説明

積層剥離容器

【課題】比較的簡易な構造で、仮に底割れが発生しても、その影響を最小範囲に留めて積層型容器としての機能を維持できる積層剥離容器を提案する。
【解決手段】外層2と該外層との相溶性が低い内層3とで、容器本体がブロー成形される積層剥離容器1であって、前記容器本体下の底部7が、外側へ膨出する状態に成形した底壁9Aを、容器本体の胴部4と該底壁9Bとの間に位置する環状の底端壁8を中心に反転させて形成してあると共に、当該反転により前記胴部下端側の内壁に前記底壁9Bの一部が圧着された非剥離部20が設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外層に内層が剥離可能に積層された積層剥離容器に関する。より詳細には、自己形状保持能力がある外層に可撓性に富んだ袋状の内層を積層して構成した、いわゆるデラミボトルと称される容器でブロー成形によって得られる積層剥離容器に関する。
【背景技術】
【0002】
外層の内面に密着させて剥離可能に内層を積層すると共に、空気を内・外層間に導入する吸気孔を外層側に設けて空気を内外の層間に導入させることで、内層内の内容物に空気が直接、触れないように工夫された積層剥離容器が知られている。このような積層剥離容器は、一般にデラミボトルと称されている。
【0003】
上記積層剥離容器は、金型を用いてブロー成形により得えることができる。具体的には、相溶性の低い外層パリソンと内層パリソンとを共押出して積層パリソンとし、この積層パリソンをブロー成形することで積層剥離容器が得られる。ところが、ブロー成形用の金型のピンチオフ部で押し潰し成形される容器の底シール部(容器のピンチオフ、或いはピンチオフ部と称される場合もある)は、前記のように互いに相溶性の低い外層部分と内層部分とによる積層構造(重合圧着構造とも称される)となるので、剥離し易く、そのために予期しない衝撃を受けたときなどに容易に底割れするとの懸念があった。
仮に底割れが発生すると、その割れ部分から外気が流入するので、その外気に水分が含まれていると容器の底部に水分が残留するなどの不都合を招来してしまう。また、積層剥離容器をスクイズ仕様として採用していた場合などでは、一旦、剥離部分から流入した空気が容器を握ったときに流出する状態となるので、容器のスクイズ機能が十分に働かず、内容物の排出が困難になるという不都合が生じて容器への信頼性が低下してしまう。
【0004】
よって、従来から積層剥離容器における内外層の剥離に起因した底割れ防止に関して、種々複数の提案がなされている。例えば、特許文献1は容器本体の下部に内外層を共に外側へ屈曲させた剥離規制部を設けて、底シール部の破損を防止するようにした積層剥離容器を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−12786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
引用文献1による剥離規制部は、通常の成形後に容器本体下部の胴部に上下方向の力を加えて屈曲して外側へ膨出させ、内層の屈曲部を外層の屈曲部で挟持する構造としている。
しかしながら、屈曲した剥離規制部を設けるために成形後の容器を、更に押し潰し加工する圧潰工程が必要となる。また、この圧潰工程を行うための設備を準備し、圧潰時の条件や装置制御にも十分な配慮が必要となる。
【0007】
本発明の目的は、比較的簡易な構造で、仮に底割れが発生しても、その影響を最小範囲に留めて積層型容器としての機能を維持して、継続使用が可能な耐久性のある積層剥離容器を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、外層と該外層との相溶性が低い内層とで、容器本体がブロー成形される積層剥離容器であって、
前記容器本体下の底部が、外側へ膨出する状態に成形した底壁を、容器本体の胴部と該底壁との間に位置する環状の底端壁を中心に反転させて形成してあると共に、当該反転により前記胴部下端側の内壁に前記底壁の一部が圧着された非剥離部が設けてある、ことを特徴とする積層剥離容器により達成される。
【0009】
また、前記胴部の下端側に、縮径した括れ部が形成されており、該括れ部の下側は外側に向けて拡径する裾野形状の傾斜面とされていると共に、該傾斜面の下端は前記環状の底端壁に連続し、反転された前記底壁が前記傾斜面の内側の内壁と対面圧着して、前記非剥離部を形成している構造としてもよい。
【0010】
また、前記膨出状態に成形された底壁は、前記容器本体の下に向けて膨出しているドーム形状であり、該ドーム形状の中腹位置に環状の溝部を備えるもので、
前記環状の溝部と前記環状の底端壁との間の領域を反転させて当該容器が形成してあるものでもよい。
そして、前記底端壁は、前記容器本体の他の部分より薄肉に成形してあるのが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の積層剥離容器は、一旦、外側へ膨出する状態に成形した底壁を反転させることにより、完成形態の底部としている。これにより、反転の際、胴部下端側の内壁に前記底壁の一部が圧着された非剥離部を比較的簡単に形成できる。この非剥離部は剥離し易い内外層が反転により一体的となり圧着された強い構造となるので、この非剥離部で剥離の波及を抑制できる。よって、本発明によると、比較的簡易に形成した非剥離部で剥離波及を防止し、積層型容器の機能を維持できる耐久性に優れた積層剥離容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る積層剥離容器について示しており、ブロー成形された後で底部を成す底壁が膨出した状態で、半製品形態であるときの様子を示した正面図である。
【図2】図1で示す容器について、膨出部分を反転させて完成製品の形態にしたときの様子を示した正面図である。
【図3】本発明に係る他の形態の積層剥離容器について示しており、ブロー成形された後で底部を成す底壁が膨出した状態で、半製品形態であるときの様子を示した正面図である。
【図4】図3で示す容器について、膨出部分を反転させて完成製品の形態にしたときの様子を示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明する。
図1は本発明に係る積層剥離容器1について示しており、ブロー成形された後で底部を成す底壁が膨出した状態で、半製品形態であるときの様子を示した正面図である。そして、図2はこの膨出部分を反転させて、完成製品の形態にしたときの様子を示した正面図である。
なお、図2では、容器の右側下部を切り欠いて断面構成を示し、更に図1で示す半製品形態との対応が確認し易いように、その膨出部分を点線で示してある。また、図1で膨出状態の底壁を9A、図2で反転され完成位置の底壁を9Bで示している。
【0014】
積層剥離容器1は、容器の外観形状を形作る保形性を有する外層2と、その内側に剥離可能に密着された内層3とによる積層型合成樹脂容器である。例えば積層剥離容器1は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂材料による外層2と、この外層2に対して相溶性の低いナイロン、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート等による合成樹脂材料で撓み変形が自在な袋状に成形された内層3とを積層させたブロー成形容器である。
【0015】
この容器1の胴部4は円筒形状をしており、胴部4の上端に起立連設され、外周面に螺条を刻設した口筒部5の前後の外層2の部分には、外気を外層2と内層3とに間に導入するための吸気孔6が開設されており、やや拡径した胴部4の下端には底壁9を有する底部7が連設されている。
【0016】
底部7は、容器1の接地部となる環状の底端壁8と、この底端壁8に囲まれて容器1内側に若干、陥没している状態となる底壁9と、この底壁9と一体に連結し、パーティングライン上に位置して底壁9を横断する底シール部12とから構成されている。
上記説明から明らかであるが、環状の底端壁8は、外側の略直立した円筒状壁部分である胴部4と底壁9との間に位置して、これらを連結している構成部となっている。なお、底壁9は、完成製品の形態において容器1内側に陥没した状態となるが、その中心側の底中央部CPは逆に下側へ凸状となっている。この底中央部CPに底シール部12がある。この底中央部CPについては、後述する。
【0017】
さて、底壁9の底シール部12は、ブロー成形用金型のピンチオフ部によって形成されたものである。この底シール部12は、外層2用のパリソンと内層3用のパリソンとが共に押し潰されることで形成された扁平で突条形状とされている。この底シール部12に落下衝撃や容器使用時などに力が作用すると剥離が発して底割れとなる。本願発明に係る積層剥離容器は、この剥離が発生したときに、剥離の波及、拡大を抑制する構造が設けてある。更に、図1、2を参照して説明する。
【0018】
完成製品の形態である図2に示す底部7の底壁9Bは、図1に示した成形直後で外側へ膨出状態にある底壁9Aを、胴部4と底壁9との間に位置する環状の底端壁8を中心に反転させて形成したものである。
よって、上記反転により、胴部4下端側の内壁3に前記底壁9の一部が圧着される領域が形成されて、これが非剥離部20となる。この非剥離部20は、剥離し易い外層2と内層3とを含む構造であるが、反転により外側に位置する一対の外層2が内側で折り返された状態となる2層の内層3を圧着して保持する強固構造となる。よって、仮に底シール部12に剥離が発生しても、この非剥離部20が、その剥離を規制する領域として機能する。
また、非剥離部20は、環状の底端壁8を中心にして、外層2と内層3とを一体に反転(膨出している外側から容器の内側へとひっくり返す)して形成される結果として、その位置は底端壁8の近傍となる。よって、非剥離部20は、発生した剥離を底部7内に留めるように作用するので、これより容器上方へ剥離が波及するのを確実に防止できる。この積層剥離容器1は、仮に底割れが生じても剥離の拡大を防止できるので、その後においても積層型容器の機能を維持して継続的な使用が可能である。
【0019】
図2の右下に、非剥離部20の周辺を拡大して示している。これを参照して、より詳細に説明すると、胴部4下端側の内壁3−1と底壁9側の内壁3−2とがそれぞれの外側に位置している外層2−1、2−2により挟持したような積層構造が形成される。外層2は保形性を備えたポリエチレンなどの樹脂であり、適度な弾性を備えているので反転後に両側外層2−1、2−2で、その間の内層3−1、3−2を挟持圧着するような積層構造となるので、非剥離部20は剥離の伝播を確実に止めることができる。なお、反転後の両側外層2−1、2−2の位置や対向間隔を適宜に調整することで、内層3−1、3−2挟持圧着する状態、すなわち剥離に対する非剥離部20の剛性を必要に応じて変更できる。
【0020】
ところで、前記膨出状態に成形された底壁9Aは、容器本体の下に向けて膨出しているドーム形状であり、このドーム形状の中腹位置に環状の溝部10を備えている。この溝部10は、これより中心側の領域である底中央部CPを反転させないように作用する。すなわち、前述したように底壁9Aを反転させる操作をしたとき、実際には、環状の溝部10と前記環状の底端壁8との間の領域11が反転され、環状の溝部10より内側の底中央部CPは下向きに凸状の姿勢が維持されるように設計してある。例えば、図2で示すように膨出状態にあったときの溝部10上のTP−Aが反転によりTP−Bとなる。
上記底中央部CP内には、少なくとも底シール部12が含まれている。前述したように底シール部12は、剥離し易い構造である。そのため、仮に図1で示すドーム状の底壁9A内を全体に反転させると、反転完了後の構造では底シール部12が内側に盛り上がった頂点位置となる。このような構造では、底シール部12に引き剥がし力が作用して好ましくない。そこで、例示のように環状の溝部10を設けて底中央部CPは下向きの姿勢を維持するようにし、底シール部12に外力を作用させない構造としている。
更に、前記環状の底端壁8は、容器本体の他の構造部分より薄肉に成形しておくのが好ましい。これにより反転操作を容易、確実に行える。
なお、図1に示している底壁が膨出した状態の半製品形態から、図2で示す完成製品の形態にするには底壁を反転させることが必要である。しかし、この反転操作は、例えば環状の溝部10と環状の底端壁8との間の領域11を容器内側へ押し込むような簡単な操作で完了する。よって、底壁の反転工程は簡易に自動化が可能あり、また手動にて行うことも可能である。
【0021】
図3、図4は、外形形状が異なる他の実施形態に係る積層剥離容器1を示している。図3は本発明に係る他の積層剥離容器1について示しており、ブロー成形された後で底部を成す底壁が膨出した状態で、半製品形態であるときの様子を示した正面図である。そして、図4は図3で示す容器について、膨出部分を反転させて完成製品の形態にしたときの様子を示した正面図である。
図3、4は前掲の図1、2と同様に積層剥離容器を示している。よって、同一の部位については、同じ符号を付して重複する説明を省略し、図3、4で示す積層剥離容器について異なる点を説明する。
【0022】
この積層剥離容器1の場合は、胴部4の下端側に、縮径した括れ部30が形成されており、この括れ部30の下側は外側に向けて拡径する裾野形状の傾斜面31とされていると共に、この傾斜面31の下端は前述した環状の底端壁8に連続している。よって、膨出していた底壁9Aが反転されて底壁9Bとなったとき、底壁9B側の内壁3−2が傾斜面31内側の内壁3−1と対面圧着して、非剥離部20が形成される。
この図3、4に示す積層剥離容器1の場合は、胴部4下側は一定の広さを持った平坦な傾斜面31となっている。よって、反転された底壁9Bの内壁3−2が、この傾斜面31内側の内壁3−1に対して対面圧着され、圧着領域が相対的に広く確保された強固な構造となる。これにより、図3、4に示す非剥離部20では、剥離波及防止の機能をより高めた構造となる。よって、図3、4に示す積層剥離容器1は、より耐久性が向上したものとなる。
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、仮に底割れが発生しても非剥離部で剥離の波及を抑制して底部に留めることができるので、積層型容器の機能を維持し、継続使用可能な耐久性に優れた積層剥離容器を提供できる。そして、本願発明の積層剥離容器は、成形時に膨出させた底壁を、反転させるという簡易な工程の付加だけで非剥離部を形成できるので、従来の製造ラインに簡単な変更を加えて製造できる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明によれば、仮に底割れが生じても積層型容器本来機能が維持される信頼性の高い積層剥離容器を提供できるので、例えば密閉性が要求される内容物を収納する容器、或いはスクイズ仕様の容器などに広く活用できる。
【符号の説明】
【0025】
1 積層剥離容器
2 外層
3 内層
4 胴部
7 底部
8 環状の底端壁
9 底壁
10 環状の溝部
12 底シール部
20 非剥離部
30 括れ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層と該外層との相溶性が低い内層とで、容器本体がブロー成形される積層剥離容器であって、
前記容器本体下の底部が、外側へ膨出する状態に成形した底壁を、容器本体の胴部と該底壁との間に位置する環状の底端壁を中心に反転させて形成してあると共に、当該反転により前記胴部下端側の内壁に前記底壁の一部が圧着された非剥離部が設けてある、ことを特徴とする積層剥離容器。
【請求項2】
前記胴部の下端側に、縮径した括れ部が形成されており、該括れ部の下側は外側に向けて拡径する裾野形状の傾斜面とされていると共に、該傾斜面の下端は前記環状の底端壁に連続し、
反転された前記底壁が前記傾斜面の内側の内壁と対面圧着して、前記非剥離部を形成している、ことを特徴とする請求項1に記載の積層剥離容器。
【請求項3】
前記膨出状態に成形された底壁は、前記容器本体の下に向けて膨出しているドーム形状であり、該ドーム形状の中腹位置に環状の溝部を備えるもので、
前記環状の溝部と前記環状の底端壁との間の領域を反転させて当該容器が形成してある、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の積層剥離容器。
【請求項4】
前記底端壁は、前記容器本体の他の部分より薄肉に成形してある、ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の積層剥離容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−116516(P2012−116516A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267197(P2010−267197)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】