積層型熱交換器
【課題】拡散接合時における加圧力が流体通路溝の溝底部にも充分に掛かるようにして高い接合性が得られる品質の高い積層型熱交換器を提供する。
【解決手段】流体通路溝2を所定間隔を置いて複数形成した平板金属プレート1の複数枚を、積層方向において前記流体通路溝2の向きが略直交するように交互に積層し拡散接合して形成されており、同一向きの流体通路溝2に流通する第1の冷媒と、それと直交する向きの流体通路溝2に流通する第2の冷媒とで熱交換される積層型熱交換器において、前記各流体通路溝2の溝底部5の略中央部5Aを支持するように、同一向きに流通する前記各流体通路溝2間に形成された支え部4がそれぞれ対応して配置されている。
【解決手段】流体通路溝2を所定間隔を置いて複数形成した平板金属プレート1の複数枚を、積層方向において前記流体通路溝2の向きが略直交するように交互に積層し拡散接合して形成されており、同一向きの流体通路溝2に流通する第1の冷媒と、それと直交する向きの流体通路溝2に流通する第2の冷媒とで熱交換される積層型熱交換器において、前記各流体通路溝2の溝底部5の略中央部5Aを支持するように、同一向きに流通する前記各流体通路溝2間に形成された支え部4がそれぞれ対応して配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば積層型熱交換器に関し、詳細には、各平板金属プレートの接合改善技術に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型熱交換器を製造する方法の一つとして、例えば図10に示すように、冷媒が流通する流体通路溝101aを片方の面に所定ピッチで複数形成した平板金属プレート101の複数枚を、その流体通路溝101aの形成方向が積層方向において直交するように交互に積み重ねた後、その積層体102を雰囲気ガス中で加熱して接合するいわゆる拡散接合により製造する方法が知られている(例えば、特許文献1など参照)。
【特許文献1】特開2004−181518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、拡散接合により製造される積層型熱交換器においては、マイクロチャンネル型のように小型化を図るために流体通路溝101aを微細流路とした場合、通路抵抗が大きくなる。これを低減するためには、図11に示すように、流体通路溝101aの流路幅Wを広げることで回避することはできる。しかし、拡散接合時に確実に接合するために積層した平板金属プレート101を上下方向から加圧するが流体通路溝101aの溝底部103に加圧力がうまく掛からず、この部位での接合不良が生じ易くなる。流体通路溝101aの流路幅Wが広くなる程、溝底部103に加圧力が掛かり難くなり益々接合不良が発生し易くなる。
【0004】
そこで本発明は、上記した課題を解決するために、拡散接合時における加圧力が流体通路溝の溝底部にも充分に掛かるようにして高い接合性が得られる品質の高い積層型熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、流体通路溝を所定間隔を置いて複数形成した平板金属プレートの複数枚を、積層方向において前記流体通路溝の向きが略直交するように交互に積層し拡散接合して形成されており、同一向きの流体通路溝に流通する第1の冷媒と、それと直交する向きの流体通路溝に流通する第2の冷媒とで熱交換される積層型熱交換器において、前記各流体通路溝の溝底部の略中央部を支持するように、同一向きに流通する前記各流体通路溝間に形成された支え部がそれぞれ対応して配置されていることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の積層型熱交換器であって、前記支え部の支持面には、断面略V字形状の溝部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、各流体通路溝の溝底部の下には、該溝底部を支える、流体通路溝間に形成された支え部がそれぞれ対応して配置されているので、積層された平板金属プレートを拡散接合したときに前記支え部が前記溝底部の支えとなるから当該溝底部にも加圧力が充分に掛かる。そのため、本発明によれば、流体通路溝の溝底部における接合力を高めることができ、品質の高い積層型熱交換器を提供することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、支え部の支持面に断面略V字形状の溝部を形成したので、この溝部により接合界面での接合長さが増し、接合強度のさらなる向上が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
[積層型熱交換器の構成]
図1は本実施の形態の積層型熱交換器の斜視図、図2は図1のA−A線位置における要部拡大断面図、図3は図1のA−A線位置における要部拡大断面図、図4は支持面に断面略V字形状の溝部を形成した支え部の拡大断面図、図5は支持面に断面略V字形状の溝部を形成する一例を示すエッチング加工前の平板金属プレートの斜視図である。
【0011】
本実施の形態の積層型熱交換器は、図1及び図2に示すように、片方の面に流体通路溝2を所定間隔を置いて複数形成した平板金属プレート1の複数枚を、積層方向において前記流体通路溝2の向きが略直交するように交互に積層して拡散接合されており、その一つ置きの平板金属プレート1に形成された同一向きの流体通路溝2に流通する第1の冷媒と、それと直交する向きの流体通路溝2に流通する第2の冷媒とで熱交換されるように構成されている。そして、積層型熱交換器は、前記複数枚の平板金属プレート1が拡散接合されることにより形成される積層体3の側面に、図示を省略する冷媒供給用タンクと冷媒排出用タンクが取り付けられることで形成される。
【0012】
本実施の形態では、流体通路溝2を半ピッチずらして形成した2種類の平板金属プレート1A、1Bを用意し、積層体3の任意の同一面で見たときに一つ置きに積層して積層体3を形成している。流体通路溝2は、平板金属プレート1の片面に所定間隔で同一方向及び平行となるように複数形成されている。そして、これら流体通路溝2が平板金属プレート1に形成されることにより、各流体通路溝2間には、溝形成によって残った柱形状の支え部4が形成される。この支え部4は、積層された平板金属プレート1を拡散接合するときに流体通路溝2の溝底部5の略中央部5Aを支えるため、加圧力がこの溝底部5にも加わるようにする役目をする。
【0013】
このように半ピッチ位置がずれた流体通路溝2が形成された2種類の平板金属プレート1A、1Bを一つ置きに積層すると、各流体通路溝2の溝底部5の下には、この溝底部5の略中央部5Aを支える支え部4がそれぞれ対応して配置される。かかる支え部4の先端面である支持面4aは、図3に示すように平坦面とされている。図4では、支え部4の支持面4aには、接合界面での長さを増すことでこの上に積層される平板金属プレート1との接合部強度を高めることを目的として断面略V字形状の溝部6を形成している。かかる溝部6を形成するには、図5に示すように、平板金属プレート1の片面に溝深さの浅いV字形状の溝部6を塑性加工または切削加工にて形成する。その後、エッチング加工を行って流体通路溝2を形成するときに、前記溝部6が支え部4の先端に位置するようにする。
【0014】
「積層型熱交換器の製造方法」
次に、上記のように構成された積層型熱交換器を製造する方法について説明する。先ず、ステンレスなどからなる平板金属プレート1の片方の面に、マスキング部材を載せ、そのマスキング部材をマスクとしてエッチングする。このマスキング部材には、流体通路溝2の形成ピッチを半ピッチずらしたものを2枚用意する。そして、それぞれのマスキング部材を平板金属プレート1の片方の面に配置してエッチングを行えば、流体通路溝2が所定間隔で平行に複数形成されたピッチ違いの2種類の平板金属プレート1A、1Bが得られる。
【0015】
次に、得られた平板金属プレート1A、1Bの複数枚を積層する。先ず、一方の平板金属プレート1Aの上に同一の平板金属プレート1Aをその積層方向において流体通路溝2の向きが互いに直交するように積層した後、今度は流体通路溝2が半ピッチ位置がずれた他方の平板金属プレート1Bをその上に載せると共に流体通路溝2の向きを直交させて同じ平板金属プレート1Bを載せる。これを繰り替えし行うことで積層体3を形成する。
【0016】
次に、その積層体3を不活性ガスが充填された真空炉内に入れ、拡散接合用治具で所定の加圧力を加えると共に加熱する。このとき、各流体通路溝2の溝底部5の下には、この溝底部5の略中央部5Aを支える支え部4がそれぞれ対応して配置されているので、この溝底部5にも充分に前記加圧力が掛かる。そして、昇温を所定時間保持した後、積層体3を冷却する。冷却後は、拡散接合治具毎、積層体3を真空炉から取り出し、その拡散接合治具を外す。
【0017】
「実施の形態の効果」
本実施の形態によれば、各流体通路溝2の溝底部5の下には、該溝底部5の略中央部5Aを支える、流体通路溝2間に形成された支え部4がそれぞれ対応して配置されているので、積層された平板金属プレート1を拡散接合したときに前記支え部4が前記溝底部の支えとなるから当該溝底部5にも加圧力が充分に掛かる。そのため、本発明によれば、流体通路溝2の溝底部5における接合力を高めることができ、品質の高い積層型熱交換器を提供することができる。
【0018】
また、本実施の形態によれば、支え部4の支持面4aに断面略V字形状の溝部6を形成したので、この溝部6により接合界面での接合長さが増し、接合強度のさらなる向上が実現できる。
【0019】
「その他の実施形態」
以上、本発明を適用した具体的な実施の形態について説明したが、前記実施の形態は本発明の一例であり、この実施の形態に限定されることはない。
【0020】
本実施の形態では、流体通路溝2の向きが互いに直交するように平板金属プレート1を一枚ずつ交互に積層したが、二枚ずつなど、複数枚まとめて交互に積層しても構わない。
【0021】
また、上述の実施の形態では、平板金属プレート1としてステンレス材を例にとり説明したが、拡散接合が難しいアルミニウム材の場合には、圧延したままの圧延表面では拡散接合し難しい。そこで、研削等による機械的研磨或いは脱脂剤等による化学的研磨をアルミニウム表面に行うことで、圧延表面を除去して接合性を高めることができる。アルミニウムを圧延したままでは、表面の酸化皮膜が厚いことや表面の付着物(例えばローラー圧延時の潤滑剤など)などが要因となり、拡散接合時の接合性が劣化する。
【0022】
図6はアルミニウムの圧延表面を機械的研磨、化学的研磨或いは研磨無しとした試料同士を拡散接合して引っ張り試験を行ったときの試験具の一例を示す図、図7はアルミニウムの圧延表面を機械的研磨、化学的研磨或いは研磨無しとした試料同士を接合して引っ張り試験を行ったときの結果を示す特性図である。
【0023】
JIS規格A3005からなるアルミニウム円板の試料片(テストピース)8を用意し、その試料片8の表面を、機械的に研磨、化学的に研磨、圧延のままとし、それらを拡散接合した。接合温度は、約580℃とし、固相線温度比を0.93とした。そして、拡散接合された試料片8を丸棒形状をなす試験具(A6061)7の先端に固定し、それらを互いに引っ張ってそのときの引っ張り力から継ぎ手効率を求めた。継ぎ手効率は、母材強度に対する接合部の強度比を表す。
【0024】
この結果、圧延のままよりも機械的研磨、化学的研磨を行って圧延表面を除去した方が、継ぎ手効率が高いことが判った。したがって、アルミニウム板を圧延したままではなく、その表面を機械的研磨または化学的研磨したものを平板金属プレート1に使用すれば、より一層接合強度を高めることができる。
【0025】
これに対して、ステンレス材の場合は、BA仕上げや2D仕上げの焼鈍材よりも圧延のままのハード材の方が接合性が高い。BA仕上げとは、冷間圧延後、不活性雰囲気中で熱処理し、さらに研磨ロールにて軽く冷間加工したものを言う。2D仕上げとは、冷間圧延後、焼鈍酸洗を施したものを言う。
【0026】
図8はステンレスの表面をBA処理、2D処理或いは処理無し(ハード材)とした試料同士を拡散接合したときのテストピースを示す図、図9はステンレスの表面をBA処理、2D処理或いは処理無し(ハード材)とした試料同士を拡散接合したときのテストピース断面をカットして接合部の接合巾を測定した結果を示す特性図である。
【0027】
テストピースは、JIS規格SUS304からなる平板9Cと、波板9Bと、矩波板9Cを重ね合わせ、接合温度1250℃にて拡散接合を行った。そして、このテストピースを切断し、その接合部の接合巾を測定した。その結果、2D仕上げ及びBA仕上げしたものよりも何もしないハード材の方が、その接合巾が一番広い結果となった。したがって、BA仕上げや2D仕上げの焼鈍材よりも圧延のままのハード材を使用した方がステンレス材では、接合性を高めることができる。ハード材の接合性が良い理由としては、圧延時の加工歪みのため再結晶が容易に起こり、接合界面の消失に有効だからである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施の形態の積層型熱交換器の斜視図である。
【図2】図1のA−A線位置における要部拡大断面図である。
【図3】図1のA−A線位置における要部拡大断面図である。
【図4】支持面に断面略V字形状の溝部を形成した支え部の拡大断面図である。
【図5】支持面に断面略V字形状の溝部を形成する一例を示すエッチング加工前の平板金属プレートの斜視図である。
【図6】アルミニウムの圧延表面を機械的研磨、化学的研磨或いは研磨無しとした試料同士を拡散接合して引っ張り試験を行ったときの試験具の一例を示す図である。
【図7】アルミニウムの圧延表面を機械的研磨、化学的研磨或いは研磨無しとした試料同士を接合して引っ張り試験を行ったときの結果を示す特性図である。
【図8】ステンレスの表面をBA処理、2D処理或いは処理無し(ハード材)とした試料同士を拡散接合したときのテストピースを示す図である。
【図9】ステンレスの表面をBA処理、2D処理或いは処理無し(ハード材)とした試料同士を拡散接合したときのテストピース断面をカットして接合部の接合巾を測定した結果を示す特性図である。
【図10】従来の積層型熱交換器を示し、(A)は積層型熱交換器の全体斜視図、(B)はその平板金属プレートの斜視図である。
【図11】図10の積層型熱交換器の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1、1A、1B…平板金属プレート
2…流体通路溝
3…積層体
4…支え部
5…溝底部
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば積層型熱交換器に関し、詳細には、各平板金属プレートの接合改善技術に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型熱交換器を製造する方法の一つとして、例えば図10に示すように、冷媒が流通する流体通路溝101aを片方の面に所定ピッチで複数形成した平板金属プレート101の複数枚を、その流体通路溝101aの形成方向が積層方向において直交するように交互に積み重ねた後、その積層体102を雰囲気ガス中で加熱して接合するいわゆる拡散接合により製造する方法が知られている(例えば、特許文献1など参照)。
【特許文献1】特開2004−181518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、拡散接合により製造される積層型熱交換器においては、マイクロチャンネル型のように小型化を図るために流体通路溝101aを微細流路とした場合、通路抵抗が大きくなる。これを低減するためには、図11に示すように、流体通路溝101aの流路幅Wを広げることで回避することはできる。しかし、拡散接合時に確実に接合するために積層した平板金属プレート101を上下方向から加圧するが流体通路溝101aの溝底部103に加圧力がうまく掛からず、この部位での接合不良が生じ易くなる。流体通路溝101aの流路幅Wが広くなる程、溝底部103に加圧力が掛かり難くなり益々接合不良が発生し易くなる。
【0004】
そこで本発明は、上記した課題を解決するために、拡散接合時における加圧力が流体通路溝の溝底部にも充分に掛かるようにして高い接合性が得られる品質の高い積層型熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、流体通路溝を所定間隔を置いて複数形成した平板金属プレートの複数枚を、積層方向において前記流体通路溝の向きが略直交するように交互に積層し拡散接合して形成されており、同一向きの流体通路溝に流通する第1の冷媒と、それと直交する向きの流体通路溝に流通する第2の冷媒とで熱交換される積層型熱交換器において、前記各流体通路溝の溝底部の略中央部を支持するように、同一向きに流通する前記各流体通路溝間に形成された支え部がそれぞれ対応して配置されていることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の積層型熱交換器であって、前記支え部の支持面には、断面略V字形状の溝部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、各流体通路溝の溝底部の下には、該溝底部を支える、流体通路溝間に形成された支え部がそれぞれ対応して配置されているので、積層された平板金属プレートを拡散接合したときに前記支え部が前記溝底部の支えとなるから当該溝底部にも加圧力が充分に掛かる。そのため、本発明によれば、流体通路溝の溝底部における接合力を高めることができ、品質の高い積層型熱交換器を提供することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、支え部の支持面に断面略V字形状の溝部を形成したので、この溝部により接合界面での接合長さが増し、接合強度のさらなる向上が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
[積層型熱交換器の構成]
図1は本実施の形態の積層型熱交換器の斜視図、図2は図1のA−A線位置における要部拡大断面図、図3は図1のA−A線位置における要部拡大断面図、図4は支持面に断面略V字形状の溝部を形成した支え部の拡大断面図、図5は支持面に断面略V字形状の溝部を形成する一例を示すエッチング加工前の平板金属プレートの斜視図である。
【0011】
本実施の形態の積層型熱交換器は、図1及び図2に示すように、片方の面に流体通路溝2を所定間隔を置いて複数形成した平板金属プレート1の複数枚を、積層方向において前記流体通路溝2の向きが略直交するように交互に積層して拡散接合されており、その一つ置きの平板金属プレート1に形成された同一向きの流体通路溝2に流通する第1の冷媒と、それと直交する向きの流体通路溝2に流通する第2の冷媒とで熱交換されるように構成されている。そして、積層型熱交換器は、前記複数枚の平板金属プレート1が拡散接合されることにより形成される積層体3の側面に、図示を省略する冷媒供給用タンクと冷媒排出用タンクが取り付けられることで形成される。
【0012】
本実施の形態では、流体通路溝2を半ピッチずらして形成した2種類の平板金属プレート1A、1Bを用意し、積層体3の任意の同一面で見たときに一つ置きに積層して積層体3を形成している。流体通路溝2は、平板金属プレート1の片面に所定間隔で同一方向及び平行となるように複数形成されている。そして、これら流体通路溝2が平板金属プレート1に形成されることにより、各流体通路溝2間には、溝形成によって残った柱形状の支え部4が形成される。この支え部4は、積層された平板金属プレート1を拡散接合するときに流体通路溝2の溝底部5の略中央部5Aを支えるため、加圧力がこの溝底部5にも加わるようにする役目をする。
【0013】
このように半ピッチ位置がずれた流体通路溝2が形成された2種類の平板金属プレート1A、1Bを一つ置きに積層すると、各流体通路溝2の溝底部5の下には、この溝底部5の略中央部5Aを支える支え部4がそれぞれ対応して配置される。かかる支え部4の先端面である支持面4aは、図3に示すように平坦面とされている。図4では、支え部4の支持面4aには、接合界面での長さを増すことでこの上に積層される平板金属プレート1との接合部強度を高めることを目的として断面略V字形状の溝部6を形成している。かかる溝部6を形成するには、図5に示すように、平板金属プレート1の片面に溝深さの浅いV字形状の溝部6を塑性加工または切削加工にて形成する。その後、エッチング加工を行って流体通路溝2を形成するときに、前記溝部6が支え部4の先端に位置するようにする。
【0014】
「積層型熱交換器の製造方法」
次に、上記のように構成された積層型熱交換器を製造する方法について説明する。先ず、ステンレスなどからなる平板金属プレート1の片方の面に、マスキング部材を載せ、そのマスキング部材をマスクとしてエッチングする。このマスキング部材には、流体通路溝2の形成ピッチを半ピッチずらしたものを2枚用意する。そして、それぞれのマスキング部材を平板金属プレート1の片方の面に配置してエッチングを行えば、流体通路溝2が所定間隔で平行に複数形成されたピッチ違いの2種類の平板金属プレート1A、1Bが得られる。
【0015】
次に、得られた平板金属プレート1A、1Bの複数枚を積層する。先ず、一方の平板金属プレート1Aの上に同一の平板金属プレート1Aをその積層方向において流体通路溝2の向きが互いに直交するように積層した後、今度は流体通路溝2が半ピッチ位置がずれた他方の平板金属プレート1Bをその上に載せると共に流体通路溝2の向きを直交させて同じ平板金属プレート1Bを載せる。これを繰り替えし行うことで積層体3を形成する。
【0016】
次に、その積層体3を不活性ガスが充填された真空炉内に入れ、拡散接合用治具で所定の加圧力を加えると共に加熱する。このとき、各流体通路溝2の溝底部5の下には、この溝底部5の略中央部5Aを支える支え部4がそれぞれ対応して配置されているので、この溝底部5にも充分に前記加圧力が掛かる。そして、昇温を所定時間保持した後、積層体3を冷却する。冷却後は、拡散接合治具毎、積層体3を真空炉から取り出し、その拡散接合治具を外す。
【0017】
「実施の形態の効果」
本実施の形態によれば、各流体通路溝2の溝底部5の下には、該溝底部5の略中央部5Aを支える、流体通路溝2間に形成された支え部4がそれぞれ対応して配置されているので、積層された平板金属プレート1を拡散接合したときに前記支え部4が前記溝底部の支えとなるから当該溝底部5にも加圧力が充分に掛かる。そのため、本発明によれば、流体通路溝2の溝底部5における接合力を高めることができ、品質の高い積層型熱交換器を提供することができる。
【0018】
また、本実施の形態によれば、支え部4の支持面4aに断面略V字形状の溝部6を形成したので、この溝部6により接合界面での接合長さが増し、接合強度のさらなる向上が実現できる。
【0019】
「その他の実施形態」
以上、本発明を適用した具体的な実施の形態について説明したが、前記実施の形態は本発明の一例であり、この実施の形態に限定されることはない。
【0020】
本実施の形態では、流体通路溝2の向きが互いに直交するように平板金属プレート1を一枚ずつ交互に積層したが、二枚ずつなど、複数枚まとめて交互に積層しても構わない。
【0021】
また、上述の実施の形態では、平板金属プレート1としてステンレス材を例にとり説明したが、拡散接合が難しいアルミニウム材の場合には、圧延したままの圧延表面では拡散接合し難しい。そこで、研削等による機械的研磨或いは脱脂剤等による化学的研磨をアルミニウム表面に行うことで、圧延表面を除去して接合性を高めることができる。アルミニウムを圧延したままでは、表面の酸化皮膜が厚いことや表面の付着物(例えばローラー圧延時の潤滑剤など)などが要因となり、拡散接合時の接合性が劣化する。
【0022】
図6はアルミニウムの圧延表面を機械的研磨、化学的研磨或いは研磨無しとした試料同士を拡散接合して引っ張り試験を行ったときの試験具の一例を示す図、図7はアルミニウムの圧延表面を機械的研磨、化学的研磨或いは研磨無しとした試料同士を接合して引っ張り試験を行ったときの結果を示す特性図である。
【0023】
JIS規格A3005からなるアルミニウム円板の試料片(テストピース)8を用意し、その試料片8の表面を、機械的に研磨、化学的に研磨、圧延のままとし、それらを拡散接合した。接合温度は、約580℃とし、固相線温度比を0.93とした。そして、拡散接合された試料片8を丸棒形状をなす試験具(A6061)7の先端に固定し、それらを互いに引っ張ってそのときの引っ張り力から継ぎ手効率を求めた。継ぎ手効率は、母材強度に対する接合部の強度比を表す。
【0024】
この結果、圧延のままよりも機械的研磨、化学的研磨を行って圧延表面を除去した方が、継ぎ手効率が高いことが判った。したがって、アルミニウム板を圧延したままではなく、その表面を機械的研磨または化学的研磨したものを平板金属プレート1に使用すれば、より一層接合強度を高めることができる。
【0025】
これに対して、ステンレス材の場合は、BA仕上げや2D仕上げの焼鈍材よりも圧延のままのハード材の方が接合性が高い。BA仕上げとは、冷間圧延後、不活性雰囲気中で熱処理し、さらに研磨ロールにて軽く冷間加工したものを言う。2D仕上げとは、冷間圧延後、焼鈍酸洗を施したものを言う。
【0026】
図8はステンレスの表面をBA処理、2D処理或いは処理無し(ハード材)とした試料同士を拡散接合したときのテストピースを示す図、図9はステンレスの表面をBA処理、2D処理或いは処理無し(ハード材)とした試料同士を拡散接合したときのテストピース断面をカットして接合部の接合巾を測定した結果を示す特性図である。
【0027】
テストピースは、JIS規格SUS304からなる平板9Cと、波板9Bと、矩波板9Cを重ね合わせ、接合温度1250℃にて拡散接合を行った。そして、このテストピースを切断し、その接合部の接合巾を測定した。その結果、2D仕上げ及びBA仕上げしたものよりも何もしないハード材の方が、その接合巾が一番広い結果となった。したがって、BA仕上げや2D仕上げの焼鈍材よりも圧延のままのハード材を使用した方がステンレス材では、接合性を高めることができる。ハード材の接合性が良い理由としては、圧延時の加工歪みのため再結晶が容易に起こり、接合界面の消失に有効だからである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施の形態の積層型熱交換器の斜視図である。
【図2】図1のA−A線位置における要部拡大断面図である。
【図3】図1のA−A線位置における要部拡大断面図である。
【図4】支持面に断面略V字形状の溝部を形成した支え部の拡大断面図である。
【図5】支持面に断面略V字形状の溝部を形成する一例を示すエッチング加工前の平板金属プレートの斜視図である。
【図6】アルミニウムの圧延表面を機械的研磨、化学的研磨或いは研磨無しとした試料同士を拡散接合して引っ張り試験を行ったときの試験具の一例を示す図である。
【図7】アルミニウムの圧延表面を機械的研磨、化学的研磨或いは研磨無しとした試料同士を接合して引っ張り試験を行ったときの結果を示す特性図である。
【図8】ステンレスの表面をBA処理、2D処理或いは処理無し(ハード材)とした試料同士を拡散接合したときのテストピースを示す図である。
【図9】ステンレスの表面をBA処理、2D処理或いは処理無し(ハード材)とした試料同士を拡散接合したときのテストピース断面をカットして接合部の接合巾を測定した結果を示す特性図である。
【図10】従来の積層型熱交換器を示し、(A)は積層型熱交換器の全体斜視図、(B)はその平板金属プレートの斜視図である。
【図11】図10の積層型熱交換器の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1、1A、1B…平板金属プレート
2…流体通路溝
3…積層体
4…支え部
5…溝底部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体通路溝(2)を所定間隔を置いて複数形成した平板金属プレート(1、1A、1B)の複数枚を、積層方向において前記流体通路溝(2)の向きが略直交するように交互に積層し拡散接合して形成されており、同一向きの流体通路溝(2)に流通する第1の冷媒と、それと直交する向きの流体通路溝(2)に流通する第2の冷媒とで熱交換される積層型熱交換器において、
前記各流体通路溝(2)の溝底部(5)の略中央部(5A)を支持するように、同一向きに流通する前記各流体通路溝(2)間に形成された支え部(4)がそれぞれ対応して配置されている
ことを特徴とする積層型熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の積層型熱交換器であって、
前記支え部(4)の支持面(4a)には、断面略V字形状の溝部(6)が形成されている
ことを特徴とする積層型熱交換器。
【請求項1】
流体通路溝(2)を所定間隔を置いて複数形成した平板金属プレート(1、1A、1B)の複数枚を、積層方向において前記流体通路溝(2)の向きが略直交するように交互に積層し拡散接合して形成されており、同一向きの流体通路溝(2)に流通する第1の冷媒と、それと直交する向きの流体通路溝(2)に流通する第2の冷媒とで熱交換される積層型熱交換器において、
前記各流体通路溝(2)の溝底部(5)の略中央部(5A)を支持するように、同一向きに流通する前記各流体通路溝(2)間に形成された支え部(4)がそれぞれ対応して配置されている
ことを特徴とする積層型熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の積層型熱交換器であって、
前記支え部(4)の支持面(4a)には、断面略V字形状の溝部(6)が形成されている
ことを特徴とする積層型熱交換器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−192500(P2007−192500A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−12257(P2006−12257)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】
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