説明

積層式エネルギー転換モジュール

【課題】モジュール化された架構を有し、振動慣性力を増強させ、且つ本来の単一のアクチュエータの共振モード及び有効な動作範囲に近しいエネルギー転換モジュールを提供する。
【解決手段】同じ外観サイズを有する少なくとも二つのアクチュエータを含む。少なくとも二つの支持部材は、それらアクチュエータにそれぞれ対応させ、振動慣性力を共振板に転送させる。二つの支持部材は隣接するアクチュエータ間、及びアクチュエータと共振板の間にそれぞれ固設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータに関し、より詳しくは、積層式エネルギー転換モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータ(actuator)はエネルギー転換部材であり、電気エネルギーを機械的エネルギーへ転換させ、更には音波或いは触覚フィードバック(haptic feedback)を発生させる。アクチュエータは携帯式の電子装置或いは人間計算機インターフェース装置によく応用されている。また現在の応用上の主な趨勢は、装置内に配置されるアクチュエータに、より高い振動慣性力量出力を持たせる事であり、この他の趨勢としては、昨今の装置の小型化の潮流に伴い、これらの装置内部にアクチュエータを配置させる空間が自然と制限される点が挙げられる。
【0003】
図1は従来のエネルギー転換器の透視図であり、アクチュエータ10及び支持部材12を含む。ここでは、支持部材12の一端はアクチュエータ10の表面に固設され、他端は共振板(図示せず)に接続される。図1によると従来のエネルギー転換器は簡単な構造ではあるが、しかしながら最大の欠点は出力される振動慣性力が小さい事であり、このため応用にはやや不足感がある。
【0004】
図2は他の従来のエネルギー転換器の透視図であり、複数のアクチュエータ10及びアクチュエータ11を含み、両者は直接積み重ねられる。この種のエネルギー転換器は振動慣性力が小さすぎる問題を改善させはするが、しかしながら本来のアクチュエータの共振モードを改変させて、共振周波数を顕著に上昇させるため、配置を再調整させねばならず、また共振周波数の上昇によって、低音の共振が好ましくなくなり、有効な動作範囲を狭める。
【0005】
図3はまた他の従来のエネルギー転換器の透視図であり、特許文献1によれば、“共振部材エネルギー転換器(Resonant Element Transducer)”と題され、サイズが各々異なる複数のアクチュエータ10及びアクチュエータ11を含み、隣接するアクチュエータ間には支持部材12が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】アメリカ特許第7,684,576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、各一個のアクチュエータ10及びアクチュエータ11が各自異なる共振モードを有する事で、本来のアクチュエータの共振モードを破壊してしまい、また共振モードの相違により、各々が発生させる振動を同相(in phase、即ち建設的干渉)に近づけるのが困難になり、このため慣性力の増加が制限され、また実施上容易に相互に干渉し合うため、ユーザーにとって応用上不便であり、設計上の複雑さも増した。
【0008】
本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたものである。上記課題解決のため、本発明は、モジュール化された架構を有し、振動慣性力を増強させ、且つ本来の単一のアクチュエータの共振モード及び有効な動作範囲に近しいエネルギー転換モジュールを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るエネルギー転換モジュールは少なくとも二つのアクチュエータ及び少なくとも二つの支持部材を含み、それらアクチュエータは同じ外観サイズを有する。それら支持部材はそれらアクチュエータにそれぞれ対応させ、支持部材はアクチュエータが発生させる振動慣性力を共振板へと転送させる。また、二つの支持部材は隣接するアクチュエータ間、及びアクチュエータと共振板の間に固設されることを特徴とする。
【0010】
また、実施形態に於いて、アクチュエータの二つの対向する面には共に支持部材がそれぞれ設けられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、振動慣性力を増強させるのみならず、本来の単一のアクチュエータの共振モードへの近似化が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来のエネルギー転換器の透視図である。
【図2】他の従来のエネルギー転換器の透視図である。
【図3】また他の従来のエネルギー転換器の透視図である。
【図4A】本発明に係る第1実施形態のエネルギー転換モジュールの透視図である。
【図4B】本発明に係る第1実施形態のエネルギー転換モジュールの断面図である。
【図5】本発明に係る第1実施形態のエネルギー転換モジュールと図1の従来のエネルギー転換器の共振モードとの比較である。
【図6】本発明に係る第1実施形態のエネルギー転換モジュールと図2の従来のエネルギー転換器の共振モードとの比較である。
【図7】本発明に係る第1実施形態のエネルギー転換モジュールと図3の従来のエネルギー転換器の共振モードとの比較である。
【図8】本発明に係る第1実施形態の変化型のエネルギー転換モジュールの断面図である。
【図9A】本発明に係る第1実施形態変化型のエネルギー転換モジュールの断面図である。
【図9B】本発明に係る第1実施形態変化型のエネルギー転換モジュールの断面図である。
【図10A】本発明に係る第2実施形態のエネルギー転換モジュールの透視図である。
【図10B】本発明に係る第2実施形態のエネルギー転換モジュールの断面図である。
【図11】本発明に係る第2実施形態のエネルギー転換モジュールと図4A及び図4Bの第1実施形態のエネルギー転換モジュールの共振モードとの比較である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を参照して本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【実施例1】
【0014】
まず、本発明のエネルギー転換モジュールの第1実施形態について説明する。
【0015】
本発明の実施形態に係るエネルギー転換モジュールは、図4Aは本発明に係る第1実施形態のエネルギー転換モジュールの透視図であり、図4Bはその断面図である。図によると、本実施形態では、エネルギー転換モジュールは第一アクチュエータ40A及び第二アクチュエータ40B の少なくとも二つのアクチュエータ(actuator)を含む。各アクチュエータ40A及びアクチュエータ40Bは支持部材41A及び支持部材41Bに対応させ、これはエジェクタブロックである。
図によると、第一アクチュエータ40Aと第二アクチュエータ40Bとの間には第一支持部材41Aが固設され、第二アクチュエータ40Bと共振板(例えばタッチパネル)42との間には第二支持部材41Bが固設される。支持部材41A及び支持部材41Bは隣接するアクチュエータ(例えば第一アクチュエータ40Aと第二アクチュエータ40B)を連結、或いはアクチュエータと共振板(例えば第二アクチュエータ40Bと共振板42)を連結させるのみならず、支持部材41Aと支持部材41Bは第一アクチュエータ40A及び第二アクチュエータ40Bが発生させる振動慣性力の共振板42への転送に用いられる。
【0016】
本実施形態では、第二アクチュエータ40Bが発生させる振動慣性力は、第二支持部材41Bから共振板42へと転送され、第一アクチュエータ40Aが発生させる振動慣性力は、順に第一支持部材41Aから、第二アクチュエータ40Bを経過し、第二支持部材41Bより共振板42へと転送される。
【0017】
本発明に係る第1実施形態の特徴の一つは、それらの第一アクチュエータ40Aと第二アクチュエータ40Bが同じ外観サイズを有する点である。図4A及び図4Bによると、第一アクチュエータ41Aと第二アクチュエータ41Bは同じ厚さ、同じ長さ並びに同じ幅を有する。本明細書中では、外観サイズの“同じ”とは互いの許容差範囲内のサイズがお互い相等であることを指す。
【0018】
外観サイズが同じなほかに、それら第一アクチュエータ40Aと第二アクチュエータ40Bは同じ材質を有し、それは圧電(piezoelectric)材料(例えばチタン酸ジルコン酸鉛(lead zirconate titanate、PZT))、電場応答性高分子(electroactive polymer、EAP)、形状記憶合金(shape memory alloy、 SMA)、磁歪材料(magnetostrictive material)、ボイスコイルモータ(voice coil motor)或いはリニア共振アクチュエータ(linear resonance actuator、LRA)であるが、これらに限定されない。
【0019】
また、それら第一アクチュエータ40Aと第二アクチュエータ40Bは同じ制御信号を受けて駆動されるため、ほぼ同じ共振モードとほぼ同じ振動を有する。これにより、第一アクチュエータ40Aと第二アクチュエータ40Bが発生させる振動は同相(in phase、即ち建設的干渉)に近しくなり、転送される振動慣性力も強化される。
【0020】
図5は本発明に係る第1実施形態のエネルギー転換モジュールと図1の従来のエネルギー転換器の共振モードとの比較である。ここでの横軸は周波数(単位:ヘルツ(Hz))を表し、縦軸は振動慣性力(単位:ニュートン(N))を表す。
図によると、本実施形態のエネルギー転換モジュールの共振曲線50は従来のエネルギー転換器の共振曲線52に類似するが、但しより大きな振動慣性力を有する。言い換えるならば、本実施形態では従来の単一のアクチュエータの共振モードに近く、発生させる振動慣性力は増加される。本実施形態の振動部材の数量を増加させる場合、より大きな振動慣性力並びに本来の単一のアクチュエータの共振モードへの近似化が得られる。
言うなれば、本発明に係る実施形態は一種のモジュール化部材であり、ユーザーは必要な振動慣性力、或いは携帯式の電子装置、人間計算機インターフェース装置内部の配置空間に合わせて、使用するアクチュエータの層数、及びに対応する支持部材を決定させることが出来、共振モードの改変を心配する必要もなくなる。
【0021】
図6は本発明に係る第1実施形態のエネルギー転換モジュールと図2の従来のエネルギー転換器の共振モードとの比較である。前述のように、従来の直接積み重ねるエネルギー転換器(図2)は本来のアクチュエータの共振モードを改変させるため、曲線54のようにその共振周波数を明確に上昇させるため、配置を再調整させねばなず、また共振周波数の上昇により、低音の表現が好ましくなくなり、有効な動作範囲を狭めた。
翻って本実施形態のエネルギー転換モジュールの共振曲線50を見ると、本来の単一のアクチュエータの共振モードに近しくなるのみならず、より大きな振動慣性力も有する。言い換えるならば、本実施形態は従来の直接積み重ねるエネルギー転換器(図2)に比較してより大きな動作範囲とより大きな振動慣性力を有する。
【0022】
図7は本発明に係る第1実施形態のエネルギー転換モジュールと図3の従来のエネルギー転換器の共振モードとの比較である。前述のように、図3の従来のエネルギー転換器は、各々異なる共振モードを有するため、曲線56のように本来のアクチュエータの共振モードを破壊し、また共振モードの相違により、各々が発生させる振動は同相(in phase、即建設的干渉)に近づけるのが困難になり、このため慣性力の増加が制限され、実施上容易に相互に干渉し合い、設計上の複雑さが増した。翻って本実施形態のエネルギー転換モジュールの共振曲線50を見ると、本来の単一のアクチュエータの共振モードに近しくなるのみならず、より大きな振動慣性力を有する。
【0023】
上述の実施形態の第一アクチュエータ40Aと第二アクチュエータ40Bには、ユニモルフ(unimorph)、バイモルフ(bimorph)或いはマルチモルフ(multimorph)が使用される。このほか、図8によれば、第一アクチュエータ40Aと第二アクチュエータ40Bの表面にはマス・ブロック43を設置させ、共振周波数の改変或いは振動機能の増強に用いる。本実施形態の第一アクチュエータ40Aと第二アクチュエータ40Bの形状は図示する形状に限られず、例えば円形、矩形、不規則な形状等でもよい。
【0024】
図4A及び図4Bの支持部材41Aと支持部材41Bはアクチュエータ40A及びアクチュエータ40Bの中央に設けられるが、但しこれに限られない。図9Aと図9Bによると、支持部材41Aと支持部材41Bはアクチュエータ40A及びアクチュエータ40Bの他の位置に設けてもよい。図9Aによれば、支持部材41Aと支持部材41Bの設定位置は近接するアクチュエータ40A及びアクチュエータ40Bの同じ端である。図9Bでは、支持部材41Aと支持部材41Bの設定位置は近接するアクチュエータ40A及びアクチュエータ40Bの反対の端である。
【実施例2】
【0025】
次は、本発明のエネルギー転換モジュールの第2実施形態について説明する。
【0026】
図10Aは本発明に係る第2実施形態のエネルギー転換モジュールの透視図であり、図10Bはその断面図である。図4Aと図4Bの第1実施形態との異なる点は、本実施形態では更に第三支持部材41Cも使用し、第一アクチュエータ40Aと第一支持部材41Aの反対の面に設けられる。第1実施形態と比較し、本実施形態の各アクチュエータ40Aとアクチュエータ40Bの二つの対向する面には一個の支持部材41A、支持部材B及び支持部材Cを対称に設置させる。
【0027】
図11は本発明に係る第2実施形態のエネルギー転換モジュールの、図4Aと図4Bの第1実施形態のエネルギー転換モジュールの共振モードとの比較である。第2実施形態の各アクチュエータ40A及びアクチュエータ40Bの二つの対向する面には、一個の支持部材41A、支持部材B及び支持部材Cを対称に設置させ、第1実施形態と比較し対称な架構を有し、二つのアクチュエータ40A及びアクチュエータ40Bの共振モードを更に一致させ、また支持部材41Cの配置によりアクチュエータ40A及びアクチュエータ40Bは更に完全になり、更に一致する波頂曲線を形成させる。このほか、図11中の局部拡大図に見られるように、第2実施形態の共振曲線58は第1実施形態の共振曲線50と比較してより大きな振動慣性力を有する。
【0028】
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0029】
10 アクチュエータ
11 アクチュエータ
12 支持部材
40A 第一アクチュエータ
40B 第二アクチュエータ
41A 第一支持部材
41B 第二支持部材
41C 第三支持部材
42 共振板
43 マス・ブロック
50 共振曲線(第1実施形態)
52 共振曲線(図1のエネルギー転換器)
54 共振曲線(図2のエネルギー転換器)
56 共振曲線(図3のエネルギー転換器)
58 共振曲線(第2実施形態)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー転換モジュールであって、
同じ外観サイズを有する少なくとも二つのアクチュエータと、
それら前記アクチュエータにそれぞれ対応させ、それら前記アクチュエータが発生させる振動慣性力を共振板に転送させる少なくとも二つの支持部材を含み、
前記二つの支持部材は隣接する前記アクチュエータ間、及び前記アクチュエータと前記共振板の間にそれぞれ固設されることを特徴とするエネルギー転換モジュール。
【請求項2】
それら前記アクチュエータは同じ材質を有することを特徴とする、請求項1に記載のエネルギー転換モジュール。
【請求項3】
前記アクチュエータの材質は圧電(piezoelectric)材料、電場応答性高分子(electroactive polymer、EAP)、形状記憶合金(shape memory alloy、 SMA)、磁歪材料(magnetostrictive material)、ボイスコイルモータ(voice coil motor)或いはリニア共振アクチュエータ(linear resonance actuator、LRA)を含むことを特徴とする、請求項2に記載のエネルギー転換モジュール。
【請求項4】
それら前記アクチュエータは同じ制御信号を受けて駆動されることを特徴とする、請求項1に記載のエネルギー転換モジュール。
【請求項5】
それら前記アクチュエータは同じ制御信号を受けて駆動されることを特徴とする、請求項4に記載のエネルギー転換モジュール。
【請求項6】
前記アクチュエータはバイモルフ(bimorph)であることを特徴とする、請求項1に記載のエネルギー転換モジュール。
【請求項7】
前記アクチュエータはユニモルフ(unimorph)であることを特徴とする、請求項1に記載のエネルギー転換モジュール。
【請求項8】
前記アクチュエータはマルチモルフ(multimorph)であることを特徴とする、請求項1に記載のエネルギー転換モジュール。
【請求項9】
前記アクチュエータの表面に設けられる少なくとも一つのマス・ブロックを更に含むことを特徴とする、請求項1に記載のエネルギー転換モジュール。
【請求項10】
それら前記支持部材はそれら前記アクチュエータの中央にそれぞれ設けられることを特徴とする、請求項1に記載のエネルギー転換モジュール。
【請求項11】
それら前記支持部材の設定位置はそれら前記アクチュエータの端点にそれぞれ近接されることを特徴とする、請求項1に記載のエネルギー転換モジュール。
【請求項12】
前記アクチュエータの二つの対向する面は共に一つの前記支持部材をそれぞれ設けることを特徴とする、請求項1に記載のエネルギー転換モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−93817(P2013−93817A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255098(P2011−255098)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(510147710)慶良電子股▲分▼有限公司 (9)
【Fターム(参考)】