説明

積層偏光板およびその製造方法ならびに液晶表示装置

【課題】生産性に優れ、かつ、大型の液晶表示装置に適用可能な偏光板、ならびにそのような偏光板を用いた液晶表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】フィルム長手方向と透過軸が平行である反射型直線偏光子(Pr)と、長手方向と透過軸が平行である吸収型偏光子(Pa)とを、それぞれ少なくとも1層有し、両者の透過軸が平行となるように配置されている長尺積層偏光板(PL)により、上記課題が解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型直線偏光子と吸収型偏光子が積層された積層偏光板ならびに、それを用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は液晶セルを2枚の偏光板で狭持する構造を有しており、液晶セルの電圧がオフの時には黒表示となるノーマリーブラックモードの液晶表示装置では、図3に示すように、2枚の偏光板(P1およびP2)の透過軸が垂直となるように配置されている。偏光板は一般に連続的に長尺状に生産されるため、そのフィルム幅は有限で高々数mが限界であり、一般には幅1m程度である。一方で、近年、液晶表示装置に対する大画面化への要求が高まっており、例えば、対角が65インチ(約1640mm)を越えるサイズに適用可能な偏光板が要求されている。大画面テレビとしては、縦:横の比が9:16のワイド型が主流であるが、偏光板は異方性を有するため、画面の縦と横の長さが異なる液晶表示装置に、2枚の偏光板の透過軸が垂直となるように配置するためには、液晶セルを狭持する一方と他方の偏光板でフィルムの幅が異なるものが必要となる。そのため、例えば、図1(a)に示すように、光源側偏光板と視認側偏光板の両者に、長尺フィルムの幅方向に透過軸を有する長尺偏光板(P11およびP12)から切り出した偏光板を用いる場合、透過軸が垂直で大きさが等しい2枚の偏光板を得るためには、一方の偏光板(P21)を長尺偏光板の幅方向を長辺とするように切り出し、他方の偏光板(P22)を長尺偏光板の幅方向を短辺とするように切り出す必要がある。すなわち、液晶表示装置の長辺の長さは偏光板の幅以内に制限されるため、例えば65インチサイズのテレビに対応するためには、1400mm以上の幅を有する偏光板が必要となる。
【0003】
このような、大画面液晶表示装置への適用という課題に対して、基材であるポリビニルアルコール(PVA)フィルムに広幅のものを用いる方法(例えば特許文献1)や、偏光板製造時に幅方向に延伸する方法(例えば特許文献2)等、偏光板の幅を広げる方法が知られている。しかしながら、幅の広いフィルムは均一性やハンドリング性に劣る傾向がある上に、このような広幅長尺フィルムを得るための設備コストが増大するため、実用性に乏しいという問題があった。
【0004】
一方で、図1(b)に示すように、例えば、光源側偏光板として、長手方向に透過軸を有する長尺偏光板(P13)、視認側偏光板として、幅方向に透過軸を有する長尺偏光板(P14)を用いれば、両方の長尺偏光板の幅方向と、液晶表示装置の短辺方向が一致するように偏光板(P23およびP24)を切り出すことで、透過軸が垂直で大きさが等しい2枚の偏光板が得られる。そのため、液晶表示装置の短辺の長さが偏光板の幅以内であればよく、図1(a)の場合と比較して、長尺偏光板の幅を拡げることなく、大画面液晶表示装置への適用が可能となる。例えば、幅方向に透過軸を有する偏光板としては、ポリビニルアルコール系フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素を吸着させて長手方向に一軸延伸したヨウ素系の偏光板等が挙げられる。また、長手方向に透過軸を有する偏光子としては、複屈折を有する2種以上の樹脂を用いた2層以上の樹脂積層体を幅方向に延伸した反射型直線偏光子が実用化されており、3M社からD−BEFとして市販されているもの等が挙げられる。
【0005】
しかしながら、D−BEFのような反射型直線偏光子は、外光を反射するため、液晶表示装置に組み込んだ場合に、視認性に劣るという課題があった。そのため、反射型直線偏光子と、ヨウ素系等の吸収型偏光子の透過軸が一致するように配置された積層偏光板(例えば特許文献3)が開示されている。ところが、前述のように、ヨウ素系の吸収型偏光子(Pa)は幅方向に透過軸を有するため、D−BEFのように長手方向に透過軸を有する反射型直線偏光子(Pr)と長尺のまま積層しようとすると、図2(a)に示すように、両者の透過軸が平行とならない。そのため、両者の透過軸を平行とするためには、1枚ずつ切り出して積層する必要があり、長尺の偏光板を得ることができず、生産性に劣っていた。さらに、ヨウ素系の偏光板等の幅方向に透過軸を有する吸収型偏光子を用いると、前述の図1(a)に示した場合と同様に、液晶表示装置の長辺の長さが偏光板の幅以内に制限されるという問題があった。
【特許文献1】特開2002−28939号公報
【特許文献2】特開平11−183726号公報
【特許文献3】特表平9−507308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記に鑑み、大型の液晶表示装置に適用可能な長尺積層偏光板、ならびに長尺積層偏光板を用いた液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、鋭意検討の結果、所定の積層偏光板により上記課題を解決し得ることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、フィルム長手方向と透過軸が平行である反射型直線偏光子と、フィルム長手方向と透過軸が平行である吸収型偏光子とを、それぞれ少なくとも1層有し、両者の透過軸が平行となるように配置されている長尺積層偏光板に関する。
【0008】
さらに、本発明の長尺積層偏光板においては、前記吸収型偏光子の波長550nmにおける吸光度が、透過軸方向の直線偏光に対して0.2以下であり、かつ、吸収軸方向の直線偏光に対して0.5〜2.5であることが好ましい。
【0009】
さらに、本発明の長尺積層偏光板においては、前記反射型偏光子の偏光度が、80%以上であることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明の長尺積層偏光板においては、前記吸収型偏光子が、配向固定されたリオトロピック液晶性を示す物質、ホモジニアス配向したサーモトロピック液晶ポリマー、または、ホモジニアス配向した架橋性液晶ポリマーの少なくともいずれか1つを含むことが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の長尺積層偏光板においては、フィルム幅が850mm以上であることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明は、前記長尺積層偏光板の製造方法に関する。本発明の長尺積層板の製造方法の第1の好ましい実施形態は、リオトロピック液晶性を示す二色性色素を含有する溶液を、長尺基材上に、前記長尺基材の長手方向にせん断を加えながら塗設し配向を固定して吸収型偏光子を形成する工程、前記吸収型偏光子をフィルム長手方向と透過軸が平行である反射型直線偏光子上に積層する工程、を含む。
【0013】
本発明の長尺積層板の製造方法の第2の好ましい実施形態は、リオトロピック液晶性を示す二色性色素を含有する溶液を、フィルム長手方向と透過軸が平行である反射型直線偏光子上に、前記反射型直線偏光子の長手方向にせん断を加えながら塗設し配向を固定して吸収型偏光子を形成する工程を含む。
本発明の長尺積層板の製造方法の第3の好ましい実施形態は、幅方向に配向軸を有する長尺配向基材上に、重合性官能基を有する液晶モノマーと二色性色素を含有する溶液を塗布する工程、液晶モノマーを重合することでホモジニアス配向させフィルム長手方向と透過軸が平行である吸収型偏光子を形成する工程、前記吸収型偏光子をフィルム長手方向と透過軸が平行である反射型直線偏光子上に積層する工程、を含む。
【0014】
本発明の長尺積層板の製造方法の第4の好ましい実施形態は、幅方向に配向軸を有する長尺配向基材上にサーモトロピック液晶ポリマーと二色性色素を含有する溶液を塗布する工程、前記液晶ポリマーを液晶転移温度以上に加熱する工程、加熱後に冷却して配向を固定しホモジニアス配向させフィルム長手方向と透過軸が平行である吸収型偏光子を形成する工程、前記吸収型偏光子をフィルム長手方向と透過軸が平行である反射型直線偏光子上に積層する工程、を含む。
【0015】
本発明の長尺積層偏光板の製造方法のうち、前記第3、第4の実施形態においては、前記長尺配向基材が、少なくとも幅方向に延伸された延伸フィルムであることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明の長尺積層板の製造方法のうち、前記第1、第3、第4の実施形態においては、前記反射型直線偏光子と、前記吸収型偏光子とを、両者の透過軸が平行となるようにロール・トゥー・ロールで積層することが好ましい。
【0017】
さらに、本発明は、前記長尺積層偏光板を用いた液晶表示装置に関する。すなわち、本発明の液晶表示装置においては、光源、光源側偏光板、液晶セル、視認側偏光板を、この順に有し、光源側偏光板が長尺積層偏光板から切り出されたものであり、かつ、前記反射型直線偏光子が光源に近い側、吸収型偏光子が液晶セルに近い側となるように配置されており、さらに、視認側偏光板が、ヨウ素系偏光板であることが好ましい。
【0018】
さらに、本発明の液晶表示装置においては、前記光源側偏光板の透過軸が液晶表示装置の長辺方向と平行であり、前記視認側偏光板の透過軸が液晶表示装置の短辺方向と平行であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の長尺積層偏光板は、生産性に優れており、さらに、透過軸がフィルム長手方向と平行であるため、大型の液晶表示装置にも適用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の長尺積層偏光板(PL)は、図2(b)に示すように、フィルム長手方向と透過軸が平行である反射型直線偏光子(Pr)と、フィルム長手方向と透過軸が平行である吸収型偏光子(Pa)とが、両者の透過軸が平行となるように配置されているものである。
【0021】
長尺の積層偏光板を得るという観点から、反射型直線偏光子(Pr)と、吸収型偏光子(Pa)の透過軸は、いずれも長尺フィルムの長手方向、すなわち、フィルム搬送方向と平行であり、生産性の観点からはロール状に巻き取られたものであることが好ましい。長尺とは、連続的に生産されたものであることを意味し、その長さは特に限定されない。大型の液晶表示装置への適用性を考慮すれば、長さは1500mm以上であることが好ましいが、連続的に生産されたものであれば、さらに長尺のものも容易に生産可能であり、長さに上限はない。また、フィルムの幅の下限は特に制限されないが、65インチ以上の大型液晶表示装置への適用の観点から850mm以上であることが好ましい。フィルム幅の上限も特に制限されないが、均一性の高いフィルムを得る観点からは、2500mm以下であることが好ましく、2000mm以下であることがさらに好ましい。
【0022】
本発明の長尺積層偏光板においては、反射型直線偏光子と吸収型偏光子の透過軸が平行であるため、特表平9−507308号公報の明細書第9頁第26行目〜第10頁第15行目の段落や同公報の図1等に記載されているように、液晶表示装置に組み込んだ場合に、光源側からの光を効率よく利用して輝度を向上するとともに、視認側からの光の反射を抑制し、視認性の高い表示を得ることができる。また、反射型直線偏光子と吸収型偏光子の両者の透過軸が長手方向に平行であることにより、ロール・トゥー・ロール法等により連続的に積層して長尺の積層偏光板を得ることができる。
【0023】
さらに、本発明の長尺積層偏光板は、フィルム長手方向と透過軸方向が平行であるため、大画面の液晶表示装置への適用が可能である。ノーマリーブラックモードの液晶表示装置においては、図3に示すように、光源側偏光板(P1)と視認側偏光板(P2)の透過軸が垂直となるように配置されているが、本発明の長尺積層偏光板(PL)を図4に示すように、反射型直線偏光子(Pr)が光源(BL)に近い側に、吸収型偏光子(Pa)が液晶セル(LC)に近い側となるように光源側偏光板(P1)として配置し、ヨウ素等の幅方向に透過軸を有する偏光板(Pb)を視認側偏光板(P2)として用いることができる。このような構成とすることで、図1(b)のように、長手方向に透過軸を有する長尺偏光板(P13)と、幅方向に透過軸を有する偏光板(P14)から、大きさが等しく、透過軸が垂直である2枚の偏光板(P23、24)を切り出すことができ、長尺偏光板の幅方向と液晶表示装置の短辺方向を一致させることができる。そのため、図1(a)の場合のように幅方向に透過軸を有する2枚の長尺偏光板を用いる場合と比較すると、長尺偏光板の幅を拡げることなく、より大画面液晶表示装置への適用が可能となる。
【0024】
本発明の長尺積層偏光板に用いられる反射型直線偏光子は、直交する直線偏光のうち、透過軸に平行な振動面を有する偏光をそのまま透過させ、反射軸に平行な振動面を有する偏光を選択的に反射するものであり、液晶表示装置の視認性を高めるという観点においては、偏光度が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。後述する樹脂積層体の積層数を増やしたり、複屈折の大きい材料の組合せを選定することによって、偏光度を高めることができる。また、複数枚の反射型直線偏光子をそれらの透過軸が平行となるように積層したものを用いることによっても偏光度を高めることができる。
【0025】
反射型直線偏光子としては、グリッド型偏光子、屈折率差を有する2種以上の材料による2層以上の多層薄膜積層体、ビームスプリッターなどに用いられる屈折率の異なる蒸着多層薄膜、複屈折を有する2種以上の材料による2層以上の複屈折層多層薄膜積層体、複屈折を有する2種以上の樹脂を用いた2層以上の樹脂積層体を延伸したもの等が挙げられる。中でも、例えばポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートに代表される延伸により位相差発現量の大きい材料と、ポリメチルメタクリレートに代表されるアクリル系樹脂、JSR社製のアートンに代表されるノルボルネン系樹脂等の位相差発現量の小さい材料を交互に多層積層体として、一軸延伸して得られるものを用いることが好ましく、長尺で、かつ、長手方向に透過軸を有するという観点から、複屈折を有する2種以上の樹脂を用いた2層以上の樹脂積層体を幅方向に延伸したものを用いることが好ましい。その具体例としては、3M社製のD−BEF等があげられる。反射型直線偏光子の厚さは、通常、50〜200μm程度である。
【0026】
本発明の長尺積層偏光板に用いられる吸収型偏光子は、直交する直線偏光のうち、透過軸に平行な振動面を有する偏光をそのまま透過させ、吸収軸に平行な振動面を有する偏光を選択的に吸収するものである。液晶表示装置の白輝度を上昇させる観点においては、吸収型偏光子の透過軸方向の直線偏光の吸光度は0.20以下であることが好ましく、0.15以下であることがさらに好ましい。また、液晶表示装置の黒輝度を低く抑制する観点においては、吸収軸方向の直線偏光の吸光度は0.50以上であることが好ましく、0.80以上であることがより好ましく、1.0以上であることがさらに好ましい。吸収軸方向の吸光度に上限はないが、過度に高くすると、透過軸方向の吸光度まで高くなるため、2.5以下であることが好ましく、2.0以下であることがさらに好ましい。
【0027】
吸収型偏光子としては、親水性高分子フィルムに二色性物質を吸着させて幅方向に延伸処理したものや、リオトロピック液晶性を示す二色性色素が配向しているもの、ホモジニアス配向したサーモトロピック液晶ポリマーやホモジニアス配向した架橋性液晶ポリマーのマトリックス中に二色性色素が配向しているもの等が挙げられる。
【0028】
上記のような吸収型偏光子の中でも、本発明の長尺積層偏光板においては、延伸によらず配向処理されている吸収型偏光子を用いることが好ましい。延伸フィルムは熱によって配向が小さくなったり、寸法変化を起こしやすい傾向があるため、偏光度の低下や液晶パネルから部材が剥がれたり、あるいは液晶パネルに反りを生じたりする場合がある。特に、本発明の長尺積層偏光板は主に光源側偏光板として、光源と近接して用いられ、視認側偏光板と比較して、光源からの熱の影響を受けやすいため、前述のように延伸以外の方法で配向固定されたものであることが好ましい。このような観点においては、吸収型偏光子として、リオトロピック液晶性を示す二色性色素が配向しているもの、ホモジニアス配向したサーモトロピック液晶ポリマーやホモジニアス配向した架橋性液晶ポリマーのマトリックス中に二色性色素が配向しているものを好適に用いることができる。
【0029】
中でも、リオトロピック液晶性を示す二色性色素が配向しているものは、いわゆるE型偏光子に該当し、液晶表示装置の視野角拡大に寄与する。すなわち、光源側偏光子としてE型偏光子、視認側偏光子として、ヨウ素系等のO型偏光子を用いることで、例えば国際公開WO01/63346号パンフレット、WO01/81991号国際公開パンフレット等に記載があるように、斜め方向からの光漏れが抑制できる。そのため、本発明の長尺積層偏光板においては、液晶表示装置の視野角を拡大する観点において、吸収型偏光子として、リオトロピック液晶性を示す二色性色素が配向しているものを用いることが特に好ましい。
【0030】
リオトロピック液晶性を示す二色性色素が配向しているものとしては、例えば式:(クロモゲン)(SOM)nで表される水溶性の有機色素などを配向させたものがあげられ、クロモゲンがアゾや多環式化合物等からなって液晶性を付与し、スルホン酸又はその塩が水溶性を付与して全体としてリオトロピック液晶性を示すものを用いることができる。かかる二色性色素の具体例としては、特表平8−511109号公報、特表2002−515075号公報、特表2006−524348号公報等に記載されたものが挙げられる。また、市販品として、オプティバ社よりLCポラライザーとして販売されているもの等もある。
【0031】
他方、二色性色素含有のリオトロピック性物質も上記したリオトロピック液晶性の二色性色素に準じ、例えば、国際公開WO97/39380号国際公開パンフレットに記載されているような二色性色素を含有するリオトロピック性物質の溶液をコーティングすることで流動配向させたものを用いることができる。このような二色性色素含有のリオトロピック性物質は、ロシアンテクノロジーグループ社などより市販されている。
【0032】
このような吸収型偏光子は、基材として長尺のフィルム(以下、「長尺基材」という場合がある)を用い、リオトロピック液晶性を示す二色性色素を含有する溶液を、長尺基材の長手方向のせん断を溶液に加えながら、基材上に塗設し、配向を固定して製造することができる。
【0033】
特に、本発明においては、前記長尺基材として、長手方向に透過軸を有する長尺の反射型直線偏光子を用いることが好ましい。反射型直線偏光子を用いることで、反射型直線偏光子上に吸収型偏光子を形成でき、後述する積層の工程が不要となるため、生産性に優れる。
【0034】
反射型直線偏光子以外に、前記長尺基材として適用できる基材としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、さらにイミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アクリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー等の透明ポリマーやこれらポリマーのブレンド物からなるフィルム等が挙げられる。これらの長尺基材を用いる場合は、長尺基材上に吸収偏光子を形成後、得られた吸収型偏光子をフィルム長手方向と透過軸が平行である反射型直線偏光子上に積層することにより、長尺積層偏光板を得ることができる。また、反射型直線偏光子との積層後に、吸収型偏光子を形成するために用いた長尺基材を剥離して用いてもよいし、剥離することなく本発明の長尺積層偏光板と一体となって、偏光子の保護層や光学機能層等として用いることもできる。
【0035】
リオトロピック液晶性を示す二色性色素を含有する溶液を基材に塗設する方法は特に限定されないが、基材の長手方向のせん断を溶液に加えるためには、バーコート法、グラビアコート法、リップコート法など、長尺基材を長手方向に移動させながら塗設する方法を好適に用いることができる。さらに、このような塗設方法であれば、長尺のフィルムが得られる点で好ましい。
【0036】
塗設に際しては、必要に応じて事前に長尺基材にアルカリ処理、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理等、耐溶剤処理等の表面処理を施すこともできる。特に、反射型直線偏光子に直接吸収型偏光子を形成する場合は、接着性を向上させる目的で、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理等を行うことが好ましい。
【0037】
ホモジニアス配向したサーモトロピック液晶ポリマーや架橋性液晶ポリマー中に二色性色素が配向しているものとしては、特開平11−101964号公報、特開平11−160538号公報、特開2001―330726号公報、特開2001―133630号公報、特開2005−99065号公報、日東技報Vo135,No.1,p79(1997)等に記載されているものが挙げられる。このような吸収型偏光子は、サーモトロピック液晶ポリマーと二色性色素の溶液を、幅方向に配向軸を有する長尺配向基材上に塗布し、液晶転移温度以上に加熱した後冷却して配向を固定する方法や、重合性官能基を有する液晶モノマーと二色性色素の混合物を、幅方向に配向軸を有する長尺配向基材上に塗布し、重合性開始剤等の存在下紫外線照射等により液晶モノマーを重合することで配向する方法等により得られる。
【0038】
特に高い偏光度の偏光子を得る目的においては、液晶モノマーを紫外線照射等により重合したものを用いることが好ましく、液晶モノマーが重合性官能基を2つ以上有する架橋性液晶モノマーであることがさらに好ましい。このようにして、長尺配向基材上に液晶ポリマーが幅方向ホモジニアス配向するのに伴って二色性色素も幅方向配向するため、幅方向に吸収軸、長手方向に透過軸を有する吸収型偏光子が得られる。
【0039】
二色性色素は、入射光に対して分子の長軸と短軸とで異なる吸光度を呈するものであり、液晶ポリマー等の一軸配向に合わせて分子の長軸が該所定の方向に整列しており、入射光に含まれる振動成分を選択的に吸収、透過して偏光に変換する。かかる高二色比を有する色素としては、染料系偏光子に好ましく用いられているアゾ系、ペリレン系、アントラキノン系の色素、あるいはこれらの混合色素が好ましく、例えば、特開昭54−76171号公報等に詳しい。また、液晶ポリマーマトリックス中に二色性色素を配合する代わりに、例えば特開2005−140986号公報等に記載されているような液晶性二色性色素を含有する材料をホモジニアス配向させることによっても、吸収型偏光子を得ることができる。
【0040】
二色性色素は、偏光特性の波長域などに応じて1種又は2種以上を用いることができ、その使用量は液晶ポリマー又は液晶モノマーに対して1〜20重量%が一般的である。
【0041】
前記液晶性分子を幅方向にホモジニアス配向させ、幅方向に吸収軸を有する、すなわち、長手方向に透過軸を有する吸収型偏光子を得る観点において、長尺配向基材は前述のごとく、予め配向処理されたものが用いられる。長尺配向基材の配向処理としは、例えば、ポリビニルアルコール、ポリイミド等のポリマーの薄膜をラビングしたもの、SiOx またはIn23 /SnO2 等を斜方蒸着したもの、摩擦転写法で形成したポリテトラフルオロエチレン等の薄膜、光配向膜などの各種配向膜を形成する方法や、フィルムを延伸する方法が挙げられる。中でも、連続的に生産し長尺フィルムを得るという観点においては、少なくとも幅方向に延伸処理したものを用いることが好ましい。
【0042】
長尺配向基材の材料としては前述のリオトロピック液晶性の吸収型偏光子に用いられる基材と同様のものを好適に用いることができる。また、塗設方法としては、長尺の吸収型偏光子を得る観点から、バーコート法、グラビアコート法、リップコート法など、基材を移動させながら塗設する方法を好適に用いることができる。
【0043】
前記反射型直線偏光子と、吸収型偏光子はいずれもフィルム長手方向に透過軸を有しており、両者の透過軸が平行となるように積層することで積層偏光板が得られる。積層は、長尺の積層偏光板を得るという目的、および、軸の平行関係を制御し易いことから、各偏光子の形成材料を積層しておき、同時に偏光機能を発現させる処理(たとえば、延伸処理)を行なう方法、一方の層の上にもう一方の層を形成する方法、ロール・トゥー・ロール法により連続的に積層する方法が好ましい。特に、偏光特性の制御の観点から、反射型直線偏光子と吸収型偏光子を個別に用意し、ロール・トゥー・ロール法により積層することが好ましい。また、積層に際しては、接着力(密着力)を調整する目的で、必要に応じて事前にアルカリ処理、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理等の表面処理を施すこともできる。また、耐溶剤性の付与や、表面硬度の向上を目的として、耐溶剤コーティングやハードコート処理を施すこともできる。
【0044】
ロール・トゥー・ロール法により積層する方法には、転写による積層も含まれる。例えば、図5(a)に示すように、長尺(配向)基材(B)上に吸収型偏光子(Pa)を形成しておき、これを図5(b)に示すように反射型直線偏光子(Pr)上にロール・トゥー・ロールで連続的に積層した後、長尺(配向)基材(B)を剥離することによって図5(c)に示すように、反射型直線偏光子(Pr)上に吸収型偏光子(Pa)を転写することができる。特に、配向基材は一般に複屈折を有しているため、液晶表示装置に組み込んだ際に、吸収型偏光子を透過した光の偏光状態を変換する働きを有するが、これが光学設計上不都合である等の場合は、長尺配向基材を剥離、除去することが好ましい。
【0045】
また、二色性色素を有する液晶ポリマー層からなる吸収型偏光子は、厚みが小さく、自己支持性に乏しいため、配向基材を除去する場合でも、一旦配向基材ごと反射型直線偏光子上に積層した後、配向基材を剥離する転写法により積層することが好ましい。
【0046】
積層方法としては、重ね置いただけでも良いが、作業性や、光の利用効率の観点より各層を接着剤や粘着剤を用いて空気間隙なく積層することが望ましい。
【0047】
接着剤や粘着剤としては特に制限されない。例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いうる。
【0048】
前記接着剤または粘着剤は透明で、可視光領域に吸収を有さず、屈折率は、各層の屈折率と可及的に近いことが表面反射の抑制の観点より望ましい。かかる観点より、例えば、アクリル系粘着剤などが好ましく用いうる。
【0049】
前記接着剤や粘着剤にはベースポリマーに応じた架橋剤を含有させることができる。また接着剤には、例えば天然物や合成物の樹脂類、特に、粘着性付与樹脂や、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤、酸化防止剤などの添加剤を含有していてもよい。また、例えば、特開2000−347006号公報、特開2000−347007号公報に開示されているような、偏光解消をしにくく、後方散乱が小さい光拡散性を示す接着剤層などを用いることもできる。
【0050】
なお本発明において、上記フィルム、粘着層などの各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
【0051】
フィルムへの粘着層の付設は、適宜な方式で行いうる。その例としては、例えばトルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒にベースポリマーまたはその組成物を溶解又は分散させた10〜40重量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で偏光板上または光学フィルム上に直接付設する方式、あるいは前記に準じセパレータ上に粘着層を形成してそれを偏光板上または光学フィルム上に移着する方式などがあげられる。
【0052】
粘着層や接着層は、異なる組成又は種類等のものの重畳層としてフィルムの片面又は両面に設けることもできる。また両面に設ける場合に、偏光板や光学フィルムの表裏において異なる組成や種類や厚さ等の粘着層とすることもできる。粘着層の厚さは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1〜500μmであり、5〜200μmが好ましく、特に10〜100μmが好ましい。
【0053】
粘着層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的にセパレータが仮着されてカバーされることが好ましい。これにより、通例の取扱状態で粘着層に接触することを防止できる。セパレータとしては、例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤でコート処理したものなどの、従来に準じた適宜なものを用いうる。
【0054】
このようにして得られた長尺積層偏光板は、液晶表示装置等の画像表示装置に適用することができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと偏光板または光学フィルム、及び必要に応じて光源等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むこと等により形成される。特に本発明の長尺積層偏光板(PL)は、図4に示すように、光源側偏光板(P1)、すなわち、液晶セル(LC)と光源(BL)の間に配置される偏光板として、反射型直線偏光子(Pr)が光源(BL)側、吸収型偏光子(Pa)が液晶セル(LC)側となるように配置して用いられる。
【0055】
本発明の液晶表示装置には、図3に示すように、視認側偏光板(P2)の透過軸と、光源側偏光板(P1)の透過軸が垂直に配置されており、液晶表示装置の視認性を高める観点から、視認側偏光板(P2)として、幅方向に透過軸を有する吸収型偏光板(Pb)を用いることが好ましい。吸収型偏光板(Pb)としては、ヨウ素系の偏光板を用いることが好ましい。
【0056】
さらに、本発明の液晶表示装置においては、光源側偏光板として用いられる本発明の長尺積層偏光板の透過軸が液晶表示装置の長辺方向と平行であり、視認側偏光板の透過軸が液晶表示装置の短辺方向と平行であることが好ましい。このような配置とすることで、図1(b)に示すように、長尺偏光板の幅方向と液晶表示装置の短辺方向が平行となるように偏光板を切り出すことができるため、図1(a)のような従来の偏光板を用いた場合と比較して、大画面の液晶表示装置とすることができる。
【0057】
液晶セルにとしては、例えばツイステッドネマチック(TN)モード、スーパーツイステッドネマチック(STN)モードや、水平配向(ECB)モード、垂直配向(VA)モード、インプレーンスイッチング(IPS)モード、フリンジフイールドスイッチング(FFS)モード、ベンドネマチック(OCB)モード、ハイブリッド配向(HAN)モード、強誘電性液晶(SSFLC)モード、反強誘電液晶(AFLC)モードの液晶セルなど種々の液晶セルが挙げられる。
【0058】
光源としては、直下型バックライト、サイドライト型バックライト、面状光源等を用いることができる。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散層、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板等の適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【0059】
本発明においては、長尺積層偏光板の反射型直線偏光子と吸収型偏光子の間、あるいは吸収型偏光子と液晶セルの間や、視認側偏光板の片面または両面に、常法に従って、透明保護層を設けた偏光板として用いることもできる。このような透明保護層は、液晶表示装置を形成する際に積層することもできるが、作業性等の観点からは、ポリマーによる塗布層として、または透明保護層のラミネート層等として事前に偏光子と積層した上で液晶表示装置に組み込むことが好ましい。
【0060】
透明保護層を構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物があげられる。なお、偏光子には、通常、透明保護層が接着剤層により貼り合わされるが、透明保護層として、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂を用いることができる。透明保護層中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などがあげられる。透明保護層中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。透明保護層中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
【0061】
また、透明保護層としては、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルム、例えば、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/または非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物があげられる。具体例としてはイソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物のフィルムがあげられる。フィルムは樹脂組成物の混合押出品などからなるフィルムを用いることができる。これらのフィルムは位相差が小さく、光弾性係数が小さいため偏光板の歪みによるムラなどの不具合を解消することができ、また透湿度が小さいため、加湿耐久性に優れる。
【0062】
透明保護層の厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1〜500μm程度である。特に1〜300μmが好ましく、5〜200μmがより好ましい。透明保護層は、5〜150μmの場合に特に好適である。
【0063】
なお、偏光子の両側に透明保護層を設ける場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料等からなる保護フィルムを用いてもよい。
【0064】
本発明の透明保護層としては、セルロース樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂および(メタ)アクリル樹脂から選ばれるいずれか少なくとも1つを用いるのが好ましい。
【0065】
セルロース樹脂は、セルロースと脂肪酸のエステルである。このようセルロースエステル系樹脂の具体例としでは、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリプロピオニルセルロース、ジプロピオニルセルロース等があげられる。これらのなかでも、トリアセチルセルロースが特に好ましい。トリアセチルセルロースは多くの製品が市販されており、入手容易性やコストの点でも有利である。トリアセチルセルロースの市販品の例としては、富士フィルム社製の商品名「UV−50」、「UV−80」、「SH−80」、「TD−80U」、「TD−TAC」、「UZ−TAC」や、コニカ社製の「KCシリーズ」等があげられる。一般的にこれらトリアセチルセルロースは、面内位相差(Re)はほぼゼロであるが、厚み方向位相差(Rth)は、〜60nm程度を有している。
【0066】
なお、厚み方向位相差が小さいセルロース樹脂フィルムは、例えば、上記セルロース樹脂を処理することにより得られる。例えばシクロペンタノン、メチルエチルケトン等の溶剤を塗工したポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ステンレスなどの基材フィルムを、一般的なセルロース系フィルムに貼り合わせ、加熱乾燥(例えば80〜150℃で3〜10分間程度)した後、基材フィルムを剥離する方法;ノルボルネン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂などをシクロペンタノン、メチルエチルケトン等の溶剤に溶解した溶液を一般的なセルロース樹脂フィルムに塗工し加熱乾燥(例えば80〜150℃で3〜10分間程度)した後、塗工フィルムを剥離する方法などがあげられる。
【0067】
また、厚み方向位相差が小さいセルロース樹脂フィルムとしては、置換度を制御した脂肪酸セルロース系樹脂フィルムを用いることができる。一般的に用いられるトリアセチルセルロースでは酢酸置換度が2.8程度であるが、好ましくは酢酸置換度を1.8〜2.7に制御することによってRthを小さくすることができる。上記脂肪酸置換セルロース系樹脂に、ジブチルフタレート、p−トルエンスルホンアニリド、クエン酸アセチルトリエチル等の可塑剤を添加することにより、Rthを小さく制御することができる。可塑剤の添加量は、脂肪酸セルロース系樹脂100重量部に対して、好ましくは40重量部以下、より好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは1〜15重量部である。
【0068】
環状ポリオレフィン樹脂の具体的としては、好ましくはノルボルネン系樹脂である。環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている樹脂があげられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとその共重合体(代表的にはランダム共重合体)、および、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、ならびに、それらの水素化物などがあげられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーがあげられる。
【0069】
環状ポリオレフィン樹脂としては、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン株式会社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR株式会社製の商品名「アートン」、TICONA社製の商品名「トパス」、三井化学株式会社製の商品名「アペル」等があげられる。
【0070】
(メタ)アクリル系樹脂としては、Tg(ガラス転移温度)が好ましくは115℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上、特に好ましくは130℃以上である。Tgが115℃以上であることにより、偏光板の耐久性に優れたものとなりうる。上記(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は特に限定きれないが、成形性当の観点から、好ましくは170℃以下である。(メタ)アクリル系樹脂からは、面内位相差(Re)、厚み方向位相差(Rth)がほぼゼロのフィルムを得ることができる。
【0071】
(メタ)アクリル系樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲内で、任意の適切な(メタ)アクリル系樹脂を採用し得る。例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)があげられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキルがあげられる。より好ましくはメタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂があげられる。
【0072】
(メタ)アクリル系樹脂の具体例として、例えば、三菱レイヨン株式会社製のアクリペットVHやアクリペットVRL20A、特開2004−70296号公報に記載の分子内に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂、分子内架橋や分子内環化反応により得られる高Tg(メタ)アクリル樹脂系があげられる。
【0073】
(メタ)アクリル系樹脂として、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を用いることもできる。高い耐熱性、高い透明性、二軸延伸することにより高い機械的強度を有するからである。
【0074】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂としては、特開2000−230016号公報、特開2001−151814号公報、特開2002−120326号公報、特開2002−254544号公報、特開2005−146084号公報などに記載の、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂があげられる。
【0075】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、好ましくは下記一般式(化1)で表される環擬構造を有する。
【0076】
【化1】

【0077】
式中、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜20の有機残基を示す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
【0078】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂の構造中の一般式(化1)で表されるラクトン環構造の含有割合は、好ましくは5〜90重量%、より好ましくは10〜70重量%、さらに好ましくは10〜60重量%、特に好ましくは10〜50重量%である。ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂の構造中の一般式(化1)で表されるラクトン環構造の含有割合が5重量%よりも少ないと、耐熱性、耐溶剤性、表面硬度が不十分になるおそれがある。ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂の構造中の一般式(化1)で表されるラクトン環構造の含有割合が90重量%より多いと、成形加工性に乏しくなるおそれがある。
【0079】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、質量平均分子量(重量平均分子量と称することも有る)が、好ましくは1000〜2000000、より好ましくは5000〜1000000、さらに好ましくは10000〜500000、特に好ましくは50000〜500000である。質量平均分子量が上記範囲から外れると、成型加工性の点から好ましくない。
【0080】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、Tgが好ましくは115℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上、特に好ましくは130℃以上である。Tgが115℃以上であることから、例えば、透明保護層として偏光板に組み入れた場合に、耐久性に優れたものとなる。上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は特に限定されないが、成形性などの観点から、好ましくは170℃以下である。
【0081】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、射出成形により得られる成形品の、ASTM−D−1003に準じた方法で測定される全光線透過率が、高ければ高いほど好ましく、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、さらに好ましくは90%以上である。全光線透過率は透明性の目安であり、全光線透過率が85%未満であると、透明性が低下するおそれがある。
【0082】
前記透明保護層は、正面位相差が40nm未満、かつ、厚み方向位相差が80nm未満であるものが、通常、用いられる。正面位相差Reは、Re=(nx−ny)×d、で表わされる。厚み方向位相差Rthは、Rth=(nx−nz)×d、で表される。また、Nz係数は、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)、で表される。[ただし、フィルムの遅相軸方向、進相軸方向及び厚さ方向の屈折率をそれぞれnx、ny、nzとし、d(nm)はフィルムの厚みとする。遅相軸方向は、フィルム面内の屈折率の最大となる方向とする。]。なお、透明保護層は、できるだけ色付きがないことが好ましい。厚み方向の位相差値が−90nm〜+75nmである保護フィルムが好ましく用いられる。かかる厚み方向の位相差値(Rth)が−90nm〜+75nmのものを使用することにより、透明保護層に起因する偏光板の着色(光学的な着色)をほぼ解消することができる。厚み方向位相差値(Rth)は、さらに好ましくは−80nm〜+60nm、特に−70nm〜+45nmが好ましい。
【0083】
一方、前記透明保護層として、正面位相差が40nm以上および/または、厚み方向位相差が80nm以上の位相差を有する位相差板を用いることができる。正面位相差は、通常、40〜200nmの範囲に、厚み方向位相差は、通常、80〜300nmの範囲に制御される。透明保護層として位相差板を用いる場合には、当該位相差板が透明保護層としても機能するため、薄型化を図ることができる。
【0084】
位相差板としては、高分子素材を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。位相差板の厚さも特に制限されないが、20〜150μm程度が一般的である。
【0085】
高分子素材としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルビニルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、セルロース樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、またはこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物などがあげられる。これらの高分子素材は延伸等により配向物(延伸フィルム)となる。
【0086】
液晶ポリマーとしては、例えば、液晶配向性を付与する共役性の直線状原子団(メソゲン)がポリマーの主鎖や側鎖に導入された主鎖型や側鎖型の各種のものなどをあげられる。主鎖型の液晶ポリマーの具体例としては、屈曲性を付与するスペーサー部でメソゲン基を結合した構造の、例えばネマチック配向性のポリエステル系液晶性ポリマー、ディスコティックポリマーやコレステリックポリマーなどがあげられる。側鎖型の液晶ポリマーの具体例としては、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート又はポリマロネートを主鎖骨格とし、側鎖として共役性の原子団からなるスペーサー部を介してネマチック配向付与性のパラ置換環状化合物単位からなるメソゲン部を有するものなどがあげられる。これらの液晶ポリマーは、例えば、ガラス板上に形成したポリイミドやポリビニルアルコール等の薄膜の表面をラビング処理したもの、酸化ケイ素を斜方蒸着したものなどの配向処理面上に液晶性ポリマーの溶液を展開して熱処理することにより行われる。
【0087】
位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであって良く、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものなどであっても良い。
【0088】
位相差板は、nx=ny>nz、nx>ny>nz、nx>ny=nz、nx>nz>ny、nz=nx>ny、nz>nx>ny、nz>nx=ny、の関係を満足するものが、各種用途に応じて選択して用いられる。なお、ny=nzとは、nyとnzが完全に同一である場合だけでなく、実質的にnyとnzが同じ場合も含む。
【0089】
例えば、nx>ny>nz、を満足する位相差板では、正面位相差は40〜100nm、厚み方向位相差は100〜320nm、Nz係数は1.8〜4.5を満足するものを用いるのが好ましい。例えば、nx>ny=nz、を満足する位相差板(ポジティブAプレート)では、正面位相差は100〜200nmを満足するものを用いるのが好ましい。例えば、nz=nx>ny、を満足する位相差板(ネガティブAプレート)では、正面位相差は100〜200nmを満足するものを用いるのが好ましい。例えば、nx>nz>ny、を満足する位相差板では、正面位相差は150〜300nm、Nz係数は0を超え、0.7以下を満足するものを用いるのが好ましい。また、上記の通り、例えば、nx=ny>nz、nz>nx>ny、またはnz>nx=ny、を満足する用いることができる。
【0090】
透明保護層は、適用される液晶表示装置に応じて適宜に選択できる。例えば、VA(Vertical Alignment,MVA,PVA含む)の場合は、偏光板の少なくとも片方(セル側)の透明保護層が位相差を有している方が望ましい。具体的な位相差として、Re=0〜240nm、Rth=0〜500nmの範囲である事が望ましい。三次元屈折率で言うと、nx>ny=nz、nx>ny>nz、nx>nz>ny、nx=ny>nz(一軸,二軸,Z化,ネガティブCプレート)の場合が望ましい。液晶セルの上下に偏光板を使用する際、液晶セルの上下共に、位相差を有している、または上下いずれかの透明保護層が位相差を有していてもよい。
【0091】
例えば、IPS(In−Plane Switching,FFS含む)の場合、偏光板の片方の透明保護層が位相差を有している場合、有していない場合のいずれも使用できる。例えば、位相差を有していない場合は、液晶セルの上下(セル側)ともに位相差を有していない場合が望ましい。位相差を有している場合は、液晶セルの上下ともに位相差を有している場合、上下のいずれかが位相差を有している場合が望ましい(例えば、上側にZ化、下側に位相差なしの場合や、上側にAプレート、下側にポジティブCプレートの場合)。位相差を有している場合、Re=−500〜500nm、Rth=−500〜500nmの範囲が望ましい。三次元屈折率で言うと、nx>ny=nz、nx>nz>ny、nz>nx=ny、nz>nx>ny(一軸,Z化,ポジティブCプレート、ポジティブAプレート)が望ましい。
【0092】
なお、前記位相差を有するフィルムは、位相差を有しない透明保護層に、別途、貼り合せて上記機能を付与することができる。
【0093】
前記透明保護層は、接着剤をと塗工する前に、表面改質処理を行ってもよい。具体的な処理としてば、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理、ケン化処理などがあげられる。
【0094】
前記透明保護層の偏光子を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであってもよい。
【0095】
ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を透明保護層の表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層(例えば、バックライト側の拡散板)との密着防止を目的に施される。
【0096】
またアンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて透明保護層の表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜20μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜70重量部程度であり、5〜50重量部が好ましい。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角などを拡大するための拡散層(視角拡大機能など)を兼ねるものであってもよい。
【0097】
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、透明保護層そのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護層とは別体のものとして設けることもできる。
【0098】
偏光子と透明保護層との接着処理には、接着剤が用いられる。接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリエステル等を例示できる。前記接着剤は、通常、水溶液からなる接着剤として用いられ、通常、0.5〜60重量%の固形分を含有してなる。上記の他、偏光子と透明保護層との接着剤としては、紫外硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤等があげられる。電子線硬化型偏光板用接着剤は、上記各種の透明保護層に対して、好適な接着性を示す。特に、接着性を満足することが困難であったアクリル樹脂に対しても良好な接着性を示す。
【0099】
偏光子と透明保護層との接着は、前記透明保護層と偏光子を、前記接着剤を用いて貼り合わせることにより行う。接着剤の塗布は、透明保護層、偏光子のいずれに行ってもよく、両者に行ってもよい。貼り合わせ後には、乾燥工程を施し、塗布乾燥層からなる接着層を形成する。偏光子と透明保護層の貼り合わせは、ロールラミネーター等により行うことができる。接着層の厚さは、特に制限されないが、通常30〜1000nm程度である。
【0100】
さらに、本発明においては、長尺積層偏光板と液晶セル(LC)の間や、視認側偏光板と液晶セルの間に、反射板や半透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視角補償フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層を1層または2層以上設けることができる。特に、本発明の長尺積層偏光板に、更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板、偏光板に更に視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板として用いることが好ましい。
【0101】
偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板について説明する。直線偏光を楕円偏光または円偏光に変えたり、楕円偏光または円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に、位相差板などが用いられる。特に、直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変える位相差板としては、いわゆる1/4波長板(λ/4板とも言う)が用いられる。1/2波長板(λ/2板とも言う)は、通
常、直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。
【0102】
楕円偏光板はスーパーツイストネマチック(STN)型液晶表示装置の液晶層の複屈折により生じた着色(青又は黄)を補償(防止)して、前記着色のない白黒表示する場合などに有効に用いられる。更に、三次元の屈折率を制御したものは、液晶表示装置の画面を斜め方向から見た際に生じる着色も補償(防止)することができて好ましい。円偏光板は、例えば画像がカラー表示になる反射型液晶表示装置の画像の色調を整える場合などに有効に用いられ、また、反射防止の機能も有する。上記した位相差板の具体例としては、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレンやその他のポリオレフィン、ポリアリレート、ポリアミドの如き適宜なポリマーからなるフィルムを延伸処理してなる複屈折性フィルムや液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであってよく、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものなどであってもよい。
【0103】
また上記の楕円偏光板や反射型楕円偏光板は、偏光板又は反射型直線偏光板と位相差板を適宜な組み合わせで積層したものである。かかる楕円偏光板等は、(反射型)偏光板と位相差板の組み合わせとなるようにそれらを液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層することによっても形成しうるが、前記の如く予め楕円偏光板等の光学フィルムとしたものは、品質の安定性や積層作業性等に優れて液晶表示装置などの製造効率を向上させうる利点がある。
【0104】
視角補償フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明にみえるように視野角を広げるためのフィルムである。このような視角補償位相差板としては、例えば位相差板、液晶ポリマー等の配向フィルムや透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を支持したものなどからなる。通常の位相差板は、その面方向に一軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視角補償フィルムとして用いられる位相差板には、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムや、面方向に一軸に延伸され厚さ方向にも延伸された厚さ方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルムなどが用いられる。傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理又は/及び収縮処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたものなどが挙げられる。位相差板の素材原料ポリマーは、先の位相差板で説明したポリマーと同様のものが用いられ、液晶セルによる位相差に基づく視認角の変化による着色等の防止や良視認の視野角の拡大などを目的とした適宜なものを用いうる。
【0105】
また良視認の広い視野角を達成する点などより、液晶ポリマーの配向層、特にディスコティック液晶ポリマーの傾斜配向層からなる光学異方性層をトリアセチルセルロースフィルムにて支持した光学補償位相差板が好ましく用いうる。
【0106】
偏光板に前記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板やその他の光学フィルムの接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0107】
前述した偏光板や、偏光板を少なくとも1層積層されている光学フィルムにはその片面または両面に、液晶セル等の他部材と接着するための粘着層を設けることもできる。粘着層を形成する粘着剤や粘着層の形成方法は、前述の前記反射型直線偏光子と吸収型偏光子の積層に好適に用いられるものと同様特に制限されない。また、粘着層等の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的にセパレータが仮着されてカバーされることが好ましい。
【実施例】
【0108】
以下に、本発明を実施例をあげて説明するが、本発明は以下に示した実施例に制限されるものではない。
【0109】
(実施例1)
長手方向に透過軸を有する1300mm幅の長尺反射型直線偏光子(3M製、D−BEF、偏光度:87%)にコロナ処理を施した。その上にロールコーターを用いて、リオトロピック液晶性色素(オプティバ製、LCポラライザー)を塗工幅1250mmで塗設したのち、80℃で2分間乾燥することで長手方向に透過軸を有する吸収型偏光子を形成し、長尺積層偏光板を得た。
【0110】
(参考例1)
トリアセチルセルロース(TAC)フィルム上に、実施例1と同様にリオトロピック液晶性色素の吸収型偏光子を塗設・形成した。この吸収型偏光子の吸収スペクトルを、偏光子を塗設していないTACフィルムをリファレンスとして、日立製作所製分光光度計U4100を用い、プリズム偏光子にて透過軸方向(塗設時のフィルム搬送方向)の直線偏光、吸収軸方向(搬送方向と垂直方向)の直線偏光のそれぞれについて測定した。吸収スペクトルを図6に示す。なお、550nmの光に対する吸光度は、透過軸方向が0.117、吸収軸方向が1.163であった。
【0111】
(実施例2)
ジアクリル液晶モノマー(BASF製 PalioColor LC-242)、重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ製 イルガギュアー906)、二色性色素(三井化学製 S−428)を97:3:0.5の重量比で配合した20重量%のシクロペンタノン溶液を、幅方向に配向軸を有する1330mm幅のPETフィルム(東レ製 ルミラー)にグラビアロールコーターを用いて、塗工幅1250mmで塗設し、80℃で2分間乾燥後、積算光量300mJの紫外線照射により硬化させ、長手方向に透過軸を有する吸収型偏光子層を形成した。
【0112】
得られた吸収型偏光子層を、アクリル粘着剤を用いて、実施例1で用いたのと同様の長尺反射型直線偏光子に、両者の透過軸が平行となるようにロール・トゥー・ロールでPETフィルム上から転写し、長尺積層偏光板を得た。
【0113】
(参考例2)
実施例2と同様の吸収型偏光子層をPETフィルム上からTACフィルム上に転写し、参考例1と同様に吸収スペクトルを測定した。吸収スペクトルを図7に示す。なお、550nmの光に対する吸光度は、透過軸方向が0.143、吸収軸方向が0.589であった。
【0114】
(実施例3)
反射型直線偏光子として、実施例1と同様の長尺反射型直線偏光子2枚を、両者の透過軸が平行となるようにロール・トゥー・ロールで積層して用いた以外は、実施例1と同様にして、長尺積層偏光板を得た。反射型偏光子を二枚積層した状態での偏光度は95%であった。
【0115】
(実施例4)
吸収型偏光子の液晶層の塗設厚みを大きくした以外は、実施例1と同様にして長尺積層偏光板を得た。なお、参考例1と同様に、吸収型偏光子層のみの吸収スペクトルを測定したところ、550nmの光に対する吸光度は、透過軸方向が0.210、吸収軸方向が2.037であった。
【0116】
(実施例5)
吸収型偏光子の液晶層の塗設厚みを小さくした以外は実施例1と同様にして長尺積層偏光板を得た。なお、参考例1と同様に、吸収型偏光子層のみの吸収スペクトルを測定したところ、550nmの光に対する吸光度は、透過軸方向が0.047、吸収軸方向が0.458であった。
【0117】
(実施例6)
市販のIPSモード液晶パネル(日立製、WOO7000)に、光源側偏光板として、実施例1で得られた長尺積層偏光板を、透過軸がパネルの長辺方向と平行となるように切り出して配置し、視認側偏光板として、ヨウ素系偏光板(日東電工製 SEG1423DU)を、透過軸がパネル短辺方向と平行となるように配置して液晶表示装置を得た。得られた液晶表示装置を照度200ルクスの外光下で、黒表示(電圧がOFFの状態)とした場合の正面観察時の視認性および、方位角45°、極角60°方向から斜視した場合の視認性、ならびに、白表示(電源ONの状態)での正面観察時の視認性を確認した。結果を表1に示す。
【0118】
(実施例7〜10、比較例1〜2)
光源側偏光板として、実施例2〜5の長尺積層偏光板、ならびに、反射型直線偏光子(D−BEF)、ヨウ素系吸収型偏光板(日東電工製 SEG1423DU)を用いた以外は実施例6と同様に液晶表示装置を作成し、視認性および斜視時視認性を確認した。結果を表1に示す。また、前記の実施例および比較例に関して、画面のアスペクト比が16:9のワイド型液晶表示装置に、光源側偏光板と視認側偏光板の透過軸が垂直となるように配置した場合に、最大対応可能な画面サイズ(長辺方向)の計算結果を表1に併せて記載する。
【0119】
【表1】

【0120】
全体の視認性を総合的に評価すると、実施例8>比較例1>実施例6>実施例7>実施例10>実施例9>>比較例2の順であった。比較例1は特に正面方向からの視認性には優れていたものの、本発明の実施例と比較すると、大画面への適用性に欠けるものであった。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】長尺の偏光板から、液晶表示装置に用いる偏光板を切り出す方法を模式的に表した概念図である。(a)は従来の幅方向に透過軸を有する長尺偏光板(P11およびP12)から、透過軸が垂直で大きさが等しい2枚の偏光板(P21およびP22)を切り出す場合、(b)は長手方向に透過軸を有する長尺偏光板(P13)と幅方向に透過軸を有する長尺偏光板(P14)から透過軸が垂直で大きさが等しい2枚の偏光板(P23およびP24)を切り出す場合を模式的に表している。図中の両矢印は各偏光子の透過軸方向を表す。
【図2】反射型直線偏光子(Pr)と吸収型偏光子(Pa)の積層の概念を模式的に表したものであり、(a)は従来技術、(b)は本発明の長尺積層偏光板(PL)を表す。図中の両矢印は各偏光子の透過軸方向を表す。
【図3】ノーマリーブラックモードの液晶表示装置の偏光板の配置の一例を示す概念図であり、図中の両矢印は偏光板の透過軸方向を表す。
【図4】転写法により、本発明の長尺積層偏光板(PL)を形成する際の、各工程における構成断面の一例を示す概念図である。
【図5】本発明の長尺積層偏光板(PL)を用いた液晶表示装置の構成断面の一例を示す概念図である。
【図6】参考例1の偏光子の透過軸方向および吸収軸方向の吸収スペクトルを表す。
【図7】参考例2の偏光子の透過軸方向および吸収軸方向の吸収スペクトルを表す。
【符号の説明】
【0122】
Pa 吸収型偏光子
Pb 吸収型偏光板
Pr 反射型直線偏光子
PL 長尺積層偏光板
P1 光源側偏光板
P2 視認側偏光板
BL 光源
LC 液晶セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム長手方向と透過軸が平行である反射型直線偏光子と、フィルム長手方向と透過軸が平行である吸収型偏光子とを、それぞれ少なくとも1層有し、両者の透過軸が平行となるように配置されている長尺積層偏光板。
【請求項2】
前記吸収型偏光子の波長550nmにおける吸光度が、透過軸方向の直線偏光に対して0.2以下であり、かつ、吸収軸方向の直線偏光に対して0.5〜2.5である請求項1記載の長尺積層偏光板。
【請求項3】
前記反射型直線偏光子の偏光度が、80%以上である請求項1または2記載の長尺積層偏光板。
【請求項4】
前記吸収型偏光子が、配向固定されたリオトロピック液晶性を示す物質、ホモジニアス配向したサーモトロピック液晶ポリマー、または、ホモジニアス配向した架橋性液晶ポリマーの少なくともいずれか1つを含む請求項1〜3のいずれか記載の長尺積層偏光板。
【請求項5】
フィルム幅が850mm以上である請求項1〜4のいずれか記載の長尺積層偏光板。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載の長尺積層偏光板の製造方法であって、リオトロピック液晶性を示す二色性色素を含有する溶液を、長尺基材上に、前記長尺基材の長手方向にせん断を加えながら塗設し配向を固定して吸収型偏光子を形成する工程、前記吸収型偏光子をフィルム長手方向と透過軸が平行である反射型直線偏光子上に積層する工程、を含む長尺積層偏光板の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか記載の長尺積層偏光板の製造方法であって、リオトロピック液晶性を示す二色性色素を含有する溶液を、フィルム長手方向と透過軸が平行である反射型直線偏光子上に、前記反射型直線偏光子の長手方向にせん断を加えながら塗設し配向を固定して吸収型偏光子を形成する工程を含む長尺積層板の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか記載の長尺積層偏光板の製造方法であって、幅方向に配向軸を有する長尺配向基材上に、重合性官能基を有する液晶モノマーと二色性色素を含有する溶液を塗布する工程、液晶モノマーを重合することでホモジニアス配向させフィルム長手方向と透過軸が平行である吸収型偏光子を形成する工程、前記吸収型偏光子をフィルム長手方向と透過軸が平行である反射型直線偏光子上に積層する工程、を含む長尺積層偏光板の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか記載の長尺積層偏光板の製造方法であって、幅方向に配向軸を有する長尺配向基材上にサーモトロピック液晶ポリマーと二色性色素を含有する溶液を塗布する工程、前記液晶ポリマーを液晶転移温度以上に加熱する工程、加熱後に冷却して配向を固定しホモジニアス配向させフィルム長手方向と透過軸が平行である吸収型偏光子を形成する工程、前記吸収型偏光子をフィルム長手方向と透過軸が平行である反射型直線偏光子上に積層する工程、を含む長尺積層偏光板の製造方法。
【請求項10】
前記長尺配向基材が、少なくとも幅方向に延伸された延伸フィルムである、請求項8または9記載の長尺積層偏光板の製造方法。
【請求項11】
前記反射型直線偏光子と、前記吸収型偏光子とを、両者の透過軸が平行となるようにロール・トゥー・ロールで積層する請求項6、8〜10のいずれか記載の長尺積層偏光板の製造方法。
【請求項12】
光源、光源側偏光板、液晶セル、視認側偏光板を、この順に有する液晶表示装置であって、
光源側偏光板が請求項1〜5のいずれか記載の長尺積層偏光板から切り出されたものであり、前記反射型直線偏光子が光源に近い側に、吸収型偏光子が液晶セルに近い側となるように配置されており、視認側偏光板が、ヨウ素系偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項13】
前記光源側偏光板の透過軸が液晶表示装置の長辺方向と平行であり、前記視認側偏光板の透過軸が液晶表示装置の短辺方向と平行である、請求項12記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−9062(P2009−9062A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172649(P2007−172649)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】