説明

積層体の製造方法

【課題】エッチング処理時における金属残渣の発生が抑制されると共に、直線性、および、密着性に優れるパターン状銅含有めっき膜を有する積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】基板10上に、銅イオンと相互作用を形成する官能基および重合性基を有するポリマー14を接触させた後、エネルギーを付与して形成するポリマー層形成工程と、銅イオンを含む、pH3.0超のめっき触媒液と前記ポリマー層とを接触させて、銅イオンをポリマー層に付与する触媒付与工程と、銅イオンが付与されたポリマー層とアルカリ水溶液とを接触させる第1のアルカリ水溶液接触工程と、その後に、ポリマー層に対して少なくとも銅めっきを行い、銅含有めっき膜16を得るめっき工程と、その後に、前記銅含有めっき膜をパターン状にエッチングして、パターン状銅含有めっき膜18を形成するパターン形成工程と、を備えるパターン状銅含有めっき膜を有する積層体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体の製造方法に関する。より詳細には、パターン状銅含有めっき膜を有する積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、絶縁性基板の表面に金属パターンによる配線を形成した金属配線基板が、電子部品や半導体素子に広く用いられている。
かかる金属パターン材料の作製方法としては、主に、「サブトラクティブ法」が使用される。このサブトラクティブ法とは、基板表面に形成された金属膜上に、活性光線の照射により感光する感光層を設け、この感光層を像様露光し、その後現像してレジスト像を形成し、次いで、金属膜をエッチングして金属パターンを形成し、最後にレジストを剥離する方法である。
【0003】
この方法により得られる金属パターンにおいては、基板表面に凹凸を設けることにより生じるアンカー効果により、基板と金属パターン(金属膜)との間の密着性を発現させている。そのため、得られた金属パターンを金属配線として使用する際、金属パターンの基板界面部の凹凸に起因して、高周波特性が悪くなるという問題点があった。また、基板表面に凹凸化処理するためには、クロム酸などの強酸で基板表面を処理する必要があるため、基板との密着性に優れた金属パターンを得るためには、煩雑な工程が必要であるという問題点があった。
【0004】
この問題を解決する手段として、基板上に該基板と直接結合したグラフトポリマーを生成させてポリマー層を形成し、このポリマー層に対してめっきを施して、得られた金属膜をエッチングする方法が知られている(特許文献1)。該方法によれば、基板の表面を粗面化することなく、基板と金属膜との密着性を改良することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−010336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、近年、電子機器の小型化、高機能化の要求に対応するため、プリント配線板などの微細配線のより一層の高集積化が進んでいる。それに伴って、配線(金属パターン)間においてより高い絶縁性が必要とされており、エッチング処理により配線を作製する際には、エッチング処理による金属残渣の除去性のより一層の向上が要求されている。
本発明者らは特許文献1で具体的に開示されている配線パターンの形成方法について検討を行ったところ、めっき層のエッチング処理の際に、必ずしも十分に金属が除去されておらず、さらなる改良が必要であることを見出した。
【0007】
さらに、電子機器などの高品質化への要求に伴って、配線の欠けや、細り、太り、うねりなど欠陥が抑制された直線性に優れた微細配線を生産性よく製造することがより一層重要となっている。
本発明者らは特許文献1で具体的に開示されている配線パターンの形成方法について検討を行ったところ、得られた微細配線の直線性は、必ずしも昨今要求されるレベルには達していないことが明らかになった。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みて、エッチング処理時における金属残渣の発生が抑制されると共に、直線性、および、密着性に優れるパターン状銅含有めっき膜を有する積層体を得ることができる、積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、従来技術で具体的に使用されていたポリマー層へ付与される銀イオンやパラジウムイオンなどのめっき触媒の影響によって、金属残渣の発生や、微細配線の欠陥が生じることを見出した。本発明者らは、上記知見を基にして、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0010】
(1) 基板上に、銅イオンと相互作用を形成する官能基、および、重合性基を有するポリマーを接触させた後、エネルギーを付与して、前記基板上にポリマー層を形成するポリマー層形成工程と、
銅イオンを含む、pH3.0超のめっき触媒液と前記ポリマー層とを接触させて、銅イオンをポリマー層に付与する触媒付与工程と、
銅イオンが付与されたポリマー層とアルカリ水溶液とを接触させる第1のアルカリ水溶液接触工程と、
前記第1のアルカリ水溶液接触工程後に、ポリマー層に対して少なくとも銅めっきを行い、銅含有めっき膜を得るめっき工程と、
前記めっき工程後に、前記銅含有めっき膜をパターン状にエッチングして、パターン状銅含有めっき膜を形成するパターン形成工程と、
を備える、パターン状銅含有めっき膜を有する積層体の製造方法。
【0011】
(2) 前記第1のアルカリ水溶液接触工程の後で前記めっき工程の前に、さらに、銅イオンが付与されたポリマー層と還元液とを接触させる還元工程を備える、(1)に記載の積層体の製造方法。
(3) 前記還元工程後で前記めっき工程の前に、さらに、ポリマー層とアルカリ水溶液とを接触させる第2のアルカリ水溶液接触工程を備える、(2)に記載の積層体の製造方法。
【0012】
(4) (1)〜(3)のいずれかに記載の積層体の製造方法により得られる積層体。
(5) (4)に記載の積層体を含むプリント配線板。
(6) (4)に記載の積層体を含む回路。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、エッチング処理時における金属残渣の発生が抑制されると共に、直線性、および、密着性に優れるパターン状銅含有めっき膜を有する積層体を得ることができる、積層体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(A)〜(D)は、それぞれ本発明の積層体の製造方法における各製造工程を順に示す基板から積層体までの模式的断面図である。
【図2】(A)〜(D)は、本発明の積層体の製造方法におけるエッチング工程の一態様を順に示す模式的断面図である。
【図3】(A)〜(E)は、本発明の積層体の製造方法におけるエッチング工程の他の態様を順に示す模式的断面図である。
【図4】(A)〜(H)は、多層配線基板の製造工程を順に示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の積層体の製造方法、および該方法により得られる積層体について説明する。
まず、本発明の従来技術と比較した特徴点について詳述する。
本発明者らは、上述したように、従来技術の問題点について鋭意検討したところ、めっき触媒として使用される銀イオンやパラジウムイオンが所定量以上ポリマー層に含まれていると、ポリマー層上に形成される銅含有めっき膜のエッチングに影響を与え、結果として金属残渣の発生や、微細配線の欠陥が生じることを見出した。
本発明者らは、上記知見に基づき検討を行ったところ、所定のpHを示す、銅イオンを含むめっき触媒液を使用して、アルカリ水溶液を使用した特定の工程を経ることにより、上記の課題を解決できることを見出している。
【0016】
本発明のパターン状銅含有めっき膜を有する積層体の製造方法は、以下の5つの工程を備える。
(1)基板上に、銅イオンと相互作用を形成する官能基、および、重合性基を有するポリマーを接触させた後、エネルギーを付与して、基板上にポリマー層を形成するポリマー層形成工程
(2)銅イオンを含む、pH3.0超のめっき触媒液とポリマー層とを接触させて、銅イオンをポリマー層に付与する触媒付与工程
(3)銅イオンが付与されたポリマー層とアルカリ水溶液とを接触させる第1のアルカリ水溶液接触工程
(4)ポリマー層に対して少なくとも銅めっきを行い、銅含有めっき膜を得るめっき工程
(5)めっき工程後に、銅含有めっき膜をパターン状にエッチングして、パターン状銅含有めっき膜を形成するパターン形成工程
以下に、各工程で使用する材料、および、その操作方法について詳述する。
【0017】
<工程(1):ポリマー層形成工程>
工程(1)は、基板上に、銅イオンと相互作用を形成する官能基、および、重合性基を有するポリマーを接触させた後、エネルギーを付与して、基板上にポリマー層を形成する工程である。該工程によって形成されるポリマー層は、ポリマー中の銅イオンと相互作用を形成する官能基の機能に応じて、後述する触媒付与工程で銅イオンを吸着(付着)する。つまり、ポリマー層は、銅イオンの良好な受容層として機能する。また、重合性基は、ポリマー同士の結合や、基板(または、後述する密着補助層)との化学結合に利用される。その結果、ポリマー層の表面に形成される銅含有めっき膜と、基板との間に優れた密着性が発現する。
より具体的には、該工程において、図1(A)に示されるように密着補助層12を備えた基板10を用意し、図1(B)に示すように基板10の上部にポリマー層14が形成される。なお、後述するように密着補助層12は、任意の層である。
まず、本工程で使用される材料(基板、密着補助層、ポリマー、ポリマー層形成用組成物など)について詳述し、その後該工程の手順について詳述する。
【0018】
[基板]
本発明に用いる基板としては、従来知られているいずれの基板も使用することができ、後述する処理条件に耐えることのできるものが好ましい。また、その表面が、後述するポリマーと化学結合しうる機能を有することが好ましい。具体的には、基板自体がエネルギー付与(例えば、露光)によりポリマーと化学結合を形成しうるものであるか、または、基板上に、エネルギー付与によりポリマー層と化学結合を形成しうる中間層(例えば、後述する密着補助層)を設けられていてもよい。
【0019】
基板の材料としては、例えば、高分子材料(例えば、「プラスチック活用ノート 4訂版」、または「エンジニアリングプラスチック活用ノート」記載のプラスチックが挙げられる。具体的には、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアセタール、ポリイミド、エポキシ、ビスマレインイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン等)、金属材料(例えば、金属合金、金属含有材料、純粋金属、またはこれらに類似したもの。具体的には、アルミニウム、亜鉛、銅等の混合物、合金、及びこれらのアロイ。)、その他の材料(例えば、紙、プラスチックがラミネートされた紙)、これらの組み合わせ、またはこれらに類似したものなどが挙げられる。
【0020】
また、本発明の積層体は、半導体パッケージ、各種電気配線基板等に適用することができる。このような用途に用いる場合は、以下に示す、絶縁性樹脂を含んだ基板、具体的には、絶縁性樹脂からなる基板、または、絶縁性樹脂からなる層(絶縁性樹脂層)を表面に有する基板を用いることが好ましい。
【0021】
絶縁性樹脂からなる基板、絶縁性樹脂からなる層を得る場合には、公知の絶縁性樹脂組成物が用いられる。
絶縁性樹脂の具体例としては、例えば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもまたそれらの混合物でもよく、例えば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、イソシアネート樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0022】
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド等が挙げられる。
【0023】
基板には、本発明の効果を損なわない限り、種々の添加剤が含まれていてもよい。例えば、無機粒子等の充填材充填物(例えば、ガラス繊維、シリカ粒子、アルミナ、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカ、ウォラストナイト)や、シラン系化合物(例えば、シランカップリング剤やシラン接着剤等)、有機フィラー(例えば、硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリルポリマー等)、可塑剤、界面活性剤、粘度調整剤、着色剤、硬化剤、衝撃強度改質剤、接着性付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0024】
基板は、半導体パッケージ、各種電気配線基板等への用途を考慮すると、JIS B 0601(1994年)、10点平均高さ法で測定した表面粗さRzが500nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下、最も好ましくは20nm以下である。下限は特に限定されないが、5nm程度が好ましく、0がより好ましい。
【0025】
また、基板は、その片面または両面に金属配線を有していてもよい。金属配線は、基板の表面に対してパターン状に形成されていてもよいし、全面に形成されていてもよい。代表的には、エッチング処理を利用したサブストラクティブ法で形成されたものや、電解めっきを利用したセミアディティブ法で形成したものが挙げられ、いずれの工法で形成されたものを用いてもよい。
金属配線を構成する材料としては、例えば、銅、銀、錫、パラジウム、金、ニッケル、クロム、タングステン、インジウム、亜鉛、またはガリウムなどが挙げられる。
このような金属配線を有する基板としては、例えば、両面または片面の銅張積層板(CCL)や、この銅張積層板の銅膜をパターン状にしたもの等が用いられ、これらはフレキシブル基板であってもよいし、リジット基板であってもよい。
【0026】
[密着補助層]
密着補助層は、上記基板表面上に設けられていてもよい任意の層であり、基板と後述するポリマー層との密着性を補助する役割を果たす。密着補助層は、上記ポリマーにエネルギー付与(例えば、露光)がされた際に、ポリマーと化学結合を生じるものが好ましい。また、密着補助層には、重合開始剤が含まれていてもよい。
【0027】
密着補助層の厚みは、基板の表面平滑性などにより適宜選択する必要があるが、一般的には、0.01μm〜100μmが好ましく、0.05μm〜20μmがより好ましく、特に0.05μm〜10μmが好ましい。
また、密着補助層の表面平滑性は、形成される銅含有めっき膜の物性を向上させる観点から、JIS B 0601(1994年)、10点平均高さ法で測定した表面粗さRzが3μm以下であるものが好ましく、Rzが1μm以下であることがより好ましい。
【0028】
密着補助層の材料は特に制限されず、基材との密着性が良好な樹脂であることが好ましい。基板が電気的絶縁性の樹脂で構成される場合、ガラス転移点や弾性率、線膨張係数といった熱物性的が近い樹脂を使用することが好ましい。具体的には、例えば、基板を構成する絶縁性樹脂と同じ種類の絶縁性樹脂を使用することが密着の点で好ましい。
【0029】
なお、本発明において、密着補助層に使用される絶縁性樹脂とは、公知の絶縁膜に使用しうる程度の絶縁性を有する樹脂を意味するものであり、完全な絶縁体でないものであっても、目的に応じた絶縁性を有する樹脂であれば、本発明に適用しうる。
絶縁性樹脂の具体例としては、例えば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもまたそれらの混合物でもよく、例えば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、イソシアネート系樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド、ABS樹脂等が挙げられる。
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
また、シアノ基を含有する樹脂を使用してもよく、具体的には、ABS樹脂や、特開2010−84196号〔0039〕〜〔0063〕記載の「側鎖にシアノ基を有するユニットを含むポリマー」を用いてもよい。
【0030】
また、基板としてエポキシ樹脂やABS樹脂を用いて、密着補助層としてNBRゴムやSBRゴム状重合体を用いると、加熱時に基板やポリマー層に加わる応力を密着補助層が緩和させることができ、好ましい。
【0031】
密着補助層の形成方法は特に制限されず、使用される樹脂を基板上にラミネートする方法や、必要な成分を溶解可能な溶媒に溶解し、塗布などの方法で基板表面上に塗布・乾燥する方法などが挙げられる。
塗布方法における加熱温度と時間は、塗布溶剤が充分乾燥し得る条件を選択すればよいが、製造適性の点からは、加熱温度200℃以下、時間60分以内の範囲の加熱条件を選択することが好ましく、加熱温度40〜100℃、時間20分以内の範囲の加熱条件を選択することがより好ましい。なお、使用される溶媒は、使用する樹脂に応じて適宜最適な溶媒(例えば、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン)が選択される。
【0032】
[ポリマー]
本発明で使用されるポリマーは、重合性基と、銅イオンと相互作用する官能基(以後、適宜相互作用性基と称する)を有する。
以下、ポリマーに含まれる官能基や、その特性について詳述する。
【0033】
(重合性基)
重合性基は、エネルギー付与により、ポリマー同士、または、ポリマーと基板(または、密着補助層)との間に化学結合を形成しうる官能基であり、例えば、ラジカル重合性基、カチオン重合性基などが挙げられる。なかでも、反応性の観点から、ラジカル重合性基が好ましい。ラジカル重合性基としては、例えば、アクリル酸エステル基、メタクリル酸エステル基、イタコン酸エステル基、クロトン酸エステル基、イソクロトン酸エステル基、マレイン酸エステル基などの不飽和カルボン酸エステル基、スチリル基、ビニル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基などが挙げられる。なかでも、メタクリル酸エステル基(メタアクリロイル基)、アクリル酸エステル基(アクリロイル基)、ビニル基、スチリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基が好ましく、アクリロイル基、メタアクリロイル基、スチリル基が特に好ましい。
【0034】
(相互作用性基)
相互作用性基は、銅イオンと相互作用する官能基(配位性基、金属イオン吸着性基)であり、銅イオンと静電相互作用を形成可能な官能基、あるいは、銅イオンと配位形成可能な含窒素官能基、含硫黄官能基、含酸素官能基などを使用することができる。
相互作用性基としては、例えば、非解離性官能基(解離によりプロトンを生成しない官能基)なども挙げられる。
相互作用性基としてより具体的には、アミノ基、アミド基、イミド基、ウレア基、3級のアミノ基、アンモニウム基、アミジノ基、トリアジン環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール基、イミダゾール基、ベンズイミダゾール基、キノリン基、ピリジン基、ピリミジン基、ピラジン基、ナゾリン基、キノキサリン基、プリン基、トリアジン基、ピペリジン基、ピペラジン基、ピロリジン基、ピラゾール基、アニリン基、アルキルアミン構造を含む基、イソシアヌル構造を含む基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、ジアゾ基、アジド基、シアノ基、シアネート基(R−O−CN)などの含窒素官能基;エーテル基、水酸基、フェノール性水酸基、カルボキシル基、カーボネート基、カルボニル基、エステル基、N−オキシド構造を含む基、S−オキシド構造を含む基、N−ヒドロキシ構造を含む基などの含酸素官能基;チオフェン基、チオール基、チオウレア基、チオシアヌール酸基、ベンズチアゾール基、メルカプトトリアジン基、チオエーテル基、チオキシ基、スルホキシド基、スルホン基、サルファイト基、スルホキシイミン構造を含む基、スルホキシニウム塩構造を含む基、スルホン酸基、スルホン酸エステル構造を含む基などの含硫黄官能基;ホスフォート基、ホスフォロアミド基、ホスフィン基、リン酸エステル構造を含む基などの含リン官能基;塩素、臭素などのハロゲン原子を含む基などが挙げられ、塩構造をとりうる官能基においてはそれらの塩も使用することができる。
なかでも、極性が高く、銅イオンなどへの吸着能が高いことから、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、およびボロン酸基などのイオン性極性基や、エーテル基、またはシアノ基が特に好ましく、カルボキシル基またはシアノ基がさらに好ましい。
相互作用性基としてのこれら官能基は、ポリマー中に2種以上が含まれていてもよい。
【0035】
なお、上記エーテル基としては、以下の式(X)で表されるポリオキシアルキレン基が好ましい。
式(X) *−(YO)n−Rc
式(X)中、Yはアルキレン基を表し、Rcはアルキル基を表す。nは1〜30の数を表す。*は結合位置を表す。
アルキレン基としては、炭素数1〜3が好ましく、具体的には、エチレン基、プロピレン基が好ましく挙げられる。
アルキル基としては、炭素数1〜10が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基が好ましく挙げられる。
nは1〜30の数を表し、好ましくは3〜23である。なお、nは平均値を表し、該数値は公知の方法(NMR)などによって測定できる。
【0036】
ポリマーの重量平均分子量は特に制限されないが、1000以上70万以下が好ましく、更に好ましくは2000以上20万以下である。特に、重合感度の観点から、20000以上であることが好ましい。
また、ポリマーの重合度は特に制限されないが、10量体以上のものを使用することが好ましく、更に好ましくは20量体以上のものである。また、7000量体以下が好ましく、3000量体以下がより好ましく、2000量体以下が更に好ましく、1000量体以下が特に好ましい。
【0037】
(好適態様1)
ポリマーの第1の好ましい態様として、下記式(a)で表される重合性基を有するユニット(以下、適宜重合性基ユニットとも称する)、及び、下記式(b)で表される相互作用性基を有するユニット(以下、適宜相互作用性基ユニットとも称する)を含む共重合体が挙げられる。なお、ユニットとは繰り返し単位を意味する。
【0038】
【化1】

【0039】
上記式(a)及び式(b)中、R1〜R5は、それぞれ独立して、水素原子、または置換若しくは無置換のアルキル基を表す。
1〜R5が、置換または無置換のアルキル基である場合、無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、またはブチル基が挙げられる。また、置換アルキル基としては、メトキシ基、塩素原子、臭素原子、またはフッ素原子等で置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
なお、R1としては、水素原子、メチル基、または、臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
2としては、水素原子、メチル基、または、臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
3としては、水素原子が好ましい。
4としては、水素原子が好ましい。
5としては、水素原子、メチル基、または、臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
【0040】
上記式(a)および式(b)中、X、Y、およびZは、それぞれ独立して、単結合、または、置換若しく無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基としては、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基(好ましくは炭素数1〜8)、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基(好ましくは炭素数6〜12)、−O−、−S−、−SO2−、−N(R)−(R:アルキル基)、−CO−、−NH−、−COO−、−CONH−、またはこれらを組み合わせた基(例えば、アルキレンオキシ基、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基など)などが挙げられる。
置換または無置換の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、若しくはブチレン基、または、これらの基が、メトキシ基、塩素原子、臭素原子、若しくはフッ素原子等で置換されたものが好ましい。
置換または無置換の芳香族炭化水素基としては、無置換のフェニレン基、または、メトキシ基、塩素原子、臭素原子、若しくはフッ素原子等で置換されたフェニレン基が好ましい。
【0041】
X、Y、およびZとしては、単結合、エステル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)、エーテル基(−O−)、または置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基などが好ましく挙げられ、より好ましくは単結合、エステル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)である。
【0042】
上記式(a)および式(b)中、L1およびL2は、それぞれ独立して、単結合、または、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基の定義としては、上述したX、Y、およびZで述べた二価の有機基と同義である。
1としては、ウレタン結合またはウレア結合を有する二価の有機基が好ましく、ウレタン結合を有する二価の有機基がより好ましく、中でも、総炭素数1〜9であるものが好ましい。なお、ここで、L1の総炭素数とは、L1で表される置換若しくは無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
1の構造として、より具体的には、下記式(1−1)、または、式(1−2)で表される構造であることが好ましい。
【0043】
【化2】

【0044】
上記式(1−1)及び式(1−2)中、RaおよびRbは、それぞれ独立して、炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる群より選択される2つ以上の原子を用いて形成される二価の有機基である。好ましくは、置換若しくは無置換の、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、若しくはブチレン基、または、エチレンオキシド基、ジエチレンオキシド基、トリエチレンオキシド基、テトラエチレンオキシド基、ジプロピレンオキシド基、トリプロピレンオキシド基、テトラプロピレンオキシド基が挙げられる。
【0045】
また、L2は、単結合、または、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、またはこれらを組み合わせた基であることが好ましい。該アルキレン基と芳香族基とを組み合わせた基は、更に、エーテル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基を介していてもよい。中でも、L2は、単結合、または、総炭素数が1〜15であることが好ましく、特に無置換であることが好ましい。なお、ここで、L2の総炭素数とは、L2で表される置換または無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、およびこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたもの、更には、これらを組み合わせた基が挙げられる。
【0046】
上記式(b)中、Wは、銅イオンと相互作用する官能基を表す。該官能基の定義は、上述の通りである。
【0047】
上記式(a)で表される重合性基ユニットの好適態様としては、下記式(c)で表されるユニットが挙げられる。
【0048】
【化3】

【0049】
式(c)中、R1、R2、ZおよびL1は、式(a)で表されるユニット中の各基の定義と同じである。Aは、酸素原子、またはNR(Rは、水素原子またはアルキル基を表し、好ましくは、水素原子または炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表す。
【0050】
式(c)で表されるユニットの好適態様として、式(d)で表されるユニットが挙げられる。
【0051】
【化4】

【0052】
式(d)中、R1、R2、およびL1は、式(a)で表されるユニット中の各基の定義と同じである。AおよびTは、酸素原子、またはNR(Rは、水素原子またはアルキル基を表し、好ましくは、水素原子または炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表す。
【0053】
上記式(d)において、Tは、酸素原子であることが好ましい。
また、上記式(c)および式(d)において、L1は、無置換のアルキレン基、または、ウレタン結合若しくはウレア結合を有する二価の有機基が好ましく、ウレタン結合を有する二価の有機基がより好ましく、総炭素数1〜9であるものが特に好ましい。
【0054】
また、式(b)で表される相互作用性基ユニットの好適態様としては、下記式(e)で表されるユニットが挙げられる。
【0055】
【化5】

【0056】
上記式(e)中、R5およびL2は、式(2)で表されるユニット中の各基の定義と同じである。Qは、酸素原子、またはNR’(R’は、水素原子、またはアルキル基を表し、好ましくは、水素原子、または炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表す。
また、式(e)におけるL2は、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、または、これらを組み合わせた基であることが好ましい。
特に、式(e)においては、L2中の相互作用性基との連結部位が、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基を有する二価の有機基であることが好ましく、中でも、この二価の有機基が総炭素数1〜10であることが好ましい。
また、別の好ましい態様としては、式(e)におけるL2中の相互作用性基との連結部位が、芳香族基を有する二価の有機基であることが好ましく、中でも、該二価の有機基が、総炭素数6〜15であることが好ましい。
【0057】
上記重合性基ユニットは、ポリマー中の全ユニットに対して、5〜50モル%で含まれることが好ましく、更に好ましくは5〜40モル%である。5モル%未満では反応性(硬化性、重合性)が落ちる場合があり、50モル%超では合成の際にゲル化しやすく合成しにくい。
また、上記相互作用性基ユニットは、銅イオンに対する吸着性の観点から、ポリマー中の全ユニットに対して、5〜95モル%で含まれることが好ましく、更に好ましくは10〜95モル%である。
【0058】
(好適態様2)
ポリマーの第2の好ましい態様としては、下記式(A)、式(B)、および式(C)で表されるユニットを含む共重合体が挙げられる。
【0059】
【化6】

【0060】
式(A)で表されるユニットは上記式(a)で表されるユニットと同じであり、各基の説明も同じである。
式(B)で表されるユニット中のR5、XおよびL2は、上記式(b)で表されるユニット中のR5、XおよびL2と同じであり、各基の説明も同じである。
式(B)中のWaは、後述するVで表される親水性基またはその前駆体基を除く銅イオンと相互作用を形成する官能基を表す。
【0061】
式(C)中、R6は、それぞれ独立して、水素原子、または置換若しくは無置換のアルキル基を表す。アルキル基の定義は、上述したR1〜R5で表されるアルキル基と同義である。
式(C)中、Uは、単結合、または、置換若しく無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基の定義は、上述したX、YおよびZで表される二価の有機基と同義である。
式(C)中、L3は、単結合、または、置換若しく無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基の定義は、上述したL1およびL2で表される二価の有機基と同義である。
式(C)中、Vは親水性基またはその前駆体基を表す。親水性基とは親水性を示す基であれば特に限定されず、例えば、水酸基、カルボン酸基などが挙げられる。また、親水性基の前駆体基とは、所定の処理(例えば、酸またはアルカリにより処理)により親水性基を生じる基を意味し、例えば、THP(2−テトラヒドロピラニル基)で保護したカルボキシ基などが挙げられる。
親水性基としては、ポリマー層が各種水性処理液やめっき液と濡れ易くなり、特に、エッチング液との濡れ性が良くなり、本発明の効果がより発現する点で、イオン性極性基であることが好ましい。イオン性極性基としては、具体的には、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ボロン酸基が挙げられる。中でも、適度な酸性(他の官能基を分解しない)という点から、カルボン酸基が好ましい。
【0062】
特に、式(C)で表されるユニットにおいては、適度な酸性(他の官能基を分解しない)、アルカリ水溶液中では親水性を示し、水を乾燥すると環状構造により疎水性を示しやすいという点から、Vがカルボン酸基であり、且つ、L3のVとの連結部に4員〜8員の環構造を有することが好ましい。ここで、4員〜8員の環構造としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、フェニル基が挙げられ、中でも、シクロヘキシル基、フェニル基が好ましい。
また、式(C)で表されるユニットにおいては、適度な酸性(他の官能基を分解しない)、アルカリ水溶液中では親水性を示し、水を乾燥すると長鎖アルキル基構造により疎水性を示しやすいという点から、Vがカルボン酸基であり、且つ、L3の鎖長が6〜18原子であることも好ましい。ここで、L3の鎖長とは、式(C)中のUとVとの距離を表し、UとVとの間が6〜18原子の範囲で離間していることが好ましいことを意味する。L3の鎖長として、より好ましくは6〜14原子であり、更に好ましくは6〜12原子である。
【0063】
上記ポリマーの第2の好ましい態様における各ユニットの好ましい含有量は、以下の通りである。
式(A)で表されるユニットは、反応性(硬化性、重合性)および合成の際のゲル化の抑制の点から、ポリマー中の全ユニットに対して、5〜50モル%で含まれることが好ましく、更に好ましくは5〜30モル%である。
式(B)で表されるユニットは、銅イオンに対する吸着性の観点から、ポリマー中の全ユニットに対して、5〜75モル%で含まれることが好ましく、更に好ましくは10〜70モル%である。
式(C)で表されるユニットは、水溶液による現像性と耐湿密着性の点から、ポリマー中の全ユニットに対して、10〜70モル%で含まれることが好ましく、更に好ましくは20〜60モル%であり、特に好ましくは30〜50モル%である。
【0064】
なお、ポリマーの第2の好ましい態様におけるイオン性極性価(イオン性極性基がカルボン酸基の場合は酸価)としては、1.5〜7.0mmol/gが好ましく、1.7〜5.0mmol/gが更に好ましく、特に好ましくは1.9〜4.0mmol/gである。イオン性極性価がこの範囲であることで、水溶液での現像性付与と湿熱経時時の密着力低下の抑制とを両立させることができる。
【0065】
上記ポリマーの具体例としては、ラジカル重合性基と、銅イオンと相互作用を形成する官能基を有するポリマーとしては、特開2009−007540号公報の段落[0106]〜[0112]に記載のポリマーが使用できる。また、ラジカル重合性基と、イオン性極性基とを有するポリマーとしては、特開2006−135271号公報の段落[0065]〜[0070]に記載のポリマーが使用できる。ラジカル重合性基と、銅イオンと相互作用を形成する官能基と、イオン性極性基とを有するポリマーとしては、US2010−080964号の段落[0030]〜[0108]に記載のポリマーが使用できる。
また、以下のようなポリマーも挙げられる。
【0066】
【化7】

【0067】
【化8】

【0068】
(ポリマーの合成方法)
上記ポリマーの合成方法は特に限定されず、使用されるモノマーも市販品または公知の合成方法を組み合わせて合成したものであってもよい。例えば、特許公開2009−7662号の段落[0120]〜[0164]に記載の方法などを参照して、上記ポリマーを合成することができる。
より具体的には、重合性基がラジカル重合性基の場合、ポリマーの合成方法としては以下の方法が好ましく挙げられる。
i)ラジカル重合性基を有するモノマー、相互作用性基を有するモノマーを共重合する方法、ii)相互作用性基を有するモノマーおよびラジカル重合性基前駆体を有するモノマーを共重合させ、次に塩基などの処理によりラジカル重合性基を導入する方法、iii)相互作用性基を有するモノマーおよびラジカル重合性基導入のための反応性基を有するモノマーを共重合させ、ラジカル重合性基を導入する方法が挙げられる。
合成適性の観点から、好ましい方法としては、上記ii)および上記iii)の方法である。合成する際の重合反応の種類は特に限定されず、ラジカル重合で行うこと好ましい。
なお、上述した式(A)、式(B)、および式(C)で表されるユニットを含む共重合体を合成する場合は、親水性基またはその前駆体基を有するモノマー、親水性基またはその前駆体基を除く相互作用性基を有するモノマーを使用して、上記i)〜iii)の方法で所望の共重合体を合成することができる。
【0069】
(ポリマー層形成用組成物)
ポリマー層形成用組成物には上記ポリマーおよび溶剤が含有されることが好ましく、工程(1)の操作の際に使用することができる。
ポリマー層形成用組成物中のポリマーの含有量は特に制限されないが、組成物全量に対して、2〜50質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、組成物の取扱い性に優れ、ポリマー層の層厚の制御がしやすい。
【0070】
ポリマー層形成用組成物には、溶剤が含まれることが好ましい。
使用できる溶剤は特に限定されず、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶剤、酢酸などの酸、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶剤、アセトニトリル、プロピロニトリルなどのニトリル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル系溶剤、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのカーボネート系溶剤、この他にも、エーテル系溶剤、グリコール系溶剤、アミン系溶剤、チオール系溶剤、ハロゲン系溶剤などが挙げられる。
この中でも、アミド系溶剤、ケトン系溶剤、ニトリル系溶剤、カーボネート系溶剤が好ましく、具体的には、アセトン、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、N−メチルピロリドン、ジメチルカーボネートが好ましい。
【0071】
ポリマー層形成用組成物中の溶剤の含有量は特に制限されないが、組成物全量に対して、50〜98質量%が好ましく、70〜95質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、組成物の取扱い性に優れ、ポリマー層の層厚の制御などがしやすい。
【0072】
(工程(1)の手順)
上述したポリマーを基板上(または密着補助層上)に接触させる方法は特に限定されず、ポリマーを直接基板上にラミネートする方法や、ポリマーを溶媒に溶解させた組成物(ポリマー層形成用組成物)を基板上に塗布する方法などが挙げられる。得られるポリマー層の厚みを制御しやすい点から、組成物を基板上に塗布する方法が好ましい。
塗布の方法は特に制限されず、具体的な方法としては、ダブルロールコータ、スリットコータ、エアナイフコータ、ワイヤーバーコータ、スライドホッパー、スプレーコーチィング、ブレードコータ、ドクターコータ、スクイズコータ、リバースロールコータ、トランスファーロールコータ、エクストロージョンコータ、カーテンコータ、ダイコータ、グラビアロールによる塗工法、押し出し塗布法、ロール塗布法等の公知の方法を用いることができる。
取り扱い性や製造効率の観点からは、ポリマー層形成用組成物を基板(または密着補助層)上に塗布・乾燥させて、ポリマーを含む組成物層を形成する態様が好ましい。
【0073】
ポリマー層形成用組成物を基板と接触させる場合、その塗布量は、後述する銅イオンとの充分な相互作用形成性の観点から、固形分換算で0.1g/m2〜10g/m2が好ましく、特に0.5g/m2〜5g/m2が好ましい。
なお、本工程においてポリマー層を形成するに際しては、塗布と乾燥との間に、20〜40℃で0.5時間〜2時間放置させて、残存する溶剤を除去してもよい。
【0074】
(エネルギーの付与)
本工程におけるエネルギー付与方法としては、例えば、加熱や露光等の輻射線照射を用いることができる。例えば、UVランプ、可視光線などによる光照射、ホットプレートなどでの加熱等が可能である。
露光を行う場合の光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、等がある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。また、g線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。
加熱を行う場合、例えば、一般の熱ヒートローラー、ラミネーター、ホットスタンプ、電熱板、サーマルヘッド、レーザー、送風乾燥機、オーブン、ホットプレート、赤外線乾燥機、加熱ドラム等を用いることができる。
エネルギー付与に要する時間としては、目的とするグラフトポリマーの生成量および光源により異なるが、通常、10秒〜5時間の間である。
【0075】
なお、エネルギーの付与を露光にて行う場合、その露光パワーは、グラフト重合を容易に進行させるため、また、生成されたグラフトポリマーの分解を抑制するため、10mJ/cm2〜8000mJ/cm2の範囲であることが好ましく、より好ましくは、100mJ/cm2〜3000mJ/cm2の範囲である。
また、窒素、ヘリウム、二酸化炭素等の不活性ガスによる置換を行い、酸素濃度を600ppm以下、好ましくは400ppm以下に抑制した雰囲気中で照射してもよい。
【0076】
得られるポリマー層の厚みは特に制限されないが、銅含有めっき膜の基板への密着性の点から、0.01〜10μmが好ましく、0.05〜5μmがより好ましい。
また、乾燥膜厚で0.05〜20g/m2が好ましく、特に0.1〜6g/m2が好ましい。
さらに、ポリマー層の表面粗さ(Ra)は、配線形状および密着強度の点から、0.01〜0.3μmが好ましく、0.02〜0.15μmがより好ましい。なお、表面粗さ(Ra)は、非接触式干渉法により、JIS B 0601(20010120改訂)に記載のRaに基づき、サーフコム3000A(東京精密(株)製)を用いて測定した。
【0077】
なお、ポリマー層中におけるポリマーの含有量は、ポリマー層全量に対して、2質量%〜100質量%であることが好ましく、更に好ましくは10質量%〜100質量%の範囲である。
【0078】
また、ポリマー層中には、重合開始剤が含有されていてもよい。重合開始剤が含まれると、エネルギー付与により、活性種(例えば、ラジカル活性種)が発生し、重合性基間の反応、または、重合性基と基板(または、密着補助層)との反応をより促進する。その結果として、密着性の高い銅含有めっき膜を得ることができる。
重合開始剤としては特に制限はなく、熱重合開始剤、光重合開始剤(ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤)や、特開平9−77891号、特開平10−45927号に記載の活性カルボニル基を側鎖に有する高分子化合物、更には、側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマー(重合開始ポリマー)などを用いることができる。
光重合開始剤の例としては、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、α−アミノアルキルフェノン類、ベンゾイン類、ケトン類、チオキサントン類、ベンジル、ベンジルケタール類、オキスムエステル類、アンソロン、テトラメチルチウラムモノサルファイド、ビスアシルフォスフィノキサイド類、アシルフォスフィンオキサイド類、アントラキノン類、アゾ化合物等及びその誘導体を挙げることができる。また、開環重合用の重合開始剤として、カチオン重合開始剤も挙げることができる。カチオン重合開始剤の例としては、芳香族オニウム塩、周期表第VIa族元素のスルホニウム塩等及びその誘導体を挙げることができる。
さらに、ポリマー層中においては、本発明の効果を損なわない範囲で、各種添加剤が含まれていてもよい。
【0079】
また、エネルギー付与を行う際に、パターン状にエネルギー付与を行い、その後公知の現像処理によりエネルギー未照射部を除去して、パターン状のポリマー層を形成してもよい。
【0080】
<工程(2):触媒付与工程>
工程(2)は、銅イオンを含む、pH3.0超のめっき触媒液と、工程(1)で得られたポリマー層とを接触させて、銅イオンをポリマー層に付与する工程である。本工程においては、ポリマー層中に含まれる銅イオンと相互作用する官能基が、その機能に応じて、めっき触媒液中の銅イオンを付着(吸着)する。付着された銅イオンは、後述するめっき工程において無電解銅めっきの触媒や、電解銅めっきの電極として作用する。
まず、本工程で使用されるめっき触媒液について詳述し、その後工程(2)の手順について詳述する。
【0081】
(めっき触媒液)
本工程で使用されるめっき触媒液は、銅イオンを含み、pHが3.0超を示す。
触媒液への銅イオンの供給源は特に制限されず、めっき触媒液中に銅イオンを供給し得るもの(銅含有化合物)であえば特に制限されない。なかでも、溶媒に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離される金属塩の態様が好ましい。
【0082】
より具体的には、硝酸銅、硝酸ビス(トリフェニルホスフィン)銅(I)、炭酸銅(II)、塩基性炭酸銅(II)、二水酸化炭酸銅(II)、酢酸銅、エチルアセト酢酸銅(II)、塩化銅(I)、塩化銅(II)、無水塩化銅(II)、塩化アンモニウム銅(II)、硫酸銅、硫酸テトラアンミン銅(II)、水酸化銅(II)、硫酸アンモニウム銅(II)、酒石酸銅(II)、よう素酸銅、よう化銅(I)、亜クロム酸銅、クエン酸銅(II)、ぎ酸銅(II)、りん酸銅(II)、2-エチルヘキサン酸銅(II)、オレイン酸銅(II)、しゅう酸銅(II)、2,4-ペンタンジオン酸銅(II)、グルコン酸銅(II)、イソ酪酸銅(II)、銅クロロフィリン三ナトリウム塩、シアン化銅(I)、シアン化銅酸ナトリウム、シアン化銅酸カリウム、チオシアン酸銅(I)、チオフェン-2-カルボン酸銅(I)、窒化銅(I)、硫化銅(I)クロロ[1,3-ビス(2,6-ジ-i-プロピルフェニル)イミダゾール-2-イリデン]銅(I)シクロヘキサン酪酸銅(II)、銅(II)アセチルアセトナート、銅(II)メトキシド、銅(II)エトキシド、銅(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、銅(II)イソプロポキシド、銅(I)フェニルアセチリド、臭化銅(II)、臭化銅(I)、臭化銅(I)-ジメチルスルフィド錯体、シクロペンタジエニル(トリエチルホスフィン)銅(I)、ヘキサフルオロりん酸テトラキス(アセトニトリル)銅(I)、ピロリン酸銅(II)、テルル化銅(I)、セレン化銅(II)、亜セレン酸銅(II)、アルミン酸銅、ナフテン酸銅(II)、ネオデカン酸銅(II)、酸化銅、四酸化二鉄銅、タングステン酸銅、ビス(アセチルアセトナト)銅(II)、ビス(t-ブチルアセトアセタト)銅(II)、ビス(6,6,7,7,8,8,8-ヘプタフルオロ-2,2-ジメチル-3,5-オクタンジオナト)銅(II)、けい化銅、酸化銅(I)、酸化銅(II)、酸化ビスマス ストロンチウムカルシウム銅、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト)銅(II)、ビス(N,N'-ジ-sec-ブチルアセトアミジナト)二銅(I)、ホウ素水素化ビス(トリフェニルホスフィン)銅(I)、トリメチルホスフィン(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)銅(I)、ブロモ(1,10-フェナントロリン)(トリフェニルホスフィン)銅(I)、アクリル酸銅(II)、メタクリル酸銅(II)、フタロシアニン銅(II)、フタロシアニン銅(II)四スルホン酸四ナトリウム塩、ベンゼンスルフィン酸銅(II)、ふっ化銅(II)、ヘキサフルオロ-2,4-ペンタンジオン酸銅(II)、1,1,1-トリフルオロ-2,4-ペンタンジオン酸銅(II)、ヘキサフルオロ-2,4-ペンタンジオン酸銅(I)-シクロオクタジエン錯体、テトラフルオロほう酸銅、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)、トリフルオロ酢酸銅(II)、トリフルオロアセチルアセトナト銅(II)、トリフルオロメタンスルホン酸銅(I)ベンゼン錯体(2:1)、エチレンジアミン-N,N,N',N'-四酢酸銅(II)二ナトリウム塩、およびそれらの水和物が挙げられる。
なかでも、溶液の溶解性に優れ、本発明の効果がより優れる点で、酢酸銅、硝酸銅、硫酸銅が好ましく、特に酢酸銅がより好ましい。
【0083】
めっき触媒液中における銅イオンの含有量は特に制限されないが、溶液の取扱い性の観点から、0.001〜1モル/lが好ましく、0.01〜0.5モル/lがより好ましい。
【0084】
めっき触媒液はpHが3.0超を示す。上記範囲であれば、ポリマー層への銅イオンの付着が十分に進行し、後述するめっき工程において十分な厚みを有する密着性に優れた銅含有めっき膜を得ることができる。なかでも、めっき触媒液の液安定性、および、得られる銅含有めっき膜のエッチング除去性がより優れる点で、pHは3.1〜11であることが好ましく、3.2〜10であることがより好ましい。
一方、pHが3.0以下の場合、ポリマー層への銅イオンの付着が十分に進行せず、後述するめっき工程におけるめっきの析出が十分に進行しない。
なお、めっき触媒液のpHは、上述した銅イオンの供給源を添加した後、酸(例えば、塩酸、硫酸)やアルカリ(例えば、水酸化ナトリウム)などによって適宜調整してもよい。
【0085】
めっき触媒液の溶媒は特に制限されないが、環境適性、および、作業性の点から、水(より具体的には、RO水、脱イオン水、蒸留水、精製水)を使用することが好ましい。
また、必要に応じて、有機溶剤を併用してもよい。有機溶剤としては、例えば、アセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、エチレングリコールジアセテート、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、アセトフェノン、2−(1−シクロヘキセニル)、プロピレングリコールジアセテート、トリアセチン、ジエチレングリコールジアセテート、ジオキサン、N−メチルピロリドン、ジメチルカーボネート、ジメチルセロソルブ、ダイアセトンアルコール、γ−ブチロラクトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールターシャリーブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、n−メチル−2−ピロリドンなどを用いることができる。なかでも、水溶性の有機溶剤が好ましく、アセトン、ジメチルカーボネート、ジメチルセロソルブ、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルが好ましい。
【0086】
また、めっき触媒液は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の公知のめっき触媒またはその前駆体を含んでいてもよい。具体的には、めっき触媒としては、Ag、Al、Ni、Co、Fe、Pdが挙げられ、Ag、Pdが好ましく挙げられる。また、めっき触媒前駆体としては、上記金属のイオン(例えば、Agイオン、Pdイオン)が好ましく挙げられる。
これらの他のめっき触媒の含有量は、銅イオン100モル部に対して、30モル部以下であることが好ましく、更に好ましくは10モル部以下であることが好ましく、実質的に含まれていないことが特に好ましい。
【0087】
(工程(2)の手順)
本工程においてポリマー層とめっき触媒液との接触方法は特に制限されず、公知の方法を採用することができる。例えば、めっき触媒液をポリマー層上に塗布する方法や、ポリマー層を備える基板をめっき触媒液に浸漬する方法などが挙げられる。
接触時間としては、30秒〜24時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
接触時のめっき触媒液の温度は、5〜80℃程度であることが好ましく、15〜60℃程度であることがより好ましい。
【0088】
ポリマー層中の銅イオンの吸着量(付着量)に関しては、使用するポリマーの種類、銅イオンの濃度などにより異なるが、めっきの析出性の観点から、5mg/m2〜1000mg/m2が好ましく、10mg/m2〜800mg/m2がより好ましく、20mg/m2〜600mg/m2がさらに好ましい。
銅イオンの吸着量が少なすぎると後述するめっきの析出がし難くなり、含有量が多すぎると基板との密着力が損なわれる場合がある。該吸着量(付着量)は、公知の測定手段(例えば、質量分析装置(ICP−MS))により測定できる。
【0089】
<工程(3):第1のアルカリ水溶液接触工程>
工程(3)は、工程(2)で銅イオンが付与されたポリマー層とアルカリ水溶液とを接触させる工程である。本工程を行うことにより、ポリマー層中に付着される銅イオンの安定性が向上し、後述するめっき工程においてその触媒能が十分に発揮される。
【0090】
本工程で使用されるアルカリ水溶液はアルカリ性を示せば、そのpHは特に制限されないが、めっき工程でのめっき析出性などがより優れる点から、pH8〜14が好ましく、pH10〜13がより好ましい。
【0091】
アルカリ水溶液に加えられるアルカリ成分は特に制限されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウムなどが挙げられる。
これらの成分の濃度は特に制限されず、アルカリ水溶液が上記pHとなるように適宜調整されることが好ましい。
【0092】
工程(2)で得られたポリマー層とアルカリ水溶液との接触方法は、特に限定されず、例えば、ディップ浸漬、スプレー塗布、スピンコートなどが挙げられ、処理の簡便さ、処理時間の調整の容易さから、ディップ浸漬、スプレー塗布が好ましい。
【0093】
また、接触の際のアルカリ水溶液の液温としては、5℃〜80℃の範囲が好ましく、15℃〜60℃の範囲がより好ましい。
また、接触時間としては、5秒〜120分の範囲が好ましく、15秒〜60分の範囲がより好ましく、30秒〜30分の範囲が更に好ましい。
【0094】
<工程(4):めっき工程>
工程(4)は、工程(3)で得られたポリマー層に対して少なくとも銅めっきを行い、銅含有めっき膜を得る工程である。より具体的には、図1(C)に示すように、本工程においては、銅含有めっき膜16が、ポリマー層14上に形成される。形成された銅含有めっき膜は、金属配線などとして機能し、優れた導電性、密着性を有する。
【0095】
本工程において行われる銅めっきの種類は特に限定されず、無電解銅めっき、電気銅めっき等が挙げられる。また、所望の膜厚の銅含有めっき膜を得るために、無電解銅めっきの後に、更に電解銅めっきを行う等の複数の方法を適宜選択して用いることができる。
以下、本工程において好適に行われるめっき処理について説明する。
【0096】
(無電解銅めっき)
無電解銅めっきとは、銅イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属銅を析出させることをいう。
無電解銅めっきの方法としては、公知の方法を実施することができる。なかでも、工程(3)で得られたポリマー層を無電解銅めっき浴に浸漬して行なうことが好ましい。
使用される無電解銅めっき浴としては一般的に知られている無電解銅めっき浴を使用することができる。
【0097】
一般的な無電解銅めっき浴組成は、溶剤の他に、1.銅イオン、2.還元剤、3.銅イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が含まれることが好ましい。
めっき浴に用いられる溶剤としては主に、水が挙げられる。また、必要に応じて、有機溶剤も使用することができ、水に可溶な有機溶剤であることが好ましい。なかでも、水溶性の有機溶剤として、アセトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類が挙げられる。
【0098】
銅イオン源としては公知の銅含有化合物を使用することができ、例えば、上記で列挙しためっき触媒液に添加される銅含有化合物などが挙げられる。なかでも、硫酸銅、塩化銅、硝酸銅等を用いることが好ましく、その含有量は銅イオンとして0.1〜50g/L程度とすることが好ましい。
還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボランのようなホウ素系還元剤、ホルムアルデヒド、次亜リン酸などが挙げられる。
安定化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)が挙げられる。
【0099】
無電解銅めっき浴としては、例えば、銅塩としてCuSO4、還元剤としてHCOH、添加剤として銅イオンの安定剤であるEDTAやロッシェル塩などのキレート剤、トリアルカノールアミンなどを含むめっき浴が挙げられる。
また、めっき液は、市販品を用いてもよく、例えば、上村工業(株)製:スルカップPGT、奥野製薬(株)製:ATSアドカッパーIW、などが挙げられる。
【0100】
無電解銅めっきを行う場合のポリマー層と無電解銅めっき浴との接触時間は、1分〜6時間程度であることが好ましく、1分〜3時間程度であることがより好ましい。めっき浴の温度は特に制限されないが、5℃〜80℃程度の範囲が好ましく、15℃〜60℃程度の範囲であることがより好ましい。
形成される無電解銅めっきによる銅めっき膜の膜厚は、めっき浴の銅イオン濃度、めっき浴への浸漬時間、或いは、めっき浴の温度などにより適宜制御することができる。次の工程で電気めっきを行う場合は、導電性が発現すればよく、0.1μm〜3μmであることが好ましい。
【0101】
以上のようにして得られた無電解銅めっきによる銅めっき膜は、走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察により、ポリマー層中に銅からなる微粒子が高密度で分散していること、また更にポリマー層上に銅が析出していることが確認される。
ポリマー層と銅めっき膜との界面は、樹脂複合体と微粒子とのハイブリッド状態であるため、ポリマー層と銅めっき膜との界面が平滑(例えば、1mm2の領域でRaが1.5μm以下)であっても、密着性が良好となる。
【0102】
(電解銅めっき)
本工程おいては、電解銅めっきを行うこともできる。
また、上述した無電解銅めっきの後、形成された銅めっき膜を電極(給電層)とし、更に、電解銅めっきを行ってもよい。これにより基板との密着性に優れた無電解銅めっき膜をベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつ銅めっき膜を容易に形成することができる。
電解銅めっきの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。また、使用されるめっき浴も、公知のめっき浴を使用することができる。
【0103】
また、電解銅めっきにより得られる銅めっき膜の膜厚については、用途に応じて異なるものであり、めっき浴中に含まれる銅イオン濃度、または、電流密度などを調整することで制御することができる。
なお、一般的な電気配線などに用いる場合の膜厚は、導電性の観点から、0.5〜50μmであることが好ましく、3〜30μmであることがより好ましい。
【0104】
なお、上記無電解銅めっきおよび/または電解銅めっき以外にも、必要に応じて、他の金属(例えば、銀、パラジウムなど)を使用した無電解めっき、または電解めっきをポリマー層に対してさらに施してもよい。
本工程で得られる銅含有めっき膜には、本発明の効果を損なわない範囲で、銅以外の他の金属(例えば、銀など)が含まれていてもよいが、エッチング特性が優れる点で、銅がめっき膜中に体積比で20%以上含まれることが好ましく、体積比で40%以上含まれることがより好ましく、特に、実質的に銅以外の金属を含まないことがより好ましい。
【0105】
<工程(5):パターン形成工程>
工程(5)は、上記めっき工程で得られた銅含有めっき膜をパターン状にエッチングして、パターン状銅含有めっき膜を形成する工程である。より具体的には、図1(D)に示すように、本工程においては、銅含有めっき膜16の不要部を除去することにより、パターン状の銅含有めっき膜18が、ポリマー層14上に形成される。本工程によって、基板表面全体に形成された銅含有めっき膜の不要部分をエッチングで取り除くことで、所望のパターン状の銅含有めっき膜を生成することができる。
このパターンの形成には、如何なる手法も使用することができ、具体的には一般的に知られているサブトラクティブ法(銅含有めっき膜上にパターン状のマスクを設け、マスクの非形成領域をエッチング処理した後、マスクを除去して、パターン状の銅含有めっき膜を形成する方法)、セミアディティブ法(銅含有めっき膜上にパターン状のマスクを設け、マスクの非形成領域に銅含有めっき膜を形成するようにめっき処理を行い、マスクを除去し、エッチング処理して、パターン状の銅含有めっき膜を形成する方法)が用いられる。
【0106】
サブトラクティブ法とは、具体的には、形成された銅含有めっき膜上にレジスト層を設けパターン露光、現像により銅含有めっき膜パターン部と同じパターンを形成し、レジストパターンをマスクとしてエッチング液で銅含有めっき膜を除去し、パターン状の銅含有めっき膜を形成する方法である。
レジストとしては如何なる材料も使用でき、ネガ型、ポジ型、液状、フィルム状のものが使用できる。また、エッチング方法としては、プリント配線基板の製造時に使用されている方法が何れも使用可能であり、湿式エッチング、ドライエッチング等が使用可能であり、任意に選択すればよい。作業の操作上、湿式エッチングが装置などの簡便性の点で好ましい。エッチング液として、例えば、塩化第二銅、塩化第二鉄等の水溶液を使用することができる。
【0107】
より具体的に、図2にサブトラクティブ法を用いたエッチング工程の態様を示す。
まず、上記工程(4)のめっき工程を行うことにより、図2(A)に示す、基板10と、絶縁性樹脂層22と、密着補助層12と、ポリマー層14と、銅含有めっき膜16とを備える積層体を用意する。なお、図2(A)においては、基板10表面上およびその内部に、金属配線20を備えている。絶縁性樹脂層22、密着補助層12、金属配線20は、必要に応じて追加される構成部材である。また、図2(A)においては、基板10の片面に銅含有めっき膜16が設けられているが、両面にあってもよい。
次に、図2(B)に示すように、パターン状のマスク24を銅含有めっき膜16上に設ける。
その後、図2(C)に示すように、マスクが設けられていない領域の銅含有めっき膜16を、エッチング処理(例えば、ドライエッチング、ウェットエッチング)により除去して、パターン状の銅含有めっき膜18を得る。最後に、マスク24を取り除き、本発明の積層体を得る。
【0108】
セミアディティブ法とは、具体的には、形成された銅含有めっき膜上にレジスト層を設け、パターン露光、現像により非銅めっきパターン部と同じパターンを形成し、レジストパターンをマスクとして電解銅めっきを行い、レジストパターンを除去した後にクイックエッチングを実施し、銅含有めっき膜をパターン状に除去することで、パターン状の銅含有めっき膜を形成する方法である。
レジスト、エッチング液等はサブトラクティブ法と同様な材料が使用できる。また、電解めっき手法としては上記記載の手法が使用できる。
【0109】
より具体的に、図3にセミアディティブ法を用いたエッチング工程の態様を示す。
まず、図3(A)に示す、基板10と、絶縁層22と、密着補助層12と、ポリマー層14と、銅含有めっき膜16とを備える積層体を用意する。
次に、図3(B)に示すように、パターン状のマスク24を銅含有めっき膜16上に設ける。
次に、図3(C)に示すように、電解めっきを行い、マスク24が設けられていない領域にめっき膜を形成させ、銅含有めっき膜16bを得る。
その後、図3(D)に示すように、マスクを取り除き、エッチング処理(例えば、ドライエッチング、ウェットエッチング)を行い、図3(E)に示すようにパターン状の銅含有めっき膜16を備える積層体を得る。
【0110】
なお、銅含有めっき膜の除去と同時に、公知の手段(例えば、ドライエッチング)などによって、ポリマー層も合わせて除去してもよい。
【0111】
さらに、セミアディティブ法によりエッチング工程を実施する場合は、図4に示すように多層配線基板を得るために該工程を実施してもよい。
図4(A)に示すように、まず、基板10と、絶縁性樹脂層22と、密着補助層12と、ポリマー層14と、銅含有めっき膜16とを備える積層体を用意する。
次に、図4(B)に示すように、レーザ加工またはドリル加工により、銅含有めっき膜16、ポリマー層14、密着補助層12、絶縁性樹脂層22を貫通し、金属配線20に達するようにビアホールを形成する。必要に応じて、その後デスミア処理を行う。
さらに、図4(C)に示すように、形成されたビアホール壁面に対して、めっき触媒を付与して、無電解めっきおよび/または電解めっきを行い、金属配線20と接触する金属膜26を得る。
さらに、図4(D)に示すように、所定のパターン状のマスク24を金属膜26上に設け、電解めっきを行い、金属膜28を得る(図4(E)参照)。
その後、マスク24を除去した後(図4(F)参照)、エッチング処理(例えば、ドライエッチング、ウェットエッチング)を行い、パターン状の金属膜30を得る(図4(G)参照)。その後、必要に応じて、プラズマ処理などによって、ポリマー層14および密着補助層12を除去してもよい。
【0112】
<任意の工程(その1):還元工程>
上記第1のアルカリ水溶液接触工程(工程(3))の後で上記めっき工程(工程(4))前に、必要に応じて、銅イオンが付与されたポリマー層と還元液とを接触させる還元工程を実施してもよい。本工程が実施されることにより、めっき工程における銅含有めっき膜の析出性が向上し、所望の銅含有めっき膜を得ることができると共に、エッチング特性などもより向上する。
【0113】
本工程で使用される還元液は、ポリマー中に付与された銅イオンを還元できる溶液であれば、その組成は特に制限されない。通常、還元液には、還元剤が含まれる。
還元剤としては、種々公知の還元剤を使用することができる。なかでも、水溶液への溶解性の観点から、還元剤としては、還元作用を有する水溶性化合物が好ましい。
還元剤としては、例えば、水素、一酸化炭素、ヒドラジン、アミンボラン類(ジメチルアミンボラン(DMAB)、トリメチルアミンボラン(TMAB)等)、亜硫酸塩、ロッシェル塩、ホウ素化合物、有機ホウ素化合物、水素化ホウ素化合物(水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素ナトリウム等)、亜燐酸塩、次亜リン酸塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)、アルデヒド類(ホルマリン等)、ホスフィン酸塩(ヒドラジン、ホスフィン酸ナトリウム等)、ハイドロキノン、糖類及び有機酸類などを挙げることができる。これに限定されるものではなく、アミンボラン類やアルデヒド類が好ましく、中でもジメチルアミンボラン(DMAB)やホルマリンが好ましい。
還元剤は、一種単独または二種以上混合して用いることができる。
【0114】
還元液中における還元剤の濃度は、ポリマー層中の銅イオン量に対して過剰量で接触させるのが好ましいが、0.001〜0.5mol/L程度とすることが好ましく、0.01〜0.2mol/L程度とすることがより好ましい。
還元液は溶媒を含んでいてもよく、例えば、水や、1-メトキシ-2-プロパノールなどのアルコール類や、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのグリコール類などが挙げられる。
還元液のpHは特に制限されず、使用する還元剤の種類に応じて、還元性能が良好で還元剤の安定性が阻害されない範囲に適宜設定すればよい。通常は、pH3程度以上とすることが好ましい。
【0115】
還元液とポリマー層とを接触させる方法については特に限定はなく、ポリマー層上に還元液を塗布する方法や、ポリマー層を備える基板を還元液中に浸漬する方法などが挙げられる。
接触時間は特に限定されず、生産性の観点から、5秒〜120分が好ましく、30秒〜30分がより好ましい。
また、接触時の還元液の温度は特に限定されず、還元反応の進行のしやすさの点から、5〜80℃が好ましく、15〜60℃がより好ましい。
【0116】
<任意の工程(その2):第2のアルカリ水溶液接触工程>
上記還元工程の後で上記めっき工程の前に、還元処理が施されたポリマー層とアルカリ水溶液とを接触させる第2のアルカリ水溶液接触工程を設けることが好ましい。本工程が実施されることにより、還元工程で生じた不純物をポリマー層から除去することができると共に、後述するめっき工程でのめっき析出がより効率的に進行し、エッチング特性などもより向上する。
【0117】
使用されるアルカリ水溶液は、上述した第1のアルカリ水溶液接触工程で使用されるアルカリ水溶液と同じである。
なお、本工程で使用されるアルカリ水溶液には、還元剤が含まれていてもよく、特に、めっき工程で使用される還元剤が含まれていてもよい。還元剤が含まれることにより、めっき工程におけるめっき析出性がより効果的に進行し、エッチング特性などもより向上する。
含有される還元剤は、上記還元工程で使用される還元剤などが挙げられる。
また、含有される還元剤の好適量は、上記還元工程で使用される還元液中の還元剤の範囲と同じである。
【0118】
また、本工程におけるポリマー層とアルカリ水溶液の接触方法および接触条件などは、上記第1のアルカリ水溶液接触工程と同じ方法および条件で実施することができる。
【0119】
<積層体>
上記工程を実施することによって、基板と、ポリマー層と、パターン状銅含有めっき膜とをこの順に備える積層体を得ることができる。
本発明に係る積層体は、表面粗さRzが5nm〜500nm(より好ましくは100nm以下)の基板上に、銅含有めっき膜を設けたものであることが好ましい。また、基板と銅含有めっき膜との密着性が碁盤の目試験で100目中10目以下であることが好ましく、特に0目であることが好ましい。即ち、基板表面が平滑でありながら、基板と銅含有めっき膜との密着性に優れることを特徴とする。
【0120】
得られた積層体は、様々な分野において使用することができ、例えば、電気・電子・通信、農林水産、鉱業、建設、食品、繊維、衣類、医療、石炭、石油、ゴム、皮革、自動車、精密機器、木材、建材、土木、家具、印刷、楽器等の幅広い産業分野に使用することができる。
より具体的には、プリンター、パソコン、ワープロ、キーボード、PDA(小型情報端末機)、電話機、複写機、ファクシミリ、ECR(電子式金銭登録機)、電卓、電子手帳、カード、ホルダー、文具等の事務機器、OA機器、洗濯機、冷蔵庫、掃除機、電子レンジ、照明器具、ゲーム機、アイロン、コタツ等の家電機器、TV、VTR、ビデオカメラ、ラジカセ、テープレコーダー、ミニディスク、CDプレーヤー、スピーカー、液晶ディスプレー等のAV機器、コネクター、リレー、コンデンサー、スイッチ、プリント基板、コイルボビン、半導体封止材料、LED封止材料、電線、ケーブル、トランス、偏向ヨーク、分電盤、半導体チップ、各種電気配線板、FPC、COF、TAB、2層CCL(Copper Clad Laminate)材料、電気配線用材料、多層配線基板、マザーボード、アンテナ、電磁波防止膜、時計等の電気・電子部品、および、通信機器等の用途に用いられる。
【0121】
特に、銅含有めっき膜とポリマー層との界面における平滑性が改良されたことから、例えば、装飾品(めがねフレーム、自動車装飾品、宝飾品、遊戯筐体、洋食器、水道金具、照明器具等)や、高周伝送を確保する必要がある用途等の種々の用途に適用することができる。
【実施例】
【0122】
以下、実施例により、本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0123】
以下に、本実施例で使用するポリマーの合成方法について詳述する。
(合成例1:ポリマーA)
2Lの三口フラスコに酢酸エチル1L、2−アミノエタノール159gを入れ、氷浴にて冷却をした。そこへ、2−ブロモイソ酪酸ブロミド150gを内温20℃以下になるように調節して滴下した。その後、内温を室温(25℃)まで上昇させて2時間反応させた。反応終了後、蒸留水300mLを追加して反応を停止させた。その後、酢酸エチル層を蒸留水300mLで4回洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、さらに酢酸エチルを留去することで原料Aを80g得た。
次に、500mLの三口フラスコに、原料A47.4g、ピリジン22g、酢酸エチル150mLを入れて氷浴にて冷却した。そこへ、アクリル酸クロライド25gを内温20℃以下になるように調節して滴下した。その後、室温に上げて3時間反応させた。反応終了後、蒸留水300mLを追加し、反応を停止させた。その後、酢酸エチル層を蒸留水300mLで4回洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、さらに酢酸エチルを留去した。その後、カラムクロマトグラフィーにて、以下のモノマーMを精製し20g得た。
【0124】
【化9】

【0125】
500mLの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド8gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、モノマーM:14.3g、アクリロニトリル(東京化成工業(株)製)3.0g、アクリル酸(東京化成製)6.5g、V−65(和光純薬製)0.4gのN,N−ジメチルアセトアミド8g溶液を、4時間かけて滴下した。
滴下終了後、更に反応溶液を3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド41gを追加し、室温まで反応溶液を冷却した。上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成製)0.09g、DBU54.8gを加え、室温で12時間反応を行った。その後、反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液54g加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、ポリマーA(重量平均分子量3.4万)(Mw/Mn=1.8)を12g得た。得られたポリマーAの酸価を、電位差自動滴定装置(京都電子工業(株)製)、および滴定液として0.1M水酸化ナトリウム水溶液を用いて測定したところ、このポリマーAの酸価は3.9mmol/gであった。
【0126】
得られたポリマーAの同定をIR測定機((株)堀場製作所製)を用いて行った。測定はポリマーをアセトンに溶解させKBr結晶を用いて行った。IR測定の結果、2240cm-1付近にピークが観測されニトリルユニットであるアクリロニトリルがポリマーに導入されている事が分かった。また、酸価測定によりカルボン酸ユニットとしてアクリル酸が導入されている事が分かった。また、重DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解させ、ブルカー製300MHzのNMR(AV−300)にて測定を行った。ニトリル基含有ユニットに相当するピークが2.5−0.7ppm(5H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニットに相当するピークが7.8−8.1ppm(1H分)、5.8−5.6ppm(1H分)、5.4−5.2ppm(1H分)、4.2−3.9ppm(2H分)、3.3−3.5ppm(2H分)、2.5−0.7ppm(6H分)にブロードに観察され、カルボン酸含有ユニットに相当するピークが2.5−0.7ppm(3H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニット:ニトリル基含有ユニット:カルボン酸基ユニット=30:30:40(mol%)であることが分かった。
【0127】
【化10】

【0128】
(合成例2:ポリマーB)
1000mlの三口フラスコに、N−メチルピロリドン35gを入れ、窒素気流下、75℃まで加熱した。そこへ、2−ヒドロキシエチルアクリレート(市販品、東京化成製)6.60g、2−シアノエチルアクリレート28.4g、およびV−601(和光純薬製)0.65gのN−メチルピロリドン35g溶液を、2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、反応溶液を80℃まで加熱し、更に3時間撹拌した。その後、室温まで、反応溶液を冷却した。
上記の反応溶液に、ジターシャリーブチルハイドロキノン0.29g、ジブチルチンジラウレート0.29g、カレンズAOI(昭和電工(株)製)18.56g、及びN−メチルピロリドン19gを加え、55℃、6時間反応を行った。その後、反応液にメタノールを3.6g加え、更に1.5時間反応を行った。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、ポリマーBを25g得た。
【0129】
(構造の同定)
ポリマーBを重DMSOに溶解させ、ブルカー製300MHzのNMR(AV−300)にて測定を行った。ニトリル基含有ユニットに相当するピークが4.3−4.05ppm(2H分)、2.9−2.8ppm(2H分)、2.5−1.3ppm(3H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニットに相当するピークが7.2−7.3ppm(1H分)、6.4−6.3ppm(1H分)、6.2−6.1ppm(1H分)、6.0−5.9ppm(1H分)、4.3−4.05ppm(6H分)、3.3−3.2ppm(2H分)、2.5−1.3ppm(3H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニット:ニトリル基含有ユニット=20:80(mol%)であることが分かった。
【0130】
(分子量の測定)
ポリマーBを、THFに溶解させ、東ソー製高速GPC(HLC−8220GPC)を用いて分子量の測定を行った。その結果、23.75分にピークが現れ、ポリスチレン換算でMw=53000(Mw/Mn=1.9)であることが分かった。
なお、以下のポリマーBの化学式中の数値は、各ユニットのモル%を表す。
【0131】
【化11】

【0132】
<実施例1>
〔基板の作製〕
基板としてはガラスエポキシ基板(日立化成(株)製MCL-E679W)を用い、表1に記載のような表面粗さ(Rz)となるように研磨を施し、水とアルコールを用いて洗浄した。
その後、後述する組成の塗布液(J−1)を用いて乾燥後の膜厚が2μmとなるように、スピンコート法により塗布、乾燥して、密着補助層を設けた。なお、表1に示すように、所定の温度で熱硬化させた。
【0133】
[ポリマー層の形成]
その後、後述する組成の塗布液Aをスピンコート法により塗布し、254nmでUV露光を全面に行なった。その後、1%重曹水で洗浄した。
これにより、基板上の密着補助層と直接結合したポリマー層(厚み:0.3μm)を得た。
【0134】
[触媒の付与]
上記で得られたポリマー層を有する基板を、表1に記載のめっき触媒液に浸漬した(浸漬時間:10分間、液温度:40℃)。次に、ポリマー層中のpH低下を防ぐために、1mol/LのNaOH水溶液(pH14)中でポリマー層表面を軽く濯ぎ、次いで、表1に記載の還元液にポリマー層を浸漬した。その後、40mmol/LのNaOHと2.2重量%のホルマリンとを含むアルカリ水溶液(pH12)(無電解銅めっき液の還元成分を含む還元剤に該当)中でポリマー層から余剰の上記還元液の除去するように濯ぎ、ポリマー層に触媒を付与した。
なお、ポリマー層への触媒付着量は、サンプルを別に作製し、マス分析にて定量した。
【0135】
〔めっき〕
次に、触媒が付与されたポリマー層に対して、無電解銅めっきを行った。無電解めっきはスルカップPGT(上村工業製)を使用した下記組成の無電解めっき浴を用い、浴温度30℃にてポリマー層を浸漬させ、めっき析出厚みが0.6μmとなるように銅めっき膜を形成した。
無電解めっき液の調液順序及び原料は以下の通りである。
蒸留水 約60容量%
PGT−A 9.0容量%
PGT−B 6.0容量%
PGT−C 3.5容量%
ホルマリン液* 2.3容量%
最後に、全量が100容量%となるように蒸留水にて液面調整した。
*ここで用いたホルマリンは、和光純薬のホルムアルデヒド液(特級)である。
次に、以下の組成の電解銅めっき浴を用いて銅厚が20μmとなるように電解銅めっき(0.6A/dm2:15分間、3A/dm2:35分間)を施し、導電層を有する積層体を得た。
(電解銅めっき浴の組成)
・水 1000重量部
・硫酸銅5水和物 110重量部
・98%硫酸 270重量部
・35%塩酸 0.2重量部
・メルテックス製、カパーグリーム ST−901M 30重量部
【0136】
<評価:密着性>
得られためっき膜を碁盤目剥離試験(JIS−K5600−5−6:1999)にて、100マス剥離試験を行なった。結果を表1に記載する。
【0137】
[エッチング]
電解銅めっきを施した基板に対し180℃/1時間の熱処理を行なった後、該基板の表面に、ドライレジストフィルム(日立化成(株)製;RY3315、膜厚15μm)を真空ラミネーター((株)名機製作所製:MVLP−600)で70℃、0.2MPaでラミネートした。次いで、ドライレジストフィルムがラミネートされた基板に、JPCA−ET01に定める櫛型配線(JPCA−BU01−2007準拠)が形成できるガラスマスクを密着させ、レジストを中心波長405nmの露光機にて70mJの光エネルギーを照射した。露光後の基板に、1%Na2CO3水溶液を0.2MPaのスプレー圧で噴きつけ、現像を行なった。その後、基板の水洗・乾燥を行い、銅めっき膜上に、サブトラクティブ法用のレジストパターンを形成した。
レジストパターンを形成した基板を、FeCl3/HCl水溶液(エッチング液)に温度40℃で浸漬することによりエッチングを行い、レジストパターンの非形成領域に存在する銅めっき膜を除去した。その後、3%NaOH水溶液を0.2MPaのスプレー圧で基板上に噴き付けることで、レジストパターンを膨潤剥離し、10%硫酸水溶液で中和処理を行い、水洗することで櫛型配線(パターン状銅めっき膜)を得た。得られた配線は、L/S=20μm/75μmであった。
【0138】
<評価:エッチング特性(微細配線形成性)>
エッチング工程で得られたパターン状銅めっき膜を顕微鏡で観察し、配線の断線や、細り、太り、うねりといった欠陥が観察される場合を「×」とし、欠陥が観察されず配線の直線性が優れる場合を「○」として評価した。得られた結果を、「微細配線形成性」として表1に記載する。
なお、配線の細りとは、設計値の2/3以下に配線が細くなっていることを意味し、配線の太りとは、設計値の4/3以上に配線が太くなっていることが意味し、配線のうねりとは、設計した配線幅の1.1倍の幅領域を超えて、配線が蛇行していることを意味する。
【0139】
<評価:エッチング特性(金属残渣除去性)>
上記めっき工程で得られた銅めっき膜を市販の塩化第二鉄液(鶴見曹達(株)製、40°Be´)により全面エッチングして、エッチングされた部分の触媒残渣を観察した。具体的には、銅めっき膜を、上記液中(液温:40℃)で、ミカサ(株)製エッチング装置ED−1200を用いて2分間処理して、エッチングを行った。
エッチング後の基板表面の色味が元の基板と同じ場合を金属(銅)がほぼ除去されたとして「○」、若干の色味変化が判る場合を「△」、明らかに褐色や黒色等に着色した場合を「×」とした。得られた結果を、「金属残渣除去性」として結果を表1に記載する。
【0140】
<実施例2〜14>
実施例1と同様の手順で、使用する密着補助層形成用の塗布液(J−1〜J−4、およびK)、ポリマー層形成用の塗布液(A〜C)、触媒液(S−1〜S−4)、および還元液(Z−1〜Z−3)、並びに、基板の平滑性を表1に記載のように変更して、パターン状銅めっき膜を作製した。また、実施例1と同様の評価を行い、その結果も合わせて表1に示す。
【0141】
<比較例1>
触媒の付与において、めっき触媒液S−1の代わりに1重量%硝酸銀水溶液を使用した以外は、実施例1と同様の手順により、パターン状銅めっき膜を作製した。評価結果を表1に示す。
【0142】
<比較例2>
触媒の付与において、めっき触媒液S−1の代わりに市販のパラジウム塩からなるアルカップアクチベータMAT−2−A(上村工業株式会社製)を使用した以外は、実施例1と同様の手順により、パターン状銅めっき膜を作製した。評価結果を表1に示す。
【0143】
<比較例3>
実施例1で実施した[触媒の付与]の代わりに、以下に記載の市販液の標準方法による触媒の付与を実施した以外は、実施例1と同様の手順により、パターン状銅めっき膜を作製した。評価結果を表1に示す。
【0144】
(市販液の標準方法)
上記で得られたポリマー層を有する基板を、スルカップACL-009(温度:50℃、浸漬時間:5分)に浸漬し、その後水洗した。さらに、その後、基板をアルカップアクチベータMAT−2(上村工業株式会社製)に浸漬(温度:60℃、浸漬時間:5分)し、水洗した。さらに、その後、基板をアルカップ レデューサーMAB(上村工業株式会社製)に浸漬(温度:35℃、浸漬時間:3分)し、水洗した。さらに、その後、基板をアルカップ アクセレレーターMEL-3-A(上村工業株式会社製)に浸漬(温度:26℃、浸漬時間:1分)した。
なお、アクチベータをアクチベータMAT−31(上村工業株式会社製)を用いても、同様な結果が得られた。
【0145】
<比較例4〜6>
触媒の付与において、めっき触媒液S−1の代わりに市販のパラジウム塩からなるアルカップアクチベータMAT−2−A(上村工業株式会社製)を使用し、密着補助層の作製に使用される塗布液(J−1)の代わりに塗布液(J−2)〜(J−4)をそれぞれ使用した以外は、実施例1と同様の手順により、パターン状銅めっき膜を作製した。評価結果を表1に示す。
【0146】
<比較例7>
密着補助層を使用せず、触媒の付与において、めっき触媒液S−1の代わりに市販のコロイダル錫パラジウム触媒のプレディップ液(上村工業(株)製スルカップPED-104)、および市販のコロイダル錫パラジウム触媒(上村工業(株)製スルカップAT-105)および市販の活性処理液(上村工業(株)製スルカップAL-106)を使用した以外は、実施例1と同様の手順により、パターン状銅めっき膜を作製した。
【0147】
<比較例8>
基板の平滑性を変更した以外は、比較例7と同様の手順により、パターン状銅めっき膜を作製した。評価結果を表1に示す。
【0148】
<比較例9>
塗布液(J−1)の代わりに塗布液(J−2)を使用し、めっき触媒液(S−1)の代わりに後述する方法により作製した金属銅コロイダルを使用した以外は、実施例1と同様の手順により、パターン状銅めっき膜を作製した。評価結果を表1に示す。
【0149】
(金属銅コロイダル)
ゼラチン30gを700mlの純水に添加し、液温約60℃で溶解させ、次いで、硫酸銅5水和物50g、および、ポリエチレングリコール(平均分子量2万)10g添加し、溶解させた。
次に、α,α−ジピリジルを20mg添加し、溶解させた後、濃度100g/lのジメチルアミンボラン水溶液を120ml添加し、液温60℃で銅イオンを金属銅に還元した。更に、液温75℃で約1時間熟成した後、液温を室温まで冷却し、純水を加えて水溶液の容量を1リットルとした。
この液を100ml採取し、純水を約800ml加えて希釈し、水酸化ナトリウム水溶液で希釈液のpHを6に調整し、次いで、純水を加えて希釈液の全量を1リットルとし、金属銅コロイダルを作製した。
【0150】
<比較例10>
塗布液(J−1)の代わりに塗布液(J−2)を使用し、めっき触媒液(S−1)の代わりに市販の銅ナノパウダー(粒径20〜40nm)(Copper nanopowder、和光純薬045504、Alfa Aesar製)を使用した以外は、実施例1と同様の手順により、パターン状銅めっき膜を作製した。評価結果を表1に示す。
【0151】
<比較例11>
めっき触媒液(S−1)の代わりにめっき触媒液(S−5)を使用した以外は、実施例1と同様の手順により、パターン状銅めっき膜を作製した。評価結果を表1に示す。
【0152】
<比較例12>
めっき触媒液(S−1)の代わりにめっき触媒液(S−6)を使用した以外は、実施例1と同様の手順により、パターン状銅めっき膜を作製した。評価結果を表1に示す。
【0153】
<比較例13>
めっき触媒液(S−1)の代わりにめっき触媒液(S−7)を使用した以外は、実施例1と同様の手順により、パターン状銅めっき膜を作製した。評価結果を表1に示す。
【0154】
<比較例14>
めっき触媒液(S−1)の代わりにめっき触媒液(S−8)を使用した以外は、実施例1と同様の手順により、パターン状銅めっき膜を作製した。評価結果を表1に示す。
【0155】
なお、表1中の基板表面粗さは、レーザー顕微鏡(キーエンス社製)を用いて測定した、JIS B 0601(1994年)、10点平均高さ法で測定した表面粗さRzである。
【0156】
【表1】

【0157】
<密着補助層用塗布液>
(塗布液(J−1)組成)
・シクロヘキサノン 52重量部
・エポキシ樹脂ビスF液状タイプJER806、三菱化学製 15重量部
・フェノキシ樹脂YP-50EK30、新日鐵化学製 30重量部
・ノボラック樹脂 PHENOLITE LA-7052、DIC製 3重量部
・2−エチル−4−メチルイミダゾール 0.2重量部
【0158】
(塗布液(J−2)組成)
・シクロペンタノン 67重量部
・メチルエチルケトン 5重量部
・エポキシ樹脂ビスF液状タイプJER806、三菱化学製 15重量部
・フェノキシ樹脂YP-50、新日鐵化学製 10重量部
・ノボラック樹脂 PHENOLITE LA-7052、DIC製 3重量部
・2−エチル−4−メチルイミダゾール 0.2重量部
【0159】
(塗布液(J−3)組成)
・シクロペンタノン 72重量部
・エポキシ樹脂ビスF液状タイプJER806、三菱化学製 15重量部
・フェノキシ樹脂YP-50、新日鐵化学製 10重量部
・クレゾールノボラック樹脂、レヂトップPS-6937、群栄化学工業製 3重量部
・2−エチル−4−メチルイミダゾール 0.2重量部
【0160】
(塗布液(J−4)組成)
・シクロペンタノン 72重量部
・エポキシ樹脂ビスF液状タイプJER806、三菱化学製 15重量部
・フェノキシ樹脂YP-50、新日鐵化学製 10重量部
・ノボラック樹脂 PHENOLITE LA-3018-50P、DIC製 3重量部
・2−エチル−4−メチルイミダゾール 0.2重量部
【0161】
(塗布液(K)組成)
・日本ゼオン(株)製Nipol1561、固形分濃度40.5質量%の水分散液
【0162】
<ポリマー層用塗布液>
(塗布液Aの組成)
・1−メトキシ−2−プロパノール 75重量部
・水 20重量部
・ポリマーA 5重量部
【0163】
(塗布液Bの組成)
・アセトニトリル 95重量部
・ポリマーB 5重量部
【0164】
(塗布液Cの組成)
・1−メトキシ−2−プロパノール 75重量部
・水 20重量部
・ポリマーA 5重量部
・イルガキュア907、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製 1重量部
【0165】
<めっき触媒液>
(めっき触媒液S−1の組成)
・水 100重量部
・酢酸銅(II) 2重量部
なお、めっき触媒液S−1のpHは5.6であった。
【0166】
(めっき触媒液S−2の組成)
・水 100重量部
・酢酸銅(II) 2重量部
・硝酸銀 0.2重量部
なお、めっき触媒液S−2のpHは4.2であった。
【0167】
(めっき触媒液S−3の組成)
・水 100重量部
・酢酸銅(II) 2重量部
・酢酸パラジウム 0.05重量部
なお、めっき触媒液S−3のpHは5.3であった。
【0168】
(めっき触媒液S−4の組成)
・水 100重量部
・酢酸銅(II) 2重量部
・硫酸銅(II) 1重量部
なお、めっき触媒液S−4のpHは3.2であった。
【0169】
(めっき触媒液S−5の組成)
・水 100重量部
・硫酸銅(II) 2重量部
なお、めっき触媒液S−5のpHは3.0であった。
【0170】
(めっき触媒液S−6の組成)
・水 100重量部
・塩化銅(II) 2重量部
なお、めっき触媒液S−6のpHは1.0であった。
【0171】
(めっき触媒液S−7の組成)
・水 100重量部
・硝酸銀 0.2重量部
【0172】
(めっき触媒液S−8の組成)
・水 100重量部
・酢酸パラジウム 0.05重量部
【0173】
<還元液>
(還元液Z−1の組成)
・水 100重量部
・ジメチルアミンボラン(略称DMAB) 1重量部
【0174】
(還元液Z−2の組成)
・水 100重量部
・1mol/L水酸化ナトリウム 5重量部
・ジメチルアミンボラン(略称DMAB) 0.5重量部
・ホルムアルデヒド 0.5重量部
【0175】
(還元液Z−3の組成)
・水 100重量部
・水素化ホウ素ナトリウム 1重量部
【0176】
表1に示すように、本発明の製造方法は銅めっき膜のエッチング特性に優れ、密着性に優れたパターン状銅めっき膜を得ることができた。
特に、めっき触媒液中にパラジウムイオンや銀イオンを含まないS−1を使用すると、より金属残渣が少ないことが確認された。
【0177】
一方、比較例1〜6、および13〜14に示すように、特許文献1の実施例で使用される硝酸銀またはパラジウム塩のみを使用しためっき触媒液では、めっき析出しないか、または、エッチング特性に劣っていた。
また、金属銅に該当する金属銅コロイダルまたは金属銅粉を含むめっき触媒液を使用した場合、得られる銅めっき膜の密着性が劣る、または、エッチング特性に劣っていた。
さらに、pHが所定の範囲でないめっき触媒液S−5およびS−6を使用した場合、めっき触媒がポリマー層に付着せず、めっきの析出が生じなかった。
【0178】
なお、上記実施例1ではポリマー層形成用の塗布液をスピンコート法により塗布したが、ディップコート法、スプレーコート法を使用しても、同様の評価結果が得られた。
また、上記実施例1ではめっき触媒液中にポリマー層を浸漬させていたが、めっき触媒液をスプレーコート、スピンコートしても、同様の評価結果が得られた。
さらに、実施例1ではポリマー層のエネルギー付与として露光を実施しているが、露光の代わりに、150℃、30分間の加熱により硬化を行った場合も、同様の結果が得られた。
【0179】
<実施例15>
エッチングにおけるL/Sを10μm/10μmに変更した以外は、実施例1と同様の手順により、パターン状銅めっき膜を作製した。得られたパターン状銅めっき膜は、実施例1と同様に、優れた密着性、エッチング特性(「微細配線形成性」「金属残渣除去性」)を示した。
【0180】
<実施例16>
実施例1におけるポリマー層形成時の全面露光の代わりに、レーザ照射によるパターン露光を行い、その後、1%重曹水で未露光部分を現像・除去して、パターン状のポリマー層を得た。得られたパターン状のポリマー層に対して、実施例1で行った「触媒の付与」、および「めっき」を行い、ポリマー層上に銅めっき膜を得た。さらに、その後、市販のドライフィルムレジストを使用して、得られたパターン状銅めっき膜の配線巾をエッチングにより調整した。そのときのエッチング特性は、実施例1と同様に優れていた。
また、上記ではレーザ照射によりパターン状のポリマー層の作製を行ったが、石英ガラス状に金属クロムを設けたマスクを使用した露光によりパターン形成を行った場合も、上記と同様に、優れたエッチング特性を示した。
【0181】
<実施例17>
実施例1で得られたパターン状銅めっき膜を基板として使用して、実施例1と同様の手順を実施し、多層配線構造を形成した。その際においても、表面に形成される銅めっき膜のエッチング特性は優れており、かつ、その密着性も優れていた。
【0182】
<実施例18>
導電層(銅箔)が予め形成されたガラスエポキシ基板上に、電気的絶縁層として味の素ファインテクノ社製エポキシ系絶縁膜GX−13(膜厚45μm)を、加熱、加圧して、真空ラミネーターにより0.2MPaの圧力で100〜110℃の条件により接着して、絶縁膜を形成した。
【0183】
次に、実施例1で行った、[ポリマー層の形成]、[触媒の付与]、〔めっき〕を順次行い、導電膜を備える積層体を得た。
【0184】
[ビアの形成]
次に、積層体に対して、UV−YAGレーザを用いて周波数5000HZでショット数200〜300の間、パルスエネルギー0.05〜0.12mJの間で調整し、ビアのトップ径60μmの導電層表面まで到達するビアホールを形成した。
【0185】
[デスミア処理]
デスミア処方としては、MLB211(ロームアンドハース電子材料株式会社製)を20容量%、キューポジットZを10容量%含有する膨潤浴に積層体を70℃で7分間浸漬した後、MLB213A(ロームアンドハース電子材料株式会社製)を10容量%とMLB213B(ロームアンドハース電子材料株式会社製)を15容量%含有するエッチング浴に80℃で10分間浸漬処理し、MLB216−2(ロームアンドハース電子材料株式会社製)を20容量%含有する中和浴に45℃で7分間浸漬することにより、ビアホールのデスミア処理を実施した。
【0186】
[触媒付与]
デスミア処理が施された積層体を比較例7と同様な触媒付与方法を用いて、ビアホール壁面に電解めっき触媒を付与した。
次に、めっき触媒が付与された積層体に対し、上村工業(株)製スルカップPGTを用い、下記組成の無電解めっき浴を用い、無電解めっき温度26℃で20分間、無電解めっきを行い、基板上の導電層とめっき膜を導通するように無電解銅めっき膜(厚み:0.3μm)を作製した。
無電解めっき液の調液順序及び原料は以下の通りである。
蒸留水 約60容量%
PGT−A 9.0容量%
PGT−B 6.0容量%
PGT−C 3.5容量%
ホルマリン液* 2.3容量%
最後に、全量が100容量%となるように蒸留水にて液面調整した。
*ここで用いたホルマリンは、和光純薬のホルムアルデヒド液(特級)である。
【0187】
[電解めっき用のめっきレジスト層の形成とパターニング]
1%硫酸水溶液にて銅表面を洗浄した後、温度110±10℃、圧力0.35±0.05Mpaにて、ドライフィルムレジスト(ALPHO NIT3025:ニチゴー・モートン(株)社製)をラミネートした。回路パターンの焼付けを、ガイド穴を基準として超高圧水銀ランプで120mJ/cm2にて紫外線を照射してパターン露光を実施した後、1%炭酸ナトリウム水溶液を用いて30℃にてスプレー圧0.15MPaにてドライフィルムレジストを現像してめっきレジストパターンを形成した。
【0188】
[電解めっき]
導電層、めっき膜、無電解銅めっき膜を給電層として、下記組成の電解銅めっき浴を用い、3A/dm2の条件で、電気めっきを45分間行った。
【0189】
(電解めっき浴の組成)
・硫酸銅 38g
・硫酸 95g
・塩酸 1mL
・カッパーグリームPCM(メルテックス(株)製) 3mL
・水 500g
【0190】
[レジストの剥離とエッチング]
4質量%水酸化ナトリウム水溶液をレジスト剥離液として用い、80℃にてスプレー圧0.2MPaにて100秒間表面に適用することでめっきレジストパターンを剥離除去処理した。その後、非回路パターン部分の下地導電層として使用した銅がなくなるように過水硫酸系のソフトエッチング液にて除去して、パターン状の導電膜を作製した(図4(G)参照)。
【符号の説明】
【0191】
10:基板
12:密着補助層
14:ポリマー層
16、16b:銅含有めっき膜
18:パターン状銅含有めっき膜
20:金属配線
22:絶縁性樹脂層
24:マスク
26、28:金属膜
30:パターン状金属膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、銅イオンと相互作用を形成する官能基、および、重合性基を有するポリマーを接触させた後、エネルギーを付与して、前記基板上にポリマー層を形成するポリマー層形成工程と、
銅イオンを含む、pH3.0超のめっき触媒液と前記ポリマー層とを接触させて、銅イオンをポリマー層に付与する触媒付与工程と、
銅イオンが付与されたポリマー層とアルカリ水溶液とを接触させる第1のアルカリ水溶液接触工程と、
前記第1のアルカリ水溶液接触工程後に、ポリマー層に対して少なくとも銅めっきを行い、銅含有めっき膜を得るめっき工程と、
前記めっき工程後に、前記銅含有めっき膜をパターン状にエッチングして、パターン状銅含有めっき膜を形成するパターン形成工程と、
を備える、パターン状銅含有めっき膜を有する積層体の製造方法。
【請求項2】
前記第1のアルカリ水溶液接触工程の後で前記めっき工程の前に、さらに、銅イオンが付与されたポリマー層と還元液とを接触させる還元工程を備える、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記還元工程後で前記めっき工程の前に、さらに、ポリマー層とアルカリ水溶液とを接触させる第2のアルカリ水溶液接触工程を備える、請求項2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の積層体の製造方法により得られる積層体。
【請求項5】
請求項4に記載の積層体を含むプリント配線板。
【請求項6】
請求項4に記載の積層体を含む回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−84640(P2012−84640A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228417(P2010−228417)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】