10体積比に混合した含アルコールガソリンを入れ、残りの端部も密栓した。その後、全体の質量を測定し、次いで試験チューブを60℃のオーブンに入れ、一日毎に質量変化を測定した。一日当たりの質量変化を、チューブ1mあたりの内層表面積で除して含アルコールガソリン透過量(g/m・day)を算出した。
【0179】
[層間接着性]
200mmにカットしたチューブをさらに縦方向に半分にカットし、テストピースを作成した。万能材料試験機(オリエンテック社製、テンシロンUTM III―200)を用い、50mm/分の引張速度にて180°剥離試験を実施した。S−Sカーブの極大点から剥離強度を読み取り、層間接着性を評価した。
【0180】
[高温雰囲気下の層間接着強度の耐久性]
積層チューブを20cm長に切断したものを試料とした。この試料を100℃の恒温槽内にセットし、250時間保持した。その後、チューブを取り出し、上記の方法にて、接着強度を測定し、高温雰囲気下の層間接着強度の耐久性を評価した。
【0181】
[耐モノマー、オリゴマー溶出性]
1mにカットしたチューブの片端を密栓し、内部にFuelC(イソオクタン/トルエン=50/50体積比)とエタノールを90/10体積比に混合した含アルコールガソリンを入れ、残りの端部も密栓した。その後、試験チューブを60℃のオーブンに入れ、7日間処理した。処理終了後、取り出したチューブ内の含アルコールガソリンを通過粒子径8μmのフィルターにて濾過し、捕集物の質量を測定した。捕集物の質量を処理日数及びチューブの内層表面積で除してモノマー、オリゴマー溶出量(g/m・day)を算出した。尚、処理終了後、チューブ内から抜き出した含アルコールガソリンの色調についても目視にて観察した。
【0182】
[実施例及び比較例で用いた材料]
(A)脂肪族ポリアミド
(a−1)ポリアミド12の製造
70リットルのオートクレーブに、ドデカンラクタム20kg、水0.5kgと5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン49.3g(1/175 eq/molドデカンラクタム)を仕込み、重合槽内を窒素置換した後、180℃まで加熱し、この温度で反応系内が均一な状態になるように攪拌した。次いで重合槽内温度を260℃まで昇温させ、槽内圧力を3.5MPaに調圧しながら、2時間攪拌下に重合した。その後、約2時間かけて常圧に放圧し、次いで、53kPaまで減圧し、減圧下において4時間重合を行なった。次いで、窒素をオートクレーブ内に導入し、常圧に復圧後、反応容器の下部ノズルからストランドとして抜き出し、カッティングしてペレットを得た。このペレットを減圧乾燥し、相対粘度が2.26、末端アミノ基濃度45μeq/g、末端カルボキシル基濃度24μeq/gのポリアミド12を得た(以下、このポリアミド12を(a−1)という。)。ポリアミド12の末端アミノ基濃度を[A](μeq/g)、末端カルボキシル基濃度を[B](μeq/g)とした時、[A]>[B]+5を満たす。
【0183】
(A−1)ポリアミド12樹脂組成物の製造
(a−1)に、耐衝撃改良材として無水マレイン酸変性エチレン/プロピレン共重合体(JSR(株)製、JSR T7712SP)をあらかじめ混合し、二軸溶融混練機((株)日本製鋼所製、型式:TEX44)に供給する一方、該二軸溶融混練機のシリンダーの途中から、可塑剤として、ベンゼンスルホン酸ブチルアミドを定量ポンプにより注入し、シリンダー温度180〜260℃で溶融混練し、溶融樹脂をストランド状に押出した後、これを水槽に導入し、冷却、カット、真空乾燥して、ポリアミド12樹脂85質量%、耐衝撃改良材10質量%、可塑剤5質量%よりなるポリアミド12樹脂組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド12樹脂組成物を(A−1)という。)。
【0184】
(a−2)ポリアミド12の製造
(a−1)の製造において、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン49.3gをポリエチレンイミン(日本触媒(株)製、エポミンSP−12)92.0gに変更した以外は、(a−1)ポリアミド12の製造と同様の方法にて、相対粘度が1.90、末端アミノ基濃度122μeq/g、末端カルボキシル基濃度17μeq/gのポリアミドを得た(以下、このポリアミド12を(a−2)という。)。ポリアミド12の末端アミノ基濃度を[A](μeq/g)、末端カルボキシル基濃度を[B](μeq/g)とした時、[A]>[B]+5を満たす。
【0185】
(A−2)ポリアミド12樹脂組成物の製造
(A−1)の製造において、(a−1)を(a−2)に変更した以外は、(A−1)の製造と同様の方法にて、ポリアミド12樹脂85質量%、耐衝撃改良材10質量%、可塑剤5質量%よりなるポリアミド12樹脂組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド12樹脂組成物を(A−2)という。)。
【0186】
(A−3)ポリアミド12樹脂組成物の製造
(A−1)の製造において、可塑剤を使用しない以外は、(A−1)の製造と同様の方法にて、ポリアミド12樹脂90質量%、耐衝撃改良材10質量%よりなるポリアミド12樹脂組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド12樹脂組成物を(A−3)という。)。
【0187】
(B1)ポリグリコール酸重合体
(B1−1)ポリグリコール酸重合体組成物
融点Tmより20℃高い温度(Tm+20℃)及び剪断速度120sec−1で測定した溶融粘度が1,600Pa・sのポリグリコール酸単独重合体100質量部に対して、熱安定剤として、旭電化(株)製アデカスタブAX−71(リン酸モノステアリル50モル%とリン酸ジステアリル50モル%)を0.03質量部の割合で添加した(以下、このポリグリコール酸重合体組成物を(B1−1)という。)。
【0188】
(B1−2)ポリグリコール酸重合体組成物
合成時に、ポリグリコール酸重合体100質量部に対し、N,N−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド0.5質量部を反応させて、ポリグリコール酸重合体のカルボキシル基末端を封止した。同重合体組成物の融点Tmより20℃高い温度(Tm+20℃)及び剪断速度120sec−1で測定した溶融粘度は1,200Pa・sであり、ポリグリコール酸重合体100質量部に対し、旭電化(株)製アデカスタブAX−71を0.03質量部の割合でさらに添加した(以下、このポリグリコール酸重合体組成物を(B1−2)という。)。
【0189】
(B2)芳香族ポリエステル重合体
(B2−1)ポリブチレンテレフタレート:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ノバデュラン 5020
(B2−2)ポリブチレンナフタレート:帝人(株)製、TQB−0T
【0190】
(C)変性ポリエステルエラストマー
(C−1)変性ポリエステル系エラストマー
ポリブチレンテレフタレートをハードセグメントとし、数平均分子量2,000のポリテトラメチレンエーテルグリコールをソフトセグメントとする、ポリエステルポリエーテルブロック共重合体であって、該共重合体中のポリテトラメチレンエーテルグリコールセグメントの含有量が65質量%のポリエステルエラストマー100質量部と、無水マレイン酸(和光純薬工業(株)製)を0.5質量部、及び、ラジカル発生剤として2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(日本油脂(株)製、パーヘキサ25B)0.05質量部をあらかじめ混合し、二軸溶融混練機((株)日本製鋼所製 型式:TEX44)に供給し、シリンダー温度190〜230℃で溶融混練し、溶融樹脂をストランド状に押出した後、これを水槽に導入し、冷却、カット、真空乾燥して、変性ポリエステルエラストマーのペレットを得た(以下、この変性ポリエステルエラストマーを(C−1)という。)。該変性ポリエステルエラストマーにおいて、赤外吸収スペクトルにより測定された変性量は0.34であった。
(C−2)未変性ポリエステル系エラストマー:東レ・デュポン社製、ハイトレル4275
【0191】
(D)半芳香族ポリアミド又はポリオキサミド
(D1)半芳香族ポリアミド
(d1−1)半芳香族ポリアミドの製造
テレフタル酸10,178g(61.3モル)、1,9−ノナンジアミン4,995g(31.6モル)、2−メチル−1,8−オクタンジアミン4,995g(31.6モル)、安息香酸75.2g(0.62モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物20g(原料の総質量に対して0.1質量%)及び蒸留水5リットルを内容積40リットルオートクレーブに入れ、窒素置換した。
この混合物を100℃で30分間攪拌し、2時間かけて内部温度を220℃に昇温した。この時、オートクレーブは2.0MPaまで昇圧した。そのまま2時間反応を続けた後230℃に昇温し、その後2時間、230℃に温度を保ち、水蒸気を徐々に抜いて圧力を2.0MPaに保ちながら反応させた。次に、30分かけて圧力を1.0MPaまで下げ、更に1時間反応させて、プレポリマーを得た。これを、100℃、減圧下で12時間乾燥し、2mm以下の大きさまで粉砕した。これを230℃、0.013kPa下にて、10時間固相重合し、その後、減圧乾燥し、融点が265℃、相対粘度が2.38、末端アミノ基濃度79μeq/g、末端カルボキシル基濃度5μeq/gの半芳香族ポリアミドを得た(以下、この半芳香族ポリアミドを(d1−1)という。)。半芳香族ポリアミドの末端アミノ基濃度を[A](μeq/g)、末端カルボキシル基濃度を[B](μeq/g)とした時、[A]>[B]+5を満たす。
【0192】
(D1−1)半芳香族ポリアミド樹脂組成物の製造
半芳香族ポリアミド(d1−1)と耐衝撃改良材として無水マレイン酸変性エチレン/プロピレン共重合体(JSR(株)製、JSR T7761P)をあらかじめ混合し、二軸溶融混練機((株)日本製鋼所製、型式:TEX44)に供給し、シリンダー温度240〜330℃で溶融混練し、溶融樹脂をストランド状に押出した後、これを水槽に導入し、冷却、カット、真空乾燥して、半芳香族ポリアミド85質量%、耐衝撃改良材15質量%よりなる半芳香族ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た(以下、この半芳香族ポリアミド樹脂組成物を(D1−1)という。)。
【0193】
(d1−2)半芳香族ポリアミドの製造
(d1−1)の製造において、1,9−ノナンジアミン4,995g(31.6モル)、2−メチル−1,8−オクタンジアミン4,995g(31.6モル)を、1,12−ドデカンジアミン12,645.7g(63.1モル)に変更した以外は、(d1−1)の製造と同様の方法にて、融点が301℃、相対粘度が2.35、末端アミノ基濃度76μeq/g、末端カルボキシル基濃度7μeq/gの半芳香族ポリアミドを得た(以下、この半芳香族ポリアミドを(d1−2)という。)。半芳香族ポリアミドの末端アミノ基濃度を[A](μeq/g)、末端カルボキシル基濃度を[B](μeq/g)とした時、[A]>[B]+5を満たす。
【0194】
(D1−2)半芳香族ポリアミド樹脂組成物の製造
(D1−1)の製造において、(d1−1)を(d1−2)に変更した以外は、(D1−1)の製造と同様の方法にて、半芳香族ポリアミド85質量%、耐衝撃改良材15質量%よりなる半芳香族ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た(以下、この半芳香族ポリアミド樹脂組成物を(D1−2)という。)。
【0195】
(d1−3)半芳香族ポリアミドの製造
(d1−1)の製造において、テレフタル酸10,178g(61.3モル)を、2,6−ナフタレンジカルボン酸13,244.7g(61.3モル)に変更した以外は、(d1−1)の製造と同様の方法にて、融点が275℃、相対粘度が2.32、末端アミノ基濃度74μeq/g、末端カルボキシル基濃度8μeq/gの半芳香族ポリアミドを得た(以下、この半芳香族ポリアミドを(d1−3)という。)。半芳香族ポリアミドの末端アミノ基濃度を[A](μeq/g)、末端カルボキシル基濃度を[B](μeq/g)とした時、[A]>[B]+5を満たす。
【0196】
(D1−3)半芳香族ポリアミド樹脂組成物の製造
(D1−1)の製造において、(d1−1)を(d1−3)に変更した以外は、(D1−1)の製造と同様の方法にて、半芳香族ポリアミド85質量%、耐衝撃改良材15質量%よりなる半芳香族ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た(以下、この半芳香族ポリアミド樹脂組成物を(D1−3)という。)。
【0197】
(d1−4)半芳香族ポリアミドの製造
(d1−2)の製造において、テレフタル酸10,178g(61.3モル)を、2,6−ナフタレンジカルボン酸13,244.7g(61.3モル)に変更した以外は、(d1−2)の製造と同様の方法にて、融点が310℃、相対粘度が2.36、末端アミノ基濃度73μeq/g、末端カルボキシル基濃度8μeq/gの半芳香族ポリアミドを得た(以下、この半芳香族ポリアミドを(d1−4)という。)。半芳香族ポリアミドの末端アミノ基濃度を[A](μeq/g)、末端カルボキシル基濃度を[B](μeq/g)とした時、[A]>[B]+5を満たす。
【0198】
(D1−4)半芳香族ポリアミド樹脂組成物の製造
(D1−1)の製造において、(d1−1)を(d1−4)に変更した以外は、(D1−1)の製造と同様の方法にて、半芳香族ポリアミド85質量%、耐衝撃改良材15質量%よりなる半芳香族ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た(以下、この半芳香族ポリアミド樹脂組成物を(D1−4)という。)。
【0199】
(D1−5)導電性半芳香族ポリアミド樹脂組成物の製造
(D1−2)の製造において、無水マレイン酸変性エチレン/プロピレン共重合体(JSR(株)製、JSR T7761P)を無水マレイン酸変性エチレン/プロピレン共重合体(JSR(株)製、JSR T7761P)及び導電性フィラーとしてカーボンブラック(アクゾノーベル(株)製、ケッチェンブラックEC600JD)に変更した以外は、(D1−2)の製造と同様の方法にて、半芳香族ポリアミド79質量%、耐衝撃改良材15質量%、導電性フィラー6質量%よりなる導電性半芳香族ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た(以下、この導電性半芳香族ポリアミド樹脂組成物を(D1−5)という。)。
【0200】
(d1−5)半芳香族ポリアミドの製造
テレフタル酸7720.4g(46.5モル)、アジピン酸2,262g(15.5モル)、1,6−ヘキサンジアミン5,750.7g(49.5モル)、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン1,717.7g(14.8モル)、酢酸113.2g(1.89モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物17.4g及び蒸留水5リットルを内容積40リットルオートクレーブに入れ、窒素置換した。
この混合物を100℃で30分間攪拌し、2時間かけて内部温度を220℃に昇温した。この時、オートクレーブは2.0MPaまで昇圧した。そのまま2時間反応を続けた後230℃に昇温し、その後2時間、230℃に温度を保ち、水蒸気を徐々に抜いて圧力を2.0MPaに保ちながら反応させた。次に、30分かけて圧力を1.0MPaまで下げ、更に1時間反応させて、プレポリマーを得た。これを、100℃、減圧下で12時間乾燥し、2mm以下の大きさまで粉砕した。これを230℃、0.013kPa下にて、10時間固相重合し、その後、減圧乾燥し、相対粘度が2.13、末端アミノ基濃度91μeq/g、末端カルボキシル基濃度14μeq/gの半芳香族ポリアミドを得た(以下、この半芳香族ポリアミドを(d1−5)という。)。半芳香族ポリアミドの末端アミノ基濃度を[A](μeq/g)、末端カルボキシル基濃度を[B](μeq/g)とした時、[A]>[B]+5を満たす。
【0201】
(D1−6)半芳香族ポリアミド樹脂組成物の製造
(D1−1)の製造において、(d1−1)を(d1−5)に変更した以外は、(D1−1)の製造と同様の方法にて、半芳香族ポリアミド85質量%、耐衝撃改良材15質量%よりなる半芳香族ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た(以下、この半芳香族ポリアミド樹脂組成物を(D1−6)という。)。
【0202】
(D2)ポリオキサミド
(d2−1)ポリオキサミドの製造
攪拌機、温度計、トルクメーター、圧力計、ダイアフラムポンプを直結した原料投入口、窒素ガス導入口、放圧口、圧力調整装置及びポリマー放出口を備えた内容積が150リットルの圧力容器に蓚酸ジブチル28.40kg(140.4モル)を仕込み、圧力容器の内部の純度が99.9999%の窒素ガスで0.5MPaに加圧した後、次に常圧まで窒素ガスを放出する操作を5回繰返し、窒素置換を行った後、封圧下、攪拌しながら系内を昇温した。約30分間かけて蓚酸ジブチルの温度を100℃にした後、1,9−ノナンジアミン18.89kg(119.3モル)と2−メチル−1,8−オクタンジアミン3.34kg(21.1モル)の混合物(1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンのモル比が85:15)をダイアフラムポンプにより流速1.49リットル/分で約17分間かけて反応容器内に供給すると同時に昇温した。供給直後の圧力容器内の内圧は、重縮合反応によって生成したブタノールによって0.35MPaまで上昇し、重縮合物の温度は約170℃まで上昇した。その後、1時間かけて温度を235℃まで昇温した。その間、生成したブタノールを放圧口より抜き出しながら、内圧を0.5MPaに調節した。重縮合物の温度が235℃に達した直後から放圧口よりブタノールを約20分間かけて抜き出し、内圧を常圧にした。常圧にしたところから、1.5リットル/分で窒素ガスを流しながら昇温を開始し、約1時間かけて重縮合物の温度を260℃にし、260℃で4.5時間反応させた。その後、攪拌を止めて系内を窒素で1MPaに加圧して約10分間静置した後、内圧0.5MPaまで放圧し、重縮合物を圧力容器下部抜出口より紐状に抜き出した。紐状の重縮合物は直ちに冷却し、水冷した紐状の樹脂はペレタイザーによってペレット化し、融点235℃、相対粘度は3.36、末端アミノ基濃度46μeq/g、末端ホルムアミド基濃度34μeq/gのポリオキサミドを得た(以下、このポリオキサミドを(d2−1)という。)。ポリオキサミドの末端アミノ基濃度を[A](μeq/g)、末端ホルムアミド基濃度を[B](μeq/g)とした時、[A]>[B]+5を満たす。
【0203】
(D2−1)ポリオキサミド樹脂組成物の製造
(d2−1)と耐衝撃改良材として無水マレイン酸変性エチレン/プロピレン共重合体(JSR(株)製、JSR T7761P)をあらかじめ混合し、二軸溶融混練機((株)日本製鋼所製、型式:TEX44)に供給し、シリンダー温度240〜330℃で溶融混練し、溶融樹脂をストランド状に押出した後、これを水槽に導入し、冷却、カット、真空乾燥して、ポリオキサミド85質量%、耐衝撃改良材15質量%よりなるポリオキサミド樹脂組成物のペレットを得た(以下、このポリオキサミド樹脂組成物を(D2−1)という。)。
【0204】
(d2−2)ポリオキサミドの製造
(d2−1)の製造において、1,9−ノナンジアミン18.89kg(119.3モル)と2−メチル−1,8−オクタンジアミン3.34kg(21.1モル)を、1,12−ドデカンジアミン28.08kg(140.4モル)に変更した以外は、(d2−1)の製造と同様の方法にて、融点が235℃、相対粘度が3.02、末端アミノ基濃度45μeq/g、末端ホルムアミド基濃度22μeq/gのポリオキサミドを得た(以下、このポリオキサミドを(d2−2)という。)。ポリオキサミドの末端アミノ基濃度を[A](μeq/g)、末端ホルムアミド基濃度を[B](μeq/g)とした時、[A]>[B]+5を満たす。
【0205】
(D2−2)ポリオキサミド樹脂組成物の製造
(D2−1)の製造において(d2−1)を(d2−2)に変更した以外は、(D2−1)の製造と同様の方法にて、ポリオキサミド85質量%、耐衝撃改良材15質量%よりなるポリオキサミド樹脂組成物のペレットを得た(以下、このポリオキサミド樹脂組成物を(D2−2)という。)。
【0206】
(d2−3)ポリオキサミドの製造
(d2−1)の製造において、1,9−ノナンジアミン18.89kg(119.3モル)と2−メチル−1,8−オクタンジアミン3.34kg(21.1モル)を、1,10−ドデカンジアミン24.15kg(140.4モル)に変更した以外は、(d2−1)ポリオキサミドの製造と同様の方法にて、融点が251℃、相対粘度が3.09、末端アミノ基濃度41μeq/g、末端ホルムアミド基濃度29μeq/gのポリオキサミドを得た(以下、このポリオキサミドを(d2−3)という。)。ポリオキサミドの末端アミノ基濃度を[A](μeq/g)、末端ホルムアミド基濃度を[B](μeq/g)とした時、[A]>[B]+5を満たす。
【0207】
(D2−3)ポリオキサミド樹脂組成物の製造
(D2−1)の製造において(d2−1)を(d2−3)に変更した以外は、(D2−1)の製造と同様の方法にて、ポリオキサミド85質量%、耐衝撃改良材15質量%よりなるポリオキサミド樹脂組成物のペレットを得た(以下、このポリオキサミド樹脂組成物を(D2−3)という。)。
【0208】
(D2−4)導電性ポリオキサミド樹脂組成物の製造
(D2−1)の製造において、無水マレイン酸変性エチレン/プロピレン共重合体(JSR(株)製、JSR T7761P)を無水マレイン酸変性エチレン/プロピレン共重合体(JSR(株)製、JSR T7761P)及び導電性フィラーとしてカーボンブラック(アクゾノーベル(株)製、ケッチェンブラックEC600JD)に変更した以外は、(D2−1)の製造と同様の方法にて、ポリオキサミド79質量%、耐衝撃改良材15質量%、導電性フィラー6質量%よりなる導電性ポリオキサミド樹脂組成物のペレットを得た(以下、この導電性ポリオキサミド樹脂組成物を(D2−4)という。)。
【0209】
(E)接着性樹脂
(E−1)接着性樹脂組成物の製造
(a−1)に、(B1−1)、エチレン/グリシジルメタクリレート/酢酸ビニル共重合体(住友化学工業(株)製、ボンドファースト 2B)(以下、変性ポリオレフィンと称する場合がある。)をあらかじめ混合し、二軸溶融混練機((株)日本製鋼所製、型式:TEX44)に供給し、シリンダー温度180〜250℃で溶融混練し、溶融樹脂をストランド状に押出した後、これを水槽に導入し、冷却、カット、真空乾燥して、(a−1)/(B1−1)/変性ポリオレフィン=40/55/5(質量比)よりなる接着性樹脂組成物のペレットを得た(以下、この接着性樹脂組成物を(E−1)という。)。
【0210】
(E−2)接着性樹脂組成物の製造
(E−1)の製造において、(B1−1)を(C−2)未変性ポリエステル系エラストマーに、エチレン/グリシジルメタクリレート/酢酸ビニル共重合体(住友化学工業(株)製、ボンドファースト 2B)をポリウレタンエラストマー((株)クラレ製、クラミロンU1180)に変え、シリンダー温度を200〜230℃にした以外は、(E−1)の製造と同様の方法にて、(a−1)/未変性ポリエステル系エラストマー/ポリウレタンエラストマー=45/45/10(質量比)よりなる接着性樹脂組成物のペレットを得た(以下、この接着性樹脂組成物を(E−2)という。)。
【0211】
(E−3)接着性樹脂組成物の製造
(E−1)の製造において、(a−1)を(d1−1)に変え、シリンダー温度を230〜300℃にした以外は、(E−1)の製造と同様の方法にて、(d1−1)/(B1−1)/変性ポリオレフィン=55/40/5(質量比)よりなる接着性樹脂組成物のペレットを得た(以下、この接着性樹脂組成物を(E−3)という。)。
【0212】
(E−4)接着性樹脂組成物の製造
(E−1)において、(a−1)を(d2−1)に変え、シリンダー温度を230〜270℃にした以外は、(E−1)の製造と同様の方法にて、(d2−1)/(B1−1)/変性ポリオレフィン=55/40/5(質量比)よりなる接着性樹脂組成物のペレットを得た(以下、この接着性樹脂組成物を(E−4)という。)。
【0213】
(E−5)エチレン/グリシジルメタクリレート/酢酸ビニル共重合体:住友化学工業(株)製、ボンドファースト 2B、MFR 3.0 g/10分(190℃,2160g荷重下)、融点95℃
【0214】
実施例1
上記に示す(A−1)、(B1−1)75質量%と(B2−1)ポリブチレンテレフタレート25質量%からなる(B−1)ポリエステル系重合体組成物(以下、このポリエステル系重合体組成物を(B−1)という場合がある。)、(C−1)、(D1−1)を使用して、Plabor(プラスチック工学研究所(株)製)5層チューブ成形機にて、(A−1)を押出温度260℃、(B−1)を押出温度280℃、(C−1)を押出温度220℃、(D1−1)を押出温度300℃にて別々に溶融させ、吐出された溶融樹脂をアダプターによって合流させ、積層管状体に成形した。引き続き、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引き取りを行い、(A−1)よりなる(a)層(最外層)、(B−1)よりなる(b)層(中間層)、(C−1)よりなる(c)層(外層、内層1)、(D1−1)よりなる(d)層(最内層)としたときの、層構成が(a)/(c)/(b)/(c)/(d)=0.55/0.10/0.10/0.10/0.15mmで内径6mm、外径8mmの積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0215】
実施例2
実施例1において、(B−1)中の(B1−1)ポを(B1−2)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0216】
実施例3
実施例1において、(B−1)中の(B2−1)ポリブチレンテレフタレートを(B2−2)ポリブチレンナフタレートに変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0217】
実施例4〜5
実施例1において、(B−1)中の(B1−1)と(B2−1)ポリブチレンテレフタレートの配合割合を表1に示す量に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0218】
実施例6
実施例1において、(D1−1)を(D1−2)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0219】
実施例7
実施例1において、(D1−1)を(D1−3)に変え、(D1−3)の押出温度を310℃にした以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0220】
実施例8
実施例1において、((D1−1)を(D1−4)に変え、(D1−4)の押出温度を330℃にした以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0221】
実施例9
実施例1において、(D1−1)を(D1−5)に変え、(D1−5)の押出温度を330℃にした以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。また、当該積層チューブの導電性をSAE J−2260に準拠して測定したところ、10Ω/square以下であり、静電気除去性能に優れていることを確認した。
【0222】
実施例10
実施例1において、(D1−1)を(D2−1)に変え、(D2−1)の押出温度を270℃にした以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0223】
実施例11
実施例10において、(D2−1)を(D2−2)に変更した以外は、実施例10と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0224】
実施例12
実施例10において、(D2−1)を(D2−3)に変更した以外は、実施例10と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0225】
実施例13
上記に示す((A−1)、(B1−1)75質量%と(B2−1)ポリブチレンテレフタレート25質量%からなる(B−1)、(C−1)、(D1−4)を使用して、Plabor(プラスチック工学研究所(株)製)6層チューブ成形機にて、(A−1)を押出温度260℃、(B1−1を押出温度280℃、(C−1)を押出温度220℃、(D1−4)を押出温度300℃にて別々に溶融させ、吐出された溶融樹脂をアダプターによって合流させ、積層管状体に成形した。引き続き、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引き取りを行い、(A−1)よりなる(a)層(最外層、内層2)、(B−1)よりなる(b)層(中間層)、(C−1)よりなる(c)層(外層、内層1)、(D1−4)よりなる(d)層(最内層)としたときの、層構成が(a)/(c)/(b)/(c)/(a)/(d)=0.35/0.10/0.10/0.10/0.20/0.15mmで内径6mm、外径8mmの積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0226】
実施例14
実施例13において、(D1−4)を(D1−5)に変え、(D1−5)の押出温度を330℃にした以外は、実施例13と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。また、当該積層チューブの導電性をSAE J−2260に準拠して測定したところ、10Ω/square以下であり、静電気除去性能に優れていることを確認した。
【0227】
実施例15
(A−1)、(B1−1)75質量%と(B2−1)ポリブチレンテレフタレート25質量%からなる(B−1)、(C−1)、((D1−4)、(D1−5)を使用して、Plabor(プラスチック工学研究所(株)製)6層チューブ成形機にて、(A−1)を押出温度260℃、(B1−1)を押出温度280℃、(C−1)を押出温度220℃、(D1−4)を押出温度330℃にて別々に溶融させ、吐出された溶融樹脂をアダプターによって合流させ、積層管状体に成形した。引き続き、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引き取りを行い、A−1)よりなる(a)層(最外層)、(B−1)よりなる(b)層(中間層)、(C−1)よりなる(c)層(外層、内層1)、(D1−4)よりなる(d)層(内層2)、(D1−5)からなる(d’)層(最内層)としたときの、層構成が(a)/(c)/(b)/(c)/(d)/(d’)=0.50/0.10/0.10/0.10/0.10/0.10mmで内径6mm、外径8mmの積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。また、当該積層チューブの導電性をSAE J−2260に準拠して測定したところ、10Ω/square以下であり、静電気除去性能に優れていることを確認した。
【0228】
実施例16
実施例15において、(D1−4)を(D2−1)、(D1−5)を(D2−4)に変え、(D2−1)の押出温度を270℃、(D2−4)の押出温度を280℃にした以外は、実施例15と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。また、当該積層チューブの導電性をSAE J−2260に準拠して測定したところ、10Ω/square以下であり、静電気除去性能に優れていることを確認した。
【0229】
実施例17
実施例1において、(A−1)を(A−2)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0230】
比較例1
実施例1において、(B−1)ポリエステル系重合体組成物、(C−1)、(D1−1)を使用しない以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該単層チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0231】
比較例2
実施例1において、(C−1)を使用しない以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成のチューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0232】
比較例3
実施例9において、(C−1)を使用しない以外は、実施例9と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0233】
比較例4
実施例1において、(C−1))を(E−1)、(E−3)に変え、(E−1)の押出温度を280℃、(E−3)の押出温度を280℃にした以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0234】
比較例5
比較例4において、(E−1)を(E−2)に変え、(E−2)の押出温度を230℃にした以外は、比較例4と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0235】
比較例6
実施例10において、(C−1)を(E−1)、(E−4)に変え、(E−1)及び(E−4)の押出温度を280℃にした以外は、実施例10と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0236】
比較例7
実施例1において、(C−1)を(C−2)未変性ポリエステル系エラストマーに変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0237】
比較例8
実施例1において、(C−1)を(E−5)エチレン/グリシジルメタクリレート/酢酸ビニル共重合体に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0238】
比較例9
実施例1において、(B―1)中の(B2−1)ポリブチレンテレフタレートを使用しない以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0239】
比較例10
実施例1において、(B−1)中の(B1−1)を使用しない以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0240】
比較例11〜12
実施例1において、(B−1)中の(B1−1))と(B2−1)ポリブチレンテレフタレートの配合割合を表1に示す量に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0241】
比較例13
実施例1において、(D1−1)を(D1−6)に変え、(D1−6)を押出温度330℃にした以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0242】
比較例14
実施例1において、(D1−1)を(A−3)に変え、(A−3)を押出温度270℃にした以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0243】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)脂肪族ポリアミドよりなる(a)層、(B)ポリエステル系重合体組成物よりなる(b)層、(C)変性ポリエステル系エラストマーよりなる(c)層、及び(D1)半芳香族ポリアミド又は(D2)ポリオキサミドよりなる(d)層を含む、少なくとも4層からなる積層チューブであり、
(B)ポリエステル系重合体組成物が、(B1)ポリグリコール酸重合体60〜90質量%と(B2)芳香族ポリエステル重合体40〜10質量%からなるポリエステル系重合体組成物であり、
(C)変性ポリエステル系エラストマーが、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸でグラフト変性した変性ポリエステル系エラストマーであり、
(D1)半芳香族ポリアミドが、全ジアミン単位に対して、炭素数9〜13の脂肪族ジアミン単位を60モル%以上含むジアミン単位と、全ジカルボン酸単位に対して、テレフタル酸及び/又はナフタレンジカルボン酸単位を50モル%以上含むジカルボン酸単位とからなる半芳香族ポリアミドであり、
(D2)ポリオキサミドが、全ジアミン単位に対して、炭素数9〜13の脂肪族ジアミン単位を60モル%以上含むジアミン単位と、全ジカルボン酸単位に対して、蓚酸単位を60モル%以上含むジカルボン酸単位とからなるポリオキサミドである積層チューブ。
【請求項2】
(a)層と(b)層の間、及び(b)層と(d)層の間に、(c)層が配置されることを特徴とする請求項1に記載の積層チューブ。
【請求項3】
(A)脂肪族ポリアミドが、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンデカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリデカメチレンデカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、及びポリドデカンアミド(ポリアミド12)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層チューブ。
【請求項4】
(A)脂肪族ポリアミド、(D1)半芳香族ポリアミド又は(D2)ポリオキサミドの末端アミノ基濃度を[A](μeq/g)、末端カルボキシル基濃度又は末端ホルムアミド基濃度を[B](μeq/g)とした時、[A]>[B]+5を満たすことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の積層チューブ。
【請求項5】
0057,0058
(B1)ポリグリコール酸重合体が、下記式(1)
【化1】

で表わされる繰り返し単位を60質量%以上含有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の積層チューブ。
【請求項6】
(a)層が最外層、(d)層が最内層に配置されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の積層チューブ。
【請求項7】
積層チューブの層構成が、(a)/(c)/(b)/(c)/(d)、又は(a)/(c)/(b)/(c)/(a)/(d)であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の積層チューブ。
【請求項8】
積層チューブにおける最内層に、導電性フィラーを含む(D1)半芳香族ポリアミド組成物又は導電性フィラーを含む(D2)ポリオキサミド組成物からなる層が配置されることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の積層チューブ。
【請求項9】
積層チューブが共押出成形により製造されてなることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の積層チューブ。
【請求項10】
燃料チューブとして使用されることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の積層チューブ。

【公開番号】特開2012−20571(P2012−20571A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77538(P2011−77538)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】