説明

積層ポリエステルフィルム、及びそれを用いた透明導電性フィルム

【課題】オリゴマーの析出を抑制でき、耐湿性に優れた積層ポリエステルフィルム、及びそれを用いた透明導電性フィルムを提供する。
【解決手段】積層ポリエステルフィルム10は、二軸延伸ポリエステルフィルム11と、二軸延伸ポリエステルフィルム11の少なくとも一方の面に形成された下塗り層13と、下塗り層13上に形成された、オリゴマーの析出を防止するための硬化膜層12と、を備える。硬化膜層12は、(A)一般式(1)で表されるアルコキシシラン、(B)1nm〜15nmの平均粒子径を有する水分散コロイダルシリカ、(C)水、を主たる構成成分とするコーティング組成物を塗布、加熱硬化した硬化膜であり、一般式(1)で表される全てのアルコキシシラン中の全ての珪素原子数nとR由来の全ての炭素原子数mとの比率n/mが0.3〜0.6である。
Si(OR4−a …(1)
(Rは炭素数10以下の有機基、Rは炭素数3以下のアルキル基、aは0又は1である)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層ポリエステルフィルム、及びそれを用いた透明導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムなどの高分子フィルムは、優れた透明性、柔軟性を有する。その特性利用して、窓貼り用フィルムに加えて、タッチパネル用フィルム、ITO基板用フィルム、メンブレンスイッチ用フィルム、三次元加飾用フィルム、フラットパネルディスプレイ用の光学機能性フィルムなど機能性フィルムとして広く用いられている。
【0003】
ポリエステルフィルムを利用して機能性フィルムを製造する際に、ポリエステルフィルムには100℃以上の温度がかかる場合がある。ポリエステルフィルムの温度が高くなると、ポリエステルフィルムの内部に溶解していたオリゴマーが析出し、フィルムの透明度が低下する問題があった。
【0004】
この問題を解決するため特許文献1では、ポリエステルフィルムの表面に積層膜を設けることが提案されている。積層膜として、水溶性樹脂混合物に架橋剤を添加することにより、オリゴマーのフィルム表面への析出を大きく改善できるとしている。しかし水溶性の樹脂を用いた場合、架橋により水溶性は改善できるものの、吸水性は改善できないため、高湿熱環境下では、積層膜が吸水して膨潤し、膜物性が低下するという問題がある。このためオリゴマーを析出させないで、耐湿熱性に優れたポリエステルフィルムが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−195775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、オリゴマーの析出を抑制でき、耐湿性に優れた積層ポリエステルフィルム、及びそれを用いた透明導電性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、二軸延伸ポリエステルフィルムと、前記二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に形成された下塗り層と、前記下塗り層上に形成された、オリゴマーの析出を防止するための硬化膜層と、を備え、前記硬化膜層が、(A)一般式(1)で表されるアルコキシシラン、(B)1nm〜15nmの平均粒子径を有する水分散コロイダルシリカ、(C)水、を主たる構成成分とするコーティング組成物を塗布、加熱硬化した硬化膜であり、前記一般式(1)で表される全てのアルコキシシラン中の全ての珪素原子数nとR由来の全ての炭素原子数mとの比率n/mが0.3〜0.6である。
【0008】
Si(OR4−a …(1)
(Rは炭素数10以下の有機基、Rは炭素数3以下のアルキル基、aは0又は1である)
本発明によれば、オリゴマーの析出を防止するための硬化膜層は、シロキサン結合による3次元架橋により、高密度に架橋する。これにより、オリゴマーの透過速度を低下させることができる。また、硬化膜層は優れた耐湿熱性を備える。
【0009】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、好ましくは、前記硬化膜層が0.01μm以上2μm以下、さらに好ましくは、0.1μm以上2μm以下の厚さを有する。
【0010】
硬化膜層の厚さを0.01μm以上2μm以下の範囲とすることにより、硬化膜層に、硬化収縮による微小クラックの発生を抑制することができる。したがって、硬化膜層はオリゴマーに対して良好なバリア性を備えることができる。
【0011】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、好ましくは、前記コーティング組成物中の前記アルコキシシランの加水分解率が90%以上である。
【0012】
アルコキシシランの加水分解率を90%以上にすることより、塗布、加熱硬化時の硬化反応を促進し、短時間で緻密な膜を形成できる。さらに、アルコキシ基の脱離反応による加熱収縮と、それに起因する微小クラックの発生を抑制できる。したがって、硬化膜層はオリゴマーの析出をより効果的に抑制することができる。
【0013】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、好ましくは、前記コーティング組成物が硬化剤をさらに含む。
【0014】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、好ましくは、前記下塗り層は導電性粒子を含む。
【0015】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、好ましくは、前記二軸延伸ポリエステルフィルムの他方の面に形成された耐傷性層をさらに有する。
【0016】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、好ましくは、前記下塗り層の膜のヤング率が1MPa以上500Mpa以下である。
【0017】
本発明の透明導電性フィルムは、前記積層ポリエステルフィルムと、前記積層ポリエステルフィルムのいずれか一方の面に形成された透明導電層と、を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、積層ポリエステルフィルムの表面にオリゴマーが析出するのを防止することができ、さらに耐湿性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】積層ポリエステルフィルムの断面図。
【図2】試験1〜17の条件と評価結果とを示す表である。
【図3】試験18〜22の条件と評価結果とを示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。本発明は以下の好ましい実施の形態により説明されるが、本発明の範囲を逸脱すること無く、多くの手法により変更を行うことができ、本実施の形態以外の他の実施の形態を利用することができる。したがって、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。
【0021】
図1は積層ポリエステルフィルムの断面図である。積層ポリエステルフィルム10は、二軸延伸ポリエステルフィルム11と、二軸延伸ポリエステルフィルム11の一方面に形成された第1の下塗り層13と、第1の下塗り層13上に形成された硬化膜層12を備える。必要に応じて、二軸延伸ポリエステルフィルム11の他方面に第2の下塗り層14、及び耐傷性層15が形成される。
【0022】
[二軸延伸ポリエステルフィルム]
二軸延伸ポリエステルフィルム11は、高分子化合物を溶融製膜方法や溶液製膜方法によりフィルム形状にしたものである。二軸延伸ポリエステルフィルム11に用いる高分子化合物はポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、等が好ましい。この中でも、PET、PENが特に好ましい。
【0023】
上記のポリエステルフィルムを長尺方向 (Machine Direction : MD) と幅方向 (Traverse Direction : TD) との互いに直交する2方向に延伸した、いわゆる二軸延伸ポリエス
テルフィルム11が支持体として使用される。二軸延伸されたPETフィルム、PENフィルムが、弾性率、透明性の観点から二軸延伸ポリエステルフィルム11として特に好ましい。
【0024】
長尺方向への延伸倍率は、弾性率、平面性の観点から1.5〜5.0倍が好ましく、2.0〜4.0倍がより好ましい。幅方向への延伸倍率は、弾性率、平面性の観点から1.5〜5.0倍が好ましく、2.0〜4.0倍がより好ましい。
【0025】
二軸延伸ポリエステルフィルム11は、一方面にコロナ処理されたものが好ましい。コロナ処理により、二軸延伸ポリエステルフィルム11の表面が親水化されるからである。これにより、水性塗布液の塗れ性を改善することができるので、二軸延伸ポリエステルフィルム11と第1の下塗り層13との密着力をより高めることができる。二軸延伸ポリエステルフィルム11の他方面にコロナ処理することにより、二軸延伸ポリエステルフィルム11と第2の下塗り層14との密着力をより高めることができる。
【0026】
二軸延伸ポリエステルフィルム11は、加熱収縮率が0.05%以上3.0%以下の範囲であることが好ましく、0.1%以上2.5%以下の範囲であることがより好ましく、0.4%以上2.0%以下の範囲であることがさらに好ましい。この加熱収縮率の値は、170℃、10分間での値である。
【0027】
二軸延伸ポリエステルフィルム11の加熱収縮率が、0.05%よりも小さい場合には、塗布膜の硬化収縮に応じるように塗布膜が変形できず、両者の収縮率の差のために、塗布膜がひび割れる。収縮率が3%より大きい場合には、塗布膜のひび割れは発生しないが、二軸延伸ポリエステルフィルム11自身の変形の度合いが大きくなるので、得られる複層フィルムは平らなものにはならず製品としては使用できない場合がある。
【0028】
加熱収縮率は、直交する2方向で、ともに、170℃、10分間における加熱収縮率が、0.05%以上3%以下の範囲であることが好ましく、0.1%以上2.5%以下の範囲であることがより好ましく、0.4%以上2.0%以下の範囲であることが特に好ましい。
【0029】
なお、第1の下塗り層13を設けた場合には、第1の下塗り層13を備えた状態の二軸延伸ポリエステルフィルム11の加熱収縮率が上記範囲となっていればよい。
【0030】
[下塗り層]
第1の下塗り層13は、二軸延伸ポリエステルフィルム11の硬化膜層12に対する接着性を向上させ、硬化膜層12との密着力を高めるために二軸延伸ポリエステルフィルム11に設けられる。第1の下塗り層13は、バインダーと硬化剤と界面活性剤とからなる塗布液を、二軸延伸ポリエステルフィルム11の一方面に塗布することにより形成される。第1の下塗り層13には、有機又は無機の微粒子を適宜添加してもよい。
【0031】
第1の下塗り層13に使用するバインダーは、特に限定されないが、接着性の観点からポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、スチレンブタジエン共重合体の少なくともひとつであることが好ましい。また、バインダーは、水溶性又は水分散性をもつものが環境への負荷が少ない点で特に好ましい。
【0032】
第1の下塗り層13の屈折率を調整する目的で、第1の下塗り層13には金属酸化物からなる導電性の微粒子を含ませてもよい。金属酸化物としては、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ニオブなどの屈折率が高いものが好ましい。屈折率が高いものほど、少量でも屈折率を変えることができるからである。金属酸化物の微粒子の粒子径は、1nm〜100nmの範囲が好ましく、2nm〜70nmの範囲が特に好ましい。金属酸化物の粒子は、目的とする屈折率に応じて決定すればよい。下塗り層13の全重量を100としたときに粒子の重量が10〜90の範囲となるように、下塗り層13の中に含まれることが好ましく、20〜70の範囲となるように含まれることが特に好ましい。
【0033】
第1の下塗り層13の屈折率は、積層ポリエステルフィルム10に光が照射されたときの干渉色を低減する目的では、1.54以上1.64以下の範囲であることが好ましい。第1の下塗り層13の屈折率が1.54より小さい、あるいは1.64より大きいと、干渉色の低減効果は小さいからである。
【0034】
第1の下塗り層13の厚みT1は、下塗り層を形成する溶液の塗布量を調整することにより制御することができる。透明度が高く、優れた接着性を発現するためには、厚みT1は、0.01μm〜5μmの範囲で一定であることがより好ましい。厚みT1が0.01μm未満であると接着性が不十分となることがあり、5μmよりも大きいと均一な厚みT1の接着性を形成することが難しかったり、さらには、溶液の使用量が増加したり乾燥時間が長くかかりすぎてコストが増大することになる。より好ましい厚みT1の範囲は、0.02μm〜3μmである。さらに、屈折率の場合と同じく積層ポリエステルフィルム10に光が照射されたときの干渉色を低減する目的では、第1の下塗り層13の厚みT1は0.01μm〜0.5μmの範囲であることが好ましい。第1の下塗り層13の屈折率が0.01μmより小さい、あるいは0.5μmより大きいと、干渉色の低減効果が小さいからである。なお、第1の下塗り層13は、本実施形態のように1層のみでもよいし、これを複数重ねた態様であってもよい。複数の第1の下塗り層13を重ねた場合には、全ての第1の下塗り層13の厚みの合計を厚みT1とみなす。
【0035】
第2の下塗り層14は、二軸延伸ポリエステルフィルム11の耐傷性層15に対する接着性を向上させ、耐傷性層15との密着力を高めるために設けられる。
【0036】
第2の下塗り層14に使用するバインダーは、特に限定されないが、第1の下塗り層13と同じく接着性の観点からポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、スチレンブタジエン共重合体の少なくともひとつであることが好ましい。また、バインダーは、水溶性又は水分散性をもつものが環境への負荷が少ない点で特に好ましい。
【0037】
[硬化膜層]
硬化膜層12は、(A)一般式、RSi(OR4−a…(1)で表されるアルコキシシラン(Rは炭素数10以下の有機基、Rは炭素数3以下のアルキル基、aは0又は1である)、(B)1nm〜15nmの平均粒子径を有する水分散コロイダルシリカ、(C)水を主たる構成成分とするコーティング組成物を塗布、加熱硬化することにより形成され、1.5以上の比重を有する。
【0038】
硬化膜層12は、アルコキシシランの加水分解により生じるシラノールを脱水縮合させることにより、シロキサン結合による3次元架橋構造で構成される。その結果、オリゴマーの透過速度を低下させることができ、かつ耐湿熱性などに優れた膜を得ることができる。硬化膜層12の比重を1.5以上とすることにより、硬化膜層12中に空隙等の欠陥がほとんどない状態となる。これにより、オリゴマーは硬化膜層12を透過することが難しくなり、オリゴマーに対する硬化膜層12のバリア性を向上することができる。
【0039】
硬化膜層12の厚みT2は、コーティング組成物(塗布液)の塗布量を調整することにより制御することができる。得られる硬化膜層12の厚さT2は、0.01μm〜2μmの範囲で一定であることが好ましい。さらに、厚さT2は0.1μm〜2μmの範囲で一定であることがより好ましい。厚さT2を上述の範囲とすることにより、硬化収縮による微小クラックが硬化膜層12に発生するのを抑制できる。したがって、硬化膜層12はオリゴマーに対して良好なバリア性を備えることができる。
【0040】
<アルコキシシラン>
コーティング組成物は、一般式、RSi(OR4−a…(1)で表され、Rは炭素数10以下の有機基、Rは炭素数3以下のアルキル基、aは0又は1であるアルコキシシランを含む。
【0041】
コーティング組成物中のアルコキシシランの加水分解率は90%以上であることが好ましい。塗布、加熱硬化時の硬化反応を促進し、短時間で緻密な膜を形成できる。さらに、アルコキシ基の脱離反応による加熱収縮と、それに起因する微小クラックの発生を抑制できる。アルコキシシランの加水分解率は、95%以上であることがより好ましい。
【0042】
アルコキシシランの加水分解率は、ガスクロマトグラフィー法により、加水分解反応で生成するアルコールを定量することで求めることができる。
【0043】
一般式(1)で表す化合物のうち好ましいものとして、a=1の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、クロロプロピルメチルジメトキシシラン、プロピルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、クロロプロピルメチルジエトキシシラン、プロピルメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−2−〔2−(メトキシエトキシ)エトキシ〕エチルウレタン、3−トリエトキシシリルプロピル−2−〔2−(メトキシエトキシ)エトキシ〕エチルウレタン、3−トリメトキシシリルプロピル−2−〔2−(メトキシプロポキシ)プロポキシ〕プロピルウレタン、3−トリエトキシシリルプロピル−2−〔2−(メトキシプロポキシ)プロポキシ〕プロピルウレタンがあげられる。
【0044】
上記の化合物の中でもa=1のトリアルコキシシランでは、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−2−〔2−(メトキシエトキシ)エトキシ〕エチルウレタン、3−トリメトキシシリルプロピル−2−〔2−(メトキシプロポキシ)プロポキシ〕プロピルウレタンが好ましく、a=2のアルコキシシランでは、テトラメトキシシラン、テトラアルコキシシランが好ましい。
【0045】
一般式(1)で表されるアルコキシシランは、アミノ基を含まない、つまりアミノ基をもたない有機基Rを有していることが好ましい。Rがアミノ基を有する場合は、テトラアルコキシシランと混合して加水分解すると、生成するシラノール同士で脱水縮合が促進されてしまい、このため、塗布液が不安定となるからである。Rは、炭素数が1〜10の範囲であるような分子鎖長をもつ有機基であればよい。ただし、脆性がより改善された硬化膜層12を得るため、及び、硬化膜層12と支持体11あるいは第1の下塗り層13との密着性をより向上させるためには、炭素数の範囲は2〜10がより好ましく、3〜8がさらに好ましい。なお、炭素数が11以上であると、硬化膜層12の柔軟性が大きくなりすぎて、用途によっては硬度が足りないことがある。
【0046】
そして、R1で示す有機基が酸素、窒素、硫黄などのヘテロ原子を有することが好ましい。有機基がヘテロ原子をもつことにより、支持体11あるいは第1の下塗り層13との密着力をより向上させることができる。特に、エポキシ基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、エステル基、水酸基、カルボキシル基などが有機基R1中にあることが好ましい。中でも、エポキシ基を含有する有機ケイ素化合物は、酸性水中でのシラノールの安定性を高める効果があり、特に好ましい。
【0047】
一般式(1)のa=0のテトラアルコキシシランと一般式(1)のa=1のトリアルコキシシランを共用することにより、加水分解で生じるシラノールの脱水縮合による架橋密度を適度に高くし、従来よりも緻密な硬化膜層12を形成することができる。
【0048】
一般式(1)において、一般式(1)で表される全てのアルコキシシラン中の全ての珪素原子数nとR由来の全ての炭素原子数mとの比率n/mが0.3〜0.6であることが好ましい。特にn/mの比率が0.35〜0.5であることが好ましく、0.4〜0.45以下であることがさらに好ましい。この範囲の比率とすることにより、架橋密度を高くすることができるので、十分に高い密度をもつとともに、脆性がより改善された硬化膜層12を得ることができる。この比率が0.3未満の場合には、架橋密度が低すぎて硬化膜層12が十分高い密度にならないことがある。また、上記比率が0.6を超える場合には、架橋密度が高くなりすぎて、柔軟性が低く、脆い硬化膜層12となってしまうことがある。
【0049】
<水分散コロイダルシリカ>
コーティング組成物は、水分散コロイダルシリカを含む。コロイダルシリカは、二酸化ケイ素又はその水和物が水に分散したコロイドであり、コロイド粒子は1nm〜15nmの平均粒子径が有する。平均粒子径1〜15nmのコロイダルシリカを使用することにより、硬化膜層を架橋密度の高い緻密な膜とすることができる。これによりオリゴマーに対して良好なバリア性が得られる。コロイダルシリカの平均粒子径は、2〜13nmであることが好ましい。コロイダルシリカの平均粒子径は、透過型電子顕微鏡の観察により求めることができる。
【0050】
なお、コロイダルシリカは、塗布液中に添加される時点でのpHが2以上7以下の範囲に調整されていることがより好ましい。このpHが2よりも小さいあるいは7よりも大きいと、アルコキシシランの加水分解物であるシラノールの安定性が悪く、このシラノールの脱水縮合反応が速く進行して塗布液の粘度が上がってしまうことがある。
【0051】
<水>
コーティング組成物は、水を含む。必用な水の量は、アルコキシシランの加水分解に必用十分な水を含むことが好ましい。さらにコーティング液の濃度を調整するために、適量の水で希釈することが好ましい。水以外の有機溶剤の使用は、VOC低減の観点から好ましくない。特にシランカップリング剤の加水分解で生成するアルコール以外の有機溶剤を含まないことが好ましい。
【0052】
特にアルコキシシランの加水分解に使用する水は、水素イオン指数(pH)が2以上6以下の範囲である酸性水であることが好ましい。このpHの値は、いわゆる「室温」とされる25℃での値である。pHが2未満又は6より大きいと、アルコキシシランと酸性水に混合して水溶液としたときに、この水溶液、すなわちアルコキシシラン水溶液で、アルコキシシランが加水分解されてシラノールが生成した後、シラノールの縮合が進み、この水溶液の粘度の上昇が起こりやすくなる。
【0053】
酸性水は、有機酸又は無機酸を水に溶解することにより得る。酸は、特に限定されないが、酢酸、プロピオン酸、蟻酸、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸などの有機酸、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ホウ酸などの無機酸が使用で、中でも、取り扱い性の点からは酢酸が好ましい。pHは、2〜6の範囲が好ましく、2.5〜5.5の範囲が特に好ましい。
【0054】
アルコキシシラン水溶液は、アルコキシシランの量を100重量部とするときに、酸性水の量が60重量部以上2000重量部以下の範囲となるように、調製されることが好ましい。この組成とすることにより、良好な加水分解性と生成したシラノールの安定性とをもつアルコキシシランの加水分解水溶液が得られる。
【0055】
<硬化剤>
コーティング組成物は、硬化剤を含む。水溶性の硬化剤は、シラノールの脱水縮合を促してシロキサン結合の形成を促進させる。水溶性の硬化剤としては、水溶性の無機酸、有機酸、有機酸塩、無機酸塩、金属アルコキシド、金属錯体を用いることができる。
【0056】
無機酸としては、ホウ酸、リン酸、塩酸、硝酸、硫酸が挙げられ、有機酸としては、酢酸、蟻酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸が挙げられる。有機酸塩としては、酢酸アルミ、シュウ酸アルミ、酢酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、酢酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウム、酢酸ジルコニウム、シュウ酸ジルコニウムが挙げられ、無機酸塩としては、塩化アルミ、硫酸アルミ、硝酸アルミ、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウムが挙げられる。金属アルコキシドとしては、アルミニウムアルコキシド、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドが挙げられ、金属錯体としては、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムエチルアセトアセテート、チタンアセチルアセトナート、チタンエチルアセトアセテートが挙げられる。これらの中でも、特にホウ酸、リン酸、アルミニウムアルコキシド、アルミニウムアセチルアセトナートなど、ホウ素を含む化合物、リンを含む化合物、アルミニウムを含む化合物が、水溶性、水中での安定性の観点で好ましく、これらのうち少なくともいずれか1種類を硬化剤として用いるとよい。
【0057】
硬化剤は、塗布液中に均一に混合、溶解することが好ましく、本発明における塗布液の溶剤としての水に溶解することが好ましい。水への溶解性が低い場合には、塗布液中に固
体として存在するため、塗布乾燥後にも異物として残留し、透明度が低いハードコート層12となってしまうことがあるからである。
【0058】
硬化剤の量は、アルコキシシラン100重量部に対して0.1重量部〜15重量部の範囲が好ましく、0.2重量部〜10重量部の範囲がさらに好ましく、0.5重量部〜5重量部の範囲が特に好ましい。
【0059】
[耐傷性層]
二軸延伸ポリエステルフィルムの他方の面に耐傷性層15を形成することができる。耐傷性層15を形成することにより、本実施の形態の積層ポリエステルフィルムを使用して、機能性フィルムを製造又は加工する際に、工程中で擦れて発生する傷を軽減することができる。例えば、導電性フィルムを作製する際のITOスパッタ工程、タッチパネルを組み立てる工程など、キズの発生を嫌う工程に使用できる。耐傷性層15は、ハードコート形成用樹脂を塗布乾燥し硬化することにより形成することができる。ハードコート形成用樹脂としては、紫外線硬化型アクリル樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられる。
【0060】
<帯電防止剤>
複層フィルム10に帯電防止機能を付与するために、硬化膜層12を形成する塗布液には、カチオン、アニオン、ベタインなどのイオン性の帯電防止剤を添加してもよい。イオン性の帯電防止剤に代えて、又は加えて、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アンチモンなどの金属酸化物からなる微粒子を用いてもよい。イオン性の帯電防止剤や金属酸化物の微粒子は、塗布液ではなく支持体11または第1の下塗り層13との少なくともいずれか一方に含ませてもよい。
【0061】
<その他の添加物>
複層フィルム10の表面特性、特に摩擦係数を制御するために、硬化膜層12を形成する塗布液には、マット剤やワックスを含ませても良い。マット剤としては、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ポリスチレン、ポリスチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ポリメチルメタクリレート、架橋ポリメチルメタクリレート、メラミン、ベンゾグアナミン等の有機、無機の素材を使用することができる。ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、ポリエステル系ワックス、カルナバワックス、脂肪酸、脂肪酸アマイド、金属石鹸等を使用することができる。
【0062】
また、硬化膜層12を形成する塗布液には、界面活性剤を含ませても良い。界面活性剤を用いることにより、支持体11又は第1の下塗り層13に対する塗布液の塗布ムラを抑制して、均一な厚みの硬化膜層12を支持体11又は第1の下塗り層13に形成することができるようになる。界面活性剤は特に限定されないが、脂肪族、芳香族、フッ素系のいずれの界面活性剤でもよく、また、ノニオン系、アニオン系、カチオン系のいずれの界面活性剤でもよい。
【0063】
硬化膜層12を形成する塗布液は、塗布時において、可能な限り有機溶剤が含まれないこと、すなわちその含有率が0(ゼロ)重量%であることが最も好ましい。しかし、塗布液の成分間の加水分解反応によりアルコールなどの有機溶剤として作用するような化合物が塗布液中で生成したり、塗布液に加える添加剤等の成分によってはその成分自体に既に有機溶剤が含まれている場合等がある。このような場合には、塗布時における有機溶剤の含有率が最大でも20重量%、すなわち20重量%以下が好ましく、より好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
【0064】
[実施例]
以下、本発明の実施例を挙げ、本発明を、より詳細に説明する。ただし、これらに限定されるものではない。
【0065】
以下に、試験1〜17を記載するが、詳細は試験1に記載し、その他の実施例と比較例とについては、試験1と異なる条件のみ記載する。
【0066】
[試験1]
ゲルマニウム(Ge)を触媒とした重縮合により得られ、固有粘度が0.66のPETを含水率が50ppm以下になるまで乾燥した。乾燥後、溶融押出機によりPETをフィルム形状のベース素材とした。溶融押出機は、PETを溶融するヒータと、溶融されたPETをフィルム形状に押し出すダイと、このダイから押し出し口の下流に配されるチルロールとを備える。チルロールは、周面を冷却する冷却機構を有し、この表面に接触したPETフィルムを冷却する冷却ローラである。溶融押出機のヒータの温度は280℃以上300℃以下の範囲で略一定に保持した。このヒータでPETを溶融し、ダイから静電印加されたチルロールへと押し出して、非結晶のベース素材にした。この非結晶のベース素材を、溶融押出機の下流に設けられる延伸機へ搬送した。
【0067】
延伸機では、ベース素材をMD方向に伸ばす第1延伸工程と、この第1延伸工程の後にベース素材をTD方向に伸ばす第2延伸工程と、この第2延伸工程の後に熱固定工程と、この熱固定工程の後に緩和工程と、緩和工程の後に冷却工程とを実施し、支持体を得た。第1延伸工程では、ベース素材を3.1倍に伸ばし、第2延伸工程では幅が3.9倍になるように幅方向に張力を付与した。また、熱固定工程では、ベース素材を240℃に加熱し、緩和工程では、ベース素材を235℃に加熱した。冷却を終えてクリップから開放される時点におけるベース素材の幅をY1、第2延伸工程におけるベース素材の幅の最大値をY2とするときに、100×(Y2−Y1)/Y2が3.2%となるように、ベース素材の幅を小さくした。冷却工程ではベース素材を室温まで冷却した。得られた二軸延伸ポリエステルフィルムの支持体の厚みは125μmである。
【0068】
下記の配合で下塗り層用溶液を調製した。この下塗り層用溶液を下塗り層用溶液サンプルA−1とする。
【0069】
[下塗り層用溶液サンプルA−1]
・タケラックWS−4000 3.32質量部
(固形分濃度30%、三井化学(株)製)
・界面活性剤 0.02質量部
(ナローアクティHN−100、三洋化成工業(株)製)
・界面活性剤 0.04質量部
(サンデットBL、固形分濃度43%、三洋化成工業(株)製)
・水 92.1質量部
支持体の一方の面にコロナ放電処理を施した。このコロナ放電処理を施した面に、下塗り層用溶液サンプルA−1を塗布し120℃で2分乾燥させて、厚みが0.10μmの下塗り層を形成した。
【0070】
以下の配合で、硬化膜層を形成する塗布液を調製した。この塗布液を硬化膜用塗布液サンプルH−1とする。
【0071】
[硬化膜用塗布液サンプルH−1]
・テトラエトキシシラン 9.08質量部
(KBE−04、信越化学工業(株)製)
・3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン 7.83質量部
(KBE−403、信越化学工業(株)製)
・酢酸水溶液(酢酸濃度=1%、pH=2.8) 20.0質量部
・硬化剤 0.27質量部
(アルミキレートA(W)、川研ファインケミカル(株)製)
・コロイダルシリカ 159質量部
(スノーテックスOXS、平均粒子径4nm〜6nm、固形分濃度10%、
pH=2.7、日産化学工業(株)製)
・界面活性剤 0.13質量部
(ナローアクティHN−100、三洋化成工業(株)製)
・界面活性剤 0.60質量部
(サンデットBL、固形分濃度43%、三洋化成工業(株)製)
・水 13.7質量部
硬化膜用塗布液サンプルH−1は、以下の方法で調製した。上記のように、この硬化膜用塗布液サンプルH−1では、一般式(1)で表すアルコキシシランとして、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランとテトラエトキシシランを用いた。まず、酸性水としての酢酸水溶液を40℃で激しく攪拌しながら、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランを、この酢酸水溶液中に3分間かけて滴下した。次に、テトラエトキシシランを、酢酸水溶液中に強く攪拌しながら5分かけて添加し、その後、40℃で、3時間攪拌を続けた。次に、このシラノール水溶液にコロイダルシリカと、硬化剤と、界面活性剤とを順次添加し、水性の硬化膜用塗布液を調製した。塗布液中の加水分解により生成したエタノール濃度をガスクロマトグラフィー法により定量した結果、アルコキシシランの加水分解率は、99.4%であった。
【0072】
この硬化膜用塗布液サンプルH−1を下塗り層の上にバーコート法により塗布した。この塗膜を、190℃で120秒加熱して乾燥し、厚さ1.0μmの硬化膜層を形成した。
【0073】
得られた積層ポリエステルフィルムにつき、下記の評価を実施した。
【0074】
(1)積層ポリエステルフィルムにおける硬化膜層のひび割れ
硬化膜層の表面を目視で観察し、以下の基準で評価した。
【0075】
○:ひび割れが全く発生しない
△:ひび割れが局所的に発生するため、実用上支障がある
×:ひび割れが全面に発生し、使用不可
(2)積層ポリエステルフィルムの表面抵抗率測定
複層フィルムのハードコート面を、25℃、40%RHの雰囲気下で、測定装置として、デジタル・エレクトロメーターR8252((株)アドバンテスト製)にレジスティビティ・チェンバR12704A((株)アドバンテスト製)を接続したものを用い、JIS K 6911に準じ、表面抵抗率を測定した。結果は表1の「表面抵抗」欄に記載する。単位はΩ/□(=Ω/sq)である。この欄における「E−」に続く数字は指数部である。例えば、「3E−13」は、「3×10−13」を示す。
【0076】
(3)積層ポリエステルフィルムのヘイズ率
得られた積層ポリエステルフィルムを乾燥オーブンで180℃、10分間過熱した。次に硬化膜が設けられた面とは反対面のみを塩化メチレンにて洗浄し、反対面側に析出したオリゴマーを完全に除去し、硬化面側に析出したオリゴマーは残した。処理前後のヘイズ率を測定した。C光源におけるヘイズ率(%)をヘイズメーター(スガ試験機社製)にて測定した。
【0077】
ヘイズ率の変化率について、○:変化率が0(%)以上0.4(%)以下、△:変化率が0.4(%)より大きく0.5(%)未満、×:変化率が0.5(%)以上と評価した。
【0078】
得られた積層ポリエステルフィルムは、ひび割れが全く発生せず、表面抵抗率は、4×10−13であった。処理前後のヘイズ率を測定した結果、加熱前が0.47%、加熱後が0.59%であり、ヘイズ率の変化率は0.12%であった。
【0079】
以上の評価を下記の試験でも実施した。図2の表は条件及び評価結果を示す。
【0080】
[試験2]
硬化膜層用塗布液サンプルH−1に代えて、硬化膜用塗布液サンプルH−2を用いた。この硬化膜用塗布液サンプルH−2を第1接着層21の上にバーコート法により塗布した。この塗膜を、190℃で120秒乾燥し、厚さ1.0μmの硬化膜を形成した。その他の条件は、試験1と同一として、積層ポリエステルフィルムを得た。硬化膜用塗布液サンプルH−2と硬化膜層用塗布液サンプルH−1とは、コロイダルシリカが異なる。
【0081】
[硬化膜層用塗布液サンプルH−2]
・テトラエトキシシラン 9.08質量部
(KBE−04、信越化学工業(株)製)
・3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン 7.83質量部
(KBE−403、信越化学工業(株)製)
・酢酸水溶液(酢酸濃度=1%、pH=2.8) 20.0質量部
・硬化剤 0.27質量部
(アルミキレートA(W)、川研ファインケミカル(株)製)
・コロイダルシリカ 79.8質量部
(スノーテックスOS、平均粒子径8〜11nm、固形分濃度20%、pH=2.6、日産化学工業(株)製)
・界面活性剤 0.13質量部
(ナローアクティHN−100、三洋化成工業(株)製)
・界面活性剤 0.60質量部
(サンデットBL、固形分濃度43%、三洋化成工業(株)製)
・水 13.7質量部
[試験3]
硬化膜用塗布液サンプルH−1に代えて、以下の硬化膜用塗布液塗布サンプルH−3を用いた。この硬化膜用塗布液サンプルH−3を、下塗り層の上にバーコート法により塗布した。この塗膜を、190℃で120秒乾燥し、厚さ1.0μmの硬化膜層を形成した。その他の条件は、試験1と同一として、積層ポリエステルフィルムを得た。硬化膜用塗布液サンプルH−3と硬化膜層用塗布液サンプルH−1とは、コロイダルシリカの含有量と平均粒子径とが異なる。
【0082】
[硬化膜層用塗布液サンプルH−3]
・テトラエトキシシラン 9.08質量部
(KBE−04、信越化学工業(株)製)
・3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン 7.83質量部
(KBE−403、信越化学工業(株)製)
・酢酸水溶液(酢酸濃度=1%、pH=2.8) 20.0質量部
・硬化剤 0.27質量部
(アルミキレートA(W)、川研ファインケミカル(株)製)
・コロイダルシリカ 48.4質量部
(スノーテックスO−33、平均粒子径10〜15nm、固形分濃度33%、pH=2.4、日産化学工業(株)製)
・界面活性剤 0.13質量部
(ナローアクティHN−100、三洋化成工業(株)製)
・界面活性剤 0.60質量部
(サンデットBL、固形分濃度43%、三洋化成工業(株)製)
・水 13.7質量部
[試験4]
試験2において、硬化膜層の膜厚を0.5μmとした。その他は、試験1と全く同様にして、積層ポリエステルフィルムを作製した。
【0083】
[試験5]
試験2において、硬化膜層の膜厚を1.8μmとした。その他は、試験1と全く同様にして、積層ポリエステルフィルムを作製した。
【0084】
[試験6]
硬化膜用塗布液サンプルH−1に代えて、以下の硬化膜用塗布液塗布サンプルH−4を用いた。この硬化膜用塗布液サンプルH−4を、下塗り層の上にバーコート法により塗布した。この塗膜を、190℃で120秒乾燥し、厚さ1.0μmの硬化膜層を形成した。その他の条件は、試験1と同一として、積層ポリエステルフィルムを得た。硬化膜用塗布液サンプルH−4と硬化膜層用塗布液サンプルH−1とは、2種類のシランカップリング剤の比率が異なる。
【0085】
[硬化膜層用塗布液サンプルH−4]
・テトラエトキシシラン 9.08質量部
(KBE−04、信越化学工業(株)製)
・3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン 9.50質量部
(KBE−403、信越化学工業(株)製)
・酢酸水溶液(酢酸濃度=1%、pH=2.8) 20.0質量部
・硬化剤 0.27質量部
(アルミキレートA(W)、川研ファインケミカル(株)製)
・コロイダルシリカ 48.4質量部
(スノーテックスO−33、平均粒子径10〜15nm、固形分濃度33%、pH=2.4、日産化学工業(株)製)
・界面活性剤 0.13質量部
(ナローアクティHN−100、三洋化成工業(株)製)
・界面活性剤 0.60質量部
(サンデットBL、固形分濃度43%、三洋化成工業(株)製)
・水 13.7質量部
[試験7]
試験2において、下塗り層用塗布液サンプルA−1に代えて、以下の下塗り層用布液塗布サンプルA−2を用いた。その他は、試験2と全く同様にして、積層ポリエステルフィルムを作製した。
【0086】
[下塗り層用溶液サンプルA−2]
・タケラックWS−4000 5.0質量部
(固形分濃度30%、三井化学(株)製)
・酸化スズ−酸化アンチモンの水分散体(屈折率調整用) 5.2質量部
(FS−10D、固形分濃度20%、石原産業社製)
・界面活性剤 0.03質量部
(ナローアクティHN−100、三洋化成工業(株)製)
・界面活性剤 0.03質量部
(サンデットBL、固形分濃度43%、三洋化成工業(株)製)
・水 89.0質量部
支持体の表面にコロナ放電処理を施した。このコロナ放電処理を施した面に、上記の下塗り用溶液サンプルA−2を塗布し120℃で2分乾燥させて、下塗り層を形成した。
【0087】
得られた下塗り層の屈折率は、1.562、膜厚は88nmであった。なお、使用した支持体であるポリエステルフィルムの屈折率は1.66であり、試験の硬化膜層12の屈折率は、1.47であった。
【0088】
下塗り層の上に硬化膜層を設けることにより得られた積層ポリエステルフィルムを、蛍光灯下で干渉ムラを観察した結果、干渉ムラは、ほとんど観察されなかった。
【0089】
[試験8]
試験7の積層ポリエステルフィルムの硬化膜層とは反対面に、コロナ放電処理を施した。このコロナ放電処理を施した面に、下塗り層用溶液サンプルA−2を塗布し130℃で2分乾燥させて下塗り層を作製した。
【0090】
<耐傷性層の作製>
下記耐傷性用塗布液サンプルH−5を下塗り層の上にバーコート法により塗布した。この塗膜を、180℃で150秒乾燥し、厚さ3.0μmの耐傷性層を形成した。
【0091】
以下の配合で、耐傷性層を形成する塗布液を調製した。
【0092】
[耐傷性層用塗布液サンプルH−5]
・テトラエトキシシラン 9.08質量部
(KBE−04、信越化学工業(株)製)
・3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン 7.83質量部
(KBE−403、信越化学工業(株)製)
・酢酸水溶液(酢酸濃度=0.05%、pH=4.8) 20.0質量部
・硬化剤 0.27質量部
(アルミキレートA(W)、川研ファインケミカル(株)製)
・コロイダルシリカ 48.4質量部
(スノーテックスO−33、平均粒子径10nm〜15nm、固形分濃度33%、
pH=2.4、日産化学工業(株)製)
・マット剤 0.005質量部
(シーホスターKF−P250、日本触媒(株)製)
・界面活性剤 0.26質量部
(ナローアクティHN−100、三洋化成工業(株)製)
・界面活性剤 0.27質量部
(サンデットBL、固形分濃度43%、三洋化成工業(株)製)
・水 2.10質量部
得られた耐傷性層の鉛筆硬度をJIS K5600−5−4に基づき、移動速度0.5mm/秒、加重750gにて測定した結果、2Hであった。その他の条件は、試験1と同一として、耐傷性層を有する積層ポリエステルフィルムを得た。
【0093】
[試験9]
試験7において、積層ポリエステルフィルムの硬化膜層とは反対面に、コロナ放電処理を施し、その表面に下塗り層用溶液サンプルA−2を塗布する代わりに下塗り層用溶液サンプルA−3を塗布した。その他の条件は、試験7と同一として、耐傷性層を有する積層ポリエステルフィルムを得た。
【0094】
[下塗り層用溶液サンプルA−3]
・バインダー 2.30質量部
(オレスターUD350、固形分濃度38%、三井化学(株)製)
・バインダー 0.32質量部
(AS-563A、固形分濃度27.5%、ダイセルファインケム社製)
・硬膜剤 0.44質量部
(カルボジライトV-02-L2、固形分濃度40%、日清紡(株)製)
・シリカ微粒子 0.02質量部
(アエロジル OX-50、日本アエロシ゛ル社製)
・シリカ微粒子水分散物 0.06質量部
(スノーテックスXL、固形分濃度40.5%、日産化学工業社製)
・ワックス 0.15質量部
(セロゾール524、固形分濃度30%、中京油脂社製)
・界面活性剤 0.01質量部
(ラピゾールA-90、日油(株)製)
・界面活性剤 0.01質量部
(ナロアクティーCL-95、三洋化成工業(株)製)
・水 97.01質量部
支持体の表面にコロナ放電処理を施した。このコロナ放電処理を施した面に、上記の下塗り用溶液サンプルA−3を塗布し120℃で2分乾燥させて、下塗り層を形成した。
【0095】
得られた下塗り層の上に、試験7と全く同様にして耐傷性層を設け、耐傷性層を有する積層ポリエステルフィルムを得た。
【0096】
[試験10]
試験7において、積層ポリエステルフィルムの硬化膜層とは反対面に、コロナ放電処理を施し、その表面に下塗り層用溶液サンプルA−2を塗布する代わりに下塗り層用溶液サンプルA−4を塗布した。
【0097】
[下塗り層用溶液サンプルA−4]
・バインダー 4.51質量部
(プラスコート Z-687、固形分濃度25%、互応化学社製)
・硬膜剤 1.59質量部
(カルボジライトV-02-L2、固形分濃度40%、日清紡(株)製)
・硬膜剤 0.71質量部
(エポクロスK-2020E、固形分濃度40%、日本触媒(株)製)
・界面活性剤 0.01質量部
(ラピゾールA-90、日油(株)製)
・界面活性剤 0.02質量部
(ナロアクティーCL-95、三洋化成工業(株)製)
・水 93.16質量部
支持体の表面にコロナ放電処理を施した。このコロナ放電処理を施した面に、上記の下塗り用溶液サンプルA−4を塗布し120℃で2分乾燥させて、下塗り第1層を形成した。この下塗り層の塗布面に、下塗り用溶液サンプルA−5を塗布し120℃で2分乾燥させて、下塗り第2層を形成した。
【0098】
[下塗り層用溶液サンプルA−5]
・バインダー 2.28質量部
(オレスターUD350、固形分濃度38%、三井化学(株)製)
・バインダー 0.26質量部
(AS-563A、固形分濃度27.5%、ダイセルファインケム社製)
・硬膜剤 0.47質量部
(カルボジライトV-02-L2、固形分濃度40%、日清紡(株)製)
・シリカ微粒子 0.02質量部
(アエロジル OX-50、日本アエロシ゛ル社製)
・シリカ微粒子水分散物 0.35質量部
(スノーテックスXL、固形分濃度40.5%、日産化学工業社製)
・ワックス 0.16質量部
(セロゾール524、固形分濃度30%、中京油脂社製)
・界面活性剤 0.01質量部
(ラピゾールA-90、日油(株)製)
・界面活性剤 0.02質量部
(ナロアクティーCL-95、三洋化成工業(株)製)
・水 96.43質量部
得られた下塗り第2層の上に、試験7と全く同様にして耐傷性層を設け、耐傷性層を有する積層ポリエステルフィルムを得た。
【0099】
<透明導電層の作製>
試験8〜10の硬化膜層面に、インジウム−スズ複合酸化物(酸化スズ:5重量%含有)をターゲットに用いて透明導電膜を作製した。印加電圧は2W/cm直流電力とし、Arガス130sccm、O2ガス10sccmの混合ガスを流し、0.4気圧の圧力でDCマグネトロンスパッタリング法にて、25nmの膜厚の透明導電膜を形成した。透明導電層形成後のフィルムのヘイズ率の上昇は、0.4%以下であり、オリゴマー析出による透明性低下は問題ないレベルであった。
【0100】
[試験11]
硬化膜用塗布液サンプルH−1に代えて、以下の硬化膜層用塗布液塗布サンプルH−6を用いた。この硬化膜用塗布液サンプルH−6を、下塗り層の上にバーコート法により塗布した。この塗膜を、190℃で180秒乾燥し、厚さ1.4μmの硬化膜層を形成した。その他の条件は、試験1と同一として、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0101】
[硬化膜層用塗布液サンプルH−6]
・テトラエトキシシラン 9.08質量部
(KBE−04、信越化学工業(株)製)
・3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン 7.83質量部
(KBE−403、信越化学工業(株)製)
・酢酸水溶液(酢酸濃度=1%、pH=5.2) 20.0質量部
・硬化剤 0.27質量部
(アルミキレートA(W)、川研ファインケミカル(株)製)
・コロイダルシリカ 27.5質量部
(スノーテックスO−40、平均粒子径20nm〜30nm、固形分濃度40%、
pH=2.7、日産化学工業(株)製)
・マット剤
(シーホスターKF−P250、日本触媒(株)製) 0.005質量部
・界面活性剤 0.13質量部
(ナローアクティHN−100、三洋化成工業(株)製)
・界面活性剤 0.60質量部
(サンデットBL、固形分濃度43%、三洋化成工業(株)製)
・水 13.7質量部
[試験12]
硬化膜用塗布液サンプルH−1に代えて、以下の硬化膜層用塗布液塗布サンプルH−7を用いた。この硬化膜用塗布液サンプルH−7を、下塗り層の上にバーコート法により塗布した。この塗膜を、190℃で180秒乾燥し、厚さ1.0μmの硬化膜層を形成した。その他の条件は、試験1と同一として、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0102】
[硬化膜層用塗布液サンプルH−7]
・テトラエトキシシラン 5.7質量部
(KBE−04、信越化学工業(株)製)
・3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン 11.21質量部
(KBE−403、信越化学工業(株)製)
・酢酸水溶液(酢酸濃度=1%、pH=2.8) 20.0質量部
・硬化剤 0.27質量部
(アルミキレートA(W)、川研ファインケミカル(株)製)
・コロイダルシリカ 79.8質量部
(スノーテックスOS、平均粒子径8〜11nm、固形分濃度20%、pH=2.6、日産化学工業(株)製)
・界面活性剤 0.13質量部
(ナローアクティHN−100、三洋化成工業(株)製)
・界面活性剤 0.60質量部
(サンデットBL、固形分濃度43%、三洋化成工業(株)製)
・水 13.7質量部
[試験13]
硬化膜用塗布液サンプルH−1に代えて、以下の硬化膜層用塗布液塗布サンプルH−8を用いた。この硬化膜用塗布液サンプルH−8を、下塗り層の上にバーコート法により塗布した。この塗膜を、190℃で180秒乾燥し、厚さ1.0μmの硬化膜層を形成した。その他の条件は、試験1と同一として、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0103】
[硬化膜層用塗布液サンプルH−8]
・テトラエトキシシラン 11.4質量部
(KBE−04、信越化学工業(株)製)
・3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン 5.51質量部
(KBE−403、信越化学工業(株)製)
・酢酸水溶液(酢酸濃度=1%、pH=2.8) 20.0質量部
・硬化剤 0.27質量部
(アルミキレートA(W)、川研ファインケミカル(株)製)
・コロイダルシリカ 79.8質量部
(スノーテックスOS、平均粒子径8〜11nm、固形分濃度20%、pH=2.6、日産化学工業(株)製)
・界面活性剤 0.13質量部
(ナローアクティHN−100、三洋化成工業(株)製)
・界面活性剤 0.60質量部
(サンデットBL、固形分濃度43%、三洋化成工業(株)製)
・水 13.7質量部
[試験14]
試験2において、硬化膜層の膜厚を2.5μmとした。その他は、試験1と全く同様にして、積層ポリエステルフィルムを作製した。
【0104】
[試験15]
試験2において、硬化膜層の膜厚を0.008μmとした。その他は、試験1と全く同様にして、積層ポリエステルフィルムを作製した。
【0105】
[試験16]
硬化膜用塗布液サンプルH−1に代えて、以下の硬化膜層用塗布液塗布サンプルH−9を用いた。この硬化膜用塗布液サンプルH−9を、下塗り層の上にバーコート法により塗布した。この塗膜を、190℃で180秒乾燥し、厚さ1.0μmの硬化膜層を形成した。その他の条件は、試験1と同一として、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0106】
[硬化膜層用塗布液サンプルH−9]
・テトラエトキシシラン 11.4質量部
(KBE−04、信越化学工業(株)製)
・3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン 5.51質量部
(KBE−403、信越化学工業(株)製)
・酢酸水溶液(酢酸濃度=1%、pH=2.8) 20.0質量部
・硬化剤 0.27質量部
(アルミキレートA(W)、川研ファインケミカル(株)製)
・界面活性剤 0.13質量部
(ナローアクティHN−100、三洋化成工業(株)製)
・界面活性剤 0.60質量部
(サンデットBL、固形分濃度43%、三洋化成工業(株)製)
・水 13.7質量部
[試験17]
試験2において、下塗り層A−1を塗布せずに、支持体の一方の面にコロナ放電処理を施した面に、硬化膜用塗布液サンプルH−2を直接塗布した。その他の条件は、試験2と同一として、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0107】
得られたサンプルは、評価中にポリエステル支持体から、硬化膜層が剥離しやすく、実用性に乏しいものであった。
【0108】
[試験18]
チタン(Ti)を触媒とした重縮合により得られ、固有粘度が0.66のPETを含水率が50ppm以下になるまで乾燥した。乾燥後、溶融押出機によりPETをフィルム形状のベース素材とした。溶融押出機は、PETを溶融するヒータと、溶融されたPETをフィルム形状に押し出すダイと、このダイから押し出し口の下流に配されるチルロールとを備える。チルロールは、周面を冷却する冷却機構を有し、この表面に接触したPETフィルムを冷却する冷却ローラである。溶融押出機のヒータの温度は280℃以上300℃以下の範囲で略一定に保持した。このヒータでPETを溶融し、ダイから静電印加されたチルロールへと押し出して、非結晶のベース素材にした。この非結晶のベース素材を、溶融押出機の下流に設けられる延伸機へ搬送した。
【0109】
延伸機では、ベース素材をMD方向に伸ばす第1延伸工程と、この第1延伸工程の後にベース素材をTD方向に伸ばす第2延伸工程と、この第2延伸工程の後に熱固定工程と、この熱固定工程の後に緩和工程と、緩和工程の後に冷却工程とを実施し、支持体を得た。第1延伸工程では、ベース素材を3.1倍に伸ばし、第2延伸工程では幅が3.9倍になるように幅方向に張力を付与した。また、熱固定工程では、ベース素材を240℃に加熱し、緩和工程では、ベース素材を235℃に加熱した。冷却を終えてクリップから開放される時点におけるベース素材の幅をY1、第2延伸工程におけるベース素材の幅の最大値をY2とするときに、100×(Y2−Y1)/Y2が3.2%となるように、ベース素材の幅を小さくした。冷却工程ではベース素材を室温まで冷却した。得られた二軸延伸ポリエステルフィルムの支持体の厚みは125μmである。
【0110】
得られた支持体の片面にコロナ放電処理を施した。コロナ放電処理後下塗り層用溶液サンプルA−6をコロナ処理した面に塗布し120℃で2分加熱乾燥させて、厚みが0.10μmの下塗り層を形成した。引き続き硬化膜用塗布液サンプルH−10を下塗り層の上にバーコート法により塗布した。この塗膜を、180℃で2分加熱乾燥させて、厚さ1.3μmの硬化膜層を形成した。もう片方の面もまったく同様にして下塗り層と硬化層を形成し、両面に硬化層を付設したサンプルを得た。
下塗り層のヤング率は、31Mpaであった。
【0111】
下記の配合で下塗り層用溶液サンプルA−6を調製した。
【0112】
[下塗り層用溶液サンプルA−6]
・タケラックWS−5100 2.28質量部
(固形分濃度30%、三井化学(株)製)
・酸化スズ−酸化アンチモンの水分散体(屈折率調整用) 4.47質量部
(FS−10D、固形分濃度20%、石原産業社製)
・カルボジイミド構造を複数個有する化合物 3.42重量部
(日清紡(株)製、固形分濃度10%、カルボジライトV−02−L2)
・界面活性剤 0.14質量部
(ナローアクティCL−95、固形分濃度10%、三洋化成工業(株)製)
・界面活性剤 0.14質量部
(サンデットBL、固形分濃度10%、三洋化成工業(株)製)
・水 89.7質量部
下記の配合で耐傷性層用塗布液サンプルH−10を調製した。
【0113】
[耐傷性層用塗布液サンプルH−10]
・テトラエトキシシラン 8.98質量部
(KBE−04、信越化学工業(株)製)
・3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン 7.74質量部
(KBE−403、信越化学工業(株)製)
・酢酸水溶液(酢酸濃度=1%) 19.8質量部
・硬化剤 0.26質量部
(アルミキレートA(W)、川研ファインケミカル(株)製)
・コロイダルシリカ 12.0質量部
(スノーテックスO−33、平均粒子径10nm〜15nm、固形分濃度33%、
pH=2.4、日産化学工業(株)製)
・マット剤 0.01質量部
(シーホスターKF−P150、日本触媒(株)製)
・界面活性剤 0.65質量部
(ナローアクティCL−95、固形分濃度10%、三洋化成工業(株)製)
・界面活性剤 2.36質量部
(サンデットBL、固形分濃度10%、三洋化成工業(株)製)
・水 48.1質量部
<下塗り層のヤング率の測定方法>
下塗り液を膜厚が20μmになるようにフッ素フィルム(東レ製 セラピール)上に塗布して、120℃で3分間乾燥させた後、フィルム上から膜を剥離した。剥離した膜をテンシロンで引張り強度測定を行った。
【0114】
<密着評価試験>
サンプルの表面に片刃カミソリを用いて縦、横それぞれ11本のキズをつけて100個の桝目を形成した。次いで、この上にセロハンテープ(ニチバン(株)製405番、24mm幅)を貼り付けて、その上からケシゴムでこすって完全に付着させた後、90度方向に剥離させて、剥離した桝目の数を求めることにより、下記のランク付けを行って密着性を評価した。なお、上記のキズの幅は、縦、横とも1mmとした。
Aランク: 剥れなしの場合
Bランク: 剥離した桝目数が5未満の場合
Cランク: 剥離した桝目数が5以上10未満の場合
Dランク: 剥離した桝目数が10以上30未満の場合
Eランク: 剥離した桝目数が30以上の場合
以上の評価を下記の試験でも実施した。図3の表は条件及び評価結果を示す。
【0115】
[試験19]
下塗り層用溶液サンプルA−6を下塗り用溶液サンプルA−7に替えた以外は試験18と同様にしてサンプルを得た。
【0116】
[下塗り層用溶液サンプルA−7]
・タケラックWS−5100 2.28質量部
(固形分濃度30%、三井化学(株)製)
・酸化スズ−酸化アンチモンの水分散体(屈折率調整用) 4.47質量部
(FS−10D、固形分濃度20%、石原産業社製)
・界面活性剤 0.14質量部
(ナローアクティCL−95、固形分濃度10%、三洋化成工業(株)製)
・界面活性剤 0.14質量部
(サンデットBL、固形分濃度10%、三洋化成工業(株)製)
・水 93.1質量部
下塗り層のヤング率は、820Mpaであった。
【0117】
[試験20]
下塗り層用溶液サンプルA−6を下塗り用溶液サンプルA−8に替えた以外は試験18と同様にしてサンプルを得た。
【0118】
[下塗り層用溶液サンプルA−8]
・タケラックWS−4000 2.28質量部
(固形分濃度30%、三井化学(株)製)
・酸化スズ−酸化アンチモンの水分散体(屈折率調整用) 4.47質量部
(FS−10D、固形分濃度20%、石原産業社製)
・界面活性剤 0.14質量部
(ナローアクティCL−95、固形分濃度10%、三洋化成工業(株)製)
・界面活性剤 0.14質量部
(サンデットBL、固形分濃度10%、三洋化成工業(株)製)
・水 93.1質量部
下塗り層のヤング率は、1490Mpaであった。
【0119】
[試験21]
下塗り層用溶液サンプルA−6を下塗り用溶液サンプルA−9に替えた以外は試験18と同様にしてサンプルを得た。
【0120】
[下塗り層用溶液サンプルA−9]
・タケラックWS−6021 2.28質量部
(固形分濃度30%、三井化学(株)製)
・酸化スズ−酸化アンチモンの水分散体(屈折率調整用) 4.47質量部
(FS−10D、固形分濃度20%、石原産業社製)
・界面活性剤 0.14質量部
(ナローアクティCL−95、固形分濃度10%、三洋化成工業(株)製)
・界面活性剤 0.14質量部
(サンデットBL、固形分濃度10%、三洋化成工業(株)製)
・水 93.1質量部
下塗り層のヤング率は、30Mpaであった。
【0121】
[試験22]
下塗り層用溶液サンプルA−6を下塗り用溶液サンプルA−10に替えた以外は試験18と同様にしてサンプルを得た。
【0122】
[下塗り層用溶液サンプルA−10]
・タケラックWS−5100 2.28質量部
(固形分濃度30%、三井化学(株)製)
・酸化スズ−酸化アンチモンの水分散体(屈折率調整用) 4.47質量部
(FS−10D、固形分濃度20%、石原産業社製)
・ カルボジイミド構造を複数個有する化合物 1.71重量部
(日清紡(株)製、固形分濃度10%、カルボジライトV−02−L2)
・界面活性剤 0.14質量部
(ナローアクティCL−95、固形分濃度10%、三洋化成工業(株)製)
・界面活性剤 0.14質量部
(サンデットBL、固形分濃度10%、三洋化成工業(株)製)
・水 91.4質量部
下塗り層のヤング率は、250Mpaであった。
【符号の説明】
【0123】
10…積層ポリエステルフィルム、11…二軸延伸ポリエステルフィルム、12…硬化膜層、13…第1の下塗り層、14…第2の下塗り層、15…耐傷性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸延伸ポリエステルフィルムと、
前記二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に形成された下塗り層と、
前記下塗り層上に形成され、オリゴマーの析出を防止するための硬化膜層と、を備え、
前記硬化膜層が、
(A)一般式(1)で表されるアルコキシシラン、
(B)1nm〜15nmの平均粒子径を有する水分散コロイダルシリカ、
(C)水、
を主たる構成成分とするコーティング組成物を塗布、加熱硬化した硬化膜であり、
前記一般式(1)で表される全てのアルコキシシラン中の全ての珪素原子数nとR由来の全ての炭素原子数mとの比率n/mが0.3〜0.6であることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
Si(OR4−a …(1)
(Rは炭素数10以下の有機基、Rは炭素数3以下のアルキル基、aは0又は1である)
【請求項2】
前記硬化膜層が0.01μm以上2μm以下の厚さを有する請求項1記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記コーティング組成物中の前記アルコキシシランの加水分解率が90%以上である請求項1又は2記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記コーティング組成物が硬化剤をさらに含む請求項1から3のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項5】
前記下塗り層は導電性粒子を含む請求項1から4のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項6】
前記二軸延伸ポリエステルフィルムの他方の面に形成された耐傷性層をさらに有する請求項1から5のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項7】
前記下塗り層の膜のヤング率が1MPa以上500Mpa以下である請求項1から6のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルムと、
前記積層ポリエステルフィルムのいずれか一方の面に形成された透明導電層と、を有することを特徴とする透明導電性フィルム。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−116184(P2012−116184A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220398(P2011−220398)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】