説明

積層型二次電池および組電池

【課題】平板状の正極と負極とをセパレータを介して積層した電池要素をラミネート外装材で覆い封口する構造の積層型二次電池において、重ね合わせて直列に接続して組電池とする場合においても接続に不具合の生じない積層型二次電池を提供する。
【解決手段】正極と負極とをセパレータを介して積層した略長方形の平面形状を有する電池要素をラミネート材で外装し、正極タブと負極タブが対向する辺から引き出された積層型二次電池において、正極タブ14および負極タブ15がそれぞれの引き出し辺の中心線11に対し同じ側に引き出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型二次電池および組電池に関し、特に電池セル同士が効率よく接続できる構造の積層型二次電池および組電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層型二次電池は、金属箔などからなる集電体上に活物質層を形成したシート状の正極電極と負極電極とをセパレータを介して積層した積層体を外装材で覆い封口する構造で構成される。
【0003】
正極と負極とをセパレータを介して積層した略長方形の平面形状を有する電池要素をラミネート材(金属複合フィルム)を用いて外装し、正極タブと負極タブが、対向する辺から引き出された積層型二次電池について、特許文献1に記載されている。また、積層型二次電池を組み合わせた組電池の例が特許文献2に記載されている。
【0004】
図5は、従来のラミネート材等のフィルムで外装された積層型二次電池の平面図であり、図6は従来の積層型二次電池を重ね合わせた組電池の斜視図であり、図7は従来の積層型二次電池を横に並べた組電池の斜視図である。図5に示すように、従来の積層型二次電池は略長方形の平面形状を有する外装材の対向する辺、ここでは外装材の短辺53の中央部から、それぞれ正極タブ54と負極タブ55が対向して引き出された構造となっている。この積層型二次電池を重ね合わせ、組電池として直列接続する場合には、図6に示すように積層型二次電池の正極タブ54と負極タブ55の位置を交互にしてそれぞれ1組の正極タブ54と負極タブ55を接続する必要があるが、この場合、接続すべきでない正極タブ54または負極タブ55が隣り合わせにあるため、接触する恐れがあり、接触した場合にはショート等の不具合となる。このため図7に示すように積層型電池を横に並べて組電池を構成することもできるがこの場合にはスペースが大きくなる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−79481号公報
【特許文献2】特開2003−162989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ラミネート材等のフィルムで外装した積層型二次電池では、製造工程の容易さ等から外装材の1辺から正負極タブのどちらかのみを引き出す構造となっている。そのような構造の積層型二次電池を重ねて組電池とする場合、特に直列接続する場合には、正負極タブは2枚ずつを接続することになるが、隣接して上下に次の組の正負極タブがあるため、タブ同士が接触する可能性が高く、本来の接続状態とはならない等の不具合があり、それを避けるため横に並べて接続を行うのでは小型化に問題があった。すなわち積層型二次電池を重ねても容易に接続ができる技術が求められていた。
【0007】
本発明はこのような問題点を解決すべくなされたもので、その技術課題は、平板状の正極と負極とをセパレータを介して積層した電池要素をラミネート外装材で覆い封口する構造の積層型二次電池において、重ね合わせて組電池とする場合においても接続に不具合の生じない積層型二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の積層型二次電池は、直列接続用の積層型二次電池であって、正極と負極とをセパレータを介して積層した略長方形の平面形状を有する電池要素をラミネート材で外装し、正極タブと負極タブが前記ラミネート材の対向する引き出し辺の中心線に対し同じ側に引き出されたことを特徴とする。
【0009】
また本発明の積層型二次電池は、前記正極タブの幅および前記負極タブの幅が前記引き出し辺の長さの1/6以上2/5以下であることが好ましい。さらに本発明の組電池は前記積層型二次電池を複数個重ね合わせて電気的に直列に接続することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の組電池は前記正極タブおよび前記負極タブが前記引き出し辺の中心線に対し同じ側に配置した積層型二次電池と、前記正極タブおよび前記負極タブが前記引き出し辺の前記中心線に対し異なる側に配置した積層型二次電池とを交互に積層し電気的に直列に接続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る積層型二次電池によれば、積層型二次電池を重ね合わせ組電池とする場合、接続しない正極タブと負極タブを引き出し辺の中心線からそれぞれ外して反対方向に配置することにより隣り合う上下の正負極タブとの接触を回避でき効率よく組電池を作製することが出来る積層型二次電池が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第一の実施の形態の積層型二次電池の平面図。
【図2】本発明の第二の実施の形態の積層型二次電池の平面図。
【図3】本発明の第一の実施の形態の積層型二次電池の製造途中工程を説明する図、 図3(a)は正極と負極とをセパレータを介して積層した電池要素の正面図、図3(b)はラミネート材の斜視図。
【図4】本発明の組電池を説明する図、図4(a)は斜視図、図4(b)は側面図。
【図5】従来のラミネート材等のフィルムで外装された積層型二次電池の平面図。
【図6】従来の積層型二次電池を重ね合わせた組電池の斜視図。
【図7】従来の積層型二次電池を横に並べた組電池の斜視図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。 図1は、本発明の第一の実施の形態の積層型二次電池の平面図である。
【0014】
図1に示すように、本発明の第一の実施の形態の積層型二次電池は長方形の平面形状を有する外装材の対向する短辺13からそれぞれ正極タブ14および負極タブ15が短辺13の中心線11を外して中心線に対して同一方向に配置されている。なお、ここでは短辺側から正負極タブを引き出しているが、長辺側から引き出してもよい。また、正極タブの幅および負極タブの幅は引き出し辺の長さの1/6以上2/5以下が好ましい。1/6未満だとタブ面積が小さくなるためタブの抵抗が高くなり特に大電流取り出し時には負荷となり発熱の原因となる可能性が高くなり好ましくない。2/5を超えるとセルを重ねて積層する場合、重ね合わせたセルの反対極の端子と接触しセルがショートとなる可能性が高くなり好ましくない。
【0015】
次に本発明の第一の実施の形態の積層型二次電池の製造について説明する。図3は本発明の第一の実施の形態の積層型二次電池の製造途中工程を説明する図であり、図3(a)は正極と負極とをセパレータを介して積層した電池要素の正面図であり、図3(b)はラミネート材の斜視図である。
【0016】
正極6は、例えば厚さ20μmの帯状のアルミニウム箔からなる正極集電体上に正極活物質が形成された物である。例えばコバルト酸リチウムからなる正極活物質に、PVDFからなる結着剤とアセチレンブラックからなる導電剤を添加してスラリー状となるように調整した調合剤を正極集電体上の両面に塗布し、乾燥し、ロールプレス機により圧延することで正極が形成される。また、負極7は、例えば厚さ10μmの銅箔からなる負極集電体上に負極活物質が形成された物である。例えばグラファイト粉末からなる負極活物質をPVDFからなる結着剤とともにスラリー状となるよう調整した調合剤を負極集電体上の両面に塗布し、乾燥し、ロールプレス機により圧延することで負極が形成される。正極6と負極7との間には例えばポリエチレン不織布からなるセパレータ8を介して所定の枚数だけ積層させ電池要素を作製する。また、正極タブ、負極タブはそれぞれ正極集電体、負極集電体と例えば溶接などにより接続する。その際、正極タブおよび負極タブは対向する辺から引き出し、それぞれの引き出し辺における中心線から外して中心線に対して同じ側に配置させるようにする。次に例えばナイロン/アルミ/ポリプロピレンの3層構造をもつアルミラミネートフィルムからなる外装フィルム9aに電池要素を収納するために絞り加工による収納部をポリプロピレン側が凹状となるように設ける。上記電池要素を外装フィルム9aの電池要素収納部に収納し、もう一方の外装フィルム9bで電池要素を覆い、接合部を重ね合わせて熱融着によって外装フィルム9a、9bの周囲3辺を融着する。融着されていない1辺より電池要素収納部に電解液を注液する。注液後、真空にて熱融着機によって封止をおこないフィルム外装の積層型二次電池を作製する。
【0017】
図2は、本発明の第二の実施の形態の積層型二次電池の平面図である。本発明の第一の実施の形態の積層型二次電池では正極タブと負極タブを引き出し辺の中心線に対して同一方向に配置したが、本発明の第二の実施の形態の積層型二次電池では正極タブおよび負極タブを正極集電体および負極集電体に接続する際に図2に示すように中心線に対して正極タブ24と負極タブ25を異なる側に配置している。
【0018】
次に本発明の組電池について説明する。図4は本発明の組電池を説明する図であり、 図4(a)は斜視図であり、図4(b)は側面図である。組電池として例えば積層型二次電池を4個重ね合わせて直列に接続する場合について説明する。前述のように作製した本発明の第一の実施の形態の積層型二次電池すなわち正極タブと負極タブが引き出し辺の中心線に対し同一方向に配置したものと本発明の第二の実施の形態の積層型二次電池すなわち正極タブと負極タブが引き出し辺の中心線に対し異なる方向に配置したものを交互に重ね合わせ、一番上の積層型二次電池の正極タブ44と上から2番目の積層型二次電池の負極タブ45が重なるように配置し接続し、一番上の積層型二次電池の負極タブ45と上から2番目の積層型二次電池の正極タブ44は引き出し線の中心線41に対し反対側にして接触しないように配置させておく。また、上から2番目の積層型二次電池の正極タブ44と上から3番目の積層型二次電池の負極タブ45が重なるように配置し接続し、上から2番目の積層型二次電池の負極タブ45と上から3番目の積層型二次電池の正極タブ44は引き出し辺の中心線41に対し反対側にして接触しないように配置させておく。上から3番目と4番目の積層型二次電池についても前述と同様の概念で正極タブと負極タブを配置し接続することにより組電池を組み立てる。なおここで説明した組電池の組み立ては一例であり、本発明は正極タブおよび負極タブが引出し辺の中心線を外れて配置され、接続が必要な正負極タブのみが接続する形態でそれ以外は接触しない形態であればよい。
【実施例】
【0019】
(実施例1)
次に、本発明の実施例1の積層型二次電池について詳細に説明する。実施例1の積層型二次電池の構造はすでに説明した図1と同様である。公知の方法にて電池要素を作製し、正極タブ、負極タブを対向して引き出すように接続し、その後ラミネート材で外装した。ここで電池要素は縦100mm、横60mm、厚さ13mmであり、外装後の積層型二次電池は縦150mm、横80mm、厚さ15mmである。図1に示すように正極タブ14および負極タブ15は外装材の短辺から対向して引き出され、正極タブは幅15mm厚さ0.2mmで外装材の短辺13の中心線11から10mm離間して配置し、負極タブは幅15mm厚さ0.2mmで外装材の短辺13の中心線11から10mm離間して正極タブと同じ方向に配置した。
(実施例2)
次に、本発明の実施例2の積層型二次電池について説明する。実施例2の積層型二次電池の構造はすでに説明した図2と同様である。図2に示すように正極タブ24および負極タブ25が外装材の短辺23の中心線21から10mm離間して配置し、負極タブは幅15mm厚さ0.2mmで外装材の短辺23の中心線21から10mm離間して正極タブと異なる方向に配置した以外は実施例1と同様に作製した。
(実施例3)
次に、本発明の実施例3の組電池について説明する。実施例3の組電池の構造はすでに説明した図4と同様である。前述のようにして実施例1で作製した引出し辺の中心線に対し同じ側に正極タブ44と負極タブ45を配置した積層型二次電池と、実施例2で作製した引出し辺の中心線に対し異なる側に正極タブ44と負極タブ45を配置した積層型二次電池を交互に4個重ね合わせた。最上段の積層型二次電池の正極タブ44と2段目の積層型二次電池の負極タブ45とを接続し、2段目の積層型二次電池の正極タブ44と3段目の積層型二次電池の負極タブ45とを接続し、3段目の積層型二次電池の正極タブ44と4段目(最下段)の積層型二次電池の負極タブ45とを接続して直列接続の組電池を作製した。このようにして作製した組電池においては、正極タブ、負極タブが引出し辺の中心線を外れて引き出され、それぞれ上下に隣り合う正負極タブを接合することで接合しない他のタブに接触することなく容易に直列接続の組電池を作製することができた。
【符号の説明】
【0020】
11、21、41、51中心線
12、22、52(外装材の)長辺
13、23、53(外装材の)短辺
14、24、44、54正極タブ
15、25、45、55負極タブ
6正極
7負極
8セパレータ
9a、9b外装フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続用の積層型二次電池であって、正極と負極とをセパレータを介して積層した略長方形の平面形状を有する電池要素をラミネート材で外装し、正極タブと負極タブが前記ラミネート材の対向する引き出し辺の中心線に対し同じ側に引き出されたことを特徴とする積層型二次電池。
【請求項2】
前記正極タブの幅および前記負極タブの幅が前記引き出し辺の長さの1/6以上2/5以下であることを特徴とする請求項1に記載の積層型二次電池。
【請求項3】
請求項1または2に記載の積層型二次電池を複数個重ね合わせて電気的に直列に接続することを特徴とする組電池。
【請求項4】
請求項1に記載の前記積層型二次電池と、正極と負極とをセパレータを介して積層した略長方形の平面形状を有する電池要素をラミネート材で外装し、正極タブと負極タブが前記ラミネート材の対向する引き出し辺の中心線に対し異なる側に引き出された積層型二次電池とを交互に積層して電気的に直列に接続することを特徴とする組電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−256605(P2012−256605A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−173910(P2012−173910)
【出願日】平成24年8月6日(2012.8.6)
【分割の表示】特願2007−175189(P2007−175189)の分割
【原出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【出願人】(310010081)NECエナジーデバイス株式会社 (112)
【Fターム(参考)】