説明

積層体の加圧構造

【課題】発電素子または蓄電素子を形成する各要素を積層してなる積層体、または単位発電素子または単位蓄電素子を積層してなる積層スタックである積層体の加圧機構を簡素化することで、加圧スペース性、組み立て性を同時に向上させる積層体加圧構造を提供する。
【解決手段】積層スタック1の上下に位置する一対の端板13と、これらの端板13を上下から挟持すると共に積層スタック1を積層方向に加圧する板状弾性体である板ばね10で加圧構造を構成する。このような簡素な構造の加圧構造を用いることで積層スタック1をその積層方向に適正圧力で加圧しつつ、省スペース性、組み立て性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電素子または蓄電素子を形成する各要素を積層してなる積層体、または単位発電素子または単位蓄電素子を積層してなる積層スタックである積層体の構造において、積層体の積層方向に締め付け固定するための加圧構造に関する。
【背景技術】
【0002】
発電素子である一次電池や燃料電池、あるいは蓄電素子である二次電池やコンデンサには、発電素子または蓄電素子を形成する各要素を積層した構造を有するものがある。あるいは単位発電素子または単位蓄電素子を積層してなる積層スタック構造を有するものがある。このような積層体を積層方向に締め付け、押し付け圧力を均一に掛けることにより、安定した良好な特性を得ることができ、また長寿命になることが知られている。従来、積層体構造の上下端板を介して加圧する構造として、皿ばねやコイルばねを用いるものが、開示されている(例えば、特許文献1、2、3、4参照)。
【0003】
図16を用いてその一例である燃料電池スタックを説明する。
図16に示すように積層体71の両端部に設けられた端板72は、ばね76と押圧板74、75を介して締結ボルト78により積層体71に押し付けられる。締結ボルト78、ワッシャー79、ナット77は、積層体71と端板72と押圧板74、75とばね76などの締結構造を一体化するために用いられる。これらは所定の加圧力をばね76に与え、端板72を介して均一な圧力を積層体71に与える。ばね76としてはコイルばね、皿ばね、板ばねなどが用いられる。
【特許文献1】特開昭60−225370号公報
【特許文献2】特開2001−167745号公報
【特許文献3】特公平3−20030号公報
【特許文献4】特開2006−49221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の構造では、積層体71、端板72に圧力を掛けるための、押圧板74、75が必要である。また、これらを一体化するための、締結ボルト78、ワッシャー79、ナット77が必要となる。このように締結による加圧構造が積層体を包み込むように取り囲むため、装置全体が大型化する。
【0005】
例えば電池の性能を判断する一つの指標として、積層体の単位電池当たりのエネルギー容量(エネルギー密度:Wh/l)がある。しかし、モバイル用電池や車載用電池として、締結構造も含めた装置全体でどのくらいエネルギーを詰め込めるかという指標(エネルギー充填率)も重要である。すなわちたとえエネルギー密度が高くても装置のケーシングの形状や構造によりエネルギー充填率が50%になれば、見かけ上のエネルギー密度は半分に低下する。
【0006】
そのため上記のような加圧構造を用いると、その占有体積分だけ装置のエネルギー充填率が低下し、エネルギー密度を低下させることと同じ結果を招く。そのため、可能な限りスペースを取らずに積層体を積層方向に均一に圧力を掛ける必要がある。
【0007】
また図16に示す構造では、小型化とばねによる荷重のばらつきの低減とを両立させることは困難である。この理由を簡単に説明する。図17は、ばね76への荷重とばね変形量との関係を示している。この図面に示すようにばね荷重Pの許容誤差ΔPを所定の範囲内とするためには、ばね定数の大小により、許容されるばねのたわみ誤差ΔLが変化する。すなわち、ばね定数が大きいほど、ばねのたわみ誤差ΔLが小さくなっている。逆に、ばね定数が小さいほど、ばねのたわみ誤差ΔLが大きくなっている。
【0008】
このことは、積層体71の寸法のばらつきに関して、ばね定数が小さいばねの方が、ばね定数が大きなばねよりも許容できるばらつき範囲が大きいことを示している。ばね荷重が適正荷重よりも過大になると、積層体構成物の強度が問題となる。そのため、適正荷重よりも過大なばね荷重を与えてばねのたわみ誤差ΔLを大きく取ることはできない。しかし、ばね定数の小さなばねは、ばね定数の大きなものよりも必要なばね荷重(適正荷重)を得るためのばねの自由長が長くなる。そのため、積層体71を包み込むために大きなスペースが必要になり、装置全体が大型化する。
【0009】
ここで、具体的に積層体71の寸法が、高さ15mm、幅35mm、奥行き80mmで、加圧力が100Nから110Nである締結構造を設計し、比較した例を以下に示す。図18に示す皿ばね86の寸法は、板厚0.4mm、外径32mm、内径16mm、自由高さ1.5mmである。このときのばね定数は110N/mmである。図19に示すコイルばね96の寸法は、線径1.7mm、自由長7.5mm、中心径8mm、有効巻数3である。このときのばね定数は53.4N/mmである。
【0010】
図17に示すように、皿ばね86のばね荷重が100Nから110Nまで変化するとき、ばね変形量は0.91mmから1.0mmまで変化する。したがって皿ばね86のばね荷重は、積層体71の寸法のばらつきを1.0mm以内に収めないと所定の範囲を逸脱することになる。一方、コイルばね96のばね荷重が100Nから110Nまで変化するとき、ばね変形量は1.87mmから2.06mmまで変化する。しかしながらコイルばね96の自由長は7.5mmと長い。
【0011】
さらに、積層体を構成する発電素子または蓄電素子を形成する各要素や、単位発電素子、単位蓄電素子にはある程度の寸法ばらつきがある。そのため、これらを積層することによりそのばらつきはさらに大きくなる。このように積層体の積層方向の寸法が製品毎にばらつきが発生すると、締結構造で締め付けた際に加圧力もばらつき、その結果として、特性や寿命がばらつく。
【0012】
本発明は、積層体をその積層方向に加圧する構造を簡素化することで、ばね性、省スペース性、組み立て性を同時に向上させる積層体の加圧構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような課題を解決するために、本発明の加圧構造は、積層体の上下に位置する一対の端板と板状弾性体とを備える。板状弾性体は端板を上下から挟持すると共に積層体を積層方向に加圧する。このような簡素な構造の加圧構造を用いることで積層体をその積層方向に適正圧力で加圧しつつ、省スペース性、組み立て性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、積層体を挟持すると共に、同時に積層方向に加圧することを特徴とする加圧構造を提供可能である。本発明は、押圧板と、ばねまたは締結ボルト、ナット、ワッシャーなどの加圧部品のすべてを一体化することで、ばね特性、省スペース性、組み立て性を同時に向上させることが可能な積層体の加圧構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の第1の発明は、発電素子または蓄電素子を形成する各要素を積層してなる積層体、または単位発電素子または単位蓄電素子を積層してなる積層スタックからなる積層体の加圧構造である。この加圧構造は、積層体の上下に位置する一対の端板と、板状弾性体とを有する。板状弾性体は端板を上下から挟持すると共に積層体を積層方向に加圧する。このような簡素な構造の加圧構造を用いることで積層体をその積層方向に適正圧力で加圧しつつ、省スペース性、組み立て性を向上させることができる。
【0016】
本発明の第2の発明は第1の発明において、板状弾性体の断面形状が底面部分とこの底面部分から曲げられた2つの側面部分とを有する溝型であることを特徴とする加圧構造である。
【0017】
本発明の第3の発明は第2の発明において、積層体を加圧した状態で板状弾性体の底面部分と側面部分とのなす角度が直角となるように、積層体を加圧する前の状態で底面部分と側面部分とのなす角度が予め90度未満に設定されていることを特徴とする加圧構造である。積層体を加圧した状態で板状弾性体の底面部分と側面部分とのなす角度が直角になれば板状弾性体で効果的に積層体を加圧することができる。
【0018】
本発明の第4の発明は第3の発明において、積層体を加圧する前の状態で板状弾性体の底面部分と側面部分とのなす角度が65度以上85度以下に設定されていることを特徴とする加圧構造である。具体的には上記角度範囲に設定することが好ましい。
【0019】
本発明の第5の発明は第2から第4の発明において、板状弾性体は、端板を加圧するための突起部を側面部分に有することを特徴とする加圧構造である。このように突起部を設けることで、板状弾性体により端板に掛ける力の作用点が一義的に定まり、加圧力を効果的に作用させることができる。
【0020】
本発明の第6の発明は第5の発明において、板状弾性体は一組の板状弾性体の一方であり、一組の板状弾性体はそれぞれの底面部分が相対するようにして端板を挟持し、一組の板状弾性体のそれぞれの突起部から積層体の中心までの距離を、積層体の幅の12%以上38%以下としたことを特徴とする加圧構造である。この範囲に突起部を設けることによって積層体の圧縮分布を均等にすることができる。
【0021】
本発明の第7の発明は第2から第4の発明において、板状弾性体は、側面部分の末端で側面部分同士が対向する方向に折り曲げられた折り返し部分を有することを特徴とする加圧構造である。このように折り返し部分を設けることで板状弾性体のばね定数を小さくしてばね性を向上させることができる。また折り返し部分を適切に設計することにより、端板に掛ける力の作用点が一義的に定まり、加圧力を効果的に作用させることができる。
【0022】
本発明の第8の発明は第7の発明において、折り返し部分と端板との接触点から積層体の中心までの距離を、積層体の幅の12%以上38%以下としたことを特徴とする加圧構造である。このように折り返し部分を設けることによって積層体の圧縮分布を均等にすることができる。
【0023】
本発明の第9の発明は第2から第4の発明において、板状弾性体の側面部分に開口部が設けられており、この開口部で囲まれた部分に、側面部分同士が対向する方向に曲げ加工を施すことで形成された曲げ加工部を有することを特徴とする加圧構造である。このように曲げ加工部を設けることでも板状弾性体により端板に掛ける力の作用点が一義的に定まり、加圧力を効果的に作用させることができる。
【0024】
本発明の第10の発明は第9の発明において、板状弾性体は一組の板状弾性体の一方であり、一組の板状弾性体はそれぞれの底面部分が相対するようにして端板を挟持し、一組の板状弾性体のそれぞれの曲げ加工部と端板との接触点から積層体の中心までの距離を、積層体の幅の12%以上38%以下としたことを特徴とする加圧構造である。このように曲げ加工部を設けることによって積層体の圧縮分布を均等にすることができる。
【0025】
本発明の第11の発明は第1から第4の発明において、端板に突起が設けられ、板状弾性体はこの突起において端板を挟持することを特徴とする加圧構造である。このように端板に突起を設けても板状弾性体が端板に掛ける力の作用点が一義的に定まり、加圧力を効果的に作用させることができる。
【0026】
本発明の第12の発明は第11の発明において、板状弾性体は一組の板状弾性体の一方であり、突起は一組の突起の一方であり、一組の突起のそれぞれから積層体の中心までの距離を、積層体の幅の12%以上38%以下としたことを特徴とする加圧構造である。この範囲に突起を設けることによって積層体の圧縮分布を均等にすることができる。
【0027】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。なお以下の実施の形態では積層体として燃料電池スタックを例に説明するが、積層体はこれに限定されない。発電素子である一次電池や燃料電池を構成する正極、セパレータあるいは固体電解質、負極を積層してなる積層体でもよく、蓄電素子である二次電池を構成する正極、セパレータあるいは固体電解質、負極を積層してなる積層体でもよい。またコンデンサを構成する2つの電極とその間に介在する誘電体で構成された積層体でもよい。さらにこれらの単位発電素子または単位蓄電素子を積層してなる積層スタックでもよい。なお各実施の形態において、先行する実施の形態と同様の構成をなすものには同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0028】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1による積層体加圧構造を有する燃料電池の斜視図、図2は同燃料電池の断面図である。図3は図1の積層体加圧構造を構成する板状弾性体である板ばね10の側面図である。図3は積層体である積層スタック1と端板13を挿入前の板ばね10の状態を示している。板ばね10の断面形状は溝型形状である。すなわち板ばね10は底面部分12と底面部分12から曲げられた2つの側面部分11とを有し、積層スタック1と端板13を挿入した状態でコの字形状を有する。板ばね10は、プレス加工で形成することができる。また、押し出し加工や引き抜き加工などにより形成することができる。端板13は、金属やセラミックなどで作製することができる。
【0029】
なお積層スタック1は、起電部である複数の膜電極接合体(以下、MEAと記述)と、MEAを挟むように配置された複数のセパレータと、一対のエンドプレートを有する(いずれも図示せず)。エンドプレートはMEAの積層方向両端、すなわちMEAとセパレータとの積層方向両端からMEAとセパレータを挟んでいる。またMEAは、アノード電極と、カソード電極と、これらの間に介在する電解質膜とを積層して構成されている(いずれも図示せず)。積層スタック1の厚さは、例えば19mmである。
【0030】
図1、2は、積層スタック1と2つの端板13を板ばね10の2つの側面部分11の間に挿入後、加圧した状態を示す。側面部分11は、積層スタック1を押さえている。底面部分12は、直接、積層スタック1に接触していない。積層スタック1の上下には端板13が位置する。このように、板ばね10の復元力により、積層スタック1を加圧しているので、加圧する力の調整などが不要である。また、組み立ても容易である。さらに、小型化できる。そして、取り外しも容易である。
【0031】
なお図3に示すように、積層スタック1を挿入前の板ばね10の底面部分12と側面部分11とのなす角度は、積層スタック1を挿入、加圧後にほぼ90度となるように、予め90度未満に設定しておくことが好ましい。加圧後にほぼ90度となることにより板ばね10の圧縮力が大きくなると共に、板ばね10の占有体積が小さくなり、省スペース性が向上する。また省スペース性の観点から、積層スタック1と端板13を挿入する前の状態で、板ばね10の底面部分12は曲面状でもよいが、むしろ平面状であることが好ましい。
【0032】
なお板ばね10の位置決めは、板ばね10の底面部分12と端板13の端部を当接させることで行うことができる。この場合、端板13が導体で構成されており、かつ電極を兼ねている場合は、短絡を起こさないように板ばね10の内側に絶縁層を設けることが必要である。
【0033】
組み立て手順としては、図4に示すように図示しない開口治具により矢印の方向に板ばね10の側面部分11を開口させた状態で、積層スタック1と2つの端板13を挿入する。その後に開口治具を取り払うことで、板ばね10の復元力によって、積層スタック1を加圧する。
【0034】
なお、図5に示すように、奥行き方向に複数個に分割した板ばね10Aを用いてもよい。この構成では、積層スタック1に作用する圧力分布の均一化することができる。3分割以上がよいが、それ以上に分割してもよい。最適には3分割から4分割がよい。
【0035】
さらに、図6に示すように、板ばね10を2つ用いてもよい。2つの板ばね10により、積層スタック1と2つの端板13Aを左右両側から挟持することで、積層スタック1をバランスよく加圧することができる。すなわち2つの板ばね10はそれぞれの底面部分12が相対するようにして端板13Aを挟持している。また端板13Aは、厚肉部23と薄肉部24の部分からなることが好ましい。このような端板13Aを用いた場合、厚肉部23に板ばね10の側面部分11の先端部を当接させることで板ばね10の位置決めをすることができる。このようにすれば、底面部分12が端板13Aや積層スタック1に接触しないように板ばね10を位置決めすることができる。
【0036】
なお、板ばね10の底面部分12と側面部分11とのなす好ましい角度や、板ばね10を複数個に分割する構成、あるいは2つの板ばね10で左右両側から挟持する構成は、以下に説明する実施の形態にも適用可能である。
【0037】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2による積層体加圧構造を有する燃料電池の断面図である。図8は図7に示す積層体加圧構造を構成する板状弾性体である板ばね10Bの側面図である。図8は積層スタック1と端板13Aを挿入前の板ばね10Bの状態を示している。本実施の形態では、2つの板ばね10Bの側面部分11Bに端板13Aを加圧するための突起部25が設けられている。それ以外の構成は実施の形態1における図6の構成と同様である。
【0038】
このように板ばね10Bの側面部分11Bにそれぞれ突起部25を設けることで、板ばね10Bで端板13Aに掛ける力の作用点が一義的に定まり、加圧力を安定させることができる。突起部25の位置Laを適切に設計することにより、端板13Aに作用する圧力を均一化させることができる。
【0039】
図9(a)は、積層スタック1と端板13Aと板ばね10Bの1/4の有限要素解析モデル図である。積層スタック1は3個の燃料電池の単位セル101、102、103を含む。図9(b)は有限要素解析結果であり、単位セル101、102、103の圧縮変形を積層スタック1の中心104からの距離に対して示したグラフである。図9(a)に示すモデルにおいて加圧前の各単位セルの厚さは0.65mmである。一方、加圧後の厚さは図9(b)に示すようにどの単位セル、どの位置においても0.5mm付近に分布している。このように単位セル101、102、103の圧縮変形量は、どの位置においてもほぼ一定の値となっている。
【0040】
図9(c)は3個の単位セルの圧縮応力分布を示している。いずれの単位電池も圧縮応力は0.20MPaから0.22MPaと一定の範囲に均一化されていることがわかる。
【0041】
このように一定の圧縮応力の大きさと均一の圧縮分布を得るためには、端板13Aとの接触点である突起部25から積層スタック1の中心までの距離Laを、積層スタック1の幅Loの12%以上38%以下とすることが好ましい。突起部25の距離Laを変化させた有限要素法解析結果より、特に距離Laを幅Loの約1/4とすることが好ましいことがわかっている。
【0042】
図9の有限要素解析は、板ばね10Bの側面部分11Bと底面部分12とがなす角度を予め約75度に設定し、突起部25の位置が積層スタック1の中心から積層スタック1の幅の約25%とした場合を示している。すなわち図7において、積層スタック1の中心から突起部25までの距離Laを、積層スタック1の幅Loの約1/4(25%)とすることで積層スタック1に作用する圧力分布を均一化することができることが示されている。
【0043】
(実施の形態3)
図10は本発明の実施の形態3による積層体加圧構造を有する燃料電池の断面図、図11は図10に示す積層体加圧構造を構成する板状弾性体である板ばね10Cの側面図である。図11は積層スタック1と端板13Aを挿入前の板ばね10Cの状態を示している。本実施の形態では、2つの板ばね10Cは、側面部分11Cの末端で、側面部分11C同士が対向する方向に折り曲げられた折り返し部分26を有する。それ以外の構成は実施の形態1における図6の構成と同様である。
【0044】
このように板ばね10Cの側面部分11Cの先端部分をそれぞれ折り曲げて折り返し部分26を設けることで、板ばね10Cのばね定数を小さくしてばね性を向上させることができる。また折り返し部分26を適切に設計することにより、端板13Aに掛ける力の作用点が一義的に定まり、加圧力を安定させることができる。
【0045】
なお図10に示すように折り返し部分26と端板13Aとの接触点から積層スタック1の中心までの距離Laを、積層スタック1の幅Loの12%以上38%以下とすることで積層スタック1に作用する圧力分布を均一化することができる。特に距離Laを幅Loの約1/4とすることが好ましい。
【0046】
(実施の形態4)
図12は、本発明の実施の形態4による積層体加圧構造を有する燃料電池の断面図である。図13(a)は図12に示す積層体加圧構造を構成する板状弾性体である板ばね10Dの斜視図、図13(b)は同上面図、図13(c)は同側面図である。ただし、図13(a)は、積層スタック1、端板13Aを挿入した状態を、図13(b)、(c)は挿入前の状態を示している。本実施の形態では、2つの板ばね10Dの側面部分11Dに開口部271が設けられている。そして板ばね10Dは、開口部271で囲まれた部分に側面部分11D同士が対向する方向に曲げ加工を施すことで形成された曲げ加工部27を有する。それ以外の構成は実施の形態1における図6の構成と同様である。
【0047】
開口部271は側面部分11Dを縁切加工することにより設けられ、開口部271で囲まれた内側部分を折り曲げ線272で折り曲げて曲げ加工部27を形成することで板ばね10Dのばね性を向上させている。
【0048】
また曲げ加工部27の長さと丸みを適切に設計することにより、端板13Aに掛ける力の作用力と作用点が一義的に定まり、加圧力を安定させることができる。図12に示すように曲げ加工部27と端板13Aとの接触点から積層スタック1の中心までの距離Laを、積層スタック1の幅Loの12%以上38%以下とすることで積層スタック1に作用する圧力分布を均一化することができる。特に距離Laを幅Loの約1/4とすることが好ましい。
【0049】
(実施の形態5)
図14は、本発明の実施の形態5による積層体加圧構造を有する燃料電池の断面図である。図15は図14に示す積層体加圧構造を構成する端板13Bの断面図である。本実施の形態では、端板13Bの薄肉部24に突起31が設けられ、板ばね10が突起31に当たって端板13Bを挟持している。それ以外の構成は実施の形態1における図6の構成と同様である。
【0050】
このように端板13Bに突起31を設けることにより、端板13Bに掛ける力の作用点が一義的に定まり、加圧力を安定化することができる。特に図15に示すように端板13Bと板ばね10との接触点である突起31から積層スタック1の中心までの距離Laを、積層スタック1の幅Loの12%以上38%以下とすることで積層スタック1に作用する圧力分布を均一化することができる。特に距離Laを幅Loの約1/4とすることが好ましい。
【0051】
なお突起31は距離Laの前後に複数個設けてもよい。複数個設けることでさらに圧力分布を均一化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明による積層体の加圧構造では、積層体を挟持すると共に積層方向に加圧することができる。また板状弾性体で加圧部品のすべてを一体化することができ、ばね特性、省スペース性、組み立て性を同時に向上させることができる。このような積層体の加圧構造は発電素子である一次電池や燃料電池、または蓄電素子である二次電池やコンデンサを形成する各要素を積層してなる積層体に有用である。さらに単位発電素子または単位蓄電素子を積層してなる積層スタックにも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態1による積層体加圧構造を有する燃料電池の斜視図
【図2】同燃料電池の断面図
【図3】同積層体加圧構造を構成する板状弾性体の側面図
【図4】同燃料電池の組み立て説明図
【図5】本発明の実施の形態1による他の積層体加圧構造を有する燃料電池の斜視図
【図6】本発明の実施の形態1によるさらに他の積層体加圧構造を有する燃料電池の断面図
【図7】本発明の実施の形態2による積層体加圧構造を有する燃料電池の断面図
【図8】同積層体加圧構造を構成する板状弾性体の側面図
【図9】(a)同燃料電池の1/4の有限要素解析モデル図、(b)有限要素解析結果のグラフ、(c)有限要素解析結果のグラフ
【図10】本発明の実施の形態3による積層体加圧構造を有する燃料電池の断面図
【図11】同積層体加圧構造を構成する板状弾性体の側面図
【図12】本発明の実施の形態4による積層体加圧構造を有する燃料電池の断面図
【図13】(a)同積層体加圧構造を構成する板状弾性体の斜視図、(b)同上面図、(c)同側面図
【図14】本発明の実施の形態5による積層体加圧構造を有する燃料電池の断面図
【図15】同積層体加圧構造を構成する端板の断面図
【図16】従来の燃料電池の断面図
【図17】従来の燃料電池におけるばねへの荷重とばね変形量との関係を示すグラフ
【図18】従来の燃料電池に用いる皿ばねの断面図
【図19】従来の燃料電池に用いるコイルばねの断面図
【符号の説明】
【0054】
1 積層スタック(積層体)
10,10A,10B,10C,10D 板ばね
11,11B,11C,11D 側面部分
12 底面部分
13,13A,13B 端板
23 厚肉部
24 薄肉部
25 突起部
26 折り返し部分
27 曲げ加工部
31 突起
71 積層体
72 端板
74,75 押圧板
76 ばね
77 ナット
78 締結ボルト
79 ワッシャー
86 皿ばね
96 コイルばね
101,102,103 単位セル
104 中心
271 開口部
272 折り曲げ線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電素子または蓄電素子を形成する各要素を積層してなる積層体、または単位発電素子または単位蓄電素子を積層してなる積層スタックである積層体の加圧構造であって、
前記積層体の上下に位置する一対の端板と、
前記端板を上下から挟持すると共に前記積層体を積層方向に加圧する板状弾性体と、を備えたことを特徴とする積層体の加圧構造。
【請求項2】
前記板状弾性体の断面形状が底面部分と前記底面部分から曲げられた2つの側面部分とを有する溝型であることを特徴とする請求項1に記載の積層体の加圧構造。
【請求項3】
前記積層体を加圧した状態で前記板状弾性体の前記底面部分と前記側面部分とのなす角度が直角となるように、前記積層体を加圧する前の状態で前記板状弾性体の前記底面部分と前記側面部分とのなす角度が予め90度未満に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の積層体の加圧構造。
【請求項4】
前記積層体を加圧する前の状態で前記板状弾性体の前記底面部分と前記側面部分とのなす角度が65度以上85度以下に設定されていることを特徴とする請求項3に記載の積層体の加圧構造。
【請求項5】
前記板状弾性体は、前記端板を加圧するための突起部を前記側面部分に有することを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の積層体の加圧構造。
【請求項6】
前記板状弾性体は一組の板状弾性体の一方であり、前記一組の板状弾性体はそれぞれの前記底面部分が相対するようにして前記端板を挟持し、前記一組の板状弾性体のそれぞれの前記突起部から前記積層体の中心までの距離を、前記積層体の幅の12%以上38%以下としたことを特徴とする請求項5に記載の積層体の加圧構造。
【請求項7】
前記板状弾性体は、前記側面部分の末端で前記側面部分同士が対向する方向に折り曲げられた折り返し部分を有することを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の積層体の加圧構造。
【請求項8】
前記折り返し部分と前記端板との接触点から前記積層体の中心までの距離を、前記積層体の幅の12%以上38%以下としたことを特徴とする請求項7に記載の積層体の加圧構造。
【請求項9】
前記板状弾性体の前記側面部分に開口部が設けられており、前記板状弾性体は、前記開口部で囲まれた部分に前記側面部分同士が対向する方向に曲げ加工を施すことで形成された曲げ加工部を有することを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の積層体の加圧構造。
【請求項10】
前記板状弾性体は一組の板状弾性体の一方であり、前記一組の板状弾性体はそれぞれの前記底面部分が相対するようにして前記端板を挟持し、前記一組の板状弾性体のそれぞれの前記曲げ加工部と前記端板との接触点から前記積層体の中心までの距離を、前記積層体の幅の12%以上38%以下としたことを特徴とする請求項9に記載の積層体の加圧構造。
【請求項11】
前記端板に突起が設けられ、前記板状弾性体は前記突起において前記端板を挟持することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の積層体の加圧構造。
【請求項12】
前記板状弾性体は一組の板状弾性体の一方であり、前記突起は一組の突起の一方であり、前記一組の突起のそれぞれから前記積層体の中心までの距離を、前記積層体の幅の12%以上38%以下としたことを特徴とする請求項11に記載の積層体の加圧構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−99383(P2009−99383A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−269920(P2007−269920)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】