説明

積層体の製造方法、包装袋及び包装体

【課題】 アルカリ性内容物等を充容した場合であっても包装袋形状が損なわれることなく十分な袋強度を維持する包装体、及び該包装体の材料として好適な積層体の製造方法を並びに包装袋を提供する。
【解決手段】 樹脂層と金属箔層とが直接積層された積層構造を含む積層体からなる包装袋にフェノール類を含むアルカリ性の内容物を収納した包装体、フェノール類を含む樹脂層と金属箔層とが直接積層された積層構造を含む積層体からなる包装袋にアルカリ性の内容物を収納した包装体、及び押出ラミネート樹脂を溶融押出しその少なくとも一面に表面活性化処理を施す工程、押出ラミネート樹脂の表面活性化処理面に金属箔層を積層して積層界面を形成する工程、アルカリ性条件下で前記積層界面にフェノール類を作用させる工程、を含む積層体の製造方法、並びに当該積層体を用いてなる包装袋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ性内容物を収納した包装体、該包装体を構成する包装袋の材料として好適な積層体の製造方法、及び、該製造方法により得られる積層体を用いてなる包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチックフィルムを主体とする積層体を袋状に形成した包装袋が広く用いられ、包装袋への種々の要求特性、例えばガスバリア性や遮光性、容器としての物理的特性(落下しても破袋し難い、穴が開き難いといった特性)等に鑑み各種の材料フィルムを複数組み合わせた積層体が使用されているが、用途によっては金属フィルムとプラスチックフィルムとの積層が求められることがある。また、いわゆるPTP包装においては内容物の視認性と保存性を両立させる観点から透明樹脂で成型した容器を金属フィルムで封口する構成が主流であり、そのような場合にも金属箔層と樹脂層とを良好に接着する技術が要求される。
【0003】
ここで、金属フィルムとプラスチックフィルムとを積層する方法としては、例えばプラスチックフィルムに接着剤溶液を塗布して溶媒を揮発除去後に金属フィルムを重ねて圧着する、いわゆるドライラミネート法が一般的である。ドライラミネート法は接着剤の種類を適宜選定することにより、種々の材料フィルムを十分な接着強度をもって積層し得るため包装業界では汎用される積層法である。
【0004】
しかし、用途によっては上記ドライラミネート法を使用することが好ましくない場合がある。例えば、金属フィルムとプラスチックフィルムとがドライラミネート法により積層された積層体を用い、プラスチックフィルムが内面側となるように包装袋を形成して酸やアルカリ、有機溶媒、又は界面活性剤等が含まれた内容物を充容する場合、内容物が包装袋の最内層を拡散透過し、ドライラミネート法により形成された接着剤層に到達して当該接着剤層を溶解し又は変性する結果、金属フィルムとプラスチックフィルムとの間に界面剥離が生ずる場合がある。このような現象は、積層体が金属フィルム層を含むか否かに関わらず生ずる虞のある現象ではあるが、特に積層体の一部が金属フィルム層にて構成される場合には当該金属フィルム層が内容物の拡散を遮断するため、金属フィルム層とこの金属フィルム層に面する層との界面に上記酸やアルカリ等が滞留する傾向となり、界面剥離が生じて包装袋の形状が損なわれる可能性がより高い。
【0005】
一方、金属フィルムとプラスチックフィルムとを接着剤を使用しないで積層する方法としては、溶融状態の熱可塑性樹脂を基材となる金属フィルムに積層して貼合したり、溶融状態の熱可塑性樹脂を2枚の基材金属フィルムに挟持して圧着したりといった、いわゆる溶融ラミネート法がある。溶融ラミネート法は上記ドライラミネート法に比べ汎用性の点、接着強度の点で一般に劣るものの、内容物の影響で接着界面が侵され包装袋の形状が損なわれるといった虞が少ない。また、溶融ラミネート法において接着強度を向上させるべく、引用文献1,2(引用文献1:特開平7−205365号公報、引用文献2:特開平9−058700号公報)等には特殊な接着性樹脂を用いる積層方法が、引用文献3〜5(引用文献3:特開平7−314629号公報、引用文献4:特開平9−234845号公報、引用文献5:特開2003−266626号公報)等にはプラスチック基材をコロナ放電処理する工程と押出ラミネート樹脂をオゾン処理する工程とを有する積層体の製造方法等が記載されている。
【0006】
しかしながら、金属フィルムにコロナ放電処理は適さず、従って、金属フィルムとプラスチックフィルムとを積層する場合に上記引用文献3〜5記載の方法は不適である。上記引用文献1,2記載の方法についても、特殊な接着性樹脂層を用いる必要がある点で簡便な方法とは云い難い。酸やアルカリ等が充容物となる場合にはガラス瓶や金属チューブ等が使用されることもあるが、使い勝手や使用後の廃棄の点に鑑みれば、これらガラス瓶や金属チューブ等の使用は好まれないものである。
酸やアルカリ、有機溶媒、又は界面活性剤等を充容するような場合であっても、包装袋形状が損なわれることなく十分な袋強度を維持可能な包装体が望まれていた。
【0007】
【特許文献1】特開平7−205365号公報
【特許文献2】特開平9−058700号公報
【特許文献3】特開平7−314629号公報
【特許文献4】特開平9−234845号公報
【特許文献5】特開2003−266626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、従来ドライラミネート法を採用して包装袋を構成した場合に内容物として充容することが不適であったアルカリ性内容物等を充容した場合であっても、包装袋形状を維持することが可能な包装体、及び、該包装体を構成する包装袋の材料として好適な積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討の結果、樹脂層と金属箔層とが直接積層された積層構造を含む積層体からなる包装袋にフェノール類を含むアルカリ性の内容物を収納した包装体、又は、フェノール類を含む樹脂層と金属箔層とが直接積層された積層構造を含む積層体からなる包装袋にアルカリ性の内容物を収納した包装体が、包装袋の形状を長期にわたり維持可能であることを知見した。また、特定の製造方法により得られた積層体が、上記包装袋の材料として好適であることを知見し、本発明をなすに至った。
【0010】
即ち、本発明は、以下の包装体、積層体の製造方法、及び包装袋を提供する。
請求項1:
樹脂層と金属箔層とが直接積層された積層構造を含む積層体からなる包装袋にフェノール類を含むアルカリ性の内容物を収納したことを特徴とする包装体。
請求項2:
フェノール類を含む樹脂層と金属箔層とが直接積層された積層構造を含む積層体からなる包装袋にアルカリ性の内容物を収納したことを特徴とする包装体。
請求項3:
前記樹脂層が押出ラミネート樹脂層である請求項1又は2記載の包装体。
請求項4:
前記樹脂層の金属箔層に面する表面が、オゾン処理、コロナ処理、又は樹脂温度による酸化処理、のいずれか又はその組合せにより表面活性化処理されたものである請求項1,2又は3記載の包装体。
請求項5:
前記内容物が更に界面活性剤を含む請求項1乃至4のいずれか1項に記載の包装体。
請求項6:
前記内容物が染毛剤である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の包装体。
請求項7:
金属箔層と、この金属箔層の少なくとも一面側に面して積層された押出ラミネート樹脂層とを含む積層体の製造方法であって、以下の(1)〜(3)の各工程、
(1)工程:押出ラミネート樹脂をフィルム状に溶融押出し、その少なくとも一面に表面活性化処理を施す工程、
(2)工程:前記(1)工程で得た押出ラミネート樹脂の表面活性化処理面に金属箔層を積層して、金属箔層と押出ラミネート樹脂層との積層界面を形成する工程、
(3)工程:アルカリ性条件下で、前記(2)工程で形成された積層界面にフェノール類を作用させる工程、
を含むことを特徴とする積層体の製造方法。
請求項8:
前記表面活性化処理がオゾン処理、コロナ処理、又は樹脂温度による酸化処理のいずれか又はその組合せである請求項7記載の製造方法。
請求項9:
前記(3)工程が、前記押出ラミネート樹脂層内を拡散して前記積層界面に到達するフェノール類及びアルカリ性化合物によって、前記積層界面がアルカリ性条件下でフェノール類の作用を受ける工程である請求項7又は8記載の製造方法。
請求項10:
前記(3)工程が、前記押出ラミネート樹脂層内に予め配合されたフェノール類と、前記押出ラミネート樹脂層内を拡散して前記積層界面に到達するアルカリ性化合物によって、前記積層界面がアルカリ性条件下でフェノール類の作用を受ける工程である請求項7又は8記載の製造方法。
請求項11:
前記(3)工程が、40℃以上の温度条件下で行なわれる工程である請求項7乃至10のいずれか1項に記載の製造方法。
請求項12:
請求項7乃至11のいずれかに記載の製造方法により得られる積層体にて形成された包装袋。
【発明の効果】
【0011】
本発明により得られる包装体は、従来ドライラミネート法を採用して包装袋を構成した場合に内容物として充容することが不適であったアルカリ性内容物等を充容した場合であっても、包装袋形状が損なわれることなく十分な袋強度、ひいては内容物を充容した包装体強度を維持することが可能な包装体である。また、本発明の製造方法によれば、当該包装体を構成する包装袋の材料として好適な積層体を提供し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明の包装体は、樹脂層と金属箔層とが直接積層された積層構造を含む積層体からなる包装袋にフェノール類を含むアルカリ性の内容物を収納したことを特徴とする包装体、又は、フェノール類を含む樹脂層と金属箔層とが直接積層された積層構造を含む積層体からなる包装袋にアルカリ性の内容物を収納したことを特徴とする包装体である。
また、本発明の積層体の製造方法は、金属箔層と、この金属箔層の少なくとも一面側に面して積層された押出ラミネート樹脂層とを含む積層体の製造方法であって、以下の(1)〜(3)の各工程、
(1)工程:押出ラミネート樹脂をフィルム状に溶融押出し、その少なくとも一面に表面活性化処理を施す工程、
(2)工程:前記(1)工程で得た押出ラミネート樹脂の表面活性化処理面に金属箔層を積層して、金属箔層と押出ラミネート樹脂層との積層界面を形成する工程、
(3)工程:アルカリ性条件下で、前記(2)工程で形成された積層界面にフェノール類を作用させる工程、
を含むことを特徴とする積層体の製造方法である。
【0013】
前記金属箔層の素材としては、包装材料の分野で用いられるいずれの金属も用いることができ、例えばアルミニウム、鋼、鋳物、鉄等を挙げることができる。また、これらの複数種からなる合金であっても良い。
本発明においては加工面及びコスト面の観点から、前記金属箔層としてはアルミニウム層又はアルミニウム合金層であることが好適である。
【0014】
前記樹脂層の素材としては、例えばポリエチレン系樹脂、エチレン系共重合体樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂、いわゆる接着性レジン等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用しても良い。また、より金属箔層との馴染みをよくする観点から、上記樹脂層としては押出ラミネート樹脂層であることが好適であり、上記樹脂層の素材としても、押出ラミネート加工においてフィルム状に溶融押出し可能な樹脂であることが好適である。
【0015】
ここで、ポリエチレン系樹脂としては、例えばエチレンの単独重合体やエチレンとα−オレフィンの共重合体等を挙げることができ、より具体的には、例えば高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン等を挙げることができる。また、ここでいうα−オレフィンとしては、例えばプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセンなどの炭素原子数3〜18のα−オレフィンを挙げることができ、これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。
【0016】
エチレン系共重合体樹脂としては、例えば極性基を含有するコモノマーとエチレンとを共重合させた樹脂を挙げることができ、より具体的には、例えばEMA(エチレン−メタクリル酸共重合体)等のエチレン−不飽和カルボン酸共重合体系樹脂、EMAA(エチレン−メタクリル酸メチル共重合体)等のエチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体系樹脂、エチレン−ビニルエステル共重合体系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂、エチレン−エポキシ系化合物共重合体系樹脂、アイオノマー樹脂等を挙げることができる。エチレン−無水マレイン酸共重合体系樹脂はエチレン系共重合体樹脂であるが、いわゆる接着性レジンにも該当する。
【0017】
ポリプロピレン系樹脂としては、例えばプロピレンのホモポリマー、プロピレン以外のオレフィンとプロピレンとの共重合体等が挙げられる。また、ここでいうプロピレン以外のオレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が挙げられ、これらは1種を単独で、又は2種以上を併用しても良い。
【0018】
なお、本発明で用いられる上記樹脂には、更に公知の添加剤、例えば抗酸化剤、アンチブロッキング剤、耐候剤、中和剤、難燃剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、分散剤、顔料等の有機充填剤や無機充填剤を適宜配合しても良い。また、フェノール類及び/又はアルカリ性化合物を樹脂中に配合しておくことも好適である。
【0019】
本発明において、表面活性化処理とは、被処理面上に一定以上の活性化点を生成させ、貼合する基材との強固な接着を可能にするための処理を意味するものである。このような表面活性化処理としては、例えばオゾン処理、コロナ放電処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、フレームプラズマ処理、大気圧プラズマ処理、低圧プラズマ処理、又は樹脂温度による酸化処理の、いずれか又はその組合せが挙げられるが、中でも層間接着性の観点から、オゾン処理、コロナ処理、又は樹脂温度による酸化処理のいずれか又はその組合せであることが好適である。
本発明の包装体に用いられる包装袋を構成する積層体において、当該積層体を構成する樹脂層の金属箔層に面する表面には、上記表面活性化処理を施すことが好適である。
また、本発明の積層体の製造方法における(1)工程においては、押出ラミネート樹脂をフィルム状に溶融押出し、その少なくとも一面に上記表面活性化処理が施される。
【0020】
上記オゾン処理としては、例えばノズルまたはスリット状の吹き出し口からオゾンを含ませた気体(例えば空気)を吹き付ける方法が挙げられる。
ここで、オゾン処理量としては溶融フィルムの通過単位面積(m2)当たり通常10〜30mg、好ましくは15〜20mgである。オゾン処理量が多すぎると作業環境及び人体に影響が出る場合があり、一方、少なすぎると層間未接着の場合がある。
【0021】
上記コロナ放電処理としては、市販のコロナ放電処理機を用い、発生させたコロナ雰囲気の下に被処理面を通過させる方法が挙げられる。
この場合、コロナ放電処理の雰囲気は大気下であってもよく、また、不活性ガス(例えば窒素)等で調整された雰囲気下であってもよい。コロナ放電処理条件としては通常0.8〜1kW・分/m2以上、好ましくは0.8〜0.9kW・分/m2である。処理条件が穏やかに過ぎると接着面の表層の荒さが少なくなる場合があり、一方、厳しすぎると接着剤塗布量が減少したり、処理度低下が起こったりする場合がある。
【0022】
上記電子線照射処理としては、市販の電子線照射装置を用い、電子線加速器により発生させた電子線を被処理面に照射する方法が挙げられる。
この場合、電子線照射処理の雰囲気は大気下であってもよく、また、不活性ガス(例えば窒素)等で調整された雰囲気下であってもよい。電子線照射処理条件としては通常5〜200kGy、好ましくは15〜30kGyである。処理条件が穏やかに過ぎると膜接着強度が不十分となる場合があり、一方、厳しすぎると被処理物全体が劣化してしまう場合がある。
【0023】
上記紫外線照射処理としては、例えば100〜300nmの波長の紫外線を、被処理面に照射する方法が挙げられる。
この場合、紫外線照射処理の雰囲気は大気下であってもよく、また、不活性ガス(例えば窒素)等で調整された雰囲気下であってもよい。
【0024】
上記樹脂温度による酸化処理とは、押出しラミネート樹脂を酸素の共存する環境下、融点に対して樹脂温度を高めに設定して押出し成膜することにより、溶融樹脂の表面を酸化処理する方法である。樹脂温度による表面酸化処理を行なう際の、押出しラミネート樹脂の樹脂温度としては、用いる素材の融点に応じて適宜設定されるが、押出ラミネート樹脂として例えばポリエチレン系樹脂、エチレン系共重合体樹脂、ポリプロピレン系樹脂を用いる場合には通常270〜310℃、好ましくは300〜310℃である。
【0025】
本発明の包装体は、フェノール類を内容物として含む、乃至、フェノール類を樹脂層への配合剤として含むものであり、また、本発明の積層体の製造方法における(3)工程は、(2)工程で形成された積層界面にフェノール類を作用させる工程である。
本発明において用いられるフェノール類としては、特に限定されるものではないが、例えばフェノール、オルトアミノフェノール、メタアミノフェノール、パラアミノオルトクレゾール、パラアミノフェノール、レゾルシン、セタノール、クレゾール、メチルフェノール、アミノニトロフェノール、オルトアミノフェノール、又はこれらの誘導体が挙げられ、これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
【0026】
本発明の包装体は、アルカリ性の内容物を収納するものであり、また、本発明の積層体の製造方法における(3)工程は、(2)工程で形成された積層界面をアルカリ性環境下に置く工程である。内容物をアルカリ性にする、乃至積層界面をアルカリ性環境下に置くのに用いられるアルカリ性化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば水酸化ナトリウム、アンモニア、芳香族アミン、水酸化カリウム等を挙げることができ、これらは1種を単独で、又は2種以上を併用しても良い。
【0027】
なお、上記(3)工程における温度条件としては、通常40℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは80〜110℃、更に好ましくは90〜100℃である。温度が低すぎると、フェノール類の前記積層界面への作用が不十分となって本発明の目的が達成し得ない場合があり、一方高すぎると、芯部絞りシワ、寸法不良などがでる場合がある。
【0028】
本発明の積層体の製造方法における(3)工程において、積層界面に対しアルカリ性条件下でフェノール類を作用させる具体的な方法としては、例えば、
(I)フェノール類及びアルカリ性化合物を含む溶液を前記押出ラミネート樹脂層側から供給することにより、押出ラミネート樹脂層を拡散透過させて、フェノール類及びアルカリ性化合物を前記積層界面に到達させる方法、
(II)前記押出ラミネート樹脂層内に予めフェノール類を共存させておき、且つアルカリ性化合物を含む溶液を前記押出ラミネート樹脂層側から供給することにより、押出ラミネート樹脂層を拡散透過させて、フェノール類及びアルカリ性化合物を前記積層界面に到達させる方法、
(III)前記押出ラミネート樹脂層内に予めアルカリ性化合物を共存させておき、且つフェノール類を含む溶液を前記押出ラミネート樹脂層側から供給することにより、押出ラミネート樹脂層を拡散透過させて、フェノール類及びアルカリ性化合物を前記積層界面に到達させる方法、
(IV)前記押出ラミネート樹脂層内に予めフェノール類及びアルカリ性化合物を共存させておき、且つ溶媒を前記押出ラミネート樹脂層側から供給することにより、押出ラミネート樹脂層を拡散透過させて、フェノール類及びアルカリ性化合物を前記積層界面に到達させる方法、
を挙げることができる。
【0029】
上記(I)の方法としてより具体的には、例えば上記アルカリ性化合物と溶媒とを含むフェノール類含有アルカリ性溶液に、金属箔層と押出ラミネート樹脂層とを含む積層体を浸漬する方法、前記フェノール類含有アルカリ性溶液を前記積層体の押出ラミネート樹脂層側の表面に塗布する方法等が挙げられる。また、金属箔層と押出ラミネート樹脂層とを含む積層体を用い、該押出ラミネート樹脂層が内面側となるようにして予め包装袋を形成し、内容物として前記フェノール類含有アルカリ性溶液を充填することによっても上記(I)の方法を実行し得る。
なお、上記フェノール類含有アルカリ性溶液が充填物自体である場合、即ち、目的とする充填物(商品等)がフェノール類、アルカリ化合物、溶媒を含む場合には、上記(1)工程及び(2)工程を経た後に包装袋を形成し、その後当該充填物を充容することにより、本発明における(3)工程及び積層体の製袋工程、商品充填工程までをまとめて行なうことができるため、製造コストの面から非常に有効である。
【0030】
ここで用いられる溶媒としては、例えば水やアルコール類、又は各種有機溶媒を挙げることができ、プロピレングリコール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用しても良い。中でも溶解性の観点から、プロピレングリコール、イソプロピルアルコール、エタノールが好適に用いられる。
【0031】
上記(II)〜(IV)の方法の具体例としても、上記(I)の方法と同様に行なうことができる。上記(I)の方法における積層体として予めフェノール類を配合した(練り込んだ)フェノール含有押出ラミネート樹脂層を含む積層体を用い、アルカリ性化合物と溶媒とを含むアルカリ性溶液を用いれば上記(II)の方法の具体例となるし、上記(I)の方法における積層体として予めアルカリ性化合物を配合したアルカリ性化合物含有押出ラミネート樹脂層を含む積層体を用い、フェノール類と溶媒とを含むフェノール類溶液を用いれば上記(III)の方法の具体例となるし、上記(I)の方法における積層体として予めフェノール類及びアルカリ性化合物を配合したフェノール類・アルカリ性化合物含有押出ラミネート樹脂層を含む積層体を用い、溶媒を充容すれば上記(IV)の方法の具体例となる。
【0032】
更に、本発明の積層体の製造方法における(3)工程において、上述した(I)の方法における「フェノール類及びアルカリ性化合物を含む溶液」、(II)の方法における「アルカリ性化合物を含む溶液」、(III)の方法における「フェノール類を含む溶液」、又は(IV)の方法における「溶媒」には、積層界面に対しアルカリ性条件下でフェノール類をより良好に作用させる観点から、更に界面活性剤を配合することが好適である。また、本発明の包装体を構成する内容物としても、界面活性剤を含むことが好適である。
【0033】
上記界面活性剤としては、例えばラウリル硫酸塩、セチル硝酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルファスルフォ脂肪酸エステルナトリウム、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等を挙げることができ、これらは1種を単独で、又は2種以上を併用しても良い。
【0034】
本発明の包装体を構成する、フェノール類を含むアルカリ性の内容物、乃至、本発明の積層体の製造方法により製造された積層体にて形成される包装袋に充填される内容物としては、特に限定されるものではないが、例えば染毛剤(ヘアカラー剤)、パーマ剤、カビ取り剤、アルコール類等を挙げることができる。
【0035】
上記染毛剤としては市販品を用いることができ、例えばウエラジャパン製商品名ウェラトーン、ホーユー製商品名エレガンスクリームトーン、ダイムヘルスケア製商品名カバーグレイ、ヘンケルライオン製商品名パオンソフト、ホーユー製商品名ビゲンヘアカラー、ヘンケルライオン製商品名フェミニンヘアカラー、カネボウ製商品名ケイトヘアカラークラシックブラウン、ホーユー製商品名ビューティーンヘアカラーアプリコットブラウン、ホーユー製商品名ビューティーンヘアカラーピーチブラウン、カネボウ製商品名クリームインナチュラルカラーハニーブラウン、カネボウ製商品名クリームインナチュラルカラーナチュラルベージュ等の1液又は複数液タイプの染毛剤を挙げることができる。尚、染毛剤が複数液タイプの場合には、個々の液を上記染毛剤として本発明の積層体にて形成される容器に充填しても良い。
【0036】
本発明の包装体を構成する包装袋の材料となる積層体、或いは、本発明の製造方法により得られる積層体において、上記金属箔層と、この金属箔層の少なくとも一面側に面して積層された樹脂層以外の層構成については特に制限されるものではないが、内容物として上記酸やアルカリ、有機溶媒、又は界面活性剤といった成分を含むものが収納された場合であっても容器としての体裁を損なわない観点から、少なくとも内容物に接する包装袋最内面から上記金属箔層までの区間に相当する部分の層構成としては、ドライラミネート系接着剤等の溶剤型接着剤を用いないことが好適である。
【0037】
ここで、上記容器最内面から金属箔層までの区間の層構成としては、特に限定されるものではないが、例えば以下の層構成が例示される。
(i)(PE層)/(押出ラミネート樹脂層としてのPE層)/(金属箔層)
(ii)(PE層)/(Ny層)/(PE層)/(押出ラミネート樹脂層としてのPE層)/(金属箔層)
(iii)(PE層)/(EvOH層)/(PE層)/(押出ラミネート樹脂層としてのPE層)/(金属箔層)
(iv)(PP層)/(Ny層)/(PP層)/(押出ラミネート樹脂層としてのPE層)/(金属箔層)
(v)(PP層)/(EvOH層)/(PP層)/(押出ラミネート樹脂層としてのPE層)/(金属箔層)
(vi)(PP層)/(押出ラミネート樹脂層としてのPE層)/(金属箔層)
なお、本発明において「PE層」とは「ポリエチレン系樹脂層またはエチレン系共重合体樹脂層」を意味し、「PP層」とは「ポリプロピレン系樹脂層」を意味し、「Ny層」とは「ナイロン系樹脂層」を意味し、「EvOH層」とは「エチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂層」を意味するものである。
【0038】
また、本発明の包装体を構成する包装袋、又は、本発明の積層体の製造方法により得られる積層体で形成される包装袋には、内容物をより容易に包装袋外部に取り出す観点から、注ぎ口(ポート部)が設置されることが好適である。ここで、ポート部は包装袋最内層とヒートシールにより密着させられることが通常であるが、ポート部は通常、断面視略円形状に形成されるためヒートシール時にポート部に当接する積層体にストレスがかかり、場合によっては積層体を構成する層の一部にクラックが生じるおそれがある。上記容器最内面から金属箔層までの区間の層構成として、上記(ii)〜(v)の構成を採用する場合には、中間のNy層やEvOH層が緩衝材の役割を果たし、ヒートシール時のストレスクラックが発生し難くなるため好適である。また、PE、PP単層でも、厚みを厚くすることで同様の役割を果たす。この厚みとしては、80〜130μmの厚みであることが好ましい。
なお、上記ポート部と包装袋最内層とのヒートシール条件としては、特に限定されるものではないが、通常170〜220℃×0.3〜0.5MPa×1〜6秒の条件である。
【0039】
なお、本発明の積層体の製造方法における(2)工程は、前記(1)工程で得た押出ラミネート樹脂の表面活性化処理面に金属箔層を積層して、金属箔層と押出ラミネート樹脂層との積層界面を形成する工程であるが、前記金属箔層と押出ラミネート樹脂層とを積層した後、さらに圧着することが積層界面の馴染みをより向上させる観点から好適である。また、そのような圧着後、更に一定温度下で熟成する熟成工程を設けることが好ましい。このような熟成温度としては通常30〜100℃、好ましくは60〜80℃である。熟成温度が高すぎるとフィルム絞りシワ、ピッチズレ等が出る場合があり、一方低すぎると層間強度が低下する場合がある。
その他、本発明の製造方法においては、本発明の目的を損なわない範囲で適宜な工程を追加することも差し支えない。
【0040】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【実施例】
【0041】
〔実施例1〜3,比較例1〜3〕
PETフィルムを押出ラミネーターの主繰出し装置に取り付け、一の基材としてこのPETフィルムを繰出すと共に、他の基材としてALフィルムを同装置に取り付けた。Tダイを備えた口径90mmの押出機を用いてポリエチレン(押出しPE)を溶融押出して溶融フィルムを形成し(樹脂温度320℃、フィルム引き取り速度100m/分、フィルム巾700〜1000mm、フィルム厚み15μm)、前記PETフィルムと前記ALフィルムとに挟持して圧着(サンドラミネーション)することにより、AL/押出しPE/PETなる層構成の積層体を得た。ALフィルムの他面側に、上記と同様にしてPEフィルムを積層することにより、下表1に示す層構成の第1層(最外層)から第5層(最内層)に至る積層体を得た。なお、第4層を構成する溶融フィルムとALフィルムとの圧着は、Tダイ下位置に設けたノズルからオゾン含有空気を溶融フィルムに所定量吹き付けた後に行なった。
更に、得られた上記積層体を用いて包装袋を形成し、表1に示す所定の内容物を充填して所定時間のエージングを行なった。エージング後、積層体の一部を切り出して検体とし、ALフィルム(第3層)と押出しラミネート樹脂層(第4層)との層間接着強度を測定した。オゾン処理条件、内容物、エージング条件と共に、結果を表1に併記する。
【0042】
【表1】

【0043】
PET
ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製商品名「易接着PET エスペットT4102」)。
押出しPE
高圧法低密度ポリエチレン(住友化学製商品名「L729 LDPEポリエチレン」)。
AL
アルミニウムフィルム(東洋アルミ製商品名「一般軟箔」)。
PE
直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(東セロ製商品名「TUX−FCS」)。
カラーリング剤(染毛剤)
ホーユー株式会社製商品名「ビューティーンヘアカラー」(ビューティーンヘアカラー(N)CC1剤/ビューティーンヘアカラー(N)2剤=40g/80ml)のうちの、1剤のみを用いた。当該1剤は、フェノール類としてレゾルシン、アルカリ性化合物としてアンモニアを含有する。
接着強度(g/15mm)
15mm巾の積層フィルムを、島津製作所(株)製オートグラフ100A型引張試験機を使用し、300mm/minの引張り速度で180度剥離した時の剥離強度からその接着強度を評価した。N=5で測定し、その平均値を接着強度とした。
【0044】
〔実施例4〜6,比較例4〜6〕
PETフィルムにドライラミネート系接着剤溶液を所定量塗布して溶媒を除去後、ALフィルムと重ねて圧着することにより、AL/Ad/PETなる層構成の積層体を得た。
当該積層体を押出ラミネーターの主繰出し装置に取り付け、一の基材としてこの積層体を繰出すと共に、他の基材としてPE/Ny/PEの3層ラミネートフィルムを同装置に取り付けた。Tダイを備えた口径90mmの押出機を用いてポリエチレン(押出しPE)を溶融押出して溶融フィルムを形成し(樹脂温度320℃、フィルム引き取り速度100m/分、フィルム巾700〜1000mm、フィルム厚み15μm)、前記積層体と前記3層ラミネートフィルムとに挟持して圧着することにより、下表2に示す層構成の、第1層(最外層)から第7層(最内層)に至る積層体を得た。なお、第4層を構成する溶融フィルムとALフィルムとの圧着は、Tダイ下位置に設けたノズルからオゾン含有空気を溶融フィルムに所定量吹き付けた後に行なった。
更に、得られた上記積層体を用いてポート部を有する包装袋を形成(ポート部のシール条件:170〜220℃×0.3〜0.5MPa×1〜6秒)し、表2に示す所定の内容物を充填して所定時間のエージングを行なった。エージング後、積層体の一部を切り出して検体とし、ALフィルム(第3層)と押出しラミネート樹脂層(第4層)との層間接着強度を測定した。オゾン処理条件、内容物、エージング条件と共に、結果を表2に併記する。
ポート部と積層体とのヒートシール部について顕微鏡観察を行なったところ、いずれの場合にも積層体側に破損(ストレスクラック)は観察されなかった。
【0045】
【表2】

【0046】
PET
ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製商品名「易接着PET エスペットT4102」)。
Ad
ドライラミネート系接着剤溶液(三井武田ケミカル製商品名「タケラックTR A910/A12」。固形分濃度25%、溶媒酢酸エチル。)を溶媒除去後の塗工厚み3μmでPETフィルムに塗工し、溶媒除去後ALフィルムと重ねて圧着し形成された接着剤層。
AL
アルミニウムフィルム(東洋アルミ製商品名「一般軟箔」)。
押出しPE
高圧法低密度ポリエチレン(住友化学製商品名「L729 LDPEポリエチレン」)。
第5層〜第7層を形成するPE/Ny/PEの3層ラミネートフィルム
三菱樹脂製商品名「ダイアミロンMF」
カラーリング剤(染毛剤)
ホーユー株式会社製商品名「ビューティーンヘアカラー」(ビューティーンヘアカラー(N)CC1剤/ビューティーンヘアカラー(N)2剤=40g/80ml)のうちの、1剤のみを用いた。当該1剤は、フェノール類としてレゾルシン、アルカリ性化合物としてアンモニアを含有する。
接着強度(g/15mm)
15mm巾の積層フィルムを、島津製作所(株)製オートグラフ100A型引張試験機を使用し、300mm/minの引張り速度で180度剥離した時の剥離強度からその接着強度を評価した。N=5で測定し、その平均値を接着強度とした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層と金属箔層とが直接積層された積層構造を含む積層体からなる包装袋にフェノール類を含むアルカリ性の内容物を収納したことを特徴とする包装体。
【請求項2】
フェノール類を含む樹脂層と金属箔層とが直接積層された積層構造を含む積層体からなる包装袋にアルカリ性の内容物を収納したことを特徴とする包装体。
【請求項3】
前記樹脂層が押出ラミネート樹脂層である請求項1又は2記載の包装体。
【請求項4】
前記樹脂層の金属箔層に面する表面が、オゾン処理、コロナ処理、又は樹脂温度による酸化処理、のいずれか又はその組合せにより表面活性化処理されたものである請求項1,2又は3記載の包装体。
【請求項5】
前記内容物が更に界面活性剤を含む請求項1乃至4のいずれか1項に記載の包装体。
【請求項6】
前記内容物が染毛剤である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の包装体。
【請求項7】
金属箔層と、この金属箔層の少なくとも一面側に面して積層された押出ラミネート樹脂層とを含む積層体の製造方法であって、以下の(1)〜(3)の各工程、
(1)工程:押出ラミネート樹脂をフィルム状に溶融押出し、その少なくとも一面に表面活性化処理を施す工程、
(2)工程:前記(1)工程で得た押出ラミネート樹脂の表面活性化処理面に金属箔層を積層して、金属箔層と押出ラミネート樹脂層との積層界面を形成する工程、
(3)工程:アルカリ性条件下で、前記(2)工程で形成された積層界面にフェノール類を作用させる工程、
を含むことを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項8】
前記表面活性化処理がオゾン処理、コロナ処理、又は樹脂温度による酸化処理のいずれか又はその組合せである請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
前記(3)工程が、前記押出ラミネート樹脂層内を拡散して前記積層界面に到達するフェノール類及びアルカリ性化合物によって、前記積層界面がアルカリ性条件下でフェノール類の作用を受ける工程である請求項7又は8記載の製造方法。
【請求項10】
前記(3)工程が、前記押出ラミネート樹脂層内に予め配合されたフェノール類と、前記押出ラミネート樹脂層内を拡散して前記積層界面に到達するアルカリ性化合物によって、前記積層界面がアルカリ性条件下でフェノール類の作用を受ける工程である請求項7又は8記載の製造方法。
【請求項11】
前記(3)工程が、40℃以上の温度条件下で行なわれる工程である請求項7乃至10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
請求項7乃至11のいずれかに記載の製造方法により得られる積層体にて形成された包装袋。

【公開番号】特開2006−1609(P2006−1609A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181445(P2004−181445)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【Fターム(参考)】