説明

積層多孔質フィルム

【課題】シャットダウン性に加えて、高温においても破膜やカールなどの形状変化が生じ難く、より安全性に優れた、非水電解液二次電池用セパレータとして好適な積層多孔質フィルムを提供する。
【解決手段】ポリオレフィンを主成分とする多孔質ポリオレフィン層と、フィラーを主成分とする耐熱層との、少なくとも2層を含む積層フィルムであって、耐熱層の全目付が多孔質ポリオレフィン層の全目付の0.5倍以上である積層多孔質フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層多孔質フィルムに関する。更に詳しくは、非水電解液二次電池用セパレータとして好適な積層多孔質フィルム法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非水電解液二次電池、特にリチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高いのでパーソナルコンピュータ、携帯電話、携帯情報端末などに用いる電池として広く使用されている。
【0003】
これらのリチウム二次電池に代表される非水電解液二次電池は、エネルギー密度が高く、電池の破損あるいは電池を用いている機器の破損等の事故により内部短絡・外部短絡が生じた場合には、大電流が流れて激しく発熱する。そのため、非水電解液二次電池には一定以上の発熱を防止し、高い安全性を確保することが求められている。
事故等による異常発熱の際に、セパレータにより、正−負極間のイオンの通過を遮断して、さらなる発熱を防止するシャットダウン機能を持たせる方法が一般的である。シャットダウン機能をセパレータに持たせる方法としては、異常発熱時に溶融する材質からなる多孔膜をセパレータとして用いる方法が挙げられる。すなわち、該セパレータを用いた電池は、異常発熱時に多孔膜が溶融・無孔化し、イオンの通過を遮断し、さらなる発熱を抑制することができる。
【0004】
このようなシャットダウン機能を有するセパレータとしては例えば、ポリオレフィン製の多孔膜が用いられる。ポリオレフィン多孔膜からなるセパレータは、電池の異常発熱時には、約80〜180℃で溶融・無孔化することでイオンの通過を遮断(シャットダウン)することにより、さらなる発熱を抑制する。しかしながら、発熱が激しい場合などには、ポリオレフィンの多孔膜からなるセパレータは、収縮や破膜等により、正極と負極が直接接触して、短絡を起こすおそれがあることから、種々の改良が試みられている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−261393号公報
【特許文献2】特開2006−32246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる状況下、本発明の目的は、加熱した際に破膜やカールなどの形状変化が生じ難く、より熱収縮抑制性が高く、かつ、より安全性に優れた非水電解液二次電池用セパレータとして好適な積層多孔質フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> ポリオレフィンを主成分とする多孔質ポリオレフィン層と、フィラーを主成分とする耐熱層との、少なくとも2層を含む積層フィルムであって、耐熱層の全目付が多孔質ポリオレフィン層の全目付の0.5倍以上である積層多孔質フィルム。
<2> 前記多孔質ポリオレフィン層の両面に耐熱層が積層されてなる前記<1>記載の積層多孔質フィルム。
<3> 前記フィラーが、アルミナからなる前記<1>または<2>に記載の積層多孔質フィルム。
<4> 非水電解液二次電池用セパレータである前記<1>から<3>のいずれかに記載の積層多孔質フィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、熱収縮抑制性及び形状維持性に優れた積層多孔質フィルムが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の積層多孔質フィルムは、ポリオレフィンを主成分とする多孔質ポリオレフィン層(以下、単に「多孔質ポリオレフィン層」又は「A層」と称す場合がある)と、フィラーを主成分とする耐熱層(以下、単に「耐熱層」又は「B層」と称す場合がある。)との、少なくとも2層を含む積層フィルムであって、耐熱層の全目付が多孔質ポリオレフィン層の全目付の0.5倍以上であることを特徴とする。
本発明の積層多孔質フィルムは、熱収縮抑制性及び形状維持性に優れるため、非水電解液二次電池用セパレータとして好適に使用される。
【0011】
多孔質ポリオレフィン層(A層)は、その内部に連結した細孔を有す構造であり、一方の面から他方の面に気体や液体が透過可能であるポリオレフィンの多孔質フィルムである。
多孔質ポリオレフィン層は、高温になると溶融して無孔化する性質があるため、本発明の積層多孔質フィルムをセパレータとして使用したときには、電池の事故発生時の異常発熱時に、溶融して無孔化することにより、積層多孔質フィルムにシャットダウンの機能を付与する。
また、耐熱層(B層)は、多孔質ポリオレフィン層が無孔化する温度に高温における耐熱性を有しており、積層多孔質フィルムに形状維持性の機能を付与する。
【0012】
本発明の積層多孔質フィルムは、上記多孔質ポリオレフィン層(A層)と耐熱層(B層)との、少なくとも2層を含む構成である。
すなわち、本発明の積層多孔質フィルムは、A層とB層をそれぞれ少なくとも1層ずつ含めばよく、2層以上であってもよい。なお、A層とB層が2層以上ある場合には、形状維持の観点から、A層とB層が交互に積層されていることが好ましい。
一方で、積層多孔質フィルムの全膜厚が大きくなりすぎると、透気性(セパレータとして使用したときのイオン透過性に準じる。)が低下するため、積層数(A層とB層の合計数)は、3層以内であることが好ましい。
本発明の積層多孔質フィルムは、特に耐熱性、シャットダウン性に優れ、かつ、十分な透気性を確保できるという点で、A層の両面にB層が積層された形態が好ましい。
【0013】
本発明の積層多孔質フィルムは、上記耐熱層(B層)の全目付が、上記多孔質ポリオレフィン層(A層)の全目付の0.5倍以上、好ましくは1.0倍以上であることに特徴の一つがある。
ここで、「全目付」とは、A層、B層が1層の場合にはその目付、2層以上あるときは各層の目付の合計を意味する。
耐熱層(B層)の全目付と多孔質ポリオレフィン層(A層)の全目付とが上記関係を満たすことにより、積層多孔質フィルムの加熱時の形状維持性が良好となり、非水電解液二次電池用セパレータとして用いたときにより安全性の高い電池を得ることができる。
また、安全性に加え、重量エネルギー密度を高める観点からは、さらにB層の全目付がA層の全目付の2.5倍以下であることが好ましい。
【0014】
なお、本発明の積層多孔質フィルムには、多孔質ポリオレフィン層と耐熱層以外の、例えば、接着膜、保護膜等の多孔膜が本発明の目的を損なわない範囲で含まれていてもよい。
【0015】
本発明の積層多孔質フィルム全体(A層+B層)の厚みは、通常、5〜80μmであり、好ましくは、5〜50μmであり、特に好ましくは6〜35μmである。積層多孔質フィルム全体の厚みが5μm未満では破膜しやすくなる。また、厚みが厚すぎると、非水二次電池のセパレータとして用いたときに電池の電気容量が小さくなる傾向にある。
【0016】
また、本発明の積層多孔質フィルム全体の空隙率は、通常、30〜85体積%であり、好ましくは35〜80体積%である。
また、本発明の積層多孔質フィルムの透気度は、ガーレ値で50〜2000秒/100ccが好ましく、50〜1000秒/100ccがより好ましい。
このような範囲の透気度であると、本発明の積層多孔質フィルムをセパレータとして用いて非水二次電池を製造した場合、十分なイオン透過性を示し、電池として高い負荷特性が得られる。
【0017】
シャットダウンが生じる高温における、積層多孔質フィルムの加熱形状維持率としてはMD方向又はTD方向のうちの小さい方の値が、好ましくは95%以上であり、より好ましくは97%以上である。ここで、MD方向とは、シート成形時の長尺方向、TD方向とはシート成形時の幅方向のことをいう。加熱形状維持率が95%未満であると、積層多孔質フィルムをセパレータとして用いた際に、シャットダウンが生じる高温において積層多孔質フィルムの熱収縮により、正−負極間で短絡を起こし、結果的にシャットダウン機能が不十分となるおそれがある。なお、シャットダウンが生じる高温とは80〜180℃の温度であり、通常は130〜150℃程度である。
【0018】
以下、本発明の積層多孔質フィルムを構成する多孔質ポリオレフィン層(A層)及び耐熱層(B層)、並びに積層多孔質フィルムの製造方法について詳細に説明する。
【0019】
<多孔質ポリオレフィン層(A層)>
A層は、その内部に連結した細孔を有す構造を有し、一方の面から他方の面に気体や液体が透過可能であるポリオレフィンを主成分とする多孔質フィルムである。
【0020】
A層におけるポリオレフィン成分の割合は、A層全体の50体積%以上であることを必須とし、90体積%以上であることが好ましく、95体積%以上であることがより好ましい。
【0021】
A層のポリオレフィン成分には、重量平均分子量が5×105〜15×106の高分子量成分が含まれていることが好ましい。特にA層のポリオレフィン成分として重量平均分子量100万以上のポリオレフィン成分が含まれると、A層、さらにはA層を含む積層多孔質フィルム全体の強度が高くなるため好ましい。
【0022】
ポリオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセンなどを重合した高分子量の単独重合体又は共重合体が挙げられる。これらの中でもエチレンを主体とする重量平均分子量100万以上の高分子量ポリエチレンが好ましい。
【0023】
A層の透気度は、通常、ガーレ値で30〜500秒/100ccの範囲であり、好ましくは、50〜300秒/100ccの範囲である。
A層が、上記範囲の透気度を有すると、セパレータとして用いた際に、十分なイオン透過性を得ることができる。
【0024】
A層の空隙率は、電解液の保持量を高めると共に、確実にシャットダウン機能を得ることができる点で、20〜80体積%が好ましく、30〜75体積%がより好ましい。
【0025】
A層の孔径は、本発明の積層多孔質フィルムを電池のセパレータとした際に、十分なイオン透過性が得られ、また、正極や負極への粒子の入り込みを防止することができる点で、3μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。
【0026】
A層の膜厚は、積層多孔質フィルムの積層数を勘案して適宜決定される。
特にA層を基材として用い、A層の片面あるいは両面にB層を形成する場合においては、A層の膜厚は、4〜40μmが好ましく、7〜30μmがより好ましい。
【0027】
A層の目付としては、積層多孔質フィルムの強度、膜厚、ハンドリング性及び重量、さらには、電池のセパレータとして用いた場合の電池の重量エネルギー密度や体積エネルギー密度を高くすることができる点で、通常、4〜20g/m2であり、5〜12g/m2が好ましい。
【0028】
A層の製造方法は特に限定されるものではなく、例えば特開平7−29563号公報に記載されたように、熱可塑性樹脂に可塑剤を加えてフィルム成形した後、該可塑剤を適当な溶媒で除去する方法や、特開平7−304110号公報に記載されたように、公知の方法により製造した熱可塑性樹脂からなるフィルムを用い、該フィルムの構造的に弱い非晶部分を選択的に延伸して微細孔を形成する方法が挙げられる。
例えば、A層が、超高分子量ポリエチレン及び重量平均分子量1万以下の低分子量ポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂から形成されてなる場合には、製造コストの観点から、以下に示すような方法により製造することが好ましい。
(1)超高分子量ポリエチレン100重量部と、重量平均分子量1万以下の低分子量ポリオレフィン5〜200重量部と、炭酸カルシウム等の無機充填剤100〜400重量部とを混練してポリオレフィン樹脂組成物を得る工程
(2)前記ポリオレフィン樹脂組成物を用いてシートを成形する工程
(3)工程(2)で得られたシート中から無機充填剤を除去する工程
(4)工程(3)で得られたシートを延伸してA層を得る工程
なお、A層については上記記載の特性を有する市販品を用いることができる。
【0029】
<耐熱層(B層)>
B層は、フィラーを主成分とし、フィラー同士が接着されてなる耐熱層である。なお、フィラーの接着には通常、後述するバインダー樹脂が用いられる。
B層において、フィラーの含有量は、B層全体の50体積%以上であることを必須とし、フィラー同士の接触により形成される空隙が、他の構成成分により閉塞されることが少なくなり、イオン透過性を良好に保つ上で、80体積%以上であることが好ましく、90体積%以上であることがより好ましい。
【0030】
フィラーとしては、一般的な無機又は有機のフィラーを用いることができる。具体的にはスチレン、ビニルケトン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸メチル等の単独あるいは2種類以上の共重合体;ポリテトラフルオロエチレン、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、4フッ化エチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド等のフッ素系樹脂;メラミン樹脂;尿素樹脂;ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリメタクリレート等の有機物からなるフィラーが挙げられる。また、炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、シリカ、ハイドロタルサイト、珪藻土、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、アルミナ、マイカ、ゼオライト、ガラス等の無機物からなるフィラーが挙げられる。
これらの中でもアルミナが好ましい。なお、これらのフィラーの材料は、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0031】
フィラーの平均粒径は、3μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。フィラーの形状としては、球状、瓢箪状が挙げられる。なお。フィラーの平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)にて、25個ずつ粒子を任意に抽出して、それぞれにつき粒径(直径)を測定して、25個の粒径の平均値として算出する方法や、BET比表面積を測定し、球状近似することで平均粒径を算出する方法がある。なお、SEMによる平均粒径算出時は、フィラーの形状が球状以外の場合は、フィラーにおける最大長を示す方向の長さをその粒径とする。なお、B層には粒径や比表面積が異なる2種以上のフィラーを同時に含ませてもよい。
【0032】
B層の膜厚は、積層多孔質フィルムの積層数を勘案して適宜決定される。
特にA層を基材として用い、A層の片面あるいは両面にB層を形成する場合においては、B層の膜厚(両面の場合は合計値)は、通常0.1μm以上20μm以下であり、好ましくは2μm以上15μm以下の範囲である。
B層の膜厚が大きすぎると、セパレータとして用いた時に、非水電解液二次電池の負荷特性が低下するおそれがあり、薄すぎると、事故等により該電池の発熱が生じたときにポリオレフィンの多孔膜の熱収縮に抗しきれずセパレータが収縮するおそれがある。
【0033】
B層の空隙率は、20〜85体積%が好ましく、さらに好ましくは40〜75体積%である。このような範囲であると、電解液の保持量、積層多孔質フィルムの膜厚、さらにはセパレータとして電池に用いた場合の体積エネルギー密度を高くすることができる。
【0034】
B層にはフィラー以外に、B層を構成するフィラー同士、フィラーとA層とを結着させるために、バインダー樹脂が含まれる。かかるバインダー樹脂としては、電池の電解質に不要であり、またその電池の使用範囲で電気化学的に安定である樹脂が好ましい。
例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレンなどの含フッ素樹脂、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体やエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体などの含フッ素ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体およびその水素化物、メタクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレンプロピレンラバー、ポリ酢酸ビニルなどのゴム類、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルアミド、ポリエステルなどの融点やガラス転移温度が180℃以上の樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、セルロースエーテル、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸等の水溶性ポリマーが挙げられる。
これらの中でも、セルロースエーテル、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸等の水溶性ポリマーは、溶媒として水を用いることができ、プロセスや環境負荷の点で好ましい。水溶性ポリマーの中でもセルロースエーテルが好ましく用いられる。
セルロースエーテルとして具体的には、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、シアンエチルセルロース、オキシエチルセルロース等が挙げられ、化学的な安定性に優れたCMC、HECが特に好ましい。
【0035】
<積層多孔質フィルムの製造方法>
本発明の積層多孔質フィルムの製造方法は、上述の積層多孔質フィルムが得ることができれば特に限定されず、フィラーやバインダー樹脂を含む塗工液をA層の上に直接塗布し溶媒(分散媒)を除去する方法;塗工液を適当な支持体の上に塗布し、溶媒(分散媒)を除去して形成したB層をA層と圧着させた後に支持体を剥がす方法;塗工液を適当な支持体の上に塗布し次いでA層と圧着させ支持体から剥がした後に溶媒(分散媒)を除去する方法;塗工液中にA層を浸漬し、ディップコーディングを行った後に溶媒(分散媒)を除去する方法;等が挙げられる。なお、支持体としては、樹脂製のフィルム、金属製のベルト、ドラム等を用いることができる。
また、A層の両面にB層を積層する場合においては、片面にB層を形成させた後に他面にB層を積層する逐次積層方法や、A層の両面に同時にB層を形成させる同時積層方法が挙げられる。
【0036】
フィラーやバインダー樹脂を分散させる溶媒(分散媒)としては、フィラーやバインダー樹脂が均一かつ安定に溶解又は分散させることができる溶媒あればよく、使用するフィラーやバインダー樹脂を考慮して適宜選択される。具体的には、水、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、トルエン、キシレン、ヘキサン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどを挙げることができる。
【0037】
フィラーやバインダー樹脂を分散させて塗工液を得る方法としては、所望のB層を得るに必要な分散液特性が得られる方法であればよく、例えば、機械攪拌法、超音波分散法、高圧分散法、メディア分散法などを挙げることができる。また、該塗工液には、本発明の目的を損なわない範囲でフィラー及びバインダー樹脂以外の成分として、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、分散剤、可塑剤、pH調製剤などが挙げられる。
【0038】
塗工液をA層または支持体に塗布する方法としては、必要な目付や塗工面積を実現しうる方法であれば特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができる。例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、ナイフコーター法、エアドクターブレードコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法などが挙げられる。
【0039】
溶媒(分散媒)の除去方法は、特に制限はないが、乾燥による方法が一般的である。
乾燥方法としては、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥などいかなる方法でもよい。また、塗工液の溶媒(分散媒)を他の溶媒に置換してから乾燥を行ってもよい。
好適な溶媒(分散媒)の除去方法を例示すると、塗工液の溶媒(分散媒)に溶解し、かつ、塗工液に含まれるバインダー樹脂を溶解しない他の溶媒(以下、溶媒X)を使用し、塗工液が塗布されたA層あるいは支持体を浸漬し、A層あるいは支持体の上の膜状の塗工液から溶媒(分散媒)を溶媒Xで置換した後に、溶媒Xを蒸発させる方法が挙げられる。この方法では、効率よく溶媒(分散媒)を除去することができる。
なお、塗工液が塗布されたA層から、塗工液の溶媒(分散媒)あるいは溶媒Xを除去する際に加熱を行う場合には、A層の細孔が収縮して透気度が低下することを回避するために、A層の透気度が低下しない温度で行うことが好ましい。
【実施例】
【0040】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
実施例及び比較例の積層多孔質フィルムの物性等は以下の方法で測定した。
(1)厚み測定(単位:μm)
フィルムの厚みは、JIS規格(K7130−1992)に従い、測定した。
(2)目付(単位:g/m2
得られた積層多孔質フィルムのサンプルを一辺の長さ10cmの正方形に切り、重量W(g)を測定した。目付(g/m2)=W/(0.1×0.1)で算出した。B層の目付は、積層多孔質フィルムの目付から多孔質ポリオレフィン層(A層)の目付を差し引いた上で算出した。
(3)空隙率(単位:体積%)
積層多孔質フィルムを一辺の長さ10cmの正方形に切り取り、重量:W(g)と厚み:D(cm)を測定した。サンプル中の材質の重量を計算で割りだし、それぞれの材質の重量:Wi(g)を真比重で割り、それぞれの材質の体積を算出して、次式より空隙率(体積%)を求めた。
空隙率(体積%)=100−[{(W1/真比重1)+(W2/真比重2)+・・+(Wn/真比重n)}/(10×10×D)]×100
【0042】
(4)透気度(単位:sec/100cc)
積層多孔質フィルムの透気度は、JIS P8117に基づいて、株式会社東洋精機製作所製のデジタルタイマー式ガーレ式デンソメータで測定した。
(5)加熱形状維持率
8cm×8cmに切り出し、その中に6cm×6cmの四角を書き入れた積層多孔質フィルムを紙に挟んで、150℃のオーブンに1時間入れて加熱した。加熱後のフィルムの線間隔を測定することで、MD、TDの加熱形状維持率を算出した。得られたMD、TDの加熱形状維持率のうち、小さい方の値をその積層多孔質フィルムの加熱形状維持率とした。
【0043】
「実施例1」
(1)塗工液の調製
実施例1の塗工液は以下の手順で作製した。
まず、媒体として、30重量%エタノール水溶液にカルボキシメチルセルロース(CMC、第一工業製薬株式会社製セロゲン3H)を溶解させて0.70重量%のCMC溶液を得た(CMC濃度:0.70重量%対CMC溶液)。
次いで、CMC換算で100重量部のCMC溶液に対して、アルミナ(住友化学株式会社製AKP−3000)を3500重量部を添加し、混合して、ゴーリンホモジナイザーを用いた高圧分散条件(60MPa)にて3回処理することにより塗工液1を調製した。
(2)積層多孔質フィルムの作製
グラビア塗工機を用いて、基材として、下記の性状を有する多孔質フィルムA1の両面に上記塗工液1を塗布乾燥し、耐熱層の全目付(両面の目付の合計)が9.2g/m2である積層多孔質フィルムを作製した。
<多孔質フィルムA1の性状>
膜厚:15.6μm
目付:9.3g/m2
透気度:264秒/100cc
【0044】
「比較例1」
上記塗工液1を多孔質フィルムA1の片面に塗工した以外は実施例1と同様にして、耐熱層の全目付(片面の目付)が4.4g/m2である積層多孔質フィルムを作製した。
【0045】
「実施例2」
基材として多孔質フィルムA1に代えて、下記の性状を有する多孔質フィルムA2を使用した以外は実施例1と同様にして、耐熱層の全目付(両面の目付の合計)が8.9g/m2である積層多孔質フィルムを作製した。
<多孔質フィルムA2の性状>
膜厚:20.0μm
目付:11.5g/m2
透気度:598秒/100cc
【0046】
「実施例3」
(1)塗工液の調製
まず、媒体として、30重量%エタノール水溶液にカルボキシメチルセルロース(CMC、第一工業製薬株式会社製セロゲン3H)を溶解させて0.70重量%のCMC溶液を得た(CMC濃度:0.70重量%対CMC溶液)。
次いで、CMC換算で100重量部のCMC溶液に対して、アルミナ1(住友化学株式会社製AKP−3000)を3000重量部、アルミナ2(住友化学株式会社製AKP−G07)を200重量部添加し、混合して、ゴーリンホモジナイザーを用いた高圧分散条件(60MPa)にて3回処理することにより塗工液2を調製した。
(2)積層多孔質フィルムの作製
グラビア塗工機を用いて、基材として、下記の性状を有する多孔質フィルムA3の片面に上記塗工液2を塗布乾燥し、耐熱層の全目付(片面の目付)が11.5g/m2である積層多孔質フィルムを作製した。
<多孔質フィルムA3の性状>
膜厚:16.9μm
目付:7.8g/m2
透気度:130秒/100cc
【0047】
得られた実施例1〜3及び比較例1の積層多孔質フィルムの物性を表1にまとめて示す。
【0048】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、高温での形状維持性に加えて、シャットダウン性にも優れた積層多孔質フィルムが提供される。積層多孔質フィルムをセパレータとして用いた非水電解液二次電池は、事故により電池が激しく発熱してもセパレータが正極と負極が直接接触することを防止し、かつポリオレフィンの多孔膜の迅速な無孔化による絶縁性の維持により安全性の高い非水電解液二次電池となるので、本発明は工業的に極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンを主成分とする多孔質ポリオレフィン層と、フィラーを主成分とする耐熱層との、少なくとも2層を含む積層フィルムであって、前記耐熱層の全目付が前記多孔質ポリオレフィン層の全目付の0.5倍以上であることを特徴とする積層多孔質フィルム。
【請求項2】
前記多孔質ポリオレフィン層の両面に耐熱層が積層されてなる請求項1記載の積層多孔質フィルム。
【請求項3】
前記フィラーが、アルミナからなる請求項1または2に記載の積層多孔質フィルム。
【請求項4】
非水電解液二次電池用セパレータである請求項1から3のいずれかに記載の積層多孔質フィルム。

【公開番号】特開2012−226921(P2012−226921A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92342(P2011−92342)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】