説明

積層体、およびこれを有する物品

【課題】反射防止機能を有すると共に、アクリル板等の基材に対して良好な接着性を有し、かつ耐候性に優れた粘着剤層を備えた積層体、およびこれを有する物品の提供。
【解決手段】一方の表面に微細凹凸構造が形成されたフィルム16と、該フィルム16の他方の表面に積層した粘着剤層18とを備え、該粘着剤層18を介して基材12上に貼着される積層体14であって、前記粘着剤層18は、カルボキシル基および(メタ)アクリロイル基を有する単量体と、その他の共重合単量体を共重合させて得られる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を含有し、かつ25℃における貯蔵弾性率が0.10〜0.50MPaである粘着剤からなる、積層体14。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、およびこれを有する物品に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置などの前面板に使用される部材は、太陽光線、照明光などが反射しにくい反射防止機能が求められる。
近年、可視光の波長以下の周期の微細凹凸構造を表面に有する物品は、反射防止効果、ロータス効果等を発現することが知られている。特に、モスアイ構造と呼ばれる微細凹凸構造は、空気の屈折率から物品の材料の屈折率へと連続的に屈折率が増大していくことで有効な反射防止の手段となることが知られている。
【0003】
微細凹凸構造を表面に有する物品は、例えば微細凹凸構造を表面に有するフィルムを、該微細凹凸構造が形成されていない面が接するように、物品本体に貼着することによって得られる。フィルムと物品本体の貼着には、透明粘着剤や両面粘着テープなどの粘着剤が用いられる場合が多い。また、フィルムの微細凹凸構造が形成されていない面に粘着剤層を設けておき、該粘着剤層を介してフィルムを物品本体に貼着させてもよい。
微細凹凸構造を表面に有するフィルムとしては、例えば特許文献1には、陽極酸化アルミナをスタンパとして利用した転写法により形成された微細凹凸構造を表面に有する反射防止物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−109572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、画像表示装置などの前面板等の部材は、基材としてアクリル板を用いる場合が多い。しかしながら、微細凹凸構造を表面に有するフィルムが粘着剤を介してアクリル板の表面に貼着した物品は、アクリル板に対する粘着剤の粘着力が必ずしも十分ではなく、フィルムとアクリル板が剥離することがあった。
また、このような物品を高温条件下に曝露すると、アクリル板は水分を含みやすい基材であるため、アクリル板に含まれる水分が蒸発し、耐熱性が劣る粘着剤とアクリル板の界面に気泡が発生する場合がある。これにより、接着不良が生じ、フィルムとアクリル板が剥離する要因ともなりうる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、反射防止機能を有すると共に、アクリル板等の基材に対して良好な接着性を有し、かつ耐候性に優れた粘着剤層を備えた積層体、およびこれを有する物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の積層体は、一方の表面に微細凹凸構造が形成されたフィルムと、該フィルムの他方の表面に積層した粘着剤層とを備え、該粘着剤層を介して基材上に貼着される積層体であって、前記粘着剤層は、カルボキシル基および(メタ)アクリロイル基を有する単量体と、その他の共重合単量体を共重合させて得られる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を含有し、かつ25℃における貯蔵弾性率が0.10〜0.50MPaである粘着剤からなることを特徴とする。
また、本発明の物品は、基材と、該基材上に粘着剤層を介して貼着された、前記積層体とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、反射防止機能を有すると共に、アクリル板等の基材に対して良好な接着性を有し、かつ耐候性に優れた粘着剤層を備えた積層体、およびこれを有する物品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の物品の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の積層体に備わるフィルムの一例を示す断面図である。
【図3】本発明の積層体に備わるフィルムの製造装置の一例を示す構成図である。
【図4】表面に陽極酸化アルミナを有するモールドの製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸およびメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートは、アクリレートおよびメタクリレートを意味する。また、活性エネルギー線は、可視光線、紫外線、電子線、プラズマ、熱線(赤外線等)等を意味する。
【0011】
図1は、本発明の物品の一例を示す断面図である。この例の物品10は、基材12と、基材12上に貼着された本発明の積層体14を有する。
【0012】
<基材>
基材12としては、ガラス板、樹脂板(アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等)などが挙げられる。
基材12としては、例えば画像表示装置などの前面板に使用される部材であるアクリル板が好ましい。以下、基材12はアクリル板12として説明する。
【0013】
<積層体>
本発明の積層体14は、一方の表面に微細凹凸構造(図示略)が形成されたフィルム16と、フィルム16の他方の表面に積層した粘着剤層18とを備える。
積層体14は、粘着剤層18を介してアクリル板12上に貼着される。
【0014】
(粘着剤層)
粘着剤層18は、カルボキシル基および(メタ)アクリロイル基を有する単量体(以下、「単量体(a)」という。)と、その他の共重合単量体(以下、「単量体(b)という。」を共重合させて得られる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を含有する粘着剤からなる。
【0015】
単量体(a)としては、(メタ)アクリル酸などが挙げられる。
単量体(a)の含有量は、単量体(a)と単量体(b)の合計100質量%中、0.1〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
【0016】
単量体(b)は、単量体(a)と共重合可能な単量体である。単量体(b)としては、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステル、分子内に架橋性官能基を有する(メタ)アクリル酸単量体などが挙げられる。
エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
分子内に架橋性官能基を有する(メタ)アクリル酸単量体としては、架橋性官能基として水酸基、アミノ基、アミド基の少なくとも1種を含む単量体が好ましく、具体的には(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピル等の(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノエステル;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノエステルなどが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
また、単量体(b)としては、上述した単量体以外の他の単量体を用いることもできる。
他の単量体としては、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等などが挙げられる。
【0019】
単量体(b)の含有量は、単量体(a)と単量体(b)の合計100質量%中、90〜99.9質量%が好ましく、95〜99質量%がより好ましい。
【0020】
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、上述した単量体(a)と単量体(b)とを共重合させることにより得られる。共重合の方法としては特に制限されず、公知の方法を採用できる。
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、その共重合形態については特に制限はなく、ランダム、ブロック、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
また、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて(ブレンドして)用いてもよい。
【0021】
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、質量平均分子量が30万〜200万であることが好ましい。質量平均分子量が上記範囲内であれば、粘着剤層の耐熱性が向上し、物品10を高温条件下に曝露してもアクリル板12と粘着剤層18の界面において気泡が発生するのを効果的に抑制できる。従って、接着不良を軽減でき、アクリル板12と積層体14が剥離するのを抑制できる。
なお、質量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値のことである。
【0022】
本発明に用いる粘着剤は、上述した(メタ)アクリル酸エステル系共重合体のみから構成されていてもよいが、粘着剤の貯蔵弾性率を向上させることを目的として、架橋剤を含有してもよい。
架橋剤としては特に制限はなく、従来アクリル系粘着剤において架橋剤として慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。このような架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、メラミン化合物、尿素化合物、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、アジリジン系化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩などが挙げられる。
【0023】
また、粘着剤は、必要に応じてシランカップリング剤、防錆剤、色素、顔料、フィラー等の添加剤を含有することができる。
【0024】
本発明に用いる粘着剤は、25℃における貯蔵弾性率(G’)が0.10〜0.50MPaであり、0.15〜0.25MPaが好ましい。貯蔵弾性率(G’)が0.1MPa以上であれば、粘着剤層の耐熱性が向上し、物品10を高温条件下に曝露してもアクリル板12と粘着剤層18の界面において気泡が発生するのを抑制できる。従って、接着不良を軽減でき、アクリル板12と積層体14が剥離するのを抑制できる。一方、貯蔵弾性率(G’)が0.5MPa以下であれば、アクリル板12に対して十分な接着性を有する粘着剤層18を形成できる粘着剤が得られる。
粘着剤の貯蔵弾性率(G’)は、上述した単量体(a)や単量体(b)の種類や含有量により調整できる。
【0025】
粘着剤の貯蔵弾性率(G’)は、以下のようにして測定できる。
基材等の上に粘着剤を塗布して粘着剤層を形成し、円柱状に切り出して試験片を作製する。得られた試験片の粘着剤層について、ねじり剪断法により、温度:25℃、周波数:1Hzの条件で動的粘弾性測定装置により測定する。
【0026】
粘着剤層18の厚さは、5〜100μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。厚さが5μm以上であれば、アクリル板12に対して十分な密着性、接着性が得られやすくなる。一方、厚さが100μm以下であれば、粘着剤中に含まれる微量残留溶剤の割合を軽減でき、アクリル板12と粘着剤層18との界面において気泡が発生するのをより抑制できる。
【0027】
(フィルム)
図1に示すフィルム16は、フィルム本体16aと、フィルム本体16aの表面に形成された硬化樹脂膜16bとを有する。
フィルム本体16aは、光透過性を有するフィルムである。フィルム本体16aの材料としては、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、スチレン系樹脂、ポリエステル、セルロース系樹脂(トリアセチルセルロース等)、ポリオレフィン、脂環式ポリオレフィン等が挙げられる。
【0028】
硬化樹脂膜16bは、後述の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる光透過性の膜であり、例えば図2に示すように、表面に複数の凸部19を有する。
凸部19としては、陽極酸化アルミナの表面の複数の細孔(凹部)を転写して形成されたものが好ましい。
【0029】
複数の凸部19は、略円錐形状、角錐形状等の複数の突起(凸部)が可視光線の波長以下の間隔で配列した、いわゆるモスアイ構造を形成していることが好ましい。モスアイ構造は、空気の屈折率から材料の屈折率に連続的に屈折率が増大していくことで有効な反射防止の手段となることが知られている。
【0030】
凸部19間の平均周期は、可視光線の波長以下、すなわち400nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、150nm以下が特に好ましい。ここで、凸部19間の平均周期とは、硬化樹脂膜16bの断面を電子顕微鏡で観察し、隣接する凸部19間の間隔P(凸部19の中心から隣接する凸部19の中心までの距離)を50点測定し、これらの値を平均したものである。
なお、後述の陽極酸化アルミナのモールドを用いて凸部19を形成した場合、凸部19間の平均周期は100nm程度となり好ましい。
【0031】
凸部19の高さHは、100〜500nmが好ましく、130〜400nmがより好ましい。凸部19の高さHが100nm以上であれば、反射率が十分に低くなり、かつ反射率の波長依存性が少ない。凸部19の高さHが500nm以下であれば、凸部19の機械的強度が良好となる。
凸部19の底部の幅Wは、100〜500nmが好ましい。
【0032】
HおよびWは、硬化樹脂膜16bの断面を電子顕微鏡で観察することによって測定できる。
Wは、凸部19の周囲に形成される凹部の最底部と同一平面(以下、基準面と記す。)における幅とする。
Hは、前記基準面から凸部19の最頂部までの高さとする。
【0033】
HおよびWは、表面に陽極酸化アルミナを有するモールドの製造条件、該モールドの細孔(凹部)内に充填される活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の粘度(特開2008−197216号公報参照)等を適宜選択することにより、調整できる。
【0034】
表面にモスアイ構造を有する場合、その表面が疎水性の材料から形成されていればロータス効果により超撥水性が得られ、その表面が親水性の材料から形成されていれば超親水性が得られることが知られている。
【0035】
硬化樹脂膜16bの材料が疎水性の場合のモスアイ構造の表面の水接触角は、90°以上が好ましく、100°以上がより好ましく、110°以上が特に好ましい。水接触角が90°以上であれば、水汚れが付着しにくくなるため、十分な防汚性が発揮される。また、水が付着しにくいため、着氷防止を期待できる。
【0036】
硬化樹脂膜16bの材料が親水性の場合のモスアイ構造の表面の水接触角は、25°以下が好ましく、23°以下がより好ましく、21°以下が特に好ましい。水接触角が25°以下であれば、表面に付着した汚れが水で洗い流され、また油汚れが付着しにくくなるため、十分な防汚性が発揮される。該水接触角は、硬化樹脂膜16bの吸水によるモスアイ構造の変形、それに伴う反射率の上昇を抑える点から、3°以上が好ましい。
【0037】
(フィルムの製造方法)
フィルム16は、例えば図3に示す製造装置を用いて、下記のようにして製造される。
複数の凸部19に対応した複数の凹部(図示略)からなる反転微細構造を表面に有するロール状のモールド22の表面と、モールド22の表面に沿って移動する帯状のフィルム本体16aとの間に、タンク24から活性エネルギー線硬化性樹脂組成物21を供給する。
【0038】
モールド22と、空気圧シリンダ26によってニップ圧が調整されたニップロール28との間で、フィルム本体16aおよび活性エネルギー線硬化性樹脂組成物21をニップし、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物21を、フィルム本体16aとモールド22との間に均一に行き渡らせると同時に、モールド22の凹部内に充填する。
【0039】
モールド22とフィルム本体16aとの間に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物21が挟まれた状態で、モールド22の下方に設置された活性エネルギー線照射装置30を用い、フィルム本体16a側から活性エネルギー線硬化性樹脂組成物21に活性エネルギー線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物21を硬化させることによって、モールド22の表面の複数の凹部が転写された硬化樹脂膜16bを形成する。
剥離ロール32により、表面に硬化樹脂膜16bが形成されたフィルム本体16aを剥離することによって、フィルム16を得る。
【0040】
活性エネルギー線照射装置30としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が好ましく、この場合の光照射エネルギー量は、100〜10000mJ/cmが好ましい。
なお、活性エネルギー線とは、可視光線、紫外線、電子線、プラズマ、熱線(赤外線等)と意味する。
【0041】
(モールド)
モールド22は、最終的に得られるフィルムの表面の微細凹凸構造に対応する反転構造(以下、反転微細凹凸構造と記す。)をモールド本体の表面に有するものである。
【0042】
モールド本体の材料としては、金属(表面に酸化皮膜が形成されたものを含む。)、石英、ガラス、樹脂、セラミックス等が挙げられる。
モールド本体の形状としては、ロール状、円管状、平板状、シート状等が挙げられる。
【0043】
モールドの作製方法としては、例えば、下記の方法(X)、(Y)が挙げられる。モールドの大面積化が可能であり、かつ作製が簡便である点から、方法(X)が好ましい。
(X)アルミニウムからなるモールド本体の表面に、複数の細孔(凹部)を有する陽極酸化アルミナを形成する方法。
(Y)モールド本体の表面にリソグラフィ法、電子線描画法、レーザー光干渉法等によって微細凹凸構造を直接形成する方法。
【0044】
方法(X)としては、下記の工程(a)〜(e)を有する方法が好ましい。
(a)アルミニウムを電解液中、定電圧下で陽極酸化して酸化皮膜を形成する工程。
(b)酸化皮膜を除去し、陽極酸化の細孔発生点を形成する工程。
(c)アルミニウムを電解液中、再度陽極酸化し、細孔発生点に細孔を有する酸化皮膜を形成する工程。
(d)細孔の径を拡大させる工程。
(e)前記(c)工程と(d)工程を繰り返し行う工程。
【0045】
工程(a):
図4に示すように、アルミニウム34を陽極酸化すると、細孔36を有する酸化皮膜38が形成される。
電解液としては、シュウ酸、硫酸等が挙げられる。
【0046】
シュウ酸を電解液として用いる場合:
シュウ酸の濃度は、0.7M以下が好ましい。シュウ酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて酸化皮膜の表面が粗くなることがある。
化成電圧が30〜60Vの時、周期が100nmの規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナを得ることができる。化成電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向にある。
電解液の温度は、60℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましい。電解液の温度が60℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
【0047】
硫酸を電解液として用いる場合:
硫酸の濃度は0.7M以下が好ましい。硫酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて定電圧を維持できなくなることがある。
化成電圧が25〜30Vの時、周期が63nmの規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナを得ることができる。化成電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向がある。
電解液の温度は、30℃以下が好ましく、20℃以下がよりに好ましい。電解液の温度が30℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
【0048】
工程(b):
図4に示すように、酸化皮膜38を一旦除去し、これを陽極酸化の細孔発生点40にすることで細孔の規則性を向上することができる。
【0049】
酸化皮膜を除去する方法としては、アルミニウムを溶解せず、酸化皮膜を選択的に溶解する溶液に溶解させて除去する方法が挙げられる。このような溶液としては、例えば、クロム酸/リン酸混合液等が挙げられる。
【0050】
工程(c):
図4に示すように、酸化皮膜を除去したアルミニウム34を再度、陽極酸化すると、円柱状の細孔36を有する酸化皮膜38が形成される。
陽極酸化は、工程(a)と同様な条件で行えばよい。陽極酸化の時間を長くするほど深い細孔を得ることができる。
【0051】
工程(d):
図4に示すように、細孔36の径を拡大させる処理(以下、細孔径拡大処理と記す。)を行う。細孔径拡大処理は、酸化皮膜を溶解する溶液に浸漬して陽極酸化で得られた細孔の径を拡大させる処理である。このような溶液としては、例えば、5質量%程度のリン酸水溶液等が挙げられる。
細孔径拡大処理の時間を長くするほど、細孔径は大きくなる。
【0052】
工程(e):
図4に示すように、工程(c)の陽極酸化と、工程(d)の細孔径拡大処理を繰り返すと、直径が開口部から深さ方向に連続的に減少する形状の細孔36を有する陽極酸化アルミナ(アルミニウムの多孔質の酸化皮膜(アルマイト))が形成され、表面に反転微細凹凸構造を有するモールド22が得られる。
繰り返し回数は、合計で3回以上が好ましく、5回以上がより好ましい。繰り返し回数が2回以下では、非連続的に細孔の直径が減少するため、このような細孔を有する陽極酸化アルミナを用いて製造された硬化樹脂膜の反射率低減効果は不十分である。
【0053】
細孔36の形状としては、略円錐形状、角錐形状等が挙げられる。
細孔36間の平均周期は、可視光線の波長以下、すなわち400nm以下である。細孔36間の平均周期は、25nm以上が好ましい。
【0054】
細孔36の深さは、100〜500nmが好ましく、150〜400nmがより好ましい。
図4に示すような細孔36を転写して形成された硬化樹脂膜16bの表面は、いわゆるモスアイ構造となる。
【0055】
モールド22の表面は、硬化樹脂膜との分離が容易になるように、離型剤で処理されていてもよい。離型剤としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、フッ素化合物等が挙げられる。
【0056】
(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物)
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、重合性化合物および重合開始剤を含む。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、フィルム本体としてアクリルフィルムを用いる場合は、フィルム本体の屈折率と硬化樹脂膜の屈折率との差が十分に小さくなる点から、アクリル系モノマーを主成分とするものが好ましい。
【0057】
重合性化合物としては、分子中にラジカル重合性結合および/またはカチオン重合性結合を有するモノマー、オリゴマー、反応性ポリマー等が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、非反応性のポリマー、活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物を含んでいてもよい。
【0058】
ラジカル重合性結合を有するモノマーとしては、単官能モノマー、多官能モノマーが挙げられる。
単官能モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート誘導体;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体;(メタ)アクリルアミド、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0059】
多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1、6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1、5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1、3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2、2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2、2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2、2−ビス(4−(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、1、2−ビス(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、1、4−ビス(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ブタン、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、メチレンビスアクリルアミド等の二官能性モノマー;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリアクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート等の三官能モノマー;コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸の縮合反応混合物、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等の四官能以上のモノマー;二官能以上のウレタンアクリレート、二官能以上のポリエステルアクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0060】
カチオン重合性結合を有するモノマーとしては、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基、ビニルオキシ基等を有するモノマーが挙げられ、エポキシ基を有するモノマーが特に好ましい。
【0061】
オリゴマーまたは反応性ポリマーとしては、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとの縮合物等の不飽和ポリエステル類;ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カチオン重合型エポキシ化合物、側鎖にラジカル重合性結合を有する上述のモノマーの単独または共重合ポリマー等が挙げられる。
【0062】
非反応性のポリマーとしては、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリウレタン、セルロース系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物としては、アルコキシシラン化合物、アルキルシリケート化合物等が挙げられる。
【0063】
アルコキシシラン化合物としては、下記式(1)の化合物が挙げられる。
Si(OR ・・・(1)
ただし、R、Rは、それぞれ炭素数1〜10のアルキル基を表し、x、yは、x+y=4の関係を満たす整数を表す。
【0064】
アルコキシシラン化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリメチルブトキシシラン等が挙げられる。
【0065】
アルキルシリケート化合物としては、下記式(2)の化合物が挙げられる。
O[Si(OR)(OR)O] ・・・(2)
ただし、R〜Rは、それぞれ炭素数1〜5のアルキル基を表し、zは、3〜20の整数を表す。
【0066】
アルキルシリケート化合物としては、メチルシリケート、エチルシリケート、イソプロピルシリケート、n−プロピルシリケート、n−ブチルシリケート、n−ペンチルシリケート、アセチルシリケート等が挙げられる。
【0067】
光硬化反応を利用する場合、光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2、2−ジエトキシアセトフェノン、α、α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4、4'−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2、4、6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
電子線硬化反応を利用する場合、重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4、4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2、4、6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルソベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2、4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2、4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン;ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル;2、4、6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2、6−ジメトキシベンゾイル)−2、4、4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2、4、6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド;メチルベンゾイルホルメート、1、7−ビスアクリジニルヘプタン、9−フェニルアクリジン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
熱硬化反応を利用する場合、熱重合開始剤としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物;前記有機過酸化物にN、N−ジメチルアニリン、N、N−ジメチル−p−トルイジン等のアミンを組み合わせたレドックス重合開始剤等が挙げられる。前記重合開始剤は併用してもよい。
【0070】
重合開始剤の量は、重合性化合物100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。重合開始剤の量が0.1質量部未満では、重合が進行しにくい。重合開始剤の量が10質量部を超えると、硬化樹脂膜が着色したり、機械的強度が低下したりすることがある。
【0071】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、帯電防止剤、離型剤、防汚性を向上させるためのフッ素化合物等の添加剤、微粒子、また少量の溶剤を含んでいてもよい。
【0072】
(疎水性材料)
硬化樹脂膜のモスアイ構造の表面の水接触角を90°以上にするためには、疎水性の材料を形成しうる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として、フッ素含有化合物またはシリコーン系化合物を含む組成物を用いることが好ましい。
【0073】
フッ素含有化合物:
フッ素含有化合物としては、下記式(3)で表されるフルオロアルキル基を有する化合物が好ましい。
−(CF−X ・・・(3)
ただし、Xは、フッ素原子または水素原子を表し、nは、1以上の整数を表し、1〜20が好ましく、3〜10がより好ましく、4〜8が特に好ましい。
【0074】
フッ素含有化合物としては、フッ素含有モノマー、フッ素含有シランカップリング剤、フッ素含有界面活性剤、フッ素含有ポリマー等が挙げられる。
【0075】
フッ素含有モノマーとしては、フルオロアルキル基置換ビニルモノマー、フルオロアルキル基置換開環重合性モノマー等が挙げられる。
フルオロアルキル基置換ビニルモノマーとしては、フルオロアルキル基置換(メタ)アクリレート、フルオロアルキル基置換(メタ)アクリルアミド、フルオロアルキル基置換ビニルエーテル、フルオロアルキル基置換スチレン等が挙げられる。
【0076】
フルオロアルキル基置換開環重合性モノマーとしては、フルオロアルキル基置換エポキシ化合物、フルオロアルキル基置換オキセタン化合物、フルオロアルキル基置換オキサゾリン化合物等が挙げられる。
【0077】
フッ素含有モノマーとしては、フルオロアルキル基置換(メタ)アクリレートが好ましく、下記式(4)の化合物が特に好ましい。
CH=C(R)C(O)O−(CH−(CF−X ・・・(4)
ただし、Rは、水素原子またはメチル基を表し、Xは、水素原子またはフッ素原子を表し、mは、1〜6の整数を表し、1〜3が好ましく、1または2がより好ましく、pは、1〜20の整数を表し、3〜10が好ましく、4〜8がより好ましい。
【0078】
フッ素含有シランカップリング剤としては、フルオロアルキル基置換シランカップリング剤が好ましく、下記式(5)の化合物が特に好ましい。
(RSiY ・・・(5)
【0079】
は、エーテル結合またはエステル結合を1個以上含んでいてもよい炭素数1〜20のフッ素置換アルキル基を表す。Rとしては、3、3、3−トリフルオロプロピル基、トリデカフルオロ−1、1、2、2−テトラヒドロオクチル基、3−トリフルオロメトキシプロピル基、3−トリフルオロアセトキシプロピル基等が挙げられる。
【0080】
は、炭素数1〜10のアルキル基を表す。Rとしては、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0081】
Yは、水酸基または加水分解性基を表す。
加水分解性基としては、アルコキシ基、ハロゲン原子、RC(O)O(ただし、Rは、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。)等が挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3、7−ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、Cl、Br、I等が挙げられる。
C(O)Oとしては、CHC(O)O、CC(O)O等が挙げられる。
【0082】
a、b、cは、a+b+c=4であり、かつa≧1、c≧1を満たす整数を表し、a=1、b=0、c=3が好ましい。
【0083】
フッ素含有シランカップリング剤としては、3、3、3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3、3、3−トリフルオロプロピルトリアセトキシシラン、ジメチル−3、3、3−トリフルオロプロピルメトキシシラン、トリデカフルオロ−1、1、2、2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0084】
フッ素含有界面活性剤としては、フルオロアルキル基含有アニオン系界面活性剤、フルオロアルキル基含有カチオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0085】
フルオロアルキル基含有アニオン系界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸またはその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルキル(C〜C11)オキシ]−1−アルキル(C〜C)スルホン酸ナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルカノイル(C〜C)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸またはその金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C〜C13)またはその金属塩、パーフルオロアルキル(C〜C12)スルホン酸またはその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C〜C16)エチルリン酸エステル等が挙げられる。
【0086】
フルオロアルキル基含有カチオン系界面活性剤としては、フルオロアルキル基含有脂肪族一級、二級または三級アミン酸、パーフルオロアルキル(C〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩等の脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。
【0087】
フッ素含有ポリマーとしては、フルオロアルキル基含有モノマーの重合体、フルオロアルキル基含有モノマーとポリ(オキシアルキレン)基含有モノマーとの共重合体、フルオロアルキル基含有モノマーと架橋反応性基含有モノマーとの共重合体等が挙げられる。フッ素含有ポリマーは、共重合可能な他のモノマーとの共重合体であってもよい。
【0088】
フッ素含有ポリマーとしては、フルオロアルキル基含有モノマーとポリ(オキシアルキレン)基含有モノマーとの共重合体が好ましい。
ポリ(オキシアルキレン)基としては、下記式(6)で表される基が好ましい。
−(OR10− ・・・(6)
ただし、R10は、炭素数2〜4のアルキレン基を表し、qは、2以上の整数を表す。
10としては、−CHCH−、−CHCHCH−、−CH(CH)CH−、−CH(CH)CH(CH)−等が挙げられる。
【0089】
ポリ(オキシアルキレン)基は、同一のオキシアルキレン単位(OR10)からなるものであってもよく、2種以上のオキシアルキレン単位(OR10)からなるものであってもよい。2種以上のオキシアルキレン単位(OR10)の配列は、ブロックであってもよく、ランダムであってもよい。
【0090】
シリコーン系化合物:
シリコーン系化合物としては、(メタ)アクリル酸変性シリコーン、シリコーン樹脂、シリコーン系シランカップリング剤等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸変性シリコーンとしては、シリコーン(ジ)(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0091】
(親水性材料)
硬化樹脂膜のモスアイ構造の表面の水接触角を25°以下にするためには、親水性の材料を形成しうる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として、下記の重合性化合物を含む組成物を用いることが好ましい。
4官能以上の多官能(メタ)アクリレートの10〜50質量%、
2官能以上の親水性(メタ)アクリレートの30〜80質量%、
単官能モノマーの0〜20質量%の合計100質量%からなる重合性化合物。
【0092】
4官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸のモル比1:2:4の縮合反応混合物、ウレタンアクリレート類(ダイセル・サイテック社製:EBECRYL220、EBECRYL1290、EBECRYL1290K、EBECRYL5129、EBECRYL8210、EBECRYL8301、KRM8200)、ポリエーテルアクリレート類(ダイセル・サイテック社製:EBECRYL81)、変性エポキシアクリレート類(ダイセル・サイテック社製:EBECRYL3416)、ポリエステルアクリレート類(ダイセル・サイテック社製:EBECRYL450、EBECRYL657、EBECRYL800、EBECRYL810、EBECRYL811、EBECRYL812、EBECRYL1830、EBECRYL845、EBECRYL846、EBECRYL1870)等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
4官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、5官能以上の多官能(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0093】
4官能以上の多官能(メタ)アクリレートの割合は、10〜50質量%が好ましく、耐水性、耐薬品性の点から、20〜50質量%がより好ましく、30〜50質量%が特に好ましい。4官能以上の多官能(メタ)アクリレートの割合が10質量%以上であれば、弾性率が高くなって耐擦傷性が向上する。4官能以上の多官能(メタ)アクリレートの割合が50質量%以下であれば、表面に小さな亀裂が入りにくく、外観不良となりにくい。
【0094】
2官能以上の親水性(メタ)アクリレートとしては、アロニックスM−240、アロニックスM260(東亞合成社製)、NKエステルAT−20E、NKエステルATM−35E(新中村化学社製)等の長鎖ポリエチレングリコールを有する多官能アクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリエチレングリコールジメタクリレートにおいて、一分子内に存在するポリエチレングリコール鎖の平均繰り返し単位の合計は、6〜40が好ましく、9〜30がより好ましく、12〜20が特に好ましい。ポリエチレングリコール鎖の平均繰り返し単位が6以上であれば、親水性が十分となり、防汚性が向上する。ポリエチレングリコール鎖の平均繰り返し単位が40以下であれば、4官能以上の多官能(メタ)アクリレートとの相溶性が良好となり、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が分離しにくい。
【0095】
2官能以上の親水性(メタ)アクリレートの割合は、30〜80質量%が好ましく、40〜70質量%がより好ましい。2官能以上の親水性(メタ)アクリレートの割合が30質量%以上であれば、親水性が十分となり、防汚性が向上する。2官能以上の親水性(メタ)アクリレートの割合が80質量%以下であれば、弾性率が高くなって耐擦傷性が向上する。
【0096】
単官能モノマーとしては、親水性単官能モノマーが好ましい。
親水性単官能モノマーとしては、M−20G、M−90G、M−230G(新中村化学社製)等のエステル基にポリエチレングリコール鎖を有する単官能(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等のエステル基に水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート、単官能アクリルアミド類、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート等のカチオン性モノマー類等が挙げられる。
また、単官能モノマーとして、アクリロイルモルホリン、ビニルピロリドン等の粘度調整剤、基材への密着性を向上させるアクリロイルイソシアネート類等の密着性向上剤等を用いてもよい。
【0097】
単官能モノマーの割合は、0〜20質量%が好ましく、5〜15質量%がより好ましい。単官能モノマーを用いることにより、部材と硬化樹脂との密着性が向上する。単官能モノマーの割合が20質量%以下であれば、4官能以上の多官能(メタ)アクリレートまたは2官能以上の親水性(メタ)アクリレートが不足することなく、防汚性または耐擦傷性が十分に発現する。
【0098】
単官能モノマーは、1種または2種以上を(共)重合した低重合度の重合体として活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に0〜35質量部配合してもよい。低重合度の重合体としては、M−230G(新中村化学社製)等のエステル基にポリエチレングリコール鎖を有する単官能(メタ)アクリレート類と、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムメチルサルフェートとの40/60共重合オリゴマー(MRCユニテック社製、MGポリマー)等が挙げられる。
【0099】
<積層体の製造方法>
本発明の積層体14は、剥離フィルム上に粘着剤層18を構成する粘着剤の塗布液を所定の厚さに塗布・乾燥させて形成し、その粘着剤層18をフィルム16の微細凹凸構造が形成されていない側の表面に転写することで得られる。
【0100】
剥離フィルムは、樹脂フィルムなどの剥離シート用基材の表面に、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、長鎖アルキル基含有カルバメート等の剥離剤をコーティングして剥離剤層を形成させたシートが用いられる。
剥離フィルム用基材としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン等のポリオレフィンなどの樹脂フィルム等を用いることができる。
剥離フィルム用基材の厚さは、使用する材料によって多少異なるが、通常は10〜100μm程度である。
【0101】
粘着剤層を剥離フィルム上に形成させるには、以下のようにすればよい。
すなわち、粘着剤の塗布液を調製して、該塗布液を剥離フィルム上に塗布し、その後、溶剤や低沸点成分の残留を防ぐために、60〜150℃程度の温度で30秒〜5分間程度加熱乾燥することにより、接着性が発現して粘着剤層が形成される。
粘着剤の塗布液に用いられる溶剤としては特に制限されないが、例えばメチルエチルケトンなどが挙げられる。
粘着剤の塗布液を剥離フィルム上に塗布する方法としては、通常行われている方法、例えばグラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ロールコート法、ダイコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、ホットメルトコート法、カーテンコート法等を使用できる。
【0102】
得られた積層体14は、そのまま粘着剤層18を介してアクリル板12上に貼着してもよいし、一旦ロール等に巻き取って保管してもよい。保管する際は、粘着剤層18上に剥離フィルムが積層したままで保管する。
また、積層体14は、フィルム16の微細凹凸構造が形成されていない側の表面に、粘着剤層18を構成する粘着剤を上記と同様の条件で塗布・乾燥して、フィルム16上に粘着剤層18を積層することでも得られる。
【0103】
以上説明した本発明の積層体は、アクリル板等の基材に対して良好な接着性を有し、かつ耐候性に優れた粘着剤層を備えるので、アクリル板等の基材との接着性が良好であると共に、意匠性を良好に維持できる。
また、本発明の積層体は、表面に微細凹凸構造が形成されたフィルムを備えるので、優れた反射防止機能を発揮できる。
【0104】
なお、本発明の積層体は、図示例の積層体14に限定はされない。例えば、複数の凸部19は、積層体14においては、フィルム16の硬化樹脂膜16bの表面に形成されているが、硬化樹脂膜16bを設けることなくフィルム本体16aの表面に直接形成されていてもよい。ただし、ロール状のモールド22を用いて効率よく複数の凸部19を形成できる点から、図2に示すようにフィルム16の硬化樹脂膜16bの表面に複数の凸部19が形成されていることが好ましい。
【0105】
<物品の製造方法>
本発明の物品は、上述した本発明の積層体を、該積層体の粘着剤層を介してアクリル板等の基材上に貼着することで得られる。
積層体の粘着剤層上に剥離フィルムが積層している場合は、剥離フィルムを積層体から剥離して粘着剤層の表面を露出させて、アクリル板等の基材上に貼着させる。
【0106】
本発明の物品は上述した積層体を有するので、反射防止機能を有すると共に、アクリル板等の基材と積層体との接着性が良好であり、両者が剥離しにくく、意匠性も良好に維持できる。
【0107】
本発明の物品は、反射防止機能が求められる画像表示装置などの前面板等に使用される部材として特に好適に用いることができる。本発明の部材を用いれば、太陽光線、照明光などが反射しにくいので、視認性を維持できる。
【実施例】
【0108】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0109】
(陽極酸化アルミナの細孔)
陽極酸化アルミナの一部を削り、断面にプラチナを1分間蒸着し、電界放出形走査電子顕微鏡(日本電子社製、JSM−7400F)を用いて、加速電圧:3.00kVの条件にて断面を観察し、細孔の間隔、細孔の深さを測定した。各測定は、それぞれ50点について行い、平均値を求めた。
【0110】
(硬化樹脂膜の凸部)
硬化樹脂膜の破断面にプラチナを5分間蒸着し、電界放出形走査電子顕微鏡(日本電子社製、JSM−7400F)を用いて、加速電圧:3.00kVの条件にて断面を観察し、凸部の平均間隔、凸部の高さを測定した。各測定は、それぞれ5点について行い、平均値を求めた。
【0111】
(硬化樹脂膜の屈折率)
硬化樹脂膜の屈折率は、アッベ屈折率計(アタゴ社製、NAR−2)を用いて測定した。
【0112】
(フィルムの透過率)
フィルムの全光線透過率は、JIS K7361−1に準拠したヘイズメーター(スガ試験機社製)を用いて測定した。
【0113】
(フィルムの反射率)
分光光度計(日立製作所社製、U−4000)を用い、入射角:5°、波長380〜780nmの範囲で硬化樹脂膜の表面の相対反射率を測定し、JIS R3106に準拠してフィルムの視感度反射率を算出した。
【0114】
(粘着剤層の貯蔵弾性率)
実施例および比較例で用いた粘着剤の塗布液を基板上に、乾燥後の厚みが30μmとなるように塗布し、90℃で60秒間乾燥させて粘着剤層を作製し、直径8mm×厚さ3mmの円柱状に切り出し、これを試験片とした。該試験片をねじり剪断法により、下記の条件で測定した。
測定装置:動的粘弾性測定装置(レオメトリック社製、DYNAMIC ANALYZER RDAII)、
周波数 :1Hz、
温度 :25℃。
【0115】
(接着性)
実施例および比較例で作製した積層体の粘着剤層とは反対の面(すなわち、フィルムの硬化樹脂膜上)に、粘着テープ(日東電工社製、品名31B)を貼付し、25mm×250mmのサイズに切り出して粘着力測定用の粘着シートとした。
粘着シートから剥離フィルムを剥離して表出した粘着剤層の面を、アクリル板(三菱レイヨン社製、品名:アクリライトL#001、70mm×150mmサイズ)に貼付した。その後、23℃、相対湿度50%の環境下で24時間放置したのち、同環境下で、引張試験機(オリエンテック社製、装置名テンシロン)を用いて、JIS Z0237に準じて剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で測定した値(N/25mm)を粘着力とした。粘着力の値から、下記評価基準にて接着性を評価した。
○:粘着力が10N/25mm以上。
×:粘着力が10N/25mm未満。
【0116】
(耐候性)
実施例および比較例で作製した積層体を70mm×150mmのサイズに切り出し、剥離フィルムを剥離して表出した粘着剤層の面を、アクリル板(三菱レイヨン社製、品名:アクリライトL#001、70mm×150mmサイズ)に貼付した。その後、60℃、ドライの環境下で100時間放置した後、積層体の発泡・剥がれの有無を目視にて確認し、下記基準にて耐候性を評価した。
○:直径1.0mm未満の発泡、および積層体の剥がれがない。
×:直径1.0mm以上の発泡、または積層体の剥がれがある。
【0117】
(モールドaの製造方法)
純度99.99%のアルミニウムインゴットを直径:200mm、長さ350mmに切断した圧延痕のない円筒状アルミニウム原型に、羽布研磨処理を施した後、これを過塩素酸/エタノール混合溶液中(体積比:1/4)で電解研磨し、鏡面化した。
【0118】
工程(a):
該アルミニウム原型について、0.3Mシュウ酸水溶液中で、直流:40V、温度:16℃の条件で30分間陽極酸化を行った。
工程(b):
厚さ3μmの酸化皮膜が形成されたアルミニウム原型を、6質量%リン酸/1.8質量%クロム酸混合水溶液に浸漬して、酸化皮膜を除去した。
工程(c):
該アルミニウム原型について、0.3Mシュウ酸水溶液中で、直流:40V、温度:16℃の条件で30秒間陽極酸化を行った。
工程(d):
酸化皮膜が形成されたアルミニウム原型を、30℃の5質量%リン酸水溶液に8分間浸漬して、細孔径拡大処理を行った。
工程(e):
前記工程(c)および工程(d)を合計で5回繰り返し、平均周期:100nm、深さ:200nmの略円錐形状の細孔を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたロール状のモールドaを得た。
【0119】
モールドaを、オプツールDSX(ダイキン化成品販売社製)の0.1質量%希釈溶液に室温で10分間浸漬し、引き上げた。一晩風乾して、離型剤で処理されたモールドaを得た。
【0120】
(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の調製)
以下の組成からなる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物A(表1)を調製した。
【0121】
【表1】

【0122】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aを硬化させてなる厚さ5μmの硬化樹脂膜は、透明であり、屈折率は1.51であった。
【0123】
[実施例1]
図2に示す製造装置を用いて、フィルムを製造した。
ロール状のモールド22としては、前記モールドaを用いた。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物21としては、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aを用いた。
フィルム本体16aとしては、表面を粗面化したアクリルフィルムを用いた。
アクリルフィルム16a側から、積算光量800mJ/cmの紫外線を、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aの塗膜に照射し、活性エネルギー線化性樹脂組成物Aの硬化を行い、硬化樹脂膜16bを形成した。
得られたフィルム16の凸部間の平均周期は100nmであり、凸部の高さは200nmであった。フィルム16について視感度反射率および全光線透過率を測定したところ、視感度反射率は0.09%、全光線透過率95.5%であった。
【0124】
別途、アクリル酸ブチル(BA)、アクリル酸メチル(MA)、アクリル酸(AAc)をBA/MA/AAc=67/30/3(質量比)で共重合して得られたアクリル酸エステル系共重合体(質量平均分子量:70万)100質量部と、架橋剤(金属キレート化合物、綜研化学社、品名:M−5A)1.2質量部を混合して粘着剤を得た。得られた粘着剤をメチルエチルケトンにて希釈して、不揮発分濃度25質量%の粘着剤の塗布液を作製した。
なお、アクリル酸エステル系共重合体の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定し、ポリスチレン換算で求めた。
得られた粘着剤について、貯蔵弾性率を測定した。結果を表2に示す。
【0125】
次いで、ナイフコーターを用いて、得られた粘着剤の塗布液を剥離フィルム(リンテック社製、品名:SP−PET381031C、厚み:38μm)の剥離剤処理面に、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、90℃で60秒間乾燥し、剥離フィルム上に粘着剤層を形成した。
次いで、得られたフィルム16の硬化樹脂膜16bと反対の面(フィルム本体16a側の面)に粘着剤層を貼合して転写し、剥離フィルムの付いた積層体を作製した。
得られた積層体について、接着性および耐熱性を評価した。結果を表2に示す。
【0126】
[実施例2]
アクリル酸エステル系共重合体として、アクリル酸ブチル(BA)、アクリル酸エチル(EA)、アクリル酸(AAc)をBA/EA/AAc=67/30/3(質量比))で共重合して得られたアクリル酸エステル系共重合体(質量平均分子量:80万)を使用した以外は、実施例1と同様にして積層体を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0127】
[比較例1]
アクリル酸ブチル(BA)、アクリル酸メチル(MA)、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(2HEA)をBA/MA/2HEA=84/15/1(質量比)で共重合して得られたアクリル酸エステル系共重合体(質量平均分子量:75万)100質量部と、架橋剤(日本ポリウレタン社製、品名:コロネートL)0.2質量部を混合して調製した粘着剤を使用した以外は、実施例1と同様にして積層体を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0128】
[比較例2]
アクリル酸エステル系共重合体として、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)、アクリル酸を2EHA/AAc=99/1(質量比)で共重合して得られたアクリル酸エステル系共重合体(質量平均分子量:45万)を使用した以外は、実施例1と同様にして積層体を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0129】
【表2】

【0130】
表2から明らかなように、各実施例では、アクリル板に対する接着剤層の粘着力が優れており、アクリル板と積層体との接着性が良好であった。また、各実施例で得られた積層体は粘着剤層の耐候性に優れていた。
一方、各比較例では、アクリル板に対する接着剤層の粘着力に劣っており、アクリル板と積層体との接着性が実施例に比べて低かった。また、各比較例で得られた積層体は粘着剤層の耐候性が劣っていた。
【符号の説明】
【0131】
10:物品、12:基材(アクリル板)、14:積層体、16:フィルム、18:粘着剤層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の表面に微細凹凸構造が形成されたフィルムと、該フィルムの他方の表面に積層した粘着剤層とを備え、該粘着剤層を介して基材上に貼着される積層体であって、
前記粘着剤層は、カルボキシル基および(メタ)アクリロイル基を有する単量体と、その他の共重合単量体を共重合させて得られる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を含有し、かつ25℃における貯蔵弾性率が0.10〜0.50MPaである粘着剤からなる、積層体。
【請求項2】
基材と、該基材上に粘着剤層を介して貼着された、請求項1に記載の積層体とを有する、物品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−26449(P2011−26449A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173578(P2009−173578)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】