説明

積層型バンドパスフィルタ

【課題】第2の共振器が第1の共振器と第3の共振器の各々と誘導性結合する積層型バンドパスフィルタにおいて、第1の共振器と第3の共振器との間の誘導性結合を弱めると共に、任意の2つの共振器間の誘導性結合の調整を容易にする。
【解決手段】バンドパスフィルタ1は、積層体20と一体化された第1ないし第3の共振器と、積層体20の底面20Bに配置されてグランドに接続される外面導体部24と、積層体20の上面20Aに配置された外面導体部25を備えている。第1の共振器は第1のインダクタを有し、第2の共振器は第2のインダクタを有し、第3の共振器は第3のインダクタを有している。第2のインダクタは、外面導体部24,25を電気的に接続する2つの内部導体層341,441を有している。導体層341は第1のインダクタと誘導性結合し、導体層441は第3のインダクタと誘導性結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層された複数の誘電体層を有する積層体内に設けられた3つ以上の共振器を備えた積層型バンドパスフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線LAN(ローカルエリアネットワーク)用の通信装置、ブルートゥース(登録商標)規格の通信装置、ワイマックス(WiMAX(登録商標);Worldwide Interoperability for Microwave Access)規格の通信装置、携帯電話機等の無線通信装置では、小型化、薄型化の要求が強いことから、それに用いられる電子部品の小型化、薄型化が要求されている。上記無線通信装置における電子部品の一つに、送信信号や受信信号を濾波するバンドパスフィルタがある。このバンドパスフィルタにおいても、小型化、薄型化が要求されている。そこで、上記の無線通信装置における使用周波数帯域に対応でき、且つ小型化、薄型化を実現可能なバンドパスフィルタとして、例えば特許文献1ないし4に示されるように、積層された複数の誘電体層を有する積層体内に設けられた複数の共振器を備えた積層型バンドパスフィルタが提案されている。この積層型バンドパスフィルタにおいて、隣接する2つの共振器は電磁界結合している。電磁界結合には、誘導性結合と容量性結合とが含まれる。
【0003】
特許文献1ないし3に記載された積層型バンドパスフィルタでは、複数の共振器を構成する複数の導体層が、積層体の外面のうち、支持体に対して積層型バンドパスフィルタを実装する際に支持体に向く面(底面)に対して垂直に配置されている。特許文献1および2に記載された積層型バンドパスフィルタでは、複数の共振器を構成する複数の導体層は、積層体内において、複数の誘電体層が積層された方向(以下、積層方向とも言う。)における異なる位置に配置されている。特許文献3に記載された積層型バンドパスフィルタでは、2つの共振器を構成する2つの導体層が1つの誘電体層の上に配置されている。特許文献4に記載された積層型バンドパスフィルタでは、第2の共振器が第1の共振器と第3の共振器の各々と誘導性結合し、第1ないし第3の共振器がそれぞれインダクタを有し、第1の共振器のインダクタと第3の共振器のインダクタにおける電磁波の進行方向と、第2の共振器のインダクタにおける電磁波の進行方向が互いに直交している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−77703号公報
【特許文献2】特開平6−90102号公報
【特許文献3】特開平10−335905号公報
【特許文献4】特開2009−124211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
第1ないし第3の共振器を備え、第2の共振器が第1の共振器と第3の共振器の各々と誘導性結合する積層型バンドパスフィルタでは、一般的には、特許文献1,2に記載されているように第2の共振器が第1の共振器と第3の共振器の間に配置される。このような構造の積層型バンドパスフィルタでは、小型化、薄型化しようとすると、第1の共振器と第2の共振器との間の距離と、第2の共振器と第3の共振器との間の距離がそれぞれ短くなる。すると、第1の共振器と第2の共振器との間の誘導性結合と、第2の共振器と第3の共振器との間の誘導性結合が、それぞれが強くなりすぎると共に、第1の共振器と第3の共振器との間でも、ある程度の強さの意図しない誘導性結合が生じる。この場合には、所望のバンドパスフィルタの特性を実現することが困難になるという問題が発生する。具体的には、第1の共振器と第2の共振器との間の誘導性結合と、第2の共振器と第3の共振器との間の誘導性結合が、それぞれが強くなりすぎると、通過帯域幅が所望の幅と異なってしまうと共に、通過帯域よりも低周波側における減衰量が小さくなる。また、第1の共振器と第3の共振器との間の誘導性結合が強くなりすぎると、通過帯域よりも低周波側における減衰量が小さくなる。
【0006】
第1ないし第3の共振器を備えた積層型バンドパスフィルタにおいて、小型化、薄型化しながら、所望のバンドパスフィルタの特性を実現するためには、第1の共振器と第3の共振器との間の意図しない誘導性結合を弱めることができると共に、第1の共振器と第2の共振器との間の誘導性結合と、第2の共振器と第3の共振器との間の誘導性結合と、第1の共振器と第3の共振器との間の誘導性結合とを、互いに独立して調整できることが望ましい。
【0007】
しかし、第2の共振器が第1の共振器と第3の共振器の間に配置された一般的な構造の積層型バンドパスフィルタでは、第1の共振器と第3の共振器との間の誘導性結合を弱めると共に、第1の共振器と第2の共振器との間の誘導性結合と、第2の共振器と第3の共振器との間の誘導性結合と、第1の共振器と第3の共振器との間の誘導性結合とを、互いに独立して調整することは難しい。例えば、一般的な構造の積層型バンドパスフィルタでは、第1の共振器と第3の共振器との間の誘導性結合を弱めるために、第1の共振器と第3の共振器との間の距離を大きくすると、第1の共振器と第2の共振器との間の距離と、第2の共振器と第3の共振器との間の距離も大きくなってしまい、第1の共振器と第2の共振器との間の誘導性結合と、第2の共振器と第3の共振器との間の誘導性結合も弱くなってしまう。
【0008】
特許文献4に記載された積層型バンドパスフィルタでは、第1の共振器のインダクタと第3の共振器のインダクタにおける電磁波の進行方向と、第2の共振器のインダクタにおける電磁波の進行方向が互いに直交していることから、第1の共振器と第2の共振器との間の誘導性結合と、第2の共振器と第3の共振器との間の誘導性結合を弱めることが可能である。しかし、この積層型バンドパスフィルタでは、第1の共振器のインダクタと第3の共振器のインダクタにおける電磁波の進行方向は同じであるため、第1の共振器と第3の共振器との間の誘導性結合を弱めることが難しい。
【0009】
また、隣接する2つの共振器の間の誘導性結合を弱めるために、2つの共振器の間に、グランドに接続される導体層を介在させることも考えられる。しかし、この場合には、各共振器のQが低下するという問題が発生する。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、第2の共振器が第1の共振器と第3の共振器の各々と誘導性結合する第1ないし第3の共振器を備えた積層型バンドパスフィルタであって、第1の共振器と第3の共振器との間の誘導性結合を弱めることができると共に、任意の2つの共振器間の誘導性結合の調整が容易な積層型バンドパスフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の積層型バンドパスフィルタは、積層された複数の誘電体層を含む積層体と、積層体と一体化された第1の共振器、第2の共振器および第3の共振器とを備えている。第2の共振器は、第1の共振器と第3の共振器の各々と誘導性結合する。積層体は、複数の誘電体層が積層された方向と直交する方向の端に位置する第1の面と、第1の面とは反対側の第2の面とを有している。積層型バンドパスフィルタは、更に、積層体の第1の面に配置されてグランドに電気的に接続される第1の外面導体部と、積層体の第2の面に配置された第2の外面導体部とを備えている。第1の共振器は第1のインダクタを有し、第2の共振器は第2のインダクタを有し、第3の共振器は第3のインダクタを有している。第2のインダクタは、それぞれ、積層体における隣接する誘電体層の間に配置されて第1の外面導体部と第2の外面導体部とを電気的に接続する第1の内部導体層および第2の内部導体層を有している。第1の内部導体層と第2の内部導体層は、複数の誘電体層が積層された方向における異なる位置に配置されている。第1の内部導体層は第1のインダクタと誘導性結合し、第2の内部導体層は第3のインダクタと誘導性結合する。
【0012】
本発明の積層型バンドパスフィルタにおいて、第1の面は、支持体に対して積層型バンドパスフィルタを実装する際に支持体に向く面であってもよい。
【0013】
また、本発明の積層型バンドパスフィルタにおいて、積層体は、更に、複数の誘電体層が積層された方向の両端に位置する第3の面および第4の面を有し、第2の内部導体層は、第1の内部導体層と第4の面との間に位置し、第1のインダクタは、第1の内部導体層と第3の面との間に位置し、第3のインダクタは、第2の内部導体層と第4の面との間に位置していてもよい。
【0014】
また、本発明の積層型バンドパスフィルタにおいて、第1のインダクタの少なくとも一部は、第1の内部導体層の少なくとも一部に対向し、第3のインダクタの少なくとも一部は、第2の内部導体層の少なくとも一部に対向していてもよい。この場合、積層体を第2の面の外側から第2の面に垂直な方向に見たときに、第2の外面導体部は、第1のインダクタの少なくとも一部と第1の内部導体層の少なくとも一部とが対向する領域と第3のインダクタの少なくとも一部と第2の内部導体層の少なくとも一部とが対向する領域とを覆っていてもよい。
【0015】
また、本発明の積層型バンドパスフィルタにおいて、第2の共振器は、更に第1の共振器と第3の共振器の各々と容量性結合してもよい。
【0016】
また、本発明の積層型バンドパスフィルタにおいて、第1のインダクタと第3のインダクタは、第2のインダクタに電気的に接続されていてもよい。
【0017】
また、本発明の積層型バンドパスフィルタにおいて、第1ないし第3の共振器は、いずれも、開放端と短絡端とを有する1/4波長共振器であってもよい。
【0018】
また、本発明の積層型バンドパスフィルタは、更に、積層体の外面に配置され、信号の入力のために用いられる入力端子と、積層体の外面に配置され、信号の出力のために用いられる出力端子とを備えていてもよい。この場合、第1のインダクタは、入力端子に電気的に接続され、第3のインダクタは、出力端子に電気的に接続されていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の積層型バンドパスフィルタでは、第2のインダクタが、複数の誘電体層が積層された方向における異なる位置に配置された第1の内部導体層と第2の内部導体層を有し、第1の内部導体層と第2の内部導体層は第2の外面導体部によって電気的に接続されている。また、第1の内部導体層は第1のインダクタと誘導性結合し、第2の内部導体層は第3のインダクタと誘導性結合する。本発明の積層型バンドパスフィルタによれば、第1の内部導体層と誘導性結合する第1のインダクタと、第2の内部導体層と誘導性結合する第3のインダクタとの間の距離を大きくすることができる。これにより、本発明によれば、第1の共振器と第3の共振器との間の誘導性結合を弱めることが可能になるという効果を奏する。
【0020】
また、本発明の積層型バンドパスフィルタによれば、第1の共振器と第2の共振器との間の誘導性結合と、第2の共振器と第3の共振器との間の誘導性結合と、第1の共振器と第3の共振器との間の誘導性結合とを、互いに独立して調整することが可能になる。従って、本発明によれば、任意の2つの共振器間の誘導性結合の調整が容易になるという効果を奏する。
【0021】
また、本発明の積層型バンドパスフィルタにおいて、積層体は、複数の誘電体層が積層された方向の両端に位置する第3の面および第4の面を有し、第2の内部導体層は、第1の内部導体層と第4の面との間に位置し、第1のインダクタは、第1の内部導体層と第3の面との間に位置し、第3のインダクタは、第2の内部導体層と第4の面との間に位置していてもよい。この場合には、第1のインダクタと第3のインダクタとの間の距離をより大きくすることができ、その結果、第1の共振器と第3の共振器との間の誘導性結合をより弱めることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る積層型バンドパスフィルタの回路構成を示す回路図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る積層型バンドパスフィルタの主要部分を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る積層型バンドパスフィルタの外観を示す斜視図である。
【図4】図2におけるA方向から見た積層型バンドパスフィルタの主要部分を示す説明図である。
【図5】図2におけるB方向から見た積層型バンドパスフィルタの主要部分を示す説明図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における積層体の1層目ないし4層目の誘電体層の上面を示す説明図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における積層体の5層目ないし8層目の誘電体層の上面を示す説明図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態における積層体の9層目ないし12層目の誘電体層の上面を示す説明図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態における積層体の13層目ないし16層目の誘電体層の上面を示す説明図である。
【図10】比較例の積層型バンドパスフィルタの回路構成を示す回路図である。
【図11】比較例の積層型バンドパスフィルタの主要部分を示す斜視図である。
【図12】比較例における積層体の1層目ないし4層目の誘電体層の上面を示す説明図である。
【図13】比較例における積層体の5層目ないし8層目の誘電体層の上面を示す説明図である。
【図14】比較例における積層体の9層目ないし12層目の誘電体層の上面を示す説明図である。
【図15】第1のシミュレーションによって求めた比較例の積層型バンドパスフィルタの通過減衰特性を示す特性図である。
【図16】第1のシミュレーションによって求めた本発明の第1の実施の形態に係る積層型バンドパスフィルタの通過減衰特性を示す特性図である。
【図17】本発明の第1の実施の形態における第1の実施例の積層型バンドパスフィルタおよび実装基板の上面を示す斜視図である。
【図18】本発明の第1の実施の形態における第2の実施例の積層型バンドパスフィルタおよび実装基板の上面を示す斜視図である。
【図19】第2のシミュレーションにおける積層型バンドパスフィルタとシールド板を示す側面図である。
【図20】第2のシミュレーションによって求めた第1の実施例の積層型バンドパスフィルタの通過減衰特性を示す特性図である。
【図21】図20における一部を拡大して示す特性図である。
【図22】第2のシミュレーションによって求めた第1の実施例の積層型バンドパスフィルタの反射減衰特性を示す特性図である。
【図23】第2のシミュレーションによって求めた第2の実施例の積層型バンドパスフィルタの通過減衰特性を示す特性図である。
【図24】図23における一部を拡大して示す特性図である。
【図25】第2のシミュレーションによって求めた第2の実施例の積層型バンドパスフィルタの反射減衰特性を示す特性図である。
【図26】本発明の第2の実施の形態に係る積層型バンドパスフィルタの回路構成を示す回路図である。
【図27】本発明の第2の実施の形態に係る積層型バンドパスフィルタの主要部分を示す斜視図である。
【図28】図27におけるA方向から見た積層型バンドパスフィルタの主要部分を示す説明図である。
【図29】図27におけるB方向から見た積層型バンドパスフィルタの主要部分を示す説明図である。
【図30】本発明の第2の実施の形態における積層体の2層目、3層目、14層目および15層目の誘電体層の上面を示す説明図である。
【図31】本発明の第3の実施の形態に係る積層型バンドパスフィルタの主要部分を示す斜視図である。
【図32】本発明の第3の実施の形態における積層体の2層目および16層目の誘電体層の上面を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る積層型バンドパスフィルタの回路構成について説明する。本実施の形態に係る積層型バンドパスフィルタ(以下、単にバンドパスフィルタと記す。)1は、入力端子2と、出力端子3と、第1ないし第3の共振器4,5,6と、キャパシタ17,18,19とを備えている。入力端子2は信号の入力のために用いられる。出力端子3は信号の出力のために用いられる。共振器4は、入力端子2に電気的に接続されている。共振器6は、出力端子3に電気的に接続されている。共振器5は、回路構成上、共振器4と共振器6の間に設けられている。なお、本出願において、「回路構成上」という表現は、物理的な構成における配置ではなく、回路図上での配置を指すために用いている。共振器5は、共振器4,6の各々と電磁界結合する。電磁界結合には、誘導性結合と容量性結合とが含まれる。本実施の形態では、特に、共振器5は、共振器4,6の各々と誘導性結合すると共に容量性結合する。
【0024】
第1の共振器4は、互いに電気的に接続された第1のインダクタ11と第1のキャパシタ14とを有している。第2の共振器5は、互いに電気的に接続された第2のインダクタ12と第2のキャパシタ15とを有している。第3の共振器6は、互いに電気的に接続された第3のインダクタ13と第3のキャパシタ16とを有している。
【0025】
第2のインダクタ12は、互いに並列に接続された第1のインダクタ部分12Aと第2のインダクタ部分12Bとを含んでいる。インダクタ部分12Aは、インダクタ11と誘導性結合する。インダクタ部分12Bは、インダクタ13と誘導性結合する。図1では、インダクタ11とインダクタ部分12Aとの間の誘導性結合およびインダクタ13とインダクタ部分12Bとの間の誘導性結合を、記号Mを付した曲線で表している。
【0026】
インダクタ11の一端とキャパシタ14,17,19の各一端は、入力端子2に電気的に接続されている。インダクタ11の他端とキャパシタ14の他端はグランドに電気的に接続されている。インダクタ部分12A,12Bの各一端とキャパシタ15,18の各一端は、キャパシタ17の他端に電気的に接続されている。インダクタ部分12A,12Bの各他端とキャパシタ15の他端はグランドに電気的に接続されている。インダクタ13の一端、キャパシタ16の一端、キャパシタ19の他端および出力端子3は、キャパシタ18の他端に電気的に接続されている。インダクタ13の他端とキャパシタ16の他端はグランドに電気的に接続されている。共振器5は、インダクタ11とインダクタ部分12Aが誘導性結合することによって共振器4と誘導性結合すると共に、キャパシタ17を介して共振器4と容量性結合する。また、共振器5は、インダクタ13とインダクタ部分12Bが誘導性結合することによって共振器6と誘導性結合すると共に、キャパシタ18を介して共振器6と容量性結合する。
【0027】
共振器4,5,6はいずれも、開放端と短絡端とを有する1/4波長共振器である。キャパシタ14は、インダクタ11の物理長を1/4波長よりも短くする作用を有している。キャパシタ15は、インダクタ部分12A,12Bの物理長を1/4波長よりも短くする作用を有している。キャパシタ16は、インダクタ13の物理長を1/4波長よりも短くする作用を有している。共振器4において、インダクタ11とキャパシタ14との接続点が開放端であり、インダクタ11とキャパシタ14のグランド側の端部が短絡端である。共振器5において、インダクタ部分12A,12Bおよびキャパシタ15の接続点が開放端であり、インダクタ部分12A,12Bおよびキャパシタ15のグランド側の端部が短絡端である。共振器6において、インダクタ13とキャパシタ16との接続点が開放端であり、インダクタ13とキャパシタ16のグランド側の端部が短絡端である。
【0028】
本実施の形態に係るバンドパスフィルタ1では、入力端子2に信号が入力されると、そのうちの、バンドパスフィルタの通過帯域内の周波数の信号が選択的に、出力端子3から出力される。
【0029】
次に、図2および図3を参照して、バンドパスフィルタ1の構造の概略について説明する。図2は、バンドパスフィルタ1の主要部分を示す斜視図である。図3は、バンドパスフィルタ1の外観を示す斜視図である。バンドパスフィルタ1は、バンドパスフィルタ1の構成要素を一体化するための積層体20を備えている。後で詳しく説明するが、積層体20は、積層された複数の誘電体層と、隣接する誘電体層の間に配置された複数の導体層とを含み、外面を有している。
【0030】
積層体20は、直方体形状をなしている。積層体20の外面は、上面20Aと、底面20Bと、4つの側面20C〜20Fとを含んでいる。上面20Aと底面20Bは互いに反対側を向き、側面20C,20Dも互いに反対側を向き、側面20E,20Fも互いに反対側を向いている。側面20C〜20Fは、上面20Aおよび底面20Bに対して垂直になっている。積層体20において、側面20C,20Dに垂直な方向が、複数の誘電体層が積層された方向(以下、積層方向と記す。)である。図2では、この積層方向を、記号Tを付した矢印で示している。上面20A、底面20Bおよび2つの側面20E,20Fは、積層体20の複数の誘電体層の各面に対して垂直になっている。
【0031】
底面20Bは、積層体20において、積層方向Tと直交する方向の端に位置し、本発明における第1の面に対応する。上面20Aは、底面20B(第1の面)とは反対側に位置し、本発明における第2の面に対応する。側面20C,20Dは、積層体20において、積層方向Tの両端に位置する。側面20Cは、本発明における第3の面に対応し、側面20Dは、本発明における第4の面に対応する。
【0032】
バンドパスフィルタ1は、更に、積層体20の底面20B(第1の面)に配置された入力端子22、出力端子23および第1の外面導体部24を備えている。入力端子22は、底面20Bと側面20Eとの間の稜線の近傍に配置されている。出力端子23は、底面20Bと側面20Fとの間の稜線の近傍に配置されている。外面導体部24は、底面20Bにおいて、入力端子22と出力端子23との間に位置するように配置されている。入力端子22は、図1における入力端子2に対応する。出力端子23は、図1における出力端子3に対応する。外面導体部24は、グランドに電気的に接続される。端子22,23および外面導体部24は、いずれも、一方向に長い矩形形状を有している。端子22,23および外面導体部24は、それらの長手方向が同じ方向になるように並べて配置されている。端子22,23および外面導体部24の長手方向は、積層方向Tと同じ方向である。バンドパスフィルタ1は、更に、積層体20の上面20Aに配置された第2の外面導体部25を備えている。第2の外面導体部25は、矩形形状を有している。
【0033】
また、積層体20の底面20Bは、実装基板等のバンドパスフィルタ1の支持体に対してバンドパスフィルタ1を実装する際に支持体に向く面である。バンドパスフィルタ1は、積層体20の底面20Bが下を向くようにして、支持体に実装される。すなわち、バンドパスフィルタ1は、支持体に実装された状態におけるバンドパスフィルタ1の上下方向が、積層方向Tに対して直交するように、支持体に実装される。
【0034】
次に、図4ないし図9を参照して、積層体20について詳しく説明する。図4は、図2におけるA方向から見たバンドパスフィルタ1の主要部分を示す説明図である。図5は、図2におけるB方向から見たバンドパスフィルタ1の主要部分を示す説明図である。なお、図5は、図4に比べて大きく描いている。図6において(a)〜(d)は、それぞれ、側面20C側から数えて1層目ないし4層目の誘電体層の上面を示している。図7において(a)〜(d)は、それぞれ、側面20C側から数えて5層目ないし8層目の誘電体層の上面を示している。図8において(a)〜(d)は、それぞれ、側面20C側から数えて9層目ないし12層目の誘電体層の上面を示している。図9において(a)〜(d)は、それぞれ、側面20C側から数えて12層目ないし16層目の誘電体層の上面を示している。図6ないし図9において、丸印はスルーホールを表している。
【0035】
図6(a)に示した1層目の誘電体層31の上面には、導体層は形成されていない。図6(b)に示した2層目の誘電体層32の上面には、共振器用導体層321が形成されている。導体層321は、互いに直交する方向に延びている第1の部分321aと第2の部分321bとを有している。第1の部分321aは、図6(b)における左右方向に延びている。第2の部分321bは、第1の部分321aの図6(b)おける右側の端部近傍の部分から下方に延びている。第2の部分321bの図6(b)における下側の端部は外面導体部24に接続される。また、誘電体層32には、第1の部分321aの図6(b)における左側の端部近傍の部分に接続されたスルーホール325が形成されている。
【0036】
図6(c)に示した3層目の誘電体層33には、スルーホール335が形成されている。スルーホール335は、スルーホール325に接続されている。
【0037】
図6(d)に示した4層目の誘電体層34の上面には、共振器用導体層341が形成されている。導体層341は、図6(d)における上下方向に延びている。導体層341が延びる方向は、図6(b)に示した共振器用導体層321の第1の部分321aが延びる方向に直交し、共振器用導体層321の第2の部分321bが延びる方向と一致する。導体層341の一端部は外面導体部25に接続される。導体層341の他端部は外面導体部24に接続される。従って、導体層341は、外面導体部24と外面導体部25とを電気的に接続する。導体層341は、本発明における第1の内部導体層に対応する。また、導体層341は、図1におけるインダクタ部分12Aを構成する。また、誘電体層34には、スルーホール345が形成されている。スルーホール345は、スルーホール335に接続されている。
【0038】
図7(a)に示した5層目の誘電体層35には、スルーホール355が形成されている。スルーホール355は、スルーホール345に接続されている。
【0039】
図7(b)に示した6層目の誘電体層36の上面には、導体層361と、グランド用導体層362が形成されている。導体層361の一端部は出力端子23に接続される。導体層362の一端部は外面導体部24に接続される。また、誘電体層36には、導体層361の他端部において導体層361に接続されたスルーホール363と、スルーホール365が形成されている。スルーホール365は、スルーホール355に接続されている。
【0040】
図7(c)に示した7層目の誘電体層37の上面には、キャパシタ用導体層371が形成されている。導体層371は、図7(c)における左右方向に延びている。導体層371には、スルーホール363を介して導体層361が接続されている。また、誘電体層37には、スルーホール375と、導体層371に接続されたスルーホール376が形成されている。スルーホール375は、スルーホール365に接続されている。
【0041】
図7(d)に示した8層目の誘電体層38の上面には、キャパシタ用導体層381が形成されている。導体層381は外面導体部25に接続される。また、誘電体層38には、スルーホール385,386が形成されている。スルーホール385,386は、それぞれスルーホール375,376に接続されている。
【0042】
図8(a)に示した9層目の誘電体層39の上面には、グランド用導体層391が形成されている。導体層391は外面導体部24に接続される。また、誘電体層39には、スルーホール395,396が形成されている。スルーホール395,396は、それぞれスルーホール385,386に接続されている。
【0043】
図8(b)に示した10層目の誘電体層40の上面には、キャパシタ用導体層401が形成されている。導体層401は外面導体部25に接続される。また、誘電体層40には、スルーホール405,406が形成されている。スルーホール405,406は、それぞれスルーホール395,396に接続されている。
【0044】
図8(c)に示した11層目の誘電体層41の上面には、キャパシタ用導体層411が形成されている。導体層411は、図8(c)における左右方向に延びている。導体層411には、スルーホール325,335,345,355,365,375,385,395,405を介して導体層321が接続されている。また、誘電体層41には、導体層411に接続されたスルーホール412と、スルーホール416が形成されている。スルーホール416は、スルーホール406に接続されている。
【0045】
図8(d)に示した12層目の誘電体層42の上面には、導体層421と、グランド用導体層422が形成されている。導体層421の一端部は入力端子22に接続される。導体層422の一端部は外面導体部24に接続される。導体層421には、スルーホール412を介して導体層411が接続されている。また、誘電体層42には、スルーホール426が形成されている。スルーホール426は、スルーホール416に接続されている。
【0046】
図9(a)に示した13層目の誘電体層43には、スルーホール436が形成されている。スルーホール436は、スルーホール426に接続されている。
【0047】
図9(b)に示した14層目の誘電体層44の上面には、共振器用導体層441が形成されている。導体層441は、図9(b)における上下方向に延びている。導体層441の一端部は外面導体部25に接続される。導体層441の他端部は外面導体部24に接続される。従って、導体層441は、外面導体部24と外面導体部25とを電気的に接続する。導体層441は、本発明における第2の内部導体層に対応する。また、導体層441は、図1におけるインダクタ部分12Bを構成する。また、誘電体層44には、スルーホール446が形成されている。スルーホール446は、スルーホール436に接続されている。
【0048】
図9(c)に示した15層目の誘電体層45には、スルーホール456が形成されている。スルーホール456は、スルーホール446に接続されている。
【0049】
図9(d)に示した16層目の誘電体層46の上面には、共振器用導体層461が形成されている。導体層461は、互いに直交する方向に延びている第1の部分461aと第2の部分461bとを有している。第1の部分461aは、図9(d)における左右方向に延びている。第2の部分461bは、第1の部分461aの図9(d)おける左側の端部近傍の部分から下方に延びている。第2の部分461bの図9(d)における下側の端部は外面導体部24に接続される。図9(b)に示した共振器用導体層441が延びる方向は、第1の部分461aが延びる方向に直交し、第2の部分461bが延びる方向と一致する。第1の部分461aの図9(d)における右側の端部近傍の部分には、スルーホール376,386,396,406,416,426,436,446,456を介して導体層371が接続されている。
【0050】
共振器用導体層321は、図1におけるインダクタ11を構成する。共振器用導体層321のうちの第1の部分321aが、インダクタ11の主要部分を構成する。導体層321は、導体層411,421およびスルーホール325,335,345,355,365,375,385,395,405,412を介して入力端子22に接続されている。これにより、インダクタ11が、入力端子22に電気的に接続されている。
【0051】
共振器用導体層461は、図1におけるインダクタ13を構成する。共振器用導体層461のうちの第1の部分461aが、インダクタ13の主要部分を構成する。導体層461は、導体層361,371およびスルーホール363,376,386,396,406,416,426,436,446,456を介して出力端子23に接続されている。これにより、インダクタ13が、出力端子23に電気的に接続されている。
【0052】
図1におけるインダクタ12は、それぞれ、積層体20における隣接する誘電体層の間に配置されて第1の外面導体部24と第2の外面導体部25とを電気的に接続する共振器用導体層341,441を有している。導体層341,441は、積層方向Tにおける異なる位置に配置されている。
【0053】
インダクタ12は、具体的には、導体層341,441と第2の外面導体部25によって構成されている。インダクタ12のインダクタ部分12Aは、導体層341によって構成されている。インダクタ12のインダクタ部分12Bは、導体層441によって構成されている。導体層341,441の各一端部は外面導体部25によって電気的に接続され、導体層341,441の各他端部は外面導体部24に接続されて、グランドに電気的に接続される。これにより、インダクタ部分12A,12Bは、互いに並列に接続されている。外面導体部25は、共振器5の開放端を構成する。
【0054】
インダクタ11の少なくとも一部すなわち導体層321の第1の部分321aの少なくとも一部は、誘電体層32,33を介して導体層341の少なくとも一部に対向している。これにより、導体層341はインダクタ11と誘導性結合する。本実施の形態では、特に、第1の部分321aの長手方向と導体層341の長手方向は互いに直交し、第1の部分321aの一部が、誘電体層32,33を介して導体層341の一部に対向している。
【0055】
インダクタ13の少なくとも一部すなわち導体層461の第1の部分461aの少なくとも一部は、誘電体層44,45を介して導体層441の少なくとも一部に対向している。これにより、導体層441はインダクタ13と誘導性結合する。本実施の形態では、特に、第1の部分461aの長手方向と導体層441の長手方向は互いに直交し、第1の部分461aの一部が、誘電体層44,45を介して導体層441の一部に対向している。
【0056】
図4に示したように、積層体20を上面20Aの外側から上面20Aに垂直な方向に見たとき、すなわち積層体20をA方向から見たときに、第2の外面導体部25は、インダクタ11(導体層321)の少なくとも一部と導体層341の少なくとも一部とが対向する領域R1と、インダクタ13(導体層461)の少なくとも一部と導体層441の少なくとも一部とが対向する領域R2とを覆っている。
【0057】
キャパシタ用導体層411の一部は、誘電体層41を介してグランド用導体層422の一部に対向している。図1におけるキャパシタ14は、導体層411,422および誘電体層41によって構成されている。グランド用導体層391の一部は、誘電体層38を介してキャパシタ用導体層381の一部に対向していると共に、誘電体層39を介してキャパシタ用導体層401の一部に対向している。図1におけるキャパシタ15は、導体層381,391,401および誘電体層38,39によって構成されている。キャパシタ用導体層371の一部は、誘電体層36を介してグランド用導体層362の一部に対向している。図1におけるキャパシタ16は、導体層362,371および誘電体層36によって構成されている。
【0058】
キャパシタ用導体層401の一部は、誘電体層40を介してキャパシタ用導体層411の一部に対向している。図1におけるキャパシタ17は、導体層401,411および誘電体層40によって構成されている。キャパシタ用導体層381の一部は、誘電体層37を介してキャパシタ用導体層371の一部に対向している。図1におけるキャパシタ18は、導体層371,381および誘電体層37によって構成されている。
【0059】
図1におけるキャパシタ19は、キャパシタ用導体層371と入力端子22の組み合わせと、キャパシタ用導体層411と出力端子23の組み合わせとによって構成されている。すなわち、導体層371の図7(c)における左側の端部およびその近傍の部分は、入力端子22に近接しているため、出力端子23に電気的に接続された導体層371と入力端子22との間にキャパシタンスが発生する。また、導体層411の図8(c)における右側の端部およびその近傍の部分は、出力端子23に近接しているため、入力端子22に電気的に接続された導体層411と出力端子23との間にキャパシタンスが発生する。キャパシタ19のキャパンシタンスは、導体層371と入力端子22との間に発生するキャパシタンスと、導体層411と出力端子23との間に発生するキャパシタンスとを合成したものである。なお、キャパシタ19は、キャパシタ用導体層371と入力端子22の組み合わせと、キャパシタ用導体層411と出力端子23の組み合わせではなく、積層体20内の複数の導体層を用いて構成してもよい。
【0060】
図6ないし図9に示した誘電体層31〜46および複数の導体層が積層されて、図2および図3に示した積層体20が形成される。図6(a)に示した誘電体層31の上面は、側面20Cとなる。図2および図3に示した端子22,23および外面導体部24,25は、この積層体20の外面に形成される。
【0061】
誘電体層31〜46の材料としては、樹脂、セラミック、あるいは両者を複合した材料等、種々のものを用いることができる。積層体20としては、特に、誘電体層31〜46の材料をセラミックとして低温同時焼成法によって作製したものが、高周波特性に優れるため好ましい。
【0062】
低温同時焼成法を用いる場合には、積層体20は以下のようにして作製される。まず、それぞれ後に誘電体層31〜46となる複数のセラミックグリーンシートを作製する。次に、それぞれ後に誘電体層32〜45となる各セラミックグリーンシートに、スルーホール用の複数の孔を形成する。次に、各セラミックグリーンシートにおいて、スルーホール用の孔に導体ペーストを充填してスルーホールを形成する。また、それぞれ後に誘電体層32,34,36〜42,44,46となる各セラミックグリーンシートの各々に、スクリーン印刷等によって導体ペーストを印刷して、後に導体層321,341,361,362,371,381,391,401,411,421,422,441,461となる焼成前導体層を形成する。次に、これらスルーホールおよび焼成前導体層が形成された複数のセラミックグリーンシートを積層して、グリーンシート積層体を作製する。次に、このグリーンシート積層体を切断して、焼成前積層体を作製する。次に、この焼成前積層体におけるセラミックと導体を低温同時焼成工程によって焼成して、積層体20を完成させる。
【0063】
積層体20の外面に端子22,23および外面導体部24,25を形成する方法としては、例えば、積層体20の外面に、導体ペーストを印刷することによって、後に端子22,23および外面導体部24,25となる焼成前の導体層を形成した後、この導体層を焼成して端子22,23および外面導体部24,25を形成する方法がある。積層体20の外面に端子22,23および外面導体部24,25を形成する他の方法としては、例えば、スパッタ法等を用いて積層体20の外面に金属の薄膜を形成する方法や、金属の薄膜を導電接着剤によって積層体20の外面に接着する方法がある。
【0064】
以下、本実施の形態に係るバンドパスフィルタ1の作用効果について説明する。本実施の形態に係るバンドパスフィルタ1は、積層された複数の誘電体層31〜46を含む積層体20と、積層体20と一体化された第1ないし第3の共振器4,5,6とを備えている。第2の共振器5は、第1の共振器4と第3の共振器6の各々と誘導性結合する。積層体20は、積層方向Tと直交する方向の端に位置する第1の面としての底面20Bと、第1の面とは反対側の第2の面としての上面20Aとを有している。バンドパスフィルタ1は、更に、積層体20の底面20Bに配置され、グランドに電気的に接続される第1の外面導体部24と、積層体20の上面20Aに配置された第2の外面導体部25とを備えている。第1の共振器4は第1のインダクタ11を有し、第2の共振器5は第2のインダクタ12を有し、第3の共振器6は第3のインダクタ13を有している。第2のインダクタ12は、それぞれ、積層体20における隣接する誘電体層の間に配置されて第1の外面導体部24と第2の外面導体部25とを電気的に接続する第1および第2の内部導体層としての共振器用導体層341,441を有している。導体層341,441は、積層方向Tにおける異なる位置に配置されている。導体層341は第1のインダクタ11と誘導性結合し、導体層441は第3のインダクタ13と誘導性結合する。
【0065】
なお、第2のインダクタ12は、導体層341,441の他に、積層体20における隣接する誘電体層の間に配置されて第1の外面導体部24と第2の外面導体部25とを電気的に接続する1つ以上の内部導体層を有していてもよい。
【0066】
本実施の形態に係るバンドパスフィルタ1では、上述のように、第2のインダクタ12は、積層方向Tにおける異なる位置に配置された2つの導体層341,441を有している。この2つの導体層341,441は、第2の外面導体部25によって電気的に接続されている。また、導体層341は第1のインダクタ11と誘導性結合し、導体層441は第3のインダクタ13と誘導性結合する。このような構造のバンドパスフィルタ1によれば、導体層341と誘導性結合する第1のインダクタ11と、導体層441と誘導性結合する第3のインダクタ13との間の距離を大きくすることができる。これにより、本実施の形態によれば、第1の共振器4と第3の共振器6との間の誘導性結合を弱めることが可能になる。これにより、後で説明するように、通過帯域よりも低周波側における減衰量を大きくすることができる。
【0067】
また、図4に示したように、本実施の形態では、積層体20は、積層方向Tの両端に位置する第3の面および第4の面としての側面20C,20Dを有し、第2の内部導体層としての導体層441は、第1の内部導体層としての導体層341と側面20D(第4の面)との間に位置している。そして、第1のインダクタ11(導体層321)は、導体層341と側面20C(第3の面)との間に位置し、第3のインダクタ(導体層461)は、導体層441と側面20D(第4の面)との間に位置している。これにより、本実施の形態によれば、第1のインダクタ11と第3のインダクタ13との間の距離をより大きくすることができ、その結果、第1の共振器4と第3の共振器6との間の誘導性結合をより弱めることができる。
【0068】
また、上述のような構造のバンドパスフィルタ1によれば、第1の共振器4と第2の共振器5との間の誘導性結合と、第2の共振器5と第3の共振器6との間の誘導性結合と、第1の共振器4と第3の共振器6との間の意図しない誘導性結合とを、互いに独立して調整することが可能になる。以下、これについて詳しく説明する。
【0069】
まず、本実施の形態では、第1の共振器4と第3の共振器6との間の誘導性結合を、全くあるいはほとんど変化させることなく、第1の共振器4と第2の共振器5との間の誘導性結合と、第2の共振器5と第3の共振器6との間の誘導性結合を、それぞれ独立して調整することが可能である。これは、共振器用導体層321によって構成される第1のインダクタ11と、共振器用導体層461によって構成される第3のインダクタ13の形状と配置を変えずに、導体層321と導体層341との間の誘導性結合と、導体層461と導体層441との間の誘導性結合を調整することによって可能である。導体層321と導体層341との間の誘導性結合は、例えば導体層341の位置や形状を変えることで調整することが可能である。同様に、導体層461と導体層441との間の誘導性結合は、例えば導体層441の位置や形状を変えることで調整することが可能である。
【0070】
また、本実施の形態では、第1の共振器4と第2の共振器5との間の誘導性結合と、第2の共振器5と第3の共振器6との間の誘導性結合を、それぞれ全くあるいはほとんど変化させることなく、第1の共振器4と第3の共振器6との間の誘導性結合を調整することが可能である。これは、例えば、導体層321と導体層341の形状と位置関係を変えずに、また、導体層461と導体層441の形状と位置関係を変えずに、導体層341と導体層441との間の距離を変えることによって可能である。すなわち、この場合には、導体層341と導体層441との間の距離を変えることによって、導体層321によって構成される第1のインダクタ11と、導体層461によって構成される第3のインダクタ13との間の距離が変化し、第1の共振器4と第3の共振器6との間の誘導性結合が変化する。
【0071】
上記の説明から理解されるように、本実施の形態によれば、第1の共振器4と第2の共振器5との間の誘導性結合と、第2の共振器5と第3の共振器6との間の誘導性結合と、第1の共振器4と第3の共振器6との間の意図しない誘導性結合とを、互いに独立して調整することが可能になる。従って、本実施の形態によれば、3つの共振器4,5,6における任意の2つの共振器間の誘導性結合の調整が容易になり、その結果、所望の特性を有するバンドパスフィルタ1の設計が容易になる。
【0072】
また、本実施の形態では、第1のインダクタ11の主要部分すなわち共振器用導体層321の第1の部分321aにおける開放端から短絡端に向かう電磁波の進行方向は、側面20Eから側面20Fに向かう方向である。第2のインダクタ12の主要部分すなわち導体層341,441における開放端から短絡端に向かう電磁波の進行方向は、上面20Aから底面20Bに向かう方向である。第3のインダクタ13の主要部分すなわち共振器用導体層461の第1の部分461aにおける開放端から短絡端に向かう電磁波の進行方向は、側面20Fから側面20Eに向かう方向である。従って、本実施の形態では、第2のインダクタ12の主要部分における開放端から短絡端に向かう電磁波の進行方向は、第1のインダクタ11の主要部分における開放端から短絡端に向かう電磁波の進行方向と、第3のインダクタ13の主要部分における開放端から短絡端に向かう電磁波の進行方向の各々に対して直交している。これにより、本実施の形態によれば、第1の共振器4と第2の共振器5との間の誘導性結合と、第2の共振器5と第3の共振器6との間の誘導性結合を、それぞれ弱めることができる。更に、本実施の形態では、第1のインダクタ11の主要部分における開放端から短絡端に向かう電磁波の進行方向と、第3のインダクタ13における開放端から短絡端に向かう電磁波の進行方向は、互いに反対方向である。これにより、本実施の形態によれば、第1の共振器4と第3の共振器6との間の誘導性結合をより弱めることができる。これらのことから、本実施の形態によれば、バンドパスフィルタ1を小型化することが容易になる。
【0073】
また、本実施の形態では、積層体20において、積層方向Tと直交する方向の端に位置する面を、実装基板等の支持体に対してバンドパスフィルタ1を実装する際に支持体に向く底面20Bとしている。そのため、本実施の形態によれば、バンドパスフィルタ1の高さ、すなわち底面20Bに垂直な方向のバンドパスフィルタ1の寸法が、積層体20内の複数の導体層の配置に依存しない。これにより、本実施の形態によれば、バンドパスフィルタ1の薄型化が可能になると共に、任意の2つの共振器間の誘導性結合の調整のために複数の共振器用導体層の位置を変えてもバンドパスフィルタ1の高さを一定にすることができる。
【0074】
また、本実施の形態では、並列に接続された第1および第2のインダクタ部分12A,12Bを構成する導体層341,441を、積層体20の底面20Bに配置された第1の外面導体部24と、積層体20の上面20Aに配置された第2の外面導体部25を利用して、並列に接続している。これにより、本実施の形態によれば、積層体20の高さの範囲内で導体層341,441の長さを最大限に大きくすることができ、その結果、導体層341,441の必要な長さを確保しながら、バンドパスフィルタ1を薄型化することが可能になる。
【0075】
また、本実施の形態では、共振器用導体層321,341,441,461は、グランドに接続された外面導体部24に対して垂直に配置されている。そのため、本実施の形態によれば、導体層321,341,441,461が外面導体部24に対して平行に配置されている場合に比べて、共振器4,5,6のQを大きくすることができる。
【0076】
また、本実施の形態では、積層体20において、共振器用導体層341,441間には、共振器用導体層が配置されていない空間が形成される。本実施の形態では、この空間に、キャパシタ14〜19を構成する導体層362,371,381,391,401,411,422および誘電体層36〜41を配置している。このように、本実施の形態では、共振器4,6間の誘導性結合を弱めることができると共に任意の2つの共振器間の誘導性結合の調整を容易にする共振器用導体層321,341,441,461の配置によって生じる空間を有効に利用して、キャパシタ14〜19を形成している。これにより、本実施の形態によれば、バンドパスフィルタ1の小型化が可能になる。
【0077】
また、図4に示したように、本実施の形態では、積層体20を上面20Aの外側から上面20Aに垂直な方向に見たときに、第2の外面導体部25は、インダクタ11(導体層321)の少なくとも一部と導体層341の少なくとも一部とが対向する領域R1と、インダクタ13(導体層461)の少なくとも一部と導体層441の少なくとも一部とが対向する領域R2とを覆っている。これにより、第2の外面導体部25は、共振器5の開放端を構成する導体部でありながら、バンドパスフィルタ1の主要部分に対する電磁気的なシールドとしての機能を発揮する。すなわち、上述のように、第2の外面導体部25は、積層体20を上面20Aの外側から上面20Aに垂直な方向に見たときに領域R1,R2を覆うことにより、少なくとも、共振器4,5間の誘導性結合が生じる領域および共振器5,6間の誘導性結合が生じる領域に対する電磁気的なシールドとして機能する。
【0078】
図4に示した例では、第2の外面導体部25は、積層体20を上面20Aの外側から上面20Aに垂直な方向に見たときに、領域R1,R2のみならず、キャパシタ14〜18が形成される複数の領域も覆っている。この場合には、第2の外面導体部25は、共振器4,5間の誘導性結合が生じる領域および共振器5,6間の誘導性結合が生じる領域に加えて、キャパシタ14〜18が形成される複数の領域に対しても、電磁気的なシールドとして機能する。なお、キャパシタ14〜18が形成される複数の領域とは、各キャパシタを構成するための2つの導体層が対向している複数の領域である。
【0079】
また、第2の外面導体部25は、積層体20を上面20Aの外側から上面20Aに垂直な方向に見たときに、領域R1,R2と、キャパシタ14〜18が形成される複数の領域に加え、更に、キャパシタ19が形成される複数の領域も覆っている。この場合には、第2の外面導体部25は、共振器4,5間の誘導性結合が生じる領域、共振器5,6間の誘導性結合が生じる領域およびキャパシタ14〜18が形成される複数の領域に加えて、キャパシタ19が形成される複数の領域に対しても、電磁気的なシールドとして機能する。なお、キャパシタ19が形成される複数の領域とは、導体層371と入力端子22とが近接している領域と、導体層411と出力端子23が近接している領域である。
【0080】
以下、本実施の形態に係るバンドパスフィルタ1と比較例のバンドパスフィルタとを比較しながら、本実施の形態に係るバンドパスフィルタ1の作用効果について更に詳しく説明する。始めに、図10を参照して、比較例のバンドパスフィルタ101の回路構成について説明する。図10に示したように、比較例のバンドパスフィルタ101は、図1に示したバンドパスフィルタ1における入力端子2、出力端子3、共振器4,5,6およびキャパシタ17,18,19の代りに、入力端子102、出力端子103、共振器104,105,106およびキャパシタ117,118,119を備えている。共振器104は、バンドパスフィルタ1におけるインダクタ11およびキャパシタ14の代りにインダクタ111およびキャパシタ114を有している。共振器105は、バンドパスフィルタ1におけるインダクタ12およびキャパシタ15の代りにインダクタ112およびキャパシタ115を有している。共振器106は、バンドパスフィルタ1におけるインダクタ13およびキャパシタ16の代りにインダクタ113およびキャパシタ116を有している。比較例のバンドパスフィルタ101におけるインダクタ112は、バンドパスフィルタ1におけるインダクタ部分12A,12Bを含んでいない。インダクタ112は、インダクタ111とインダクタ113の各々と誘導性結合する。比較例のバンドパスフィルタ101における共振器104,105,106およびキャパシタ117,118,119の電気的な接続関係は、バンドパスフィルタ1における共振器4,5,6およびキャパシタ17,18,19の電気的な接続関係と同様である。
【0081】
比較例のバンドパスフィルタ101は、更に、インダクタ111、キャパシタ114およびキャパシタ119の接続点と入力端子102との間に設けられた入力用キャパシタ107と、インダクタ113、キャパシタ116およびキャパシタ119の接続点と出力端子103との間に設けられた出力用キャパシタ108とを備えている。
【0082】
次に、図11を参照して、比較例のバンドパスフィルタ101の構造の概略について説明する。図11は、比較例のバンドパスフィルタ101の主要部分を示す斜視図である。図11に示したように、比較例のバンドパスフィルタ101は、図2に示したバンドパスフィルタ1における積層体20、入力端子22、出力端子23および外面導体部24,25の代わりに、積層体120、入力端子122、出力端子123および外面導体部124,125を備えている。積層体120は、積層された複数の誘電体層と、隣接する誘電体層の間に配置された複数の導体層とを含み、外面を有している。積層体120は、直方体形状をなしている。積層体120の外面は、上面120Aと、底面120Bと、4つの側面120C〜120Fとを含んでいる。これらの面120A〜120Fの位置関係は、積層体20の面20A〜20Fの位置関係と同様である。入力端子122、出力端子123および外面導体部124は、底面120Bに配置されている。外面導体部125は、上面120Aに配置されている。入力端子122、出力端子123および外面導体部124,125の位置関係は、図2に示したバンドパスフィルタ1における入力端子22、出力端子23および外面導体部24,25の位置関係と同様である。また、図11において、積層方向を、記号Tを付した矢印で示している。
【0083】
次に、図12ないし図14を参照して、積層体120について詳しく説明する。図12において(a)〜(d)は、それぞれ、側面120C側から数えて1層目ないし4層目の誘電体層の上面を示している。図13において(a)〜(d)は、それぞれ、側面120C側から数えて5層目ないし8層目の誘電体層の上面を示している。図14において(a)〜(d)は、それぞれ、側面120C側から数えて9層目ないし12層目の誘電体層の上面を示している。
【0084】
図12(a)に示した1層目の誘電体層51の上面には、導体層は形成されていない。図12(b)に示した2層目の誘電体層52の上面には、共振器用導体層521,522が形成されている。導体層521,522の各一端部は、外面導体部124に接続される。また、誘電体層52には、導体層521の他端部の近傍の部分に接続されたスルーホール525と、導体層522の他端部の近傍の部分に接続されたスルーホール526が形成されている。
【0085】
図12(c)に示した3層目の誘電体層53の上面には、共振器用導体層531が形成されている。導体層531は、図12(c)における上下方向に延びている。導体層531の一端部は外面導体部125に接続される。導体層531の他端部は外面導体部124に接続される。また、誘電体層53には、スルーホール535,536が形成されている。スルーホール535,536は、それぞれスルーホール525,526に接続されている。
【0086】
図12(d)に示した4層目の誘電体層54の上面には、キャパシタ用導体層541が形成されている。また、誘電体層54には、スルーホール545,546が形成されている。スルーホール545,546は、それぞれスルーホール535,536に接続されている。
【0087】
図13(a)に示した5層目の誘電体層55の上面には、キャパシタ用導体層551,552が形成されている。また、誘電体層55には、導体層551に接続されたスルーホール555と、導体層552に接続されたスルーホール556が形成されている。スルーホール555,556は、それぞれスルーホール545,546に接続されている。
【0088】
図13(b)に示した6層目の誘電体層56の上面には、キャパシタ用導体層561,562が形成されている。導体層561は入力端子122に接続される。導体層562は出力端子123に接続される。また、誘電体層56には、スルーホール565,566が形成されている。スルーホール565,566は、それぞれスルーホール555,556に接続されている。
【0089】
図13(c)に示した7層目の誘電体層57の上面には、キャパシタ用導体層571,572が形成されている。また、誘電体層57には、導体層571に接続されたスルーホール575と、導体層572に接続されたスルーホール576が形成されている。スルーホール575,576は、それぞれスルーホール565,566に接続されている。
【0090】
図13(d)に示した8層目の誘電体層58の上面には、キャパシタ用導体層581が形成されている。導体層581は外面導体部125に接続される。また、誘電体層58には、スルーホール585,586が形成されている。スルーホール585,586は、それぞれスルーホール575,576に接続されている。
【0091】
図14(a)に示した9層目の誘電体層59の上面には、キャパシタ用導体層591,592が形成されている。導体層591には、スルーホール525,535,545,555,565,575,585を介して導体層521,551,571が接続されている。導体層592には、スルーホール526,536,546,556,566,576,586を介して導体層522,552,572が接続されている。
【0092】
図14(b)に示した10層目の誘電体層60の上面には、グランド用導体層601が形成されている。導体層601は外面導体部124に接続される。図14(c)に示した11層目の誘電体層61の上面には、キャパシタ用導体層611が形成されている。導体層611は外面導体部125に接続される。図14(d)に示した12層目の誘電体層62の上面には、グランド用導体層621が形成されている。導体層621は外面導体部124に接続される。
【0093】
図10におけるインダクタ111は、共振器用導体層521によって構成されている。導体層521は、スルーホール525,535,545,555,565,575,585を介してキャパシタ用導体層551,571,591に接続されている。キャパシタ用導体層561は、誘電体層55を介して導体層551に対向していると共に、誘電体層56を介して導体層571に対向している。図10におけるキャパシタ107は、導体層551,561,571および誘電体層55,56によって構成されている。インダクタ111は、スルーホール525,535,545,555,565と、キャパシタ107を介して入力端子122に接続されている。図10におけるインダクタ112は、共振器用導体層531によって構成されている。
【0094】
図10におけるインダクタ113は、共振器用導体層522によって構成されている。導体層522は、スルーホール526,536,546,556,566,576,586を介してキャパシタ用導体層552,572,592に接続されている。キャパシタ用導体層562は、誘電体層55を介して導体層552に対向していると共に、誘電体層56を介して導体層572に対向している。図10におけるキャパシタ108は、導体層552,562,572および誘電体層55,56によって構成されている。インダクタ113は、スルーホール526,536,546,556,566と、キャパシタ108を介して出力端子123に接続されている。
【0095】
キャパシタ用導体層591は、誘電体層59を介してグランド用導体層601に対向している。図10におけるキャパシタ114は、導体層591,601および誘電体層59によって構成されている。キャパシタ用導体層611は、誘電体層60を介してグランド用導体層601に対向していると共に、誘電体層61を介してグランド用導体層621に対向している。図10におけるキャパシタ115は、導体層601,611,621および誘電体層60,61によって構成されている。キャパシタ用導体層592は、誘電体層59を介してグランド用導体層601に対向している。図10におけるキャパシタ116は、導体層592,601および誘電体層59によって構成されている。
【0096】
キャパシタ用導体層581は、誘電体層57を介してキャパシタ用導体層571,572に対向していると共に、誘電体層58を介してキャパシタ用導体層591,592に対向している。図10におけるキャパシタ117は、導体層571,581,591および誘電体層57,58によって構成されている。図10におけるキャパシタ118は、導体層572,581,592および誘電体層57,58によって構成されている。キャパシタ用導体層541は、誘電体層54を介してキャパシタ用導体層551,552に対向している。図10におけるキャパシタ119は、導体層541,551,552および誘電体層54によって構成されている。
【0097】
図2および図3に示した積層体20と同様に、図12ないし図14に示した誘電体層51〜62および複数の導体層が積層されて、図11に示した積層体120が形成される。図12(a)に示した誘電体層51の上面は、積層体120の側面120Cとなる。図11に示した端子122,123および外面導体部124,125は、この積層体120の外面に形成される。
【0098】
比較例のバンドパスフィルタ101では、本実施の形態に係るバンドパスフィルタ1と同様に、第2のインダクタ112における開放端から短絡端に向かう電磁波の進行方向は、第1のインダクタ111(導体層521)の主要部分における開放端から短絡端に向かう電磁波の進行方向と、第3のインダクタ113(導体層522)の主要部分における開放端から短絡端に向かう電磁波の進行方向の各々に対して直交し、第1のインダクタ111の主要部分における開放端から短絡端に向かう電磁波の進行方向と、第3のインダクタ113の主要部分における開放端から短絡端に向かう電磁波の進行方向は、互いに反対方向である。しかし、比較例のバンドパスフィルタ101では、第1のインダクタ111を構成する導体層521と第3のインダクタ113を構成する導体層522が1つの誘電体層52の上面に配置されている。そのため、比較例のバンドパスフィルタ101では、本実施の形態に係るバンドパスフィルタ1と比べて、第1の共振器104と第3の共振器106との間の誘導性結合が強くなる。また、比較例のバンドパスフィルタ101では、第1の共振器104と第2の共振器105との間の誘導性結合と、第2の共振器105と第3の共振器106との間の誘導性結合と、第1の共振器104と第3の共振器106との間の意図しない誘導性結合とを、互いに独立して調整することは難しい。
【0099】
次に、図15および図16を参照して、比較例のバンドパスフィルタ101と本実施の形態に係るバンドパスフィルタ1の通過減衰特性を求めた第1のシミュレーションの結果について説明する。第1のシミュレーションでは、通過帯域がおよそ2.4〜2.5GHzとなるようにバンドパスフィルタ1とバンドパスフィルタ101を設計して、それらの通過減衰特性を求めた。図15は、比較例のバンドパスフィルタ101の通過減衰特性を示している。図16は、本実施の形態に係るバンドパスフィルタ1の通過減衰特性を示している。図15および図16において、横軸は周波数、縦軸は減衰量である。
【0100】
図15に示したように、比較例のバンドパスフィルタ101の通過減衰特性では、通過帯域の低周波側において、1.9GHzの近傍に減衰極が1つだけ現れており、1.5GHzの近傍における減衰量が40dBよりも小さくなっている。これに対し、図16に示したように、本実施の形態に係るバンドパスフィルタ1の通過減衰特性では、通過帯域の低周波側において、0.9GHzの近傍と1.9GHzの近傍に減衰極が2つ現れており、0.5GHz〜1.9GHzの範囲内における減衰量が40dBよりも大きくなっている。
【0101】
図15と図16を比較すると理解されるように、本実施の形態に係るバンドパスフィルタ1では、比較例のバンドパスフィルタ101に比べて、通過帯域よりも低周波側における減衰量が大きくなっている。その主な原因は、本実施の形態に係るバンドパスフィルタ1における第1の共振器4と第3の共振器6との間の誘導性結合が、比較例のバンドパスフィルタ101における第1の共振器104と第3の共振器106との間の誘導性結合よりも弱いことであると考えられる。
【0102】
第1のシミュレーションの結果から、本実施の形態によれば、第1の共振器4と第3の共振器6との間の誘導性結合を弱めることにより、通過帯域よりも低周波側における減衰量を大きくすることができることが分かる。
【0103】
次に、図17ないし図25を参照して、本実施の形態に係るバンドパスフィルタ1における外面導体部25のシールド機能に関する第2のシミュレーションの結果について説明する。始めに、図17および図18を参照して、第2のシミュレーションで使用した第1および第2の実施例のバンドパスフィルタについて説明する。以下、第1の実施例のバンドパスフィルタを符号1Aで表し、第2の実施例のバンドパスフィルタを符号1Bで表す。図17は、第1の実施例のバンドパスフィルタ1Aおよび実装基板の上面を示す斜視図である。図18は、第2の実施例のバンドパスフィルタ1Bおよび実装基板の上面を示す斜視図である。第2のシミュレーションでは、通過帯域がおよそ2.4〜2.5GHzとなるようにバンドパスフィルタ1A,1Bを設計した。
【0104】
図17および図18に示したように、第2のシミュレーションにおいて、バンドパスフィルタ1A,1Bは、それぞれ実装基板130の上面に実装されている。実装基板130の上面には、入力用導体層132、出力用導体層133およびグランド用導体層134が形成されている。バンドパスフィルタ1A,1Bは、入力端子22が入力用導体層132に接続され、出力端子23が出力用導体層133に接続され、外面導体部24がグランド用導体層134に接続されるように、実装基板130に実装されている。
【0105】
ここで、図17および図18に示したように、バンドパスフィルタ1A,1Bにおいて、積層体20の側面20C,20D間の距離をDとし、積層体20の側面20E,20F間の距離をWとする。Dは1250μmであり、Wは2000μmである。
【0106】
また、図17に示したように、第1の実施例における外面導体部25に関して、側面20E,20Fに平行な方向の長さをD1とし、側面20C,20Dに平行な方向の長さをW1とする。D1は950μmであり、Wは300μmである。第1の実施例における外面導体部25は、積層体20を上面20Aの外側から上面20Aに垂直な方向に見たときに、図4に示した領域R1,R2を覆っている。
【0107】
また、図18に示したように、第2の実施例における外面導体部25に関して、側面20E,20Fに平行な方向の長さをD2とし、側面20C,20Dに平行な方向の長さをW2とする。D2は950μmであり、W2は1500μmである。このように、第2の実施例における外面導体部25は、第1の実施例における外面導体部25に比べて、側面20C,20Dに平行な方向の長さが大きくなっている。第2の実施例における外面導体部25は、積層体20を上面20Aの外側から上面20Aに垂直な方向に見たときに、領域R1,R2のみならず、キャパシタ14〜19が形成される領域も覆っている。
【0108】
第2のシミュレーションでは、図19に示したように、積層体20の上面20Aの上方に金属よりなるシールド板131を配置し、積層体20の上面20Aとシールド板131との間の距離Lを変えたときのバンドパスフィルタ1A,1Bの特性の変化を調べた。図19は、第2のシミュレーションにおけるバンドパスフィルタ1A,1Bとシールド板131を示す側面図である。Lの値は、100μm、150μm、200μm、250μmの4種類とした。また、第2のシミュレーションでは、積層体20の上面20Aの上方にシールド板131を配置しない場合におけるバンドパスフィルタ1A,1Bの特性も調べた。
【0109】
図20は、第2のシミュレーションによって求めたバンドパスフィルタ1Aの通過減衰特性を示している。図21は、図20における一部を拡大して示している。図22は、第2のシミュレーションによって求めたバンドパスフィルタ1Aの反射減衰特性を示している。図20ないし図22において、横軸は周波数、縦軸は減衰量である。図20ないし図22において、符号181,182,183,184は、それぞれ、Lが100μm、150μm、200μm、250μmの場合における特性を表している。また、図20ないし図22において、符号185は、積層体20の上面20Aの上方にシールド板131を配置しない場合における特性を表している。
【0110】
図23は、第2のシミュレーションによって求めたバンドパスフィルタ1Bの通過減衰特性を示している。図24は、図23における一部を拡大して示している。図25は、第2のシミュレーションによって求めたバンドパスフィルタ1Bの反射減衰特性を示している。図23ないし図25において、横軸は周波数、縦軸は減衰量である。図23ないし図25において、符号191,192,193,194は、それぞれ、Lが100μm、150μm、200μm、250μmの場合における特性を表している。また、図23ないし図25において、符号195は、積層体20の上面20Aの上方にシールド板131を配置しない場合における特性を表している。
【0111】
図20ないし図25から、第1の実施例と第2の実施例のいずれにおいても、シールド板131の有無によって、また、積層体20の上面20Aとシールド板131との間の距離Lによって、バンドパスフィルタ1A,1Bの通過減衰特性および反射減衰特性が変化することが分かる。
【0112】
図23ないし図25に示した第2の実施例のバンドパスフィルタ1Bの特性では、図20ないし図22に示した第1の実施例のバンドパスフィルタ1Aの特性に比較して、距離Lの変化による特性の変化が小さくなっている。このことから、外面導体部25が大きいほど、シールド板131に起因したバンドパスフィルタ1の特性の変動が抑制されると考えられる。言い換えると、外面導体部25が大きいほど、外面導体部25の電磁気的なシールドとしての機能が強化されると考えられる。
【0113】
バンドパスフィルタ1を含む通信装置では、例えば通信装置の筐体や通信装置内のバンドパスフィルタ1以外の部品がシールド板131に相当すると考えられる。そのため、外面導体部25がバンドパスフィルタ1の主要部分に対する電磁気的なシールドとして機能することは、バンドパスフィルタ1に対する筐体やバンドパスフィルタ1以外の部品の接近を許容し、バンドパスフィルタ1を含む通信装置を小型化、薄型化することを可能にする。
【0114】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係るバンドパスフィルタについて説明する。始めに、図26を参照して、本実施の形態に係るバンドパスフィルタ151の回路構成について説明する。図26に示したように、本実施の形態に係るバンドパスフィルタ151は、インダクタ11とインダクタ12のインダクタ部分12Aとを電気的に接続する接続部157と、インダクタ13とインダクタ12のインダクタ部分12Bとを電気的に接続する接続部158とを備えている。本実施の形態に係るバンドパスフィルタ151のその他の構成は、第1の実施の形態に係るバンドパスフィルタ1と同じである。
【0115】
接続部157の一端はインダクタ11に電気的に接続され、接続部157の他端はインダクタ部分12Aに電気的に接続されている。接続部158の一端はインダクタ13に電気的に接続され、接続部158の他端はインダクタ部分12Bに電気的に接続されている。インダクタ11とインダクタ部分12Aとの間の誘導性結合は、インダクタ11およびインダクタ部分12Aに対する接続部157の接続位置が、インダクタ11およびインダクタ部分12Aの各グランド側の端部から離れるに従って強くなる。インダクタ13とインダクタ部分12Bとの間の誘導性結合は、インダクタ13およびインダクタ部分12Bに対する接続部158の接続位置が、インダクタ13およびインダクタ部分12Bの各グランド側の端部から離れるに従って強くなる。
【0116】
次に、図27ないし図30を参照して、本実施の形態に係るバンドパスフィルタ151の積層体について説明する。図27は、バンドパスフィルタ151の主要部分を示す斜視図である。図28は、図27におけるA方向から見たバンドパスフィルタ151の主要部分を示す説明図である。図29は、図27におけるB方向から見たバンドパスフィルタ151の主要部分を示す説明図である。なお、図29は、図28に比べて大きく描いている。図30において(a)〜(d)は、それぞれ、側面20C側から数えて2層目、3層目、14層目および15層目の誘電体層の上面を示している。図30において、丸印はスルーホールを表している。本実施の形態に係るバンドパスフィルタ151は、第1の実施の形態に係るバンドパスフィルタ1と同様に、積層体20、入力端子22、出力端子23および外面導体部24,25を備えている。
【0117】
以下、本実施の形態に係るバンドパスフィルタ151の積層体20が、第1の実施の形態に係るバンドパスフィルタ1の積層体20と異なる点について説明する。本実施の形態に係るバンドパスフィルタ151の積層体20は、第1の実施の形態に係るバンドパスフィルタ1の積層体20における2層目、3層目、14層目および15層目の誘電体層32,33,44,45の代わりに、図30(a)〜(d)に示した誘電体層72,73,74,75を有している。
【0118】
図30(a)に示した2層目の誘電体層72の上面には、共振器用導体層721が形成されている。導体層721は、互いに直交する方向に延びている第1の部分721aと第2の部分721bとを有している。第1の部分721aは、図30(a)における左右方向に延びている。第2の部分721bは、第1の部分721aの図30(a)おける右側の端部近傍の部分から下方に延びている。第1の部分721aの図30(a)における下側の端部は外面導体部24に接続される。また、誘電体層72には、第1の部分721aの図30(a)における左側の端部近傍の部分に接続されたスルーホール725と、第1の部分721aと第2の部分721bとの境界部分において導体層721に接続されたスルーホール727が形成されている。
【0119】
図30(b)に示した3層目の誘電体層73には、スルーホール735,737が形成されている。スルーホール735,737は、それぞれスルーホール725,727に接続されている。
【0120】
本実施の形態における4層目の誘電体層34(図6(d)参照)の上面に形成された導体層341が延びる方向は、図30(a)に示した共振器用導体層721の第1の部分721aが延びる方向に直交し、共振器用導体層721の第2の部分721bが延びる方向と一致する。導体層341には、スルーホール727,737を介して導体層721が接続されている。誘電体層34に形成されたスルーホール345は、スルーホール735に接続されている。
【0121】
本実施の形態における11層目の誘電体層41(図8(c)参照)の上面に形成されたキャパシタ用導体層411には、スルーホール725,735,345,355,365,375,385,395,405を介して導体層721が接続されている。
【0122】
図30(c)に示した14層目の誘電体層74の上面には、共振器用導体層741が形成されている。導体層741は、図30(c)における上下方向に延びている。導体層741が延びる方向は、本実施の形態における16層目の誘電体層46(図9(d)参照)の上面に形成された共振器用導体層461の第1の部分461aが延びる方向と直交し、共振器用導体層461の第2の部分461bが延びる方向と一致する。導体層741の一端部は外面導体部25に接続される。導体層741の他端部は外面導体部24に接続される。導体層741は、図26におけるインダクタ部分12Bを構成する。また、誘電体層74には、スルーホール746と、導体層741の一端部と他端部の間において導体層741に接続されたスルーホール748が形成されている。スルーホール746は、本実施の形態における12層目の誘電体層43(図9(a)参照)に形成されたスルーホール436に接続されている。
【0123】
図30(d)に示した15層目の誘電体層75には、スルーホール756,758が形成されている。スルーホール756,758は、それぞれスルーホール746,748に接続されている。
【0124】
本実施の形態における16層目の誘電体層46(図9(d)参照)の上面に形成された共振器用導体層461の第1の部分461aには、スルーホール376,386,396,406,416,426,436,746,756を介して本実施の形態における7層目の誘電体層37(図7(c)参照)の上面に形成されたキャパシタ用導体層371が接続されている。また、導体層461の第1の部分461aと第2の部分461bとの境界部分には、スルーホール748,758を介して導体層741が接続されている。
【0125】
共振器用導体層721は、本実施の形態におけるインダクタ11を構成する。共振器用導体層721のうちの第1の部分721aが、インダクタ11の主要部分を構成する。導体層721は、導体層411,421およびスルーホール725,735,345,355,365,375,385,395,405,412を介して入力端子22に接続される。これにより、インダクタ11が、入力端子22に電気的に接続される。
【0126】
本実施の形態におけるインダクタ12は、それぞれ、積層体20における隣接する誘電体層の間に配置されて第1の外面導体部24と第2の外面導体部25とを電気的に接続する共振器用導体層341,741を有している。導体層341,741は、積層方向Tにおける異なる位置に配置されている。
【0127】
インダクタ12は、具体的には、導体層341,741と第2の外面導体部25によって構成されている。インダクタ12のインダクタ部分12Aは、導体層341によって構成されている。インダクタ12のインダクタ部分12Bは、導体層741によって構成されている。導体層341,741の各一端部は外面導体部25によって電気的に接続され、導体層341,741の各他端部は外面導体部24に接続されて、グランドに電気的に接続される。これにより、インダクタ部分12A,12Bは、互いに並列に接続されている。外面導体部25は、共振器5の開放端を構成する。
【0128】
本実施の形態におけるインダクタ13を構成する共振器用導体層461は、導体層361,371およびスルーホール363,376,386,396,406,416,426,436,746,756を介して出力端子23に接続される。これにより、インダクタ13が、出力端子23に電気的に接続される。
【0129】
図27ないし図29において、符号177は、スルーホール727,737によって構成されたスルーホール列を表している。図26における接続部157は、スルーホール列177(スルーホール727,737)によって構成されている。図27ないし図29において、符号178は、スルーホール748,758によって構成されたスルーホール列を表している。図26における接続部158は、スルーホール列178(スルーホール748,758)によって構成されている。
【0130】
本実施の形態では、第1のインダクタ11と第3のインダクタ13は、第2のインダクタ12に電気的に接続されている。具体的には、接続部157によってインダクタ11とインダクタ12のインダクタ部分12Aとが電気的に接続され、接続部158によってインダクタ13とインダクタ12のインダクタ部分12Bとが電気的に接続されている。これにより、本実施の形態によれば、第1のインダクタ11と第3のインダクタ13が第2のインダクタ12に電気的に接続されていない場合に比べて、第1の共振器4と第2の共振器5との間の誘導性結合と、第2の共振器5と第3の共振器6との間の誘導性結合を強くすることができる。
【0131】
また、本実施の形態では、インダクタ11およびインダクタ部分12Aに対する接続部157の接続位置を変えることによって、インダクタ11とインダクタ部分12Aとの間の誘導性結合、すなわち第1の共振器4と第2の共振器5との間の誘導性結合を調整することができる。同様に、本実施の形態では、インダクタ13およびインダクタ部分12Bに対する接続部158の接続位置を変えることによって、インダクタ13とインダクタ部分12Bとの間の誘導性結合、すなわち第3の共振器6と第2の共振器5との間の誘導性結合を調整することができる。
【0132】
本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、第2のインダクタ12の主要部分における開放端から短絡端に向かう電磁波の進行方向は、第1のインダクタ11の主要部分における開放端から短絡端に向かう電磁波の進行方向と、第3のインダクタ13の主要部分における開放端から短絡端に向かう電磁波の進行方向の各々に対して直交している。これにより、本実施の形態によれば、共振器4,5間の誘導性結合と、共振器5,6間の誘導性結合を、それぞれ弱めることができる。本実施の形態によれば、上記の特徴によって共振器4,5間の誘導性結合と共振器5,6間の誘導性結合が弱くなりすぎる場合に、接続部157,158によって、共振器4,5間の誘導性結合と共振器5,6間の誘導性結合を、それぞれ強くなるように調整することができる。これにより、本実施の形態によれば、共振器4,5間の誘導性結合と共振器5,6間の誘導性結合の大きさを、それぞれ所望の大きさに設定することが可能になる。
【0133】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0134】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態に係るバンドパスフィルタについて説明する。本実施の形態に係るバンドパスフィルタ201の回路構成は、図26に示した第2の実施の形態に係るバンドパスフィルタ151と同じである。
【0135】
次に、図31および図32を参照して、本実施の形態に係るバンドパスフィルタ201の積層体について説明する。図31は、バンドパスフィルタ201の主要部分を示す斜視図である。図32において(a)、(b)は、それぞれ、側面20C側から数えて2層目および16層目の誘電体層の上面を示している。図32において、丸印はスルーホールを表している。本実施の形態に係るバンドパスフィルタ201は、第1の実施の形態に係るバンドパスフィルタ1と同様に、積層体20、入力端子22、出力端子23および外面導体部24,25を備えている。
【0136】
以下、本実施の形態に係るバンドパスフィルタ201の積層体20が、第1の実施の形態に係るバンドパスフィルタ1の積層体20と異なる点について説明する。本実施の形態に係るバンドパスフィルタ201の積層体20は、第1の実施の形態に係るバンドパスフィルタ1の積層体20における2層目および16層目の誘電体層32,46の代わりに、図32(a)、(b)に示した誘電体層82,86を有している。
【0137】
図32(a)に示した2層目の誘電体層82の上面には、共振器用導体層821が形成されている。導体層821は、第1の部分821aと第2の部分821bと第3の部分821cとを有している。第1の部分821aおよび第2の部分821bの形状および配置は、図6(b)に示した導体層321の第1の部分321aおよび第2の部分321bと同じである。第3の部分821cは、第1の部分821aの図32(a)おける右側の端部近傍の部分から上方に延びている。第3の部分821cの図32(a)における上側の端部は外面導体部25に接続される。また、誘電体層82には、第1の部分821aの図32(a)おける左側の端部近傍の部分に接続されたスルーホール825が形成されている。
【0138】
本実施の形態における4層目の誘電体層34(図6(d)参照)の上面に形成された導体層341が延びる方向は、図32(b)に示した共振器用導体層821の第1の部分821aが延びる方向に直交し、共振器用導体層821の第2の部分821bが延びる方向と一致する。
【0139】
本実施の形態における11層目の誘電体層41(図8(c)参照)の上面に形成されたキャパシタ用導体層411には、スルーホール825,335,345,355,365,375,385,395,405を介して導体層821が接続されている。
【0140】
図32(b)に示した16層目の誘電体層86の上面には、共振器用導体層861が形成されている。導体層861は、第1の部分861aと第2の部分861bと第3の部分861cとを有している。第1の部分861aおよび第2の部分861bの形状および配置は、図9(d)に示した導体層461の第1の部分461aおよび第2の部分461bと同じである。第3の部分861cは、第1の部分861aの図32(b)おける左側の端部近傍の部分から上方に延びている。第3の部分861cの図32(b)における上側の端部は外面導体部25に接続される。本実施の形態における14層目の誘電体層44(図9(b)参照)の上面に形成された共振器用導体層441が延びる方向は、第1の部分861aが延びる方向に直交し、第2の部分861bが延びる方向と一致する。第1の部分861a図32(b)おける右側の端部近傍の部分には、スルーホール376,386,396,406,416,426,436,446,456を介して本実施の形態における7層目の誘電体層37(図7(c)参照)の上面に形成されたキャパシタ用導体層371が接続されている。
【0141】
共振器用導体層821は、本実施の形態におけるインダクタ11を構成する。共振器用導体層821のうちの第1の部分821aが、インダクタ11の主要部分を構成する。導体層821は、導体層411,421およびスルーホール825,335,345,355,365,375,385,395,405,412を介して入力端子22に接続される。これにより、インダクタ11が、入力端子22に電気的に接続されている。
【0142】
共振器用導体層861は、本実施の形態におけるインダクタ13を構成する。共振器用導体層861のうちの第1の部分861aが、インダクタ13の主要部分を構成する。導体層861は、導体層361,371およびスルーホール363,376,386,396,406,416,426,436,446,456を介して出力端子23に接続される。これにより、インダクタ13が、出力端子23に電気的に接続されている。
【0143】
導体層821の第3の部分821cは、本実施の形態における接続部157を構成する。導体層861の第3の部分861cは、本実施の形態における接続部158を構成する。
【0144】
本実施の形態では、インダクタ11とインダクタ部分12Aとの間の誘導性結合は、第1の部分821aに対する第3の部分821cの接続位置が、導体層821の図32(a)における右側の端部から離れるに従って強くなる。また、インダクタ13とインダクタ部分12Bとの間の誘導性結合は、第1の部分861aに対する第3の部分861cの接続位置が、導体層861の図32(b)における左側の端部から離れるに従って強くなる。
【0145】
本実施の形態では、第1の部分821aに対する第3の部分821cの接続位置を変えることによって、インダクタ11とインダクタ部分12Aとの間の誘導性結合、すなわち第1の共振器4と第2の共振器5との間の誘導性結合を調整することができる。同様に、本実施の形態では、第1の部分861aに対する第3の部分861cの接続位置を変えることによって、インダクタ13とインダクタ部分12Bとの間の誘導性結合、すなわち第3の共振器6と第2の共振器5との間の誘導性結合を調整することができる。
【0146】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第2の実施の形態と同様である。
【0147】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、本発明のバンドパスフィルタは、実装基板等の支持体に実装された状態におけるバンドパスフィルタの上下方向が、積層体における積層方向と同じ方向になるように、支持体に実装されてもよい。
【0148】
また、本発明のバンドパスフィルタは、隣接する2つの共振器同士が電磁界結合するように設けられた4つ以上の共振器を備えていてもよい。
【0149】
本発明のバンドパスフィルタは、無線LAN用の通信装置、ブルートゥース(登録商標)規格の通信装置、ワイマックス(登録商標)規格の通信装置において用いられるバンドパスフィルタとして有用である。
【符号の説明】
【0150】
1…積層型バンドパスフィルタ、2…入力端子、3…出力端子、4…第1の共振器、5…第2の共振器、6…第3の共振器、11…第1のインダクタ、12…第2のインダクタ、12A…第1のインダクタ部分、12B…第2のインダクタ部分、13…第3のインダクタ、14〜19…キャパシタ、20…積層体、22…入力端子、23…出力端子、24…第1の外面導体部、25…第2の外面導体部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の誘電体層を含む積層体と、
前記積層体と一体化された第1の共振器、第2の共振器および第3の共振器とを備えた積層型バンドパスフィルタであって、
前記第2の共振器は、前記第1の共振器と第3の共振器の各々と誘導性結合し、
前記積層体は、前記複数の誘電体層が積層された方向と直交する方向の端に位置する第1の面と、前記第1の面とは反対側の第2の面とを有し、
積層型バンドパスフィルタは、更に、前記積層体の前記第1の面に配置されてグランドに電気的に接続される第1の外面導体部と、前記積層体の前記第2の面に配置された第2の外面導体部とを備え、
前記第1の共振器は第1のインダクタを有し、
前記第2の共振器は第2のインダクタを有し、
前記第3の共振器は第3のインダクタを有し、
前記第2のインダクタは、それぞれ、前記積層体における隣接する誘電体層の間に配置されて前記第1の外面導体部と第2の外面導体部とを電気的に接続する第1の内部導体層および第2の内部導体層を有し、
前記第1の内部導体層と第2の内部導体層は、前記複数の誘電体層が積層された方向における異なる位置に配置され、
前記第1の内部導体層は前記第1のインダクタと誘導性結合し、前記第2の内部導体層は前記第3のインダクタと誘導性結合することを特徴とする積層型バンドパスフィルタ。
【請求項2】
前記第1の面は、支持体に対して積層型バンドパスフィルタを実装する際に前記支持体に向く面であることを特徴とする請求項1記載の積層型バンドパスフィルタ。
【請求項3】
前記積層体は、更に、前記複数の誘電体層が積層された方向の両端に位置する第3の面および第4の面を有し、
前記第2の内部導体層は、前記第1の内部導体層と前記第4の面との間に位置し、
第1のインダクタは、前記第1の内部導体層と前記第3の面との間に位置し、
第3のインダクタは、前記第2の内部導体層と前記第4の面との間に位置することを特徴とする請求項1または2記載の積層型バンドパスフィルタ。
【請求項4】
前記第1のインダクタの少なくとも一部は、前記第1の内部導体層の少なくとも一部に対向し、
前記第3のインダクタの少なくとも一部は、前記第2の内部導体層の少なくとも一部に対向し、
前記積層体を前記第2の面の外側から前記第2の面に垂直な方向に見たときに、前記第2の外面導体部は、前記第1のインダクタの少なくとも一部と第1の内部導体層の少なくとも一部とが対向する領域と前記第3のインダクタの少なくとも一部と第2の内部導体層の少なくとも一部とが対向する領域とを覆っていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の積層型バンドパスフィルタ。
【請求項5】
前記第2の共振器は、更に前記第1の共振器と第3の共振器の各々と容量性結合することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の積層型バンドパスフィルタ。
【請求項6】
前記第1のインダクタと第3のインダクタは、前記第2のインダクタに電気的に接続されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の積層型バンドパスフィルタ。
【請求項7】
前記第1ないし第3の共振器は、いずれも、開放端と短絡端とを有する1/4波長共振器であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の積層型バンドパスフィルタ。
【請求項8】
更に、前記積層体の外面に配置され、信号の入力のために用いられる入力端子と、前記積層体の外面に配置され、信号の出力のために用いられる出力端子とを備え、
前記第1のインダクタは、前記入力端子に電気的に接続され、
前記第3のインダクタは、前記出力端子に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の積層型バンドパスフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2011−101105(P2011−101105A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253010(P2009−253010)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】