積層型圧電体およびこれを用いた超音波トランスデューサならびに積層型圧電体の作成方法
【課題】多層圧電体を用いて高調波を送受波するにあたって、高調波成分を増加させると同時に基本波成分を減衰させる。
【解決手段】3層圧電体を用いて3次高調波を送受波するにあたって、その3層を分極方向を揃えて積層するのではなく、一部の向きを逆方向にする。具体的には、両端の電極を端子に接続して各圧電体を直列接続する。そして、圧電体1の残留分極の向き(+P)を基準として、圧電体2および圧電体3を逆方向(−P)とすると、端子間の電場は、λ/4共振ではその感度が打ち消され、3λ/4共振においては強調される。こうして、フィルタやアンプを用いることなく、基本波を抑え、3次高調波を抽出することができる。
【解決手段】3層圧電体を用いて3次高調波を送受波するにあたって、その3層を分極方向を揃えて積層するのではなく、一部の向きを逆方向にする。具体的には、両端の電極を端子に接続して各圧電体を直列接続する。そして、圧電体1の残留分極の向き(+P)を基準として、圧電体2および圧電体3を逆方向(−P)とすると、端子間の電場は、λ/4共振ではその感度が打ち消され、3λ/4共振においては強調される。こうして、フィルタやアンプを用いることなく、基本波を抑え、3次高調波を抽出することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置の探触子などとして用いられる超音波トランスデューサと、それに用いられる圧電体で、特に複数層積層されて成る積層型圧電体およびその作成方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、超音波トランスデューサには圧電体が用いられる。これは、圧電体が機械エネルギーを電気エネルギーに変換する、またその逆のいわゆる電気系と機械系との結合作用を持つためである。用いられる圧電体は、一対の電極が設けられたシート状、板状あるいは棒状で、一方の電極が背後層に固定され、もう一方の電極が音響レンズや整合層を介して媒質に接する。
【0003】
そして、圧電超音波トランスデューサの多くは、d33モードやe33モードにより媒質に音波を放射し、あるいは媒質に伝搬する音波を検出する。d33モードは柱状振動子の縦振動、e33モードは板状振動子の厚み振動と一般に言われている。PZTセラミックスやPVDFなどの強誘電体や、P(VDCN/VAc)といった高誘電体、ポーラスポリマーエレクトレット圧電体では、ポーリング処理による電気双極子の配向により残留分極を保持し、d33やe33を示す。一方、残留分極を持たない圧電結晶では、ZnO、LiNbO3、KNbO3といった圧電結晶の場合はC軸、水晶の場合はA軸を、それぞれ電極面に対して垂直に配向すれば、前記d33やe33(水晶ではd11やe11)を示す。圧電コンポジット材料については、用いられる材料に応じる。
【0004】
ここで、超音波トランスデューサを構成する圧電体において、最も単純な力学境界条件は、一端が固定端でもう一端が自由端の場合である。なお、理論上は、接する物の音響インピーダンスZ(単位はMRayl.)と境界条件には、Z=0が自由端、Z=∞が固定端の関係があるが、本明細書においてはそこまで厳密ではなく、接着層や電極層を除いて、接する物のZに対し、圧電材料のインピーダンスZが、小さいもしくは同等の場合に固定端、大きい場合に自由端とみなすものとする。また、超音波トランスデューサの送波および受波には、圧電体の縦振動あるいは厚み振動の共振が用いられ、その共振周波数frは、トランスデューサの構造や媒質への押し当てにもよるが、主に圧電体の物性と寸法とで決まる。したがって、本明細書では圧電体の寸法や性質以外で共振周波数を変化させる要因を除外する。
【0005】
先ず、圧電体のd33モードやe33モードにおける共振周波数frは、圧電体の音速vと高さ(厚み)hとから、
fr=v/4h …(1)
となる。これは一般にλ/4共振と言われる。λは圧電体内の波長を意味する。このほかに両端を自由としたλ/2共振がある。その共振周波数は、λ/4共振の1/2となる。
【0006】
一方、前記圧電体の音速vは、柱状振動子の縦振動では、
v=(1/sρ)1/2 …(2)
となり、板状の厚み振動子の厚み振動では、
v=(c/ρ)1/2 …(3)
となる。ここで、sは弾性コンプライアンス、cは弾性スティフネス、ρは密度である。
【0007】
こうして、トランスデューサの送波および受波周波数は、主に圧電体の高さ(厚み)h、弾性率sおよび密度ρによって決定されることが、上式(1)〜(3)より理解される。
【0008】
医療分野や建築分野など、超音波による非破壊画像検査の分野では、より高分解能な画像を得るためトランスデューサの高周波数化や送受波性能の向上が求められている。圧電体を用いた超音波トランスデューサにおいて、送受波性能を向上するには、トランスデューサと電気処理回路との間の電気インピーダンス整合は、電気信号を高S/N比で伝送するための重要な因子である。また、高周波化では、送受波周波数が圧電体の厚みで決まるので、圧電体をより薄くする必要がある。圧電体の薄膜化は、電気インピーダンスを下げる方向に働くので、電気回路とのインピーダンス整合には有利に働くが、下げ幅はせいぜい厚み比の逆数分に過ぎない。また、圧電体の薄膜化は、膜厚制御や取り扱いなど製造プロセスを困難とする。
【0009】
そこで、従来技術では、高周波信号を得る目的として、従来のλ/4共振トランスデューサの送受波信号における高調波成分が用いられている。しかしながら、高調波成分は基本波成分に比べて感度が弱く、かつ圧電体や周辺材料のダンピングによって減衰し易いので、高S/N比の信号は得られにくいという問題がある。そこで、高調波を使った超音波の送受波の一例として、図1を参照して、e33厚み伸縮モードについて説明する。この図1および以下の説明は、非特許文献1に示されたものである。この図1の等価回路を構成する素子の定数は、
Cn=pnkt2C0 …(4)
L=1/ωp12C1 …(5)
pn=(1/n2)(8/π2),n=2m−1 …(6)
である。ここで、Cnは各素子のキャパシタンス、Lはインダクタンス、ktは厚み伸縮モードの電気機械結合係数、ωp1は共振周波数である。
【0010】
上記式(6)において、pn≒1/n2と近似すれば、式(4)は、
Cn/C0=kt2/n2 …(7)
となる。式(7)はn次高調波における電気機械結合係数の実効値が1/nに減少することを示す。そして、1次モードの場合、n=1なので、式(7)は、
Cn=1/C0=kt2 …(8)
となる。この式は、この1次モードにおけるktと誘電率との関係式
εT/εS=1+kt2 …(9)
において、εT=C0+Cn,εS=C0とおいた式と一致する。εSは束縛条件の誘電率、、εTは自由条件の誘電率、C0とCnとは電気容量である。d33モードに対しては、上式(4)を、
Cn=pn(k332/1−k332)C0 …(10)
に置き換えれば、同様の結果が得られる。
【0011】
そして、3次高調波を送受波するときの電気機械結合係数の実効値は、式(7)より、n=3のときに与えられ、見かけの結合係数をkt’とおけば、kt’=kt/n=kt/3となる。この結果は、3次高調波を送受波する際に、見かけ結合係数が1/3に減衰することを意味する。
【0012】
図2は、1MHzに厚み共振の1次モードを示す圧電体の複素誘電率の周波数特性(計算値)を示すグラフである。ただし、kt=0.3,h/2v=2.485×10−7(s),tanδm=0.04である。
【0013】
1MHzに見られる実部(参照符号α1で示す)の極大・極小と、虚部(参照符号α2で示す)の極大とは、厚み共振の1次モードによるものである。以後、3MHzに3次高調波成分、5MHzに5次高調波成分が見られる。一方、図3に示すように、図2に示す3次高調波成分について、3MHzを1次モードとする圧電体モデルで当てはめたところ、結合係数と圧電体の厚みが1/3とした場合に一致した。これらの結果は上記の解釈と一致する。図3は、厚み共振を示す圧電体の複素誘電率の周波数特性(計算値)を示すグラフである。ただし、破線は、前記のとおり、kt=0.3,h/2v=2.485×10−7(s),tanδm=0.04である。一方、実線は、kt=0.1,h/2v=8.300×10−7(s),tanδm=0.04である。
【0014】
以上のように、従来技術の問題点は、高調波を検出する際に、見掛けの電気機械結合係数が1/nにまで減少してしまうことにある。
【0015】
一方、医療用超音波診断装置において、高調波信号を用いた組織ハーモニックイメージング(THI)診断は、従来のBモード診断では得られない鮮明な診断像が得られることから、標準的な診断モダリティとなりつつある。このハーモニックイメージングのように使用する周波数が高くなると、サイドローブレベルが小さくなり、S/Nが良く、コントラスト分解能が良くなり、またビーム幅が細く横方向分解能が良くなり、さらに近距離では音圧が小さく、また音圧の変動が少ないので多重反射が起こらない等の多くの利点を有している。
【0016】
そこで、特許文献1では、超音波トランスデューサの各圧電素子で受信された信号が整相加算回路で加算された後、基本波帯域のフィルタと高調波帯域のフィルタとに共通に入力され、それらの出力に、被検体の診断領域の深さにそれぞれ応じたゲインで重み付けされた後、合成されることで、深い診断領域での高調波成分の減衰を基本波で補間するようにした超音波診断装置が提案されている。すなわち、高調波の受信にあたって、前記電気機械結合係数の低下をフィルタとアンプとを用いて補償している。
【0017】
同様に、特許文献2では、基本波用の圧電素子に高調波用の圧電素子を積層し、基本波用の圧電素子から送信超音波を放射し、該基本波用の圧電素子で受信した基本波の信号成分に、高調波用の圧電素子で受信された複数の高調波成分をそれぞれ帯域通過フィルタを通過させて所望の成分を抽出した後、個別にゲイン調整して加算することで、診断領域の深度に応じた信号を得るようにした超音波診断装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2002−11004号公報
【特許文献2】特許第4192598号公報
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】圧電材料学の基礎 石田拓郎著 オーム社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、上述の従来技術では、多数の圧電素子からの信号経路にフィルタやアンプを挿入する必要がある。
【0021】
本発明の目的は、所望高調波成分の送波時の出力音圧あるいは受波時の出力電圧が1次モードのそれらよりも大きくなるようにすることができる積層型圧電体およびこれを用いた超音波トランスデューサならびに積層型圧電体の作成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の積層型圧電体は、相互に厚みの等しい複数の圧電体を積層して成り、該圧電体の厚み伸縮によって生じる3λ/4共振による3次高調波成分の超音波を送受波する積層型圧電体であって、前記圧電体は3層積層されて、その層間および両端の圧電体の表面に電極を有し、前記両端の圧電体の表面に形成される電極に端子を接続することで、該各圧電体は相互に直列接続され、前記各圧電体は、圧電正効果による電気変位または電場の符号と関係する残留分極の向きあるいは結晶軸を、固定端側の第1段目の圧電体の軸を基準として、それに接する第2段目の圧電体では逆方向、さらにその上の第3段目の圧電体でも逆方向となるように配列されていることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の積層型圧電体の作成方法は、相互に厚みの等しい圧電体を複数積層して成り、該圧電体の厚み伸縮によって生じる3λ/4共振による3次高調波成分の超音波を送受波する積層型圧電体の作成方法であって、前記圧電体を3層積層し、各圧電体の層間および両端の圧電体の表面に形成される電極において、両端の圧電体の表面に形成される電極を端子に接続することで、前記各圧電体を相互に直列接続し、前記各圧電体を、圧電正効果による電気変位または電場の符号と関係する残留分極の向きあるいは結晶軸が、固定端側の第1段目の圧電体の軸を基準として、それに接する第2段目の圧電体では逆方向、さらにその上の第3段目の圧電体でも逆方向となるように配列することを特徴とする。
【0024】
上記の構成によれば、超音波診断装置の超音波トランスデューサなどとして用いられ、相互に厚みの等しい複数の圧電体を積層して成り、該圧電体の厚み伸縮により超音波の送波および受波の少なくとも一方を行う積層型圧電体およびその作成方法において、本願発明では、3λ/4共振による3次高調波成分の超音波を送受波する場合に、圧電体の積層枚数を3枚として各圧電体を直列接続し、かつ予め定める態様で(ある決まりに従い)、一部の圧電体について、その表裏を反転して積層する。
【0025】
具体的には、先ず、前記のように厚み方向に3層積層される各圧電体の層間および両端の圧電体の表面に形成される電極の内、両端の圧電体の表面に形成される電極を端子に接続することで、各圧電体を電気的に直列結合とする。
【0026】
次に、前記積層枚数を3枚とすることで、圧電体内を伝搬する弾性波の節と腹とを、該圧電体の境界面と一致させることができ、このときの該積層型圧電体内における前記3次高調波成分の歪み分布に着目すると、各圧電体の歪みが、絶対値が変わることなく位相が180度反転し、各圧電体が上記のように直列接続の場合、例えば基端(背後層)側の圧電体の歪みを+とすれば、「+,−,−」となる。そこで、前記予め定める態様として、各圧電体の残留分極、あるいは結晶のC軸やA軸の向き(d33,e33,d11,e11の符号を決める軸)を、前記歪み分布における電気変位や電場の符号と一致するように、不一致の箇所(「−」の符号に該当する)の圧電体について、その表裏を反転して積層する。上記の場合、固定端側の(背後層に接する)第1段目の圧電体の軸を基準として、それに接する第2段目の圧電体では逆方向、さらにその上の第3段目の圧電体でも逆方向に配列する。
【0027】
これによって、積層型圧電体における各圧電体を、圧電正効果による電気変位や電場の符号に一致させ、フィルタやアンプなどを用いることなく、λ/4共振の場合に比べて前記3次高調波成分の送波時の出力音圧あるいは受波時の出力電圧を大きくすることができるとともに、1次モードの信号を減衰させることができる。
【0028】
さらにまた、本発明の積層型圧電体は、相互に厚みの等しい圧電体を2層積層して成り、該圧電体の厚み伸縮によって生じる3λ/4共振による3次高調波成分の超音波を送受波する積層型圧電体であって、前記各圧電体は、その層間および各外表面に電極を有し、前記外表面の電極に端子を接続することで、該各圧電体は相互に直列接続され、前記両圧電体は、圧電正効果による電気変位または電場の符号と関係する残留分極の向きあるいは結晶軸を、互いに逆方向となるように配列されていることを特徴とする。
【0029】
また、本発明の積層型圧電体の作成方法は、相互に厚みの等しい圧電体を2層積層して成り、該圧電体の厚み伸縮によって生じる3λ/4共振による3次高調波成分の超音波を送受波する積層型圧電体の作成方法であって、前記各圧電体の層間および各外表面に形成される電極において、前記外表面の電極を端子に接続することで、前記各圧電体を相互に直列接続し、前記両圧電体を、圧電正効果による電気変位または電場の符号と関係する残留分極の向きあるいは結晶軸が、互いに逆方向となるように配列することを特徴とする。
【0030】
上記の構成によれば、超音波診断装置の超音波トランスデューサなどとして用いられ、相互に厚みの等しい圧電体を2層積層して成り、該圧電体の厚み伸縮により超音波の送波および受波の少なくとも一方を行う積層型圧電体およびその作成方法において、本願発明では、3λ/4共振による3次高調波成分の超音波を送受波する場合に、前記2層の圧電体を直列接続し、かつ2層の圧電体について、残留分極の向きあるいは結晶軸を、互いに逆方向に積層する。
【0031】
具体的には、先ず、前記のように厚み方向に2層積層される圧電体の層間および外表面に形成される電極の内、外表面の電極を端子に接続することで、2層の圧電体を電気的に直列結合とする。
【0032】
次に、前記2層の圧電体を3λ/4共振させると、該2層の圧電体内を伝搬する弾性波の節と腹とが、該2層の圧電体の境界面と一致せず、このためこのときの該積層型圧電体内における前記3次高調波成分の歪み分布に着目すると、該2層の圧電体の歪みの絶対値に差が生じるとともに、位相が180度反転し、基端(背後層)側の圧電体の歪みを+とすれば「+,−」となる。そこで、直列接続で、互いに逆方向に積層することで、それらの歪みの加算を取ると、3λ/4、すなわち3次高調波については、極性が反転して大きなゲインを得ることができるものの、基本波については、減衰させることができる。
【0033】
したがって、前記2層の圧電体の残留分極、あるいは結晶のC軸やA軸の向き(d33,e33,d11,e11の符号を決める軸)が、前記のように互いに同方向となるように配列することで、フィルタやアンプなどを用いることなく、λ/4共振の場合に比べて前記3λ/4共振による3次高調波成分の送波時の出力音圧あるいは受波時の出力電圧を大きくすることができるとともに、1次モードの信号を減衰させることができる。
【0034】
さらにまた、本発明の積層型圧電体は、相互に厚みの等しい圧電体を4層以上に積層して成り、該圧電体の層間および両端の表面に電極を有し、前記両端の圧電体表面の電極に端子を接続することで、前記積層の圧電体を相互に直列接続し、前記各圧電体は、圧電正効果による電気変位または電場の符号と関係する残留分極の向きあるいは結晶軸を、固定端側の第1段目の圧電体の軸を基準として、それに接する第2段目の圧電体およびさらにその上の第3段目の圧電体では逆方向、さらにその上の第4段目の圧電体では同方向となる周期性を持つように配列されていることを特徴とする。
【0035】
また、本発明の積層型圧電体の作成方法は、相互に厚みの等しい圧電体を4層以上に積層して成る積層型圧電体の作成方法であって、積層された各圧電体の層間および両端の圧電体の表面に形成される電極において、前記両端の圧電体表面の電極を端子に接続することで、前記積層の圧電体を相互に直列接続し、前記各圧電体を、圧電正効果による電気変位または電場の符号と関係する残留分極の向きあるいは結晶軸が、固定端側の第1段目の圧電体の軸を基準として、それに接する第2段目の圧電体およびさらにその上の第3段目の圧電体では逆方向、さらにその上の第4段目の圧電体では同方向となる周期性を持つように配列することを特徴とする。
【0036】
上記の構成によれば、超音波診断装置の超音波トランスデューサなどとして用いられ、相互に厚みの等しい複数の圧電体を積層して成り、該圧電体の厚み伸縮により超音波の送波および受波の少なくとも一方を行う積層型圧電体およびその作成方法において、本願発明では、3次以上の共振モードで超音波を送受波する場合に、圧電体を4層以上積層して各圧電体を直列接続し、かつ予め定める態様で(ある決まりに従い)、一部の圧電体について、その表裏を反転して積層する。
【0037】
具体的には、先ず、前記のように厚み方向に複数積層される各圧電体の層間および両端の圧電体の表面に形成される電極の内、両端の圧電体の表面に形成される電極を端子に接続することで、各圧電体を電気的に直列結合とする。
【0038】
次に、前記積層枚数を前記共振モードの次数枚またはその整数倍とした場合、圧電体内を伝搬する弾性波の節と腹とを、該圧電体の境界面と一致させることができ、このときの該積層型圧電体内における前記所望高調波成分の歪み分布に着目すると、各圧電体の歪みが、絶対値が変わることなく位相が180度反転し、各圧電体が上記のように直列接続の場合、例えば基端(背後層)側の圧電体の歪みを+とすれば、「+,−,−,+」の周期性を4層おきに繰返す。そこで、前記予め定める態様として、各圧電体の残留分極、あるいは結晶のC軸やA軸の向き(d33,e33,d11,e11の符号を決める軸)を、前記歪み分布における電気変位や電場の符号と一致するように、不一致の箇所(「−」の符号に該当する)の圧電体について、その表裏を反転して積層する。上記の場合、固定端側の(背後層に接する)第1段目の圧電体の軸を基準として、それに接する第2および第3段目の圧電体では逆方向、さらにその上の第4段目の圧電体では同方向に配列する。そして、圧電体が前記次数の整数倍積層される場合は、それ以後4層の圧電体毎に、同方向、逆方向、逆方向、同方向の周期性を持つように配列する。
【0039】
これによって、積層型圧電体における各圧電体を、圧電正効果による電気変位や電場の符号に一致させ、フィルタやアンプなどを用いることなく、λ/4共振の場合に比べて前記4次以上の所望高調波成分の送波時の出力音圧あるいは受波時の出力電圧を大きくすることができるとともに、1次モードの信号を減衰させることができる。
【0040】
さらにまた、本発明の超音波トランスデューサは、前記の積層型圧電体を用いることを特徴とする。
【0041】
上記の構成によれば、フィルタやアンプなどを用いることなく、λ/4共振の場合に比べて、高調波成分の送波時の出力音圧あるいは受波時の出力電圧を大きくすることができるとともに、1次モードの信号を減衰させることができる超音波トランスデューサを実現することができる。
【0042】
また、本発明の積層型圧電体の作成方法は、複数の圧電体を積層して成り、該圧電体の厚み伸縮により高次共振モードで所望高周波の超音波を送受波する積層型圧電体の作成方法であって、前記圧電体の積層枚数を前記共振モードの次数枚またはその整数倍とし、かつその次数枚での積層型圧電体内の歪み分布に着目し、圧電体の圧電正効果による電気変位または電場の符号と関係する残留分極の向きあるいは結晶軸を、前記歪み分布における電気変位または電場の符号と一致するように、前記複数の圧電体の一部について、その表裏を反転して積層することを特徴とする。
【0043】
上記の構成によれば、超音波診断装置の超音波トランスデューサなどとして用いられ、複数の圧電体を積層して成り、該圧電体の厚み伸縮により超音波の送波および受波の少なくとも一方を行う積層型圧電体を作成(積層)するにあたって、従来から圧電体を積層する手法は多く報告されているが、単に各圧電体の残留分極、あるいは結晶のC軸やA軸の向き(d33,e33,d11,e11の符号を決める軸)が相互に同じ方向となるように積層していたのに対して、本願発明では、高次共振モードで所望高周波の超音波を送受波する場合に、圧電体の積層枚数を前記共振モードの次数枚とし、かつ予め定める態様で(ある決まりに従い)、一部の圧電体について、その表裏を反転して積層する。前記予め定める態様は、前記の次数の高調波を受波する際の該積層型圧電体内の歪み分布に着目し、前記残留分極の向きあるいは結晶軸を、前記歪み分布における電気変位や電場の符号と一致するように、不一致の箇所の圧電体について、その表裏を反転して積層することである。具体的には、特に各圧電体の厚みを相互に等しくした場合、前記積層枚数と共振モードの次数とを一致させることで、圧電体内を伝搬する弾性波の節と腹とを、該圧電体の境界面と一致させることができ、このときの各圧電体における前記所望高周波成分の歪みが、絶対値が変わることなく位相が180度反転し、各圧電体が直列接続の場合、例えば基端(背後層)側の圧電体の歪みを+とすれば、4次高調波の場合で、「+,−,−,+」の周期性を4層おきに繰返し、3次高調波の場合で、「+,−,−」の周期性を3層おきに繰返す。そこで、「−」の符号に該当する圧電体の表裏を反転させておくことで、前述のように圧電正効果による電気変位や電場の符号を一致させることができる。なお、前記4層や3層おきに周期性を繰返すので、圧電体の積層枚数は、共振モードの次数枚の整数倍であればよい。また、各圧電体の厚みは必ずしも同じでなくてもよく、ただし境界で前記節または腹となるような厚みに設定すればよい。
【0044】
これによって、フィルタやアンプなどを用いることなく、λ/4共振の場合に比べて前記4次以上の所望高調波成分の送波時の出力音圧あるいは受波時の出力電圧を大きくすることができるとともに、1次モードの信号を減衰させることができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明の積層型圧電体およびこれを用いた超音波トランスデューサならびに積層型圧電体の作成方法は、以上のように、所望の高調波成分の超音波を送受波するにあたって、厚み方向に伸縮を行う複数の圧電体を厚み方向に積層して積層型圧電超音波トランスデューサを構成し、前記各圧電体を直列接続するにあたって、該積層型圧電体内における前記高調波成分の歪み分布に着目して、各圧電体の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の向きを、一部を逆方向に配置する。
【0046】
それゆえ、フィルタやアンプなどを用いることなく、λ/4共振の場合に比べて、所望高調波成分の送波時の出力音圧あるいは受波時の出力電圧を大きくすることができるとともに、1次モードの信号を減衰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】圧電体の厚み伸縮モードでの等価回路図である。
【図2】1MHzに厚み共振の1次モードを示す圧電体の複素誘電率の周波数特性を示すグラフである。
【図3】前記図2に示す圧電体における3次高調波成分と、3MHzに厚み共振の1次モードを示す圧電体との複素誘電率の周波数特性を示すグラフである。
【図4】3層圧電体トランスデューサにおけるλ/4共振状態の模式的な断面図である。
【図5】図4で示す3層圧電体トランスデューサにおける3λ/4共振状態の模式的な断面図である。
【図6】n層圧電体トランスデューサの模式的な断面図である。
【図7】図6に示したn層圧電体トランスデューサでn次高調波を励振あるいは検出する際の変位と歪みとを模式的に示す図である。
【図8】図7に示す積層圧電体で、n次高調波を検出する際の各々の圧電体の残留分極、あるいは結晶のC軸やA軸の向きと、圧電正効果による電場との関係を示す図である。
【図9】図8で示す本発明の考え方に従う詳細な実施例の一例であり、2層圧電体トランスデューサの構造を模式的に示す断面図である。
【図10】図9で示す2層圧電体トランスデューサにおける高調波送受波時の変位と歪みとを説明するための図である。
【図11】図9および図10に示す積層圧電体で、3次高調波を検出する際の各々の圧電体の残留分極の向きと、圧電正効果による電場との関係を示す図である。
【図12】図9に示す2層圧電体およびその比較例による超音波の送受波特性について、実験データおよびシミュレーション結果を示すグラフである。
【図13】図8および図5で示す本発明の考え方に従う詳細な実施例の他の例であり、3層圧電体トランスデューサの構造を模式的に示す断面図である。
【図14】図13で示す3層圧電体トランスデューサにおける高調波送受波時の変位と歪みとを説明するための図である。
【図15】図13および図14に示す積層圧電体で、3次高調波を検出する際の各々の圧電体の残留分極の向きと、圧電正効果による電場との関係を示す図である。
【図16】図15に示す3層圧電体による超音波の送受波特性について、実験データおよびシミュレーション結果を示すグラフである。
【図17】図15に示す3層圧電体の比較例による超音波の送受波特性について、実験データおよびシミュレーション結果を示すグラフである。
【図18】図8で示す本発明の考え方に従う詳細な実施例のさらに他の例であり、6層圧電体トランスデューサの構造を模式的に示す断面図である。
【図19】図18に示す積層圧電体で、3次高調波を検出する際の各々の圧電体の残留分極の向きと、圧電正効果による電場との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
先ず、本発明の詳細な実施の形態を説明する前に、本発明の考え方を説明する。本発明は、同じ厚みの圧電体をある決まりに従い積層することによって、3次以上の高調波を効率良く送受波することができるという本件発明者の知見によるものである。圧電体を積層する手法はこれまで多く報告されているが、本発明は、高調波を送受波する際に圧電体内に歪み分布があることに着目したものである。
【0049】
一例として、最も理解し易いと思われる図4に示す3枚の圧電体A1,A2,A3を積層したλ/4振動子について説明する。この、λ/4振動子のλ/4での励振状態では、前記3枚の圧電体A1,A2,A3が同期して伸縮を行い、全体で最大ΔZの伸縮を行うものとする。そして、固定端、すなわち前記の40MRayl.より小さいものの、充分大きい音響インピーダンスを有する背後層に接する1層目の圧電体A1の裏面の座標をz0とすると、前記伸縮に伴うその位置の変位は、z0=ΔZSsin0°=0である。これに対して、1層目の圧電体A1の表面の座標z1の変位は、z1=ΔZSsin30°=0.5ΔZとなり、2層目の圧電体A2の表面の座標z2の変位は、z2=ΔZSsin60°=0.85ΔZとなり、自由端、すなわち前記の0より大きいものの、充分小さい音響インピーダンスを有する空間と接する3層目の圧電体A3の表面の座標z3の変位は、z3=ΔZSsin90°=1.0ΔZとなる。ここで、圧電体A1,A2,A3の表裏は、該圧電体を厚み方向に加圧して、+の電圧が発生する方を表、−の電圧が発生する方を裏とする。
【0050】
すなわち、図4の3層の圧電体A1,A2,A3の場合、全体の伸縮ΔZの内、固定端側の圧電体A1は、0.5ΔZの伸縮を受け持ち、2層目の圧電体A2は、0.35ΔZの伸縮を受け持ち、3層目の圧電体A3は、0.15ΔZしか伸縮しないことになる。このように積層型圧電体は、基本波のλ/4共振では、各圧電体A1,A2,A3は同期して(同じ方向に)伸縮を行うものの、各圧電体A1,A2,A3が一様に伸縮するのではなく、不均一な歪み分布を有する。
【0051】
一方、同様の積層圧電体を3λ/4共振させると、図5で示すようになる。すなわち、1層目の圧電体A1の裏面の座標z0は、z0=ΔZsin0°=0であり、1層目の圧電体A1の表面の座標z1の変位は、z1=ΔZsin90°=ΔZとなり、2層目の圧電体A2の表面の座標z2の変位は、z2=ΔZsin180°=0となり、3層目の圧電体A3の表面の座標z3の変位は、z3=ΔZsin270°=−ΔZとなる。したがって、1層目の圧電体A1はΔZの伸びを行っているのに対して2層目および3層目の圧電体A2,A3は、ΔZの縮みとなっている。
【0052】
そこで本件発明者は、このような不均一な歪み分布に着目し、各圧電体の残留分極(PZT,PVDFなどの強誘電体)、あるいは結晶(水晶など)のC軸やA軸の向き(d33,e33,d11,e11の符号を決める軸)を、高調波送受信時の歪み分布における電気変位や電場の符号と一致するように、不一致の箇所(「−」の符号に該当する)の圧電体について、その表裏を反転して積層するようにした。図4および図5の場合には、その左側の矢印で示すように、2層目および3層目の圧電体A2,A3を、1層目の圧電体Aとは前記残留分極の向きあるいは結晶軸が逆方向となるように積層する。これによって、基本波λの成分が、0.5・ΔZ+0.35・(−ΔZ)+0.15・(−ΔZ)=0となって除去されると同時に、3次高調波3λの成分は、1・ΔZ+(−1)・(−ΔZ)+(−1)・(−ΔZ)=3ΔZとなって抽出することが可能となる。
【0053】
一方、図6を用いて、n枚(nは4以上の整数)の圧電体を積層したλ/4振動子において、n次高調波を送受波する場合を説明する。モデルを単純化するため、積層膜の一端を基盤に固定し、もう一端を自由端とした。インピーダンス整合層や背後(バッキング)層など、さらに接着層の厚み等による影響は除くものとする。
【0054】
図7は、図6に示したn層圧電体トランスデューサで、n次高調波を励振あるいは検出する際の変位と歪みとを模式的に示す図である。(a)は積層状況、(b)はある瞬間での各層の変位、(c)は歪の極性である。前述の図4や図5と同様に、基盤とそれに接する圧電体との境界面を原点z0として、素子の高さ(厚み)方向の座標をz1,z2,z3,・・・,znとする。積層圧電体内で、各圧電体層の変位は、背後層と第1段目の圧電体1の境界とを原点z0とした正弦波を形成する。
【0055】
一般に、厚み方向にn倍波(n≧1)が励振された場合、高さzにおける変位ξ(z)は、
ξ(z,t)=ξ0sin(nπ/2・z/h)(cosnωrt+θ)…(11)
となることが知られている(基礎物理学選書8 振動・波動 有山正孝著 裳華房)。ここで、ωrは積層圧電体の共振周波数2πfr,θは、電圧あるいは音波を受ける際の応力と変位との位相差である。係数ξ0sin(nπ/2・z/h)は、高さzにおける変位の振幅を意味する。以下、時間項は省略する。
【0056】
この場合、座標z1での変位ξ(z1)は、
ξ(z1)=ξ0sin(nπ/2・z/h) …(12)
である。ここで、変位ξ(z)と歪みSとの関係は、
dS=dξ/dz …(13)
なので、第m層の圧電体の歪みSmは、
Sm=[ξ(zm)−ξ(zm−1)]/(zm−zm−1) …(14)
と書ける。ただし、m=1〜n、z0=0である。
【0057】
したがって、圧電体1の歪みS1は、
S1=Δh1/h1=ξ0sin(nπ/2・h1/h)/h1 …(15)
となる。ここで、Δh1は圧電体1の厚み変化で、ξ(z1)−ξ(z=0),h1は圧電体1の厚みである。圧電体2についても同様に、歪みS2は、
S2=Δh2/h2
=ξ0{sin(nπ/2・(h1+h2)/h)
−sin(nπ/2・h1/h)}/h2 …(16)
となる。第m層の圧電体の歪みSmは、
Sm=Δhm/hm
=ξ0{sin(nπ/2・zm/h)−sin(nπ/2・zm−1/h)}/hm
…(17)
となる。
【0058】
上式(17)は、第m層にある圧電体の歪みが、sin(np/2・zm/h)−sin(np/2・zm−1/h)で決まり、前述のように一様に伸縮しないことを意味する。したがって、その項の符号が正になる圧電体と負になる圧電体とで、圧電体の表裏を反転させれば、圧電正効果による電気変位あるいは電場の符号を一致させることができ、圧電素子のn次高調波の電気信号を効率良く得られることが理解される。
【0059】
さらに、各圧電体の厚みを等しくすれば、
zm=(m/n)h,zm−1=(m−1/n)h,hm=h/m …(18)
と単純化できる。これを式(17)に代入すると、
Sm=mξ0{sin(mπ/2)−sin[(m−1)π/2]}/h …(19)
となる。
【0060】
次に、電気系について考える。第m層の圧電体が圧電正効果によって生じる電気変位(単位電極面積当りの電荷)Dmは、
Dm=e33SmまたはDm=d33Sm=d33sTm …(20)
である。ここで、sは圧電体の弾性コンプライアンスである。
【0061】
一方、第m層の圧電体に圧電正効果によって生じる電位Em(単位厚み当りの電圧)は、
Em=(e/ε)SmまたはEm=(d/ε)Sm=(ds/ε)Tm …(21)
である。ここで、εは圧電体の誘電率である。
【0062】
これに対して、各々の圧電体を電気的に直列結合すれば、積層圧電体が出力する正味の電場ETotalは
【数1】
となる。したがって、積層圧電体の容量はC/nとなり、電気インピーダンスは圧電体1層のn倍に増加する。
【0063】
本願発明者は、上式(19),(22)から、単純な直列結合において、積層圧電体が出力する正味の電場が最大となる残留分極あるいは結晶C軸やA軸の配列の規則性を見出した。また、前記積層数nが4以上で、該積層数nと高調波の次数とを一致させれば、圧電体内を伝搬する弾性波の節と腹とを圧電体の境界面と一致させることができ、このとき各圧電体の歪みが絶対値が変わることなく位相が180度反転し、例えば各圧電体が直列の図7の場合、圧電体1の歪みを+とすれば「+,−,−,+」の周期性を4層おきに見出すことができ、n次高調波の検出をより効率良く行うことができることを見出した。このことを理論説明すると以下のようになる。
【0064】
図8に、本発明における、n層圧電体で、n次高調波を検出する際の各々の圧電体の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の向きと、圧電正効果による電場(V/m)との関係の一例を示す。各圧電体の層間および両端の圧電体の表面には電極が設けられており、前記両端の電極を端子に接続し、各圧電体を直列接続している。また、残留分極(それを持たない圧電体の場合は結晶のC軸(水晶の場合はA軸))は、z軸方向に配向されている。図中では便宜上、圧電体1の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の方向を+Pと表記している。これは他の圧電体の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸が圧電体1のそれと同方行か逆方行かを識別するためであり、圧電体1の分極方向を制限するものではない。
【0065】
前述の図7(c)に示したように、各圧電体の歪みには、周期性がある。そのため、残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の向きを平行とした場合、本発明の目的であるn次高調波における圧電体の効率を上げるためには、各々の電極を電気的に絶縁し、独立して配線しなければならなく、構造上かつ製造上のリスクは極めて高い。
【0066】
しかしながら本発明によれば、図8に示す直列接続の場合に、4層毎の圧電体の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸に、前記のように「+P,−P,−P,+P」の周期性を与えた、すなわち背後層に接する第1段目の圧電体の軸を基準として、それに接する第2段目の圧電体およびさらにその上の第3段目の圧電体では逆方行、さらにその上の第4段目の圧電体ではでは同方行とし、それ以後4層の圧電体毎に、同方向、逆方行、逆方行、同方行の周期性を持つように配列すれば、容易に前記n次高調波に対する受信感度を、単層の圧電体に比べて、n倍に増幅することができる。このとき、隣接する圧電体で、前記残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の方向が同方向の箇所が存在するが(図8では、第2および第3段目、第4および第5段目、第6および第7段目)、それらの箇所では、それぞれの厚みを加算した厚みを有する1つの圧電体に置換えることができる。
【0067】
上述ではn次高調波を検出する場合を例として挙げたが、逆にn次高調波を送波する場合についても、図8において端子間に発振器を接続することで、従来よりも効率が向上する。送波の場合、歪みSと印加電場Eとの関係は、
S=dEあるいはS=(e/c)E …(23)
である。図8に示す積層圧電体の両端子間に電圧発生器を繋げ、n次高調波に相当する周波数の電圧を印加すれば、図8に示す歪みおよび図7(b)に示す変位を生じ、超音波を媒質中に励振させることができる。そして、先に述べた電気インピーダンスの関係から、本願発明の構造では、高電圧低電流駆動となる。
【実施例1】
【0068】
以下に、上述の考え方に従う本発明の詳細な実施例を説明する。先ず第1の実施例として、図9に示す2層圧電体トランスデューサによる3λ/4高調波の検出について述べる。2層圧電体トランスデューサは積層圧電体の中でも最もシンプルな構造である。この場合、送受波に用いる高調波の次数と積層枚数とは一致しない。しかしながら、本発明を以下のように適用することにより、送受波の効率を上げることができる。
【0069】
すなわち、図9の圧電体1および圧電体2の歪みS1,S2は、
S1=Δh1/h1=ξ0sin(nπ/2・h1/h)/h1 …(24)
S2=Δh2/h2
=ξ0{sin(nπ/2)−sin(nπ/2・h1/h)}/h2…(25)
となる。ここでhは積層圧電体の高さ、h1とh2とは各圧電体の高さで、h1=h2=h/2である。
【0070】
3λ/4共振倍波に対する応答は、n=3で与えられる。その場合の歪みS13ω,S23ωは、
S13ω
=2ξ03ωsin(3π/4)/h=2(ξ03ω/21/2)/h …(26)
S23ω
=2ξ03ω{sin(3π/2)−sin(3π/4)}/h
=−2ξ03ω(1+1/21/2)/h …(27)
となる。添字3ωは、3倍波における変位を示す。ここで、1/21/2≒0.7と近似すると、これらの式は、3倍波では圧電体2の歪みと圧電体1の歪みとでは振幅比が−1.7:+0.7となることを示す。
【0071】
そのような各圧電体の変位と歪みの符号とを図10に示す。(a)は変位であり、(b)は歪みである。圧電体1と圧電体2との歪み比は、(b)に示すとおりである。各圧電体の歪みの絶対値が一致しないのは、前述のように各圧電体の境界と変位の節と腹とが一致しないためである。
【0072】
そこで図11に示すように各端面の電極を端子に接続して直列結合とすれば、積層圧電体の電気インピーダンスは1つの圧電体のインピーダンスの2倍となるものの、圧電正効果による電場E1,−13ωは、圧電体1の残留分極の向きあるいは結晶のC軸やA軸の向きと圧電体2のそれらの向きを同方行とすれば、一方の極性が反転して足し合わされ、
E1,−13ω=2(1+21/2)eξ03ω/εh …(28)
となる。
【0073】
一方、基本波に対する応答は、式(24)および(25)でn=1の場合に理解できる。すなわち歪みS1ωとS2ωとは、
S1ω=2ξ0ωsin(π/4)/h=2(ξ0ω/21/2)/h …(29)
S2ω=2ξ0ω{sin(π/2)−sin(π/4)}/h
=2ξ0ω{1−1/21/2}/h …(30)
となる。
【0074】
ここで図11に示すような直列結合を行い、残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の向きを同方行とした場合、電場E1,−1ωは、
E1,−1ω=2eξ0ω(21/2−1)/h …(31)
となる。ここで、添え字の1は、各圧電体の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の向きに対応し、左から圧電体1、圧電体2の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の向きを示している。
【0075】
以上の結果から、各圧電体の歪みを考慮し、直列接続の場合、残留分極あるいは結晶のC軸やA軸方向を逆方向とすることで、3λ/4波に対しては2.4倍感度を増幅することができ、同時にλ/4波に対しては0.4倍に感度を落とすことができる。したがって、2層圧電体から成る超音波トランスデューサへ本発明を適用すれば、3λ/4共振による信号を高S/N比で送受波することが可能となる。
【0076】
図12は、P(VDF/TrFE)を用いた2層圧電体からなる超音波トランスデューサの送受波感度特性の実験結果ならびにシミュレーション結果である。実線は実験結果、破線はシミュレーション結果である。圧電体は直列結合としており、しかもλ/4共振周波数は7MHz、3λ/4共振周波数はおよそ20MHzである。(a)は本発明に基づき分極方向を逆方行とした場合、(b)は参考に同方行とした場合の結果である。(a)に示すように、本発明に基づく分極方向によると、20MHzに見られる3λ/4共振ピークが、7MHzにみられるλ/4共振ピークよりも大きく、(b)に示す結果と比較すると、3λ/4共振ピークは20dB増加している。このように2層圧電体に対しても本発明の手法に基づき、分極方向を工夫することで、3次高調波成分を増加させると同時に、基本波成分を減衰させることができる。
【実施例2】
【0077】
続いて、3層圧電体トランスデューサによる3次高調波の検出について述べる。図13に模式構造図を示す。このトランスデューサも、積層圧電体の一端を基盤に固定し、もう一端を自由端としたλ/4振動子としている。
【0078】
先ず、本発明に基づく設計プロセスを述べる。前述と同様に基盤と圧電体1との境界を原点として、素子の高さ(厚み)方向の座標をzとする。次に、各々の圧電体が生じる歪みSについて考える。基盤側から順に圧電体1、圧電体2、圧電体3とする。座標zは、基盤と圧電体1との境界ではz=0、圧電体1と圧電体2との境界ではz1、圧電体2と圧電体3との境界ではz2、圧電体3の端部をz3とする。また、圧電体1の厚みをh1、圧電体2の厚みをh2、圧電体3の厚みをh3とし、積層圧電体の高さをhとする。
【0079】
すると、座標z1における変位ξ(z1)は、
ξ(z1)=ξ0sin(nπ/2・z1/h) …(32)
なので、圧電体1の歪みS1は、
S1=Δh1/h1=ξ0sin(nπ/2・h1/h)/h1 …(33)
となる。同様に、圧電体2および3については、
S2=Δh2/h2
=ξ0{sin(nπ/2・(h1+h2)/h)−sin(nπ/2・h1/h)}/h2
…(34)
S3=Δh3/h3
=ξ0{sin(nπ/2)−sin(nπ/2・(h1+h2)/h)}/h3
…(35)
となる。
【0080】
そして、3λ/4共振時の各圧電体の歪みは、上式(33)〜(35)においてn=3で与えられる。各圧電体の厚みが等しく、すなわち上式でh1=h2=h3=h/3の場合、各圧電体の歪みS13ω,S23ω,S33ωは、
S13ω=Δh13ω/h1=3ξ03ωsin(π/2)/h)
=3ξ03ω/h …(36)
S23ω=Δh23ω/h2
=3ξ03ω{sin(π)−sin(π/2)}/h
=−3ξ03ω/h …(37)
S33ω=Δh33ω/h3
=3ξ03ω{sin(3π/2)−sin(π)}/h
=−3ξ03ω/h …(38)
となる。ここで、添え字3ωは3次高調波における応答を意味する。これらの式から3λ/4共振では圧電体2および圧電体3の歪みと、圧電体1の歪みとが逆位相であることを示す。
【0081】
各圧電体の変位と歪みの符号とを図14に示す。(a)は変位であり、(b)は歪みである。本実施例は、3次高調波の送受で、圧電体が3枚積層であるので、(a)および前述の図5で示すように、変位の節と腹とは、各圧電体の境界と一致する。このとき各圧電体の歪みは、圧電体1の歪みを+とすると、(b)および前述の図5で示すように、圧電体2および3の歪みを−として符号化することができる。
【0082】
以上の力学系の振る舞いに基づき、電気系の最適構造を導く。図15に示すように、両端の電極から配線を引き出し、端子に接続することで、各圧電体を電気的に直列結合している。そして、圧電体1の残留分極の向きあるいは結晶のC軸やA軸の向きを基準(+P)として、圧電体2および圧電体3の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の向きを逆方行(−P)とすれば、圧電正効果により生じる電場が足し合わされ、積層圧電体の両端子間に生じる電場E1,−1,−13ωは、
E1,−1,−13ω=(e/ε)S1−(e/ε)(S2+S3)
=9eξ03ω/εh …(39)
となる。ここで、添え字の1および−1は、各圧電体の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の向きに対応し、左から圧電体1、圧電体2そして圧電体3の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の向きを示している。なお、圧電体2と圧電体3との分極の向きが平行なので、厚み2hの圧電体に置き換えることができる。
【0083】
そして、λ/4共振に対する応答は、n=1で与えられ、各圧電体の歪みS1,S2,S3は、
S1=Δh1/h1=3ξ0sin(π/6)/h …(40)
S2=Δh2/h2
=3ξ0{sin(π/3)−sin(π/6)}/h …(41)
S3=Δh3/h3
=3ξ0{sin(π/2)−sin(π/3)}/h …(42)
すなわち、
S1=S2+S3 …(43)
となる。
【0084】
一方、図15に示す直列接続で、λ/4共振に対する電場E1,−1,−1ωは、
E1,−1,−1ω=(e/ε)(S1+S2+S3)=0 …(44)
であり、本実施例の3層圧電体から成るトランスデューサでは、λ/4共振に基づく感度が打ち消されることを示す。
【0085】
比較として、単に残留分極あるいは結晶のC軸やA軸を平行とした3層圧電体による3次高調波の送受波について述べる。3λ/4共振において積層圧電体が圧電正効果により生じる電場E1,1,13ωは、
E1,1,13ω=(e/ε)(S1+S2+S3)
=−3eξ03ω/εh …(45)
となる。したがって、本実施例では、上式(45)に示すとおり、直列接続において端子間の電場を、3倍(約10dB)向上できることが理解される。
【0086】
以下、図15に示した3層圧電体による超音波の送受波特性について、実験データおよびシミュレーション結果を図16に示す。実験では代表的な強誘電性ポリマーであるフッ化ビニリデンと三フッ化エチレンの共重合体(P(VDF/TrFE))を用いた。超音波トランスデューサの構造模式図を図16の右図に示す。本発明に基づき3層圧電体を電気的に直列結合し、さらに分極の向きを図15に示したものと同じとした。3層圧電体の高さはおよそ120μmで、λ/4共振周波数は4.5MHzである。左図の実線は実験結果、破線はシミュレーション結果である。
【0087】
図16から、20MHz以下では、それぞれ共振周波数に対応する4.5MHz付近にピークを示さず、λ/4共振ピークが消失している。したがって、本実施例のトランスデューサにおける第1のピークは、それの3λ/4共振である13.5MHzとなっていることが理解される。
【0088】
比較例として、図17に圧電体2と3の残留分極の向きを図16とは反対にした積層圧電体の特性を示す。左図に示すように、この3層圧電体は、λ/4共振である4.5MHzと、その3次高調波成分である13.5MHzとに共にピークを示し、しかも3次高調波成分の感度は、−50〜−60dB程度であり、図16に示した本実施例の結果に比べて、10〜20dB程度小さいことが理解される。これらの実験結果からも、本発明の手法に基づき分極方向を工夫することで、3次高調波成分を増加させると同時に基本波成分を減衰させることが可能であることが理解される。
【0089】
以上のように、第2の実施例では、3層圧電体を用いて3次高調波を送受波する手法を述べたが、ここでは積層圧電体の高調波の次数と積層枚数とを一致させることにより、(i)圧電体の境界面を圧電体の弾性波の節と腹とに一致させて各圧電体の振動様式を符号化して理解でき、その符号に基づき、(ii)各圧電体の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の向きを適宜同方行または逆方行とすることで、各圧電体の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の向きを単純に同方行にした場合と比べ、3λ/4波の送受波時に感度を3倍(約10dB)以上増加することができるだけでなく、λ/4波を打ち消すフィルタとしての機能も有することができる。以上のように3λ/4波を選択的にかつ高S/N比で送受波する場合、本発明は極めて有効である。これによって、受波の場合には帯域分離フィルタやアンプを削減することができる。あるいは、削減まで至らなくても、フィルタの場合は次数を削減して損失を抑え、アンプの場合はゲインを小さくすることができる。
【実施例3】
【0090】
第3の実施例は、同じ厚さの圧電体を6層積層したトランスデューサによる3次高調波の送受である。本実施例は、第2の実施例で示した3層圧電体において各圧電体を2つの圧電体に分割したものである。
【0091】
図18は、その6層圧電体の構造を示し、3次高調波を送受波する際の変位および歪みを模式的に示す断面図である。図7と同様に、(a)は積層状況、(b)はある瞬間での各層の変位、(c)は歪みの係数である。
【0092】
各圧電体の歪みS1,S2,S3,S4,S5,S6は、
S1=6ξ0sin(π/4)/h=6ξ0(1/21/2) …(46)
S2=6ξ0{sin(π/2)−sin(π/4)}/h
=6ξ0(1−1/21/2) …(47)
S3=6ξ0{sin(3π/4)−sin(π/2)}/h
=6ξ0(1/21/2−1) …(48)
S4=6ξ0{sin(π)−sin(3π/4)}/h
=6ξ0(−1/21/2) …(49)
S5=6ξ0{sin(5π/4)−sin(π)}
=6ξ0(−1/21/2) …(50)
S6=6ξ0{sin(3π/2)−sin(5π/4)}
=6ξ0(1/21/2−1) …(51)
となる。1/21/2≒0.7に近似すると、各圧電体の歪みの比は、図19の模式図に示すとおりとなる。
【0093】
そして、各圧電体を電気的直列結合とした場合の残留分極あるいは結晶のC軸またはA軸の好ましい配列を、図19に示す。このように構成することで、λ/4共振による感度は減衰し、3λ/4共振による感度が最大となる。
【0094】
本発明の積層型圧電体は、超音波診断装置における超音波トランスデューサに限らず用いることができ、たとえば魚群探知機などにも適用することができ、また送受信信号は超音波帯域に限らず、たとえば低周波のストレスを加えて発電を行うような構成にも適用することができる。
【符号の説明】
【0095】
A1〜A3 圧電体
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置の探触子などとして用いられる超音波トランスデューサと、それに用いられる圧電体で、特に複数層積層されて成る積層型圧電体およびその作成方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、超音波トランスデューサには圧電体が用いられる。これは、圧電体が機械エネルギーを電気エネルギーに変換する、またその逆のいわゆる電気系と機械系との結合作用を持つためである。用いられる圧電体は、一対の電極が設けられたシート状、板状あるいは棒状で、一方の電極が背後層に固定され、もう一方の電極が音響レンズや整合層を介して媒質に接する。
【0003】
そして、圧電超音波トランスデューサの多くは、d33モードやe33モードにより媒質に音波を放射し、あるいは媒質に伝搬する音波を検出する。d33モードは柱状振動子の縦振動、e33モードは板状振動子の厚み振動と一般に言われている。PZTセラミックスやPVDFなどの強誘電体や、P(VDCN/VAc)といった高誘電体、ポーラスポリマーエレクトレット圧電体では、ポーリング処理による電気双極子の配向により残留分極を保持し、d33やe33を示す。一方、残留分極を持たない圧電結晶では、ZnO、LiNbO3、KNbO3といった圧電結晶の場合はC軸、水晶の場合はA軸を、それぞれ電極面に対して垂直に配向すれば、前記d33やe33(水晶ではd11やe11)を示す。圧電コンポジット材料については、用いられる材料に応じる。
【0004】
ここで、超音波トランスデューサを構成する圧電体において、最も単純な力学境界条件は、一端が固定端でもう一端が自由端の場合である。なお、理論上は、接する物の音響インピーダンスZ(単位はMRayl.)と境界条件には、Z=0が自由端、Z=∞が固定端の関係があるが、本明細書においてはそこまで厳密ではなく、接着層や電極層を除いて、接する物のZに対し、圧電材料のインピーダンスZが、小さいもしくは同等の場合に固定端、大きい場合に自由端とみなすものとする。また、超音波トランスデューサの送波および受波には、圧電体の縦振動あるいは厚み振動の共振が用いられ、その共振周波数frは、トランスデューサの構造や媒質への押し当てにもよるが、主に圧電体の物性と寸法とで決まる。したがって、本明細書では圧電体の寸法や性質以外で共振周波数を変化させる要因を除外する。
【0005】
先ず、圧電体のd33モードやe33モードにおける共振周波数frは、圧電体の音速vと高さ(厚み)hとから、
fr=v/4h …(1)
となる。これは一般にλ/4共振と言われる。λは圧電体内の波長を意味する。このほかに両端を自由としたλ/2共振がある。その共振周波数は、λ/4共振の1/2となる。
【0006】
一方、前記圧電体の音速vは、柱状振動子の縦振動では、
v=(1/sρ)1/2 …(2)
となり、板状の厚み振動子の厚み振動では、
v=(c/ρ)1/2 …(3)
となる。ここで、sは弾性コンプライアンス、cは弾性スティフネス、ρは密度である。
【0007】
こうして、トランスデューサの送波および受波周波数は、主に圧電体の高さ(厚み)h、弾性率sおよび密度ρによって決定されることが、上式(1)〜(3)より理解される。
【0008】
医療分野や建築分野など、超音波による非破壊画像検査の分野では、より高分解能な画像を得るためトランスデューサの高周波数化や送受波性能の向上が求められている。圧電体を用いた超音波トランスデューサにおいて、送受波性能を向上するには、トランスデューサと電気処理回路との間の電気インピーダンス整合は、電気信号を高S/N比で伝送するための重要な因子である。また、高周波化では、送受波周波数が圧電体の厚みで決まるので、圧電体をより薄くする必要がある。圧電体の薄膜化は、電気インピーダンスを下げる方向に働くので、電気回路とのインピーダンス整合には有利に働くが、下げ幅はせいぜい厚み比の逆数分に過ぎない。また、圧電体の薄膜化は、膜厚制御や取り扱いなど製造プロセスを困難とする。
【0009】
そこで、従来技術では、高周波信号を得る目的として、従来のλ/4共振トランスデューサの送受波信号における高調波成分が用いられている。しかしながら、高調波成分は基本波成分に比べて感度が弱く、かつ圧電体や周辺材料のダンピングによって減衰し易いので、高S/N比の信号は得られにくいという問題がある。そこで、高調波を使った超音波の送受波の一例として、図1を参照して、e33厚み伸縮モードについて説明する。この図1および以下の説明は、非特許文献1に示されたものである。この図1の等価回路を構成する素子の定数は、
Cn=pnkt2C0 …(4)
L=1/ωp12C1 …(5)
pn=(1/n2)(8/π2),n=2m−1 …(6)
である。ここで、Cnは各素子のキャパシタンス、Lはインダクタンス、ktは厚み伸縮モードの電気機械結合係数、ωp1は共振周波数である。
【0010】
上記式(6)において、pn≒1/n2と近似すれば、式(4)は、
Cn/C0=kt2/n2 …(7)
となる。式(7)はn次高調波における電気機械結合係数の実効値が1/nに減少することを示す。そして、1次モードの場合、n=1なので、式(7)は、
Cn=1/C0=kt2 …(8)
となる。この式は、この1次モードにおけるktと誘電率との関係式
εT/εS=1+kt2 …(9)
において、εT=C0+Cn,εS=C0とおいた式と一致する。εSは束縛条件の誘電率、、εTは自由条件の誘電率、C0とCnとは電気容量である。d33モードに対しては、上式(4)を、
Cn=pn(k332/1−k332)C0 …(10)
に置き換えれば、同様の結果が得られる。
【0011】
そして、3次高調波を送受波するときの電気機械結合係数の実効値は、式(7)より、n=3のときに与えられ、見かけの結合係数をkt’とおけば、kt’=kt/n=kt/3となる。この結果は、3次高調波を送受波する際に、見かけ結合係数が1/3に減衰することを意味する。
【0012】
図2は、1MHzに厚み共振の1次モードを示す圧電体の複素誘電率の周波数特性(計算値)を示すグラフである。ただし、kt=0.3,h/2v=2.485×10−7(s),tanδm=0.04である。
【0013】
1MHzに見られる実部(参照符号α1で示す)の極大・極小と、虚部(参照符号α2で示す)の極大とは、厚み共振の1次モードによるものである。以後、3MHzに3次高調波成分、5MHzに5次高調波成分が見られる。一方、図3に示すように、図2に示す3次高調波成分について、3MHzを1次モードとする圧電体モデルで当てはめたところ、結合係数と圧電体の厚みが1/3とした場合に一致した。これらの結果は上記の解釈と一致する。図3は、厚み共振を示す圧電体の複素誘電率の周波数特性(計算値)を示すグラフである。ただし、破線は、前記のとおり、kt=0.3,h/2v=2.485×10−7(s),tanδm=0.04である。一方、実線は、kt=0.1,h/2v=8.300×10−7(s),tanδm=0.04である。
【0014】
以上のように、従来技術の問題点は、高調波を検出する際に、見掛けの電気機械結合係数が1/nにまで減少してしまうことにある。
【0015】
一方、医療用超音波診断装置において、高調波信号を用いた組織ハーモニックイメージング(THI)診断は、従来のBモード診断では得られない鮮明な診断像が得られることから、標準的な診断モダリティとなりつつある。このハーモニックイメージングのように使用する周波数が高くなると、サイドローブレベルが小さくなり、S/Nが良く、コントラスト分解能が良くなり、またビーム幅が細く横方向分解能が良くなり、さらに近距離では音圧が小さく、また音圧の変動が少ないので多重反射が起こらない等の多くの利点を有している。
【0016】
そこで、特許文献1では、超音波トランスデューサの各圧電素子で受信された信号が整相加算回路で加算された後、基本波帯域のフィルタと高調波帯域のフィルタとに共通に入力され、それらの出力に、被検体の診断領域の深さにそれぞれ応じたゲインで重み付けされた後、合成されることで、深い診断領域での高調波成分の減衰を基本波で補間するようにした超音波診断装置が提案されている。すなわち、高調波の受信にあたって、前記電気機械結合係数の低下をフィルタとアンプとを用いて補償している。
【0017】
同様に、特許文献2では、基本波用の圧電素子に高調波用の圧電素子を積層し、基本波用の圧電素子から送信超音波を放射し、該基本波用の圧電素子で受信した基本波の信号成分に、高調波用の圧電素子で受信された複数の高調波成分をそれぞれ帯域通過フィルタを通過させて所望の成分を抽出した後、個別にゲイン調整して加算することで、診断領域の深度に応じた信号を得るようにした超音波診断装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2002−11004号公報
【特許文献2】特許第4192598号公報
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】圧電材料学の基礎 石田拓郎著 オーム社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、上述の従来技術では、多数の圧電素子からの信号経路にフィルタやアンプを挿入する必要がある。
【0021】
本発明の目的は、所望高調波成分の送波時の出力音圧あるいは受波時の出力電圧が1次モードのそれらよりも大きくなるようにすることができる積層型圧電体およびこれを用いた超音波トランスデューサならびに積層型圧電体の作成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の積層型圧電体は、相互に厚みの等しい複数の圧電体を積層して成り、該圧電体の厚み伸縮によって生じる3λ/4共振による3次高調波成分の超音波を送受波する積層型圧電体であって、前記圧電体は3層積層されて、その層間および両端の圧電体の表面に電極を有し、前記両端の圧電体の表面に形成される電極に端子を接続することで、該各圧電体は相互に直列接続され、前記各圧電体は、圧電正効果による電気変位または電場の符号と関係する残留分極の向きあるいは結晶軸を、固定端側の第1段目の圧電体の軸を基準として、それに接する第2段目の圧電体では逆方向、さらにその上の第3段目の圧電体でも逆方向となるように配列されていることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の積層型圧電体の作成方法は、相互に厚みの等しい圧電体を複数積層して成り、該圧電体の厚み伸縮によって生じる3λ/4共振による3次高調波成分の超音波を送受波する積層型圧電体の作成方法であって、前記圧電体を3層積層し、各圧電体の層間および両端の圧電体の表面に形成される電極において、両端の圧電体の表面に形成される電極を端子に接続することで、前記各圧電体を相互に直列接続し、前記各圧電体を、圧電正効果による電気変位または電場の符号と関係する残留分極の向きあるいは結晶軸が、固定端側の第1段目の圧電体の軸を基準として、それに接する第2段目の圧電体では逆方向、さらにその上の第3段目の圧電体でも逆方向となるように配列することを特徴とする。
【0024】
上記の構成によれば、超音波診断装置の超音波トランスデューサなどとして用いられ、相互に厚みの等しい複数の圧電体を積層して成り、該圧電体の厚み伸縮により超音波の送波および受波の少なくとも一方を行う積層型圧電体およびその作成方法において、本願発明では、3λ/4共振による3次高調波成分の超音波を送受波する場合に、圧電体の積層枚数を3枚として各圧電体を直列接続し、かつ予め定める態様で(ある決まりに従い)、一部の圧電体について、その表裏を反転して積層する。
【0025】
具体的には、先ず、前記のように厚み方向に3層積層される各圧電体の層間および両端の圧電体の表面に形成される電極の内、両端の圧電体の表面に形成される電極を端子に接続することで、各圧電体を電気的に直列結合とする。
【0026】
次に、前記積層枚数を3枚とすることで、圧電体内を伝搬する弾性波の節と腹とを、該圧電体の境界面と一致させることができ、このときの該積層型圧電体内における前記3次高調波成分の歪み分布に着目すると、各圧電体の歪みが、絶対値が変わることなく位相が180度反転し、各圧電体が上記のように直列接続の場合、例えば基端(背後層)側の圧電体の歪みを+とすれば、「+,−,−」となる。そこで、前記予め定める態様として、各圧電体の残留分極、あるいは結晶のC軸やA軸の向き(d33,e33,d11,e11の符号を決める軸)を、前記歪み分布における電気変位や電場の符号と一致するように、不一致の箇所(「−」の符号に該当する)の圧電体について、その表裏を反転して積層する。上記の場合、固定端側の(背後層に接する)第1段目の圧電体の軸を基準として、それに接する第2段目の圧電体では逆方向、さらにその上の第3段目の圧電体でも逆方向に配列する。
【0027】
これによって、積層型圧電体における各圧電体を、圧電正効果による電気変位や電場の符号に一致させ、フィルタやアンプなどを用いることなく、λ/4共振の場合に比べて前記3次高調波成分の送波時の出力音圧あるいは受波時の出力電圧を大きくすることができるとともに、1次モードの信号を減衰させることができる。
【0028】
さらにまた、本発明の積層型圧電体は、相互に厚みの等しい圧電体を2層積層して成り、該圧電体の厚み伸縮によって生じる3λ/4共振による3次高調波成分の超音波を送受波する積層型圧電体であって、前記各圧電体は、その層間および各外表面に電極を有し、前記外表面の電極に端子を接続することで、該各圧電体は相互に直列接続され、前記両圧電体は、圧電正効果による電気変位または電場の符号と関係する残留分極の向きあるいは結晶軸を、互いに逆方向となるように配列されていることを特徴とする。
【0029】
また、本発明の積層型圧電体の作成方法は、相互に厚みの等しい圧電体を2層積層して成り、該圧電体の厚み伸縮によって生じる3λ/4共振による3次高調波成分の超音波を送受波する積層型圧電体の作成方法であって、前記各圧電体の層間および各外表面に形成される電極において、前記外表面の電極を端子に接続することで、前記各圧電体を相互に直列接続し、前記両圧電体を、圧電正効果による電気変位または電場の符号と関係する残留分極の向きあるいは結晶軸が、互いに逆方向となるように配列することを特徴とする。
【0030】
上記の構成によれば、超音波診断装置の超音波トランスデューサなどとして用いられ、相互に厚みの等しい圧電体を2層積層して成り、該圧電体の厚み伸縮により超音波の送波および受波の少なくとも一方を行う積層型圧電体およびその作成方法において、本願発明では、3λ/4共振による3次高調波成分の超音波を送受波する場合に、前記2層の圧電体を直列接続し、かつ2層の圧電体について、残留分極の向きあるいは結晶軸を、互いに逆方向に積層する。
【0031】
具体的には、先ず、前記のように厚み方向に2層積層される圧電体の層間および外表面に形成される電極の内、外表面の電極を端子に接続することで、2層の圧電体を電気的に直列結合とする。
【0032】
次に、前記2層の圧電体を3λ/4共振させると、該2層の圧電体内を伝搬する弾性波の節と腹とが、該2層の圧電体の境界面と一致せず、このためこのときの該積層型圧電体内における前記3次高調波成分の歪み分布に着目すると、該2層の圧電体の歪みの絶対値に差が生じるとともに、位相が180度反転し、基端(背後層)側の圧電体の歪みを+とすれば「+,−」となる。そこで、直列接続で、互いに逆方向に積層することで、それらの歪みの加算を取ると、3λ/4、すなわち3次高調波については、極性が反転して大きなゲインを得ることができるものの、基本波については、減衰させることができる。
【0033】
したがって、前記2層の圧電体の残留分極、あるいは結晶のC軸やA軸の向き(d33,e33,d11,e11の符号を決める軸)が、前記のように互いに同方向となるように配列することで、フィルタやアンプなどを用いることなく、λ/4共振の場合に比べて前記3λ/4共振による3次高調波成分の送波時の出力音圧あるいは受波時の出力電圧を大きくすることができるとともに、1次モードの信号を減衰させることができる。
【0034】
さらにまた、本発明の積層型圧電体は、相互に厚みの等しい圧電体を4層以上に積層して成り、該圧電体の層間および両端の表面に電極を有し、前記両端の圧電体表面の電極に端子を接続することで、前記積層の圧電体を相互に直列接続し、前記各圧電体は、圧電正効果による電気変位または電場の符号と関係する残留分極の向きあるいは結晶軸を、固定端側の第1段目の圧電体の軸を基準として、それに接する第2段目の圧電体およびさらにその上の第3段目の圧電体では逆方向、さらにその上の第4段目の圧電体では同方向となる周期性を持つように配列されていることを特徴とする。
【0035】
また、本発明の積層型圧電体の作成方法は、相互に厚みの等しい圧電体を4層以上に積層して成る積層型圧電体の作成方法であって、積層された各圧電体の層間および両端の圧電体の表面に形成される電極において、前記両端の圧電体表面の電極を端子に接続することで、前記積層の圧電体を相互に直列接続し、前記各圧電体を、圧電正効果による電気変位または電場の符号と関係する残留分極の向きあるいは結晶軸が、固定端側の第1段目の圧電体の軸を基準として、それに接する第2段目の圧電体およびさらにその上の第3段目の圧電体では逆方向、さらにその上の第4段目の圧電体では同方向となる周期性を持つように配列することを特徴とする。
【0036】
上記の構成によれば、超音波診断装置の超音波トランスデューサなどとして用いられ、相互に厚みの等しい複数の圧電体を積層して成り、該圧電体の厚み伸縮により超音波の送波および受波の少なくとも一方を行う積層型圧電体およびその作成方法において、本願発明では、3次以上の共振モードで超音波を送受波する場合に、圧電体を4層以上積層して各圧電体を直列接続し、かつ予め定める態様で(ある決まりに従い)、一部の圧電体について、その表裏を反転して積層する。
【0037】
具体的には、先ず、前記のように厚み方向に複数積層される各圧電体の層間および両端の圧電体の表面に形成される電極の内、両端の圧電体の表面に形成される電極を端子に接続することで、各圧電体を電気的に直列結合とする。
【0038】
次に、前記積層枚数を前記共振モードの次数枚またはその整数倍とした場合、圧電体内を伝搬する弾性波の節と腹とを、該圧電体の境界面と一致させることができ、このときの該積層型圧電体内における前記所望高調波成分の歪み分布に着目すると、各圧電体の歪みが、絶対値が変わることなく位相が180度反転し、各圧電体が上記のように直列接続の場合、例えば基端(背後層)側の圧電体の歪みを+とすれば、「+,−,−,+」の周期性を4層おきに繰返す。そこで、前記予め定める態様として、各圧電体の残留分極、あるいは結晶のC軸やA軸の向き(d33,e33,d11,e11の符号を決める軸)を、前記歪み分布における電気変位や電場の符号と一致するように、不一致の箇所(「−」の符号に該当する)の圧電体について、その表裏を反転して積層する。上記の場合、固定端側の(背後層に接する)第1段目の圧電体の軸を基準として、それに接する第2および第3段目の圧電体では逆方向、さらにその上の第4段目の圧電体では同方向に配列する。そして、圧電体が前記次数の整数倍積層される場合は、それ以後4層の圧電体毎に、同方向、逆方向、逆方向、同方向の周期性を持つように配列する。
【0039】
これによって、積層型圧電体における各圧電体を、圧電正効果による電気変位や電場の符号に一致させ、フィルタやアンプなどを用いることなく、λ/4共振の場合に比べて前記4次以上の所望高調波成分の送波時の出力音圧あるいは受波時の出力電圧を大きくすることができるとともに、1次モードの信号を減衰させることができる。
【0040】
さらにまた、本発明の超音波トランスデューサは、前記の積層型圧電体を用いることを特徴とする。
【0041】
上記の構成によれば、フィルタやアンプなどを用いることなく、λ/4共振の場合に比べて、高調波成分の送波時の出力音圧あるいは受波時の出力電圧を大きくすることができるとともに、1次モードの信号を減衰させることができる超音波トランスデューサを実現することができる。
【0042】
また、本発明の積層型圧電体の作成方法は、複数の圧電体を積層して成り、該圧電体の厚み伸縮により高次共振モードで所望高周波の超音波を送受波する積層型圧電体の作成方法であって、前記圧電体の積層枚数を前記共振モードの次数枚またはその整数倍とし、かつその次数枚での積層型圧電体内の歪み分布に着目し、圧電体の圧電正効果による電気変位または電場の符号と関係する残留分極の向きあるいは結晶軸を、前記歪み分布における電気変位または電場の符号と一致するように、前記複数の圧電体の一部について、その表裏を反転して積層することを特徴とする。
【0043】
上記の構成によれば、超音波診断装置の超音波トランスデューサなどとして用いられ、複数の圧電体を積層して成り、該圧電体の厚み伸縮により超音波の送波および受波の少なくとも一方を行う積層型圧電体を作成(積層)するにあたって、従来から圧電体を積層する手法は多く報告されているが、単に各圧電体の残留分極、あるいは結晶のC軸やA軸の向き(d33,e33,d11,e11の符号を決める軸)が相互に同じ方向となるように積層していたのに対して、本願発明では、高次共振モードで所望高周波の超音波を送受波する場合に、圧電体の積層枚数を前記共振モードの次数枚とし、かつ予め定める態様で(ある決まりに従い)、一部の圧電体について、その表裏を反転して積層する。前記予め定める態様は、前記の次数の高調波を受波する際の該積層型圧電体内の歪み分布に着目し、前記残留分極の向きあるいは結晶軸を、前記歪み分布における電気変位や電場の符号と一致するように、不一致の箇所の圧電体について、その表裏を反転して積層することである。具体的には、特に各圧電体の厚みを相互に等しくした場合、前記積層枚数と共振モードの次数とを一致させることで、圧電体内を伝搬する弾性波の節と腹とを、該圧電体の境界面と一致させることができ、このときの各圧電体における前記所望高周波成分の歪みが、絶対値が変わることなく位相が180度反転し、各圧電体が直列接続の場合、例えば基端(背後層)側の圧電体の歪みを+とすれば、4次高調波の場合で、「+,−,−,+」の周期性を4層おきに繰返し、3次高調波の場合で、「+,−,−」の周期性を3層おきに繰返す。そこで、「−」の符号に該当する圧電体の表裏を反転させておくことで、前述のように圧電正効果による電気変位や電場の符号を一致させることができる。なお、前記4層や3層おきに周期性を繰返すので、圧電体の積層枚数は、共振モードの次数枚の整数倍であればよい。また、各圧電体の厚みは必ずしも同じでなくてもよく、ただし境界で前記節または腹となるような厚みに設定すればよい。
【0044】
これによって、フィルタやアンプなどを用いることなく、λ/4共振の場合に比べて前記4次以上の所望高調波成分の送波時の出力音圧あるいは受波時の出力電圧を大きくすることができるとともに、1次モードの信号を減衰させることができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明の積層型圧電体およびこれを用いた超音波トランスデューサならびに積層型圧電体の作成方法は、以上のように、所望の高調波成分の超音波を送受波するにあたって、厚み方向に伸縮を行う複数の圧電体を厚み方向に積層して積層型圧電超音波トランスデューサを構成し、前記各圧電体を直列接続するにあたって、該積層型圧電体内における前記高調波成分の歪み分布に着目して、各圧電体の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の向きを、一部を逆方向に配置する。
【0046】
それゆえ、フィルタやアンプなどを用いることなく、λ/4共振の場合に比べて、所望高調波成分の送波時の出力音圧あるいは受波時の出力電圧を大きくすることができるとともに、1次モードの信号を減衰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】圧電体の厚み伸縮モードでの等価回路図である。
【図2】1MHzに厚み共振の1次モードを示す圧電体の複素誘電率の周波数特性を示すグラフである。
【図3】前記図2に示す圧電体における3次高調波成分と、3MHzに厚み共振の1次モードを示す圧電体との複素誘電率の周波数特性を示すグラフである。
【図4】3層圧電体トランスデューサにおけるλ/4共振状態の模式的な断面図である。
【図5】図4で示す3層圧電体トランスデューサにおける3λ/4共振状態の模式的な断面図である。
【図6】n層圧電体トランスデューサの模式的な断面図である。
【図7】図6に示したn層圧電体トランスデューサでn次高調波を励振あるいは検出する際の変位と歪みとを模式的に示す図である。
【図8】図7に示す積層圧電体で、n次高調波を検出する際の各々の圧電体の残留分極、あるいは結晶のC軸やA軸の向きと、圧電正効果による電場との関係を示す図である。
【図9】図8で示す本発明の考え方に従う詳細な実施例の一例であり、2層圧電体トランスデューサの構造を模式的に示す断面図である。
【図10】図9で示す2層圧電体トランスデューサにおける高調波送受波時の変位と歪みとを説明するための図である。
【図11】図9および図10に示す積層圧電体で、3次高調波を検出する際の各々の圧電体の残留分極の向きと、圧電正効果による電場との関係を示す図である。
【図12】図9に示す2層圧電体およびその比較例による超音波の送受波特性について、実験データおよびシミュレーション結果を示すグラフである。
【図13】図8および図5で示す本発明の考え方に従う詳細な実施例の他の例であり、3層圧電体トランスデューサの構造を模式的に示す断面図である。
【図14】図13で示す3層圧電体トランスデューサにおける高調波送受波時の変位と歪みとを説明するための図である。
【図15】図13および図14に示す積層圧電体で、3次高調波を検出する際の各々の圧電体の残留分極の向きと、圧電正効果による電場との関係を示す図である。
【図16】図15に示す3層圧電体による超音波の送受波特性について、実験データおよびシミュレーション結果を示すグラフである。
【図17】図15に示す3層圧電体の比較例による超音波の送受波特性について、実験データおよびシミュレーション結果を示すグラフである。
【図18】図8で示す本発明の考え方に従う詳細な実施例のさらに他の例であり、6層圧電体トランスデューサの構造を模式的に示す断面図である。
【図19】図18に示す積層圧電体で、3次高調波を検出する際の各々の圧電体の残留分極の向きと、圧電正効果による電場との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
先ず、本発明の詳細な実施の形態を説明する前に、本発明の考え方を説明する。本発明は、同じ厚みの圧電体をある決まりに従い積層することによって、3次以上の高調波を効率良く送受波することができるという本件発明者の知見によるものである。圧電体を積層する手法はこれまで多く報告されているが、本発明は、高調波を送受波する際に圧電体内に歪み分布があることに着目したものである。
【0049】
一例として、最も理解し易いと思われる図4に示す3枚の圧電体A1,A2,A3を積層したλ/4振動子について説明する。この、λ/4振動子のλ/4での励振状態では、前記3枚の圧電体A1,A2,A3が同期して伸縮を行い、全体で最大ΔZの伸縮を行うものとする。そして、固定端、すなわち前記の40MRayl.より小さいものの、充分大きい音響インピーダンスを有する背後層に接する1層目の圧電体A1の裏面の座標をz0とすると、前記伸縮に伴うその位置の変位は、z0=ΔZSsin0°=0である。これに対して、1層目の圧電体A1の表面の座標z1の変位は、z1=ΔZSsin30°=0.5ΔZとなり、2層目の圧電体A2の表面の座標z2の変位は、z2=ΔZSsin60°=0.85ΔZとなり、自由端、すなわち前記の0より大きいものの、充分小さい音響インピーダンスを有する空間と接する3層目の圧電体A3の表面の座標z3の変位は、z3=ΔZSsin90°=1.0ΔZとなる。ここで、圧電体A1,A2,A3の表裏は、該圧電体を厚み方向に加圧して、+の電圧が発生する方を表、−の電圧が発生する方を裏とする。
【0050】
すなわち、図4の3層の圧電体A1,A2,A3の場合、全体の伸縮ΔZの内、固定端側の圧電体A1は、0.5ΔZの伸縮を受け持ち、2層目の圧電体A2は、0.35ΔZの伸縮を受け持ち、3層目の圧電体A3は、0.15ΔZしか伸縮しないことになる。このように積層型圧電体は、基本波のλ/4共振では、各圧電体A1,A2,A3は同期して(同じ方向に)伸縮を行うものの、各圧電体A1,A2,A3が一様に伸縮するのではなく、不均一な歪み分布を有する。
【0051】
一方、同様の積層圧電体を3λ/4共振させると、図5で示すようになる。すなわち、1層目の圧電体A1の裏面の座標z0は、z0=ΔZsin0°=0であり、1層目の圧電体A1の表面の座標z1の変位は、z1=ΔZsin90°=ΔZとなり、2層目の圧電体A2の表面の座標z2の変位は、z2=ΔZsin180°=0となり、3層目の圧電体A3の表面の座標z3の変位は、z3=ΔZsin270°=−ΔZとなる。したがって、1層目の圧電体A1はΔZの伸びを行っているのに対して2層目および3層目の圧電体A2,A3は、ΔZの縮みとなっている。
【0052】
そこで本件発明者は、このような不均一な歪み分布に着目し、各圧電体の残留分極(PZT,PVDFなどの強誘電体)、あるいは結晶(水晶など)のC軸やA軸の向き(d33,e33,d11,e11の符号を決める軸)を、高調波送受信時の歪み分布における電気変位や電場の符号と一致するように、不一致の箇所(「−」の符号に該当する)の圧電体について、その表裏を反転して積層するようにした。図4および図5の場合には、その左側の矢印で示すように、2層目および3層目の圧電体A2,A3を、1層目の圧電体Aとは前記残留分極の向きあるいは結晶軸が逆方向となるように積層する。これによって、基本波λの成分が、0.5・ΔZ+0.35・(−ΔZ)+0.15・(−ΔZ)=0となって除去されると同時に、3次高調波3λの成分は、1・ΔZ+(−1)・(−ΔZ)+(−1)・(−ΔZ)=3ΔZとなって抽出することが可能となる。
【0053】
一方、図6を用いて、n枚(nは4以上の整数)の圧電体を積層したλ/4振動子において、n次高調波を送受波する場合を説明する。モデルを単純化するため、積層膜の一端を基盤に固定し、もう一端を自由端とした。インピーダンス整合層や背後(バッキング)層など、さらに接着層の厚み等による影響は除くものとする。
【0054】
図7は、図6に示したn層圧電体トランスデューサで、n次高調波を励振あるいは検出する際の変位と歪みとを模式的に示す図である。(a)は積層状況、(b)はある瞬間での各層の変位、(c)は歪の極性である。前述の図4や図5と同様に、基盤とそれに接する圧電体との境界面を原点z0として、素子の高さ(厚み)方向の座標をz1,z2,z3,・・・,znとする。積層圧電体内で、各圧電体層の変位は、背後層と第1段目の圧電体1の境界とを原点z0とした正弦波を形成する。
【0055】
一般に、厚み方向にn倍波(n≧1)が励振された場合、高さzにおける変位ξ(z)は、
ξ(z,t)=ξ0sin(nπ/2・z/h)(cosnωrt+θ)…(11)
となることが知られている(基礎物理学選書8 振動・波動 有山正孝著 裳華房)。ここで、ωrは積層圧電体の共振周波数2πfr,θは、電圧あるいは音波を受ける際の応力と変位との位相差である。係数ξ0sin(nπ/2・z/h)は、高さzにおける変位の振幅を意味する。以下、時間項は省略する。
【0056】
この場合、座標z1での変位ξ(z1)は、
ξ(z1)=ξ0sin(nπ/2・z/h) …(12)
である。ここで、変位ξ(z)と歪みSとの関係は、
dS=dξ/dz …(13)
なので、第m層の圧電体の歪みSmは、
Sm=[ξ(zm)−ξ(zm−1)]/(zm−zm−1) …(14)
と書ける。ただし、m=1〜n、z0=0である。
【0057】
したがって、圧電体1の歪みS1は、
S1=Δh1/h1=ξ0sin(nπ/2・h1/h)/h1 …(15)
となる。ここで、Δh1は圧電体1の厚み変化で、ξ(z1)−ξ(z=0),h1は圧電体1の厚みである。圧電体2についても同様に、歪みS2は、
S2=Δh2/h2
=ξ0{sin(nπ/2・(h1+h2)/h)
−sin(nπ/2・h1/h)}/h2 …(16)
となる。第m層の圧電体の歪みSmは、
Sm=Δhm/hm
=ξ0{sin(nπ/2・zm/h)−sin(nπ/2・zm−1/h)}/hm
…(17)
となる。
【0058】
上式(17)は、第m層にある圧電体の歪みが、sin(np/2・zm/h)−sin(np/2・zm−1/h)で決まり、前述のように一様に伸縮しないことを意味する。したがって、その項の符号が正になる圧電体と負になる圧電体とで、圧電体の表裏を反転させれば、圧電正効果による電気変位あるいは電場の符号を一致させることができ、圧電素子のn次高調波の電気信号を効率良く得られることが理解される。
【0059】
さらに、各圧電体の厚みを等しくすれば、
zm=(m/n)h,zm−1=(m−1/n)h,hm=h/m …(18)
と単純化できる。これを式(17)に代入すると、
Sm=mξ0{sin(mπ/2)−sin[(m−1)π/2]}/h …(19)
となる。
【0060】
次に、電気系について考える。第m層の圧電体が圧電正効果によって生じる電気変位(単位電極面積当りの電荷)Dmは、
Dm=e33SmまたはDm=d33Sm=d33sTm …(20)
である。ここで、sは圧電体の弾性コンプライアンスである。
【0061】
一方、第m層の圧電体に圧電正効果によって生じる電位Em(単位厚み当りの電圧)は、
Em=(e/ε)SmまたはEm=(d/ε)Sm=(ds/ε)Tm …(21)
である。ここで、εは圧電体の誘電率である。
【0062】
これに対して、各々の圧電体を電気的に直列結合すれば、積層圧電体が出力する正味の電場ETotalは
【数1】
となる。したがって、積層圧電体の容量はC/nとなり、電気インピーダンスは圧電体1層のn倍に増加する。
【0063】
本願発明者は、上式(19),(22)から、単純な直列結合において、積層圧電体が出力する正味の電場が最大となる残留分極あるいは結晶C軸やA軸の配列の規則性を見出した。また、前記積層数nが4以上で、該積層数nと高調波の次数とを一致させれば、圧電体内を伝搬する弾性波の節と腹とを圧電体の境界面と一致させることができ、このとき各圧電体の歪みが絶対値が変わることなく位相が180度反転し、例えば各圧電体が直列の図7の場合、圧電体1の歪みを+とすれば「+,−,−,+」の周期性を4層おきに見出すことができ、n次高調波の検出をより効率良く行うことができることを見出した。このことを理論説明すると以下のようになる。
【0064】
図8に、本発明における、n層圧電体で、n次高調波を検出する際の各々の圧電体の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の向きと、圧電正効果による電場(V/m)との関係の一例を示す。各圧電体の層間および両端の圧電体の表面には電極が設けられており、前記両端の電極を端子に接続し、各圧電体を直列接続している。また、残留分極(それを持たない圧電体の場合は結晶のC軸(水晶の場合はA軸))は、z軸方向に配向されている。図中では便宜上、圧電体1の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の方向を+Pと表記している。これは他の圧電体の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸が圧電体1のそれと同方行か逆方行かを識別するためであり、圧電体1の分極方向を制限するものではない。
【0065】
前述の図7(c)に示したように、各圧電体の歪みには、周期性がある。そのため、残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の向きを平行とした場合、本発明の目的であるn次高調波における圧電体の効率を上げるためには、各々の電極を電気的に絶縁し、独立して配線しなければならなく、構造上かつ製造上のリスクは極めて高い。
【0066】
しかしながら本発明によれば、図8に示す直列接続の場合に、4層毎の圧電体の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸に、前記のように「+P,−P,−P,+P」の周期性を与えた、すなわち背後層に接する第1段目の圧電体の軸を基準として、それに接する第2段目の圧電体およびさらにその上の第3段目の圧電体では逆方行、さらにその上の第4段目の圧電体ではでは同方行とし、それ以後4層の圧電体毎に、同方向、逆方行、逆方行、同方行の周期性を持つように配列すれば、容易に前記n次高調波に対する受信感度を、単層の圧電体に比べて、n倍に増幅することができる。このとき、隣接する圧電体で、前記残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の方向が同方向の箇所が存在するが(図8では、第2および第3段目、第4および第5段目、第6および第7段目)、それらの箇所では、それぞれの厚みを加算した厚みを有する1つの圧電体に置換えることができる。
【0067】
上述ではn次高調波を検出する場合を例として挙げたが、逆にn次高調波を送波する場合についても、図8において端子間に発振器を接続することで、従来よりも効率が向上する。送波の場合、歪みSと印加電場Eとの関係は、
S=dEあるいはS=(e/c)E …(23)
である。図8に示す積層圧電体の両端子間に電圧発生器を繋げ、n次高調波に相当する周波数の電圧を印加すれば、図8に示す歪みおよび図7(b)に示す変位を生じ、超音波を媒質中に励振させることができる。そして、先に述べた電気インピーダンスの関係から、本願発明の構造では、高電圧低電流駆動となる。
【実施例1】
【0068】
以下に、上述の考え方に従う本発明の詳細な実施例を説明する。先ず第1の実施例として、図9に示す2層圧電体トランスデューサによる3λ/4高調波の検出について述べる。2層圧電体トランスデューサは積層圧電体の中でも最もシンプルな構造である。この場合、送受波に用いる高調波の次数と積層枚数とは一致しない。しかしながら、本発明を以下のように適用することにより、送受波の効率を上げることができる。
【0069】
すなわち、図9の圧電体1および圧電体2の歪みS1,S2は、
S1=Δh1/h1=ξ0sin(nπ/2・h1/h)/h1 …(24)
S2=Δh2/h2
=ξ0{sin(nπ/2)−sin(nπ/2・h1/h)}/h2…(25)
となる。ここでhは積層圧電体の高さ、h1とh2とは各圧電体の高さで、h1=h2=h/2である。
【0070】
3λ/4共振倍波に対する応答は、n=3で与えられる。その場合の歪みS13ω,S23ωは、
S13ω
=2ξ03ωsin(3π/4)/h=2(ξ03ω/21/2)/h …(26)
S23ω
=2ξ03ω{sin(3π/2)−sin(3π/4)}/h
=−2ξ03ω(1+1/21/2)/h …(27)
となる。添字3ωは、3倍波における変位を示す。ここで、1/21/2≒0.7と近似すると、これらの式は、3倍波では圧電体2の歪みと圧電体1の歪みとでは振幅比が−1.7:+0.7となることを示す。
【0071】
そのような各圧電体の変位と歪みの符号とを図10に示す。(a)は変位であり、(b)は歪みである。圧電体1と圧電体2との歪み比は、(b)に示すとおりである。各圧電体の歪みの絶対値が一致しないのは、前述のように各圧電体の境界と変位の節と腹とが一致しないためである。
【0072】
そこで図11に示すように各端面の電極を端子に接続して直列結合とすれば、積層圧電体の電気インピーダンスは1つの圧電体のインピーダンスの2倍となるものの、圧電正効果による電場E1,−13ωは、圧電体1の残留分極の向きあるいは結晶のC軸やA軸の向きと圧電体2のそれらの向きを同方行とすれば、一方の極性が反転して足し合わされ、
E1,−13ω=2(1+21/2)eξ03ω/εh …(28)
となる。
【0073】
一方、基本波に対する応答は、式(24)および(25)でn=1の場合に理解できる。すなわち歪みS1ωとS2ωとは、
S1ω=2ξ0ωsin(π/4)/h=2(ξ0ω/21/2)/h …(29)
S2ω=2ξ0ω{sin(π/2)−sin(π/4)}/h
=2ξ0ω{1−1/21/2}/h …(30)
となる。
【0074】
ここで図11に示すような直列結合を行い、残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の向きを同方行とした場合、電場E1,−1ωは、
E1,−1ω=2eξ0ω(21/2−1)/h …(31)
となる。ここで、添え字の1は、各圧電体の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の向きに対応し、左から圧電体1、圧電体2の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の向きを示している。
【0075】
以上の結果から、各圧電体の歪みを考慮し、直列接続の場合、残留分極あるいは結晶のC軸やA軸方向を逆方向とすることで、3λ/4波に対しては2.4倍感度を増幅することができ、同時にλ/4波に対しては0.4倍に感度を落とすことができる。したがって、2層圧電体から成る超音波トランスデューサへ本発明を適用すれば、3λ/4共振による信号を高S/N比で送受波することが可能となる。
【0076】
図12は、P(VDF/TrFE)を用いた2層圧電体からなる超音波トランスデューサの送受波感度特性の実験結果ならびにシミュレーション結果である。実線は実験結果、破線はシミュレーション結果である。圧電体は直列結合としており、しかもλ/4共振周波数は7MHz、3λ/4共振周波数はおよそ20MHzである。(a)は本発明に基づき分極方向を逆方行とした場合、(b)は参考に同方行とした場合の結果である。(a)に示すように、本発明に基づく分極方向によると、20MHzに見られる3λ/4共振ピークが、7MHzにみられるλ/4共振ピークよりも大きく、(b)に示す結果と比較すると、3λ/4共振ピークは20dB増加している。このように2層圧電体に対しても本発明の手法に基づき、分極方向を工夫することで、3次高調波成分を増加させると同時に、基本波成分を減衰させることができる。
【実施例2】
【0077】
続いて、3層圧電体トランスデューサによる3次高調波の検出について述べる。図13に模式構造図を示す。このトランスデューサも、積層圧電体の一端を基盤に固定し、もう一端を自由端としたλ/4振動子としている。
【0078】
先ず、本発明に基づく設計プロセスを述べる。前述と同様に基盤と圧電体1との境界を原点として、素子の高さ(厚み)方向の座標をzとする。次に、各々の圧電体が生じる歪みSについて考える。基盤側から順に圧電体1、圧電体2、圧電体3とする。座標zは、基盤と圧電体1との境界ではz=0、圧電体1と圧電体2との境界ではz1、圧電体2と圧電体3との境界ではz2、圧電体3の端部をz3とする。また、圧電体1の厚みをh1、圧電体2の厚みをh2、圧電体3の厚みをh3とし、積層圧電体の高さをhとする。
【0079】
すると、座標z1における変位ξ(z1)は、
ξ(z1)=ξ0sin(nπ/2・z1/h) …(32)
なので、圧電体1の歪みS1は、
S1=Δh1/h1=ξ0sin(nπ/2・h1/h)/h1 …(33)
となる。同様に、圧電体2および3については、
S2=Δh2/h2
=ξ0{sin(nπ/2・(h1+h2)/h)−sin(nπ/2・h1/h)}/h2
…(34)
S3=Δh3/h3
=ξ0{sin(nπ/2)−sin(nπ/2・(h1+h2)/h)}/h3
…(35)
となる。
【0080】
そして、3λ/4共振時の各圧電体の歪みは、上式(33)〜(35)においてn=3で与えられる。各圧電体の厚みが等しく、すなわち上式でh1=h2=h3=h/3の場合、各圧電体の歪みS13ω,S23ω,S33ωは、
S13ω=Δh13ω/h1=3ξ03ωsin(π/2)/h)
=3ξ03ω/h …(36)
S23ω=Δh23ω/h2
=3ξ03ω{sin(π)−sin(π/2)}/h
=−3ξ03ω/h …(37)
S33ω=Δh33ω/h3
=3ξ03ω{sin(3π/2)−sin(π)}/h
=−3ξ03ω/h …(38)
となる。ここで、添え字3ωは3次高調波における応答を意味する。これらの式から3λ/4共振では圧電体2および圧電体3の歪みと、圧電体1の歪みとが逆位相であることを示す。
【0081】
各圧電体の変位と歪みの符号とを図14に示す。(a)は変位であり、(b)は歪みである。本実施例は、3次高調波の送受で、圧電体が3枚積層であるので、(a)および前述の図5で示すように、変位の節と腹とは、各圧電体の境界と一致する。このとき各圧電体の歪みは、圧電体1の歪みを+とすると、(b)および前述の図5で示すように、圧電体2および3の歪みを−として符号化することができる。
【0082】
以上の力学系の振る舞いに基づき、電気系の最適構造を導く。図15に示すように、両端の電極から配線を引き出し、端子に接続することで、各圧電体を電気的に直列結合している。そして、圧電体1の残留分極の向きあるいは結晶のC軸やA軸の向きを基準(+P)として、圧電体2および圧電体3の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の向きを逆方行(−P)とすれば、圧電正効果により生じる電場が足し合わされ、積層圧電体の両端子間に生じる電場E1,−1,−13ωは、
E1,−1,−13ω=(e/ε)S1−(e/ε)(S2+S3)
=9eξ03ω/εh …(39)
となる。ここで、添え字の1および−1は、各圧電体の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の向きに対応し、左から圧電体1、圧電体2そして圧電体3の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の向きを示している。なお、圧電体2と圧電体3との分極の向きが平行なので、厚み2hの圧電体に置き換えることができる。
【0083】
そして、λ/4共振に対する応答は、n=1で与えられ、各圧電体の歪みS1,S2,S3は、
S1=Δh1/h1=3ξ0sin(π/6)/h …(40)
S2=Δh2/h2
=3ξ0{sin(π/3)−sin(π/6)}/h …(41)
S3=Δh3/h3
=3ξ0{sin(π/2)−sin(π/3)}/h …(42)
すなわち、
S1=S2+S3 …(43)
となる。
【0084】
一方、図15に示す直列接続で、λ/4共振に対する電場E1,−1,−1ωは、
E1,−1,−1ω=(e/ε)(S1+S2+S3)=0 …(44)
であり、本実施例の3層圧電体から成るトランスデューサでは、λ/4共振に基づく感度が打ち消されることを示す。
【0085】
比較として、単に残留分極あるいは結晶のC軸やA軸を平行とした3層圧電体による3次高調波の送受波について述べる。3λ/4共振において積層圧電体が圧電正効果により生じる電場E1,1,13ωは、
E1,1,13ω=(e/ε)(S1+S2+S3)
=−3eξ03ω/εh …(45)
となる。したがって、本実施例では、上式(45)に示すとおり、直列接続において端子間の電場を、3倍(約10dB)向上できることが理解される。
【0086】
以下、図15に示した3層圧電体による超音波の送受波特性について、実験データおよびシミュレーション結果を図16に示す。実験では代表的な強誘電性ポリマーであるフッ化ビニリデンと三フッ化エチレンの共重合体(P(VDF/TrFE))を用いた。超音波トランスデューサの構造模式図を図16の右図に示す。本発明に基づき3層圧電体を電気的に直列結合し、さらに分極の向きを図15に示したものと同じとした。3層圧電体の高さはおよそ120μmで、λ/4共振周波数は4.5MHzである。左図の実線は実験結果、破線はシミュレーション結果である。
【0087】
図16から、20MHz以下では、それぞれ共振周波数に対応する4.5MHz付近にピークを示さず、λ/4共振ピークが消失している。したがって、本実施例のトランスデューサにおける第1のピークは、それの3λ/4共振である13.5MHzとなっていることが理解される。
【0088】
比較例として、図17に圧電体2と3の残留分極の向きを図16とは反対にした積層圧電体の特性を示す。左図に示すように、この3層圧電体は、λ/4共振である4.5MHzと、その3次高調波成分である13.5MHzとに共にピークを示し、しかも3次高調波成分の感度は、−50〜−60dB程度であり、図16に示した本実施例の結果に比べて、10〜20dB程度小さいことが理解される。これらの実験結果からも、本発明の手法に基づき分極方向を工夫することで、3次高調波成分を増加させると同時に基本波成分を減衰させることが可能であることが理解される。
【0089】
以上のように、第2の実施例では、3層圧電体を用いて3次高調波を送受波する手法を述べたが、ここでは積層圧電体の高調波の次数と積層枚数とを一致させることにより、(i)圧電体の境界面を圧電体の弾性波の節と腹とに一致させて各圧電体の振動様式を符号化して理解でき、その符号に基づき、(ii)各圧電体の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の向きを適宜同方行または逆方行とすることで、各圧電体の残留分極あるいは結晶のC軸やA軸の向きを単純に同方行にした場合と比べ、3λ/4波の送受波時に感度を3倍(約10dB)以上増加することができるだけでなく、λ/4波を打ち消すフィルタとしての機能も有することができる。以上のように3λ/4波を選択的にかつ高S/N比で送受波する場合、本発明は極めて有効である。これによって、受波の場合には帯域分離フィルタやアンプを削減することができる。あるいは、削減まで至らなくても、フィルタの場合は次数を削減して損失を抑え、アンプの場合はゲインを小さくすることができる。
【実施例3】
【0090】
第3の実施例は、同じ厚さの圧電体を6層積層したトランスデューサによる3次高調波の送受である。本実施例は、第2の実施例で示した3層圧電体において各圧電体を2つの圧電体に分割したものである。
【0091】
図18は、その6層圧電体の構造を示し、3次高調波を送受波する際の変位および歪みを模式的に示す断面図である。図7と同様に、(a)は積層状況、(b)はある瞬間での各層の変位、(c)は歪みの係数である。
【0092】
各圧電体の歪みS1,S2,S3,S4,S5,S6は、
S1=6ξ0sin(π/4)/h=6ξ0(1/21/2) …(46)
S2=6ξ0{sin(π/2)−sin(π/4)}/h
=6ξ0(1−1/21/2) …(47)
S3=6ξ0{sin(3π/4)−sin(π/2)}/h
=6ξ0(1/21/2−1) …(48)
S4=6ξ0{sin(π)−sin(3π/4)}/h
=6ξ0(−1/21/2) …(49)
S5=6ξ0{sin(5π/4)−sin(π)}
=6ξ0(−1/21/2) …(50)
S6=6ξ0{sin(3π/2)−sin(5π/4)}
=6ξ0(1/21/2−1) …(51)
となる。1/21/2≒0.7に近似すると、各圧電体の歪みの比は、図19の模式図に示すとおりとなる。
【0093】
そして、各圧電体を電気的直列結合とした場合の残留分極あるいは結晶のC軸またはA軸の好ましい配列を、図19に示す。このように構成することで、λ/4共振による感度は減衰し、3λ/4共振による感度が最大となる。
【0094】
本発明の積層型圧電体は、超音波診断装置における超音波トランスデューサに限らず用いることができ、たとえば魚群探知機などにも適用することができ、また送受信信号は超音波帯域に限らず、たとえば低周波のストレスを加えて発電を行うような構成にも適用することができる。
【符号の説明】
【0095】
A1〜A3 圧電体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に厚みの等しい複数の圧電体を積層して成り、該圧電体の厚み伸縮によって生じる3λ/4共振による3次高調波成分の超音波を送受波する積層型圧電体であって、
前記圧電体は3層積層されて、その層間および両端の圧電体の表面に電極を有し、前記両端の圧電体の表面に形成される電極に端子を接続することで、該各圧電体は相互に直列接続され、
前記各圧電体は、圧電正効果による電気変位または電場の符号と関係する残留分極の向きあるいは結晶軸を、固定端側の第1段目の圧電体の軸を基準として、それに接する第2段目の圧電体では逆方向、さらにその上の第3段目の圧電体でも逆方向となるように配列されていることを特徴とする積層型圧電体。
【請求項2】
相互に厚みの等しい圧電体を2層積層して成り、該圧電体の厚み伸縮によって生じる3λ/4共振による3次高調波成分の超音波を送受波する積層型圧電体であって、
前記各圧電体は、その層間および各外表面に電極を有し、前記外表面の電極に端子を接続することで、該各圧電体は相互に直列接続され、
前記両圧電体は、圧電正効果による電気変位または電場の符号と関係する残留分極の向きあるいは結晶軸を、互いに逆方向となるように配列されていることを特徴とする積層型圧電体。
【請求項3】
相互に厚みの等しい圧電体を4層以上に積層して成り、該圧電体の層間および両端の表面に電極を有し、
前記両端の圧電体表面の電極に端子を接続することで、前記積層の圧電体を相互に直列接続し、
前記各圧電体は、圧電正効果による電気変位または電場の符号と関係する残留分極の向きあるいは結晶軸を、固定端側の第1段目の圧電体の軸を基準として、それに接する第2段目の圧電体およびさらにその上の第3段目の圧電体では逆方向、さらにその上の第4段目の圧電体では同方向となる周期性を持つように配列されていることを特徴とする積層型圧電体。
【請求項4】
前記圧電体の厚み伸縮により3次以上の共振モードの超音波を送受波することを特徴とする請求項3記載の積層型圧電体。
【請求項5】
前記請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層型圧電体を用いることを特徴とする超音波トランスデューサ。
【請求項6】
相互に厚みの等しい圧電体を複数積層して成り、該圧電体の厚み伸縮によって生じる3λ/4共振による3次高調波成分の超音波を送受波する積層型圧電体の作成方法であって、
前記圧電体を3層積層し、
各圧電体の層間および両端の圧電体の表面に形成される電極において、両端の圧電体の表面に形成される電極を端子に接続することで、前記各圧電体を相互に直列接続し、
前記各圧電体を、圧電正効果による電気変位または電場の符号と関係する残留分極の向きあるいは結晶軸が、固定端側の第1段目の圧電体の軸を基準として、それに接する第2段目の圧電体では逆方向、さらにその上の第3段目の圧電体でも逆方向となるように配列することを特徴とする積層型圧電体の作成方法。
【請求項7】
相互に厚みの等しい圧電体を2層積層して成り、該圧電体の厚み伸縮によって生じる3λ/4共振による3次高調波成分の超音波を送受波する積層型圧電体の作成方法であって、
前記各圧電体の層間および各外表面に形成される電極において、前記外表面の電極を端子に接続することで、前記各圧電体を相互に直列接続し、
前記両圧電体を、圧電正効果による電気変位または電場の符号と関係する残留分極の向きあるいは結晶軸が、互いに逆方向となるように配列することを特徴とする積層型圧電体の作成方法。
【請求項8】
相互に厚みの等しい圧電体を4層以上に積層して成る積層型圧電体の作成方法であって、
積層された各圧電体の層間および両端の圧電体の表面に形成される電極において、前記両端の圧電体表面の電極を端子に接続することで、前記積層の圧電体を相互に直列接続し、
前記各圧電体を、圧電正効果による電気変位または電場の符号と関係する残留分極の向きあるいは結晶軸が、固定端側の第1段目の圧電体の軸を基準として、それに接する第2段目の圧電体およびさらにその上の第3段目の圧電体では逆方向、さらにその上の第4段目の圧電体では同方向となる周期性を持つように配列することを特徴とする積層型圧電体の作成方法。
【請求項9】
複数の圧電体を積層して成り、該圧電体の厚み伸縮により高次共振モードで所望高周波の超音波を送受波する積層型圧電体の作成方法であって、
前記圧電体の積層枚数を前記共振モードの次数枚またはその整数倍とし、かつその次数枚での積層型圧電体内の歪み分布に着目し、圧電体の圧電正効果による電気変位または電場の符号と関係する残留分極の向きあるいは結晶軸を、前記歪み分布における電気変位または電場の符号と一致するように、前記複数の圧電体の一部について、その表裏を反転して積層することを特徴とする積層型圧電体の作成方法。
【請求項1】
相互に厚みの等しい複数の圧電体を積層して成り、該圧電体の厚み伸縮によって生じる3λ/4共振による3次高調波成分の超音波を送受波する積層型圧電体であって、
前記圧電体は3層積層されて、その層間および両端の圧電体の表面に電極を有し、前記両端の圧電体の表面に形成される電極に端子を接続することで、該各圧電体は相互に直列接続され、
前記各圧電体は、圧電正効果による電気変位または電場の符号と関係する残留分極の向きあるいは結晶軸を、固定端側の第1段目の圧電体の軸を基準として、それに接する第2段目の圧電体では逆方向、さらにその上の第3段目の圧電体でも逆方向となるように配列されていることを特徴とする積層型圧電体。
【請求項2】
相互に厚みの等しい圧電体を2層積層して成り、該圧電体の厚み伸縮によって生じる3λ/4共振による3次高調波成分の超音波を送受波する積層型圧電体であって、
前記各圧電体は、その層間および各外表面に電極を有し、前記外表面の電極に端子を接続することで、該各圧電体は相互に直列接続され、
前記両圧電体は、圧電正効果による電気変位または電場の符号と関係する残留分極の向きあるいは結晶軸を、互いに逆方向となるように配列されていることを特徴とする積層型圧電体。
【請求項3】
相互に厚みの等しい圧電体を4層以上に積層して成り、該圧電体の層間および両端の表面に電極を有し、
前記両端の圧電体表面の電極に端子を接続することで、前記積層の圧電体を相互に直列接続し、
前記各圧電体は、圧電正効果による電気変位または電場の符号と関係する残留分極の向きあるいは結晶軸を、固定端側の第1段目の圧電体の軸を基準として、それに接する第2段目の圧電体およびさらにその上の第3段目の圧電体では逆方向、さらにその上の第4段目の圧電体では同方向となる周期性を持つように配列されていることを特徴とする積層型圧電体。
【請求項4】
前記圧電体の厚み伸縮により3次以上の共振モードの超音波を送受波することを特徴とする請求項3記載の積層型圧電体。
【請求項5】
前記請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層型圧電体を用いることを特徴とする超音波トランスデューサ。
【請求項6】
相互に厚みの等しい圧電体を複数積層して成り、該圧電体の厚み伸縮によって生じる3λ/4共振による3次高調波成分の超音波を送受波する積層型圧電体の作成方法であって、
前記圧電体を3層積層し、
各圧電体の層間および両端の圧電体の表面に形成される電極において、両端の圧電体の表面に形成される電極を端子に接続することで、前記各圧電体を相互に直列接続し、
前記各圧電体を、圧電正効果による電気変位または電場の符号と関係する残留分極の向きあるいは結晶軸が、固定端側の第1段目の圧電体の軸を基準として、それに接する第2段目の圧電体では逆方向、さらにその上の第3段目の圧電体でも逆方向となるように配列することを特徴とする積層型圧電体の作成方法。
【請求項7】
相互に厚みの等しい圧電体を2層積層して成り、該圧電体の厚み伸縮によって生じる3λ/4共振による3次高調波成分の超音波を送受波する積層型圧電体の作成方法であって、
前記各圧電体の層間および各外表面に形成される電極において、前記外表面の電極を端子に接続することで、前記各圧電体を相互に直列接続し、
前記両圧電体を、圧電正効果による電気変位または電場の符号と関係する残留分極の向きあるいは結晶軸が、互いに逆方向となるように配列することを特徴とする積層型圧電体の作成方法。
【請求項8】
相互に厚みの等しい圧電体を4層以上に積層して成る積層型圧電体の作成方法であって、
積層された各圧電体の層間および両端の圧電体の表面に形成される電極において、前記両端の圧電体表面の電極を端子に接続することで、前記積層の圧電体を相互に直列接続し、
前記各圧電体を、圧電正効果による電気変位または電場の符号と関係する残留分極の向きあるいは結晶軸が、固定端側の第1段目の圧電体の軸を基準として、それに接する第2段目の圧電体およびさらにその上の第3段目の圧電体では逆方向、さらにその上の第4段目の圧電体では同方向となる周期性を持つように配列することを特徴とする積層型圧電体の作成方法。
【請求項9】
複数の圧電体を積層して成り、該圧電体の厚み伸縮により高次共振モードで所望高周波の超音波を送受波する積層型圧電体の作成方法であって、
前記圧電体の積層枚数を前記共振モードの次数枚またはその整数倍とし、かつその次数枚での積層型圧電体内の歪み分布に着目し、圧電体の圧電正効果による電気変位または電場の符号と関係する残留分極の向きあるいは結晶軸を、前記歪み分布における電気変位または電場の符号と一致するように、前記複数の圧電体の一部について、その表裏を反転して積層することを特徴とする積層型圧電体の作成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−217160(P2011−217160A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84019(P2010−84019)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
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