説明

積層型マイクロ流体デバイスの製造方法

【課題】 流路と成すべき部分の一部が表面に開口した開口部が形成されたデバイス形成用部材の二以上を接着剤により積層するにあたり、流路と成すべき部分に接着剤の接触や残存を生じさせない積層型マイクロ流体デバイスの製造方法を提供すること。
【解決手段】 流路と成すべき部分の一部が表面に開口した開口部が形成された二以上のデバイス形成用部材を、互いに積層してなる積層型マイクロ流体デバイスの製造方法において、転写用支持体上に活性エネルギー線硬化性接着剤を塗布して未硬化塗膜を得た後、得られた塗膜をデバイス形成用部材に転写して開口部相当部位のみ硬化させ、次いで該未硬化塗膜を互いに接着すべきデバイス形成用部材の少なくとも一方に転写して、開口部同士が連絡するように合わせて他方のデバイス形成用部材を積層した後、転写した未硬化塗膜を硬化させて接着する工程、からなる積層型マイクロ流体デバイスの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路と成す部分が表面に開口したデバイス形成用部材を二以上積層してなる積層型マイクロ流体デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン、石英、ガラス、金属、有機重合体などを素材とする部材の内部に毛細管状の流路が形成されたマイクロ流体デバイスの製造方法として、これらの素材から成る基板に、エッチング法などにより流路となる溝を形成し、該基板にカバーとなる板状の部材を接着あるいは固着して、前記2つの部材の間に毛細管状の流路を形成する方法は一般に知られている。このとき、上記の溝が特に微細な場合には、形成される流路を接着剤で閉塞しないように接着剤を塗布して接着することは相当に困難であった。
【0003】
この困難を除去する方法として、溝を有する部材と他の部材を、接着剤となる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を介して接触させ、溝の部分を除いて活性エネルギー線を照射することによって、流路中に入り込んだ未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させることなく他の部分を硬化させて接着し、その後、流路中の未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を洗浄除去することによって、マイクロ流体デバイスを形成する方法が開示されている(特許文献1参照)。しかしこの方法は、流路内面に生化学物質を固定した場合や流路内部に多孔質体が形成されている場合など、流路内面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を一時的にせよ接触させたくない場合には適用できなかった。またこの方法は、接着すべき部材が、該部材の接着面に一部が開口している毛細管状の流路を有していて、該毛細管状の流路は、デバイス形成用部材の表面に平行な面への投影図が、前記開口部の同面への投影図と重ならない部分を有する場合には、該開口部から流路内に入った活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が、接着工程での活性エネルギー線照射によって、該開口部以外の流路内で硬化するため、適用できなかった。
【0004】
また、他の方法として、溝を有する部材と蓋となる部材を接着することにより毛細管状の流路を形成する方法であって、蓋となる部材に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布し、非接着とする部分のみをあらかじめ露光して硬化させた後、貼り合わせて活性エネルギー線を照射する方法が開示されている(特許文献2参照)。
【0005】
しかしながらこの方法は、蓋となる部材側に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が充填されるような何らかの構造、例えば接着面に開口した毛細管状の流路が形成されている場合には適用出来なかった。
【0006】
【特許文献1】特開2003−139661号公報
【特許文献2】特開2003−136500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、流路と成すべき部分の少なくとも一部が表面に開口した開口部が形成されたデバイス形成用部材の二以上を接着剤により積層してなる積層型マイクロ流体デバイスを製造するにあたり、部材表面に形成された欠損部や部材内部に作成された空洞部などの流路と成すべき部分に接着剤の接触や残存を生じさせない積層型マイクロ流体デバイスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決する方法について鋭意検討した結果、それぞれ流路と成すべき部分の少なくとも一部が表面に開口した開口部が形成された二以上のデバイス形成用部材を、前記開口部同士が連絡するように合わせて互いに積層してなる積層型マイクロ流体デバイスの製造方法において、
(1)転写用支持体上に活性エネルギー線硬化性接着剤を塗布して該活性エネルギー線硬化性接着剤の未硬化塗膜を得る工程、
(2)得られた塗膜を、前記デバイス形成用部材に転写した際に前記デバイス形成用部材の開口部に相当する部位に活性エネルギー線を照射して硬化させる工程、
(3)転写用支持体上の未硬化塗膜を互いに接着すべきデバイス形成用部材の少なくとも一方に転写して、その上に、前記開口部同士が連絡するように合わせて他方のデバイス形成用部材を積層した後、転写した未硬化塗膜を硬化させ、二以上の該デバイス形成用部材を接着する工程、
からなる積層型マイクロ流体デバイスの製造方法を提供することにより上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、流路と成すべき部分の少なくとも一部が表面に開口した開口部が形成されたデバイス形成用部材の二以上を接着剤により積層してなる積層型マイクロ流体デバイスを製造するにあたり、部材表面に形成された欠損部や部材内部に作成された空洞部などの流路と成すべき部分に接着剤の接触や残存を生じさせないため、流路の閉塞させるおそれがない。また、流路内面に生化学物質を固定した場合や流路内部に多孔質体が形成されている場合に生化学物質の活性低下や、多孔質部を閉塞させるなどのおそれがなく、機能的な流路内面を有するマイクロ流体デバイスを機能低下を招くことなく製造可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[積層型マイクロ流体デバイス]
マイクロ流体デバイスはその内部に微細な毛細管状の流路を有し、該流路内にて、反応、化学工学的処理、検出などを行うものである。本発明の製造方法により作製するマイクロ流体デバイスは、それぞれ流路と成すべき部分の少なくとも一部が表面に開口した開口部が形成された二以上のデバイス形成用部材を、該開口部が連絡するように合わせて互いに積層して、活性エネルギー線硬化性接着剤を介して接着することにより形成された積層型マイクロ流体デバイスである。但し、3以上のデバイス形成用部材を積層して接着する場合、例えば、第一部材、第二部材、第三部材がこの順で積層接着されている場合には、第一部材と第二部材間で連絡した流路が形成され、かつ、第二部材と第三部材間で連絡した流路を形成する際には、これらの両流路は互いに連絡していてもしていなくても良い。
【0011】
前記流路は、断面積が1μm〜0.25mm、好ましくは10μm〜0.04mmであるものである。勿論、部分的にこの範囲外の部分を有しても良い。なお、本明細書において、流路とは流体の流れ得る空間を言い、単なる流体移送用の流路、反応その他の処理を行う空間、光学的或いは電気的などの信号検出部、内表面に触媒や生化学物質が固定された流路、粒子・繊維・多孔質体などが装着された流路、等を含むものとする。前記多孔質体は、細孔同士が連絡している連通多孔質体を言う。また、ここで言う「装着」とは、流路内に有すること一般をいい、流路に固着されていてもされていなくても良い。また、流路断面全体に充填されていても、その断面の一部に有しても良いし、流路の長さ方向の全体又は一部に有していても良い。例えば多孔質体が装着された流路の場合、多孔質体の両側が流路等の空間となっている多孔質膜、流路壁面に固着して形成された多孔質層、流路全体を充填して形成された多孔質モノリスであり得る。勿論、多孔質体や粒子、繊維にも、触媒や生化学物質が固定されていても良い。本発明に於いては、このような、粒子・繊維・多孔質体などが装着された流路を有するマイクロ流体デバイスを作製する場合に、本発明の効果が発揮されるため、好ましい。
【0012】
〔(1)転写用支持体上に活性エネルギー線硬化性接着剤を塗布して該活性エネルギー線硬化性接着剤の未硬化塗膜を形成する工程〕
本発明に使用する活性エネルギー線硬化性接着剤は、主たる構成要素として活性エネルギー線硬化性化合物を含有する。該活性エネルギー線硬化性化合物は、活性エネルギー線の照射により硬化して接着性を示すものであれば任意である。活性エネルギー線硬化性化合物が活性エネルギー線重合性あるいは活性エネルギー線架橋性の化合物である場合には、ラジカル重合性、アニオン重合性、カチオン重合性等の活性エネルギー線重合性化合物や活性エネルギー線架橋性化合物であってよいし、付加重合性の他、開環重合性、縮合重合性のものであっても良い。活性エネルギー線硬化性化合物は、重合開始剤や硬化促進剤などの非存在下で硬化するものでもよく、これらの存在下でのみ活性エネルギー線により硬化するものも使用することができる。
【0013】
そのような活性エネルギー線硬化性化合物としては、重合性の炭素−炭素二重結合を有する物が好ましく、中でも、反応性の高い(メタ)アクリル系化合物やビニルエーテル類、また光重合開始剤の不存在下でも硬化するマレイミド系化合物が好ましい。活性エネルギー線硬化性化合物としては、十分に硬化し接着可能なものであれば、単官能のモノマー及び/又はオリゴマーであっても良いが、高い接着強度を得るためには架橋重合性化合物、例えば、1分子内に2以上の重合性の炭素−炭素二重結合を有するモノマー及び/又はオリゴマー(以下、このようなモノマーを「多感能モノマー」と称する場合がある。オリゴマーについても同様である)であることが好ましい。
【0014】
活性エネルギー線硬化性化合物として使用できる(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2’−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレンオキシフェニル)プロパン、ヒドロキシジピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレート、ビス(アクロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、N−メチレンビスアクリルアミドの如き2官能モノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート、の如き3官能モノマー;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートの如き4官能モノマー;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートの如き6官能モノマー;2−イソシアネートエチルメタクリレートの如き他の架橋性官能基を有する単官能モノマー、などが挙げられる。
【0015】
また、活性エネルギー線硬化性化合物として使用できるオリゴマー(プレポリマーとも呼ばれる)を用いることもでき、例えば、重量平均分子量が500〜50000のものが挙げられる。そのような重合性オリゴマーしては、例えば、エポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸エステル、ポリエーテル樹脂の(メタ)アクリル酸エステル、ポリブタジエン樹脂の(メタ)アクリル酸エステル、分子末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン樹脂などが挙げられる。
【0016】
マレイミド系の活性エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、4,4’−メチレンビス(N−フェニルマレイミド)、2,3−ビス(2,4,5−トリメチル−3−チエニル)マレイミド、1,2−ビスマレイミドエタン、1,6−ビスマレイミドヘキサン、トリエチレングリコールビスマレイミド、N,N’−m−フェニレンジマレイミド、m−トリレンジマレイミド、N,N’−1,4−フェニレンジマレイミド、N,N’−ジフェニルメタンジマレイミド、N,N’−ジフェニルエーテルジマレイミド、N,N’−ジフェニルスルホンジマレイミド、1,4−ビス(マレイミドエチル)−1,4−ジアゾニアビシクロ−[2,2,2]オクタンジクロリド、4,4’−イソプロピリデンジフェニル−ジシアナート・N,N’−(メチレンジ−p−フェニレン)ジマレイミドの如き2官能マレイミド;N−(9−アクリジニル)マレイミドの如きマレイミド基とマレイミド基以外の重合性官能基とを有するマレイミド、などが挙げられる。マレイミド系のモノマーは、ビニルモノマー、ビニルエーテル類、アクリル系モノマー等の重合性炭素・炭素二重結合を有する化合物と共重合させることもできる。
【0017】
その他の活性エネルギー線硬化性化合物としては、例えばビニルエーテル類、エポキシ化合物などを例示できる。
【0018】
活性エネルギー線硬化性接着剤は、活性エネルギー線硬化性化合物を必須成分として含有するものであり、単独の活性エネルギー線硬化性化合物で構成されていてもよいが、複数種の活性エネルギー線硬化性化合物の混合物であり得る。例えば、活性エネルギー線硬化性化合物の硬化物に十分な硬度を付与するためには、活性エネルギー線硬化性接着剤は多官能のモノマー及び/又はオリゴマーを含有することが好ましいが、その他に、活性エネルギー線硬化性接着剤の粘度調節、接着性の向上、硬化物の柔軟性の付与などの目的で、単官能のモノマー及び/又はオリゴマーを混合することも好ましい。
【0019】
活性エネルギー線硬化性接着剤に混合使用できる単官能(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、メチルメタクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アルキルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、グリセロールアクリレートメタクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、エチレノキサイド変性フタル酸アクリレート、w−カルゴキシアプロラクトンモノアクリレート、2−アクリロイルオキシプロピルハイドロジェンフタレート、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、アクリル酸ダイマー、2−アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロジェンフタレート、フッ素置換アルキル(メタ)アクリレート、塩素置換アルキル(メタ)アクリレート、スルホン酸ソーダエトキシ(メタ)アクリレート、スルホン酸−2−メチルプロパン−2−アクリルアミド、燐酸エステル基含有(メタ)アクリレート、スルホン酸エステル基含有(メタ)アクリレート、シラン基含有(メタ)アクリレート、((ジ)アルキル)アミノ基含有(メタ)アクリレート、4級((ジ)アルキル)アンモニウム基含有(メタ)アクリレート、(N−アルキル)アクリルアミド、(N、N−ジアルキル)アクリルアミド、アクロロイルモリホリン、などが挙げられる。
【0020】
活性エネルギー線硬化性接着剤に混合使用できる単官能マレイミド系モノマーとしては、例えば、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ドデシルマレイミドの如きN−アルキルマレイミド;N−シクロヘキシルマレイミドの如きN−脂環族マレイミド;N−ベンジルマレイミド;N−フェニルマレイミド、N−(アルキルフェニル)マレイミド、N−ジアルコキシフェニルマレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、2,3−ジクロロ−N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド、2,3−ジクロロ−N−(2−エチル−6−メチルフェニル)マレイミドの如きN−(置換又は非置換フェニル)マレイミド;N−ベンジル−2,3−ジクロロマレイミド、N−(4’−フルオロフェニル)−2,3−ジクロロマレイミドの如きハロゲンを有するマレイミド;ヒドロキシフェニルマレイミドの如き水酸基を有するマレイミド;N−(4−カルボキシ−3−ヒドロキシフェニル)マレイミドの如きカルボキシ基を有するマレイミド;N−メトキシフェニルマレイミドの如きアルコキシ基を有するマレイミド;N−[3−(ジエチルアミノ)プロピル]マレイミドの如きアミノ基を有するマレイミド;N−(1−ピレニル)マレイミドの如き多環芳香族マレイミド;N−(ジメチルアミノ−4−メチル−3−クマリニル)マレイミド、N−(4−アニリノ−1−ナフチル)マレイミドの如き複素環を有するマレイミド、などが挙げられる。
【0021】
活性エネルギー線硬化性接着剤の粘度の好適な値は、転写する接着剤層の厚みに依存し、厚みが薄いほど低粘度とすることが好ましい。例えば、転写する接着剤層の厚みを1μm以下にする場合には約0.1〜100mPa・s以下であることが好ましく、該厚みを1〜10μmにする場合には約10〜1000mPa・sが好ましく、該厚みを10〜100μmにする場合には約100〜10000mPa・sが好ましい。また、転写する接着剤層の厚みを1μm以下にする場合には、該接着剤に揮発性溶剤を添加し、転写用支持体に塗布した後該溶剤を揮発除去することも好ましい。
【0022】
活性エネルギー線硬化性接着剤には、必要に応じて、その他の成分として、光重合開始剤などの重合促進剤、増粘剤、改質剤、界面活性剤、揮発性溶剤、着色剤、などを混合して使用することができる。
【0023】
活性エネルギー線硬化性接着剤に必要に応じて使用することができる光重合開始剤は、本発明で使用する活性エネルギー線に対して活性であり、活性エネルギー線硬化性化合物を重合させることが可能なものであれば、特に制限はなく、例えば、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤であって良い。重合性光重合開始剤は、例えば、活性エネルギー線硬化性化合物として例示した多官能マレイミドの如き多官能モノマーの他、該接着剤に混合使用できる単官能マレイミド系モノマーとして例示したような単官能モノマーであっても良い。
【0024】
活性エネルギー線硬化性接着剤に必要に応じて混合使用することができる増粘剤としては、例えば、活性エネルギー線硬化性接着剤に可溶な鎖状有機重合体が挙げられる。
【0025】
活性エネルギー線硬化性接着剤に必要に応じて混合使用することができる着色剤としては、任意の染料や顔料、蛍光色素が挙げられる。
【0026】
塗工支持体に塗布された活性エネルギー線硬化性接着剤に活性エネルギー線を照射(露光)した際に、露光された部分の光学的特性が変化して、硬化部分が容易に識別できるようにすることで、デバイス形成用部材との位置を合わせた密着を容易に行うことができる。
【0027】
このような目的に使用可能な着色剤としては、常態では色を持たないが、使用する活性エネルギー線の照射でそれ自身が化学変化して着色する色素、或いは、活性エネルギー線の照射で呈色剤となる化合物と、常態では色を持たないが該呈色剤と呈色反応する色素からなる色素系、使用する活性エネルギー線の照射で脱色される色素や色素系、使用する活性エネルギー線の照射で蛍光性となる蛍光色素や蛍光色素系、使用する活性エネルギー線の照射で非蛍光性となる蛍光色素や蛍光色素系、活性エネルギー線硬化性接着剤が硬化すると相分離して光散乱を生じるような物質、例えば未硬化の活性エネルギー線硬化性に溶解し、その硬化物に溶解しない鎖状ポリマーを例示できる。
【0028】
活性エネルギー線硬化性接着剤に必要に応じて混合含有することができる界面活性剤としては、ノニオン型、カチオン型、アニオン型など任意の界面活性剤が使用できる。
【0029】
活性エネルギー線硬化性接着剤に必要に応じて混合含有することができる揮発性溶剤としては、活性エネルギー線硬化性接着剤と均一に混和可能な任意の揮発性溶剤が使用できる。
【0030】
本発明で使用する転写用支持体は、活性エネルギー線硬化性接着剤を一時的に塗布する支持体であり、その表面に活性エネルギー線硬化性接着剤を塗布して該接着剤の塗膜を形成することが可能であり、該接着剤塗膜を活性エネルギー線にてパターン露光することが可能であり、かつ、該接着剤を塗布した部材をデバイス形成用部材に密着させた後に剥離して、該接着剤を該部材に転写出来れば、その寸法、形状、材質は任意である。しかしながら、形状は、該接着剤を塗布する面が平面状であること、またはローラー状であることが好ましく、板状又はシート状であることがさらに好ましく、該接着剤を転写すべき相手の部材が剛直なものである場合には、シート状であることが最も好ましい。表面が平面またはローラー状とすることで、活性エネルギー線硬化性接着剤の塗布、露光、デバイス形成用部材との密着が容易になるし、板状又はシート状とすることで取り扱いがより容易となり、シート状にすることで、気泡を巻き込むことなく両部材を密着させることが容易になる。また、シート状にすることで、平面状で露光し、その後ローラーに巻き付けて転写する方法を採ることもできる。ただし、活性エネルギー線硬化性接着剤を転写すべき相手のデバイス形成用部材が柔軟なものである場合には、板状などの剛直なものであることが好ましい。転写用支持体がローラー状である場合には、前記密着と転写用支持体の剥離が線状の部分で順次行われることになる。
【0031】
転写用支持体がシート状である場合には、容易に撓み、かつ、平面内で伸びびやずれなどの変形をしない程度の厚みと剛性を持たせることが好ましい。このようなシートの素材としては、有機重合体や金属を好ましく用い得るが、有機重合体が取り扱いが容易な上、安価で使い捨て可能なため、特に好ましい。このような有機重合体としては、ヤング率が0.1〜30GPaであるものが好ましく、1〜20GPaであるものがさらに好ましい。有機重合体をシート状で使用する場合には、そのヤング率に応じて、任意の厚さの範囲、例えば0.5μm〜1mmの範囲で、容易に撓み、かつ、平面内で伸びやずれなどの変形をしない厚を選択することが出来る。有機重合体は熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹子であっても良い。
【0032】
転写用支持体の素材が金属である場合には、上記の観点から、厚みは3〜200μmであることが好ましく、10〜100μmが更に好ましい。
【0033】
転写用支持体の素材として好ましく使用できる有機重合体としては、例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、ポリスチレン/マレイン酸共重合体、ポリスチレン/アクリロニトリル共重合体の如きスチレン系有機重合体;ポルスルホン、ポリエーテルスルホンの如きポリスルホン系有機重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリルの如き(メタ)アクリル系有機重合体;マレイミド系有機重合体;ビスフェノールA系ポリカーボネート、ビスフェノールF系ポリカーボネート、ビスフェノールZ系ポリカーボネートの如きポリカーボネート系有機重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチルペンテン−1の如きポリオレフィン系有機重合体;塩化ビニル、塩化ビニリデンの如き塩素含有有機重合体;酢酸セルロース、エチルセルロース、ニトロセルロースの如きセルロース系有機重合体;ポリウレタン系有機重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレートの如きポリエステル系有機重合体;アルキレン系ポリアミド、芳香族系ポリアミドの如きポリアミド系有機重合体;ポリイミド系有機重合体;ポリ−2,6−ジメチルフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイドの如きポリエーテル系又はポリチオエーテル系有機重合体;ポリエーテルエーテルケトンの如きポリエーテルケトン系有機重合体;エポキシ樹脂;ウレア樹脂;フェノール樹脂等を挙げられる。これらの中でも、活性エネルギー線硬化性接着剤の塗工性が良好な点などから、スチレン系有機重合体、(メタ)アクリル系有機重合体、ポリカーボネート系有機重合体、ポリスルホン系有機重合体、ポリエステル系有機重合体が好ましい。勿論、使用する接着剤に対して耐溶剤性のあるものを選択して使用することが好ましい。
【0034】
転写用支持体に使用する有機重合体は、単独重合体であっても、共重合体であっても、ブレンドやポリマーアロイであっても良く、また、熱可塑性樹脂であっても、熱硬化性樹脂であっても良い。さらに、改質剤、着色剤、充填材、強化材などの添加物を含有しても良い。
【0035】
転写用支持体は表面処理を行っても良い。例えば、転写用支持体が表面エネルギーが非常に低い素材、例えば、ポリオレフィン、フッ素系有機重合体、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール等の場合には、コロナ処理、プラズマ処理、常圧プラズマ処理、火炎処理、サンドブラスト処理などの物理的表面処理、プライマー処理、重クロム酸などによる酸化処理、アセチル化処理、化学エッチング処理などの化学的表面処理の使用により、活性エネルギー線硬化性接着剤による濡れ性を向上させることが好ましい。
【0036】
転写用支持体の素材として好ましく使用できる金属としては、例えば、鉄、ニッケル、アルミニウム、銅、及びこれらの合金が好ましい。これらは、クロムメッキやニッケルメッキなどのメッキを施しても良いし、表面の電解酸化、プラズマ溶射によるセラミックなどのコーティング、等を施しても良い。
【0037】
活性エネルギー線硬化性接着剤を転写用支持体に塗布する方法は任意であり、例えば、スピンコート、バーコーターやドクターブレードなどによる塗布、グラビア印刷その他の印刷、スプレー塗工、デイッピング塗工を例示できる。平面状の転写用支持体を使用すれば塗工が容易になる。
【0038】
活性エネルギー線硬化性接着剤が揮発性溶剤を含有する場合には、該接着剤を転写用支持体に塗布した後、塗布された接着剤層の一部を活性エネルギー線で露光した後、デバイス形成用部材に転写した後、の少なくとも一つの工程において該溶剤を揮発除去することが好ましいが、該接着剤を転写用支持体に塗布した後に除去することがさらに好ましい。
【0039】
〔(2)得られた塗膜を、前記デバイス形成用部材に転写した際に前記デバイス形成用部材の開口部に相当する部位に活性エネルギー線を照射して硬化させる工程〕
次いで、転写用支持体上の塗膜において、前記デバイス形成用部材に転写した際に前記デバイス形成用部材の前記開口部に相当する部位(以下、「開口部相当部位」と称する場合がある)の活性エネルギー線硬化性接着剤塗膜の転写能力を失わせるために、前記開口部相当部位に活性エネルギー線を照射(活性エネルギー線が紫外線などの光線である場合には露光と称する場合もある)して硬化させる。
【0040】
なお、本工程においては、前記開口部相当部位の全てを硬化させなくてもよい。例えば、デバイス形成用部材の前記開口部の内、十分に深く、かつ大きな開口部があれば、該開口部に相当する部位は、活性エネルギー線硬化性接着剤を硬化させなくても転写されないため、露光する必要はなく、該接着剤が不必要に転写される可能性がある開口部相当部位のみを硬化させればよい。
【0041】
又逆に、前記開口部相当部位以外の部分を硬化させて、前記開口部以外の部分に活性エネルギー線硬化性接着剤が転写されない部分を形成しても良い。この様な部分としては、例えば、該接着剤を転写する対象のデバイス形成部材の前記開口部相当部位でなく、それに積層して接着するデバイス形成部材の開口部に相当する部分が挙げられる。該部分を露光硬化させることによって、硬化した接着剤層の厚み以外には、硬化した活性エネルギー線硬化性接着剤の面を流路内面に持たない流路を形成できる。
【0042】
本工程で開口部相当部位を硬化させると、接着剤塗膜の硬化した部分は未硬化部分より厚みがやや減少するが、実質的にはその差はほとんどない。
【0043】
硬化に用いる活性エネルギー線としては、活性エネルギー線硬化性化合物を硬化させることが可能で、かつ、必要な部分のみに照射することが可能なものである。このような活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、赤外線などの光線;エックス線、ガンマ線等の電離放射線;電子線、イオンビーム、ベータ線、重粒子線等の粒子線が挙げられるが、取り扱い性や硬化速度の面から紫外線及び可視光が好ましく、紫外線が特に好ましい。活性エネルギー線は、平行エネルギー線、レンズなどでマスクの像が縮小や拡大された活性エネルギー線、レーザーなどの走査型活性エネルギー線、であり得る。
【0044】
開口部相当部位に選択的に活性エネルギー線を照射する方は任意であり、例えば、フォトマスキングして活性エネルギー線を照射する方法、レンズ系を通して、フォトマスクの像を露光する方法、レーザー光ビームなどを走査する方法を採ることができる。フォトマスキング法の場合、部分的な複数回の照射に分けることも可能である。
【0045】
照射部の硬化速度を速める目的で、活性エネルギー線の照射を低酸素濃度雰囲気で行なうことも好ましい。低酸素濃度雰囲気としては、窒素雰囲気、二酸化炭素雰囲気、アルゴン雰囲気、ヘリウム雰囲気、真空又は減圧雰囲気が好ましい。但し、硬化は完全硬化である必要はなく、該硬化部分が実質的に転写されずに転写用支持体に残存する程度であればよい。その程度は、用いる活性エネルギー線硬化性接着剤の系において、簡単な実験で確認することが出来る。
【0046】
〔(3)転写用支持体上の未硬化塗膜を互いに接着すべきデバイス形成用部材の少なくとも一方に転写して、その上に、前記開口部が互いに連絡するように合わせて他方のデバイス形成用部材を積層した後、転写した未硬化塗膜を硬化させ、二以上の該デバイス形成用部材を接着する工程〕
次いで、転写用支持体上の活性エネルギー線硬化性接着剤塗膜をデバイス形成用部材と密着させる。該密着させるデバイス形成用部材、即ち、活性エネルギー線硬化性接着剤を塗布するデバイス形成用部材は、互いに接着することによって互いにつながった流路を形成する一対のデバイス形成用部材の任意の一方又は両方であって良い。このとき、活性エネルギー線硬化性接着剤を塗布するデバイス形成用部材が、前記の一方であることが、工程数が少なくて良いため好ましいが、該接着剤を、例えば厚さ1μm以下のように特に薄く塗布する場合や接着面が荒れている場合には、接着されない部分の発生を抑制するために、両部材とすることが好ましい。
【0047】
各デバイス形成用部材は流路と成すべき部分を有している。流路と成すべき部分とは、例えば部材内部に形成されていて、該部材の表面に開口している空洞部や、該部材を貫通するように形成された貫通孔のように、それ自身が流路の一部であり、該部材を互いに積層して固着することにより互いに連絡した毛細管状の流路となる部分、若しくは、該部材の表面に形成された凹部や溝などの、それ自身は毛細管状を成さない部分ではあるが、該部材を互いに積層して固着することにより毛細管状の流路となる部分をいう。
【0048】
デバイス形成用部材は、その接着面に、活性エネルギー線硬化性接着剤が充填され得るような流路の開口部、例えばデバイス形成用部材が積層されることで流路となる溝(即ち、流路の縦断面や毛細管状の流路の横断面)が形成されている部材であり、さらに好ましくは、該流路の開口部に多孔質体が装着されている部材であり、最も好ましくは、デバイス形成用部材の接着面に一部が開口している毛細管状の流路を有していて、該毛細管状の流路は、デバイス形成用部材の表面に平行な面への投影図が、前記開口部の同面への投影図と重ならない部分を有する部材である。なお、ここで言う多孔質体とは、細孔同士が連結した連通多孔質体を言う。多孔質体は、開口部全体に充填されていてもよいし、開口部を塞いでいてその裏側が空洞になっていてもよいし、空洞の底面や側面に固着されていてもよいし、支柱など、空洞内の何らかの構造物に固定されていても良い。
【0049】
デバイス形成用部材が、活性エネルギー線硬化性接着剤が充填され得るような流路の開口部を持つものである場合には、前記の流路となる部分に一度も接着剤を接触させること無く接着可能であるため、既存技術で生じる不都合を本発明で回避することが出来る。デバイス形成用部材が前記好ましい構造である場合には、より多く生じがちな前記不都合を回避することが出来る。また、デバイス形成用部材が前記最も好ましい構造である場合には、該開口部に活性エネルギー線を照射しなくても、該開口部から流路内に入った接着剤が該開口部以外の流路内で硬化するため、従来技術を適用することが不可能であるため、特に有用である。
【0050】
本工程において、活性エネルギー線硬化性接着剤塗膜の前記硬化部分はデバイス形成用部材の開口部に合わされる。従って、デバイス形成用部材の開口部が微小であっても、開口部が浅くても、また、開口部中に多孔質体などが装着されていても、活性エネルギー線硬化性接着剤が前記開口部に入り込んで、流路を閉塞することがない。
【0051】
その後、転写用支持体を剥離することによって、転写用支持体上の未硬化の活性エネルギー線硬化性接着剤塗膜をデバイス形成用部材に転写する。この操作により、該接着剤塗膜の未硬化部分は、厚み方向における少なくとも一部がデバイス形成用部材に転写され、該接着剤塗膜の硬化部分は、転写されずに転写用支持体上に残る。
【0052】
未硬化の活性エネルギー線硬化性接着剤塗膜が転写された積層部材の一方の接着剤転写面に、前記開口部が互いに連絡するように合わせて他のデバイス形成用部材を積層する。互いに積層する他方のデバイス形成用部材は、活性エネルギー線硬化性接着剤を塗布する部材と同様の構造を有するものである。即ち、本発明は、接着剤を塗布する部材を、それに積層する他の部材と交換することによっては解決しない場合に適用して、該問題を解決することが出来る。勿論、積層する他方のデバイス形成用部材の構造は、前記接着剤を塗布する部材と全く同じ構造である必要はない。また、両部材の開口部同士を完全に一致させて合わせる必要もなく、該合わせた部分を流体が通過できるように合わせればよい。
【0053】
活性エネルギー線硬化性接着剤を塗布した部材と他のデバイス形成用部材を積層した後、転写した活性エネルギー線硬化性接着剤の未硬化塗膜を硬化させて接着する。硬化方法は任意であるが、活性エネルギー線照射による硬化が、硬化速度が速いため好ましい。該活性エネルギー線照射は未硬化塗膜の全面照射であり得るし、例えばレーザー光線による走査型の照射であり得る。しかし、前記特許文献1や特許文献2に記載の方法を部分的に併用しても良い。また、活性エネルギー線の種類は、転写用支持体上の未硬化塗膜に照射するエネルギー線と異なるものでもよい。使用可能な他の硬化方法は、使用する活性エネルギー線硬化性接着剤の硬化性に応じて選択でき、例えば、接着剤が熱硬化可能なものであれば熱硬化、湿度硬化可能なものであれば湿度硬化を利用できる。
【0054】
なお、上記においては、一対のデバイス形成部材を接着する場合について説明したが、3以上のデバイス形成部材、例えば3枚のデバイス形成用部材を積層して接着する場合には、上記の工程を順次行っても良いし、3枚のデバイス形成用部材を同時に積層して接着しても良い。この際、活性エネルギー線硬化性接着剤を転写塗布する部材や面は任意であり、例えば、下から第一部材、第二部材、第三部材の3部材が積層されて接着されたデバイスを形成する場合、活性エネルギー線硬化性接着剤を転写塗布する面は、例えば、第一部材の上面と第二部材の上面、第一部材の上面と第三部材の下面、第二部材の両面、等であり得る。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、以下の実施例の範囲に限定されるものではない。
【0056】
本実施例で使用する紫外線硬化樹脂組成物の調製方法、および、紫外線照射方法を以下に示す。なお、以下の実施例において、「部」及び「%」は、特に断りがない限り、各々「部」及び「質量%」を表わす。
【0057】
[部材形成用の紫外線硬化性組成物(X1)の調製]
活性ネルギー線重合性化合物として、大日本インキ化学工業株式会社製の平均分子量約2000の3官能ウレタンアクリレートオリゴマー「ユニディックV−4263」60部、第一工業製薬株式会社製1,6−ヘキサンジオールジアクリレート「ニューフロンティアHDDA」20部、及び、第一工業製薬株式会社製ノニルフェノキシポリエチレングリコール(n=17)アクリレート「N−177E」20部、光重合開始剤としてチバガイギー社製1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン「イルガキュア184」5部、及び、重合遅延剤として関東化学株式会社製2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン0.1部を均一に混合して組成物(X1)を調製した。
【0058】
[多孔質層形成用の紫外線硬化性組成物(Y1)の調製]
活性エネルギー線重合性化合物として、前記「ユニディックV−4263」72部、ジシクロペンタニルジアクリレート「R−684」(日本化薬株式会社製)18部、メタクリル酸グリシジル(和光純薬工業株式会社製)10部、貧溶剤としてデカン酸メチル(和光純薬工業株式会社製)を180部、揮発性の良溶剤としてアセトンを10部、紫外線重合開始剤として前記「イルガキュアー184」3部を、均一に混合して多孔質層形成用の組成物(Y1)を調製した。
【0059】
[多孔質層形成用の紫外線硬化性組成物(Y2)の調製]
メタクリル酸グリシジルを添加しなかったこと、および、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(n=17)アクリレート「N−177E」(第一工業製薬株式会社製)15部を添加したこと以外は組成物(Y1)と同様にして、多孔質層形成用の組成物(Y2)を調製した。
【0060】
[多孔質層形成用の紫外線硬化性組成物(Y3)の調製]
メタクリル酸グリシジルを添加しなかったこと、および、アクリル酸 1H,1H,2H,2H−ペンタデカフルオロ−n−デシルエステル(東京化成株式会社製)を0.5部添加したこと以外は組成物(Y1)と同様にして、多孔質層形成用の組成物(Y3)を調製した。
【0061】
[活性エネルギー線硬化性接着剤(Z1)の調製]
活性ネルギー線重合性化合物として、前記「ユニディックV−4263」60部および前記「ニューフロンティアHDDA」40部、光重合開始剤としてチバガイギー社製1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン「イルガキュア184」5部、及び、重合遅延剤として関東化学株式会社製2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン0.1部を均一に混合して組成物として活性エネルギー線硬化性接着剤(Z1)を調製した。
【0062】
[活性エネルギー線硬化性接着剤溶液(Z2)の調製]
活性エネルギー線重合性化合物として前記「ユニディックV−4263」100部、光重合開始剤としてチバガイギー社製1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン「イルガキュア184」5部、及び、重合遅延剤として関東化学株式会社製2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン0.1部、揮発性の溶剤としてエタノール100部を添加し、活性エネルギー線硬化性接着剤溶液(Z2)を調製した。
【0063】
[紫外線ランプ1による照射]
3000Wメタルハライドランプを光源とするアイグラフィックス株式会社製のUE031−353CHC型UV照射装置を用い、365nmにおける紫外線強度が40mW/cmの紫外線を特に指定が無い限り室温、大気中で照射した。
【0064】
[紫外線ランプ2による照射]
250W高圧水銀ランプを光源とするウシオ電機株式会社製のマルチライト250Wシリーズ露光装置用光源ユニットを用い、365nmにおける紫外線強度が50mW/cmの紫外線を、特に指定が無い限り室温、大気中で照射した。
【0065】
(実施例1)
本実施例では、接着剤を塗布するデバイス形成用部材が、前記開口部内に多孔質体が装着されていて、接着剤を互いに貼り合わせるデバイス形成用部材の一方に転写する例を示す。
【0066】
[デバイス形成用部材Aの作製]
〔多孔質相の形成〕
厚さ1mmのアクリル板(1)上にスピンコーターを用いて製膜液(Y1)を塗工し、該塗膜に紫外線ランプ1により紫外線を40秒照射して製膜液(Y1)を硬化させ、n−ヘキサンで貧溶剤であるデカン酸メチルを洗浄除去して、アクリル板(1)上に多孔質層(2)を形成した。
【0067】
〔溝の形成〕
上記多孔質層(2)の上に、スピンコーターにて組成物(X1)を塗工し、塗膜を形成した。このとき、塗工された組成物(X1)の一部は多孔質層(2)に吸収され、該層の細孔を充填した。該未硬化塗膜の流路(3)および流路(3a)と成すべき部分以外の部分にフォトマスクを通して紫外線ランプ2による紫外線照射を120秒行って、重合性官能基がまだ残存する程度に前記組成物(X1)が硬化した樹脂層(4)を形成し、非照射部分の未硬化の組成物(X1)をエタノールで洗浄除去して、樹脂層(4)の表裏を貫通する欠損部として、流路(3)及び流路(3a)となるべき溝(空洞)(3)及び溝(空洞)(3a)を形成した。即ち、この溝(3)、(3a)は、側壁が樹脂層(4)、底面が多孔質層(2)で形成されている。なお、多孔質層(2)の、前記溝(3)、(3a)の底面に露出している部分以外の部分は、組成物(X1)が充填されて硬化し、非多孔質化した。
【0068】
〔プローブDNAの固定〕
前記溝(3)、(3a)に5質量%ポリアリルアミン(分子量15000、日東紡株式会社製)水溶液を接触させ、60℃、1時間静置して、ポリアリルアミン中の一部のアミノ基を多孔質層(2)中のエポキシ基と反応させた後、流水で15分洗浄して、溝(3)の底部の多孔質層(2)へのアミノ基の導入を行った。
【0069】
上記処理した部材を5質量%のグルタルアルデヒド(和光純薬工業株式会社製)水溶液中に入れ、50℃にて2時間静置し、ポリアリルアミン中のほぼ全てのアミノ基をグルタルアルデヒド中の片方のアルデヒド基と反応させた後、流水で10分洗浄して、溝(3)の底部の多孔質層(2)へアルデヒド基を導入した。
【0070】
次いで、前記溝(3)、(3a)の中に、5’末端にアミノ修飾したDNA(mN+、長さ20塩基、エスペックオリゴサービス株式会社製)水溶液(濃度50μM)を2μL滴下して、湿度100%、50℃にて15時間静置し、DNAの末端アミノ基を多孔質層のアルデヒド基と反応させた後、0.2質量%のテトラヒドロ硼酸ナトリウム水溶液中に入れ、5分間還元し、次いで、0.2×SSC/0.1%SDS溶液による洗浄、0.2×SSCによる洗浄、及び蒸留水による洗浄を行い、自然乾燥させて、溝(3)底面の多孔質層(2)にDNAを固定した。(ここで、0.2×SSCは0.03M NaCl,3mMクエン酸ナトリウム水溶液であり、0.1%SDSは0.1質量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液である。)
以上のようにして、デバイス形成用部材A(101)を作成した。
【0071】
[デバイス形成用部材Bの作製]
アクリル板(1)の代わりに、厚み80μmの二軸延伸ポリスチレン・シート(以下、OPSシートと称する)を支持体(11)に用いたこと、該支持体に組成物(Y1)や組成物(X1)をスピンコートする際には、これをガラス板(図示略)に貼り付けて実施したこと、多孔質層(2)の代わりに同様の多孔質層(12)を形成したこと、樹脂層(4)の代わりに流路(13)および流路(13b)となる溝(13)および溝(13b)を有する、樹脂層(4)と同様の樹脂層(14)を形成したこと、及び、プローブDNAとして、デバイス形成用部材(A)に用いたものとは塩基配列の異なるものを用いたこと、溝(13)のパターンが、樹脂層(14)を樹脂層(4)に密着させたときに溝(3)と完全に重なる形状であること、溝(13b)のパターンが、樹脂層(14)を樹脂層(4)に密着させたときに溝(3a)と重ならない形状であること、以外は上記デバイス形成用部材(A)の作製と同様にして、デバイス形成用部材B(102)を作製した。
【0072】
[デバイス形成用部材Aとデバイス形成用部材Bの接着]
〔接着剤の塗布〕
表面がコロナ処理された厚さ60μmの二軸延伸ポリプロピレン・シート(以下、OPPシートと称する)を転写用支持体(図示略)として使用し、これをガラス板(図示略)に貼り付けて、活性エネルギー線硬化性接着剤(Z1)をスピンコートし、接着剤層(22)を形成した。流路(3)および流路(3a)、及び流路(13b)に相当する部分の接着剤層(22)に、フォトマスクを通して紫外線ランプ2による紫外線照射を120秒行って、照射部の活性エネルギー線硬化性接着剤(Z1)が硬化し、非照射部分の活性エネルギー線硬化性接着剤(Z1)が未硬化の状態とした。
【0073】
この転写用支持体(21)の接着剤層(22)塗布面を、該接着剤層(22)の硬化部をデバイス形成用部材A(101)の流路(3)及び流路(3a)に合わせて密着させ、その後、剥離して、未硬化の活性エネルギー線硬化性接着剤(Z1)をデバイス形成用部材A(101)の溝(3)、溝(3a)、及び、溝(13b)に相当等する部分、以外の部分に転写した。
【0074】
〔デバイス形成用部材Aとデバイス形成用部材Bの接着〕
前記接着剤が転写され、樹脂層(4)の上に未硬化の接着剤層(22)が形成されたデバイス形成用部材A(101)の該接着剤層(22)形成面に、デバイス形成用部材B(102)の樹脂層(14)形成面を、溝(3)と溝(13)が完全に重なるように合わせて積層し、紫外線照射ランプ1にて紫外線を40秒間照射して積層した両部材を互いに接着して、積層型マイクロ流体デバイス(100)前駆体を形成した。
【0075】
即ち、このマイクロ流体デバイス(100)前駆体は、溝(3)と溝(13)が完全に合わさって流路(3、13)が形成され、溝(3a)とデバイス形成用部材B(102)の溝でない部分でもって、流路(3、13)の一端に接続された流路(3a)が形成され、溝(13)とデバイス形成用部材A(101)の溝でない部分でもって、流路(3、13)の一端に接続された流路(13b)が形成されている。
【0076】
〔その他の構造の形成〕
積層型マイクロ流体デバイス(100)前駆体のOPSシート(11)側から、流路(3、13)の端部、流路(3a)の端部、および流路(13b)の端部において、各流路に届く直径0.2mmの孔(24)、(25)、(26)をドリルで開け、該孔のマイクロ流体デバイス表面への開口部にそれぞれ円筒状の配管接続部材(27)、(28)、(29)を接着して、積層型マイクロ流体デバイス(100)を得た。
【0077】
[デバイスの構造観察]
上記工程1で作製したデバイスを切断して走査型電子顕微鏡にてデバイス各部の寸法や形態を測定したところ、アクリル板(1)の厚みは1mm。多孔質層(2)及び多孔質層(12)の厚みは12μm、樹脂層(3)及び樹脂層(13)の厚みは18μm、硬化した接着剤層(22)の厚みは約7μm、流路(3)は幅が100μm、高さ(多孔質層を含まず)は43μmであった。流路(3a)、流路(3b)は共に幅が100μm、高さ(多孔質層を含まず)は25μmであった。多孔質層(2)、(12)は直径約0.5μmの凝集粒子の間隙として、孔径約0.7μmの細孔が形成されていた。
【0078】
また、接着剤は流路(3、13)、(3a)、(13b)に入り込んでおらず、接着剤による各流路底面に装着された多孔質層(2)、(12)の汚染もなかった。
【0079】
(実施例2)
本実施例では、互いに貼り合わせるデバイス形成用部材の双方が、前記開口部内に多孔質体が装着されていて、接着剤を双方のデバイス形成用部材に転写する例を示す。
【0080】
接着剤として活性エネルギー線硬化性接着剤溶液(Z2)を用いたこと、溝(13)、溝(3b)、及び溝(3a)に相当する部分以外の部分に接着剤を転写し、接着剤層(23)を形成したこと、デバイス形成用部材A、Bの両者とも、接着剤を転写した後、50℃の熱風炉に5分間入れてエタノールを揮発させたこと、以外は実施例1と同様にして、積層型マイクロ流体デバイス(100)を作製した。
【0081】
このマイクロ流体デバイスを切断してSEMで観察したところ、硬化した接着剤層の厚み[接着剤層(22)、(23)の厚みの和]は約1μmであること、流路(3、13)の高さが37μmであること、流路(3a)、流路(13b)は共に高さが19μmであること、以外は実施例1と同様の寸法、形状であった。
【0082】
(実施例3)
本実施例では、接着すべき部材が、該部材の接着面に一部が開口している毛細管状の流路を有していて、該毛細管状の流路は、デバイス形成用部材の表面に平行な面への投影図が、前記開口部の同面への投影図と重ならない部分を有する例を示す。
【0083】
[デバイス形成用部材Aの作製]
〔透過側の流路の形成〕
厚さ1mmのアクリル板(1)上にスピンコーターを用いて組成物(X1)を塗布し、フォトマスクを通して紫外線ランプ2にて紫外線照射を45秒行い、重合性官能基がまだ残存する程度に前記組成物(X1)が硬化した樹脂層(31)を形成し、非照射部分の未硬化の組成物(X1)をエタノールで洗浄除去して、樹脂層(31)の表裏を貫通する欠損部として、透過側の流路(52)となるべき溝(空洞)(52)を形成した。
【0084】
〔多孔質膜の形成と転写〕
前記OPPシートにポリビニルピロリドンの5%水溶液をスピンコートし、乾燥して、ポリビニルピロリドンでコートされたOPPシートを作製し、これを一時的な支持体(図示略)として使用た。該一時的な支持体ををガラス板(図示略)に貼り付けて、製膜液(Y2)を塗工し、該塗膜に紫外線ランプ1により紫外線を40秒照射して製膜液(Y2)を硬化させ、n−ヘキサンにでデカン酸メチルを洗浄除去して、前記一時的な支持体上に多孔質膜(32)を形成した。
【0085】
この多孔質膜(32)の上に、スピンコーターにて組成物(X1)を塗工し、多孔質層(32)に組成物(X1)を含浸させた。次いで、供給側の流路(51)に対応する部分以外の部分にフォトマスクを通して紫外線ランプ2による紫外線照射を45秒行って、重合性官能基がまだ残存する程度に前記組成物(X1)が硬化させ、非照射部分の未硬化の組成物(X1)をエタノールで洗浄除去することによって、供給側の流路(51)に対応する部分に多孔質部(35)が残存し、それ以外の部分は硬化した前記組成物(X1)で目止めされた目止め部(36)である多孔質膜(32)を形成した。
【0086】
この多孔質膜(32)を前記樹脂層(31)の透過側の流路(52)となるべき溝(52)と供給側流路(51)とが重なる部分に合わせて密着させ、その状態で紫外線ランプ1にて10秒間紫外線を照射して、前記目止め部(36)における組成物(X1)の硬化を進めた後、前記一時的な支持体を水に浸漬して剥離除去し、多孔質膜(32)を樹脂層(31)の上に転写した。
【0087】
〔供給側の流路の形成〕
前記OPPシートを一時的な支持体(図示略)として使用し、これをガラス板(図示略)に貼り付けて、スピンコーターにて組成物(X1)を塗工し、供給側の流路(51)となす部分以外の部分にフォトマスクを通して紫外線ランプ2による紫外線照射を40秒行って、重合性官能基がまだ残存する程度に前記組成物(X1)を硬化させ、非照射部分の未硬化の組成物(X1)をエタノールで洗浄除去することによって、供給側の流路(51)となる、該塗膜層の表裏を貫通する欠損部を形成した。これを前記多孔質膜(32)の上に重ねて密着させ、その状態で紫外線ランプ1にて 40秒間紫外線を照射して、支持体(1)上の全ての組成物(X1)の硬化を進めた後、前記一時的な支持体を水に浸漬して剥離除去し、樹脂層(33)を多孔質膜(32)の上に転写し、固着した。
【0088】
これにより、底面が多孔質膜(32)の多孔質部であり、側面が樹脂層(33)である様な、供給側の流路(51)となる溝(51)が形成された。
以上のようにして、デバイス形成用部材A(201)を作成した。
【0089】
[デバイス形成用部材Bの作製]
アクリル板(1)製の支持体(1)の代わりに、厚み80μmのOPSシートを支持体(11)として用いたこと、該支持体に組成物(X1)をスピンコートする際には、これをガラス板(図示略)に貼り付けて実施したこと、樹脂層(31)の代わりに、透過側の流路(53)となる溝(53)を有する、樹脂層(31)と同様の樹脂層(41)を形成したこと、多孔質膜(32)の代わりに、組成物(Y3)を使用した、多孔質部(45)と目止め部(46)を有する多孔質膜(42)を作製し、樹脂層(41)の上に、多孔質膜(42)を積層固着したこと、多孔質膜(42)の上に、供給側の流路(51)を有する樹脂層を形成しなかったこと、以外は上記デバイス形成用部材A(201)の作製と同様にして、デバイス形成用部材B(202)を作製した。
【0090】
[デバイス形成用部材Aとデバイス形成用部材Bの接着]
〔接着剤の塗布と転写〕
前記OPPシートを転写用支持体(図示略)として使用し、これをガラス板(図示略)に貼り付けて、活性エネルギー線硬化性接着剤(Z1)をスピンコートし、接着剤層(34)を形成した。供給側の流路(51)に相当する部分の接着剤層(34)に、フォトマスクを通して紫外線ランプ2による紫外線照射を120秒行って、照射部の活性エネルギー線硬化性接着剤(Z1)が硬化し、非照射部分の活性エネルギー線硬化性接着剤(Z1)が未硬化の状態とした。
【0091】
この転写用支持体(図示略)上の接着剤層(34)を、デバイス形成用部材A(201)の樹脂層(33)に、硬化部と流路(51)とそ合わせて密着させ、その後、転写用支持体を剥離して、未硬化の活性エネルギー線硬化性接着剤(Z1)をデバイス形成用部材A(201)の溝(51)以外の部分に転写した。
【0092】
〔デバイス形成用部材Aとデバイス形成用部材Bの接着〕
前記接着剤が転写され、樹脂層(33)の上に未硬化の接着剤層(34)が形成されたデバイス形成用部材A(201)の該接着剤層(34)形成面に、デバイス形成用部材B(202)の樹脂層(42)形成面を、溝(51)と多孔質膜部(45)が完全に重なるように合わせて積層し、紫外線照射ランプ1にて紫外線を40秒間照射して積層した両部材を互いに接着して、積層型マイクロ流体デバイス(200)前駆体を形成した。
【0093】
〔その他の構造の形成〕
マイクロ流体デバイス(200)前駆体のOPSシート製の支持体(11)側から、供給側流路(51)の端部、透過側流路(52)の端部、および透過側流路(52)の端部において、各流路に届く直径0.5mmの孔(54)、(55)、(56)をドリルで開け、該孔のマイクロ流体デバイス表面への開口部を形成して、積層型マイクロ流体デバイス(200)を得た。
【0094】
[デバイスの構造観察]
上記工程1で作製したデバイスを切断して走査型電子顕微鏡にてデバイス各部の寸法や形態を測定したところ、アクリル板(1)の厚みは1mm。多孔質膜(32)及び多孔質層(42)の厚みは90μm、樹脂層(31)、樹脂層(33)、および樹脂層(41)の厚みは60μm、硬化した接着剤層(24)の厚みは約7μm、供給側流路(51)、透過がw流路(52)、及び透過側流路(53)は、全て幅が300μm、高さが60μmであった。多孔質層(32)、(42)は直径約0.5μmの凝集粒子の間隙として、孔径約0.7μmの細孔が形成されていた。
【0095】
また、接着剤は各流路(51)、(52)、(53)に入り込んでおらず、接着剤による多孔質膜(32)、(42)の汚染もなかった。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】実施例1及び実施例2で作製した積層型マイクロ流体デバイスの構成見取り図である。
【図2】実施例3で作製した積層型マイクロ流体デバイスの構成見取り図である。
【符号の説明】
【0097】
1、11 支持体
2、12 多孔質層
4、14、31、33、41 樹脂層
3、3a、13、13b 溝(空洞)、流路
22、23、34 接着剤層
24、25、26、54、55、56 孔
32、42 多孔質膜
35、45 多孔質部
36、46 目止め部
100、200 積層型マイクロ流体デバイス
101、201 デバイス形成用部材A
102、202 デバイス形成用部材B

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ流路と成すべき部分の少なくとも一部が表面に開口した開口部が形成された二以上のデバイス形成用部材を、前記開口部同士が連絡するように合わせて互いに積層してなる積層型マイクロ流体デバイスの製造方法において、
(1)転写用支持体上に活性エネルギー線硬化性接着剤を塗布して該活性エネルギー線硬化性接着剤の未硬化塗膜を得る工程、
(2)得られた塗膜を、前記デバイス形成用部材に転写した際に前記デバイス形成用部材の開口部に相当する部位に活性エネルギー線を照射して硬化させる工程、
(3)転写用支持体上の未硬化塗膜を互いに接着すべきデバイス形成用部材の少なくとも一方に転写して、その上に、前記開口部同士が連絡するように合わせて他方のデバイス形成用部材を積層した後、転写した未硬化塗膜を硬化させ、二以上の該デバイス形成用部材を接着する工程、
からなることを特徴とする積層型マイクロ流体デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記活性エネルギー線硬化性接着剤が、アクリロイル基又はマレイミド基を有する活性エネルギー線硬化性化合物を含有する請求項1に記載の積層型マイクロ流体デバイスの製造方法。
【請求項3】
接着剤を塗布するデバイス形成用部材が、前記開口部内に多孔質体が装着されているものである請求項1に記載の積層型マイクロ流体デバイスの製造方法。
【請求項4】
接着剤を塗布するデバイス形成用部材が、該開口部から連続して内部に至る毛細管状の流路を有し、該毛細管状の流路は、デバイス形成用部材の表面に平行な面への投影図が、前記開口部の同面への投影図と重ならない部分を有するものである請求項1に記載の積層型マイクロ流体デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−122776(P2006−122776A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−312219(P2004−312219)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000173751)財団法人川村理化学研究所 (206)
【Fターム(参考)】