積層塗膜構造及び積層塗膜形成方法
【課題】外板部2については第1塗料による塗膜6と第2塗料による塗膜7との積層によって特定色を出し、内板部1には第2塗料によって塗膜4を形成するようにした二重構造被塗物において、内板部1に塗膜4を形成した後、外板部2に第1塗料及び第2塗料を順に塗布したとき、内板部1に塗料ダストによって色違和感を招くことを防止する。
【解決手段】上記特定色の分光反射率(1BC+2BC)に対する塗膜6の塗色の分光反射率(1BC)の比率(1BC)/(1BC+2BC)を所定の範囲内に収める。
【解決手段】上記特定色の分光反射率(1BC+2BC)に対する塗膜6の塗色の分光反射率(1BC)の比率(1BC)/(1BC+2BC)を所定の範囲内に収める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層塗膜構造及び積層塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耐候性が要求される金属製品の塗装では、防錆用電着塗膜(下塗り塗膜)の上に中塗り塗膜を形成し、その上に上塗り塗膜を重ねる積層塗膜構造が一般に採用されている。例えば、自動車の車体塗装では、従来より、下塗り塗装(電着塗装)、中塗り塗装、上塗り塗装(ベース塗装及びクリヤ塗装)の順で行なわれ、その中塗り塗装及びベース塗装には溶剤型塗料が採用されてきた。中塗り塗膜は、耐光劣化性等を高めるために設けられており、例えば、エポキシ系カチオン電着塗料による下塗り塗膜は、紫外線が大量に照射されると、その表層部が劣化し、その上側の塗膜が剥離する。そこで、電着塗膜を中塗り塗膜によって紫外線から保護するようになされている。
【0003】
これに対して、省資源、省工程、コスト低減等の観点から、中塗り塗膜をなくし、電着塗膜の上に上塗り塗膜を直接重ねることもなされている。すなわち、ベース塗装に水性塗料を採用し、その水性ベース塗装を第1ベース塗膜及び第2ベース塗膜の二層コートとし、第1ベース塗膜に光線遮断効果を与えて中塗り塗装を省略するというものである。
【0004】
ところで、車体塗装では、ドア内側のピラー部、ボンネット内側のエンジンルーム等の内板部にベース塗料を塗布し、次いで、ドア等の外板部材を内板部に被せ、その状態で該外板部材を含む車体の外板部全体にベース塗料を塗布することがなされている。かかる塗装方法に関し、特許文献1には、内板部と外板部との境界付近にベース塗料が2回塗装されて膜厚が厚くなったり、内板部に塗料ダストが付着することにより、内板部のシェードでの色相違和感を生ずることを問題とし、内板部の塗膜のシェードの色相と外板部の塗膜のハイライトの色相とをほぼ同一にすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−93966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記車体の電着塗膜が形成された内板部及び外板部への塗装において、外板部のベース塗装を上述の第1ベース塗膜及び第2ベース塗膜の二層コートとする場合、その第2ベース塗膜と同じ塗料にて内板部に塗膜を形成すると、内板部と外板部の塗色を合わせ易い。その場合、例えば車体のBピラー(内板部)の塗装後、フロントドアとリヤドアとを閉じた状態にして車体外板部の塗装を塗装ガンにて行なうと、第1ベース塗膜形成時の塗料ダスト及び第2ベース塗膜形成時の塗料ダストがフロントドアとリヤドアとの隙間から内側に入ってBピラーに付着する。
【0007】
図1は上記塗装方法による内板部1及び外板部2の塗膜の状態を模式的に示す。すなわち、内板部1には電着塗膜3及び上塗り塗膜(2BC)4が積層されている。外板部2には電着塗膜5、第1ベース塗膜(1BC)6、第2ベース塗膜(2BC)7及びクリヤ塗膜8が積層されている。そして、内板部1の上塗り塗膜(2BC)4の表面には、外板部2,2の隙間9から入る塗料ダスト(1BCダスト)11及び塗料ダスト(2BCダスト)12が付着している。
【0008】
この場合、第1ベース塗膜(1BC)の塗色と第2ベース塗膜(2BC)の塗色とが同じであれば、内板部1に塗料ダスト(1BCダスト,2BCダスト)が付着しても、そのダスト付着部11,12は目立たない。しかし、先に説明したように、中塗り塗装を省くべく、ベース塗装を第1ベース塗膜及び第2ベース塗膜の二層コートとするケースでは、第1ベース塗膜に光線遮断機能をもたせる必要がある。そして、第1ベース塗膜の形成に光線遮断効果が高い顔料の塗料を用いたり、或いは光線遮断材を含有する塗料を用いると、これと同色系のベース塗料を第2ベース塗膜に用いても、第1ベース塗膜の塗色と第2ベース塗膜の塗色とは、顔料の相違、或いは光線遮断材の種類や添加量の違い等によって、必ずしも一致しなくなる。例えば、明度が相違することになる。そのため、内板部のダスト付着部の色合いが内板部の他の部分と異なり、違和感を与える可能性がある。
【0009】
そこで、本発明は、当該積層塗膜による光線遮断性を確保しつつ、所望の塗色を出すことに適し、且つ上述の如き違和感を与えることを防止することができる積層塗膜構造及び積層塗膜形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく種々の実験・検討を加えた結果、重ね塗りされた第1層と第2層の両塗膜によって特定色を出すようにした積層塗膜構造において、その特定色の分光反射率と第1層の塗色の分光反射率との比率を所定範囲に収めると、上述の塗料ダストに起因する色違和感の軽減ないし解消に有利になることを確認し、本発明を完成した。
【0011】
ここに、上記特定色としては無彩色と有彩色とに大別され、また、上述の如く塗色によっては、第1層の方が第2層よりも明度が低いケースと、逆に第2層の方が第1層よりも明度が低いケースとを生ずる。そこで、以下では場合分けして、本発明に係る解決手段を説明する。
【0012】
すなわち、被塗物上で重ね塗りされた下側の第1層及び上側の第2層の両塗膜によって特定色を出すようにした積層塗膜構造において、上記特定色が無彩色であり、上記第1層の塗色の明度が上記第2層の塗色の明度よりも低いケースでは、380nm〜780nmの可視波長域の全域において、上記特定色の分光反射率(1BC+2BC)に対する上記第1層の塗色の分光反射率(1BC)の比率(1BC)/(1BC+2BC)が0.8以上1.0以下となるようにする。
【0013】
上記積層塗膜構造において、上記特定色が有彩色であり、上記第1層の塗色の明度が上記第2層の塗色の明度よりも低いケースでは、マンセル色相環において上記特定色の色相を0としてマンセル色相環を百分割し、左廻り+50、右廻り−50で色相範囲を表示したとき、−5以上+5以下の範囲は、上記特定色の分光反射率(1BC+2BC)に対する上記第1層の塗色の分光反射率(1BC)の比率(1BC)/(1BC+2BC)が0.7以上1.0以下となり、上記色相範囲の表示において、−30以上+30以下の範囲の外側では、上記比率(1BC)/(1BC+2BC)が0.9以上1.1以下となるようにする。
【0014】
上記積層塗膜構造において、上記特定色が無彩色及び有彩色のいずれにおいても、上記第1層の塗色の明度が上記第2層の塗色の明度よりも高いケースでは、380nm〜780nmの可視波長域の全域において、上記特定色の分光反射率(1BC+2BC)に対する上記第1層の塗色の分光反射率(1BC)の比率(1BC)/(1BC+2BC)が1.0以上1.1以下となるようにする。
【0015】
上記いずれのケースにおいても、各々上記分光反射率の比率(1BC)/(1BC+2BC)を上述の如く構成したことにより、光線遮断性を確保しつつ、被塗物に所望の特定色を出すことが容易になる。また、被塗物が内板部と外板部とを有する二重構造体であるケースにおいて、内板部を上記第2層と同じ塗料にて塗装した後、内板部に外板部を被せて該外板部に上記第1層及び第2層の塗装を行ない、その塗料ダストが内板部に付着した場合でも、上記分光反射率の比率(1BC)/(1BC+2BC)を上述の如く構成したことにより、内板部に違和感を覚える塗色部分を生ずることが避けられる。
【0016】
上記各ケースにおいて、上記被塗物の表面には電着塗膜が形成され、上記第1層が該電着塗膜の表面に直接重なるように形成されている構成とすることができる。
【0017】
次に積層塗膜形成方法を説明する。それは、内板部と、該内板部に被せられる外板部とを有し、該外板部は、重ね塗りされた下側の第1層及び上側の第2層の両塗膜によって特定色を出すようにされ、上記内板部には上記第2層と同じ塗料によって塗膜を形成するようにした二重構造被塗物に対する積層塗膜形成方法であって、上記第1層を形成するための第1塗料と、上記第2層及び上記内板部の塗膜を形成するための第2塗料とを準備し、上記第2塗料を上記内板部に塗布した後、該内板部に上記外板部を被せ、該外板部に上記第1塗料及び第2塗料を順に塗布して上記第1層及び第2層の両塗膜を形成することを基本とする。
【0018】
そして、上記特定色が無彩色であり、上記第1塗料の塗色の明度が第2塗料の塗色の明度よりも低いケースでは、上記第1塗料及び第2塗料として、380nm〜780nmの可視波長域の全域において、上記特定色の分光反射率(1BC+2BC)に対する上記第1層の塗色の分光反射率(1BC)の比率(1BC)/(1BC+2BC)が0.8以上1.0以下となるものを採用する。
【0019】
上記特定色が有彩色であり、上記第1塗料の塗色の明度が第2塗料の塗色の明度よりも低いケースでは、上記第1塗料及び第2塗料として、マンセル色相環において上記特定色の色相を0としてマンセル色相環を百分割し、左廻り+50、右廻り−50で色相範囲を表示したとき、−5以上+5以下の範囲では、上記特定色の分光反射率(1BC+2BC)に対する上記第1層の塗色の分光反射率(1BC)の比率(1BC)/(1BC+2BC)が0.7以上1.0以下となり、上記色相範囲の表示において、−30以上+30以下の範囲の外側では、上記比率(1BC)/(1BC+2BC)が0.9以上1.1以下となるものを採用する。
【0020】
また、上記第1塗料の塗色の明度が第2塗料の塗色の明度よりも高いケースでは、上記特定色が無彩色及び有彩色のいずれにおいても、上記第1塗料及び第2塗料として、380nm〜780nmの可視波長域の全域において、上記特定色の分光反射率(1BC+2BC)に対する上記第1塗料の塗色の分光反射率(1BC)の比率(1BC)/(1BC+2BC)が1.0以上1.1以下となるものを採用する。
【0021】
上記各ケースの積層塗膜形成方法によれば、外板部の塗装時に上記第1塗料及び第2塗料のダストが内板部に付着した場合でも、上記分光反射率の比率(1BC)/(1BC+2BC)を上述の如く構成したことにより、内板部に違和感を覚える塗色部分を生ずることが避けられ、また、外板部において光線遮断性を確保しつつ、所望の特定色を出すことが容易になる。
【0022】
上記各ケースの積層塗膜形成方法において、上記外板部に対する上記第1塗料及び第2塗料の塗装はウェットオンウェットで行なうことが好ましい。これにより、上記内板部に付着する第1塗料のダストと第2塗料のダストとが混ざり合い易く、上記色の違和感を解消に有利になり、また、当該ダストに起因する塗膜平滑性の低下も抑制される。
【発明の効果】
【0023】
以上のように本発明によれば、特定色の分光反射率(1BC+2BC)に対する第1層の塗色の分光反射率(1BC)の比率(1BC)/(1BC+2BC)を所定の範囲に収めるようにしたから、光線遮断性を確保しつつ、上記第1層及び第2層の両塗膜によって被塗物表面に所望の特定色を出すことが容易になり、また、内板部と外板部とを有する二重構造体において、内板部を上記第2層と同じ塗料にて塗装した後、内板部に外板部を被せて該外板部に上記第1層及び第2層の塗装を行ない、その塗料ダストが内板部に付着する場合でも、内板部に違和感を覚える塗色部分を生ずることが避けられる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】二重構造被塗物の積層塗膜構造を模式的に示す断面図である。
【図2】無彩色系塗色(ホワイト1)の分光反射率を示すグラフ図である。
【図3】無彩色系塗色(シルバーメタリック1)の分光反射率を示すグラフ図である。
【図4】第1ベース塗膜の明度が第2ベース塗膜の明度よりも低い無彩色系塗色の分光反射率の比率を示すグラフ図である。
【図5】第1ベース塗膜の明度が第2ベース塗膜の明度よりも高い無彩色系塗色の分光反射率の比率を示すグラフ図である。
【図6】有彩色系塗色(レッドマイカ1)の分光反射率を示すグラフ図である。
【図7】第1ベース塗膜の明度が第2ベース塗膜の明度よりも低い有彩色系塗色の分光反射率の比率を示すグラフ図である。
【図8】マンセル色相環を示す図である。
【図9】マンセル色相環の色と波長との関係、及び数種の塗色の分光反射率の比率を示すグラフ図である。
【図10】青・緑系塗色の特定色相範囲の設定に関する説明図である。
【図11】赤・橙・黄系の特定色相範囲の設定に関する説明図である。
【図12】紫系の特定色相範囲の設定に関する説明図である。
【図13】有彩色系塗色(ブルーマイカ)の分光反射率を示すグラフ図である。
【図14】第1ベース塗膜の明度が第2ベース塗膜の明度よりも高い有彩色系塗色の分光反射率の比率を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0026】
図1は先に説明したように内板部1と該内板部1を覆う外板部2とを有する二重構造被塗物の積層塗膜構造を模式的に示すものである。このような二重構造被塗物は、自動車の車体でみられるものであり、例えば、車体のBピラーが内板部1に相当し、フロントドアが一方の外板部2に相当し、リヤドアが他方の外板部2に相当する。内板部1及び外板部2の各々の表面にはカチオン電着塗装によって電着塗膜3,5が形成されている。
【0027】
外板部2の電着塗膜5の上には、第1ベース塗膜(1BC)6と第2ベース塗膜(2BC)7とが相異なる塗色の水性ベース塗料にて形成されている。すなわち、第1ベース塗膜(1BC)6の形成には、光線遮断性が高い顔料を用いた水性ベース塗料が用いられ、第2ベース塗膜(2BC)7の形成には、光線遮断性が相対的に低い顔料、即ち、発色に有利な顔料を用いた水性ベース塗料が用いられている。この顔料の相違により、第1ベース塗膜(1BC)6と第2ベース塗膜(2BC)7とは、例えば色相は同じでも、少なくともその明度が相違することになる(塗色が相違する)。第2ベース塗膜(2BC)7の上にはクリヤ塗膜8が形成されている。
【0028】
内板部1の電着塗膜3の上には上塗り塗膜(2BC)4が形成されている。この上塗り塗膜(2BC)4の形成には、上記第2ベース塗膜(2BC)7と同じ水性ベース塗料が用いられている。
【0029】
このような塗膜構造は次の方法によって形成することができる。すなわち、塗装ガンを用いて、内板部1の電着塗膜3の上に第2ベース塗膜(2BC)7と同じ水性ベース塗料にて上塗り塗膜(2BC)4を形成する。そして、この内板部1に、電着塗膜5が形成された外板部2を被せる。その状態で、外板部2の電着塗膜5の上に、塗装ガンを用いて、光線遮断性が高い水性ベース塗料と光線遮断性が相対的に低い水性ベース塗料とをウェットオンウェットで塗装し、上記第1ベース塗膜(1BC)6及び第2ベース塗膜(2BC)7を形成する。この両ベース塗膜6,7を加熱硬化させた後、第2ベース塗膜(2BC)7の上にクリヤ塗料を塗布してクリヤ塗膜8を形成する。
【0030】
上記塗装方法の場合、外板部2に第1ベース塗膜(1BC)6の塗装時にその塗料ダスト(1BCダスト)が外板部2,2の隙間9から内側に入る。さらに、第2ベース塗膜(2BC)7の塗装時にも、その塗料ダスト(2BCダスト)が外板部2,2の隙間9から内側に入る。このため、内板部1の上塗り塗膜(2BC)4の表面には、塗料ダスト(1BCダスト)11及び塗料ダスト(2BCダスト)12が、隙間9に沿ってすじ状に付着する。なお、同図において、符号13は内板部1のクリヤ塗膜である。
【0031】
本発明は、上記内板部1の上塗り塗膜(2BC)4の表面に上記塗料ダスト11,12がすじ状に付着しても目立たないようにした、外板部2に対するベース塗装技術を開発を構成した。以下、具体的に説明する。
【0032】
<実施形態1>
この実施形態は、第1ベース塗膜(1BC)6及び第2ベース塗膜(2BC)7によって外板部に無彩色系の塗色を得るケースである。
【0033】
第1ベース塗膜(1BC)用の、光線遮断性が相対的に高い白色系(ホワイト1)の第1ベース塗料、並びに第2ベース塗膜(2BC)及び内板部用の、光線遮断性が相対的に低い白色系(ホワイト1)の第2ベース塗料を調製した。そして、上記塗装方法によって内板部1及び外板部2の塗装を行なったところ、内板部2の上塗り塗膜(2BC)4の表面に塗料ダスト(1BCダスト)11及び塗料ダスト(2BCダスト)12がすじ状に付着しているにも拘わらず、その塗料ダストによる色の違和感は認められなかった。
【0034】
一方、光線遮断性が相対的に高いシルバー系(シルバーメタリック1)の第1ベース塗料、及び光線遮断性が相対的に低いシルバー系(シルバーメタリック1)の第2ベース塗料を調製し、上記白色系の場合と同様に内板部1及び外板部2の塗装を行なったところ、内板部2の塗色に違和感があった(塗料ダストがすじ状に付着していることが目視でわかった)。
【0035】
そこで、上記白色系(ホワイト1)の第1ベース塗料及び第2ベース塗料について、この両ベース塗料を電着塗膜上にウェットオンウェットで順に塗装した試験片(1BC+2BC)と、電着塗膜上に第1ベース塗料のみを塗装した試験片(1BC)とを作製し、それら試験片の塗膜の分光反射率を分光光度計にて測定した。測定結果を図2に示す。
【0036】
また、上記シルバー系(シルバーメタリック1)の第1ベース塗料及び第2ベース塗料についても、上記白色系の場合と同様にして、両ベース塗料を順に塗装した試験片(1BC+2BC)と、第1ベース塗料のみを塗装した試験片(1BC)とを作製し、それら試験片の塗膜の分光反射率を分光光度計にて測定した。測定結果を図3に示す。
【0037】
図2及び図3によれば、上記ホワイト1及びシルバーメタリック1のいずれも、試験片(1BC)の塗色の方が、試験片(1BC+2BC)の塗色よりも反射率が低い。明度の高低と分光反射率とには強い相関性があるから、第1ベース塗膜(1BC)の塗色の明度が第2ベース塗膜の塗色の明度よりも低い(暗い)ことがわかる。
【0038】
次に上記ホワイト1及びシルバーメタリック1各々について、試験片(1BC+2BC)の塗色の分光反射率に対する試験片(1BC)の塗色の分光反射率の比率(1BC)/(1BC+2BC)を求めた。その結果を図4に示す。塗料ダストによる色違和感がなかったホワイト1では、380nm〜780nmの可視波長域の全域において、上記比率が0.8〜1.0(「0.8以上1.0以下」のこと。以下、「○○〜××」は「○○以上××以下」の意味で使用している)の範囲に収まっている。これに対して、塗料ダストによる色違和感がみられたシルバーメタリック1では、上記比率が0.7以下になっている。
【0039】
明度の高低と分光反射率とは相関性が高いことから、上記比率は、第1ベース塗料と第2ベース塗料との積層塗膜によって得られる塗色の明度に対して、第1ベース塗料の塗膜が与える影響を評価する指標となる。そして、上記比率が1.0に近いということは、第1ベース塗料の塗膜と第2ベース塗料の塗膜とを積層しても、第2ベース塗料のみの塗膜と比べて、塗色の明度差が小さいということができる。このことを上記塗料ダストについてみると次のようになる。
【0040】
すなわち、内板部の上塗り塗膜(2BC)に塗料ダスト(2BC)のみが付着するときは、同じ第2ベース塗料であるから、色に違和感を生じない。その上塗り塗膜(2BC)に塗料ダスト(2BC)だけでなく、塗料ダスト(1BC)が併せて付着するときは、色に違和感を生ずる可能性が出てくる。上記ホワイト1の場合、上記比率が1.0に近いから、塗料ダスト(1BC)が塗色の明度に与える影響が小さく、そのため、色違和感がなかったと認められる。これに対して、上記シルバーメタリック1の場合、上記比率が0.7以下であるから、塗料ダスト(1BC)が塗色の明度に与える影響が大きく、そのため、色に違和感を覚える結果になったと認められる。
【0041】
図4には、上記ホワイト1及びシルバーメタリック1以外に、ホワイト2、ホワイト3及びシルバーメタリック2の各塗色の分光反射率の比率(1BC)/(1BC+2BC)についても併せて示している。これらホワイト2、ホワイト3及びシルバーメタリック2も、分光反射率の測定の結果、光線遮断性が相対的に高い第1ベース塗料による塗色の明度の方が、光線遮断性が相対的に低い第2ベース塗料による塗色の明度よりも低かったものである。
【0042】
そして、ホワイト2及びホワイト3は、分光反射率の比率が部分的に0.8以上になっている波長域もあるが、概ね0.8未満になっており、シルバーメタリック2は全波長域で当該比率が0.7以下になっている。従って、これらホワイト2、ホワイト3及びシルバーメタリック2は、上記ホワイト1及びシルバーメタリック1の結果から、塗料ダストによる色違和感を招くことが予測されるが、上記塗装方法による試験を行なった結果、やはり色違和感が認められた。図4では、色違和感がなかった塗色に○印を与え、色違和感があった塗色に×印を与えている。この点は後に説明する図5、図7及び図13も同じである。表1は上記各塗色(及び後述の他の塗色)の比率等をまとめたものである。
【0043】
【表1】
【0044】
以上から、無彩色系のベース塗料の場合、第1ベース塗料による塗色の明度が第2ベース塗料による塗色の明度よりも低いケースでは、380nm〜780nmの可視波長域の全域において、分光反射率の比率(1BC)/(1BC+2BC)を0.8以上1.0以下とすることが、色違和感の防止に有効であることがわかる。
【0045】
次に無彩色系のベース塗料において、光線遮断性が相対的に高い第1ベース塗料による塗色の明度が、光線遮断性が相対的に低い第2ベース塗料による塗色の明度よりも高いケースについて説明する。図5はシルバーメタリック3のベース塗料に係る分光反射率の比率(1BC)/(1BC+2BC)を示す。同図から明らかなように、上記比率が1以上になっているから、このシルバーメタリック3の場合は、第1ベース塗料による塗色の明度の方が第2ベース塗料による塗色の明度よりも高いことがわかる。
【0046】
しかし、このシルバーメタリック3では、上記塗装方法では内板部に色違和感が認められた。そして、図5では、上記比率が1.1を越えている波長域がある。先に説明した第1ベース塗料による塗色の明度が第2ベース塗料による塗色の明度よりも低いケースでは、上記比率が1.0に近いほど、第1ベース塗料及び第2ベース塗料による積層塗膜の塗色と第2ベース塗料のみの塗膜の塗色との明度差が小さく、塗料ダストによる色違和感が出にくいという結果が得られた。このことが、第1ベース塗料による塗色の明度が第2ベース塗料による塗色の明度よりも高いケースについても妥当するであろうことは、当業者であれば、容易に理解できることである。そして、図5に示すように上記比率が1.1を越えている波長域が部分的にある場合に色違和感が認められるから、全波長域(380nm〜780nm)において、上記比率が1.0〜1.1の範囲に収まる場合は、色違和感が軽減される、ひいては色違和感が出なくなるということができる。
【0047】
<実施形態2>
この実施形態は、第1ベース塗膜(1BC)6及び第2ベース塗膜(2BC)7によって外板部2に有彩色系の塗色を得るケースである。
【0048】
光線遮断性が相対的に高い赤色系(レッドマイカ1)の第1ベース塗料、並びに光線遮断性が相対的に低い赤色系(レッドマイカ1)の第2ベース塗料を調製した。そして、上記塗装方法によって内板部1及び外板部2の塗装を行なったところ、内板部1の上塗り塗膜(2BC)4の表面に塗料ダスト(1BCダスト)11及び塗料ダスト(2BCダスト)12がすじ状に付着しているにも拘わらず、その塗料ダストによる色の違和感は認められなかった。
【0049】
そこで、上記第1ベース塗料及び第2ベース塗料について、この両ベース塗料を電着塗膜上にウェットオンウェットで順に塗装した試験片(1BC+2BC)と、電着塗膜上に第1ベース塗料のみを塗装した試験片(1BC)とを作製し、それら試験片の塗膜の分光反射率を分光光度計にて測定した。測定結果を図6に示す。試験片(1BC)の塗色の方が、試験片(1BC+2BC)の塗色よりも反射率が低いから、第1ベース塗膜(1BC)の塗色の明度が第2ベース塗膜の塗色の明度よりも低い(暗い)ことがわかる。
【0050】
次に分光反射率の比率(1BC)/(1BC+2BC)を求めた。その結果を図7に示す。また、同図には、レッドマイカ1の他に、レッド、レッドマイカ2、オレンジマイカ1、イエロー、グリーンマイカ及びブルーメタリックの各塗色の分光反射率の比率(1BC)/(1BC+2BC)についても併せて示している。これらは、分光反射率の測定の結果、光線遮断性が相対的に高い第1ベース塗料による塗色の明度の方が、光線遮断性が相対的に低い第2ベース塗料による塗色の明度よりも低かったものである。
【0051】
なお、レッド及びイエローに関しては、短波長側において分光反射率の比率(1BC)/(1BC+2BC)が1よりも大きくなっているが、分光反射率が大きい波長域(レッドでは620nmよりも長波長側、イエローでは580nm付近)では上記比率が1以下になっているため、このレッド及びイエローも、第1ベース塗料による塗色の明度の方が第2ベース塗料による塗色の明度よりも低くなっているものである。
【0052】
そこで、図7の○印を付した各塗色(色違和感がなかったもの)の上記分光反射率の比率を、各塗色に対応する特定色相範囲に係る波長域と、その色相範囲外の波長域(以下、「範囲外波長域」という。)とに分けて検討する。特定色相範囲は、図8に示すマンセル色相環における当該塗色の色相を基準として設定する。図9はマンセル色相環の色と波長との関係を示す参考図であり、いくつかの塗色の分光反射率の比率を参考のために載せている。
【0053】
すなわち、マンセル色相環において、当該塗色の色相を0としてマンセル色相環を百分割し左廻り+50、右廻り−50で色相範囲を表示したときの、−5以上+5以下の範囲を当該塗色の特定色相範囲とする。各塗色の色相は、青・緑系塗色では、図10に示すように分光反射率がピークとなる波長に設定し、赤・橙・黄系では、図11に示すように波長の増大に伴って分光反射率が大きくなり始める波長から最大波長780nmに至る増大波長域の中央の波長に設定する。図12に示すように、短波長側に分光反射率のピークが現れるとともに、長波長側に上記赤・橙・黄系と同様の増大波長域を有する塗色(例えば、紫)では、色相環と同じように、780nmと380nmとを結合した波長環において、波長の増大に伴って分光反射率が大きくなり始める波長(図例では620nm)から、短波長側の反射が弱くなる波長(図例では500nm)至る波長域の中央の波長(図例では760nm)に、当該塗色の色相を設定する。
【0054】
上記範囲外波長域は、上記百分割のマンセル色相環による色相範囲の表示において、当該塗色の色相を0とする−30以上+30以下の範囲より外側の波長域とする。
【0055】
図7において、色違和感のないオレンジマイカ1をみると、その分光反射率の比率は、特定色相範囲(およそ590nm〜630nm)では、0.7〜1.0の範囲にあり、範囲外波長域ではおよそ0.9〜1.1の範囲にある。同じく色違和感のないレッドマイカ1及びグリーンマイカ各々の分光反射率の比率は、特定色相範囲では0.7〜1.0の範囲にあり、範囲外波長域では0.9〜1.1の範囲にある。
【0056】
これに対して、色違和感があるレッドの場合、上記比率は、特定色相範囲ではおよそ0.7〜1.0の範囲にあるが、範囲外波長域では1.1を越えている。色違和感があるレッドマイカ2の場合、特定色相範囲では上記比率が0.7未満になっている。色違和感があるイエローの場合、上記比率は、特定色相範囲ではおよそ0.7〜1.0の範囲にあるが、範囲外波長域では1.1を越えている。色違和感があるブルーメタリックの場合、特定色相範囲では上記比率が0.7未満になっている。
【0057】
以上から、有彩色系のベース塗料の場合、第1ベース塗料による塗色の明度が第2ベース塗料による塗色の明度よりも低いケースでは、分光反射率の比率(1BC)/(1BC+2BC)を、特定色相範囲では0.7〜1.0の範囲に収め、範囲外波長域では0.9〜1.1の範囲に収めることが、色違和感の防止に有効であることがわかる。
【0058】
次に有彩色のベース塗料において、光線遮断性が相対的に高い第1ベース塗料による塗色の明度が、光線遮断性が相対的に低い第2ベース塗料による塗色の明度よりも高いケースについて説明する。
【0059】
有彩色系塗色のブルーマイカに関し、光線遮断性が相対的に高い第1ベース塗料、並びに光線遮断性が相対的に低い第2ベース塗料を調製した。そして、上記塗装方法によって内板部1及び外板部2の塗装を行なったところ、内板部2の上塗り塗膜(2BC)4の表面に塗料ダスト(1BCダスト)11及び塗料ダスト(2BCダスト)12がすじ状に付着しているにも拘わらず、その塗料ダストによる色の違和感は認められなかった。
【0060】
そこで、上記両ベース塗料を電着塗膜上にウェットオンウェットで順に塗装した試験片(1BC+2BC)と、電着塗膜上に第1ベース塗料のみを塗装した試験片(1BC)とを作製し、それら試験片の塗膜の分光反射率を分光光度計にて測定した。結果を図13に示す。同図からは少しわかりにくいが、このブルーマイカの場合、第1ベース塗料による塗色の明度が第2ベース塗料による塗色の明度よりも若干高い。
【0061】
次に分光反射率の比率(1BC)/(1BC+2BC)を求めた。その結果を図14に示す。また、同図には、ブルーマイカの他に、レッドマイカ3、オレンジマイカ2、イエローメタリック及びグリーンメタリックの各塗色の分光反射率の比率(1BC)/(1BC+2BC)についても併せて示している。これらは、上記比率が1.0以上になっているから、光線遮断性が相対的に高い第1ベース塗料による塗色の明度の方が、光線遮断性が相対的に低い第2ベース塗料による塗色の明度よりも高いことがわかる。
【0062】
まず、○印を付したブルーマイカ(色違和感がなかったもの)について検討するに、その比率は全波長域(380nm〜780nm)にわたって略1.0になっている。これに対して、×印を付した各塗色(色違和感があったもの)をみると、レッドマイカ3及びオレンジマイカ2では、650nm以上の長波長域では上記比率が1.2以下になっているものの、他の波長域では上記比率が非常に大きくなっている。イエローメタリックの場合は、上述の特定色相範囲を含む500nm付近から長波長域では上記比率が1.1以下になっているものの、それよりも低波長側では1.1を越えて1.2付近の値になっている。グリーンメタリックでは、その特定色相範囲付近(540nm付近)では上記比率が1.1以下になっているものの、他の波長域では1.2以上になっている。
【0063】
以上から、有彩色系において、第1ベース塗料による塗色の明度の方が第2ベース塗料による塗色の明度よりも高いケースでは、当該塗色の特定色相範囲での上記比率が小さいだけでは色違和感が出ることから、全波長域(380nm〜780nm)にわたって上記比率が小さいことが必要であり、その比率は1.0〜1.1の範囲に収まることが好ましいということができる。
【符号の説明】
【0064】
1 内板部
2 外板部
3 電着塗膜
4 上塗り塗膜(2BC)
5 電着塗膜
6 第1ベース塗膜(1BC)
7 第2ベース塗膜(2BC)
8 クリヤ塗膜
9 隙間
11 塗料ダスト
12 塗料ダスト
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層塗膜構造及び積層塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耐候性が要求される金属製品の塗装では、防錆用電着塗膜(下塗り塗膜)の上に中塗り塗膜を形成し、その上に上塗り塗膜を重ねる積層塗膜構造が一般に採用されている。例えば、自動車の車体塗装では、従来より、下塗り塗装(電着塗装)、中塗り塗装、上塗り塗装(ベース塗装及びクリヤ塗装)の順で行なわれ、その中塗り塗装及びベース塗装には溶剤型塗料が採用されてきた。中塗り塗膜は、耐光劣化性等を高めるために設けられており、例えば、エポキシ系カチオン電着塗料による下塗り塗膜は、紫外線が大量に照射されると、その表層部が劣化し、その上側の塗膜が剥離する。そこで、電着塗膜を中塗り塗膜によって紫外線から保護するようになされている。
【0003】
これに対して、省資源、省工程、コスト低減等の観点から、中塗り塗膜をなくし、電着塗膜の上に上塗り塗膜を直接重ねることもなされている。すなわち、ベース塗装に水性塗料を採用し、その水性ベース塗装を第1ベース塗膜及び第2ベース塗膜の二層コートとし、第1ベース塗膜に光線遮断効果を与えて中塗り塗装を省略するというものである。
【0004】
ところで、車体塗装では、ドア内側のピラー部、ボンネット内側のエンジンルーム等の内板部にベース塗料を塗布し、次いで、ドア等の外板部材を内板部に被せ、その状態で該外板部材を含む車体の外板部全体にベース塗料を塗布することがなされている。かかる塗装方法に関し、特許文献1には、内板部と外板部との境界付近にベース塗料が2回塗装されて膜厚が厚くなったり、内板部に塗料ダストが付着することにより、内板部のシェードでの色相違和感を生ずることを問題とし、内板部の塗膜のシェードの色相と外板部の塗膜のハイライトの色相とをほぼ同一にすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−93966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記車体の電着塗膜が形成された内板部及び外板部への塗装において、外板部のベース塗装を上述の第1ベース塗膜及び第2ベース塗膜の二層コートとする場合、その第2ベース塗膜と同じ塗料にて内板部に塗膜を形成すると、内板部と外板部の塗色を合わせ易い。その場合、例えば車体のBピラー(内板部)の塗装後、フロントドアとリヤドアとを閉じた状態にして車体外板部の塗装を塗装ガンにて行なうと、第1ベース塗膜形成時の塗料ダスト及び第2ベース塗膜形成時の塗料ダストがフロントドアとリヤドアとの隙間から内側に入ってBピラーに付着する。
【0007】
図1は上記塗装方法による内板部1及び外板部2の塗膜の状態を模式的に示す。すなわち、内板部1には電着塗膜3及び上塗り塗膜(2BC)4が積層されている。外板部2には電着塗膜5、第1ベース塗膜(1BC)6、第2ベース塗膜(2BC)7及びクリヤ塗膜8が積層されている。そして、内板部1の上塗り塗膜(2BC)4の表面には、外板部2,2の隙間9から入る塗料ダスト(1BCダスト)11及び塗料ダスト(2BCダスト)12が付着している。
【0008】
この場合、第1ベース塗膜(1BC)の塗色と第2ベース塗膜(2BC)の塗色とが同じであれば、内板部1に塗料ダスト(1BCダスト,2BCダスト)が付着しても、そのダスト付着部11,12は目立たない。しかし、先に説明したように、中塗り塗装を省くべく、ベース塗装を第1ベース塗膜及び第2ベース塗膜の二層コートとするケースでは、第1ベース塗膜に光線遮断機能をもたせる必要がある。そして、第1ベース塗膜の形成に光線遮断効果が高い顔料の塗料を用いたり、或いは光線遮断材を含有する塗料を用いると、これと同色系のベース塗料を第2ベース塗膜に用いても、第1ベース塗膜の塗色と第2ベース塗膜の塗色とは、顔料の相違、或いは光線遮断材の種類や添加量の違い等によって、必ずしも一致しなくなる。例えば、明度が相違することになる。そのため、内板部のダスト付着部の色合いが内板部の他の部分と異なり、違和感を与える可能性がある。
【0009】
そこで、本発明は、当該積層塗膜による光線遮断性を確保しつつ、所望の塗色を出すことに適し、且つ上述の如き違和感を与えることを防止することができる積層塗膜構造及び積層塗膜形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく種々の実験・検討を加えた結果、重ね塗りされた第1層と第2層の両塗膜によって特定色を出すようにした積層塗膜構造において、その特定色の分光反射率と第1層の塗色の分光反射率との比率を所定範囲に収めると、上述の塗料ダストに起因する色違和感の軽減ないし解消に有利になることを確認し、本発明を完成した。
【0011】
ここに、上記特定色としては無彩色と有彩色とに大別され、また、上述の如く塗色によっては、第1層の方が第2層よりも明度が低いケースと、逆に第2層の方が第1層よりも明度が低いケースとを生ずる。そこで、以下では場合分けして、本発明に係る解決手段を説明する。
【0012】
すなわち、被塗物上で重ね塗りされた下側の第1層及び上側の第2層の両塗膜によって特定色を出すようにした積層塗膜構造において、上記特定色が無彩色であり、上記第1層の塗色の明度が上記第2層の塗色の明度よりも低いケースでは、380nm〜780nmの可視波長域の全域において、上記特定色の分光反射率(1BC+2BC)に対する上記第1層の塗色の分光反射率(1BC)の比率(1BC)/(1BC+2BC)が0.8以上1.0以下となるようにする。
【0013】
上記積層塗膜構造において、上記特定色が有彩色であり、上記第1層の塗色の明度が上記第2層の塗色の明度よりも低いケースでは、マンセル色相環において上記特定色の色相を0としてマンセル色相環を百分割し、左廻り+50、右廻り−50で色相範囲を表示したとき、−5以上+5以下の範囲は、上記特定色の分光反射率(1BC+2BC)に対する上記第1層の塗色の分光反射率(1BC)の比率(1BC)/(1BC+2BC)が0.7以上1.0以下となり、上記色相範囲の表示において、−30以上+30以下の範囲の外側では、上記比率(1BC)/(1BC+2BC)が0.9以上1.1以下となるようにする。
【0014】
上記積層塗膜構造において、上記特定色が無彩色及び有彩色のいずれにおいても、上記第1層の塗色の明度が上記第2層の塗色の明度よりも高いケースでは、380nm〜780nmの可視波長域の全域において、上記特定色の分光反射率(1BC+2BC)に対する上記第1層の塗色の分光反射率(1BC)の比率(1BC)/(1BC+2BC)が1.0以上1.1以下となるようにする。
【0015】
上記いずれのケースにおいても、各々上記分光反射率の比率(1BC)/(1BC+2BC)を上述の如く構成したことにより、光線遮断性を確保しつつ、被塗物に所望の特定色を出すことが容易になる。また、被塗物が内板部と外板部とを有する二重構造体であるケースにおいて、内板部を上記第2層と同じ塗料にて塗装した後、内板部に外板部を被せて該外板部に上記第1層及び第2層の塗装を行ない、その塗料ダストが内板部に付着した場合でも、上記分光反射率の比率(1BC)/(1BC+2BC)を上述の如く構成したことにより、内板部に違和感を覚える塗色部分を生ずることが避けられる。
【0016】
上記各ケースにおいて、上記被塗物の表面には電着塗膜が形成され、上記第1層が該電着塗膜の表面に直接重なるように形成されている構成とすることができる。
【0017】
次に積層塗膜形成方法を説明する。それは、内板部と、該内板部に被せられる外板部とを有し、該外板部は、重ね塗りされた下側の第1層及び上側の第2層の両塗膜によって特定色を出すようにされ、上記内板部には上記第2層と同じ塗料によって塗膜を形成するようにした二重構造被塗物に対する積層塗膜形成方法であって、上記第1層を形成するための第1塗料と、上記第2層及び上記内板部の塗膜を形成するための第2塗料とを準備し、上記第2塗料を上記内板部に塗布した後、該内板部に上記外板部を被せ、該外板部に上記第1塗料及び第2塗料を順に塗布して上記第1層及び第2層の両塗膜を形成することを基本とする。
【0018】
そして、上記特定色が無彩色であり、上記第1塗料の塗色の明度が第2塗料の塗色の明度よりも低いケースでは、上記第1塗料及び第2塗料として、380nm〜780nmの可視波長域の全域において、上記特定色の分光反射率(1BC+2BC)に対する上記第1層の塗色の分光反射率(1BC)の比率(1BC)/(1BC+2BC)が0.8以上1.0以下となるものを採用する。
【0019】
上記特定色が有彩色であり、上記第1塗料の塗色の明度が第2塗料の塗色の明度よりも低いケースでは、上記第1塗料及び第2塗料として、マンセル色相環において上記特定色の色相を0としてマンセル色相環を百分割し、左廻り+50、右廻り−50で色相範囲を表示したとき、−5以上+5以下の範囲では、上記特定色の分光反射率(1BC+2BC)に対する上記第1層の塗色の分光反射率(1BC)の比率(1BC)/(1BC+2BC)が0.7以上1.0以下となり、上記色相範囲の表示において、−30以上+30以下の範囲の外側では、上記比率(1BC)/(1BC+2BC)が0.9以上1.1以下となるものを採用する。
【0020】
また、上記第1塗料の塗色の明度が第2塗料の塗色の明度よりも高いケースでは、上記特定色が無彩色及び有彩色のいずれにおいても、上記第1塗料及び第2塗料として、380nm〜780nmの可視波長域の全域において、上記特定色の分光反射率(1BC+2BC)に対する上記第1塗料の塗色の分光反射率(1BC)の比率(1BC)/(1BC+2BC)が1.0以上1.1以下となるものを採用する。
【0021】
上記各ケースの積層塗膜形成方法によれば、外板部の塗装時に上記第1塗料及び第2塗料のダストが内板部に付着した場合でも、上記分光反射率の比率(1BC)/(1BC+2BC)を上述の如く構成したことにより、内板部に違和感を覚える塗色部分を生ずることが避けられ、また、外板部において光線遮断性を確保しつつ、所望の特定色を出すことが容易になる。
【0022】
上記各ケースの積層塗膜形成方法において、上記外板部に対する上記第1塗料及び第2塗料の塗装はウェットオンウェットで行なうことが好ましい。これにより、上記内板部に付着する第1塗料のダストと第2塗料のダストとが混ざり合い易く、上記色の違和感を解消に有利になり、また、当該ダストに起因する塗膜平滑性の低下も抑制される。
【発明の効果】
【0023】
以上のように本発明によれば、特定色の分光反射率(1BC+2BC)に対する第1層の塗色の分光反射率(1BC)の比率(1BC)/(1BC+2BC)を所定の範囲に収めるようにしたから、光線遮断性を確保しつつ、上記第1層及び第2層の両塗膜によって被塗物表面に所望の特定色を出すことが容易になり、また、内板部と外板部とを有する二重構造体において、内板部を上記第2層と同じ塗料にて塗装した後、内板部に外板部を被せて該外板部に上記第1層及び第2層の塗装を行ない、その塗料ダストが内板部に付着する場合でも、内板部に違和感を覚える塗色部分を生ずることが避けられる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】二重構造被塗物の積層塗膜構造を模式的に示す断面図である。
【図2】無彩色系塗色(ホワイト1)の分光反射率を示すグラフ図である。
【図3】無彩色系塗色(シルバーメタリック1)の分光反射率を示すグラフ図である。
【図4】第1ベース塗膜の明度が第2ベース塗膜の明度よりも低い無彩色系塗色の分光反射率の比率を示すグラフ図である。
【図5】第1ベース塗膜の明度が第2ベース塗膜の明度よりも高い無彩色系塗色の分光反射率の比率を示すグラフ図である。
【図6】有彩色系塗色(レッドマイカ1)の分光反射率を示すグラフ図である。
【図7】第1ベース塗膜の明度が第2ベース塗膜の明度よりも低い有彩色系塗色の分光反射率の比率を示すグラフ図である。
【図8】マンセル色相環を示す図である。
【図9】マンセル色相環の色と波長との関係、及び数種の塗色の分光反射率の比率を示すグラフ図である。
【図10】青・緑系塗色の特定色相範囲の設定に関する説明図である。
【図11】赤・橙・黄系の特定色相範囲の設定に関する説明図である。
【図12】紫系の特定色相範囲の設定に関する説明図である。
【図13】有彩色系塗色(ブルーマイカ)の分光反射率を示すグラフ図である。
【図14】第1ベース塗膜の明度が第2ベース塗膜の明度よりも高い有彩色系塗色の分光反射率の比率を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0026】
図1は先に説明したように内板部1と該内板部1を覆う外板部2とを有する二重構造被塗物の積層塗膜構造を模式的に示すものである。このような二重構造被塗物は、自動車の車体でみられるものであり、例えば、車体のBピラーが内板部1に相当し、フロントドアが一方の外板部2に相当し、リヤドアが他方の外板部2に相当する。内板部1及び外板部2の各々の表面にはカチオン電着塗装によって電着塗膜3,5が形成されている。
【0027】
外板部2の電着塗膜5の上には、第1ベース塗膜(1BC)6と第2ベース塗膜(2BC)7とが相異なる塗色の水性ベース塗料にて形成されている。すなわち、第1ベース塗膜(1BC)6の形成には、光線遮断性が高い顔料を用いた水性ベース塗料が用いられ、第2ベース塗膜(2BC)7の形成には、光線遮断性が相対的に低い顔料、即ち、発色に有利な顔料を用いた水性ベース塗料が用いられている。この顔料の相違により、第1ベース塗膜(1BC)6と第2ベース塗膜(2BC)7とは、例えば色相は同じでも、少なくともその明度が相違することになる(塗色が相違する)。第2ベース塗膜(2BC)7の上にはクリヤ塗膜8が形成されている。
【0028】
内板部1の電着塗膜3の上には上塗り塗膜(2BC)4が形成されている。この上塗り塗膜(2BC)4の形成には、上記第2ベース塗膜(2BC)7と同じ水性ベース塗料が用いられている。
【0029】
このような塗膜構造は次の方法によって形成することができる。すなわち、塗装ガンを用いて、内板部1の電着塗膜3の上に第2ベース塗膜(2BC)7と同じ水性ベース塗料にて上塗り塗膜(2BC)4を形成する。そして、この内板部1に、電着塗膜5が形成された外板部2を被せる。その状態で、外板部2の電着塗膜5の上に、塗装ガンを用いて、光線遮断性が高い水性ベース塗料と光線遮断性が相対的に低い水性ベース塗料とをウェットオンウェットで塗装し、上記第1ベース塗膜(1BC)6及び第2ベース塗膜(2BC)7を形成する。この両ベース塗膜6,7を加熱硬化させた後、第2ベース塗膜(2BC)7の上にクリヤ塗料を塗布してクリヤ塗膜8を形成する。
【0030】
上記塗装方法の場合、外板部2に第1ベース塗膜(1BC)6の塗装時にその塗料ダスト(1BCダスト)が外板部2,2の隙間9から内側に入る。さらに、第2ベース塗膜(2BC)7の塗装時にも、その塗料ダスト(2BCダスト)が外板部2,2の隙間9から内側に入る。このため、内板部1の上塗り塗膜(2BC)4の表面には、塗料ダスト(1BCダスト)11及び塗料ダスト(2BCダスト)12が、隙間9に沿ってすじ状に付着する。なお、同図において、符号13は内板部1のクリヤ塗膜である。
【0031】
本発明は、上記内板部1の上塗り塗膜(2BC)4の表面に上記塗料ダスト11,12がすじ状に付着しても目立たないようにした、外板部2に対するベース塗装技術を開発を構成した。以下、具体的に説明する。
【0032】
<実施形態1>
この実施形態は、第1ベース塗膜(1BC)6及び第2ベース塗膜(2BC)7によって外板部に無彩色系の塗色を得るケースである。
【0033】
第1ベース塗膜(1BC)用の、光線遮断性が相対的に高い白色系(ホワイト1)の第1ベース塗料、並びに第2ベース塗膜(2BC)及び内板部用の、光線遮断性が相対的に低い白色系(ホワイト1)の第2ベース塗料を調製した。そして、上記塗装方法によって内板部1及び外板部2の塗装を行なったところ、内板部2の上塗り塗膜(2BC)4の表面に塗料ダスト(1BCダスト)11及び塗料ダスト(2BCダスト)12がすじ状に付着しているにも拘わらず、その塗料ダストによる色の違和感は認められなかった。
【0034】
一方、光線遮断性が相対的に高いシルバー系(シルバーメタリック1)の第1ベース塗料、及び光線遮断性が相対的に低いシルバー系(シルバーメタリック1)の第2ベース塗料を調製し、上記白色系の場合と同様に内板部1及び外板部2の塗装を行なったところ、内板部2の塗色に違和感があった(塗料ダストがすじ状に付着していることが目視でわかった)。
【0035】
そこで、上記白色系(ホワイト1)の第1ベース塗料及び第2ベース塗料について、この両ベース塗料を電着塗膜上にウェットオンウェットで順に塗装した試験片(1BC+2BC)と、電着塗膜上に第1ベース塗料のみを塗装した試験片(1BC)とを作製し、それら試験片の塗膜の分光反射率を分光光度計にて測定した。測定結果を図2に示す。
【0036】
また、上記シルバー系(シルバーメタリック1)の第1ベース塗料及び第2ベース塗料についても、上記白色系の場合と同様にして、両ベース塗料を順に塗装した試験片(1BC+2BC)と、第1ベース塗料のみを塗装した試験片(1BC)とを作製し、それら試験片の塗膜の分光反射率を分光光度計にて測定した。測定結果を図3に示す。
【0037】
図2及び図3によれば、上記ホワイト1及びシルバーメタリック1のいずれも、試験片(1BC)の塗色の方が、試験片(1BC+2BC)の塗色よりも反射率が低い。明度の高低と分光反射率とには強い相関性があるから、第1ベース塗膜(1BC)の塗色の明度が第2ベース塗膜の塗色の明度よりも低い(暗い)ことがわかる。
【0038】
次に上記ホワイト1及びシルバーメタリック1各々について、試験片(1BC+2BC)の塗色の分光反射率に対する試験片(1BC)の塗色の分光反射率の比率(1BC)/(1BC+2BC)を求めた。その結果を図4に示す。塗料ダストによる色違和感がなかったホワイト1では、380nm〜780nmの可視波長域の全域において、上記比率が0.8〜1.0(「0.8以上1.0以下」のこと。以下、「○○〜××」は「○○以上××以下」の意味で使用している)の範囲に収まっている。これに対して、塗料ダストによる色違和感がみられたシルバーメタリック1では、上記比率が0.7以下になっている。
【0039】
明度の高低と分光反射率とは相関性が高いことから、上記比率は、第1ベース塗料と第2ベース塗料との積層塗膜によって得られる塗色の明度に対して、第1ベース塗料の塗膜が与える影響を評価する指標となる。そして、上記比率が1.0に近いということは、第1ベース塗料の塗膜と第2ベース塗料の塗膜とを積層しても、第2ベース塗料のみの塗膜と比べて、塗色の明度差が小さいということができる。このことを上記塗料ダストについてみると次のようになる。
【0040】
すなわち、内板部の上塗り塗膜(2BC)に塗料ダスト(2BC)のみが付着するときは、同じ第2ベース塗料であるから、色に違和感を生じない。その上塗り塗膜(2BC)に塗料ダスト(2BC)だけでなく、塗料ダスト(1BC)が併せて付着するときは、色に違和感を生ずる可能性が出てくる。上記ホワイト1の場合、上記比率が1.0に近いから、塗料ダスト(1BC)が塗色の明度に与える影響が小さく、そのため、色違和感がなかったと認められる。これに対して、上記シルバーメタリック1の場合、上記比率が0.7以下であるから、塗料ダスト(1BC)が塗色の明度に与える影響が大きく、そのため、色に違和感を覚える結果になったと認められる。
【0041】
図4には、上記ホワイト1及びシルバーメタリック1以外に、ホワイト2、ホワイト3及びシルバーメタリック2の各塗色の分光反射率の比率(1BC)/(1BC+2BC)についても併せて示している。これらホワイト2、ホワイト3及びシルバーメタリック2も、分光反射率の測定の結果、光線遮断性が相対的に高い第1ベース塗料による塗色の明度の方が、光線遮断性が相対的に低い第2ベース塗料による塗色の明度よりも低かったものである。
【0042】
そして、ホワイト2及びホワイト3は、分光反射率の比率が部分的に0.8以上になっている波長域もあるが、概ね0.8未満になっており、シルバーメタリック2は全波長域で当該比率が0.7以下になっている。従って、これらホワイト2、ホワイト3及びシルバーメタリック2は、上記ホワイト1及びシルバーメタリック1の結果から、塗料ダストによる色違和感を招くことが予測されるが、上記塗装方法による試験を行なった結果、やはり色違和感が認められた。図4では、色違和感がなかった塗色に○印を与え、色違和感があった塗色に×印を与えている。この点は後に説明する図5、図7及び図13も同じである。表1は上記各塗色(及び後述の他の塗色)の比率等をまとめたものである。
【0043】
【表1】
【0044】
以上から、無彩色系のベース塗料の場合、第1ベース塗料による塗色の明度が第2ベース塗料による塗色の明度よりも低いケースでは、380nm〜780nmの可視波長域の全域において、分光反射率の比率(1BC)/(1BC+2BC)を0.8以上1.0以下とすることが、色違和感の防止に有効であることがわかる。
【0045】
次に無彩色系のベース塗料において、光線遮断性が相対的に高い第1ベース塗料による塗色の明度が、光線遮断性が相対的に低い第2ベース塗料による塗色の明度よりも高いケースについて説明する。図5はシルバーメタリック3のベース塗料に係る分光反射率の比率(1BC)/(1BC+2BC)を示す。同図から明らかなように、上記比率が1以上になっているから、このシルバーメタリック3の場合は、第1ベース塗料による塗色の明度の方が第2ベース塗料による塗色の明度よりも高いことがわかる。
【0046】
しかし、このシルバーメタリック3では、上記塗装方法では内板部に色違和感が認められた。そして、図5では、上記比率が1.1を越えている波長域がある。先に説明した第1ベース塗料による塗色の明度が第2ベース塗料による塗色の明度よりも低いケースでは、上記比率が1.0に近いほど、第1ベース塗料及び第2ベース塗料による積層塗膜の塗色と第2ベース塗料のみの塗膜の塗色との明度差が小さく、塗料ダストによる色違和感が出にくいという結果が得られた。このことが、第1ベース塗料による塗色の明度が第2ベース塗料による塗色の明度よりも高いケースについても妥当するであろうことは、当業者であれば、容易に理解できることである。そして、図5に示すように上記比率が1.1を越えている波長域が部分的にある場合に色違和感が認められるから、全波長域(380nm〜780nm)において、上記比率が1.0〜1.1の範囲に収まる場合は、色違和感が軽減される、ひいては色違和感が出なくなるということができる。
【0047】
<実施形態2>
この実施形態は、第1ベース塗膜(1BC)6及び第2ベース塗膜(2BC)7によって外板部2に有彩色系の塗色を得るケースである。
【0048】
光線遮断性が相対的に高い赤色系(レッドマイカ1)の第1ベース塗料、並びに光線遮断性が相対的に低い赤色系(レッドマイカ1)の第2ベース塗料を調製した。そして、上記塗装方法によって内板部1及び外板部2の塗装を行なったところ、内板部1の上塗り塗膜(2BC)4の表面に塗料ダスト(1BCダスト)11及び塗料ダスト(2BCダスト)12がすじ状に付着しているにも拘わらず、その塗料ダストによる色の違和感は認められなかった。
【0049】
そこで、上記第1ベース塗料及び第2ベース塗料について、この両ベース塗料を電着塗膜上にウェットオンウェットで順に塗装した試験片(1BC+2BC)と、電着塗膜上に第1ベース塗料のみを塗装した試験片(1BC)とを作製し、それら試験片の塗膜の分光反射率を分光光度計にて測定した。測定結果を図6に示す。試験片(1BC)の塗色の方が、試験片(1BC+2BC)の塗色よりも反射率が低いから、第1ベース塗膜(1BC)の塗色の明度が第2ベース塗膜の塗色の明度よりも低い(暗い)ことがわかる。
【0050】
次に分光反射率の比率(1BC)/(1BC+2BC)を求めた。その結果を図7に示す。また、同図には、レッドマイカ1の他に、レッド、レッドマイカ2、オレンジマイカ1、イエロー、グリーンマイカ及びブルーメタリックの各塗色の分光反射率の比率(1BC)/(1BC+2BC)についても併せて示している。これらは、分光反射率の測定の結果、光線遮断性が相対的に高い第1ベース塗料による塗色の明度の方が、光線遮断性が相対的に低い第2ベース塗料による塗色の明度よりも低かったものである。
【0051】
なお、レッド及びイエローに関しては、短波長側において分光反射率の比率(1BC)/(1BC+2BC)が1よりも大きくなっているが、分光反射率が大きい波長域(レッドでは620nmよりも長波長側、イエローでは580nm付近)では上記比率が1以下になっているため、このレッド及びイエローも、第1ベース塗料による塗色の明度の方が第2ベース塗料による塗色の明度よりも低くなっているものである。
【0052】
そこで、図7の○印を付した各塗色(色違和感がなかったもの)の上記分光反射率の比率を、各塗色に対応する特定色相範囲に係る波長域と、その色相範囲外の波長域(以下、「範囲外波長域」という。)とに分けて検討する。特定色相範囲は、図8に示すマンセル色相環における当該塗色の色相を基準として設定する。図9はマンセル色相環の色と波長との関係を示す参考図であり、いくつかの塗色の分光反射率の比率を参考のために載せている。
【0053】
すなわち、マンセル色相環において、当該塗色の色相を0としてマンセル色相環を百分割し左廻り+50、右廻り−50で色相範囲を表示したときの、−5以上+5以下の範囲を当該塗色の特定色相範囲とする。各塗色の色相は、青・緑系塗色では、図10に示すように分光反射率がピークとなる波長に設定し、赤・橙・黄系では、図11に示すように波長の増大に伴って分光反射率が大きくなり始める波長から最大波長780nmに至る増大波長域の中央の波長に設定する。図12に示すように、短波長側に分光反射率のピークが現れるとともに、長波長側に上記赤・橙・黄系と同様の増大波長域を有する塗色(例えば、紫)では、色相環と同じように、780nmと380nmとを結合した波長環において、波長の増大に伴って分光反射率が大きくなり始める波長(図例では620nm)から、短波長側の反射が弱くなる波長(図例では500nm)至る波長域の中央の波長(図例では760nm)に、当該塗色の色相を設定する。
【0054】
上記範囲外波長域は、上記百分割のマンセル色相環による色相範囲の表示において、当該塗色の色相を0とする−30以上+30以下の範囲より外側の波長域とする。
【0055】
図7において、色違和感のないオレンジマイカ1をみると、その分光反射率の比率は、特定色相範囲(およそ590nm〜630nm)では、0.7〜1.0の範囲にあり、範囲外波長域ではおよそ0.9〜1.1の範囲にある。同じく色違和感のないレッドマイカ1及びグリーンマイカ各々の分光反射率の比率は、特定色相範囲では0.7〜1.0の範囲にあり、範囲外波長域では0.9〜1.1の範囲にある。
【0056】
これに対して、色違和感があるレッドの場合、上記比率は、特定色相範囲ではおよそ0.7〜1.0の範囲にあるが、範囲外波長域では1.1を越えている。色違和感があるレッドマイカ2の場合、特定色相範囲では上記比率が0.7未満になっている。色違和感があるイエローの場合、上記比率は、特定色相範囲ではおよそ0.7〜1.0の範囲にあるが、範囲外波長域では1.1を越えている。色違和感があるブルーメタリックの場合、特定色相範囲では上記比率が0.7未満になっている。
【0057】
以上から、有彩色系のベース塗料の場合、第1ベース塗料による塗色の明度が第2ベース塗料による塗色の明度よりも低いケースでは、分光反射率の比率(1BC)/(1BC+2BC)を、特定色相範囲では0.7〜1.0の範囲に収め、範囲外波長域では0.9〜1.1の範囲に収めることが、色違和感の防止に有効であることがわかる。
【0058】
次に有彩色のベース塗料において、光線遮断性が相対的に高い第1ベース塗料による塗色の明度が、光線遮断性が相対的に低い第2ベース塗料による塗色の明度よりも高いケースについて説明する。
【0059】
有彩色系塗色のブルーマイカに関し、光線遮断性が相対的に高い第1ベース塗料、並びに光線遮断性が相対的に低い第2ベース塗料を調製した。そして、上記塗装方法によって内板部1及び外板部2の塗装を行なったところ、内板部2の上塗り塗膜(2BC)4の表面に塗料ダスト(1BCダスト)11及び塗料ダスト(2BCダスト)12がすじ状に付着しているにも拘わらず、その塗料ダストによる色の違和感は認められなかった。
【0060】
そこで、上記両ベース塗料を電着塗膜上にウェットオンウェットで順に塗装した試験片(1BC+2BC)と、電着塗膜上に第1ベース塗料のみを塗装した試験片(1BC)とを作製し、それら試験片の塗膜の分光反射率を分光光度計にて測定した。結果を図13に示す。同図からは少しわかりにくいが、このブルーマイカの場合、第1ベース塗料による塗色の明度が第2ベース塗料による塗色の明度よりも若干高い。
【0061】
次に分光反射率の比率(1BC)/(1BC+2BC)を求めた。その結果を図14に示す。また、同図には、ブルーマイカの他に、レッドマイカ3、オレンジマイカ2、イエローメタリック及びグリーンメタリックの各塗色の分光反射率の比率(1BC)/(1BC+2BC)についても併せて示している。これらは、上記比率が1.0以上になっているから、光線遮断性が相対的に高い第1ベース塗料による塗色の明度の方が、光線遮断性が相対的に低い第2ベース塗料による塗色の明度よりも高いことがわかる。
【0062】
まず、○印を付したブルーマイカ(色違和感がなかったもの)について検討するに、その比率は全波長域(380nm〜780nm)にわたって略1.0になっている。これに対して、×印を付した各塗色(色違和感があったもの)をみると、レッドマイカ3及びオレンジマイカ2では、650nm以上の長波長域では上記比率が1.2以下になっているものの、他の波長域では上記比率が非常に大きくなっている。イエローメタリックの場合は、上述の特定色相範囲を含む500nm付近から長波長域では上記比率が1.1以下になっているものの、それよりも低波長側では1.1を越えて1.2付近の値になっている。グリーンメタリックでは、その特定色相範囲付近(540nm付近)では上記比率が1.1以下になっているものの、他の波長域では1.2以上になっている。
【0063】
以上から、有彩色系において、第1ベース塗料による塗色の明度の方が第2ベース塗料による塗色の明度よりも高いケースでは、当該塗色の特定色相範囲での上記比率が小さいだけでは色違和感が出ることから、全波長域(380nm〜780nm)にわたって上記比率が小さいことが必要であり、その比率は1.0〜1.1の範囲に収まることが好ましいということができる。
【符号の説明】
【0064】
1 内板部
2 外板部
3 電着塗膜
4 上塗り塗膜(2BC)
5 電着塗膜
6 第1ベース塗膜(1BC)
7 第2ベース塗膜(2BC)
8 クリヤ塗膜
9 隙間
11 塗料ダスト
12 塗料ダスト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物上で重ね塗りされた下側の第1層及び上側の第2層の両塗膜によって特定色を出すようにした積層塗膜構造において、
上記特定色は無彩色であり、上記第1層の塗色の明度が上記第2層の塗色の明度よりも低く、380nm〜780nmの可視波長域の全域において、上記特定色の分光反射率(1BC+2BC)に対する上記第1層の塗色の分光反射率(1BC)の比率(1BC)/(1BC+2BC)が0.8以上1.0以下であることを特徴とする積層塗膜構造。
【請求項2】
被塗物上で重ね塗りされた下側の第1層及び上側の第2層の両塗膜によって特定色を出すようにした積層塗膜構造において、
上記特定色は有彩色であり、上記第1層の塗色の明度が上記第2層の塗色の明度よりも低く、マンセル色相環において上記特定色の色相を0としてマンセル色相環を百分割し、左廻り+50、右廻り−50で色相範囲を表示したとき、−5以上+5以下の範囲では、上記特定色の分光反射率(1BC+2BC)に対する上記第1層の塗色の分光反射率(1BC)の比率(1BC)/(1BC+2BC)が0.7以上1.0以下であり、上記色相範囲の表示において、−30以上+30以下の範囲の外側では、上記比率(1BC)/(1BC+2BC)が0.9以上1.1以下であることを特徴とする積層塗膜構造。
【請求項3】
被塗物上で重ね塗りされた下側の第1層及び上側の第2層の両塗膜によって特定色を出すようにした積層塗膜構造において、
上記第1層の塗色の明度は上記第2層の塗色の明度よりも高く、380nm〜780nmの可視波長域の全域において、上記特定色の分光反射率(1BC+2BC)に対する上記第1層の塗色の分光反射率(1BC)の比率(1BC)/(1BC+2BC)が1.0以上1.1以下であることを特徴とする積層塗膜構造。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
上記被塗物の表面には電着塗膜が形成され、上記第1層が該電着塗膜の表面に直接重なるように形成されていることを特徴とする積層塗膜構造。
【請求項5】
内板部と、該内板部に被せられる外板部とを有し、該外板部は、重ね塗りされた下側の第1層及び上側の第2層の両塗膜によって特定色を出すようにされ、上記内板部には上記第2層と同じ塗料によって塗膜を形成するようにした二重構造被塗物に対する積層塗膜形成方法であって、
上記第1層を形成するための第1塗料と、上記第2層及び上記内板部の塗膜を形成するための第2塗料とを準備し、
上記第2塗料を上記内板部に塗布した後、該内板部に上記外板部を被せ、該外板部に上記第1塗料及び第2塗料を順に塗布して上記第1層及び第2層の両塗膜を形成するものであり、
上記特定色が無彩色であり、
上記第1塗料及び第2塗料として、該第1塗料の塗色の明度が第2塗料の塗色の明度よりも低く、且つ380nm〜780nmの可視波長域の全域において、上記特定色の分光反射率(1BC+2BC)に対する上記第1層の塗色の分光反射率(1BC)の比率(1BC)/(1BC+2BC)が0.8以上1.0以下であるものを採用することを特徴とする積層塗膜形成方法。
【請求項6】
内板部と、該内板部に被せられる外板部とを有し、該外板部は、重ね塗りされた下側の第1層及び上側の第2層の両塗膜によって特定色を出すようにされ、上記内板部には上記第2層と同じ塗料によって塗膜を形成するようにした二重構造被塗物に対する積層塗膜形成方法であって、
上記第1層を形成するための第1塗料と、上記第2層及び上記内板部の塗膜を形成するための第2塗料とを準備し、
上記第2塗料を上記内板部に塗布した後、該内板部に上記外板部を被せ、該外板部に上記第1塗料及び第2塗料を順に塗布して上記第1層及び第2層の両塗膜を形成するものであり、
上記特定色は有彩色であり、
上記第1塗料及び第2塗料として、該第1塗料の塗色の明度が第2塗料の塗色の明度よりも低く、且つマンセル色相環において上記特定色の色相を0としてマンセル色相環を百分割し、左廻り+50、右廻り−50で色相範囲を表示したとき、−5以上+5以下の範囲では、上記特定色の分光反射率(1BC+2BC)に対する上記第1層の塗色の分光反射率(1BC)の比率(1BC)/(1BC+2BC)が0.7以上1.0以下であり、上記色相範囲の表示において、−30以上+30以下の範囲の外側では、上記比率(1BC)/(1BC+2BC)が0.9以上1.1以下であるものを採用することを特徴とする積層塗膜形成方法。
【請求項7】
内板部と、該内板部に被せられる外板部とを有し、該外板部は、重ね塗りされた下側の第1層及び上側の第2層の両塗膜によって特定色を出すようにされ、上記内板部には上記第2層と同じ塗料によって塗膜を形成するようにした二重構造被塗物に対する積層塗膜形成方法であって、
上記第1層を形成するための第1塗料と、上記第2層及び上記内板部の塗膜を形成するための第2塗料とを準備し、
上記第2塗料を上記内板部に塗布した後、該内板部に上記外板部を被せ、該外板部に上記第1塗料及び第2塗料を順に塗布して上記第1層及び第2層の両塗膜を形成するものであり、
上記第1塗料及び第2塗料として、該第1塗料の塗色の明度が第2塗料の塗色の明度よりも高く、且つ380nm〜780nmの可視波長域の全域において、上記特定色の分光反射率(1BC+2BC)に対する上記第1塗料の塗色の分光反射率(1BC)の比率(1BC)/(1BC+2BC)が1.0以上1.1以下であるものを採用することを特徴とする積層塗膜形成方法。
【請求項8】
請求項5乃至請求項7のいずれか一において、
上記外板に対する上記第1塗料及び第2塗料の塗装はウェットオンウェットで行なうことを特徴とする積層塗膜形成方法。
【請求項1】
被塗物上で重ね塗りされた下側の第1層及び上側の第2層の両塗膜によって特定色を出すようにした積層塗膜構造において、
上記特定色は無彩色であり、上記第1層の塗色の明度が上記第2層の塗色の明度よりも低く、380nm〜780nmの可視波長域の全域において、上記特定色の分光反射率(1BC+2BC)に対する上記第1層の塗色の分光反射率(1BC)の比率(1BC)/(1BC+2BC)が0.8以上1.0以下であることを特徴とする積層塗膜構造。
【請求項2】
被塗物上で重ね塗りされた下側の第1層及び上側の第2層の両塗膜によって特定色を出すようにした積層塗膜構造において、
上記特定色は有彩色であり、上記第1層の塗色の明度が上記第2層の塗色の明度よりも低く、マンセル色相環において上記特定色の色相を0としてマンセル色相環を百分割し、左廻り+50、右廻り−50で色相範囲を表示したとき、−5以上+5以下の範囲では、上記特定色の分光反射率(1BC+2BC)に対する上記第1層の塗色の分光反射率(1BC)の比率(1BC)/(1BC+2BC)が0.7以上1.0以下であり、上記色相範囲の表示において、−30以上+30以下の範囲の外側では、上記比率(1BC)/(1BC+2BC)が0.9以上1.1以下であることを特徴とする積層塗膜構造。
【請求項3】
被塗物上で重ね塗りされた下側の第1層及び上側の第2層の両塗膜によって特定色を出すようにした積層塗膜構造において、
上記第1層の塗色の明度は上記第2層の塗色の明度よりも高く、380nm〜780nmの可視波長域の全域において、上記特定色の分光反射率(1BC+2BC)に対する上記第1層の塗色の分光反射率(1BC)の比率(1BC)/(1BC+2BC)が1.0以上1.1以下であることを特徴とする積層塗膜構造。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
上記被塗物の表面には電着塗膜が形成され、上記第1層が該電着塗膜の表面に直接重なるように形成されていることを特徴とする積層塗膜構造。
【請求項5】
内板部と、該内板部に被せられる外板部とを有し、該外板部は、重ね塗りされた下側の第1層及び上側の第2層の両塗膜によって特定色を出すようにされ、上記内板部には上記第2層と同じ塗料によって塗膜を形成するようにした二重構造被塗物に対する積層塗膜形成方法であって、
上記第1層を形成するための第1塗料と、上記第2層及び上記内板部の塗膜を形成するための第2塗料とを準備し、
上記第2塗料を上記内板部に塗布した後、該内板部に上記外板部を被せ、該外板部に上記第1塗料及び第2塗料を順に塗布して上記第1層及び第2層の両塗膜を形成するものであり、
上記特定色が無彩色であり、
上記第1塗料及び第2塗料として、該第1塗料の塗色の明度が第2塗料の塗色の明度よりも低く、且つ380nm〜780nmの可視波長域の全域において、上記特定色の分光反射率(1BC+2BC)に対する上記第1層の塗色の分光反射率(1BC)の比率(1BC)/(1BC+2BC)が0.8以上1.0以下であるものを採用することを特徴とする積層塗膜形成方法。
【請求項6】
内板部と、該内板部に被せられる外板部とを有し、該外板部は、重ね塗りされた下側の第1層及び上側の第2層の両塗膜によって特定色を出すようにされ、上記内板部には上記第2層と同じ塗料によって塗膜を形成するようにした二重構造被塗物に対する積層塗膜形成方法であって、
上記第1層を形成するための第1塗料と、上記第2層及び上記内板部の塗膜を形成するための第2塗料とを準備し、
上記第2塗料を上記内板部に塗布した後、該内板部に上記外板部を被せ、該外板部に上記第1塗料及び第2塗料を順に塗布して上記第1層及び第2層の両塗膜を形成するものであり、
上記特定色は有彩色であり、
上記第1塗料及び第2塗料として、該第1塗料の塗色の明度が第2塗料の塗色の明度よりも低く、且つマンセル色相環において上記特定色の色相を0としてマンセル色相環を百分割し、左廻り+50、右廻り−50で色相範囲を表示したとき、−5以上+5以下の範囲では、上記特定色の分光反射率(1BC+2BC)に対する上記第1層の塗色の分光反射率(1BC)の比率(1BC)/(1BC+2BC)が0.7以上1.0以下であり、上記色相範囲の表示において、−30以上+30以下の範囲の外側では、上記比率(1BC)/(1BC+2BC)が0.9以上1.1以下であるものを採用することを特徴とする積層塗膜形成方法。
【請求項7】
内板部と、該内板部に被せられる外板部とを有し、該外板部は、重ね塗りされた下側の第1層及び上側の第2層の両塗膜によって特定色を出すようにされ、上記内板部には上記第2層と同じ塗料によって塗膜を形成するようにした二重構造被塗物に対する積層塗膜形成方法であって、
上記第1層を形成するための第1塗料と、上記第2層及び上記内板部の塗膜を形成するための第2塗料とを準備し、
上記第2塗料を上記内板部に塗布した後、該内板部に上記外板部を被せ、該外板部に上記第1塗料及び第2塗料を順に塗布して上記第1層及び第2層の両塗膜を形成するものであり、
上記第1塗料及び第2塗料として、該第1塗料の塗色の明度が第2塗料の塗色の明度よりも高く、且つ380nm〜780nmの可視波長域の全域において、上記特定色の分光反射率(1BC+2BC)に対する上記第1塗料の塗色の分光反射率(1BC)の比率(1BC)/(1BC+2BC)が1.0以上1.1以下であるものを採用することを特徴とする積層塗膜形成方法。
【請求項8】
請求項5乃至請求項7のいずれか一において、
上記外板に対する上記第1塗料及び第2塗料の塗装はウェットオンウェットで行なうことを特徴とする積層塗膜形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図12】
【図13】
【図14】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図12】
【図13】
【図14】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−206662(P2011−206662A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76131(P2010−76131)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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