説明

積層反射フィルム及び多層光学フィルム

【課題】 各々、赤、緑及び青の光を反射する積層反射フィルムを得、更に、これらの積層反射フィルムを積層することにより、任意の色を反射する多層光学フィルムを得ること。
【解決手段】 (1)2種の超薄膜層、即ち第1基層と第2基層が交互に100〜500層積層されており且つその両端面には超薄膜層より厚いスキン層を有する積層反射フィルムであって、第1基層はアクリル系樹脂からなり、第2基層は、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート弾性体及び/又はポリエチレンテレフタレートとポリエチレングリコールとのブロック共重合体及び線状低密度ポリエチレンのポリマーブレンドからなり、縦方向及び横方向への延伸工程を経て製造されたものである、赤色の積層反射フィルム、緑色の積層反射フィルム及び青色の積層反射フィルム、及び(2)これらの積層反射フィルム中の少なくとも2種を積層してなる多層光学フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超薄膜層が多数に積層されてなり、光の反射領域を調節できる赤色、緑色及び青色の積層反射フィルムと、そのような積層反射フィルム2種以上を貼り合わせてなる多層光学フィルムに関する。本発明は、透明なプラスチック原料を用いて任意の色を反射するフィルムを提供するものである。本発明は、液晶パネルのバックライトモジュール、反射式電灯のかさ、反射式飾りパネル、反射板等の各種反射システムに応用することができる。
【背景技術】
【0002】
従来、反射フィルムとしては、プラスチックフィルム基材にアルミニウム、銅、銀等の金属を蒸着したフィルム、スパッタリングしたフィルム等が使用されていた。しかしながら、これらのフィルムを液晶パネルのバックライトモジュールに使用すると、電波障害が発生するため、金属を用いない反射フィルムが求められていた。
【0003】
特許文献1には、熱可塑性樹脂、充填剤、シリコーン類の混合物を必須成分とする樹脂組成物からなる光反射用フィルムが開示されている。
特許文献2には、それぞれ超薄膜である第1基層と第2基層を交互に20層以上積層してなる玉虫色反射フィルムが開示されている。第1基層にはアクリル系樹脂、特にポリメチルメタクリレート(以下、PMMAとする)を用い、第2基層には80〜95重量%のポリブチレンテレフタレート(以下、PBTとする)、3〜15重量%のPBT弾性体及び0.5〜15重量%の低密度ポリエチレン(以下、LLDPEとする)のボリマーブレンドを使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−333511号公報
【特許文献2】特開平9−300540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に開示されている積層フィルムは美しい玉虫色の反射フィルムであるが、玉虫色の反射をするに留まり、全体としては反射率の低い透明或いは半透明ともいうべきフィルムであった。特許文献2に開示されたフィルムは、第1基層がPMMAであり、その屈折率(n)は1.49であり、第2基層の屈折率(n)は1.52〜1.66である。玉虫色反射フィルムを形成する各超薄膜層の厚さは30〜500nm、好ましくは50〜400nmである。第1基層及び第2基層の屈折率の差が0.03以上であるため、多くの境界面によって反射された光波同士で増加的干渉が生じる。各基層を構成する素材が一定であれば、超薄膜層の厚さと層数を調節することにより、一定の主波長領域の光のみを反射することが可能になる。
【0006】
反射率と色強度は、屈折率の差、各層の厚さの割合、層の数及び厚さの均一性等に依存する。そこで、第1基層の素材も第2基層の素材もそれぞれ特定のものを使用すれば、第1基層と第2基層の各々の厚さと積層総数を調整することにより、赤、緑、青の光を主として反射する積層反射フィルムを各別に製造することができる。さらに、これらの積層反射フィルムを組合せて接着或いは融着することにより、任意の反射色を有する積層反射フィルムを製造することができる。
【0007】
本発明は、特許文献2の玉虫色反射フィルムを改良し、光の3原色である赤色反射フィルム、緑色反射フィルム、青色反射フィルムを製造し、これらのフィルムを組合せることにより、任意の色を反射する多層光学フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、超薄膜層である第1基層と第2基層とが交互に積層され、両端面には超薄膜層より厚いスキン層を有し、主として630〜780nmの波長の光の80%以上を反射する積層反射フィルムであって、多数の第1基層はそれぞれ実質的に均一な厚みを有し、多数の第2基層はそれぞれ実質的に均一な厚みを有し、層の総数は100〜500であり、第1基層はアクリル系樹脂からなり、第2基層とスキン層は、80〜95質量%のポリブチレンテレフタレート、3〜15質量%のポリブチレンテレフタレート弾性体及び/又はポリエチレンテレフタレートとポリエチレングリコールとのブロック共重合体及び0.5〜5質量%の線状低密度ポリエチレンからなるポリマーブレンドからなり、第1基層は、第1基層と第2基層との合計の30〜50質量%を占め、第2基層は、第1基層と第2基層との合計の50〜70質量%を占め、且つ、この積層反射フィルムは、縦方向及び横方向に延伸されて製造されたものであることを特徴とする赤色の積層反射フィルムに関する。
【0009】
また、本発明は、超薄膜層である第1基層と第2基層とが交互に積層され、両端面には超薄膜層より厚いスキン層を有し、主として490〜630nmの波長の光の80%以上を反射する積層反射フィルムであって、多数の第1基層はそれぞれ実質的に均一な厚みを有し、多数の第2基層はそれぞれ実質的に均一な厚みを有し、層の総数は100〜500であり、第1基層はアクリル系樹脂からなり、第2基層とスキン層は、80〜95質量%のポリブチレンテレフタレート、3〜15質量%のポリブチレンテレフタレート弾性体及び/又はポリエチレンテレフタレートとポリエチレングリコールとのブロック共重合体及び0.5〜5質量%の線状低密度ポリエチレンからなるポリマーブレンドからなり、第1基層は、第1基層と第2基層との合計の30〜50質量%を占め、第2基層は、第1基層と第2基層との合計の50〜70質量%を占め、且つ、この積層反射フィルムは、縦方向及び横方向に延伸されて製造されたものであることを特徴とする緑色の積層反射フィルムに関する。
【0010】
さらに、本発明は、超薄膜層である第1基層と第2基層とが交互に積層され、両端面には超薄膜層より厚いスキン層を有し、主として380〜490nmの波長の光の80%以上を反射する積層反射フィルムであって、多数の第1基層はそれぞれ実質的に均一な厚みを有し、多数の第2基層はそれぞれ実質的に均一な厚みを有し、層の総数は100〜500であり、第1基層はアクリル系樹脂からなり、第2基層とスキン層は、80〜95質量%のポリブチレンテレフタレート、3〜15質量%のポリブチレンテレフタレート弾性体及び/又はポリエチレンテレフタレートとポリエチレングリコールとのブロック共重合体及び0.5〜5質量%の線状低密度ポリエチレンからなるポリマーブレンドからなり、第1基層は、第1基層と第2基層との合計の30〜50質量%を占め、第2基層は、第1基層と第2基層との合計の50〜70質量%を占め、且つ、この積層反射フィルムは、縦方向及び横方向に延伸されて製造されたものであることを特徴とする青色の積層反射フィルムに関する。
【0011】
加えて、本発明は、上記赤色の積層反射フィルム、上記緑色の積層反射フィルム、及び上記青色の積層反射フィルムの中の少なくとも2種を、接着剤を介して或いは相向かい合うスキン層同士の熱融着により接合してなる多層光学フィルムに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、光の3原色である赤、緑、青の各々の積層反射フィルムを得、これらを組合せることにより、任意の反射光を有する多層光学フィルムを製造することが可能となった。本発明の積層反射フィルム及び多層光学フィルムは、第1基層を構成するアクリル系樹脂と第2基層を構成するポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)弾性体及び/又はポリエチレンテレフタレートとポリエチレングリコールとのブロック共重合体及び線状低密度ポリエチレン(LLDPE)のポリマーブレンドとの適合性が優れているために強靱であり、層間剥離を生じることのない安定したフィルムである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】加法混色原理の各色の関係図である。
【図2】本発明の単一の積層反射フィルムの構造を示す模式図である。
【図3】2種の積層反射フィルムからなる多層光学フィルムを示す模式図である。
【図4】3種の積層反射フィルムからなる多層光学フィルムを示す模式図である。
【図5】分光光度計で別々に測定した2種類の積層反射フィルムの反射率と、これらの積層反射フィルムを接合してなる多層光学フィルムの反射率を示すグラフである。
【図6】分光光度計で別々に測定した3種類の積層反射フィルムの反射率と、これらの積層反射フィルムを接合してなる多層光学フィルの反射率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、第1基層と、第2基層と隣接するスキン層との合計は、積層反射フィルム全体の30〜50質量%を占め、アクリル系樹脂からなる。具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等の比較的低分子量のアクリル酸系単量体の重合体、或いは主成分であるこれらの単量体と、そのような単量体と重合可能な他の単量体との共重合体である。ポリメチルメタクリレート(PMMA)が特に好ましい。
【0015】
本発明において、第2基層と、第1基層と隣接するスキン層との合計は、積層反射フィルム全体の50〜70質量%を占める。その材質は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)と、ポリブチレンテレフタレート(PBT)弾性体と、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)のポリマーブレンドである。PBTは、1,4−ブタンジオールとテレフタール酸或いはジメチルテレフタール酸との触媒性重縮合反応により得られる重合体である。PBT弾性体とは、PBT部分を有し且つ弾性を示す重合体であれば、本発明の目的を達成できる。PBT弾性体の一例として、PBT部分とポリエチレングリコール部分とを有するブロック共重合体が挙げられる。PBT弾性体に代えて又はPBT弾性体と共に、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレングリコールとのブロック共重合体を用いることも出来る。LLDPEは、その比重が0.85〜0.93でメルトインデックス(MI)が1〜50のものが好ましい。
【0016】
第2基層は、80〜95質量%、好ましくは85〜93質量%のPBTと、3〜15質量%、好ましくは5〜10質量%のPBT弾性体及び/又はポリエチレンテレフタレートとポリエチレングリコールとのブロック共重合体と、0.5〜5質量%、好ましくは1〜4質量%のLLDPEとを溶融混合したボリマーブレンドから製造される。
【0017】
積層反射フィルムを製造するには、先ず、第1基層の原料と第2基層の原料とを別々に2機の押出機で溶融する。これらを希望する層パターンに配列するためにフィードブロックとシングルマニホールドフラットフィルムダイとを組合せて使用する、冷却ロールキャスティング法によって製造する。前述の溶融された樹脂は、シングルマニホールドフラットフィルムダイの作用により拡張され、最終的にシングルマニホールドフラットフィルムダイの出口の厚さまで薄く伸ばされる。交互に積重ねられる第1基層及び第2基層の各々の厚さは、フィードボードモジュールの調整により任意に設定できる。製造時、最も外側の2層(両端面に位置する層)は、内部に積重ねられた第1基層や第2基層に比して厚くなる。これをスキン層と呼ぶ。
【0018】
本発明の積層反射フィルムは、外側(両端面それぞれ)にスキン層があり、それらの間には多数の交互に重ねられた第1基層及び第2基層が存在する積層フィルムを、縦方向及び横方向に延伸することによって製造される。第1基層を構成するアクリル系樹脂の屈折率は、縦横両方向に延伸してもほとんど変化しない。一方、第2基層の材料であるポリマーブレンドは、縦横両方向に延伸することにより、その屈折率が増加する。延伸することによって第1基層と第2基層の屈折率の差を広げ、更に高い反射率を得る。延伸倍率は、縦、横各々2〜5倍、好ましくは縦、横各々2.5〜4.5倍、より好ましくは縦、横各々3〜4倍である。
【0019】
赤色の積層反射フィルムは、延伸後の超薄膜層の厚さが、第1基層は100〜140nm、好ましくは105〜125nmであり、第2基層が200〜280nm、好ましくは210〜250nmである。緑色の積層反射フィルムは、延伸後の超薄膜層の厚さが、第1基層は75〜100nm、好ましくは80〜90nmであり、第2基層が150〜200nm、好ましくは160〜180nmである。青色の積層反射フィルムは、延伸後の超薄膜層の厚さが、第1基層は50〜75nm、好ましくは55〜75nmであり、第2基層が100〜150nm、好ましくは110〜150nmである。これらの積層反射フィルムにおいて、各第2基層の厚さは、各第1基層の厚さの約2倍であることが好ましい。
【0020】
本発明で得られた赤色の積層反射フィルムと、緑色の積層反射フィルムと、青色の積層反射フィルムの中の少なくとも2種を貼合せることにより、図1に示す加法混色原理に従った反射色を有する多層光学フィルムを得ることができる。貼合せには、接着剤を使用する方法、両フィルムのスキン層同士を融着させる方法等、公知の方法を採用することができる。
【実施例】
【0021】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0022】
実施例1
図2に示す赤色光を反射する積層反射フィルム1を、以下のようにして製造する。
第1基層111及びスキン層114の材料として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を使用した。第2基層112及びスキン層113の材料として、粘度が1Pa.sのPBTと、PBTとポリエチレングリコールとのブロック共重合体であるPBT弾性体と、密度が0.92でメルトインデックスが2のLLDPEを使用した。これらの構成成分の配合比率は、PBT90質量%、PBT弾性体7質量%、LLDPE3質量%であった。
【0023】
第1基層111用原料と、第2基層112用原料を、温度がそれぞれ異なる2台の乾燥機中に保存した。2台の押出し機を用い、一方の押出し機には第1基層111の原料であるPMMAを装入し、作業温度230〜250℃に設定し、押出量は120〜150kg/時間に設定した。他方の押出し機には第2基層112の原料を装入し、作業温度は240〜260℃、押出し量は150〜200kg/時間に設定した。
【0024】
上記押出し機から供給された溶融樹脂は、2個のフィードブロックを有するシステムに送られた。このシステムを制御して、第1基層と第2基層を交互に有する140層のフィルムを得、第2基層の樹脂を用いて最上層のスキン層113と最下層のスキン層114を形成してフィルムを得た。これを、シングルマニホールドフラットフィルムダイを経て30〜40℃の高温定型ロールキャスティングに送った。更に常温定型ロールキャスティングに送り、線速度を14〜17m/分としてフィルムの厚さと幅を精密に制御し、合計142層からなる厚さ約320μmのフィルムを得た。
なお、使用した装置は、Fong Kee International Machinery Co., Ltd.(No.52, Lane 737, Chung Cheng North Road, Yuen-Kang City, Taiwan)製のMultilayer Extrusion Cast Film Line No.F-001であった。
【0025】
その後、作業温度が150〜220℃の2軸延伸機を用い、このフィルムを縦方向(MDO)3.5倍、横方向(TDO)3.5倍に延伸し、厚さ25μmの赤色の積層反射フィルム1を得た。このフィルムの反射メインローブのバンド幅は約220nm、平均反射率は95%であった。
【0026】
実施例2
線速度を19〜23m/分に調整したこと以外は、実施例1と同様にして高温定型ロールキャスティングと常温定型ロールキャスティングを経過させ、厚さ230μmの積層フィルムを得た。実施例1と同様にして2軸延伸を行い、厚さ18μmの緑色の積層反射フィルムを得た。この緑色積層反射フィルムの反射メインローブのバンド幅は約220nm、平均反射率は95%であった。
【0027】
実施例3
線速度を24〜27m/分に調整したこと以外は、実施例1と同様にして高温定型ロールキャスティングと常温定型ロールキャスティングを経過させ、厚さ200μmの積層フィルムを得た。実施例1と同様にして2軸延伸を行い、厚さ16μmの青色の積層反射フィルムを得た。この青色積層反射フィルムの反射メインローブのバンド幅は約220nm、平均反射率は95%であった。
【0028】
実施例4
実施例1で製造した赤色反射フィルムと実施例3で製造した青色反射フィルムを接着した。アクリル系接着剤をトルエンで2倍に希釈し、保存タンクに入れた。ロール型押出し塗布機から供給される赤色反射フィルム上に、狭窄した鋳型から引出された希釈された接着剤を均一に塗布し、この上に青色反射フィルムを重ね、乾燥機により乾燥した。全体の層数が285層で、厚さ46μm、赤、青の2色を反射する、図3に示すような、多層光学フィルム2が得られた。
【0029】
日立分光光度計(U−4100)を用い、多層光学フィルムの反射率分布を測定した結果を図5に示した。図5から明らかなように、接着後の多層光学フィルム2(図5においては「反射フィルム組合せ」と表示)は、赤及び青の積層反射フィルム1,1(図5においては、それぞれ「赤色反射フィルム、「青色反射フィルム」と表示)の相加反射区間を有した。赤及び青の積層反射フィルム1,1を積層接着後も、赤色の積層反射フィルムは、反射メインローブのバンド幅は約220nm、平均反射率は95%を維持し、青色の積層反射フィルムは、反射メインローブのバンド幅は約220nm、平均反射率は95%を維持していた。
【0030】
実施例5
実施例1、実施例2及び実施例3で製造した赤色の積層反射フィルムと、緑色の積層反射フィルムと、青色の積層反射フィルムを、実施例4に示す方法で接着して、図4に示す多層光学反射フィルム3を製造した。この多層光学反射フィルム3は、全体の層数が428層で、厚さは60μm、赤、緑、青の各色を反射するフィルムであった。
【0031】
日立分光光度計(U−4100)を用い、多層光学フィルム3の反射率分布を測定した結果を図6に示した。図6から明らかなように、接着後の多層光学フィルム3(図6においては「反射フィルム組合せ」と表示)は、赤、緑、青の各積層反射フィルム1,1,1(図6においては、それぞれ「赤色反射フィルム、「緑色反射フィルム」、「青色反射フィルム」と表示」の相加反射区間を有した。赤、緑、青の積層反射フィルムを積層接着後も、赤色の積層反射フィルムは、反射メインローブのバンド幅は約220nm、平均反射率は95%を維持し、緑色の積層反射フィルムは、反射メインローブのバンド幅は約220nm、平均反射率は95%を維持し、青色の積層反射フィルムは、反射メインローブのバンド幅は約220nm、平均反射率は95%を維持していた。
【0032】
実施例6
第2基層112を押出す際の押出し量を300kg/時間とし、第1基層111を押出す際の押出し量を200kg/時間とし、層数を258層とした以外は、実施例1と同様にして、厚さ42μmの赤色反射フィルムを得、実施例2と同様にして厚さ32μmの緑色反射フィルムを得、実施例3と同様にして厚さ24μmの青色反射フィルムを得た。これらを実施例5と同様の方法で接着し、全体の層数が776層で、厚さが110μmの多層光学フィルムを製造した。赤色、緑色及び青色の反射フィルムは、それぞれ反射メインローブのバンド幅は300nmであり、平均反射率は99%であった。
【0033】
実施例4ないし実施例6の結果をまとめて表1に示した。このように、各々が光の3原色のいずれかを反射するフィルムの中、2種或いは3種を接着或いは融着により積層することにより、フィルムの光反射波長領域を調整することができる。その結果、採用する設備の要求に応じて、任意の波長領域の反射光を得る事が可能となった。
【0034】
【表1】

【0035】
実施例7
縦方向(MDO)及び横方向(TDO)の延伸倍率を、それぞれ2.5とした以外は、実施例5と同様にして多層光学フィルム3を得た。この場合、各色のフィルムの反射メインローブのバンド幅は150nmと減少し、平均反射率も80%と減少した。
【0036】
実施例8
縦方向(MDO)及び横方向(TDO)の延伸倍率を、それぞれ4.5とした以外は、実施例5と同様にして多層光学フィルム3を得た。この場合、各色のフィルムの反射メインローブのバンド幅は230nmと増加し、平均反射率も96%と増加したが、いずれも僅かな増加に止まった。
【0037】
比較例1
第2基層112の押出し量を75kg/時間とし、第1基層111の押出し量を60kg/時間とし、線速度を約50m/分とした以外は、実施例1と同様にして多層フィルムを製造し、高温定型ロールキャスティングと常温定型ロールキャスティングを経過させた。その後の延伸工程は行わなかった。厚さ320μm、層数142層の多層反射フィルムが得られた。このフィルムの反射メインローブのバンド幅は140nmであり、平均反射率は55%であった。
【0038】
比較例2
線速度を約50m/分とした以外は、比較例1と同様にして、高温定型ロールキャスティングと常温定型ロールキャスティングを経過させ、その後の延伸工程は行わなかった。厚さ230μm、層数142層の多層反射フィルムが得られた。このフィルムの反射メインローブのバンド幅は140nmであり、平均反射率は55%であった。
【0039】
比較例3
線速度を約60m/分とした以外は、比較例1と同様にして、高温定型ロールキャスティングと常温定型ロールキャスティングを経過させ、その後の延伸工程は行わなかった。厚さ200μm、層数142層の多層反射フィルムが得られた。このフィルムの反射メインローブのバンド幅は140nmであり、平均反射率は55%であった。
【符号の説明】
【0040】
1: 積層反射フィルム
2: 積層反射フィルムを2層積層した多層光学フィルム
3: 積層反射フィルムを3層積層した多層光学フィルム
111: 第1基層
112: 第2基層
113,114: スキン層
115: 接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超薄膜層である第1基層と第2基層とが交互に積層され、両端面には超薄膜層より厚いスキン層を有し、主として630〜780nmの波長の光の80%以上を反射する積層反射フィルムであって、多数の第1基層はそれぞれ実質的に均一な厚みを有し、多数の第2基層はそれぞれ実質的に均一な厚みを有し、層の総数は100〜500であり、第1基層はアクリル系樹脂からなり、第2基層とスキン層は、80〜95質量%のポリブチレンテレフタレート、3〜15質量%のポリブチレンテレフタレート弾性体及び/又はポリエチレンテレフタレートとポリエチレングリコールとのブロック共重合体及び0.5〜5質量%の線状低密度ポリエチレンからなるポリマーブレンドからなり、第1基層は、第1基層と第2基層との合計の30〜50質量%を占め、第2基層は、第1基層と第2基層との合計の50〜70質量%を占め、且つ、この積層反射フィルムは、縦方向及び横方向に延伸されて製造されたものであることを特徴とする赤色の積層反射フィルム。
【請求項2】
延伸倍率が、縦、横それぞれ2乃至5倍である、請求項1に記載する赤色の積層反射フィルム。
【請求項3】
延伸後の第1基層の厚さが100〜140nmであり且つ第2基層の厚さが200〜280nmである、請求項1又は2に記載する赤色の積層反射フィルム。
【請求項4】
超薄膜層である第1基層と第2基層とが交互に積層され、両端面には超薄膜層より厚いスキン層を有し、主として490〜630nmの波長の光の80%以上を反射する積層反射フィルムであって、多数の第1基層はそれぞれ実質的に均一な厚みを有し、多数の第2基層はそれぞれ実質的に均一な厚みを有し、層の総数は100〜500であり、第1基層はアクリル系樹脂からなり、第2基層とスキン層は、80〜95質量%のポリブチレンテレフタレート、3〜15質量%のポリブチレンテレフタレート弾性体及び/又はポリエチレンテレフタレートとポリエチレングリコールとのブロック共重合体及び0.5〜5質量%の線状低密度ポリエチレンからなるポリマーブレンドからなり、第1基層は、第1基層と第2基層との合計の30〜50質量%を占め、第2基層は、第1基層と第2基層との合計の50〜70質量%を占め、且つ、この積層反射フィルムは、縦方向及び横方向に延伸されて製造されたものであることを特徴とする緑色の積層反射フィルム。
【請求項5】
延伸倍率が、縦、横それぞれ2乃至5倍である、請求項4に記載する緑色の積層反射フィルム。
【請求項6】
延伸後の第1基層の厚さが75〜100nmであり且つ第2基層の厚さが150〜200nmである、請求項4又は5に記載する緑色の積層反射フィルム。
【請求項7】
超薄膜層である第1基層と第2基層とが交互に積層され、両端面には超薄膜層より厚いスキン層を有し、主として380〜490nmの波長の光の80%以上を反射する積層反射フィルムであって、多数の第1基層はそれぞれ実質的に均一な厚みを有し、多数の第2基層はそれぞれ実質的に均一な厚みを有し、層の総数は100〜500であり、第1基層はアクリル系樹脂からなり、第2基層とスキン層は、80〜95質量%のポリブチレンテレフタレート、3〜15質量%のポリブチレンテレフタレート弾性体及び/又はポリエチレンテレフタレートとポリエチレングリコールとのブロック共重合体及び0.5〜5質量%の線状低密度ポリエチレンからなるポリマーブレンドからなり、第1基層は、第1基層と第2基層との合計の30〜50質量%を占め、第2基層は、第1基層と第2基層との合計の50〜70質量%を占め、且つ、この積層反射フィルムは、縦方向及び横方向に延伸されて製造されたものであることを特徴とする青色の積層反射フィルム。
【請求項8】
延伸倍率が、縦、横それぞれ2乃至5倍である、請求項7に記載する青色の積層反射フィルム。
【請求項9】
延伸後の第1基層の厚さが50〜75nmであり且つ第2基層の厚さが100〜150nmである、請求項7又は8に記載する青色の積層反射フィルム。
【請求項10】
請求項1、2又は3に記載する赤色の積層反射フィルム、請求項4、5又は6に記載する緑色の積層反射フィルム、及び請求項7、8又は9に記載する青色の積層反射フィルムの中の少なくとも2種を、接着剤を介して或いは相向かい合うスキン層同士の熱融着により接合してなることを特徴とする多層光学フィルム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−113003(P2011−113003A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271254(P2009−271254)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(509329660)
【Fターム(参考)】