説明

積層フィルム状物及び積層成形品

【課題】耐候性及び基材フィルムの剥離性に優れた積層フィルム状物、並びに耐候性に優れた積層成形品を提供する。
【解決手段】ポリエステルフィルムの片側表面に、1分子中に2個以上の水酸基を有するポリジエンポリオール(a1)、有機ポリイソシアネート(a2)及び1分子中に1個以上の水酸基と1個以上の重合性不飽和二重結合を有する化合物(a3)を少なくとも反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート(A)と光重合開始剤(B)とを含んでなる活性エネルギー線硬化性組成物の硬化皮膜が積層された積層フィルム状物;並びにこの積層フィルム状物が成形品の上に積層された積層成形品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は活性エネルギー線硬化性組成物よりなる硬化皮膜を有する積層フィルム状物、及びこの積層フィルム状物が成形品の上に積層された積層成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製成形品の加飾法としては、顔料等を練りこんだ熱可塑性樹脂を用いて成型する方法や、成型後にスプレー等で塗装する方法が一般的であった。ただし、このような方法では、近年の多彩な意匠性を求める市場の要求に対応することが難しい。そこで、転写箔法、インサート成型法、インモールド成型法等の射出成型同時加飾法が多く用いられるようになって来た。
【0003】
例えば転写箔法では、予め図柄等を印刷した加飾層を基材フィルム上に有する加飾フィルム状物を、基材フィルム側を金型側に向けて挿入し、金型内で熱可塑性樹脂を射出成型し、基材フィルムのみを成形品から剥離して加飾層を成形品表面に転写する。この転写箔法による射出成型同時加飾法は、主に小型の自動車内部品等に用いられ、近年は携帯電話やモバイル型パーソナルコンピューター等の筐体にも用いられている。
【0004】
加飾フィルム状物には、成型品に耐擦傷性を付与する目的で、ハードコート性能を有する硬化皮膜が設けられる場合がある。この硬化皮膜には、高い表面硬度や様々な形状に成型されてもクラックが生じない延伸性が要求される。さらに成型品が屋外で使用される場合は、直射日光や降雨に曝されても外観を維持する耐候性が要求される。
【0005】
硬化皮膜の材料として、例えば特許文献1では、分子内に2個の水酸基を有するエポキシ(メタ)アクリレートとジイソシアネート化合物から得られるポリウレタン化合物を含有する活性エネルギー線硬化性組成物が提案されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1の活性エネルギー線硬化性組成物は、その硬化皮膜の耐候性に未だ改善の余地がある。また、転写箔法に用いる場合、基材フィルムに剥離層を設けないと、剥離性が十分でない場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−212938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、耐候性及び基材フィルムの剥離性に優れた積層フィルム状物、及び耐候性に優れた積層成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリエステルフィルムの片側表面に、1分子中に2個以上の水酸基を有するポリジエンポリオール(a1)、有機ポリイソシアネート(a2)及び1分子中に1個以上の水酸基と1個以上の重合性不飽和二重結合を有する化合物(a3)を少なくとも反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート(A)と光重合開始剤(B)とを含んでなる活性エネルギー線硬化性組成物の硬化皮膜が積層された積層フィルム状物である。
【0010】
さらに本発明は、上記の積層フィルム状物の硬化皮膜表面又は硬化皮膜が積層されていない側の表面に、さらに接着層を有する積層フィルム状物からなる転写箔である。
【0011】
さらに本発明は、上記の転写箔の接着層面と成形品の面が接するように、該積層フィルム状物が成形品の上に積層された積層成形品である。
【0012】
さらに本発明は、上記の積層成形品からポリエステルフィルムを剥離して得られる表面に硬化皮膜が転写された積層成形品である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐候性及び基材フィルムの剥離性に優れた積層フィルム状物、及び耐候性に優れた積層成形品を提供できる。この積層フィルム状物は、例えば転写箔法における転写箔として射出成型同時加飾法に好適に使用できる。また、この積層成形品は、例えば屋外で使用される自動車用部品等、耐候性が要求される加飾成形品の用途に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[(a1)成分]
本発明に用いる(a1)成分は、1分子中に2個以上の水酸基を有するポリジエンポリオールである。この(a1)成分を用いることにより、硬化皮膜に優れた耐候性、延伸性及び基材フィルムの剥離性を付与できる。
【0015】
(a1)成分の具体例としては、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、ヘキサジエン、オクタジエン等のアルカジエン類のポリジエンポリオール;シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン等の環状ジエン類のポリジエンポリオール;これらポリジエンポリオール類の主鎖や側鎖のビニル性二重結合に水素添加した水素化物等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併せて使用できる。特に、硬化皮膜の表面硬度と延伸性の点から、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、これらの水素化物の1種又は2種以上の組み合わせが好ましい。より好ましくは、ポリブタジエンポリオールである。
【0016】
(a1)成分の数平均分子量は、硬化皮膜の表面硬度、耐候性及び延伸性の点から、200以上10000以下が好ましく、500以上5000以下がより好ましい。この数平均分子量は、水酸基価から算出される分子量である。水酸基価はJIS K1557−1「プラスチック−ポリウレタン原料ポリオール試験方法」に準じて算出、或いは製造メーカーの検査結果値を用いる。水酸基価から数平均分子量を算出するには、下式を用いる。
【0017】
数平均分子量=56.1×1000×2/水酸基価。
【0018】
[(a2)成分]
本発明に用いる(a2)成分は、有機ポリイソシアネートである。(a2)成分を(a1)成分の水酸基と反応させることにより、主鎖中に強靭なウレタン結合を導入し、硬化皮膜の表面硬度と延伸性を向上できる。
【0019】
(a2)成分としては、例えば、2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;脂肪族ジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;キシレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート;及びこれらのビューレット体又はアロハネート体が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併せて使用できる。特に硬化皮膜の耐候性の点から、脂環族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネートが好ましく、硬化皮膜の表面硬度の点から、脂環族ジイソシアネートがより好ましい。
【0020】
脂環族ジイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート等が挙げられる。特に硬化皮膜の表面硬度の点から、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネートが好ましい。
【0021】
[(a3)成分]
本発明に用いる(a3)成分は、1分子中に1個以上の水酸基と1個以上の重合性不飽和二重結合を有する化合物である。この(a3)成分を用いることで、(A)成分の分子末端に重合性不飽和二重結合を導入できる。(a3)成分の重合性不飽和二重結合は、代表的には(メタ)アクリロイル基の不飽和二重結合である。すなわち(a3)成分は、代表的には1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する。また水酸基の数は1個であることが好ましい。
【0022】
(a3)成分としては、例えば、水酸基を有するモノ(メタ)アクリレート又はそのアルキレンオキサイド付加物;モノヒドロキシポリ(メタ)アクリレート又はそのアルキレンオキサイド付加物;ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等のモノエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応物;ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコールとモノ(メタ)アクリル酸との付加反応物;ポリカプロラクトンジオール(n=1〜5)のモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併せて使用できる。特に硬化皮膜の表面硬度の点から、水酸基を有するモノ(メタ)アクリレート及びモノヒドロキシポリ(メタ)アクリレートが好ましい。なお、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0023】
水酸基を有するモノ(メタ)アクリレートの具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。モノヒドロキシポリ(メタ)アクリレートの具体例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。特に硬化皮膜の表面硬度の点から、モノヒドロキシポリ(メタ)アクリレートが好ましく、(A)成分以外の成分との相溶性及び硬化皮膜の表面硬度の点から、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0024】
[(a4)成分]
本発明に所望により用いる(a4)成分は、下記式(1)で示される化合物である。
【0025】
【化1】

【0026】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、nは1〜4の整数を表す。)
この(a4)成分を用いることで、側鎖に官能基を導入し、(A)成分以外の成分との相溶性を向上し、かつ硬化皮膜の表面硬度をできる。
【0027】
(a4)成分としては、工業的に入手が容易な点から、式(1)のnが1であるグリセリンモノ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0028】
[(A)成分]
本発明に用いる(A)成分は、少なくとも(a1)成分、(a2)成分及び(a3)成分を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートであり、好ましくは(a1)成分、(a2)成分、(a3)成分及び(a4)成分を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートである。この(A)成分は、硬化皮膜に優れた表面硬度と延伸性を付与する為の成分である。
【0029】
(A)成分の合成法は特に限定されず、公知のウレタン(メタ)アクリレート合成法を採用できる。例えば、(a1)成分とポリウレタン化触媒との混合物中に(a2)成分、次いで(a3)成分を順次滴下して(A)成分を得る方法がある。その際の反応温度は50〜90℃程度が良い。
【0030】
ポリウレタン化触媒としては、例えば、アミン系触媒、有機金属系触媒が挙げられる。アミン系触媒の具体例としては、トリエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメタノールアミンが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併せて使用できる。有機金属系触媒の具体例としては、スタナスオクトエート、スタナスラウレート、ジ−n−ブチル錫ジラウレート、ジ−n−ブチル錫ジマレエート、ジ−n−ブチル錫ジアセテート、ジ−n−オクチル錫ジアセテート等の有機スズ化合物が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併せて使用できる。特に少量で高い触媒効果が得られる点から、有機金属系触媒が好ましく、ジ−n−ブチル錫ジラウレートがより好ましい。
【0031】
(A)成分を得る際に、(A)成分の合成時の温度コントロールを容易にし、得られる(A)成分の粘度を低減して作業性を向上させる等の目的で、必要に応じて(a1)成分〜(a4)成分から選ばれる少なくとも1種を(A)成分用希釈溶剤に希釈して使用することができる。(A)成分用希釈溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;シクロヘキサン等の環状炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;エチルアセテート、n−ブチルアセテート等のアセテート系溶剤が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併せて使用できる。
【0032】
(A)成分を得るための反応の終点は、得られた(A)成分中のイソシアネート基の残存量で確認できる。
【0033】
(A)成分中のイソシアネート基の残存量としては0.05モル%以下が好ましく、0.01モル%以下がより好ましい。このイソシアネート基の残存量は、アミンと塩酸を用いた逆滴定法で定量した値である。具体的なイソシアネート基の定量法は、以下の通りである。
(1)(A)成分(W[g])をクロロベンゼン等の溶媒25mlに溶解し、更に0.1Nジ−n−ブチルアミンのクロロベンゼン溶液25mlと混合する。
(2)得られた混合液にブロムフェノールブルー等の市販の指示薬を1〜2滴添加し、市販の0.1N塩酸エタノール溶液で滴定する。
(3)混合液が青紫色から黄色になったら終点とし、その滴下量(Y[ml])を読み取る。
(4)同様の操作を(A)成分無しで行い、ブランクの滴下量(X[ml])とする。
(5)下式を用いて、イソシアネート基の残存量を算出する。
(イソシアネート基の残存量[%])=(Y−X)×F×0.42/W
X:(A)成分のサンプルについての0.1N塩酸エタノール溶液の滴下量[ml]、
Y:ブランクについての0.1N塩酸エタノール溶液の滴下量[ml]、
F:0.1N塩酸エタノール溶液のファクター値、
W:(A)成分の質量[g]。
【0034】
(A)成分の重量平均分子量(Mw)は1,000〜100,000が好ましく、1,500〜30,000がより好ましい。Mwがこれらの範囲内であると、(A)成分をゲル化することなく安定して製造でき、(A)成分自体の作業性や硬化皮膜の延伸性も良好となる。
【0035】
このMwは、活性エネルギー線硬化性組成物のテトラヒドロフラン溶液(0.4質量%)を調製し、東ソー(株)製カラム(TSKゲル スーパーHZM−M及びTSKガードカラム スーパーHZ−L、商品名)が装着された東ソー(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置(HLC−8320GPC EcoSEC、商品名)に上記の溶液100μlを注入し、流量1ml/分、溶離液テトラヒドロフラン及びカラム温度40℃の条件で測定し、標準ポリスチレンで換算した値である。
【0036】
(A)成分のMwは、(a1)成分〜(a4)成分のモル比率により調整できる。そのモル比率は、次式で表されるMが1.0以上、1.2未満となるような比率であることが好ましい。
【0037】
M=[(m1+m4)×2+m3]/(m2×2)
[m1、m2、m3、m4は、各々(a1)成分、(a2)成分、(a3)成分、(a4)成分のモル量を示し、(m1+m4)=m2−1である。]
Mを上記の範囲内、より好ましくはM=1とすることにより、(A)成分の粘度を低くすることができ、硬化皮膜の表面硬度と延伸性を良好とすることができる。
【0038】
[(B)成分]
(B)成分は、光重合開始剤であり、組成物を効率よく活性エネルギー線により硬化させる為の成分である。
【0039】
(B)成分としては、例えば、アセトフェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、アシルホスフィンオキサイド系化合物が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併せて使用できる。特に組成物の硬化性、硬化皮膜の表面硬度と耐擦傷性の点から、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド及び2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンからなる群より選ばれる少なくとも1種の光重合開始剤が好ましい。
【0040】
[活性エネルギー線硬化性組成物]
本発明に用いる活性エネルギー線硬化性組成物は、以上説明した(A)成分と(B)成分を含んでなる組成物である。
【0041】
活性エネルギー線硬化性組成物には、硬化皮膜に表面硬度を付与する目的で、(A)成分以外の(メタ)アクリレート(C)を配合することができる。この(C)成分としては、例えば、モノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート、エポキシポリ(メタ)アクリレート、ウレタンポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0042】
モノ(メタ)アクリレートの具体例としては、炭素数が1〜20の直鎖、分岐又は環構造のアルキル基を有するアルキルモノ(メタ)アクリレート、炭素数が1〜20の直鎖、分岐又は環構造のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0043】
ジ(メタ)アクリレートの具体例としては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタンジオールジ(メタ)アクリレート等の直鎖、分岐又は環構造を有するアルカンジオールのジ(メタ)アクリレート及びそれらのアルキレンオキサイド付加物;ポリエチレングリコール(繰り返し単位n=2〜15)ジ(メタ)アクリレート等のポリエーテルジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0044】
3官能以上の多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸変性物及びそのアルキレンオキサイド変性物;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの(メタ)アクリル酸変性物及びそのアルキレンオキサイド変性物が挙げられる。
【0045】
エポキシポリ(メタ)アクリレートの具体例としては、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンの縮合反応で得られるビスフェノール型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを反応させたビスフェノール型エポキシジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0046】
ウレタンポリ(メタ)アクリレートの具体例としては、少なくとも1種の有機イソシアネート化合物に、分子中に1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基と1個のヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート並びに必要に応じてアルカンジオール、ポリエーテルジオール、ポリブタジエンジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール及びアミドジオールから選ばれる少なくとも1種のジオールを反応させて得られる化合物が挙げられる。
【0047】
ポリエステルポリ(メタ)アクリレートの具体例としては、フタル酸等の多塩基酸とエチレングリコール等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸との反応で得られる化合物が挙げられる。
【0048】
以上の各(C)成分は、1種を単独で、又は2種以上を併せて使用できる。
【0049】
(C)成分としては、特に硬化皮膜の表面硬度の点から、3官能以上の多官能(メタ)アクリレートが好ましい。好ましい3官能以上の多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレートが挙げられる。中でも、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートからからなる群より選ばれる少なくとも1種の3官能以上の多官能(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0050】
活性エネルギー線硬化性組成物中の(A)成分の配合量は、(A)成分及び(C)成分の合計100質量部中、10〜95質量部が好ましく、20〜90質量部がより好ましい。(A)成分の配合量がこれらの範囲内であれば、組成物の作業性が良好となり、かつ表面硬度、延伸性及び耐候性に優れた硬化皮膜が得られる傾向にある。
【0051】
活性エネルギー線硬化性組成物中の(B)成分の配合量は、(A)成分及び(C)成分の合計100質量部に対して、0.01〜50質量部が好ましく、0.1〜30質量部がより好ましい。(B)成分の配合量がこれらの範囲内であれば、組成物の硬化性が良好となり、表面硬度と耐擦傷性に優れた硬化皮膜が得られる傾向にある。
【0052】
活性エネルギー線硬化性組成物中の(C)成分の配合量は、(A)成分及び(C)成分の合計100質量部中、5〜90質量部が好ましく、10〜80質量部がより好ましい。(C)成分の配合量がこれらの範囲内であれば、組成物の作業性が良好となり、かつ表面硬度、延伸性及び耐候性に優れた硬化皮膜が得られる傾向にある。
【0053】
活性エネルギー線硬化性組成物には、必要に応じて重合禁止剤を配合できる。重合禁止剤の具体例としては、ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩等のニトロソ系重合禁止剤;ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ベンゾキノン等のキノン系重合禁止剤;N,N−ジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)、トリフェニルメチル等のラジカル捕獲剤;ベンゾトリアゾール系の酸化防止剤が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併せて使用できる。
【0054】
活性エネルギー線硬化性組成物には、必要に応じて非反応性熱可塑性高分子化合物、有機ベントン、ポリアミド、マイクロゲル、繊維素系樹脂等のレオロジー調節剤、シリコーン等の表面調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、有機フィラー、垂れ止め剤等の各種添加剤を配合できる。
【0055】
活性エネルギー線硬化性組成物には、硬化皮膜の耐擦傷性、形状安定性、耐熱性若しくは易滑性の付与又は導電性向上を目的として、必要に応じて無機フィラーを配合できる。無機フィラーの配合方法としては、公知の方法を採用できる。
【0056】
硬化皮膜の形状安定性、耐熱性、易滑性の付与を目的とする場合、無機フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン等の金属酸化物又はそれらの複合酸化物、それら金属酸化物又は複合酸化物をシランカップリング剤等で表面被覆した表面処理金属酸化物又は表面処理複合酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム等の水酸化物を使用できる。
【0057】
硬化皮膜の導電性向上を目的とする場合、無機フィラーとしては、例えば、金、銀、銅、ニッケル又はそれらの合金等の金属粒子、カーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、フラーレン等の導電性粒子、ガラス、セラミック、プラスチック、金属酸化物等の表面に金属又はITO(酸化インジウムスズ)を被覆した粒子を使用できる。特に導電性の点から、アスペクト比(長径/短径)が5以上の粒子が好ましい。
【0058】
無機フィラーは、組成物の光学性能の点から、面積平均粒子径が1μm以下の粒子であることが好ましい。
【0059】
無機フィラーの配合量は、活性エネルギー線硬化性組成物の用途、要求される機械的強度、流動性等に応じて適宜調整すればよい。
【0060】
活性エネルギー線硬化性組成物を基材の表面に塗布する場合は、塗布方法に応じて粘度を調整する目的で、必要に応じて有機溶剤で希釈することができる。有機溶剤の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶剤、その他先に説明した(A)成分用希釈溶剤と同じ溶剤が挙げられる。有機溶剤の配合量は、塗装作業性の点から、組成物中の硬化性成分が塗装する際の最終組成物の20質量%以上となる量であることが好ましい。例えば、組成物をスプレー塗装する場合は、通常、フォードカップNo.4粘度計を用いて20℃で15〜60秒程度の粘度となるように有機溶剤を添加することが好ましい。
【0061】
[積層フィルム状物]
本発明の積層フィルム状物は、以上説明した活性エネルギー線硬化性組成物の硬化皮膜が、ポリエステルフィルムの片側表面に積層されて成るものである。
【0062】
この積層フィルム状物は、基材フィルムがポリエステルフィルムなので、積層フィルム状物の延伸性に優れ、かつ製造コスト等の面から経済性にも優れる。また、この積層フィルム状物は、表面硬度が優れた硬化皮膜を有するので、成形品表面に設けるハードコートフィルムとして有用である。また延伸性にも優れているので、射出成型時型内加飾法に用いられる転写箔等としても有用である。
【0063】
ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂には、必要に応じて酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、エステル交換防止剤、帯電防止剤等の各種添加剤を配合できる。また、ポリエステルフィルムの表面には、目的に応じて、柄等の意匠を付与した加飾層、易接着層又は剥離層をさらに設けてもよい。
【0064】
ポリエステルフィルムの厚みは、積層フィルム状物の表面硬度の点から0.05〜1mmが好ましく、特に積層フィルム状物の成形性の点から0.05〜0.2mmがより好ましい。硬化皮膜の厚みは、組成物の硬化性及び積層フィルム状物の表面硬度の点から0.001〜0.1mmが好ましく、また積層フィルム状物の成形性の点からは0.001〜0.01mmが好ましい。
【0065】
積層フィルム状物は、例えばポリエステルフィルムの片側表面上に、活性エネルギー線硬化性組成物を塗布し、活性エネルギー線照射により硬化することにより形成できる。
【0066】
活性エネルギー線硬化性組成物を塗布する方法としては、例えば、バーコーターコート法、メイヤーバーコート法、エアナイフコート法、グラビアコート法、リバースグラビアコート法、マイクログラビアコート法、ハケ塗り法、スプレーコート法、シャワーフローコート法、ディップコート法、カーテンコート法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ポッティング法が挙げられる。
【0067】
硬化に用いる活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、紫外線が挙げられる。汎用性の点では、紫外線が好ましい。紫外線発生源としては、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、マグネトロンを利用した無電極UVランプ、LEDが挙げられる。
【0068】
硬化させる際の雰囲気としては、空気、若しくは、窒素、アルゴン等の不活性ガスの何れもよい。実用性及び経済性の点では、空気が好ましい。
【0069】
硬化条件としては、例えば、活性エネルギー線として紫外線を使用する場合は、高圧水銀灯を用いて積算光量が300mJ/cm2程度となるように照射するのがよい。
【0070】
積層フィルム状物を表面に積層した成形品を製造する場合は、積層フィルム状物の成形品表面と接する側の表面(硬化皮膜表面又は硬化皮膜が積層されていない側の表面)に接着層を有することが好ましい。
【0071】
接着層としては、成形品を構成する樹脂の種類に応じて、熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、アクリル系、ポリエステル系、ポリエーテル系等のポリオールを、イソシアネート系架橋剤で熱硬化させるウレタン樹脂が挙げられる。イソシアネート系架橋剤としては、(a2)成分の具体例として先に挙げたイソシアネートモノマーや、それらの3量体等のポリイソシアネート類が用いられる。これら樹脂を公知の手段により塗装し、乾燥又は乾燥硬化させることで接着層が得られる。接着層の厚みは0.1〜5μmが好ましい。
【0072】
積層フィルム状物を加飾用フィルムとして用いる場合は、ポリエステルフィルムの片側(硬化皮膜が積層されていない側)の表面に印刷層等の加飾層を設けることができる。またこの場合、積層フィルム状物の加飾層上に接着層を形成することもできる。
【0073】
[積層成形品]
本発明の積層成形品は、以上説明した積層フィルム状物の接着層面と成形品の面が接するように、積層フィルム状物が成形品の上に積層されて成るものである。
【0074】
成形品を構成する樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリカーボネート樹脂を含むポリマーアロイ、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。また、この樹脂には、必要に応じて酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、安定剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤、難燃剤、ガラス繊維、カーボン繊維、ドリップ防止剤等の各種添加剤を配合できる。
【0075】
例えば、硬化皮膜が積層されていない側の表面に接着層を設けた積層フィルム状物を用いる場合は、ポリエステルフィルム側が成形品に接着して、硬化皮膜が表面層となるので、これをハードコートフィルム付の積層成形体としてそのまま使用すればよい。この場合の成形品を構成する樹脂としては、ポリエステルフィルムと溶融一体化し得る熱可塑性樹脂が好ましく、特にポリエステル樹脂が好ましい。
【0076】
一方、硬化皮膜表面に接着層を設けた積層フィルム状物を転写箔として用いる場合は、硬化皮膜が成形品に接着して、ポリエステルフィルムが表面側となる。このような積層成形品からポリエステルフィルムを剥離すれば、硬化皮膜のみが成形品表面に転写した積層成形品となる。この場合、剥離を容易にする為に、フィルム状物のポリエステルフィルムと硬化皮膜の間に剥離層を設けることができる。剥離層としては、例えば、ワックス類、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂等の離型剤に所望の添加剤を加えたものを溶剤に溶解又は分散させて調製した組成物を塗装し、乾燥させることで得られる。剥離層の厚みは0.1〜5μmが好ましい。
【0077】
以上の何れの積層成形品においても、表面の硬化皮膜により耐擦傷性、耐候性が向上する。また、印刷層等の加飾層をさらに有する積層フィルム状物を用いれば、多彩な意匠性を求める市場の要求に対応することもできる。
【0078】
積層成形品の製造方法としては、例えば、樹脂材料を射出成型する際に、まず金型面に積層フィルム状物を装着し、次いで射出成型することで金型内で成型物表面に積層フィルム状物を積層する方法、いわゆる射出成型同時加飾法が好ましい。具体的には、インサート成型法、インモールドラミネーション法及びインモールドデコレーション法(転写箔法)を適用できる。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を実施例により説明する。以下の記載において「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を意味する。また、評価方法は以下の通りである。
【0080】
(1)耐候性:
積層フィルム状物について、スガ試験機(株)製サンシャインカーボンウエザオメーターWEL−SUN−HC−B型耐候性試験機を用いて、ブラックパネル温度63±3℃、降雨12分間、照射48分間のサイクルの条件で、合計100時間の耐候性試験を行った。試験後のフィルム状物の硬化皮膜側の表面状態を(株)ニコン・インストルメンツ・カンパニー製偏光顕微鏡エクリプスLV100(倍率100倍)で観察し、単位面積中(1mm×1mm)の欠陥(フッシュアイ状の円形欠陥)の数を確認し、以下の基準で耐候性を判定した。
「○」:欠陥は無し。
「×」:欠陥が1個以上有る。
【0081】
(2)剥離性:
積層成形品について、基材フィルム(PETフィルム)を手で剥離し、剥離した基材フィルム側に硬化皮膜が残るかどうかにより、以下の基準で剥離性を判定した。
「○」:剥離した基材フィルム側に硬化皮膜が残らなかった。
「×」:剥離した基材フィルム側に硬化皮膜が残った。
【0082】
[合成例1:(A)成分の合成]
フラスコ、攪拌機、温度制御装置及びコンデンサーを備えた反応容器内に、トルエン486.9部、ポリブタジエングリコール(日本曹達(株)製、商品名NISSO PB G−1000、水酸基価から求められる数平均分子量=1524)410部、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート(住友バイエル(株)製、商品名デスモジュールW)265部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.3部を仕込み、攪拌しながら60℃に昇温し、ジ−n−ブチル錫ジラウレート0.2部を追加した。次いで、グリセリンモノメタクリレート(日本油脂(株)製、商品名ブレンマーGLM)32部を1時間かけて滴下し。その後3時間攪拌を続けた。次いで、ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亜合成(株)製、商品名アロニックスM−306)428.8部を2時間かけて滴下した。その後1時間かけて70℃に昇温し、更に5時間攪拌を続けて、(A)成分としてのウレタンアクリレート(NU−1)を得た。
【0083】
このウレタンアクリレート(NU−1)の重量平均分子量(Mw)は8600であり、外観は透明であった。その評価結果を表1に示す。
【0084】
[合成例2及び3:(A)成分の合成]
(A)成分の原料の種類及び配合量を表1に示すように変更したこと以外は、合成例1と同様にして(A)成分としてのウレタンアクリレート(NU−2)及び(NU−3)を得た。その評価結果を表1に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
表1中の略号は以下の化合物を示す
・「PBG1」:ポリブタジエングリコール(日本曹達(株)製、商品名NISSO PB G−1000、水酸基価から求められる数平均分子量=1524)、
・「PBG2」:ポリブタジエングリコール(日本曹達(株)製、商品名NISSO PB G−2000、水酸基価から求められる数平均分子量=2166)、
・「H−MDI」:ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(住友バイエル(株)製、商品名デスモジュールW、構造式から求められる分子量=264.8)、
・「PETA」:ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亜合成(株)製、商品名アロニックスM−306、水酸基価から求められる数平均分子量=357.3)、
・「GLM」:グリセリンモノメタクリレート(日本油脂(株)製、商品名ブレンマーGLM、構造式から求められる分子量=160)、
・「DBTDL」:ジ−n−ブチル錫ジラウレート、
・「MEHQ」:ハイドロキノンモノメチルエーテル。
【0087】
[合成例4:(C)成分の合成]
5リットルの4つ口フラスコに、ビスフェノールA型ジエポキシ樹脂(東都化成(株)製、商品名エポトートYD8125)346部、アクリル酸(三菱化学(株)製、商品名アクリル酸100%)144部、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.5部、触媒としてジメチルアミノエチルメタアクリレート(三菱レイヨン(株)製、商品名アクリエステルDM)2.5部を添加し、攪拌しながら95℃まで昇温し、95℃に保持した状態で14時間反応を続けた。フラスコ内の液の酸価が1mgKOH/g以下になったところで一段目の反応を終了し、分子内に2個の水酸基を有するエポキシアクリレートを生成した。次いで、フラスコ内温を60℃まで降温し、有機溶剤として酢酸エチル705部を添加し、ポリウレタン化触媒としてジ−n−ブチル錫ジラウレート0.11部を添加し、攪拌しながら、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(住化バイエルウレタン(株)製、商品名デスモジュールW)212部を2時間に渡って滴下した。ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートの滴下終了後5時間反応を続行し、Mw15000のウレタン化合物(EP−1)(固形分50%)を得た。
【0088】
[実施例1]
(A)成分として合成例1で得たウレタンアクリレート化合物(NU−1)142.9部、(B)成分として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASFジャパン(株)製、商品名イルガキュア184)5部、有機溶剤として酢酸エチル190.4部を配合し、固形分濃度30%の活性エネルギー線硬化性組成物を得た。
【0089】
この活性エネルギー線硬化性組成物を、易接着処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績(株)製、商品名コスモシャインA4100、厚み0.188mm)の易接着処理面に、バーコーター#10を用いて塗装した。次いで塗装後のフィルムを、100℃の熱風乾燥機で30秒加熱して乾燥させた。その後、高圧水銀灯を用いて積算光量300mJ/cm2(波長320〜380nmの紫外線積算エネルギー量)の紫外線を照射し、塗膜を硬化させて、厚み3μm(=0.003mm)の平滑な硬化皮膜を有する積層フィルム状物(イ)を得た。
【0090】
この積層フィルム状物(イ)について耐候性試験を行ったところ、欠陥は発生せず、耐候性に優れていることが確認できた。その評価結果を表2に示す。
【0091】
また、活性エネルギー線硬化性組成物を、易接着処理ポリエチレンテレフタレートフィルムの易接着処理面ではなく、未処理面側に塗装したこと以外は、積層フィルム状物(イ)と同様にして、厚み3μmの平滑な硬化皮膜を有する積層フィルム状物を得た。そして、この積層フィルム状物の硬化皮膜上に、接着層主剤として水酸基含有アクリル樹脂(三菱レイヨン(株)製、商品名ダイヤナールLR−254、水酸基価100mgKOH/g、固形分50重量%)112部、硬化剤としてポリイソシアネート(日本ポリウレタン(株)製、商品名コロネートHX)16.8部、ジ−n−ブチル錫ジラウレート0.02部、溶剤として酢酸エチル114部からなる接着層用組成物を、バーコーター#3を用いて塗装した。その後100℃の熱風乾燥機で5分間加熱して乾燥硬化させ、硬化皮膜上に厚み1μm(=0.001mm)の接着層を有する積層フィルム状物(ロ)を得た。
【0092】
この積層フィルム状物(ロ)を、1mm厚のポリメタクリル板(三菱レイヨン(株)製、商品名アクリライトL)上に、接着層面が接するように重ね合わせた。そして、井元製作所製真空加熱プレス機IMC−11FAを用いて、温度100℃、荷重18.6MPa(=3000kg)の条件で真空貼り合わせを行い、積層成形品を得た。
【0093】
この積層成形品についてPETフィルムの剥離性の評価を行ったところ、剥離した基材フィルム側に硬化皮膜が残ることは無く、剥離性に優れていることが確認できた。その評価結果を表2に示す。
【0094】
[実施例2〜4及び比較例1]
活性エネルギー線硬化性組成物の組成を表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、積層フィルム状物及び積層成形品を得た。評価結果を表2に示す。
【0095】
【表2】

【0096】
表2中の(A)成分及び(C)成分の括弧内の数値は固形分(部)を示す。また、表2中の略号は以下の化合物を示す。
・「NU−1」:合成例1で得たウレタンアクリレート化合物、
・「NU−2」:合成例2で得たウレタンアクリレート化合物、
・「NU−3」:合成例3で得たウレタンアクリレート化合物、
・「IT−1」:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASFジャパン(株)製、商品名イルガキュア184)、
・「PETA」:ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亜合成(株)製、商品名アロニックスM−306)、
・「EP−1」:合成例4で得たポリウレタン化合物、
・「EA」:酢酸エチル。
【0097】
表2の実施例1〜4の評価結果から、本発明の積層フィルム状物の硬化皮膜は耐候性に優れ、剥離性も優れていることが分かる。なお、各実施例の積層成形品はプレス成形により製造したが、上記の優れた結果から、転写箔法等による射出成型同時加飾法で製造した場合も同様の結果が得られることも理解できる。
【0098】
これに対して比較例1では、本発明における(A)成分に該当しないウレタンアクリレート化合物、すなわち特許文献1の記載と同様の分子内に2個の水酸基を有するエポキシ(メタ)アクリレートとジイソシアネート化合物から得られるポリウレタン化合物を使用したので、実施例1〜4と比較して耐候性及び剥離性が劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの片側表面に、1分子中に2個以上の水酸基を有するポリジエンポリオール(a1)、有機ポリイソシアネート(a2)及び1分子中に1個以上の水酸基と1個以上の重合性不飽和二重結合を有する化合物(a3)を少なくとも反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート(A)と光重合開始剤(B)とを含んでなる活性エネルギー線硬化性組成物の硬化皮膜が積層された積層フィルム状物。
【請求項2】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)が、(a1)成分、(a2)成分、(a3)成分及び下記式(1)
【化1】

(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、nは1〜4の整数を表す。)
で示される化合物(a4)を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートである請求項1記載の積層フィルム状物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の積層フィルム状物の硬化皮膜表面に、さらに接着層を有する積層フィルム状物からなる転写箔。
【請求項4】
請求項3記載の転写箔の接着層面と成形品の面が接するように、該積層フィルム状物が成形品の上に積層された積層成形品。
【請求項5】
請求項4記載の積層成形品からポリエステルフィルムを剥離して得られる表面に硬化皮膜が転写された積層成形品。
【請求項6】
請求項1又は2記載の積層フィルム状物の硬化皮膜が積層されていない側の表面に、接着層を有する積層フィルム状物。
【請求項7】
請求項6記載の積層フィルム状物の接着層面と成形品の面が接するように、該積層フィルム状物が成形品の上に積層された積層成形品。

【公開番号】特開2012−245668(P2012−245668A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117972(P2011−117972)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】