説明

積層型電子部品

【課題】電子部品を小型化しつつも、インダクタンスの大きな積層型電子部品を提供することを目的とする。
【解決手段】上面および下面に開口する第1の配線形成領域3aを有する第1の絶縁体層3と、第1の配線形成領域3aに配設された、第1の絶縁体層3の上面に平行に周回した第1のコイル配線導体5と、第1の絶縁体層3の上面に積層された、上面および下面に開口する第2の配線形成領域7aを有する第2の絶縁体層7と、第2の配線形成領域7aに配設された、第2の絶縁体層7の上面に平行に周回した、第1のコイル配線導体5と一方の端部同士が接続された第2のコイル配線導体9とを備え、第1のコイル配線導体5および第2のコイル配線導体9を平面透視した場合に、第2のコイル配線導体9が第1のコイル配線導体5を囲むように位置していることを特徴とする積層型電子部品1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル状の導体パターンが内部に埋設された積層型電子部品に関するものである。このような電子部品は、産業用電子機器および民生用電気製品に代表される多種多様な電子機器において、例えばインダクタ、トランス、コイル部品、LC部品または貫通コンデンサを備えたモジュールの部品として用いることができる。
【背景技術】
【0002】
コイル状の導体パターンを備えた電子部品としては、例えば、特許文献1に記載の積層チップインダクタが知られている。特許文献1に記載の積層チップインダクタは、スルーホールを有するフェライトシート片の上面にコイル導体を設けたものを積層するとともに、積層方向に隣り合うコイル導体をフェライトシート片のスルーホールを介して電気的に接続することによって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−150034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の積層チップインダクタにおいては、積層方向に隣り合うコイル導体の間にフェライトシート片が配設されることによって、これらのコイル導体がスルーホール以外の箇所で電気的に短絡することを抑制している。近年、電子機器の小型化に伴って積層チップインダクタを始めとする積層型電子部品にも小型化が求められている。しかしながら、小型化のためにフェライトシート片の厚みを小さくした場合は、積層方向に隣り合うコイル導体が想定外の箇所で電気的に短絡する可能性がある。また、コイル導体の厚みを小さくした場合は、積層型電子部品のインダクタンスが低下する傾向がある。
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、電子部品を小型化しつつも、インダクタンスの大きな積層型電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様にかかる積層型電子部品は、上面および下面に開口する第1の配線形成領域を有する第1の絶縁体層と、前記第1の配線形成領域に配設された、前記第1の絶縁体層の上面に平行に周回した第1のコイル配線導体と、前記第1の絶縁体層の上面に積層された、上面および下面に開口する第2の配線形成領域を有する第2の絶縁体層と、前記第2の配線形成領域に配設された、前記第2の絶縁体層の上面に平行に周回した、前記第1のコイル配線導体の一方の端部同士が接続された第2のコイル配線導体とを備えている。そして、前記第1のコイル配線導体および前記第2のコイル配線導体を平面透視した場合に、前記第2のコイル配線導体が前記第1のコイル配線導体を囲むように位置していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
上記の態様に基づく積層型電子部品においては、第1のコイル配線導体および第2のコイル配線導体を平面透視した場合に、第2のコイル配線導体が第1のコイル配線導体を囲むように位置している。このように第1のコイル配線導体と第2のコイル配線導体とがコイル状の内部導体を形成するために電気的に接続される端部を除いて、平面透視した場合に互いに重なり合っていない。そのため、第1の絶縁体層および第2の絶縁体層を含む絶
縁体層の積層体を形成する際に、積層方向に隣り合う第1のコイル配線導体と第2のコイル配線導体との積層方向の間にフェライトシート片のような絶縁体層を別途積層する必要がない。従って、第1のコイル配線導体および第2のコイル配線導体からなるコイル状の内部導体の厚みを小さくすることなく積層型電子部品を低背化することができるので、電子部品を小型化しつつも、インダクタンスの大きなものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態の積層型電子部品を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示す実施形態の積層型電子部品の平面透視図である。
【図3】図2に示す実施形態の積層型電子部品のA−A断面図である。
【図4】図1に示す積層型電子部品の変形例であって、(a)は積層方向に垂直であって第2のコイル配線導体を含む断面図であり、(b)は積層方向に垂直であって第1のコイル配線導体を含む断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態の積層型電子部品(以下、単に電子部品ともいう。)について、図面を用いて詳細に説明する。但し、以下で参照する各図は、説明の便宜上、下記の実施形態を構成する部材のうち、特徴的な構成を説明するために必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。したがって、本実施形態の電子部品は、本明細書が参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および各部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0010】
図1〜3に示すように、本実施形態の電子部品1は、上面および下面に開口する第1の配線形成領域3aを有する第1の絶縁体層3と、第1の配線形成領域3aに配設された、第1の絶縁体層3の上面に平行に周回した第1のコイル配線導体5と、第1の絶縁体層3の上面に積層された、上面および下面に開口する第2の配線形成領域7aを有する第2の絶縁体層7と、第2の配線形成領域7aに配設されるとともに、第2の絶縁体層7の上面に平行に周回した、第1のコイル配線導体5と一方の端部同士が接続された第2のコイル配線導体9とを備えている。
【0011】
そして、第1のコイル配線導体5および第2のコイル配線導体9を平面透視した場合に、第2のコイル配線導体9が第1のコイル配線導体5を囲むように位置していることを特徴としている。そのため、第1の絶縁体層3および第2の絶縁体層7を含む絶縁体層の積層体を形成する際に、積層方向に隣り合う第1のコイル配線導体5と第2のコイル配線導体9との積層方向の間にフェライトシート片のような絶縁体層を別途積層する必要がない。従って、第1のコイル配線導体5および第2のコイル配線導体9からなるコイル状の内部導体の厚みを小さくすることなく電子部品1を低背化することができるので、電子部品1を小型化しつつも、インダクタンスの大きなものとすることができる。
【0012】
本実施形態の電子部品1は、第1の絶縁体層3および第1の絶縁体層3の上面に積層された第2の絶縁体層7を含む複数の絶縁体層を積層してなる積層体11を備えている。すなわち、本実施形態の電子部品1における積層体11のように、第1の絶縁体層3と第2の絶縁体層7とを交互に積層した構成を有していてもよい。それぞれの絶縁体層には、高い絶縁性を有している材料を用いることが求められる。具体的には、例えば、フェライト質焼結体、フォルステライト質焼結体およびガラスセラミック焼結体のようなセラミック材料を用いることができる。
【0013】
また、第1のコイル配線導体5および第2のコイル配線導体9からなるコイル状の内部導体が埋設されていることから、複数の絶縁体層には、高い磁性を有する材料を用いることが好ましい。具体的には、例えば、フェライトから成る材料、あるいはフェライト等の
磁性材料を含有している材料が好ましい。また、複数の絶縁体層が非磁性絶縁材料と磁性絶縁材料との組合せであってもよい。このようなセラミック材料からなる絶縁体層を積層することによって積層体11を形成することができる。
【0014】
なお、本実施形態における複数の絶縁体層は、それぞれ平面視した場合の外周形状が矩形状となっているが、特にこれに限られるものではない。例えば、平面視した場合の外周形状が、六角形または八角形のような多角形状、あるいは、楕円形状または円形状であってもよい。
【0015】
積層体11の耐久性を向上させるためには、積層体11を平面透視した場合における、コイル状の内部導体に囲まれた領域に位置する部分と、この領域の外側に位置する部分との成分が同一であることが好ましい。本実施形態の電子部品1の作製時あるいは使用時において積層体11が熱膨張することがあるが、内部導体に囲まれた領域に位置する部分と、この領域の外側に位置する部分との成分が同一であることによって、これらの領域の熱膨張差を小さくすることができる。そのため、これらの領域の境界に大きな熱応力が生じる可能性を小さくできる。
【0016】
一方、コイル状の内部導体から積層体11の外部への磁界の漏れを小さくするためには、積層体11における、コイル状の内部導体の外側の領域に位置する部分が非磁性体からなるか、もしくはコイル状の内部導体に囲まれた領域よりも低い磁性を有していることが好ましい。
【0017】
積層体11における内部導体に囲まれた領域に位置する部分は、内部導体のインダクタンスを大きくするため、高い磁性を有していることが好ましい。一方、積層体11における内部導体に囲まれた領域の外側に位置する部分には、積層体11の外部、もしくは積層体のコイル配線導体の近傍に配置された信号線路等への電流の漏れを小さくするため、高い絶縁性を有していることが好ましい。従って、コイル状の内部導体の外側の領域に位置する部分が非磁性体からなる、もしくはコイル状の内部導体に囲まれた領域よりも低い磁性を有するとともに、この外側の領域に位置する部分が高い絶縁性を示す絶縁体であって、コイル状の内部導体に囲まれた領域に位置する部分が、この領域の外側に位置する部分よりも高い磁性を有する磁性体であることによって、インダクタンスを大きくしつつもコイル状の内部導体から積層体11の外部への磁界の漏れを小さくすることができる。
【0018】
本実施形態の電子部品1は、積層体11に埋設されたコイル状の内部導体を備えている。内部導体は、積層体11の積層方向に向かって巻回するように形成されている。このように内部導体がコイル状に巻回されていることによって、内部導体をインダクタとして機能させることができる。なお、本実施形態における内部導体は、積層体11の積層方向に向かって巻回されているが、これに限られるものではない。
【0019】
コイル状の内部導体は、図1〜3に示すように、第1の絶縁体層3における第1の配線形成領域3aに配設された第1のコイル配線導体5と、第2の絶縁体層7における第2の配線形成領域7aに配設されるとともに端部Xが第1のコイル配線導体5の端部Xに接続された第2のコイル配線導体9とを具備している。本実施形態の電子部品1においては、第1のコイル配線導体5および第2のコイル配線導体9を平面透視した場合に、第2のコイル配線導体9が第1のコイル配線導体5を囲むように位置している。そのため、ビア導体を介して積層方向に隣り合うコイル配線導体を電気的に接続する必要がなく、第1のコイル配線導体5の端部Xと第2のコイル配線導体9の端部Xとを直接に電気的に接続することができる。
【0020】
なお、これら第1のコイル配線導体5の端部Xおよび第2のコイル配線導体9の端部X
以外での、第1のコイル配線導体5および第2のコイル配線導体9の電気的な短絡を抑制するため、第1のコイル配線導体5および第2のコイル配線導体9を平面透視した場合に、これらの端部Xを除く領域においては、第1のコイル配線導体5および第2のコイル配線導体9が互いに離隔していることが求められる。
【0021】
また、積層方向に隣り合うコイル配線導体が電気的に接続されることによってコイル状の内部導体を形成していることから、第1のコイル配線導体5および第2のコイル配線導体9のそれぞれがコイルの一つのループ状であることを意味するものに限られない。第1のコイル配線導体5および第2のコイル配線導体9のそれぞれが、1つの線分からなる直線形状、2つの線分からなるL字形状、3つの線分からなるコ字形状、あるいは、図1に示すような複数の線分からなる四角形や、図4に示すような複数の線分からなる八角形のような多角形状であってもよい。また、第1のコイル配線導体5および第2のコイル配線導体9として、平面視した場合の形状が直線状の部位のみからなる構成ではなく、部分的に曲線状の部位を有していてもよい。
【0022】
第1のコイル配線導体5および第2のコイル配線導体9としては、導電性の良好な部材を用いることが好ましい。例えば、銅、銀、金、白金あるいはニッケルのような金属材料粉末に絶縁材料との密着性を高めるためのガラス質を添加した導体を内部導体として用いることができる。上記の金属材料は単一で用いてもよく、また、合金、混合物として用いてもよい。
【0023】
また、本実施形態の電子部品1のように、第1の絶縁体層3および第2の絶縁体層7の積層方向における、第1のコイル配線導体5の厚みが、第2のコイル配線導体9の厚みよりも大きいことが好ましい。本実施形態の電子部品1においては、第2のコイル配線導体9が第1のコイル配線導体5を囲むように位置している。第1のコイル配線導体5および第2のコイル配線導体9を含むコイル状の内部導体が積層方向に向かって巻回するように形成されているが、この巻回の中心軸とコイル状の内部導体との間隔が小さくなる程に、コイル状の内部導体のインダクタンスが大きくなる。
【0024】
本実施形態の電子部品1においては、第2のコイル配線導体9が第1のコイル配線導体5を囲むように位置している。すなわち、第1のコイル配線導体5と上記の中心軸との間隔が第2のコイル配線導体9と上記の中心軸との間隔よりも小さい。そして、第1のコイル配線導体5の積層方向の厚みが、第2のコイル配線導体9の積層方向の厚みよりも大きいことによって、コイル状の内部導体と上記の中心軸との平均的な間隔を小さくできる。従って、コイル状の内部導体のインダクタンスをさらに大きくすることができる。
【0025】
さらに、本実施形態の電子部品1のように、第1のコイル配線導体5における電流の流れる方向に垂直な断面での断面積が、第2のコイル配線導体9における電流の流れる方向に垂直な断面での断面積と略同一であることが好ましい。これによって、コイル状の内部導体のインダクタンスをさらに大きくすることができつつも、コイル状の内部導体に部分的に抵抗の大きな部分や小さな部分が形成されることを抑制できる。そのため、コイル状の内部導体が局所的に発熱することを抑制できる。
【0026】
本実施形態の電子部品1は、積層体11の上面および下面に位置して、第1のコイル配線導体5および第2のコイル配線導体9を含むコイル状の内部導体に接続導体13を介して電気的に接続された一対の外部電極15を備えている。外部電極15は、リード端子などを介して外部配線(不図示)と電気的に接続するための部材である。そのため、本実施形態における外部電極15は積層体11の上面および下面に配設されているが、特にこれに限られるものではない。例えば、積層体11の上面に一対の外部電極15が配設されていてもよいし、また、一対の外部電極15が積層体11の側面に配設されていてもよい。
【0027】
外部電極15としては、コイル状の内部導体と同様に導電性の良好な部材を用いることが好ましい。具体的には、例えば、銅、銀、金、白金あるいはニッケルのような金属材料粉末に絶縁材料との密着性を高めるためのガラス質を添加した導体を外部電極15として用いることができる。上記の金属材料は単一で用いてもよく、また、合金、混合物として用いてもよい。
【0028】
また、外部電極15の積層体11から露出する表面には、メッキを形成することが好ましい。外部に露出する外部電極15が劣化することを抑制できるからである。また、リード端子などを介して外部電極15と外部配線(不図示)とを電気的に接続する場合には、外部電極15とリード端子との接合性を高めることができる。メッキとしては、例えば、ニッケルメッキ、銅メッキ、銀メッキ、金メッキまたは錫メッキを用いることができる。一例として、外部電極15の積層体11から露出する表面にニッケルメッキを形成した後、さらにニッケルメッキの表面に金メッキを形成すればよい。
【0029】
次に、上記実施形態の積層型電子部品1の製造方法について説明する。
【0030】
まず、積層体11を構成する第1の絶縁体層3となる第1のセラミックグリーンシートおよび第2の絶縁体層7となる第2のセラミックグリーンシートを作製する。具体的には、ガラス粉末およびセラミック粉末を含有する原料粉末、有機溶剤ならびにバインダを混ぜることにより混合部材を作製する。原料粉末としては、絶縁材料、磁性材料等であり、例えば、アルミナ(Al)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化珪素(SiO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)および酸化硼素(B)を用いることができる。この混合部材をシート状に成形することによって第1のセラミックグリーンシートおよび第2のセラミックグリーンシートを作製することができる。
【0031】
また、第1のコイル配線導体5が配設される第1の配線形成領域3aは、第1の絶縁体層3となる第1のセラミックグリーンシートを焼成した後に、このシートに上面および下面に開口する貫通孔を形成することによって作製してもよいが、第1のセラミックグリーンシートに上面および下面に開口する貫通孔を形成することによって第1の配線形成領域3aを作製してもよい。
【0032】
同様に、第2のコイル配線導体9が配設される第2の配線形成領域7aは、第2の絶縁体層7となる第2のセラミックグリーンシートを焼成した後に、このシートに上面および下面に開口する貫通孔を形成することによって作製してもよいが、第2のセラミックグリーンシートに上面および下面に開口する貫通孔を形成することによって第2の配線形成領域7aを作製してもよい。
【0033】
このとき、第1の絶縁体層3となる第1のセラミックグリーンシートおよび第2の絶縁体層7となる第2のセラミックグリーンシートを平面透視した場合に、第2の配線形成領域7aが第1の配線形成領域3aを囲むように第1の配線形成領域3aおよび第2の配線形成領域7aとなる貫通孔を形成することが肝要である。このように第1の配線形成領域3aおよび第2の配線形成領域7aとなる貫通孔を形成することによって、第2のコイル配線導体9を第1のコイル配線導体5を囲むように位置させることができる。
【0034】
なお、第1のコイル配線導体5の積層方向の厚みが、第2のコイル配線導体9の積層方向の厚みよりも大きい場合には、第1の絶縁体層3の厚みを第2の絶縁体層7の厚みよりも大きくすればよい。第1の絶縁体層3の厚みを第2の絶縁体層7の厚みよりも大きくするためには、混合部材をシート状に成形する際に、第1の絶縁体層3となる第1のセラミックグリーンシートを第2の絶縁体層7となる第2のセラミックグリーンシートよりも厚
みが大きくなるように成形すればよい。また、単一の厚みのセラミックグリーンシートを成形するとともに、第1の絶縁体層3となる部分においては、このセラミックグリーンシートを複数枚積層することによっても、第2の絶縁体層7の厚みよりも厚みを大きくすることができる。
【0035】
特に、第1の絶縁体層3となる第1のセラミックグリーンシートの厚みが大きいことによって、第1の配線形成領域3aの深さが大きく、第1のコイル配線導体5を配設することが難しい場合には、複数のグリーンシートのそれぞれに第1の導体ペーストを充填するとともに、これらのグリーンシートを複数枚積層することによって第1のセラミックグリーンシートを形成することにより、第1のコイル配線導体5を容易に配設することができる。
【0036】
次に、第1のコイル配線導体5、第2のコイル配線導体9および接続導体13を形成する。具体的には、それぞれ第1のコイル配線導体5、第2のコイル配線導体9および接続導体13となる第1の導体ペースト、第2の導体ペーストおよびビア導体ペーストを準備する。これらの導体ペーストとしては、例えば、銅、銀、金、白金、またはニッケルのような金属材料粉末、絶縁材料との密着性を高めるためのガラス質、有機溶剤ならびにバインダを混ぜたものを用いることができる。なお、上記の金属材料は単一の材料を用いてもよいが、合金あるいは混合物を用いても何ら問題ない。
【0037】
このようにして作製された導体ペーストを用いて、第1の配線形成領域3aに第1の導体ペーストを充填するとともに、第2の配線形成領域7aに第2の導体ペーストを充填する。そして、第1の導体ペーストが第1の配線形成領域3aに充填された第1のセラミックグリーンシートに、第2の導体ペーストが第2の配線形成領域7aに充填された第2のセラミックグリーンシートを積層する。
【0038】
このとき、第1の導体パターンの一方の端部が第2の導体パターンの一方の端部とが焼成後に接合されるように、第1の絶縁体層3となる第1のセラミックグリーンシートと第2の絶縁体層7となる第2のセラミックグリーンシートとの相対的な位置を調整して積層する。このようにして、本実施形態の電子部品1となる生積層体11が作製される。なお、生積層体11を構成するセラミックグリーンシートは、第1の絶縁体層3および第2の絶縁体層7となる第1のセラミックグリーンシートおよび第2のセラミックグリーンシートに限られるものではなく、本実施形態の電子部品1の製造方法においては、さらに別の絶縁体層となるセラミックグリーンシートを積層しても何ら問題ない。
【0039】
また、生積層体11の表面に、第1の導体ペーストおよび第2の導体ペーストと接合されるように外部電極15となる第3の導体ペーストを配設してもよい。第3の導体ペーストとしては、第1の導体ペーストと同様に、例えば、銅、銀、金、白金、またはニッケルのような金属材料粉末、絶縁材料との密着性を高めるためのガラス質、有機溶剤ならびにバインダを混ぜたものを用いることができる。
【0040】
上記の通り作製された生積層体11を焼成することによって、本実施形態の電子部品1を作製することができる。セラミックグリーンシートおよび導体ペーストとして用いる材料によって最適な焼成温度は異なるが、本実施形態の電子部品11の製造方法においては約850℃〜1150℃の温度で焼成すればよい。
【0041】
なお、上記の実施形態においては、生積層体11の上面に第3の導体ペーストを配設しているが、特にこれに限られるものではない。例えば、生積層体11を焼成した後に、第1のコイル配線導体5および第2のコイル配線導体9と電気的に接続されるように焼成済みの積層体11の表面に外部電極15を配設してもよい。外部電極15を焼成済みの積層
体11の表面に配設する方法としては、例えば、周知の蒸着またはスパッタリングの手法を用いればよい。
【0042】
また、外部電極15の積層体11から露出する表面にメッキを形成する場合には、焼成済みの積層体11の表面に配設された外部電極15にメッキを形成すればよい。具体的には、例えば、外部電極15の積層体11から露出する表面をニッケルメッキで被覆した後、さらにニッケルメッキの表面を金メッキで被覆すればよい。
【0043】
このように、本実施形態の電子部品1の製造方法は、上面および下面に開口する第1の配線形成領域3aを有する第1のセラミックグリーンシートを準備する工程と、第1の配線形成領域3aに第1の導体ペーストを充填する工程と、上面および下面に開口する第2の配線形成領域7aを有する第2のセラミックグリーンシートを準備する工程と、第2の配線形成領域7aに第2の導体ペーストを充填する工程と、第2の導体ペーストおよび第1の導体ペーストの一方の端部同士が接合されるように、第2のセラミックグリーンシートを第1のセラミックグリーンシートの上面に積層して生積層体11を形成する工程と、生積層体11を焼成する工程とを備えている。
【0044】
そして、第1の導体ペーストおよび第2の導体ペーストを平面透視した場合に、第2の導体ペーストを第1の導体ペーストを囲むように位置させることを特徴としている。これによって、焼成後の第1のコイル配線導体5および第2のコイル配線導体9を平面透視した場合に、第2のコイル配線導体9が第1のコイル配線導体5を囲むように位置して、平面透視した場合に互いに重なり合わない構成とすることができる。
【0045】
そのため、第1の絶縁体層3および第2の絶縁体層7を含む絶縁体層の積層体を形成する際に、積層方向に隣り合う第1のコイル配線導体5と第2のコイル配線導体9との積層方向の間にフェライトシート片のような絶縁体層を別途積層する必要がない。従って、第1のコイル配線導体5および第2のコイル配線導体9からなるコイル状の内部導体の厚みを小さくすることなく電子部品1を低背化することができるので、電子部品1を小型化しつつも、インダクタンスの大きなものとすることができる。
【0046】
また、上記する構成を有する生積層体11が複数配設された生積層体11の集合体を形成してもよい。このような生積層体11の集合体を作製した後、それぞれの生積層体11に分割するとともにそれぞれの生積層体11を焼成することによって、複数の電子部品1を同時に作製することができる。また、上記する生積層体11の集合体を同時焼成した後に、それぞれの電子部品1に分割してもよい。
【0047】
上述の通り、本実施形態の積層型電子部品について説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば、種々の変更や実施の形態の組合せを施すことは何等差し支えない。
【符号の説明】
【0048】
1・・・積層型電子部品
3・・・第1の絶縁体層
5・・・第1のコイル配線導体
7・・・第2の絶縁体層
9・・・第2のコイル配線導体
11・・・積層体
13・・・接続導体
15・・・外部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面および下面に開口する第1の配線形成領域を有する第1の絶縁体層と、
前記第1の配線形成領域に配設された、前記第1の絶縁体層の上面に平行に周回した第1のコイル配線導体と、
前記第1の絶縁体層の上面に積層された、上面および下面に開口する第2の配線形成領域を有する第2の絶縁体層と、
前記第2の配線形成領域に配設された、前記第2の絶縁体層の上面に平行に周回した、前記第1のコイル配線導体と一方の端部同士が接続された第2のコイル配線導体とを備え、
前記第1のコイル配線導体および前記第2のコイル配線導体を平面透視した場合に、前記第2のコイル配線導体が前記第1のコイル配線導体を囲むように位置していることを特徴とする積層型電子部品。
【請求項2】
前記第1の絶縁体層および前記第2の絶縁体層の積層方向における、前記第1のコイル配線導体の厚みが、前記第2のコイル配線導体の厚みよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記第1のコイル配線導体における電流の流れる方向に垂直な断面での断面積が、前記第2のコイル配線導体における電流の流れる方向に垂直な断面での断面積と略同一であることを特徴とする請求項2に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
上面および下面に開口する第1の配線形成領域を有する第1のセラミックグリーンシートを準備する工程と、
前記第1の配線形成領域に第1の導体ペーストを充填する工程と、
上面および下面に開口する第2の配線形成領域を有する第2のセラミックグリーンシートを準備する工程と、
前記第2の配線形成領域に第2の導体ペーストを充填する工程と、
前記第2の導体ペーストおよび前記第1の導体ペーストの一方の端部同士が接合されるように、前記第2のセラミックグリーンシートを前記第1のセラミックグリーンシートの上面に積層して生積層体を形成する工程と、
前記生積層体を焼成する工程とを備え、
前記第1の導体ペーストおよび前記第2の導体ペーストを平面透視した場合に、前記第2の導体ペーストを、前記第1の導体ペーストを囲むように位置させることを特徴とする積層型電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記第1の導体ペーストの積層方向の厚みを、前記第2の導体ペーストの積層方向の厚みよりも大きくすることを特徴とする請求項4に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記第1のセラミックグリーンシートが略同一形状の複数のグリーンシートの積層構造として、該複数のグリーンシートの上下に重なった前記第1の配線形成領域のそれぞれに前記第1の導体ペーストを充填することを特徴とする請求項5に記載の積層型電子部品の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−160497(P2012−160497A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17365(P2011−17365)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】