説明

積層成形品の冷却装置

【課題】フィルム状積層品の表面状態を良好に保持しつつ均一で良好な冷却が実現できる冷却装置を提供する。
【解決手段】フィルム状に積層された成形品を冷却する冷却装置1であって、温調された矩形の冷却盤3と、該冷却盤3の一辺に蝶番5で連結されハニカム構造を有する押え板4とを備える。そして、前記押え板4は前記冷却盤3に近接・離隔可能になるとともに、前記冷却盤3に近接位置決めされた時の前記冷却盤3との距離が可変に設定可能となるように設けられ、前記冷却装置1は前記押え板4の旋回開放時にその位置を保持させる係止装置を備え、前記蝶番5は、前記押え板4の旋回閉鎖移動に対して抵抗力を発生するダンパー機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム状に積層された成形品を冷却する冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この技術分野における先行技術としては、例えば、特許文献1がある。特許文献1は、フィルム状材料を基板に積層し且つ埋め込み、さらに基板上のフィルム状材料を平坦化するための真空プレス方法であって、フィルム状材料を表面に保持した基板を第一の真空プレス装置にて減圧雰囲気中で加熱および加圧することによりフィルム状材料を基板の表面に積層し且つ埋め込む段階と、フィルム状材料を表面に積層され且つ埋め込まれた基板を第二の真空プレス装置にて減圧雰囲気中で加熱および加圧することによりフィルム状材料の外表面を平坦化する段階と、を備え、前記積層し且つ埋め込む段階と前記平坦化する段階との間に、フィルム状材料を表面に積層され且つ埋め込まれた基板を強制的に冷却する段階が設けられる真空プレス方法に関する。
【0003】
しかしながら、特許文献1における冷却装置は、フィルム状材料に冷却用媒体を直接または間接的に接触させるものであるから、冷却用媒体が空気のような流体の場合には、冷却の程度を調節することが困難であるばかりか、フィルム状材料の全表面を均一に冷却することが困難である。また、冷却用媒体が雰囲気温度またはそれ以下に冷却された固形のものであって、それをフィルム材料の両面に直接または間接的に押し当てるようにした場合には、押圧力に基づくフィルム材料の変形・転写が生じ、成形品の品質悪化を来たす。
【0004】
【特許文献1】特開2005−334902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した問題を解決すべくなされたものであって、フィルム状積層品の表面状態を良好に保持しつつ均一で良好な冷却が実現できる冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、フィルム状に積層された成形品を冷却する冷却装置であって、温調された矩形の冷却盤と、該冷却盤の一辺に蝶番で連結されハニカム構造を有する押え板とを備える冷却装置に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の冷却装置によれば、フィルム状積層品の表面状態を良好に保持しつつ均一で良好な冷却を実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図面に基づいて、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の冷却装置の正面図である。図2は、本発明の冷却装置の左側面図である。図3は、本発明の冷却装置の平面図である。
【0009】
冷却装置1は、ビルドアップ方式の積層配線基板の成形に好適に用いられる。冷却装置1は、回路形成された基板とフィルム状樹脂とを真空積層装置で積層成形した表面に凹凸のある中間成形品を平坦化プレスで平坦化した後の成形品から、キャリヤフィルムを良好に剥離するため平坦化プレスの川下工程に設置される。このようにして成形された表面が平坦な成形品は、回路形成された後に再度真空積層装置で次の積層成形が行われる。なお、冷却装置1は、平坦化後の成形品に気泡や空所を発生させないために、真空積層装置と平坦化プレスとの間に設置してもよい。
【0010】
冷却装置1は、架台2に固着された比較的肉厚の矩形平板であり複数の冷却水通路16を有する冷却盤3と、冷却盤3の上面と略同一形状で比較的肉薄の押え板4と、押え板4の一辺を蝶番5で取付け冷却盤3の一辺近傍に空圧シリンダ10を介して配設される取付棒6と、冷却盤3の一辺に対向する他辺近傍に空圧シリンダ10を介して配設される取付棒7と、取付棒6,7をそれらの長手方向中心部で昇降駆動し架台2に固着される空圧シリンダ10とからなる。
【0011】
押え板4は、板厚方向に貫通穴を有するハニカム板の両面に表面が平滑な薄板を接着した構成である。ハニカム板と薄板の材質はアルミニウムである。そのため、押え板4は軽量で剛性の高いものとなっている。
【0012】
取付棒6,7の空圧シリンダ10による昇降移動は、取付棒6,7の下面両端部に下向きに立設した案内ピン8と案内ピン8を嵌挿する案内座9とにより案内される。そして、取付棒6,7の上昇距離は、空圧シリンダ10のロッドの突出限度で決定され、取付棒6,7に衝止する押え板4と冷却盤3との間に成形品が容易に挿通できる間隙を形成する。また、取付棒6,7の下降限度位置は、空圧シリンダ10のロッドの退縮停止位置を調整する調整ネジ11で決定・設定され、押え板4の冷却盤3への近接位置決め位置は、押え板4が冷却盤3に密着する位置から3mm離隔するような距離の範囲内で成形品の肉厚に応じて任意に設定できる。なお、取付棒6,7の押え板4との当接面には、衝撃を吸収するためにウレタンゴムが焼付け接着されている。
【0013】
冷却盤3は、所定温度の冷却水を冷却水入口17から供給し、冷却水出口18から排出することにより温調される。冷却水入口17と冷却水出口18は冷却水通路16の一方の開口部であり、その他方の開口部はそれぞれ他の冷却水通路16の開口部にホース等で接続されて、全ての冷却水通路16が冷却水入口17から冷却水出口18まで連通するようになっている。
【0014】
次に、冷却装置1の作動について説明する。冷却するフィルム状に積層された成形品は、空圧シリンダ10により押え板4が冷却盤3から最も離隔された状態かまたは図1に示すように、さらに押え板4を上方へ旋回開放した状態で図1における紙面に垂直の方向に挿通される。
【0015】
ところで、押え板4の旋回開閉は、上記の成形品装着工程の他保守・点検時にも行われる。その際の作業を安全・容易にするため、押え板4を旋回開放時の位置で保持させる係止装置が設けられている。係止装置は、押え板4の上面に設けられた半環状の係止部13と、係止部13を押え板4の上方で握持・係合して保持するスナッチロック14とからなる。なお、押え板4の係止状態を確認して他の作動を禁止するための近接スイッチ15がスナッチロック14の近傍に配設されている。スナッチロック14の係止部13との係合を解除して押え板4を旋回閉鎖させるとき、ハンドル12に手を添えて緩やかに操作すれば問題ないが、押え板4を自然落下させて旋回閉鎖させたときには、押え板4や成形品を損傷させる虞がある。それを防止するため、蝶番5は押え板4の旋回閉鎖移動に対して抵抗力を発生するダンパー機能を有している。
【0016】
成形品を冷却するときには、空圧シリンダ10に圧空を供給して取付棒6,7を下降させる。そうすると、押え板4は自重で閉鎖して取付棒6,7及び/又は成形品に接触・当接する。そのため、成形品は極めて低い押圧力で冷却盤3に接触して、過度な変形や賦型を受けることなく均一に冷却される。
【0017】
所定の冷却時間が経過したら、空圧シリンダ10に圧空を供給して取付棒6,7を上昇させる。冷却盤3と押え板4との間には成形品の肉厚に比して十分大きな間隙が生ずるので、冷却された成形品はキャリヤフィルムにより冷却装置1から搬出されるとともに、他の装置から冷却前の成形品が搬入される。
【0018】
この発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を付加して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の冷却装置の正面図である。
【図2】本発明の冷却装置の左側面図である。
【図3】本発明の冷却装置の平面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 冷却装置
2 架台
3 冷却盤
4 押え板
5 蝶番
6,7 取付棒
8 案内ピン
9 案内座
10 空圧シリンダ
11 調整ネジ
12 ハンドル
13 係止部
14 スナッチロック
15 近接スイッチ
16 冷却水通路
17 冷却水入口
18 冷却水出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状に積層された成形品を冷却する冷却装置であって、
温調された矩形の冷却盤と、該冷却盤の一辺に蝶番で連結されハニカム構造を有する押え板とを備えることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記押え板は、前記冷却盤に近接・離隔可能になるとともに、前記冷却盤に近接位置決めされた時の前記冷却盤との距離が可変に設定可能となるように設けられる請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記冷却装置は前記押え板の旋回開放時にその位置を保持させる係止装置を備えるとともに、前記蝶番は、前記押え板の旋回閉鎖移動に対して抵抗力を発生するダンパー機能を有する請求項1または2に記載の冷却装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−238515(P2008−238515A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80808(P2007−80808)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000155159)株式会社名機製作所 (255)
【Fターム(参考)】