説明

積層体及びその製造に用いられる切削具

【課題】 不良品の発生率を低下させつつ曲面部の曲率半径が極めて小さな積層体を得ることができる積層体を提供する。
【解決手段】 本積層体50は、基材51の表面及び側面に化粧材52を積層してなる積層体であって、前記基材の角側には第1切欠部53が形成されており、前記化粧材の裏面側の該第1切欠部と対応する部位には円弧状部を有する第2切欠部54が形成されており、該化粧材が該第2切欠部の該円弧状部で折り曲げられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体及びその製造に用いられる切削具に関し、さらに詳しくは、不良品の発生率を低下させることができる曲面部の曲率半径が極めて小さな積層体及びその製造に用いられる切削具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、パーティクルボード製等の基材と、この基材の表面及び側面に積層されるメラミン樹脂製等の化粧材と、からなる積層体が知られている。この積層体は、各種カウンタ、扉、床、壁等の建材などとして広く利用されている。
上記積層体の製造方法としては、先ず、基材の表面及び側面を曲面加工した後サンディング仕上げを施し、次に、その基材の表面に化粧材を接着し、次いで、その化粧材を加熱しつつ折り曲げて基材の側面に接着する方法(「ポストフォーム加工」と称される。)が一般に知られている。
ところで、上記積層体は、その用途等によっては、曲面部の曲率半径が5mm以下の小さなものが要望されている。しかし、上記製造方法では、メラミン樹脂製等の化粧材に柔軟性がないため、その曲面部の曲率半径が約10mm程度に設定されており、上記要望に応じることができなかった。
【0003】
そこで、上記問題を解決するために、従来の積層体の製造方法として、先ず、基材の角側を切削して基材に第1切欠部を形成すると共に、化粧材の裏面側を切削して化粧材に第2切欠部を形成し、次に、化粧材を第2切欠部で折り曲げる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このように化粧材を薄肉化して折り曲げ易くすることによって、曲面部の曲率半径が2〜3mmである積層体を得ることができる。
【0004】
しかし、上記特許文献1では、基材及び化粧材を切削する切削具として、第1切削面(切欠き切削面9)と、この第1切削面に交差する第2切削面(薄肉切削面10)と、これら第1及び第2切削面を連絡する傾斜面と、を有する切削刃(カッター8)を備えるものを採用している(上記特許文献1の図6等参照)。従って、上記特許文献1では、化粧材の第2切欠部における折り曲がり部位に平面が交差する角部が形成されることとなり、その角部に応力が集中して化粧材が破損等してしまうため、現状では不良品の発生率が極めて高いものであった。特に、不良品として化粧材の表面に線状痕が残ってしまうことを防止するために、積層体の曲面部の曲率半径の大きさを変更する度に、折り曲げ工程での案内ローラや案内パッド等の配置を微調整するといった煩雑な作業が必要であった。さらに、基材の第1切欠部と化粧材の第2切欠部との間に接着剤を充填して、化粧材の折り曲げの際に接着剤に緩衝機能を発揮させることが必須であった。
【0005】
【特許文献1】特開2004−358873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、不良品の発生率を低下させることができる曲面部の曲率半径が極めて小さな積層体及びその製造に用いられる切削具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の通りである。
1.基材の表面及び側面に化粧材を積層してなる積層体であって、
前記基材の角側には第1切欠部が形成されており、前記化粧材の裏面側の該第1切欠部と対応する部位には円弧状部を有する第2切欠部が形成されており、該化粧材が該第2切欠部の該円弧状部で折り曲げられていることを特徴とする積層体。
2.前記円弧状部の曲率半径が1〜3mmである上記1.記載の積層体。
3.基材の表面及び側面に化粧材を積層してなる積層体の製造に用いられる切削具であって、
表面に前記化粧材が固定された前記基材の角側を切削して第1切欠部を形成する第1切削面と、該化粧材の裏面側の該第1切欠部と対応する部位を切削して第2切欠部を形成する第2切削面と、を有する切削刃を備え、該第2切削面の第1切削面に連なる部位に円弧状面が形成されていることを特徴とする切削具。
4.前記円弧状面の曲率半径が1〜3mmである上記3.記載の切削具。
なお、以下に好適な実施形態を示す。
〔1〕基材の表面及び側面に化粧材を積層してなる積層体の製造装置であって、
前記基材の角側に第1切欠部を形成し、且つ、前記化粧材の裏面側の該第1切欠部と対応する部位に円弧状部を有する第2切欠部を形成する切欠部形成手段と、
前記化粧材を前記第2切欠部の前記円弧状部で折り曲げる折り曲げ手段と、を備えることを特徴とする積層体の製造装置。
〔2〕前記切欠部形成手段は、切削刃を有する切削具を備え、該切削刃が、前記基材の角側を切削して前記第1切欠部を形成する第1切削面と、前記化粧材の裏面側を切削して前記第2切欠部を形成する第2切削面と、を有し、該第2切削面の該第1切削面に連なる部位には円弧状面が形成されている上記〔1〕記載の積層体の製造装置。
〔3〕前記円弧状面の曲率半径が1〜3mmである上記〔2〕記載の積層体の製造装置。
〔4〕前記基材の上面に前記化粧材が固定された状態で該基材及び該化粧材を搬送する搬送手段を更に備える上記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一項に記載の積層体の製造装置。
〔5〕前記切欠部形成手段は、前記搬送手段で搬送される前記基材の側面を案内する第1案内部材と、前記化粧材の上面を案内する第2案内部材と、を更に備える上記〔4〕記載の積層体の製造装置。
〔6〕前記切欠部形成手段は、前記搬送手段で搬送される前記化粧材の折り曲げ代の下面を案内する第3案内部材を更に備える上記〔5〕記載の積層体の製造装置。
〔7〕前記切欠部形成手段は、前記基材の切削深さ(D)を変更し得るように、前記第1案内部材、第2案内部材及び前記切削具を変位自在に支持する支持機構を更に備える上記〔5〕又は〔6〕に記載の積層体の製造装置。
〔8〕前記折り曲げ手段が棒状部材である上記〔1〕乃至〔7〕のいずれか一項に記載の積層体の製造装置。
〔9〕基材の表面及び側面に化粧材を積層してなる積層体の製造方法であって、
前記基材の角側に第1切欠部を形成すると共に、前記化粧材の裏面側の該第1切欠部と対応する部位に円弧状部を有する第2切欠部を形成する工程と、
前記化粧材を前記第2切欠部の前記円弧状部で折り曲げる工程と、を備えることを特徴とする積層体の製造方法。
〔10〕前記切欠部を形成する工程は、切削具によって前記基材及び前記化粧材を切削して前記第1切欠部及び前記第2切欠部を同時に形成する工程である上記〔9〕記載の積層体の製造方法。
〔11〕前記円弧状部の曲率半径が1〜3mmである上記〔9〕又は〔10〕に記載の積層体の製造方法。
〔12〕前記切欠部を形成する工程及び前記化粧材を折り曲げる工程は、前記基材の上面に前記化粧材が固定された状態での該基材及び該化粧材の搬送中に行われる工程である上記〔9〕乃至〔11〕のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
〔13〕前記切欠部を形成する工程は、搬送中の前記基材の側面及び前記化粧材の上面が案内された状態で、前記第1切欠部及び前記第2切欠部を形成する工程である上記〔12〕記載の積層体の製造方法。
〔14〕前記切欠部を形成する工程は、搬送中の前記化粧材の折り曲げ代の下面が案内された状態で、前記第1切欠部及び前記第2切欠部を形成する工程である上記〔13〕記載の積層体の製造方法。
〔15〕前記切欠部を形成する工程は、前記基材及び前記化粧材の案内位置と共に、前記基材の切削深さ(D)を変更可能な工程である上記〔13〕又は〔14〕に記載の積層体の製造方法。
〔16〕前記化粧材の折り曲げ工程は、棒状部材によって前記化粧材を折り曲げる工程である上記〔9〕乃至〔15〕のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の積層体によると、化粧材が第2切欠部の円弧状部で折り曲げられ、基材の表面及び側面に化粧材を積層してなされているので、化粧材を第2切欠部の円弧状部で応力を分散しつつ折り曲げることができ、不良品の発生率を低下させつつ曲面部の曲率半径が極めて小さな積層体を得ることができる。特に、積層体の曲面部の曲率半径の大きさを変更する場合でも、折り曲げ手段の配置を調整するといった煩雑な作業を必要最小限(基本的には零)とすることができる。さらに、基材の第1切欠部と化粧材の第2切欠部との間に接着剤を充填することを必須とはしない。
また、前記円弧状部の曲率半径が1〜3mmである場合は、化粧材を極小の曲率半径でもってより確実に折り曲げることができる。
【0009】
本発明の切削具によると、第1切削面によって基材の角側が切削されて第1切欠部が形成されると同時に、第2切削面によって化粧材の裏面側が切削されて円弧状部を有する第2切欠部が形成される。
また、前記円弧状面の曲率半径が1〜3mmである場合は、第2切欠部の円弧状部の曲率半径を1〜3mmに仕上げることができ、化粧材を極小の曲率半径でもってより確実に折り曲げることができる。
【0010】
なお、本実施形態の積層体の製造装置によると、切欠部形成手段によって、基材の角側に第1切欠部が形成されると共に、化粧材の裏面側に円弧状部を有する第2切欠部が形成され、折り曲げ手段によって、化粧材が第2切欠部の円弧状部で折り曲げられ、基材の表面及び側面に化粧材を積層してなる積層体が得られる。このように、化粧材を第2切欠部の円弧状部で応力を分散しつつ折り曲げるようにしたので、不良品の発生率を低下させつつ曲面部の曲率半径が極めて小さな積層体を得ることができる。特に、積層体の曲面部の曲率半径の大きさを変更する場合でも、折り曲げ手段の配置を調整するといった煩雑な作業を必要最小限(基本的には零)とすることができる。さらに、基材の第1切欠部と化粧材の第2切欠部との間に接着剤を充填することを必須とはしない。
また、前記切欠部形成手段が、切削刃を有する切削具を備え、該切削刃が、第1切削面と第2切削面とを有し、該第2切削面の該第1切削面に連なる部位に円弧状面が形成されている場合は、第1及び第2切欠部を同時に形成することができ、製造効率を向上させ得る。
また、前記円弧状面の曲率半径が1〜3mmである場合は、第2切欠部の円弧状部の曲率半径を1〜3mmに仕上げることができ、化粧材を極小の曲率半径でもってより確実に折り曲げることができる。
また、搬送手段を更に備える場合は、基材の上面に化粧材が固定された状態での基材及び化粧材の搬送中に、第1及び第2切欠部を形成できると共に化粧材を折り曲げることができる。その結果、化粧材の上面に基材を固定した状態で基材及び化粧材の一体物を搬送するものに比べて、化粧材の表面の損傷等を抑制できる。また、基材及び化粧材を一体化する工程から切欠部を形成する工程まで、基材及び化粧材を反転させることなく円滑に移送することができる。
また、前記切欠部形成手段が、第1案内部材と第2案内部材とを更に備える場合は、第1及び第2案内部材によって、基材及び化粧材に対して切削具をより適確な位置に位置決めでき、第1及び第2切欠部をより正確に形成できる。
また、前記切欠部形成手段が、第3案内部材を更に備える場合は、第3案内部材によって、化粧材の折り曲げ代の下面が案内されるので、例えば、化粧材の折り曲げ代を吸着等するものに比べて、切欠部形成手段をより簡易且つ安価に構成できると共に、切削具の位置決めをより適確に行うことができる。
また、前記切欠部形成手段が、前記第1案内部材、第2案内部材及び前記切削具を変位自在に支持する支持機構を更に備える場合は、基材及び化粧材に対する第1及び第2案内部材の案内位置と共に、積層体の曲面部の曲率半径の大きさ等に応じて基材の切削深さを変更できる。その結果、1つの切削具で、曲面部の曲率半径の異なる複数種の積層体を得ることができる。
また、前記折り曲げ手段が棒状部材である場合は、化粧材を極小の曲率半径でもってより確実に折り曲げることができる。また、折り曲げ手段、ひいては装置全体をより簡易且つ安価な構成にできる。
【0011】
なお、本実施形態の積層体の製造方法によると、先ず、基材の角側に第1切欠部が形成されると共に、化粧材の裏面側に円弧状部を有する第2切欠部が形成され、次に、化粧材が第2切欠部の円弧状部で折り曲げられ、基材の表面及び側面に化粧材を積層してなる積層体が得られる。このように、化粧材を第2切欠部の円弧状部で応力を分散しつつ折り曲げるようにしたので、不良品の発生率を低下させつつ曲面部の曲率半径が極めて小さな積層体を得ることができる。特に、積層体の曲面部の曲率半径の大きさを変更する場合でも、折り曲げ手段の配置を調整するといった煩雑な作業を必要最小限(基本的には零)とすることができる。さらに、基材の第1切欠部と化粧材の第2切欠部との間に接着剤を充填することを必須とはしない。
また、前記切欠部を形成する工程が、切削具によって前記基材及び前記化粧材を切削して前記第1切欠部及び前記第2切欠部を同時に形成する工程である場合は、第1及び第2切欠部を同時に形成することができ、製造効率を向上させ得る。
また、前記円弧状部の曲率半径が1〜3mmである場合は、化粧材を極小の曲率半径でもってより確実に折り曲げることができる。
また、前記切欠部を形成する工程及び前記化粧材を折り曲げる工程が、前記基材の上面に前記化粧材が固定された状態での該基材及び該化粧材の搬送中に行われる工程である場合は、基材及び化粧材の搬送中に、第1及び第2切欠部を形成できると共に化粧材を折り曲げることができる。その結果、化粧材の上面に基材を固定した状態で基材及び化粧材の一体物を搬送するものに比べて、化粧材の表面の損傷等を抑制できる。また、基材及び化粧材を一体化する工程から切欠部を形成する工程まで、基材及び化粧材を反転させることなく円滑に移送することができる。
また、前記切欠部を形成する工程が、前記基材の側面及び前記化粧材の上面が案内された状態で、前記第1切欠部及び前記第2切欠部を形成する工程である場合は、基材及び化粧材に対して切削具をより適確な位置に位置決めでき、第1及び第2切欠部をより正確に形成できる。
また、前記切欠部を形成する工程が、前記化粧材の折り曲げ代の下面が案内された状態で、前記第1切欠部及び前記第2切欠部を形成する工程である場合は、例えば、化粧材の折り曲げ代を吸着等するものに比べて、切欠部形成手段をより簡易且つ安価に構成できると共に、切削具の位置決めをより適確に行うことができる。
また、前記切欠部を形成する工程が、前記基材及び前記化粧材の案内位置と共に、前記基材の切削深さ及び前記化粧材の切削厚さを変更可能な工程である場合は、基材及び化粧材に対する第1及び第2案内部材の案内位置と共に、積層体の曲面部の曲率半径の大きさ等に応じて基材の切削深さを変更できる。その結果、1つの切削具で、曲面部の曲率半径の異なる積層体を得ることができる。
また、前記化粧材の折り曲げ工程が、棒状部材によって前記化粧材を折り曲げる工程である場合は、化粧材をより確実に折り曲げることができる。また、装置全体をより簡易且つ安価な構成にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
1.積層体
本実施形態に係る積層体は、以下に述べる基材及び化粧材を備えている。
なお、上記積層体の用途としては、例えば、家具の表面材、床材、壁材、扉材、間仕切り材、カウンタ材などの建材用を挙げることができる。
上記積層体50の曲面部50aの曲率半径は、例えば、1.5〜3.5mm(好ましくは、2〜3mm)であることができる(図11参照)。
【0013】
上記「基材」は、その角側には第1切欠部が形成されている限り、その材質、形状、大きさ等は特に問わない。
上記基材の材質としては、例えば、パーティクルボード、中質繊維板(MDF)、木質単板、木質合板等を挙げることができる。リサイクル性及び低価格であるといった観点から、パーティクルボードであることが好ましい。
【0014】
上記「第1切欠部」の形状、大きさ等は特に問わない。この第1切欠部の切削深さD(図5参照)は、積層体の曲面部の曲率半径の大きさ等に応じて適宜選択される。即ち、この切削深さDを深くすれば、比較的大きな曲率半径の曲面部が形成され、切削深さDを浅くすれば、比較的小さな曲率半径の曲面部が形成されることとなる。
【0015】
上記「化粧材」は、その裏面側の上記第1切欠部と対応する部位に第2切欠部が形成されている限り、その材質、形状、大きさ等は特に問わない。
上記化粧材の材質としては、メラミン樹脂、ダップ樹脂、ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂を挙げることができる。この化粧材としては、例えば、金属箔に樹脂シートを積層したり、金属箔の表裏に樹脂層を積層したりしてなる金属調化粧材を採用することができる。上記熱硬化性樹脂化粧材の厚さは、通常、0.8〜1.2mm程度である。
なお、上記化粧材は、例えば、単層構造であってもよいし、複層構造であってもよい。
【0016】
上記「第2切欠部」は、円弧状部を有する限り、その形状、大きさ等は特に問わない。この第2切欠部を形成してなされる化粧材の薄肉部厚さT(図5参照)は、化粧材の材質、厚さ等に応じて適宜選択される。また、第2切欠部の円弧状部を除く平面部の切削長さL(図5参照)は、積層体の曲面部の曲率半径の大きさ等に応じて適宜選択される。この切削長さLの中点が、基材の側面の位相と略一致していることが好ましい。
【0017】
上記「円弧状部」は、化粧材を極小の曲率半径でもって確実に折り曲げ得る限り、その形状、曲率半径等は特に問わない。この円弧状部は、通常、第2切欠部のうちの上記第1切欠部の一端側と連なる部位に形成されている。
上記円弧状部は、例えば、1つの曲率半径の円弧面を有していたり、2以上の異なる曲率半径の円弧面を有していたりすることができる。
上記円弧状部の曲率半径が1〜3mm、より1.2〜2.8mm、特に1.5〜2mmであることが好ましい。上記曲率半径が1mm以上であると、切削具の刃先の欠損を抑制できる一方、上記曲率半径が3mm以下であると、化粧材を極小の曲率半径でもってより確実に折り曲げることができるためである。
【0018】
2.積層体の製造装置
本実施形態に係る積層体の製造装置は、以下に述べる切欠部形成手段及び折り曲げ手段を備えている。なお、上記積層体としては、例えば、上述の実施形態1.で説明した積層体の構成を適用することができる。
上記積層体の製造装置は、例えば、後述する搬送手段を更に備えることができる。
【0019】
上記「切欠部形成手段」は、上記基材の角側に上記第1切欠部を形成し、且つ、上記化粧材の裏面側の第1切欠部と対応する部位に上記第2切欠部を形成する手段である限り、その構造、形成形態等は特に問わない。
【0020】
上記切欠部形成手段は、例えば、1又は2以上の切削刃を有する切削具を備えることができる。この切削刃は、以下に述べる第1切削面及び第2切削面を備えている。
【0021】
上記「第1切削面」は、上記基材の角側を切削して上記第1切欠部を形成し得る限り、その形状、大きさ等は特に問わない。この第1切削面26には、例えば、第2切削面27の一端側に連なる部位に円弧状面26bが形成されていることができる(図5参照)。この円弧状面によって切削具の刃先の欠損が抑制される。
【0022】
上記「第2切削面」は、上記化粧材の裏面側を切削して上記第2切欠部を形成し得る限り、その形状、大きさ等は特に問わない。この第2切削面27には、上記第1切削面26の一端側に連なる部位に円弧状面27bが形成されている(図5参照)。
上記円弧状面は、上記第2切欠部の円弧状部を形成し得る限り、その形状、曲率半径等は特に問わない。この円弧状面は、例えば、1つの曲率半径の円弧面からなっていたり、2以上の異なる曲率半径の円弧面からなっていたりすることができる。また、この円弧状面の曲率半径が1〜3mm、より1.2〜2.8mm、特に1.5〜2mmであることが好ましい。上記第2切欠部の円弧状部を所定の曲率半径(例えば、1〜3mm等)に仕上げ得るためである。
上記第2切削面の円弧状面を除いた平面の長さL(図5参照)は、例えば、3.2〜4mm(好ましくは3.4〜3.8mm)であることができる。
上記第2切削面による化粧材の薄肉部厚さT(図5参照)は、例えば、0.2〜0.8mm(好ましくは0.4〜0.6mm)であることができる。
【0023】
なお、上記切削具による切削加工は、通常、基材の表面に平板状の化粧材を固定して、基材の表面から化粧材の折り曲げ代がオーバーハング状に張り出した状態で行われる。
【0024】
上記「折り曲げ手段」は、上記化粧材を上記第2切欠部の円弧状部で折り曲げ得る限り、その構造、折り曲げ形態等は特に問わない。
上記折り曲げ手段としては、例えば、棒状部材、案内ローラ、案内パッド等を挙げることができる。より簡易且つ安価に構成できるといった観点から、棒状部材であることが好ましい。この棒状部材は、例えば、搬送方向に対して傾斜して配設されていることができる。
【0025】
上記「搬送手段」は、上記基材の上面に上記化粧材が固定された状態で基材及び化粧材を搬送する手段である限り、その構造、搬送形態等は特に問わない。この場合、上記切欠部形成手段及び折り曲げ手段は、通常、上記搬送手段の搬送経路に沿って併設される。
上記搬送手段としては、例えば、各種コンベア機構等を挙げることができる。
なお、上記基材及び化粧材の固定形態は特に問わなが、通常、両者は接着されている。
【0026】
上述の搬送手段を備える場合、上記切欠部形成手段は、例えば、上述の切削具と、上記搬送手段で搬送される上記基材の側面を案内する第1案内部材と、上記化粧材の上面を案内する第2案内部材と、を更に備えることができる。これら第1及び第2案内部材としては、例えば、倣いローラ、ボール、摺面部材等を挙げることができる。
上記第1及び第2案内部材の間には、例えば、上記切削具が配設されていることができる。これにより、基材及び化粧材に対して切削具をより適確な位置に位置決めでき、より正確な第1及び第2切欠部を形成することができる。
【0027】
上記切欠部形成手段は、例えば、上記切削具、第1及び第2案内部材に加えて、平板状の化粧材の折り曲げ代の裏面を案内する第3案内部材を備えることができる。これにより、基材及び化粧材に対して切削具を更に適確な位置に位置決めできる。この第3案内部材としては、例えば、摺面部材、倣いローラ、ボール等を挙げることができる。また、この第3案内部材は、例えば、板バネ等の弾性部材に支持されていたり、シリンダのピストンロッド等の可動部材に支持されていたりできる。これにより、化粧材の折り曲げ代の裏面を所定の押圧力で押圧して案内することができる。
【0028】
上記切欠部形成手段は、例えば、上記基材の切削深さを変更し得るように、上記第1案内部材、第2案内部材、第3案内部材及び切削具を変位自在に支持する支持機構を更に備えることができる。この支持機構は、通常、上記第1案内部材、第2案内部材、第3案内部材及び切削具を変位自在且つ位置決め可能に支持するものである。
【0029】
なお、上記積層体の製造装置は、例えば、上記切欠部形成手段により形成された第1切欠部及び第2切欠部に接着剤を塗布する塗布手段を更に備えることができる。また、上記積層体の製造装置は、例えば、上記切欠部形成手段により第2切欠部が形成された化粧材を加熱する加熱手段を更に備えることができる。
【0030】
3.積層体の製造方法
本実施形態に係る積層体の製造方法は、以下に述べる切欠部形成工程及び折り曲げ工程を備えている。なお、上記積層体としては、例えば、上述の実施形態1.で説明した積層体の構成を適用することができる。
【0031】
上記「切欠部形成工程」は、上記基材の角側に上記第1切欠部を形成すると共に、上記化粧材の裏面側の第1切欠部と対応する部位に上記第2切欠部を形成する工程である限り、その形成形態、手順等は特に問わない。
【0032】
上記切欠部形成工程は、例えば、1つの切削具によって第1及び第2切欠部を同時に形成する工程であることが好ましい。なお、上記切削具としては、例えば、上記実施形態2.で説明した切削具の構成を適用することができる。また、上記切削具による切削加工は、通常、基材の表面に平板状の化粧材を固定して、基材の表面から化粧材の折り曲げ代がオーバーハング状に張り出した状態で行われる。
【0033】
上記「折り曲げ工程」は、上記化粧材を上記第2切欠部の上記円弧状部で折り曲げる工程である限り、その折り曲げ形態、手順等は特に問わない。
上記折り曲げ工程は、例えば、棒状部材によって化粧材を折り曲げる工程であることが好ましい。なお、上記棒状部材としては、例えば、上記実施形態2.で説明した棒状部材の構成を適用することができる。
【0034】
ここで、上記切欠部形成工程及び折り曲げ工程は、例えば、基材の上面に化粧材が固定された状態で基材及び化粧材の搬送中に行われる工程であることが好ましい。なお、上記基材を搬送する手段としては、例えば、上記実施形態2.で説明した搬送手段の構成を適用することができる。
【0035】
上述のように、上記切欠部形成工程及び折り曲げ工程が基材及び化粧材の搬送中に行われる工程である場合、上記切欠部形成工程は、例えば、搬送中の上記基材の側面及び上記化粧材の上面が案内された状態で、上記第1切欠部及び第2切欠部を形成する工程であることができる。さらに、上記切欠部形成工程は、例えば、搬送中の上記基材の側面、上記化粧材の上面に加えて、上記化粧材の折り曲げ代の裏面が案内された状態で、上記第1切欠部及び第2切欠部を形成する工程であることができる。
なお、上記基材の側面、化粧材の側面、化粧材の折り曲げ代の裏面を案内する手段としては、例えば、上記実施形態2.で説明した案内部材の構成を適用することができる。
【0036】
上記切欠部形成工程は、例えば、前記基材及び前記化粧材の案内位置と共に、前記基材の切削深さを変更可能な工程であることが好ましい。
【0037】
なお、上記積層体の製造方法は、例えば、上記切欠部形成工程で形成された第1切欠部及び第2切欠部に接着剤を塗布する塗布工程を更に備えることができる。また、上記積層体の製造方法は、例えば、上記切欠部形成工程で第2切欠部が形成された化粧材を加熱する加熱工程を更に備えることができる。
【0038】
4.切削具
本実施形態に係る切削具は、基材の表面及び側面に化粧材を積層してなる積層体の製造に用いられる切削具であって、表面に前記化粧材が固定された前記基材の角側を切削する第1切削面と、該化粧材の裏面側の該第1切欠部と対応する部位を切削する第2切削面と、を有する切削刃を備え、該第2切削面の第1切削面に連なる部位に円弧状面が形成されていることを特徴とする。
【0039】
なお、上記切削具による切削加工は、通常、基材の表面に平板状の化粧材を固定して、基材の表面から化粧材の折り曲げ代がオーバーハング状に張り出した状態で行われる。また、上記積層体に係る構成としては、例えば、上記実施形態1.で説明した積層体に係る構成を適用することができる。また、上記切削具に係る構成としては、例えば、上記実施形態2.で説明した切削具に係る構成を適用することができる。
【実施例】
【0040】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例では、本発明に係る「積層体」として、図11に示すように、基材51の表面及び側面に化粧材52を積層してなり、曲面部50aを有する積層体50を例示する。また、パーティクルボード製の基材51を採用すると共に、厚さ1mmのメラミン樹脂製の化粧版52を採用するものとする。
【0041】
(1)積層体の製造装置の構成
本実施例に係る積層体の製造装置1は、図1に示すように、水平方向に沿って配設されたコンベア機構2(本発明に係る「搬送手段」として例示する。)を備えている。このコンベア機構2の上流側から、基材51の上面に化粧材52が貼着された状態の基材51及び化粧材52の一体物が投入され、所定の搬送方向Pに沿って搬送される。
上記コンベア機構2に沿って、切削機構3(本発明に係る「切欠部形成手段」として例示する。)、塗布機構4、加熱機構5、ローラ機構6、及びトリミング機構7が順次配設されている。
【0042】
上記切削機構3は、図2及び図3に示すように、フレーム8(図1参照)に固定された支持体10を備えている。この支持体10には、第1移動体11が前後方向(図中で紙面と垂直方向)に移動自在に支持されている。この支持体10及び第1移動体11の間には、操作ハンドル(図示せず)でネジ軸が回転されるボールネジ機構12が介在されている。このボールネジ機構12の調整によって、支持体10に対して第1移動体11を前後方向に位置調整でき、後述の切削具による切削深さを変更できるようになっている。
ここで、上記支持体10、第1移動体11及びボールネジ機構12等によって、本発明に係る「支持機構」が構成されていると言える。
【0043】
上記第1移動体11には、前後方向に移動自在に第2移動体13が前後方向に移動自在に支持されている。この第2移動体13には、第3移動体14が上下方向に移動自在に支持されている。この第2移動体13は、駆動シリンダ15の作動により前後方向に移動される。また、上記第3移動体13は、駆動シリンダ16の作動により上下方向に移動される。これにより、後述する切削具を、切削加工位置と待避位置との間で変位させ得るようになっている。
【0044】
上記第3移動体14には、駆動モータMが固定されている。この駆動モータMの駆動軸には切削具20が固定されている。上記第3移動体14には、基材51の側面を倣い案内する第1案内ローラ21(本発明に係る「第1案内部材」として例示する。)を軸支した支持部材(図示せず)が固定されている。また、上記第3移動体14には、化粧材52の上面を倣い案内する第2案内ローラ22(本発明に係る「第1案内部材」として例示する。)を軸支した支持部材(図示せず)が固定されている。さらに、上記第3移動体14には、化粧材52の折り曲げ代52aの裏面を押え案内する押え案内部材23が板バネ24を介して固定されている。
【0045】
本実施例に係る切削具20は、図4に示すように、多数(本実施例では20刃)の切削刃25を有している。各切削刃25は、図5に示すように、第1切削面26及び第2切削面27を備えている。
【0046】
上記第1切削面26は、平面26aと、この平面26aの一端側に連なる所定の曲率半径(例えば、0.5mm)の円弧状面26bと、からなっている。この第1切削面26によって、基材51の角側が切削されて基材51に面取り状の第1切欠部53が形成されることとなる。
【0047】
上記第2切削面27は、平面27aと、この平面27aの一端側に連なる所定の曲率半径(例えば、2mm)の第1円弧状面27bと、この平面27aの他端側に連なる所定の曲率半径(例えば、2mm)の第2円弧状面27cと、からなっている。この第1円弧状面27bは、上記第1切削面26の円弧状面26bと連なっている。この第2切削面27によって、化粧材52の裏面側が切削されて化粧材52に第2切欠部54が形成される。特に、上記第1円弧状面27bによって、第2切欠部54の所定の曲率半径(例えば、2mm)の円弧状部54aが形成される。
上記第2切削面27の平面27aの長さLは3.6mmに設定されている。また、上記第2切削面27による化粧材52の薄肉部厚さTは0.5mmに設定されている。
【0048】
上記塗布機構4は、図1に示すように、上記切削機構3で切削形成された第1切欠部53及び第2切欠部54にホットメルト接着剤36(図8参照)を塗布する塗布器30を備えている。
【0049】
上記加熱機構5は、図1に示すように、化粧材52の上面を加熱する複数のヒータ31を備えている。この加熱機構5の下流側には、平板状で搬送方向Pに沿って傾斜する縦断面半円状の棒状部材32(本発明に係る「折り曲げ手段」として例示する。)が配設されている。この棒状部材32によって、加熱直後の化粧材52が折り曲げられて基材51の側面に積層されることとなる。
【0050】
上記ローラ機構6は、2連のピンチローラを備えている。
上記トリミング機構7は、端部をトリミングする2箇所のトリミング部34を備えている。
【0051】
(2)積層体の製造装置の作用
次に、上記積層体の製造装置1の作用について説明する。
先ず、図6に示すように、コンベア機構2によって、基材51の上面に化粧材52が貼着された状態の基材51及び化粧材52の一体物が搬送方向Pに沿って搬送される。そして、その一体物が切削機構3まで搬送されると、図7に示すように、基材51の側面が第1案内ローラ21によって倣い案内されると共に、化粧材52の上面が第2案内ローラ22によって倣い案内され、さらに化粧材52の折り曲げ代52aの裏面が押え案内部材23によって押え案内される。その案内状態において、回転駆動される切削具20によって、基材51の角側が切削されて第1切欠部53が形成されると同時に、化粧材52の裏面側が切削されて第2切欠部54が形成される。
【0052】
次に、上記一体物が塗布機構4まで搬送されると、図8に示すように、第1切欠部53及び第2切欠部54にホットメルト接着剤36が塗布される。次いで、その一体物が加熱機構5まで搬送されると、上方からヒータ31によって化粧材52の上面が加熱される。その後、その一体物が加熱機構5の下流側まで搬送されると、図9に仮想線で示すように、棒状部材32によって化粧材52の折り曲げ代52aが折り曲げられ、最終的に基材51の側面に化粧材52の折り曲げ代52aが積層される(図10参照)。
【0053】
次に、上記一体物がローラ機構6まで搬送されると、2連のピンチローラの間を通される。次いで、その一体物がトリミング機構7まで搬送されると、トリミング部34によって端部がトリミングされる。その結果、極小の曲率半径(例えば、3mm)の曲面部50aを有する積層体50(図11参照)が得られる。
【0054】
(3)実施例の効果
以上より、本実施例では、切削具20によって、基材51の角側を切削して第1切欠部53を形成すると共に化粧材52の裏面側を切削して第2切欠部54を形成し、棒状部材32によって、化粧材52を第2切欠部54の円弧状部54a(図9参照)で折り曲げるようにしたので、化粧材52の折れ曲げ時に、第2切欠部54の円弧状部64aで応力が良好に分散され、折れ曲がりの曲率半径を極めて小さくしても化粧材の破損等を抑制できる。その結果、従来のように、化粧材側の切欠部に平面の交差する角部があるものに比べて、不良品(例えば、化粧材の破損、線状痕等)の発生率を大幅に低下させつつ極小の曲率半径の曲面部50aを有する積層体50を得ることができる。特に、製品(積層体50)の曲面部の曲率半径を変更する場合であっても、棒状部材32の配置を微調整するといった煩雑な作業を必要としない。さらに、基材51の第1切欠部53と化粧材52の第2切欠部54との間に接着剤を必ずしも充填する必要はない。また、化粧材52の裏面側に第2切欠部54を形成したので、化粧材を加熱する際に、化粧材52の薄肉部位が他の部位より早く温度が上がることとなり、効率良く折り曲げ部位だけ加熱できる。その結果、熱による化粧版52の艶落ちを最小限に抑えることができる。また、第1及び第2切欠部53,54にホットメルト接着剤36を塗布することでも同様な利点が得られる。さらに、折り曲げる部位に、接着剤を充填することで製品強度を保つ役割も兼ねている。
また、従来のポストフォーム加工では、基材の曲面加工やサンディング仕上げを必要としていたが、本製造装置1ではそれらを必要とせず、切削量を軽減及び材料歩留りの向上を両立でき、さらに加工中の騒音等を抑え良好な作業環境を実現できる。また、製造装置1全体を簡易且つ安価な構成とすることができ、さらにコンパクトに構成でき加工スペースを低減することもできる。さらに、従来のポストフォーム加工では、積層体の曲面部の曲率半径を変更する度に、プレスローラのセット、案内パッドのセットを変える必要があったが、本製造装置1ではそれらを必要とせず、煩雑な段取り作業を必要最小限とすることができる。
【0055】
また、本実施例では、切削具20の各切削刃25に第1及び第2切削面26,27を設けるようにしたので、1つの切削具20によって第1及び第2切欠部53,54を同時に形成でき、製造効率を向上させることができる。また、本実施例では、コンベア機構2によって、基材51の上面に化粧材52が固定された状態で基材51及び化粧材52の一体物を搬送し、その搬送中に、第1及び第2切欠部53,54を形成すると共に、化粧材52を折り曲げるようにしたので、化粧材の上面に基材を固定した状態で基材及び化粧材の一体物を搬送するものに比べて、化粧材の表面の損傷等を抑制できる。また、基材及び化粧材を一体化する工程から切欠部を形成する工程まで、基材及び化粧材を反転させることなく円滑に移送することができる。
【0056】
また、本実施例では、第1案内ローラ21、第2案内ローラ22及び押え案内部材23によって、基材51及び化粧材52を案内支持した状態で切削加工を施すようにしたので、これら基材51及び化粧材52に対して切削具20をより適確な位置に位置決めでき、第1及び第2切欠部53,54をより正確に形成できる。
また、本実施例では、支持体10に対して第3移動体14を前後方向に位置調整可能に設けたので、第1案内ローラ21、第2案内ローラ22及び押え案内部材23の案内位置と共に、切削具20による基材51の切削深さDを容易に変更することができる。その結果、1つの切削具20で、曲面部50aの曲率半径の異なる複数種の積層体を得ることができる。さらに、切削具20による化粧材52の薄肉部厚さTを変更すれば、より広範囲の曲率半径の曲面部50aを有する積層体50を得ることができる。
【0057】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、本実施例では、メラミン樹脂製の化粧材52を例示したが、これに限定されず、例えば、金属箔(例えば、アルミニウム箔等)からなる金属調化粧材52としてもよい。この場合、加熱機構5による化粧材の加熱を省略(又は低温加熱化)することが好ましい。化粧材の表面のキズ防止用フィルムを溶かさないためである。
また、本実施例では、1つの切削具20によって第1切欠部53及び第2切欠部54を形成するようにしたが、これに限定されず、例えば、第1切欠部53を形成する第1切削具と、第2切欠部54を形成する第2切削具と、を備えるようにしてもよい。
また、本実施例では、基材51の上面に化粧材52を固定した状態で基材51及び化粧材52の一体物を搬送するようにしたが、これに限定されず、例えば、化粧材の上面に基材を固定した状態で基材及び化粧材の一体物を搬送するようにしてもよい。
さらに、本実施例の積層体において、基材の一方の表面又は両方の表面に化粧材が積層されていたり、基材の一方の側面又は両方の側面に化粧材が積層されていたりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
基材の表面及び側面に化粧材を積層してなる積層体を製造する技術として利用される。特に、家具の表面材、床材、壁材、扉材、間仕切り材、カウンタ材などの建材用の積層体を製造する技術として好適に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本実施例に係る積層体の製造装置の全体側面図である。
【図2】本実施例に係る切削機構の側面図である。
【図3】図2のIII矢視図である。
【図4】本実施例に係る切削具の要部正面図である。
【図5】図4のV矢視拡大図である。
【図6】基材及び化粧材の搬送状態を示す作用説明図である。
【図7】基材及び化粧材の切削状態を示す作用説明図である。
【図8】化粧材の加熱状態を示す作用説明図である。
【図9】化粧材の折り曲げ状態を示す作用説明図である。
【図10】化粧材が折り曲げられた状態を示す作用説明図である。
【図11】本実施例に係る積層体の要部斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
1;製造装置、2;コンベア機構、3;切削機構、20;切削具、21;第1案内ローラ、22;第2案内ローラ、25;切削刃、26;第1切削面、27;第2切削面、27b;円弧状面、32;棒状部材、50;積層体、51;基材、52;化粧材、53;第1切欠部、54;第2切欠部、54a;円弧状部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面及び側面に化粧材を積層してなる積層体であって、
前記基材の角側には第1切欠部が形成されており、前記化粧材の裏面側の該第1切欠部と対応する部位には円弧状部を有する第2切欠部が形成されており、該化粧材が該第2切欠部の該円弧状部で折り曲げられていることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記円弧状部の曲率半径が1〜3mmである請求項1記載の積層体。
【請求項3】
基材の表面及び側面に化粧材を積層してなる積層体の製造に用いられる切削具であって、
表面に前記化粧材が固定された前記基材の角側を切削して第1切欠部を形成する第1切削面と、該化粧材の裏面側の該第1切欠部と対応する部位を切削して第2切欠部を形成する第2切削面と、を有する切削刃を備え、該第2切削面の第1切削面に連なる部位に円弧状面が形成されていることを特徴とする切削具。
【請求項4】
前記円弧状面の曲率半径が1〜3mmである請求項3記載の切削具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−315387(P2006−315387A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−272759(P2005−272759)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【分割の表示】特願2005−141913(P2005−141913)の分割
【原出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(395012617)加藤木材工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】